FC2ブログ

青春はプールの中で2-10 - 07/31 Fri

trackback (-) | comment (2) | 青春はプールの中で
柚木は部屋に戻ってからも高知の言葉が頭をぐるぐると回ったまま食事もいつもよりも食べなくて柿内は心配する

「・・・考えすぎじゃないっすか?」
「え?」
「・・・水球、行きたいって思ったなら行けばいい・・・けど、今は競泳しかないっしょ?」
「あぁ・・・うん。まぁ、そうだよな・・・」

本格的にやろうと思えば、きっと帰ってからすぐに始めることは可能。でも、とりあえず競泳・・・公式試合に1500mで出て勝負したい。母の教え子とも勝負したい・・・そしてまたあの表彰台に上って喜びをかみしめたい

「っつか、あんたが食うと思ったからこんな大量にカレーあんのに余ったじゃん」
「・・・今から食う」
「は?」
「ご飯あとどんくらいあんの?」
「・・・たくさん」
「全部食うから安心しろ」

ちなみに、炊飯器も柚木家からあらかじめ宅急便で送られてきていた。独り暮らし用の球がもっている炊飯器なんて柚木には足りないだろうという母、祥子の計らいからである

「じゃあ、オレ、もう限界・・・風呂入って寝る」
「うん。後片付けは任せろっ!」
「んー・・・」

柿内が立ち上がるとすらりと伸びた手を思わず掴む

「?!・・・な・・・何?」
「え?・・・あ・・・何だろ」
「や、マジやめて・・・まぁ、疲れすぎてもう動くのも億劫でアレだけど・・・」
「あぁ、うん。まぁ、初日だし・・・疲れたよな・・・」

まるで自分は疲れていないかのような口ぶり。そしてもし、疲れていなかったら関係を進ませるのを了承するような・・・そんな風にも聞こえて柿内は頭を押さえながらシャワーへと向かった
一方、柚木も自分が何をしたいのか判らず、思わず伸ばした手を見つめた
この手をどうしたかったのか・・・ただ、指先が熱い・・・ふーっと息を吹きかけるとお皿を握ってまだたくさんあるというカレーを胃袋の中に片付け始めた




翌朝、柿内が目を覚ますとベッドで寝ているはずの柚木の姿・・・
目の前で寝ている彼に思わず声を上げて飛び起きた

「な・・・なっ!?」
「あー・・・はよ」
「っつか・・・何?ベッドで寝たんじゃねぇの?!」
「寝落ちした・・・」
「はぁ?!」

柚木は一度首を横に折ると背伸びをして起きる

「朝飯何?」
「・・・米炊いといてくれた?」
「それは炊いた!任せろっ!」

自信満々にそう言った柚木の通り、お米だけはしっかりタイマー機能で炊きあがっていて柿内は少しだけ笑うと冷蔵庫を開けて簡単な朝食作りに取り掛かる
いつものように無理矢理やらされる料理ではなく、柚木と食べるための料理は苦にならないものなのだと改めて感じると、今のこの状況を作ってくれた柚木にも感謝する

「柿内さー」
「うん?」
「床で寝て体痛くなんね?」
「床でっつーか筋肉痛だけどな」
「あぁ、うん。オレも慣れない泳ぎ方して結構足キテる」
「うっわ。柚木さんが?めっずらしー」

柚木と言えば疲れ知らずだと思っていたのに、柚木でも疲れるなんて練習が別れてからどれだけ泳いだのかと想像するが、水球に馴染のない柿内には想像できなかった

「水球の練習さー・・・オレが行ったとき、試合形式だったんだけどさー・・・全部の試合出させてもらった」
「・・・は?!」
「っつかさー、マジであれ、痛いしキツいんだけどすげぇんだよなぁ・・・足休めたら沈むし」

水球は水中の格闘技と呼ばれる激しいスポーツ。体のほとんどが水中で見えないため、水中で繰り広げられる競り合いは本人たちにしか基本判らない
柚木は布団から足を出すと青くなった箇所を撫でる

「・・・うわ・・・酷ぇ・・・痛い?」
「うん?あぁ、大丈夫」

痛い・・・それよりも楽しかった。泳いで泳いで泳いでボールを追いかけてシュートする

「もうじきできるから机出してくれる?」
「早っ!柿内天才ー!」
「や、マジで適当なもんしか作ってねぇけど」
「柿内ー」
「はい?」
「あのさー・・・」

柚木が布団を片して机を出すのを見て柿内も皿を持って移動する

「あとでキス、しよっか」
「・・・はぁ!?」




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村



    ≫ read more
スポンサーサイト



それは鬼門7 - 07/31 Fri

trackback (-) | comment (0) | その他SS
今、気持ちを認めたばかりの日置よりもずっとずっと隠し続けていた気持ちを全て暴かれた引田のほうが恥ずかしくて緊張していたのは確か・・・

「っ・・・っ・・・」
「なぁ・・・我慢してる?」
「も・・・準備もしてきたんだからっ・・・それ、やめ・・・」
「初めてのやりなおし・・・しなくちゃだろ?」

全部手伝いたいと言った日置を何度も説得して、「準備」までは自分でやってきたというのに、それでもしつこく慣らされ解されて体の中まで暴こうとしてくる

「も・・・ホントっ」
「もっと達っていいから」
「っ・・・も・・・さっさと・・・挿れ・・・ろよっ」

日置の腕を掴んで精一杯の力を込めて睨みつけるのに余裕の表情で微笑まれると胸がギュッとして精一杯の睨みはすぐに解けてしまう

「タクちゃん、オレのこと好きっつって?」
「な・・・っ・・・ぅ・・・」
「好きっつって?」

前回は余裕のあるふりをしていた。気持ちをバラしてみたものの、心の奥底にしまい込んだ感情は表に出てこなかったから。でも、でも・・・

「なぁ、言わないと・・・」
「っ・・・あ・・・す・・・好き・・・っぃぃぃっ」

好きという言葉と同時に挿入されて繋がって・・・焦らされた体に大きすぎる刺激

「うっわ・・・すげ・・・もってかれそ・・・」
「ぃ・・・ぁ・・・」

チカチカと目の前が光っていて、今にも意識が飛びそうな気がして、手を伸ばす

「ん?大丈夫?」
「ょぶ・・・じゃな・・・怖・・・っ」
「ん・・・飛びそうだな・・・オレ、すげくね?テクニシャン?」
「っ・・・バカ・・・」

形のいい唇が上に上がっているのが見えてその唇にそっと指を伸ばす
バスケ部なのに好きでいていいのか・・・バスケ部だけど付き合ってくれるのか・・・聞きたいことはたくさんあるけれど今はこの唇がキスしてくれたらそれでイイさえする
この口から飛び出した言葉で傷ついて、心を砕かれたのに、この唇から紡がれる言葉を待っている。この唇が触れてくれるのを望んでいる

