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コイゴコロミズゴコロ1 - 04/30 Thu

trackback (-) | comment (0) | コイゴコロミズゴコロ
見た目と反して残念な性格でがっかりすることは多々ある・・・彼、但馬 和範もがっかりしている1人。
ただし、彼女ではなく・・・


憧れていた同性の先輩にである


「だーかーらーーーーっ!!!何度言ったら判るんですか?簡単に人を信用してホイホイついていくなっつーの!」
「・・・だって・・・イイ人だったよ。ご飯奢ってくれたし」
「イイ人がなーんで連絡付かなくなんだよ。ありえねぇだろーが!」


新井と初めて出会ったのは高校のとき。インターハイでだった。
新井の泳ぎを見て初めて心が動かされた。オリンピック選手ではなく、普通の県代表選手の新井に心震えたのだ。
あまりにも惚れたため、同じ大学へ行こうと頑張ったあの時の自分に教えたい・・・残念すぎる中身だって・・・

同じ大学へ見事入学し、ちゃんと自分を認識してもらったのは水泳部に入った直後・・・


「あー!そこの水泳部の子ー!ちょーっと助けてー!」

プールのフェンスからそう呼ばれた但馬は呼んでいるのが憧れていた新井 瑞貴だと判ると小走りで寄って行ったのに・・・

「ごめんけどー、これ、助けて」

そこで見たのは破れたフェンスに腕をつっこんで血まみれになりながら抜けないと半泣きの新井だった
結局、そこから助けて病院まで付き添った但馬はすごくすごく感謝され、更には懐かれたのだ

そして、しばらくするとゲイだとカミングアウトした新井に、その後も変わらない但馬は更に懐かれることとなった
しかも何の因果か、留年決定と同時に家を追い出される形になった新井は但馬と同じ学生マンションへ引っ越してきて、朝から寝るまで基本一緒にいることになった但馬。それに関しては目を瞑って面倒を見ることにしたが、新井の乱れる交際関係には口出しせずにはいられない

「っつかさー、本命いるならもー本命に片想いして満足してろよ・・・危なっかしい」
「だって、江口ってストレートだし・・・」
「あーもーーーーバカ。バーカバーカバーカ」
「・・・仮にも先輩のオレにバカバカって言うな」
「留年した人に先輩もなにもありません」

そして、新井は江口のせいで留年していたため、いつの間にか但馬と同級生となっていた
江口は新井の想い人。高校から好きで、一緒の大学へ進んだのに相変わらず江口とは親友以上にはなれない。叶わない恋だともう諦めてはいたが、それでも起こる性的欲求。それを満たすためにまた恋をして騙され、破れ但馬へ愚痴を言うのが日課になっている

「そーんなに文句ばっかり言うなら但馬がオレと付き合ってくれればよくない?」
「・・・」
「あ、いいじゃん。それって完璧!な、但馬!男ムリ?っつかオレムリ?オレ、結構フェラとかも上手いよ?」
「・・・嫌です」
「なーんーでぇぇぇぇぇっ!」

但馬はため息をつく
嫌いなわけがない。憧れて好きで追いかけてきた人なのだ。それは決して恋愛での憧れや好きではなかったが、それでも付き合えない理由にならないくらいには憧れ好きだった

「だって、あんた、オレがもし気に入らないことあったとしてそれを誰に愚痴るの?」
「・・・」
「オレは大切にできるけどオレの何かがあんたには気に入らないかもしれないだろ」
「・・・っていうか・・・但馬、オレのこと結構好きなんだ?」

今、言ったことは聞いていたのか?と思ったが、但馬はまたため息をついて新井のさらさらの髪をぐしゃぐしゃと撫でて

「あー、かなり好きですよ!じゃなかったらここまで面倒見ない」

と言うと自分の気持ちを伝えたことに赤面した



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10センチ後 - 04/29 Wed

trackback (-) | comment (2) | 野球少年恋をする
「そろそろ帰れよ。送ってくし」
「あ、うん」

腕の中から解放されて少しだけ寂しくなる
もっと抱きしめられたかった。居心地のいい場所が名残惜しかった

「そんな顔すんな。襲うぞ」
「あ・・・」
「っくそ・・・もう一回」

帰れという言葉の意味を知ってまた顔を赤くした穂波を照れながらもう一度引き寄せると体をまげて穂波の顔に唇を落とす

「東谷・・・オレ・・・」
「マジで帰れ」
「うん」

頭がぼーっとする。もっとキスしてほしくて、体が熱くて・・・それでもまだ明日は学校。それに、いくら家が近くてももう遅い

「東谷・・・」
「あー?」
「安曇先輩とキス・・・したりするなよ」
「するかバカ」

帰り道、不安になった穂波の言葉を一周すると漕ぐ自転車のスピードを上げた
恥ずかしくて恥ずかしくて
穂波以外にもうキスなんてしない。そう言いたいのにそれを言えなくて不安にさせている自分が恥ずかしくて。そして不安な彼が可愛くて

