ふたりのバレンタイン9《最終話》 - 03/08 Fri
「あー、マジでなんかすごい久々にやった!って感じな」
バスルームから出て柿内の部屋で何度したのか判らない。体を拭く時間さえも惜しくて求めあい、ぶつかり合い、何度も達した。優しく抱き締めてくる柿内の腕を撫でると顔を上げる
「柿内?」
「こっち向くな」
「なんだよ」
「このままで・・・」
「なんだよ。オレの顔見たくないとか賢者タイムすぎんだろ」
さっきまでの甘さはどこへ行ったのかと冷たい柿内に唇を尖らせて判りやすく拗ねた柚木に違ぇと柿内の低い声が頭の上で響く。知っている。優しくて愛しい恋人。冷たいだなんて思っていない
「ユズ」
「んー?」
「・・・てる・・・ぁ・・・愛してる」
照れ屋の恋人。悪態を吐いて喧嘩をしながらふざけ合っている方が気が楽で2人には向いているし、お互いにそれが自然だと思っているからたまにこうして伝えられる言葉が酷く恥ずかしい
だからいつもだったらすぐに茶化しにかかる柚木だけれど今日は違う。なんせバレンタインだ。自分も気持ちを伝えるべきだと柿内の背中を強く抱き寄せた
「オレも愛してるよ」
「っ・・・クッソこっち見んな」
「照れてるお前もすげぇ愛しい。可愛くて誰にも渡したくない。誰にも渡さない」
「っ・・・もう、そ、いうの・・・イイから」
恥ずかしくて離れようとした柿内を引き寄せる
「お前に酷いことしたオレだけど、あん時ホントどん底だった。でも、今、またお前とこうしていられるオレは幸せ者だ」
「・・・オレは・・・なぁ、今、あんた幸せ・・・なのか?」
自信なさそうに言う柿内の頭をぐしゃぐしゃかき回す
「幸せ!お前も幸せだろ?」
「そりゃ、オレは・・・な。でも、ほら、あんたを泳ぐの誘った癖に仕事ばっかで一緒にまともに泳ぎに行くこともできねぇし、ロクに顔も合わせられねぇし、なんつーか、ほら、どこにも連れてってやれてねぇっつーか」
柚木は柿内に愛されている実感がある。その愛されている事実こそ幸せを感じられるもの。柿内にもそれを味わって欲しい
柿内に自信がないのは昔からだけれど、大人になった今もまだ自信がないのは自分のせいもあるんじゃないかと思う。自分勝手に柿内から離れたから・・・だからゆっくりでもいい。愛されている事実を理解してけばいい。これから時間をかけてゆっくりゆっくり理解し、柚木が今感じている幸せを実感できればいい
「柿内、お前ユズって呼んだり名前で呼んだり安定しないなぁ」
「それはあんたもだろ!っつかなんだよ。オレは・・・話またすり替えやがって」
「おう。でもオレらの中でこれが自然なんだって思ったらこういう所までなんかすごい幸せに思えてさ。すげぇ小さいことも幸せって思えるのはお前と離れてた時間があったからかも。当然だと思ってたことがなくなってお前がここにいてこうしていられることが幸せ。確かにもっとお前といたいなって思う時はあるけどオレら子どもでもないしそもそもオレは男だ。仕事大事なのも楽しいのも判るから。大丈夫。お前の愛情、オレ、誰よりも判ってる。伝わってる」
柿内はそっと柚木の体に顔を埋めると熱い頬を擦りよせた
「なぁ、もうずっと前だけどさ、バレンタインだったよな」
「・・・」
「雨の中走ってオレの家来てさ、柿内がオレにちゃんと告ってくれたの」
「っ・・・忘れろよ」
「バーカ。忘れるわけない。あの日があったから今幸せなんだって、あの日告ってくれなかったらオレは本当に分かり合える相手なんて見つけられずに適当に生きているに違いないんだ」
熱い頬が余計に熱い。柿内にとっても忘れられない日。あの日からずっと夢が続いているんじゃないかと疑った日々。そして失って幻だったのだと自分に言い聞かせ諦めた日々。思い出せば出すほど胸が苦しくて今の幸せを改めてありがたく思う
「だから、愛してる。紀行」
「流っ・・・ありがと・・・無理させてごめん」
心配しすぎだし、そもそも誘ったのは自分だと笑った柚木はポンと柿内の頭を叩く
「な、ホワイトデーは3倍返しだよな?」
「あ?」
「ま、クッキーとチョコプリンは交換ってことにしてもだ!今の甘い時間は?オレからのバレンタインプレゼントだろ?」
「は・・・はぁ?!」
「ホワイトデー!3倍返しっ!頑張れっ!柿内っ!」
「いや、ちょ、そういう意味で言ってんなら無理だぞ?なぁ!ユズ!なぁって!」
あぁ、これは本気だろう。ホワイトデーは何をどう求められるのかと思うとやっぱり永遠に勝てないと思う。でも、永遠に勝てなくていい。ずっと追いかければいいから。追いかける背中が目の前にある。それだけで幸せだから
青春はプールの中で 番外編
ふたりのバレンタイン おしまいおしまい