「だいぶ無駄に時間過ごした・・・もうあんまり時間ねぇのに・・・バカ」

卒業までの付き合い・・・でも、それでもイイ。それで十分

「ちゃんとオレの行くところの近くなんとか入れよ?」
「ぇ?」
「近く来なかったら浮気すんからな」
「・・・っ・・・竜馬っ・・・」

浮気・・・卒業までじゃない。その先まで・・・その先・・・卒業後の未来まである。顔を赤くすると何度も頷く引田の頭を優しく撫でるとそっと耳元に唇を寄せる

「バスケ部は嫌いだけどお前は特別」

耳元がジワリと熱を帯びる

「きっとこれからもバスケはオレの鬼門だと思うけど・・・お前は特別」

熱い・・・火傷する・・・日置の声が熱っぽくて耳が火傷しそうで体を震わせる

「こんなガタイのイイ体に欲情すんのもお前にだけだかんな。190オーバーの男に突っ込んで愛囁くのもお前にだけだからな」
「熱・・・ぃ・・・も、耳元やめ・・・」
「お前の作戦勝ちだ・・・あの日、お前を抱かなかったらきっとお前に惚れたりしなかった。気付くわけなかった」
「っ・・・ぁ・・・も・・・」
「矢島連れてきたのも作戦だろ?オレに嫉妬させる作戦だろ?」
「違っ」

嫉妬させるだなんて考えてもなかった。ただ、2人きりになるのが怖くて。また関係を迫ってしまいそうな自分が怖くて・・・

いや、ウソ


どこかで考えていた想い・・・計算して計算して・・・

嫉妬してくれたらいい・・・そう思ったのも事実

たとえそれが確率の低い賭けでも賭けないわけにはいかなくて。嫌いだというバスケ部の自分が一発逆転を狙うならばどうしてもどうしても低い確率の賭けでもBETしないわけにはいかない

「お前の勝ち・・・でも・・・お前、これから思い知るからな・・・」
「ぇ・・・」
「オレ、結構しつこいよ・・・んで、一度惚れたら食い尽くすから」
「んっ・・・ぃいっ・・・っつか・・・も、達きた・・・」
「いいよ・・・じゃあもう一回好きっつって」

あぁ、厄介な男に惚れたものだ・・・そう思いながら口内に溜まった涎を嚥下する

「好き・・・好きっ」
「足りない」
「や・・・言った・・・もう・・・言ったのにっ・・・」
「足りない」
「好きぃ・・・大好きっ大好きっ」

中から擦られ、自身を扱かれ頭を白くさせながら体を震わせて白濁を飛ばすと同時に、日置の体も何度か震えて欲望をゴム1枚隔てた向こうで果てたことを知る

「はっ・・・あぁ・・・」
「・・・あぁ、そういえば明日、部活あった?」

今、それを聞くのか・・・聞くのが遅いよ・・・と頭の中で文句を言いながら幸せな気分のまま意識を手放した





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

青春はプールの中で2-9 - 07/30 Thu

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で
球の暮らす最寄り駅へ着くと駅では球と竹市が待っていた

「流ちゃーんっ!」
「お世話になります」

柚木は兄へ頭を下げると少しだけ困った顔の球に首を傾げる

「・・・まだ言ってなかったわけ?あんた・・・」
「だって・・・だってさ・・・」

竹市がため息を吐くのを聞いて球はひとつ深呼吸をする

「あのね、流ちゃん、流ちゃんはオレの部屋でカッキーと・・・その・・・泊まって」
「・・・は?」

柚木は理解できずに兄を見上げるが、球は柿内の肩に腕を回す

「流ちゃんに手出せるとか思ったら大間違いだからな?いいか?指一本動かせないくらいお前のメニュー作ってやる」
「・・・いや、出さないから・・・」
「ユズ、悪いな」
「あー・・・あぁ・・・そういうことか・・・」

柿内よりも先に状況を理解した柚木は小さくため息を吐き出すと「オレは泳げればそれでいい」と言いながら笑った



プールに到着すると普段泳いでいる施設があまりにも小さく何もないかを思い知らされる。競泳用プールと水球用のプール施設が隣接しているプール・・・更衣室にシャワー室もついていて目をキラキラと輝かせている柚木の隣ですっかり萎縮している柿内
荷物だけ部屋に置いてすぐここへ来たが、小さいワンルーム・・・そこで約2週間柚木と二人きりという状況に胸がざわつき、ここへ来てどれだけハードな練習になるのかと緊張し始めたのだ

「流ちゃん、泳ぐよー?」
「あ、うん」

球の言葉に頷くとすぐに着替える柚木、そして隣で緊張している柿内の尻へ蹴りを入れた

「ビビんなっつーの!早く脱いで着替えろよー」
「・・・わかってんよ!」

蹴られてすぐに現実に呼び戻され、柿内も同じように着替えはじめる。ここまで来たのは泳ぐため。早くなるためで柚木とどうなろうかだなんてそんなのは全然違う話・・・



「球ー!あれ、お前の弟ー?」
「そうそうーオレの可愛い弟ですー!」
「体力ありそうだな・・・メニューついていってるしなんか余裕ある」
「あぁ、流は体力バカっていうか・・・あ、体力バカとしか言いようがなかった・・・早さは普通かもだけど体力はすごいですよ」

オリンピック選手の弟がやってきたという噂を聞きつけた水球部の高知が球の横で泳ぐ柚木を見て「ふーん」と言いながら笑う。小さい体のどこにそんな体力があるのかと面白がっているのだ

「なぁ、球、練習終わったらあいつ貸してよ」
「え!!!」
「水球できんの?あいつ」
「え・・・あ・・・できる!昔やったこともあるし、球技だったらなんでもこなすし、多分オレよりも断然使える!」

高知はまた笑うと球の背中を叩いて水球用プールへと向かっていった


練習が終わると球はコースに柿内専用メニューを張り付ける

「・・・マジっすか?」
「ん?インハイ出たいんだろ?」
「・・・練習自体結構ハードだったんですけど」
「うん。大丈夫。流ちゃんから聞いてるから。お前を壊さないギリギリまで追い詰めてやるから」

球の笑顔が悪魔に見えた柿内・・・自分のメニューが貰えないことに柚木は文句を言いかけたが「流ちゃんはこっち」と球に言われて柚木はプールを上がり、球の後に黙ってついて行き連れてこられた水球用プールの前で言葉を失う

「流ちゃんはここで練習の続きですー」
「な・・・んで」
「流ちゃん、今からこっちは試合始まるんだよ。泳げるし、鍛えられる・・・どう?よくない?」
「・・・いい!」

元々球技は好き。両親に「名前つける順番間違った」とまで言われる程に・・・その言葉が柚木は悔しくて泳ぐことにこだわってきた。だから、どんなに他のスポーツが向いていると勧められても泳ぐことにこだわり続けてきた。自分が流であることを証明したくて。流でいたくて・・・