「穂波、電話する」
「!・・・うんっ」

マンションの前に着くと止まることもなく自転車に乗ったままそう言って立ち去る日がしたく。その背中をしばらく見つめて穂波はまた胸が苦しくなるのを感じた



「おかえり」
「ただいま」
「どこで食べてきたの?」
「東谷ん家」
「ご両親にきちんと挨拶した?」
「あいつん家、お母さんもお父さんも帰り遅いんだってさー」

帰ると洗濯物を畳んでいた母に話し掛けられる。来て帰って来たぶかぶかのTシャツとジャージを脱ぐと「東谷に返すから洗っといて」と言いながら洗濯機に放りこむ

「今度、東谷くん呼びなさいよ。毎日じゃないんでしょうけど、1人でご飯食べるなんて寂しすぎるわ」
「あぁ・・・うん。そう言っておく」

ニコニコと笑った母に「寝る。おやすみ」と言うと部屋に入る。部活で疲れきっているはずなのに全然眠くならなかった。ドキドキが止まらなくて眠れなさそうだった
全て東谷のせい・・・急に進んだ関係。急に知ってしまった関係。急に知ってしまった彼の体の温度と彼の唇・・・ドキドキしないわけがない・・・ドキドキしすぎて恥ず

かしくて嬉しくて。ベッドの上で穂波は足を少しだけバタバタさせる

ブブブブブ・・・

携帯がバイブレーションで着信を知らせてきて穂波は顔を上げて携帯を掴む。ドキドキの原因からの電話・・・

「もしもし」
『・・・電話するって・・・言ったろ』
「うん」

普段、部活の用事以外で電話したことがなかった。彼の声が耳元から聞こえてくるとさっきの近距離からの声を思い出して胸が苦しくなる

『寝れねぇー』
「オレも」
『日曜日なら空いてる』
「え?」
『土曜日は午前部活やったあとは安曇先輩と行くけど・・・日曜日なら一日空いてる』
「うん・・・会いたい」
『・・・会いたいとか言うな。バカ。あー、もー切る』

彼のこのぶっきらぼうになるのは照れ隠し、それが今日はっきり判った。だから切らないで話し続ける

「東谷、今度はうちに遊びに来いって母さんが・・・」
『あー?あぁ』
「でも、うちは・・・母さんも弟もいるから・・・」

キスできない・・・そう小声で付け加えると恥ずかしくなって顔を赤くして電話を握る手を強くした

『ホント・・・お前無自覚でそーいうこと言う・・・』
「ん?」
『今すぐそっち行きたくなった・・・』
「え?なんで?」
『いい。おやすみ』
「ちょ・・・東谷!意味判んないって・・・」

まだ穂波は何か言っていたがそれでも電話を勝手に切ると、東谷はベッドに倒れ込んでまた小さく悪態を吐いた

「もー・・・マジ、どーすんだよこれ・・・」

ジャージの中に手を入れると滾ったそれを握って妄想に耽る。あの少し濡れた唇・・・もっともっとキスをして、もっともっと抱きしめて・・
あともう少しでも抱きしめ続けていたら押し倒していた。自分よりも小さな体をめちゃくちゃにしそうだった。自分を見つめる熱っぽい瞳・・・あの顔をどうしようもなく

泣き顔にして虜にして閉じ込めておきたいという欲望
まだ早い。きっと求めたら与えられてしまう欲望。だが、それを知ってしまうのが怖かった

欲しい欲しい。知ってしまったらきっと今以上に求めそうで嫉妬しそうで怖い。どんどん惚れてしまいそうで怖い。虜になるのはどっちか判らないのが怖い
彼に見つめられ、そんな彼が可愛いと思った瞬間からこれは違うと否定し続けてきた想い。これではダメだと思って彼女を作ったのに選んだのは彼に少し似た女の子。いい

加減この想いを止めようと思った卒業前・・・そしてやっぱり叶ったこの想い・・・

知ってしまった恋は、2人の恋は試合開始のサイレンが鳴ったばかり。ゆっくり行こう。ゆっくり・・・息切れしないようにゆっくりと・・・


おしまいおしまい


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10センチ中 - 04/28 Tue

trackback (-) | comment (3) | 野球少年恋をする

風呂から出ると砂っぽかったからだがすっきりとし、気持ちも少しだけ落ち着いた気がした

「ぶはっ!お前ぶかぶかすぎだろ」
「笑うな!あーもー制服着ればよかった・・・」
「や、可愛いって。可愛い可愛い」

頭を撫でられて下を向く。彼がこんなにも自然に可愛いということが信じられない。彼の言葉に一喜一憂してしまうのが恥ずかしくてまともに顔を上げることができないのに、大きな手で頭を撫でてくるからせっかく解けた緊張が再び襲ってくる