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バスルームから出て柿内の部屋で何度したのか判らない。体を拭く時間さえも惜しくて求めあい、ぶつかり合い、何度も達した。優しく抱き締めてくる柿内の腕を撫でると顔を上げる
「柿内?」
「こっち向くな」
「なんだよ」
「このままで・・・」
「なんだよ。オレの顔見たくないとか賢者タイムすぎんだろ」
さっきまでの甘さはどこへ行ったのかと冷たい柿内に唇を尖らせて判りやすく拗ねた柚木に違ぇと柿内の低い声が頭の上で響く。知っている。優しくて愛しい恋人。冷たいだなんて思っていない
「ユズ」
「んー?」
「・・・てる・・・ぁ・・・愛してる」
照れ屋の恋人。悪態を吐いて喧嘩をしながらふざけ合っている方が気が楽で2人には向いているし、お互いにそれが自然だと思っているからたまにこうして伝えられる言葉が酷く恥ずかしい
だからいつもだったらすぐに茶化しにかかる柚木だけれど今日は違う。なんせバレンタインだ。自分も気持ちを伝えるべきだと柿内の背中を強く抱き寄せた
「オレも愛してるよ」
「っ・・・クッソこっち見んな」
「照れてるお前もすげぇ愛しい。可愛くて誰にも渡したくない。誰にも渡さない」
「っ・・・もう、そ、いうの・・・イイから」
恥ずかしくて離れようとした柿内を引き寄せる
「お前に酷いことしたオレだけど、あん時ホントどん底だった。でも、今、またお前とこうしていられるオレは幸せ者だ」
「・・・オレは・・・なぁ、今、あんた幸せ・・・なのか?」
自信なさそうに言う柿内の頭をぐしゃぐしゃかき回す
「幸せ!お前も幸せだろ?」
「そりゃ、オレは・・・な。でも、ほら、あんたを泳ぐの誘った癖に仕事ばっかで一緒にまともに泳ぎに行くこともできねぇし、ロクに顔も合わせられねぇし、なんつーか、ほら、どこにも連れてってやれてねぇっつーか」
柚木は柿内に愛されている実感がある。その愛されている事実こそ幸せを感じられるもの。柿内にもそれを味わって欲しい
柿内に自信がないのは昔からだけれど、大人になった今もまだ自信がないのは自分のせいもあるんじゃないかと思う。自分勝手に柿内から離れたから・・・だからゆっくりでもいい。愛されている事実を理解してけばいい。これから時間をかけてゆっくりゆっくり理解し、柚木が今感じている幸せを実感できればいい
「柿内、お前ユズって呼んだり名前で呼んだり安定しないなぁ」
「それはあんたもだろ!っつかなんだよ。オレは・・・話またすり替えやがって」
「おう。でもオレらの中でこれが自然なんだって思ったらこういう所までなんかすごい幸せに思えてさ。すげぇ小さいことも幸せって思えるのはお前と離れてた時間があったからかも。当然だと思ってたことがなくなってお前がここにいてこうしていられることが幸せ。確かにもっとお前といたいなって思う時はあるけどオレら子どもでもないしそもそもオレは男だ。仕事大事なのも楽しいのも判るから。大丈夫。お前の愛情、オレ、誰よりも判ってる。伝わってる」
柿内はそっと柚木の体に顔を埋めると熱い頬を擦りよせた
「なぁ、もうずっと前だけどさ、バレンタインだったよな」
「・・・」
「雨の中走ってオレの家来てさ、柿内がオレにちゃんと告ってくれたの」
「っ・・・忘れろよ」
「バーカ。忘れるわけない。あの日があったから今幸せなんだって、あの日告ってくれなかったらオレは本当に分かり合える相手なんて見つけられずに適当に生きているに違いないんだ」
熱い頬が余計に熱い。柿内にとっても忘れられない日。あの日からずっと夢が続いているんじゃないかと疑った日々。そして失って幻だったのだと自分に言い聞かせ諦めた日々。思い出せば出すほど胸が苦しくて今の幸せを改めてありがたく思う
「だから、愛してる。紀行」
「流っ・・・ありがと・・・無理させてごめん」
心配しすぎだし、そもそも誘ったのは自分だと笑った柚木はポンと柿内の頭を叩く
「な、ホワイトデーは3倍返しだよな?」
「あ?」
「ま、クッキーとチョコプリンは交換ってことにしてもだ!今の甘い時間は?オレからのバレンタインプレゼントだろ?」
「は・・・はぁ?!」
「ホワイトデー!3倍返しっ!頑張れっ!柿内っ!」
「いや、ちょ、そういう意味で言ってんなら無理だぞ?なぁ!ユズ!なぁって!」
あぁ、これは本気だろう。ホワイトデーは何をどう求められるのかと思うとやっぱり永遠に勝てないと思う。でも、永遠に勝てなくていい。ずっと追いかければいいから。追いかける背中が目の前にある。それだけで幸せだから
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