「じゃあ高知さん、よろしくお願いします」
「おう。坊っちゃん、今からフルで動けよ?」
「はいっ!!!!」

真剣な顔でそう返事をした弟の姿を見て少し微笑むと球は水球プールを後にした







「カッキー、意外と体力ねぇな」
「・・・っつか、誰と比べてるんすか」
「そりゃユズだろうなぁ・・・」

とにかく練習でしごかれてしごかれた柿内はふらふらになりながらプールを後にする。同時に、水球部の方も終わったようで外に出てきた柚木は球や竹市、そして柿内の姿を見つけると走り寄って来る

「カッキー、ほら、見てよ!流ちゃんめっちゃ元気じゃん。走ってるし」
「・・・だからホント一緒にしないでください・・・」
「流ちゃん、そっちはどうだった?楽しかった?」
「めちゃくちゃ楽しかった!超泳がせてもらった!っつか昔何回かやったくらいだけど水球楽しいっ!ファールとかも多いから難しいけど超やばいね!」

テンション高くそう語る柚木の後ろから高知が来て笑いながら球の肩を叩く

「お前の弟、なにこれ。すげぇ体力バカじゃん。こんな小せぇのに」
「高知さんも驚きました?すごいでしょう?使えるでしょう?」
「・・・正直、使える。っつか水球経験ほぼゼロなのにこれだろ・・・なんで水球ねぇ学校選んでんだよ・・・流!」
「ええ?いや、あんまりないですよ?公立高校はー」
「あれ?お前なんで公立なの?」

高知は驚きの顔を見せると流は少しだけ困った顔で笑う。
兄は私立高校出身。弟も4月からは同じく私立高校へ進む・・・きっと妹も同じようにスポーツの強い私立高校へ進むのだろう。柚木家で一人だけ公立高校・・・違和感を感じても無理はない

「オレ、私立行ったって試合に出られないレベルだったからですよ」
「・・・流ちゃん」

柚木は笑って高知にそう言うが、球はそんな弟の言葉が胸に突き刺さる。どうしようもない。同じように練習してきたのに柚木だけ延びなかったタイム・・・持って生まれた才能としか言いようがない。その速さがないのと引き換えに恵まれた球技の才能。それでも柚木は泳ぐことにこだわって今まで生きてきた

「そーなのか!っつかお前泳ぐのにこだわるんだったらやっぱり私立だったぞ?水球にもっと早く出逢ってればお前すげぇ選手だっつーの!」
「・・・水球・・・ですか」
「考えておけよ?真剣に。そりゃー、今から始めるのって・・・とか戸惑うかもしれねぇけど、全然遅くねぇ!特にお前は少し鍛えりゃうちでもすぐ選手レベルだ」
「・・・」

高知の熱いその言葉に柚木は顔を赤くする。こんなにも褒められることはなかなかなかった。確かに球技には向いている。だが・・・だが・・・




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

それは鬼門6 - 07/30 Thu

trackback (-) | comment (0) | その他SS
引田は唇を噛みしめる

どうしたってバスケ部は嫌い。そう言われてしまうから・・・

「でも・・・オレがバスケ部なのは変えられないし」
「どうしてバスケ部にこんなに頭も心も掻きまわされなくちゃなんねぇんだよ!お前のことばっかり考えて考えて考えて今日だって海外のプロテスト受けたって聞いたら練習着でここまで走って来ちゃうし!財布以外の荷物部室だよ!バカ!」
「・・・え?・・・ちょ・・・え?」

それはまるで告白・・・

「初めて好きになった女の子に「背の高い人怖いー」って言われたのにそいつが好きだったのはオレと同じ背の高いバスケ部の男だったし、その次に好きだったバスケ部のマネージャーはバスケ部の彼氏がいて、大事な試合の直前でケガをしたのもバスケ部のボールだったし!高校で友達になったバスケ部の男には当時付き合っていた彼女を奪われたし・・・大学で一番仲良くなったバスケ部の男には告白されるし避けられるし!なのに心も頭もぐちゃぐちゃになるくらい気になるし!」

心臓が・・・壊れたはずの心が・・・痛い・・・痛くて痛くて熱くて熱くて

「オレはバスケ部のやつ嫌いだ!でもお前のことは好きなのかもしれねぇ!」
「っ・・・っ・・・」

粉々になったはずの心は熱い涙に変わったようで目の奥が熱くて目から粉々の心が溢れだす
そして胸には新しく甘い心が熱く熱く燃えるようで体中が熱くなる

「オレ・・・」
「矢島ってやつと飲んだ時やっぱりバスケ部嫌いだって思った・・・のは・・・多分嫉妬。オレの目の前でオレの判らないことを2人で話しているのもムカついた」
「っ・・・待って・・・ちょっと・・・待って・・・」
「なんなんだよ・・・お前は。抱かせといてそのあと避けるって・・・1回やったらもうどうでもよかったのか?想い出でも欲しかっただけか?オレは想い出にもなんなかったんだよ!あんなの。その後に気付いた気持ちだぞ?想い出になりっこねぇだろ!しかもなんだよ。海外って・・・遠距離にも程がありすぎんだろ!」
「や・・・マジ・・・待った・・・」

熱くて恥ずかしくて・・・赤くなった顔を手で隠しながら引田が座り込む

「何・・・」
「竜馬・・・今、オレのこと好きっつったよな・・・」
「言ったけど?」
「な・・・あぁ・・・マジ・・・どうしよう・・・」
「何?」
「ごめん・・・勃った・・・」
「はぁ?」

耳まで赤くなっている引田を見て少しだけ気持ちに余裕が出たのか日置も顔に笑顔を灯す

「嬉しい?」
「それどこ・・・じゃない」
「オレはあんまり嬉しくねぇけど?」
「・・・あー・・・あの、オレ、海外行くっていうのは嘘です・・・」
「は・・・?」
「落ちました・・・向こうのプロテスト・・・」
「・・・あぁ・・あー・・・うん」

そう。落ちたという連絡はついさっき受けたもの。だからぼーっと食事をしていたのだが、もう今になっては落ちてよかったと思うほど心が浮ついている

「・・・だから、明日、こっちのプロで打診来てるところに連絡するつもりだったんだけど・・・オレは・・・あの・・・できたらちょっとでもその・・・」
「オレの入るところの近くがいい?」
「・・・うん・・・や、あの・・・竜馬が卒業までだとかそのつもりだったら全然いいんだけど・・・寧ろそれなら遠くの場所選ぶし」
「バーカバーカバーカ」
「・・・あの・・・ですね・・・」

赤い顔を少し上げて日置を見上げる

「キス・・・とかしてもいい・・・?」
「・・・してやってもいいけど・・・その前に言うことねぇ?」
「好き・・・です。オレと付き合ってください」

日置は満足そうに笑うとしゃがんで引田の顔に影を作る

「・・・今、心臓が爆発しそうなんだけど・・・」
「・・・なんだそれ・・・もう1回はやることやっちゃってんのに」
「や・・・だって!そりゃそうだろ!オレ男と付き合うの初めてだぞ?!」
「そんなのオレだって!・・・は?」
「当たり前じゃん・・・それまで普通に女の子と付き合ってたし」
「や・・・はぁ?」