「温めといた。そこ、座れよ」
「すごい量だな・・・これ」
「あー?いつもこれ、1人で食うよ」
「・・・オレ、一緒に食っちゃってもいいの?お前、足りなくなるじゃん」
「米も味噌汁もあっから気にせず食え」

いただきます。と言って唐揚げを口に入れる。じっと見られていることに気付いて急に口を動かすのが恥ずかしくなってきた

「なんだよ・・・食いにくい」
「人とメシ食うのっていいよな」

いつも仕事で忙しい両親ともあまり摂ることのない食事。食事の時に誰かがいると言うことが東谷には嬉しいこと。学校以外で人と食事することがなんだか特別な気がして東谷は笑っていた

「・・・安曇先輩、絶対お前狙ってるよな」
「あぁ?」
「男だけど・・・美人だし・・・よかったね」
「うっわー。ひく。マジやな言い方」

こんな言い方をするつもりではなかった。ただ苦しくて・・・想いを確認したくて。でもはっきり聞けないからこんなことを言ってしまう
あの時、想いは確認したけれどあれがホントだったのか、まだ気持ちは変わっていないのか、付き合うことになったとかそんなこと全然判らない。曖昧な関係。友達なのかなんなのか・・・曖昧

「メシ、終わったら部屋行こ・・・」
「・・・」

また2人の間に沈黙が訪れる。緊張からの沈黙。想いあってるからこそ意識して緊張してしまうのだが、2人はお互いの気持ちをまだ知らない

食事が終わると洗い物しとくから部屋に先に言ってろと言われ、人の部屋でひとり、部屋の主を待つ。思ったよりも片付いていて、辺りを見回すと勉強机のデスクマットに挟まれた写真に気付く。中学の時、部員全員で撮った写真・・・懐かしくてこれを飾っていることが嬉しくてデスクマットの上から写真を触る

「?」

よく見ると後ろにも写真があって、デスクマットをずらして写真を取り出す

「っ!?」

そこに現れたのは自分の笑顔。まさかそこに自分がいるなんて思わなくて恥ずかしくて慌てて元に戻す

「お待た・・・せ」
「・・・」

部屋に入ってきた東谷は顔を赤くしている穂波を見て穂波の頭をペチンと叩く

「勝手に見んな」
「ごめ・・・」
「あーもー!!!なんだよ!マジで。お前の可愛さムカついてくんだけど」
「さっきも言ってたけど・・・オレを可愛いって思うの?」
「知るかっ!」
「・・・」

彼はそう言ったが、もう穂波は判っている。写真を見た後だ。頬を赤く染めて俯いてしまう。そんな穂波の頭を東谷はまたペチンと叩いた

「やめろって。マジで」
「何?」
「無自覚か!・・・あーくっそ・・・オレのこと好きなのはお前のほうだろ・・・なんでオレがこんな・・・」

東谷はたまらなく可愛く見える彼の両頬をつねりあげる

「痛い痛い痛いー」
「変な顔ー」
「何すんだよ」
「勝手に写真見た罰」
「オレがオレの写真見たら罰受けるとか理不尽すぎっだろ」
「あの写真、オレのおかずだから」
「え?」

聞き間違いかと思った

彼が自分に欲情までしてくれるなんて・・・心臓が痛い。ズキズキ痛い

「なぁ、キスくらいはしていい?」
「っ・・・いいのっ?」
「いいの?じゃねぇよ・・・」

東谷はベッドに腰掛けるとポンポンとその隣を叩き、そこへ座るように促す
穂波は一歩ベッドへ近付くと腕を引かれて次の瞬間には東谷の腕の中におさめられる

「やっちゃいたい」
「え?」
「マジで」
「・・・あー・・・っと・・・オレ・・・その・・・ちょっとそれは怖い・・・かも」
「オレだって怖ぇし・・・無理なのも判ってっから」

東谷の胸に耳をつけると心臓の音が耳に響く。早い心音・・・温かい体・・・ずっとこうされてみたかった。あの時、嫉妬していた彼女はこの体を知っているのだろうか

「東谷・・・好き」
「・・・」
「付き合ってくれる?」
「・・・」

何も言わない東谷に不安になって顔を上げる。密着した体。顔の距離は10センチ。あと少しでキスしてしまえる距離

「付き合ってくれる?」

もう一度そう聞くが、東谷は無言で唇だけが近付いてくる

そしてキス

キス

キス

初めて触れた他人の唇はずっとずっと好きだった相手で、同性で、背の高い格好イイ彼

「東谷・・・」
「こっち見んな」

ぐいっとまた胸の中に顔を押し込まれるときつく抱きしめられる

「付き合う・・・とか・・・付き合ってんじゃねぇの?」
「・・・そうなの?」
「じゃねぇの?」

東谷の胸の中で顔を赤くする
付き合っていたなんて知らなくて・・・嬉しくて・・・

一方、東谷も付き合っているつもりなんてなかった。付き合って・・・そう言わせてしまった上に、それに応えるのが照れくさくてつい言ってしまった言葉。恥ずかしくて照れくさくて・・・もう付き合っていることにしてしまいたかった