あの日、すんなりコトが進んだのは覚えている。酔ってはいたが、抵抗もなかったような気がした

「お前のこと好きになってから・・・その・・・まぁ、自分で開発してったっつーか・・・」
「はぁぁぁ?!」
「や、だって・・・そりゃ卒業までにもしかしたらもしかしたらその・・・まぁ、なんかあるかもとか期待してたし・・・そんときにスムーズにいかなかったら・・・なぁ?」
「・・・初めてだったのか」
「っつかオレ、あんとき待ってっつったじゃん!おもちゃとかと違いすぎて死ぬかと思ったのに」
「・・・あー、なんだ・・・お前、結構健気なやつだったんだな・・・」

そっと引田の頬に触れる。指先がいつもよりも熱を持った気がしたのは気のせいではない。引田の頬は熱くて・・・それがどんどん移って来る

「オレのことめちゃくちゃ好きな顔・・・」
「バカ・・・見るな・・・っつか・・・今日、もうダメ」
「ダメじゃねぇよ・・・今からもう一回ちゃんとやるから」
「は・・・?ちょ・・・え・・・んっ・・・」

止まらない。触れた場所全て心臓になったようにドクドクと脈打つ。貪るように唇を吸うと快楽に負けたような表情の瞳がこちらを見ていて少しだけ笑顔を作ると優しく抱きしめる
腕に収まるような大きさじゃない。柔らかくもないし、イイ匂いもしない。それでも今、しっかりと認識したこの感情の前では愛しい気持ちに全部変換されてしまう




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

青春はプールの中で2-8 - 07/29 Wed

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で
3月に入るとすぐに卒業式が近付いてくる

「竹市さん・・・ありがとうございました」

卒業前の部内追い出しコンパが行われている部室の隅で頭を下げる柚木の頭を撫でながら笑う

「お前、もう一生会えないみたいに言うなよ」
「あぁ、会えるけど・・・っつかすぐ会うけど」
「だろ・・・春休み入ってすぐだろ?」
「うん・・・でも、きっと今言わないとずっと言えないから」

今ここで頑張れるのはあの日、大会で昔のコーチになじられ、心が折れそうになったのを掬い上げてもらったから
竹市がいなかったらこんなに成長もできなかったと思う。後輩へこんなに優しくできなかったと思う

「オレ、竹市さんみたいになりたかった」
「え!?オレ?!マァージィーでぇぇぇ?うっわ。オレなにやったっけ?ユズにそんなやってやった覚えねぇんだけどぉー!」
「いや、やってくれましたよ・・・うん」
「いやいやいやいや、どっちかっつーとユズがオレのこと助けてくれたじゃん?!」

部活の仕事は大抵、竹市の代わりに柚木がやってきたのは確か。柚木が全部やってくれるから安心して任せていた竹市は柚木の肩を叩く

「正直、竹市さんいなくなったらオレ、不安です」
「うっわー!柿内聞いたら勘違いしそうなセリフー!」
「・・・柿内は関係なくて・・・あの、竹市さん・・・」
「んー?」
「今までありがとうございました。これからは球のことよろしくお願いします」

ふわりと笑顔になった竹市は照れ隠しをするように柚木の髪をぐしゃぐしゃと乱し、柚木はそれを止めるように竹市の手を止める

「早く卒業してぇって大学受かってからずっと思ってたけど今、卒業したくねぇって思っちゃったじゃん!」
「いいえ。さっさと卒業して大学行ってください」
「うわっ!デレタイム終わり?!ユズのデレは終了?!うっわー!録音しとけばよかったぁぁっ!」

二人のそんなやり取りをにぎやかになっている輪の中心からそっと見ていたのは柿内。あの2人には自分が入れない空気がある。それはこの1年間ずっと感じてきた。柚木の兄の恋人・・・それを除いても先輩と後輩以上の関係に見えてずっともやもやしてはいるものの、柚木には竹市に対して恋愛感情もなさそうだし、この間、付き合うことになったのだと自分に言い聞かせ、そっと輪から離れた竹市と柚木を見送ったのだった

「ユズ、すっげぇ怖い視線来てんの感じてるー?」
「・・・」
「お前、やってけんの?」
「まぁ、なんとかなるでしょ」
「うん。判ってる・・・けどさぁぁぁぁ!オレも兄みたいな心境なわけだ!ほら、この2年お前と過ごすことも多かったしさ!だからー・・・もし、なんかあったらすぐ連絡してきていいから。球さんに言えないこととかもあるだろうし・・・」
「・・・うん」

最後は真剣な顔をして頭を撫でてきた竹市にひとつ頷くと頭を下げて輪へと戻っていく柚木。次の部長は柚木に決まっている。何よりも部活へまっすぐだし、サボらない。早さなんて関係ない。ただ真面目でまとめ上げる部長になってくれるだろう。部活のことは何も心配していない。今までだっていい加減な自分の代わりに柚木が仕事を熟し、後輩の面倒も見てきたのだから・・・

早く卒業して引っ越しして球の近くへ行きたい・・・そう思っていたのが今、手塩にかけた後輩がこんなにも立派に成長したことに気付いてなんだか切ない気持ちを心へと刻んだ





「卒業式かー・・・」
「だな」
「来年はオレが卒業式出んだぜ?1年しかねぇ・・・うっわーなんかしんみりするよな」
「やめろ。オレのほうがなんかそれきつい」

卒業式当日、在校生は休みになるため、柚木と柿内は自主トレーニングで走っていた
学校の周りを走ると卒業生が泣いていたり笑っていたり抱き合っていたりするのが見えて未来の自分を重ねる

「お前さー」
「あぁ?」
「オレのこと追いかける?」
「・・・」
「や、まだオレもはっきり志望校も決めてねぇんだけど」

柚木の進路は進学というのは決めていたが、まだ迷っていた。柚木の学力からして、兄と同じ大学よりも上を目指せる。しかし、競泳が強い大学というのは兄と同じ大学が一番いいような気もして・・・

「先のコトすぎてオレは全然・・・」
「だよなぁ・・・お前1年だもんなぁ」
「や、でも・・・」
「んー」
「オレ、バカだから追いかけるのは無理かもなぁ・・・とか」
「あぁ!そうだ!お前馬鹿だった!」

柚木は笑いながら柿内の背中を殴るとスピードを上げて走る。それを追いかける柿内。でも追いつかない

「早ぇんだっつーの!」
「おう。オレ、早いよ!陸上では!」
「・・・」
「でも・・・インターハイ出るから!オレ、もっと早くなるから」
「・・・おう」

柚木がそう笑って柿内も笑った




「いい?流、お米は洗い方も判らないかと思って無洗米を球のところに送っておいたから。あと野菜とかカレーのルウとかシチューのルウも送ったし、お肉もクールで送っておいたから難しそうだったら球に手伝ってもらいなさいよ?あ、でも柿内くんがいるから柿内くんも手伝ってくれるのか・・・そんな心配もいらないか・・・な?」
「うん。母さん、心配しすぎでしょ・・・」
「うーん・・・あ、包丁は本当に気を付けてね?!」
「・・・もうオレ、そんな子どもじゃないんだから」

柚木が兄、球の元へと合宿へ行く日、母は朝からバタバタと色々なものを柚木に持たせたり、確認したりうるさかった。球が大学へ進学するときはこんなにもうるさくしなかったはずなのに・・・

「流はしっかりしすぎてるから大丈夫だと思うんだけどそこが逆に不安なのよ!難しいわ!この親心っ!」
「流ちゃーんっ!!!!オレ、流ちゃんいないと寂しいー」
「そんな長いこといなくなるわけじゃねぇだろ!新学期前に帰ってくるっつーの」
「でぇぇぇもぉぉぉぉ!!」
「お兄ちゃんっ!舞も寂しいっ!ねぇ!舞も行くー!」

弟と妹までも柚木が家を出るギリギリまで柚木にしがみついて離さない。柚木家のアイドルは朝からぐったりしながら重い荷物を抱えて駅へと向かったのだった





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

それは鬼門5 - 07/29 Wed

trackback (-) | comment (0) | その他SS
3年から4年に上がる・・・そんな間に、日置のプロ入りは確定したし、引田のほうも話は進んでいるような噂を耳にはしたが、直接ははっきり聞いてはいない・・・それどころか、最近では休みが合ったとしても予定を合わせたり飲んだりはしていないし、講義ももう消化分でほとんど入っていなくて、ほぼ毎日体育館と部屋との往復だけ・・・

「なぁなぁ、聞いたー?」
「何が?」
「ほらー、バスケ部のー・・・うーん?お前の友達!」
「・・・誰?」
「えええー!お前バスケ部の友達いんじゃんっ!よく一緒にいた奴だってー」

バスケ部の友達なんて引田以外にいない・・・でも、それでも今は友達だなんて思えない
忘れたい。忘れたい。バスケ部なんて存在も忘れてしまいたい

「まぁ、いいや。あいつさー、海外のプロテストこの間受けたらしいよー!」
「・・・へぇ・・・」

海外・・・それすらも聞いていなかった
自分からどこへ行くのかも言わなかったし、言わないから聞くこともなかった。それがまさか国外のものだなんて思いもしないことで・・・

「あいつ試合とかすげぇらしいよー。見たことあるー?」
「ない」
「ふーん・・・オレ、今度バスケ部の試合見に行こうかなぁ・・・お前も行かね?」
「行かない」

日置はそう言って練習着のまま学校を出る。海外・・・?卒業してもたまに、本当にたまにだったら会えるかもしれない・・・なんて希望はどこかへ消える。今よりもずっと会う機会は減る。そんなのは予想していたが、海外だなんて・・・



ダンッ

引田がぼーっと食事を摂っているところに玄関のドアが大きく鳴って思わず大きな体を飛び上がらせた

ダンダンダンッ

誰かの悪戯かなにかかとも思ったが、これはどうやらノックのつもりらしい・・・

「はい・・・?」

ドアを開けると・・・

「・・・竜馬・・・?」

なぜか怒った顔の日置で・・・日置は無言で開いたドアから中へ入っていく

「え・・・何?今日約束してたっけ?っていうか・・・久し振り・・・」
「・・・バスケ部が嫌いだ」
「・・・うん」

それは判っているとでも言うように微笑んで頷く。聞きなれた言葉。毎回ショックを受けていたら心がきっと壊れるから聞き流すことにしたその言葉。いくら日置にバスケ部が嫌いと言われても自分はバスケがやっぱり好きだし、それは変えられないから・・・好きで好きでどうしても好きで、一度だけ触れたいと願っていたら歯止めが利かなくなったあの日・・・触れたら止まらなくて・・・縋るように謝り続けたら快楽に流されてくれた日置に感謝し、わざと距離を少しずつおいていった想い人
嫌いと言われ続けてきっとどこかが壊れてしまったのだと今は思える。壊れてしまったから手を伸ばさずにはいられなくて。そして、離れた・・・

「オレはバスケ部のやつ嫌いだ」
「・・・知ってるってば・・・」
「でも、お前は別だった・・・ホントに特別だった!」
「・・・ごめん」

「特別」だったのにそれを他と同じように「嫌い」したのは自分自身・・・引田の心をギュッと締め付けるその事実

「でもやっぱりオレはバスケ部が」
「もうっ・・・嫌いって言うな!」

怒鳴ってしまったのはもう聞きたくないから。心が拒むから・・・

好きな人から否定される・・・否定され続けるのは苦しすぎて壊れる・・・とっくに粉々になった心を更に痛めつける

「っ・・・アメリカ?」
「え?」
「海外・・・」
「あぁ・・・あれ・・・ヨーロッパの方・・・かな」
「・・・聞いてねぇけど・・・」
「言ってないから」
「・・・オレ・・・ら・・・友達だったよなぁ?お前がオレのことを好きだっつー時点で友達じゃなかったとかそういうこと?」

そういえば、練習着のままだと思いながら日置を見つめる。外周のときにそっと覗いたバレー部・・・いつもこの姿で真剣にコートに立っていた日置・・・恋い焦がれ。甘い胸の痛みを感じながらそっと隠してた夏の熱いランニングのオアシス・・・

「もし、言ってたら・・・どうした?」
「は?」
「言ってたら・・・竜馬は優しいから海外行くやつだしもう会わないから・・・って割り切って卒業まで付き合ってくれてた?」
「・・・な・・・?」
「何も変わらないだろ?関係の発展が望めないから避けたんじゃない・・・いつもバスケ部が嫌いだって言われるのがきつくて・・・矢島連れて来た時、もうダメだって思った・・・あれ以上聞いてたらオレ、泣く。マジで・・・」

あの日、日置が見た顔はホッとした顔でもなく、行かないでほしいという顔でもなく・・・泣く寸前の顔

「じゃあ、もし付き合ってやるっつってたらどうしてたわけ?そしたら海外行くとかオレに話したし、もっともっと話したか?っていうか話したかったか?」
「・・・そんなの・・・」

もしもなんてもう存在しない。過ぎ去った時間は元に戻せないのだから・・・でも、もし、付き合っていたら・・・?きっと・・・

「海外のプロテストなんて受けなかった」

そう。きっと受けなかった・・・幸せでここに留まりたくて・・・その幸せが一分でも長く続くのならばいいと思ったかもしれない

「・・・バスケ部なんて嫌いだ」




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

青春はプールの中で2-7 - 07/28 Tue

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で
部屋を出て行こうとする竹市を掴む
力も本気を出せば球のほうが強いのかもしれない。身長も竹市は3センチ追いつかなかったし、日々鍛えている球になかなか勝てない