デートだってしたことないし、そんな雰囲気になったのも今が初めてのこと。この心がムズムズする感覚を2人はそっと楽しんだ


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10センチ前 - 04/27 Mon

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春、入学式を終えて、桜も散り、新生活にも慣れた頃・・・


「穂波、行くぞ」

教室のドアから名前を呼ばれて急いで片付けて鞄を持つ

「じゃあ、また明日ー!」

級友たちにそう微笑むと無意識に早足になっていて、それが少しだけ恥ずかしい

「待てよ」
「お前の足が短いんだよ。チビ」
「うるせぇ!お前がでかすぎんだろ」

あの日、お互いの気持ちが判ったはずなのに未だ甘い雰囲気にはなれない2人。クラスは離れたが、部活も帰る方向も同じなのに・・・あの時の話すらまだ2人の間で再度話題にのぼることすらなかった

「東谷・・・」
「あー?」
「あのさ・・・」

ずっと・・・もう一度確認したかった。彼が自分と同じ気持ちで、触れあいたいと思っていてくれるのか・・・知りたかった。この想いは自分だけの勝手な想いなのか、それとも・・・あのとき言ったように同じ気持ちでいるのか

「何?」
「今度の休み・・・暇?」
「あー?・・・あー・・・」
「それ、どっち?」
「安曇先輩に誘われてる」
「・・・」

そう言われて黙り込んでしまう穂波。安曇は2年のエース。そして自分とはタイプの違う美人ピッチャーで、入部して以来ずっと東谷にアプローチと思えるような行動をし続けている先輩

「何?妬いてんの?」
「バッ!!!!!・・・うん・・・妬いてる」

急に素直になった穂波が可愛く見えて緩みそうな口元を手で隠す

「でも、先輩と予定入ってるなら仕方ないね」
「・・・今日、部活終わったらうち、来るか?」
「え?」
「かーずーやぁぁぁぁぁっ」

穂波が部活後の返事をする前に後ろから東谷は抱きしめられた

「お疲れっす」
「なぁなぁ!一弥ってオファニエル好き?」

オファニエルは彼らの地元を本拠地にしているプロ野球球団である

「まぁ、好きですね」
「今度の休みのチケットとれたー!」
「マジっすか」

まるで自分なんて存在しないかのように2人は話していて居た堪れなくなった穂波は足早に部室へと向かった
好きで好きで・・・想いも伝えたはずなのに。折角東谷に彼女もいなくなったのに・・・これでは前と同じ。いや、あのときよりも気分は良くない気がする




「じゃーなー!また明日ー!」

2、3年が帰り、雑用を終えた彼らが部室を出る頃には辺りは既に暗くなっている

「・・・」

薄暗くなった道を同じ方角に並んで帰る2人。毎日同じ帰り道だが、今日はいつもとは少しだけ違っていた。特別話しをするわけでもなく、ただ並んで駅に向かい、電車に揺られ、駅を出てまた同じ方角へ自転車を走らせる
部活前にした約束の答えを聞くタイミングが判らずにここまで来てしまった。東谷の家の前に着くとやっと東谷は決心して口を開く

「来るか?」
「・・・行く」

たったそれだけ。たったそれだけを聞くために2人は緊張し、無言になり更に緊張してここまで来たのだ。部活後で疲れていたのも忘れるほどの緊張・・・互いに気持ちを窺いながら黙り込んで緊張して・・・

「おじゃまします」
「あー、誰もいねぇから」
「え?」
「あー、あれだ。共働きっつーやつ・・・2人とも仕事忙しくていつも遅いし」

そう言いながら鞄を下ろす東谷。誰もいないと聞いて余計に緊張する穂波

「メシ、どーする?食ってく?」
「え?」
「え?しか言ってねぇな・・・お前・・・あー、唐揚げかー・・・食っていけば?」
「でも・・・」
「オレは腹減った・・・お前も腹減ってるだろ?」

穂波は頷く。空腹には間違いない。だが、初めて来た家で図々しく思えて戸惑ってしまう

「電話、しろよ。オレが代わってやってもいいけど」
「や、自分でできるし・・・」

東谷の中でもう食べて行くことが決まったようで穂波はひとつ小さく深呼吸をして呼吸を整えると、廊下へ出て母に電話する。そして、夕飯が要らないことと少し遅くなる旨を伝えた