「何ですか?」
「・・・ケンカしたまま離れるのは嫌だ」
「今、オレは優しくできないっつってんでしょ」
「たけちゃん、あの・・・」
「前にも言ったけどさ、いい加減そのブラコンどうにかしてくんない?オレだって相当頑張って球さんの大学の推薦受かったんだからね?」
「っ・・・あのっ!嬉しいよ!ホント嬉しいの!ごめん。ごめんっ・・・だから、こっち向いて」

弟への気持ちにまで嫉妬してしまうなんて本当に自分は心が狭い・・・なんて思いながらもそれを直すことなんてできなさそうで。球にとって可愛い弟なのも判っているし、自分にとっても可愛い後輩であることには変わりないのに。いつもしっかりしているだなんて言われていても本当はしっかりなんてしていないし、恋人に甘えたいのも我慢しているのも気付いてもらえないことにモヤモヤする・・・竹市はどうしたらいいのかわからないこの気持ちをため息と一緒に吐き出して振り返る
やっぱり思った通り半泣きで縋りついてくる大きな男が目の前にいて・・・それを可愛いと思ってしまうことがもう負けなのだと諦める

「じゃあ、オレのところ来る?」
「・・・うん。行くから・・・機嫌・・・直して?」
「オレのこと好き?」
「大好きっ!半月も会えないの寂しいっ」
「・・・オレも寂しいって判ってる?」
「たけちゃんもオレのこと好き?」

見上げてくる球の顔を見て頬をつねる

「好きに決まってんでしょ?じゃなきゃなんであんたと同じ大学まで行くのさ」

そう言うと甘い甘いキスを落とす
蕩けそうな顔で見つめられると気分がイイ・・・誰にも見せられないこの顔。弟にだって見せないこの顔・・・

「たけちゃん・・・長かった・・・1年きつかった・・・」
「うん」
「でも、たけちゃんが来てくれるのが嬉しい」
「うん」
「たけちゃん、早く卒業して引っ越ししてきて・・・オレ、待てない。早く来てよ」
「あと少し・・・だよ」

1年の歳の差。一緒にいた1年が濃密すぎて。その1年だって会う時間は限られていたけれど、時間さえあれば会える距離。すぐに会って求められる距離・・・でも、球が大学へ入ってからは求めても求めてもどうにもならない距離。我慢の時間は若い2人には長すぎて会う度に溺れるように求め合った時間・・・

「たけちゃん、学校・・・行っちゃう?」
「うん」
「っ・・・」
「午後から・・・ね」

球が竹市を抱きしめる。好きで好きで好きで・・・狂いそうなほど愛しくて・・・

「たけちゃん、大好きっ・・・」
「うん。知ってる」

頭に触れる竹市の手は温かく、優しかった



「は?」

テンション高く春休みの予定を伝えてきた柚木に対しての返事がこの一言とも言えない短い言葉だった

「だーかーらぁ!!!!春休みはフルで兄貴の大学でプール借りれるのっ!!!」
「や、まぁ、うん。そこは理解した。だけどマジか?」
「そう。竹市さんも一人暮らしするからお前そこ泊めてもらえばいいし!インターハイ!出よう!」
「インハイだと?!・・・マジで言ってんの?」
「言ってる。お前、標準タイムまであと少しだし、勝てる!オレも1500なら勝てる!!!・・・気がする。行こう」

行くだとか行こうだとか簡単に言える。だけど本当に行けるのは一握りで、公立高校を選んでスイミングスクールを辞めた時点で目指すことすら諦めていたというのに、真っ直ぐな目で真剣に言ってくる柚木は本気そのもの

「・・・わかった」
「よし!くっそ!早く春休み来い!兄貴の大学水泳強いから周りもインハイ経験者とかだしテンション上がる!!!」

1度は諦めた水泳への情熱は今までよりも熱い。あの時、実力の差を思い知ってすぐ辞めた水泳。それでも高校で水泳を選び、柚木に出会えたことを心から感謝していた




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

それは鬼門4 - 07/28 Tue

trackback (-) | comment (0) | その他SS
日曜日、部活が終わる1日練習でもつれる足で部屋に戻ってシャワーを浴びる
酒は今日は持って行かなくてもきっと大丈夫。その代りにつまみを少し奮発しようと思いながら熱いシャワーを浴びて汗を流した




「引田ー、鍵、開いてた」

引田の部屋に着くとそのままドアを開けて中へと入る

「あ、竜馬ーお疲れー!」
「おっ!竜馬くん?オレ、矢島!矢島 達朗ー!たっちゃんって呼んでー」

部屋に入るともう既に出来上がっているような引田と矢島の姿。それにしても距離が近い気がしてイラつく・・・その距離で飲んだことなんてない。いつだって机を挟んでいた。なのに、引田と矢島は隣に座って飲んでいる・・・

「・・・つまみ」
「ありがとー」
「竜馬くんはー・・・ビール派なんだよねぇーってのをー卓也から聞いてたからー・・・実家からたくさんビールも持ってきましたぁ!」
「あぁ、どうも」

馴れ馴れしい・・・馴れ馴れしくて腹が立つ・・・別に悪いことなんてされてない。だけど、確実に今、気分はよくない・・・いつもとは違う・・・缶ビールのプルタブを起こすといつもの場所に座る。引田の前・・・今日は引田と矢島の前

イラついてイラついて、つい飲むペースも上がる・・・酔った2人は勝手に自分たちしか判らない話をしてまた疎外感を感じる。今は部活の時間じゃない。なのに入れない空気・・・そこに壁があるような雰囲気・・・

「オレ、トイレ」

イラついたままトイレに立つ日置。そして矢島は両手を引田の肩に掛けて口を開く

「お前の言ってたことと全然違うじゃんっ!冷たい!竜馬ちゃん冷たいじゃんっ!」
「えー?あー・・・ほら、竜馬ってシャイだからー」

トイレに居ても聞こえる2人の声。酔っているから声の調整もできないのか・・・と思いながら用をたす

「もっと気さくなタイプだと思ったー!」
「気さくっていうかー・・・優しいよー!本当はすごく優しいー」
「怖いよ!!!っていうかーっていうかぁ・・・卓也に合わないっ!卓也のほうが優しいからかなぁーオレ、卓也のこと超好きー!カッコいいしバスケ上手いし天才だしー」
「ヤジー酔ってる?お世辞言っても何もでないよー」

全部聞こえている。聞こえすぎていてこのドアを開けるタイミングが判らない・・・ここに自分がいる意味も判らなくなってくる。飲むのなら今日はここに来なくてもよかったのではないか。矢島という男と一緒に2人で飲めばよかったのではないか・・・今日は自分から誘ったわけでもない。飲みたい・・・?飲みたかったか?