「いいって?」
「次はもっと早くに連絡しろって怒られたけど・・・いいって」
「そか・・・次は部活前に電話しろ」

次もまたココに来ていいと言われているようでやっと安心して荷物を下ろす

「風呂入ってからメシなー」
「え?」
「うちのルール」
「あ、うん」
「着替え貸してやるからお前も入れ」
「い・・・一緒に?!」

焦って顔を赤くして首を振る穂波につられて顔を赤くした東谷は「順番だ。バカ!」と穂波の頭を小突いた




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つれないキミと売れてる僕2-18 - 04/26 Sun

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結局受け取ってもらえなかった指輪は須野のキャビネットに大切にしまわれる。でもすぐに出せる場所。きっとすぐにまたこれを持ってプロポーズをするから
毎日好きと言いたい
毎日プロポーズもしたい
毎日、毎日・・・何十年もし続けたい

それが須野の幸せ。指輪を受け取ってもらえなくても伝えられるだけで幸せになれる



「そっか、受け取ってもらえなかったんかー」
「それどころか投げられた」
「は?マジで?」
「うん。マジで」

そう言うと須野は思い出して笑う。一体プロポーズのときに指輪を投げられた男が何人いるのだろう・・・ゼロじゃないにしても多くはないはずだ

「あー、もしかして指輪のデザイン気に入らなかったかなぁ・・・」
「え?!そこ!?」
「里見はシンプルなのが好みだと思うけど、シンプルすぎるといかにも・・・いや、まず婚約指輪って豪華だよな!そうか・・・ダイヤモンドぐらいは入ってないと・・・」
「須野さん・・・もしかして結構本気で言ってる?」
「4割くらい本気で考えてる」

須野の言葉に葛西は茶化すことも忘れて「愛ですねぇ」と呟いた。しかし、ダイヤモンド入りの指輪を贈ったところで再び投げられてしまいそうな気はしていたが・・・

「葛西はどうやって指輪渡したの?」
「ん?オレ?とりあえず稼ぎも大してないから指輪は大したのあげられなかったけど『お婿さんにしてくださいっ!』って言った」
「・・・あれ?・・・葛西・・・って・・・」
「うん、オレ、櫻井さんなんだよなー」
「ええええええええ!!!!!!!!」

またもや初耳である

「ゆりちゃんは『はい。お婿さんに来てください』って言ったんだよなぁ・・・あー・・・懐かしいーーーーゆりちゃんがすっげぇ可愛かったんだよなぁぁぁぁぁぁぁ」
「・・・いいなぁ・・・」
「須野、残念ながら光はきっと指輪受け取ってくれたとしても可愛くはないと思う!」
「そんなきっぱり言わなくても・・・でも、里見もきっと可愛いと思うよ」

ニコニコと笑う須野。里見は「しょうがないからもらってやる」と言って照れを隠すために俯くのだ。きっと・・・きっと。今は須野の想像でしかないが、きっとそう。彼の性格からして大体の行動は想像できて、須野はまた嬉しい

「よし!里見の仕事が終わったらまた渡す!」
「・・・めげねぇなぁ」
「めげるわけがないでしょ。だって、僕今まで何百回告白し続けたと思ってる?」

それを聞いて葛西は頷くしかない
中学で恋に落ちて、高校で初めて告白してからずっと毎日好きだと囁き続けた。それが12年・・・諦めてもおかしくない年月を脈がなくても告白し続けた男だ。一度プロポーズして指輪を投げられたくらいでめげるわけがない

「あー里見、仕事早く終わらないかなぁ・・・あ、葛西、里見の寝ている間に指輪勝手につけて朝起きて気付く・・・っていうシチュエーションはどう思う?」
「・・・寝起きの里見にめちゃくちゃキレられると思う」
「えー・・・そうかなぁ・・・でも、確かに寝ているところに勝手に指輪つけたってプロポーズの言葉言えないからダメだなぁ・・・」

そう言いながら里見の仕事が終わるまでプロポーズの言葉、シチュエーションを延々と考えるのだった。その時間は、里見のことを考えられる時間は須野にとってとてもとても幸せな時間。これからもその幸せな時間が続けばいいと願いながらまた微笑んだ




つれないキミと売れてる僕
2幕
おしまい。おしまい。



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つれないキミと売れてる僕2-17 - 04/25 Sat

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「なんでっ・・・今日はそんなに余裕なんだよっ」
「余裕・・・じゃないよっ・・・でも、ただ、幸せすぎてちょっと頭マヒしてるかも」

さっきからずっと微笑んでいる須野。いつもならもっと快感に顔を歪ませて根を上げている頃なのに余裕・・・それが里見には癪に障る

「っ・・・くそっ・・・もっとエロ顔にしてやるっ」

里見の唇が須野の乳首へと移るとぐるりと円周を舌でなぞり、舌で先端をつついて揺らした

「っ・・・」
「そう・・・余裕なんてなくしちまえ」
「っ・・・あ・・・里見っ・・・恥ずかしい?僕の告白がっ」

須野にそう指摘されると余計に里見はイラつきを感じ、須野の乳首に噛みついた。ビクリと震えて「痛っ」と声を漏らす須野には構わず乳首を責め立てながら擦りつける

「っ・・・ん・・・里見っ・・・」
「イイ感じに育ってきた・・・」
「里見っ・・・」
「名前は?」
「光・・・待って・・・光・・・」
「ん?待たねぇ」

擦りあうそれらはどちらの物かわからないカウパーでぬるぬると滑りを良くし、お互いの感度を上げてくれる
やっと恥ずかしいことを言わなくなった須野に動きを早めて達かせようとする里見と、それを必死に耐える須野

「何?お前、頑張って我慢してんじゃんっ」
「だ・・・だって・・・光、まだ・・・でしょ?」
「んー・・・もーちょい」
「だからっ・・・僕もっ」
「何?一緒に達きたいって?生意気ー」

須野の我慢を先に解放させてしまおうと里見は指で乳首を弄りながらキスを落とす。しかし、須野もそれに負けないようにと里見の乳首に手を伸ばした

「っ・・・進歩してんな・・・必死なのが可愛い」
「光っ・・・指っ・・・指、挿れて・・・イイ?」
「ダメ」
「っ・・・でも・・・挿れたいっ・・・」

そう言いながら須野は里見の後ろへと手を伸ばす。途中ペチンと手を叩かれても怯まなかった。須野はハンデが欲しかった。同じことをしていたら勝てるわけがない

「っ・・・ダメだって・・・」

そう言いながらも里見はそれ以上須野の侵入を拒むことはなかった。内側から追い詰められ、上ってくる限界を感じて須野のとまとめて握ると須野にキスをする

「達きそ・・・」
「ん・・・僕・・・も・・・ダメ・・・出る」
「須野、もーちょいだけ我慢してみ?」

須野は目を瞑って首を振る

「も・・・っっ・・・」

須野が放ったもので里見の腹を濡らし、それを感じて里見は微笑むと須野にキスを落としてまた扱く

「っ・・・っ・・・」
「エロ・・・お前の顔ホントエロいっ・・・」

そして里見も静かに昂ぶりを解放した



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つれないキミと売れてる僕2-16 - 04/24 Fri

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「っ!!!!!」
「バーカバーカバーカ」
「・・・いや、投げられるのは想像してませんでした」
「つけるかバーカ」
「・・・どこ投げたのー・・・もー・・・」

投げられても須野は笑ってそれを探す。怒らない。里見が受け取ってくれないのは最初から判ってたこと

「あ、見つけた」
「ホントお前バカ」
「だって、やっぱりちゃんとプロポーズするなら指輪は必須かなぁ・・・って」
「違ぇよ・・・明日もお前早い上に、オレの仕事もまだ終わってねぇのに今すっげぇやりたくなった」
「・・・」
「お前のバカさ加減に欲情した」

里見は須野にキスをすると唇を舐める。須野が唇を開くとすぐに侵入してくる里見の舌。器用に動くその舌を感じるとそれだけで蕩けそうになる

「おい、どーすんだよ・・・オレ、かなり今やりたいけど」
「んー・・・口でしようか?」
「違ぇよ・・・オレもお前に触りたい」
「・・・じゃあ、じゃあ・・・」
「服脱いでベッド行けよ」

里見の命令は甘くてそれだけで感じてしまう気がする。なんでも言うことを聞いてしまいそうな言葉。彼の笑顔は須野にとって麻薬で言葉は魔法。須野はジャケットを脱いでパンツも下ろすと下着とシャツだけでベッドへと足を向ける
ベッドへ向かう間に尻を撫でられ、腰に触れられ後ろから抱きしめられているのが須野にはすごくすごく幸せ

「さ・・・里見は脱がないの?」
「ん、脱ぐよ」

そう言ってシャツに手を掛けて脱ぎ捨てると須野は里見を抱きしめてキスをする

「結婚なんてできねぇことくらいお前だってわかってんだろ」
「うん」
「それなのになーんでそんなこと」
「形だけでもいいんだ。僕、告白して10年以上でしょ?これからは好きって言うのと一緒にプロポーズも10年20年していきたいと思って」

あまりにも気が長い話に、目眩すら感じた。指輪はこれからずっと想い続けるという意思表示の一つ。プロポーズもその意思表示の一つ。

「だから、僕は指輪を買ってこれから10年でも20年でもずーっと同じことを繰り返して言う・・・結婚して。里見、僕と結婚して」

須野の目はあまりにもまっすぐで、純粋で。きっと里見じゃなくても、須野に興味のない人間でもこんなことを言われたら絆されてしまうんじゃないかと思う程・・・

「お、前・・・10年後っつったらオレも40近いじゃねぇか・・・」
「うん。それでも僕はきっと里見のことが今よりも好きになってると思うよ」
「そんな未来のこと判んねぇ・・・だろ・・・それに、10年の間にオレは別のやつが好きになるかもしれない」
「・・・そうだね。それは仕方がないと思うよ。でも、それでも今までと同じように僕は言い続ける。ほら、里見に彼女ができても僕はずっと告白させてもらってたし」