「卓也ー、チューしよーチュー!」
「ヤダよ。やめろって」
「いいじゃんーチュー!」

バンッ・・・

思わずトイレから出て思い切りドアを閉めて出てしまう
何がチューなのか・・・なんでこんなにも心を乱されて頭を掻きまわされなくちゃいけないのか・・・

そして少しだけ驚いた顔でこちらを見てくる2人を見て気付く・・・あぁ、バスケ部だ・・・と

「オレ、帰るわ」
「え?」
「なんか2人のほうが楽しそうだしな・・・」
「や、待って・・・竜馬?」

胸が痛い
その痛みの原因がなんなのか日置には判らないが、確実に胸に痛みを感じていた。これは確かに覚えのある感情・・・でも、ここにあってはいけない感情・・・

「竜馬、あの・・・」
「悪い。バスケ部やっぱ無理・・・」
「・・・今までだって・・・」
「うん。悪いな」

靴を履いてドアに手を掛けるとその上から握られ止められる

「何?」
「・・・ホントに帰る?」
「帰るけど?」
「・・・わ・・・かった」

急に手の上から熱が消える。そして少しだけ眉を顰めながら笑って手を振る引田。その笑顔の理由さえ判らない・・・ホッとしたようにも見えるし、行かないでほしいようにも見えて・・・

「竜馬くん帰っちゃうの?全然飲んでないのにー?っていうかバスケ部無理ってなによー?」
「・・・オレの鬼門。バスケ部だから」
「ええー!なにそれぇー!でもでもー卓也とはずっと仲イイじゃーんっ!」

仲イイ・・・確かに。それは否定しない。今まで仲良く過ごしてきた・・・でも、この間から関係は変わっている・・・仲イイという定義がどこにあるかすら判らなくなって

「よーし!じゃあお土産で持って帰ろう!な?折角持ってきたビール!クーラーボックスは返すからこんなにあっても無駄だしー!」

矢島はいそいそと近くにあったビニールにビールを詰めて日置に差し出す

「・・・ありがとう」
「バスケ部嫌いだとか鬼門だとか言わずにさー、また今度ちゃんと飲もうよー!ほらほらー、今日は確かにオレら先に出来上がっちゃっててつまんなかったよなぁー」

ニコニコと笑ってくる矢島を見て「悪いやつではないのかもしれない・・・」とも思える。だけどイラつく。バスケ部は鬼門だという先入観だけではない。やたらと引田にべたべたしてるのも、バスケ部にしか判らない話だとか、入れない空気だとか雰囲気だとか・・・

扉を出るとため息を吐いて自分の部屋へと足を向けた。全然酔えない。きっと貰ったビニール袋の中身を全部飲んでも今日は酔えない・・・酔いたい。酔って、酔って忘れたいこの理解できない感情を




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

青春はプールの中で2-6 - 07/27 Mon

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で
柚木は柿内を駅まで送ると戻った部屋に球も戻って来る

「さて、流ちゃん?」
「何?」
「春休み、泳ぎたくない?」
「え?泳ぎたい」
「よし!決まり!」
「何が?」

球からのその話は突然。今まで出たこともない話

「うちの大学おいでー」
「え!」
「泳げるよ」
「え・・・ホント?!」
「うん。先輩に話通しておいたー。オレの部屋で泊まればいいだろ?インターハイ予選に1500間に合わせるには春の練習は必須だよなー。毎年早ぇんだよ。予選」
「マジで?イイの?」
「雑用とかやらされるだろうとは思うけどそれくらい流ちゃんできるっしょ?」
「やる!なんでもやるっ!」

柚木は何度も頷く。嬉しくて嬉しくて仕方ない。春休みは市民プールで春の水泳教室があるから自由に泳げないし、どうしようかと柿内とこの間話していたところだった

「あ・・・」
「ん?」
「柿内も・・・ダメ?」
「え?!」
「柿内ももう少し泳ぎこませれば標準タイム切れると思うんだ!柿内も一緒に!ダメ?!兄ちゃん!」
「ちょ・・・今、今ここで兄貴じゃなくて兄ちゃんとか天使みたいに呼ぶ?!あーもー流ちゃんかわいすぎるーーー」

球はたまらず抱きしめる。ただ、可愛くて。弟の願いをなんでも聞いてやりたくなる
似ていない弟。体型も顔も自分や秀とは違って、妹とも違って・・・1番可愛くて仕方がない弟が彼だった

「でも・・・な、オレの部屋、狭いわけよ。流ちゃんくらいしか泊めてやれないかもなぁ・・・って」
「・・・竹市さんは?そっちにいつ引っ越すの?竹市さんに頼むのは無理?」
「あぁー・・・あぁ・・・そっか。たけちゃんがいるか・・・卒業式終わったらいろいろ準備するって言ってたけど・・・早めに部活合流して入学式前から泳ぐ予定だし・・・」
「竹市さんに頼んでもイイ?オレ、柿内にインターハイ出てほしい」

弟の口から何度も繰り返される柿内の名前に嫉妬する。やっぱり好きなのか・・・と思うとなんとも言えない気分になる

「・・・カッキーが大事なんだな?」
「うん」
「え・・・」

さっきまで否定していたのが肯定に変化する・・・

「好きかどうかっていうのは恋愛感情なのかまだあやふやな部分もあるけど、大事。これはホント。確実に思ってる」
「そっか・・・」
「だから、一緒に泳いで上を目指したい。種目も違うし、オレはリレーのメンバーですらないけど、オレは1500ならインターハイ目指せるし、柿内ももう少しで標準タイム切れるから。行くなら一緒がイイ」

球は弟の頭を撫でる。強い意志・・・今までも強いとは思っていたが、今まで以上に強くなった。きっともう兄や弟と比べられてひっそりと涙する柚木 流はどこにもいない

「うん。だね・・・じゃあ、お兄ちゃんはたけちゃんにお願いしてあげる。お母さんにも言っておくよ」
「うん」
「お母さんに先に食糧大量に送っといてもらわないとな・・・お米とか・・・」
「あぁ、それ必要!」

柚木は笑うと球にまた頭を撫でられる。子どもみたいにされているようで頭を撫でられるのは嫌いだった。それでも今、大きく温かい兄の手が心地よく感じたのだった







「ってわけなんだよねー」
「・・・」
「だから、カッキーの春休み中、預かってくんない?うちは流ちゃんだけで手一杯ー」
「・・・2週間くらいだっけ?」
「うん。そう」
「球さん、入学式終わったらなんかの合宿でしばらくいないんじゃなかったっけ?」
「うん。強化合宿ある」

球は春休みの話を竹市に初めて話す。渋ってはいるがきっと了承してくれるものだと信じて・・・なんだかんだ言っても竹市は球の言う通りにしてくれてきたのだから

「じゃあ・・・あれだな。しばらくおあずけ?」
「・・・は?」
「あぁ、だってそうだろ。折角独り暮らしすんのにすぐに柿内が家に来て、あんたとしばらくゆっくり過ごせると思ったのもおあずけっつーことな?別にいいけど」