返事に困る。今すぐにYESと答えてしまいそうになるのをごまかすように里見は須野にキスをする。そして、自身を須野に擦りつけると腰を動かし始める

「ねぇ、里見・・・僕らのことは世間では認められないことかもしれない・・・でも、僕は絶対里見を不幸にはしたりしない。絶対。僕は仕事以外でこのセリフを里見にしか言わない。言えない。結婚してください」
「・・・」

須野の口から綴られる言葉から逃げたくて里見は腰を動かし続ける・・・早く須野も感じてしまえ・・・感じることでその言葉を止めろ・・・そう思いながら・・・
里見にはこんなときどう返していいのか判らない

「っ・・・光、好き・・・でもっ1分後にはもっと好き・・・大好きっ」
「は・・・早く集中しろって・・・」
「うんっ・・・なんていうか、気持ちイイ・・・んだけど・・・気持ちの方がいっぱいいっぱいで・・・」
「バカ・・・ホントお前ってバカ」
「うん。里見にだけだよ」

そう言う須野の顔は穏やかで優しくて・・・里見の頬を愛しそうに撫でる
好きだなんて愛してるだなんて言わなくたって一目でわかってしまう表情
。里見の前以外では見せてはいけない顔・・・里見のためだけにある表情
須野の心が感情が自分に流しこまれている気がして怖くなる里見。須野の大きすぎる愛は里見には愛しくもあり、恐ろしいものでもある



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つれないキミと売れてる僕2-15 - 04/23 Thu

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一番最後に撮るシーンは高校生時代の撮影・・・もちろんラブシーンもあるが、なによりも20代も後半になった須野はどこか気恥しい

「須野ー!お前・・・やっぱりおっさんになった!」
「・・・」
「いやぁ、あの頃の若々しさっていうかみずみずしさっていうか・・・純情さってのは抜けたんだなぁ・・・お前も充分おっさんに成長しててオレは嬉しいよ!」

目の前のブレザー姿の須野は昔の記憶とは違ってよく判らない安心感を覚える

「あ、でも光はその格好見たら燃えるかもなぁ・・・燃えるかもなぁ・・・よし。今度制服プレゼントしてやるよー」
「要りません」

そう言いながら須野は撮影に向かう・・・今日はこのラブシーンよりももっと重要なことが待っている・・・そっちのほうが須野にとって重要で緊張していた






「ただいま」

今日も部屋は暗かった。それも当然だと思いながら須野は時計を見るともう深夜。こんな時間では決行できない・・・とジャケットのポケットにしまったものをジャケットの上から触れる

とうとう買ってしまった・・・

指輪を・・・

サイズだけははっきりしなかったが、きっと自分と大差ない。洋服のサイズもほとんど同じ、足のサイズまで同じなのだから、薬指にできなくても他の指にならできるはず。と考えた須野はジャケットをハンガーに掛けると冷蔵庫からビールを取り出した

・・・何といって渡そう・・・つき返されたら次はどのタイミングで出そう・・・ずっとそればかり考えていたから葛西には文句を言われるし、散々な一日になったが、もうじき撮影も全て終わる・・・そしたらあとは細々とした仕事はあってもこんなに毎日遅くなることもないだろう・・・渡すのはそれから・・・にしようか・・・いや、しかし早く渡したい・・・と考えながら須野は思わず微笑んでいた

「・・・キモ・・・」
「?!」

ドアから声がして驚いて振り返ると顔だけ出した里見がこちらを見ていて慌てる須野

「あ・・・た・・・ただいまっ!!!」
「・・・おう」
「な・・・えっと・・・ビール要りますか?!」
「・・・1人笑ってた・・・キモい」
「そ・・・れはっ」

須野は弁解しようとしたが、里見はすぐに部屋に戻って行く。それならば・・・と脱いだジャケットをもう一度着て里見を追いかける

「・・・何、出かけんの?」
「や、違うけど」
「ラブシーン思い出して笑ってたならぶっ飛ばす」
「え?」
「・・・」

彼が不機嫌なのはその勘違い・・・嫉妬してくれたのかと思うと嬉しくて嬉しくて須野は跪く

「里見っ・・・」
「なに?」
「一生一緒にいて下さい」

そう言ってポケットに入った小さな箱を取り出すと里見に掲げる

「・・・なにこれ・・・」
「いや・・・その」
「・・・バカだろ・・・お前」
「今受け取ってもらえなくても、ずっとずっとプロポーズさせて」

里見は箱を開けると小さなリングを見て笑う。そして、それを手にとって・・・



投げた



唖然とする須野をよそに、金属音がフローリングの上で響いて部屋に響いていた



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つれないキミと売れてる僕 人物紹介 - 04/22 Wed

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕番外編
つれないキミと売れてる僕
登場人物紹介


須野 寛人
178センチ 4月8日産まれ
俳優(芸名そのまま)
好きなもの:里見(里見が全てで他はどうでもいい)
普段は優しい人という認識だが、里見に対しては好き過ぎてへたれとにかくへたれ
高校1年のときにスカウトされ、母子家庭の母を助けるために俳優を決意。俳優業としては成功組
映画、ドラマに出ている有名人
里見と同じ高校に行くためにかなり勉強をした。里見のためなら努力を惜しまないが、基本は勉強できない

里見 光
176センチ 5月17日産まれ
小説家(ペンネームは皐月 光)
好きなもの:タバコ、酒、トマト、自分
外見は美しく、そんな自分が大好きで、いかに美しく見えるかの研究を惜しまない
小説は学生時代から書いていたがデビューは大学のとき。葛西の自主制作映画の脚本も学生時代は手掛けていた
勉強も運動も大抵こなすが、興味はあまりない。
本が大好きで図書館が一番大きいということで進学校である高校に進み、やはり図書館が一番大きいと言う理由で大学も選んだという本の虫


葛西 慎吾
170センチ 8月23日
映画監督(監督としての名前はShinGo)
好きなもの:須野、里見、由梨乃、自分を好きな人全員
須野と里見の親友。2人の関係を知っても差別どころか丸ごと愛している。とにかく親友2人が大好き
監督としては才能があるらしい
人間が大好きで、人付き合いもよく人懐っこい性格から友達も多い。嫁である由梨乃の両親も名前で呼ぶくらい馴染んでいるが、自分の両親とはあまり折り合いが良くない

櫻井 由梨乃
147センチ 
週刊誌の編集長
好きなもの:仕事、葛西
葛西の嫁。外見はどっから見ても少女の非現実的な女性。須野たちよりも年上らしいが幾つ年上なのかははっきり明かされていない(多分葛西もホントの年齢を知らない)
外見に反し、仕事はバリバリこなすキャリアウーマン。大手ビデオ制作会社の父と芸能プロダクションを持つ母で忙しい2人に育てられたため、温かい家庭というのに憧れつつ、仕事が好き過ぎて温かい家庭が作れないと悩んでいたところに葛西に出逢い、すれ違いが多いながらも2人のスタイルで楽しく幸せな生活を送れている
葛西のことが大好きなので葛西が大好きだという須野と里見のことも大好きである

吉田 真弘
186センチ
里見の元いた会社の同僚
里見に彼女を寝盗られたと思って仲違いはしたが、それまでは同期として、飲み仲間として須野と葛西に次ぐ友人の位置を保っていた
学生時代はラグビーをやっていた
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獣6 - 04/22 Wed

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「最初っから言ってるでしょ?」


「あんたじゃないって」


「だって、あたしだから」


「あいつ殺したの」


目の前で幸せが壊れる

誰だ?

この目の前で笑っているのは・・・


「あたし、あいつに言われたの。『男は獣だ』って」


「だけど、カンニングぐらいで脅してあんたに迫るのを見てた」


「獣はあいつのほう」


知っている。


全部この目の前にいる奴は知っている・・・


全て丸飲みしてくる獣・・・


「あたし、あの時まだ小学生だったからあいつ殺したところで、バカな振りしてたら大した罪にならないかなぁ・・・とか思ってた」


誰だ・・・


佳世子はどこだ


昨晩腕の中に抱いた佳世子は・・・


「凶器は裁ちバサミ。家庭科で使ってたやつ。『お母さんのお腹にいるって言う赤ちゃんを出してあげようと思ったの』って言うつもりだったんだー」


鳥肌が全身に広がる


寒い・・・のか?


怖い


怖い


「だけど、あの日、運悪くあんたが来ちゃった。発見しちゃった」


「お腹に突き刺したハサミも手に取っちゃった」


「ダメだよ。証拠に触ったらー」


怖い


怖い


「あたし、一目見た時からあんたが好きだった」


「計画狂っちゃったけど、もうあんたはあたしのもの」


「男は獣・・・飼いならすしかない」


「あたしはあんたを飼いならす」


「あんたの人生がずーっとずーっと欲しかった。初めて出逢った時からずーっとずーっと」


獣は・・・





誰だ・・・



川越は目の前の獣に屈するしかなかった。もう、飼われるしかない・・・こうなったら堕ちるところまで一緒に堕ちるしかない・・・この恐ろしい程の・・・



愛は・・・飲みこまれるしかない


<完>


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