球は青い顔で首を振る

「ヤダ」
「でも、そういうことだろ」
「・・・ムリ」

球が竹市のTシャツを掴むが竹市は目も合わせてくれない。帰るまであと時間はほんの少ししかないのに、これが終わったら卒業式まで会えないのに。またしばらく遠距離になってしまうのに・・・

「たけちゃん・・・こっち見てよ」
「あーあー・・・ホント勝手だよな。球さん・・・オレ、たまにイライラすんだよね・・・今もだけど」
「え?」
「いっつも我慢してんの自分だけだとか思ってるところとか?オレが怒ってるとそうやって可愛く縋って許されると思ってるところとか?」

竹市はため息を吐くと球に掴まれたシャツを引っ張る
今日だって、午後からの登校にしたのは球のため。大学だって球のいる大学にしたし、ずっと水泳でも頑張ってきた・・・いつの間にか全て球のために動いている自分の人生。たまにこのままでいいのかと思うが、それでもどうしてもついて行ってしまう。引き寄せられてしまう・・・

「たけちゃん、怒ってる・・・よね」
「うん」
「あの・・・でも・・・流ちゃんをどうしても喜ばせたくて・・・どうしたら・・・」
「・・・あんたがうち来て、ユズと柿内をあんたの部屋に泊まらせたら解決・・・かもな?」
「それもダメ!」

球は頭を振る。弟のことが好きだという柿内を一緒の部屋に泊めるだなんて。しかも、その間監視がないだなんて・・・

「ふーん・・・あぁ、そう」

竹市は冷たい目で球を見ると立ち上がる

「なんか、やっぱり学校行くわ」
「え・・・」
「ちょっと今、あんたに優しくできないし。余計イラつきそう」



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

それは鬼門3 - 07/27 Mon

trackback (-) | comment (0) | その他SS
一度寝たものの、日常は変わらない。学校へ行って部活へ行って・・・そしてたまに顔を会わせてあいさつ程度・・・
告白されて、寝こみを襲われて抱いたというのにあれはまるで夢だったかのような振る舞い。ランニングをしながらバスケ部のいる第1体育館を覗いてみる

皆、同じような身長、同じような練習着・・・それでも引田の姿はすぐに判る

「・・・」

ドリンク補給をしながらチームメイトと笑う引田の姿・・・そこへ自分の入る場所なんてない。お互いに練習中だし、部活も違う日置は声を掛けることもできずただ走り去るだけ・・・
なぜ自分が気にしなくてはならないのか
そもそも、あの日、あの時、あんなことになったのは全部引田のせい。やっぱり鬼門・・・こんなに心を乱して頭を掻きまわしてくるなんてバスケ部は鬼門・・・


「竜馬ー!ちょっと金貸してー」
「あぁ?」
「今日財布忘れた・・・」
「んー何食うの?」
「A定食ー!」
「・・・んじゃお前オレのも一緒に取って来いー」

学食で食券を買っているとそう言いながら後ろからやってきた引田の分まで食券を買ってまとめて渡す
昼休みはとっくに終わっていて、空いている学食。講義の空いている人間の特権・・・

「なぁなぁー!おばちゃん大盛りにしてくれたー!」
「お、すげぇ。流石タクちゃんー!」

人当たりのよさそうな笑顔。そして、人懐こく喋りかける性格。引田は老若男女に好かれるタイプ・・・

「いただきまーす」
「あれ?竜馬ってこの時間講義なかったっけ?」
「あぁ?自主休講」
「うっわー悪い子だー!単位落としても知らねぇぞー」

今日のA定食は唐揚げで、この量がこの値段で食べられるのは学食ならでは。特にここは運動部に力を入れているためか、量が半端ない

「全部計算して授業出てるから大丈夫」
「その辺はぬかりないわけかー・・・今度の土日さー、試合で月曜日は部活休みなんだけどさー、日曜の夜飲まねぇ?バレー部月曜日休みだろ?」
「あぁ?いいけど・・・」

毎週月曜日は休息日として大抵休みで・・・そんな休みが合った日の前日は一緒に飲むのが恒例・・・でも今回は・・・

「でさー、うちの部活の矢島がさー、竜馬と飲んでみたいって言ってんだけどー」
「あ?」

いつも2人だけの飲み会。日置の部屋だったり、引田の部屋だったり・・・でも、他の人が混じることは今までなかった
それは決めたわけでもなく、暗黙の了解というぐらい・・・他人が来るというのは正直、いい気はしない。何しろ・・・バスケ部である

「あぁ、バスケ部だからイヤ?」
「・・・まぁ、そうだけど・・・そうじゃなくて・・・うーん」
「矢島さー、酒屋の息子でさー・・・オレ、いつも安く矢島から買わせてもらってんだけどさぁ」
「・・・ふーん」

警戒・・・
この間のことから警戒して他の人を呼ぶような気がして面白くない
なぜ、引田が警戒するのか。警戒するのならば自分の方ではないのか・・・襲われたのは自分で、確かに気持ちよくしてもらって、気持ちよかったけれども、好きだと言われ、手を出されたのは間違いない

「いっつも部活休み前になると矢島に酒頼むからさー・・・誰と飲むのー?って言われてさぁ・・・」
「なんでオレと飲みたいわけ?」
「んー・・・オレがいっつも飲んでる相手だから?いや、わかんねぇけど」

断る理由を探す・・・でも、いい言葉は見つからない。見つかるわけがない
バスケ部だから嫌だ・・・引田もバスケ部で。知らない奴と飲むのが嫌だ・・・そんなのもよくある話・・・見つからない。見つからない見つからない・・・

「ダメ?」

その聞き方はズルい・・・そう思いながらつい「ダメじゃない」と答えてしまう自分がもどかしかった。この間のことをもっと話したかった。でも、なかったことにされている・・・だから・・・だから。

「よし。じゃあクーラーボックス借りて置こうっと」
「お前ん家?」
「うん」

大学近くの学生マンション。一番近いコンビニは大学の中・・・そんな学生マンションの居住者は特に運動部がほとんどを占めている。部活が遅くなってもすぐに帰れる場所にある学生マンションだが、日置と引田は違う学生マンションに住んでいた。ほんの数分の距離・・・それなのに今日は久しぶりに会って話していることを思い出して避けられていたのかとふと気付く

「お前さー・・・」
「うん?」
「オレのこと避けてた?」
「え?なんで?避けてないけど?」
「・・・この間の飲みから・・・あんまり会ってない」
「この間ー?そうだっけ?」

飲んだだけ・・・飲みすぎてその後に何が起こったかなんて無かったことにされているような気さえするその言葉。なかったこと・・・本当にあったことなのか・・・それさえも判らなくなってくるから人間の記憶と言うのは本当に信用できない

「日曜の部活終わったら家来てよ」
「ん。行く」

なかったことにされて、更には次の約束も別の人間が一緒・・・なんだか告白される前の方がよっぽど好意が見えていた気がする。でも、それは告白された今だからそう思うことで、過去のことなんて曖昧。意識してからのほうが人の感情、行動は余計なことまで考えてしまう



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more