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つれないキミと売れてる僕5-15 - 08/31 Mon

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欲望を追って追ってそのあとの気怠さ。体を起こすとそっとベッドを抜けてパソコンをつける
包帯を外すとまだ多少痛みと違和感のあるその手でキーボードを叩く
速度はいつもよりも多少足りないが、それでも携帯や片手でキーボードを打つよりもしっくりくることを確認した
須野のところへ行く準備。どこでも仕事はできる・・・環境さえ整っていれば。相手に合わせるだなんて昔の自分が見たらどう思うのか。歳をとって変わった?いや、相手が須野だから?

甘くなった自分に少しだけ笑って里見はタバコに手を伸ばし、少し考えるとそれを戻す

『タバコ控えない?』

別に須野の言うことを聞くわけじゃない。でも、確実に須野の言葉に影響を受けている

「はぁ・・・やばいだろ。これ」

どんどんハマっていく気がして。どこがいいのかだとかなにがいいのだとかそんなのは全然分からないのに須野が自分の中で大部分を占めている
いつからか・・・

出逢ってから一度も消えたことのない須野の存在
ここにいるといつもアピールされ続け、毎日好きだと言われ・・・

「おはよ・・・」
「・・・はよ」

須野が里見に微笑んで立っている。そして里見の頬にキスをして「大好き」と囁かれる

「・・・」

里見にとって須野から好きだと言われるのは毎日当然のこと
電話もしなくなってからその愛の言葉を聞けなくてタバコが余計増えていた気もする

「?」
「・・・オレも」

その後に続く言葉がなくても須野の顔はとびきりの笑顔

「里見、今日はなにがしたい?」

遠足前の子どものようにワクワクが抑えきれない表情の須野は昔のようで・・・失ったわけではないことに気付く
須野の求める言葉を紡げば何倍にもして返してくれる・・・

「お前はホテル調べて予約すんだろ?」
「あ、そうだった!・・・じゃあ、早めに決めて予約して、行く準備も進めないとね」
「んー」
「足りないもの買いに行こう」
「おう・・・」

キーボードを打つ手をふと止める

いつだって自分のしたい事ばかり優先。じゃあ須野は何がしたい?そう考えて須野を見る

「うん?」
「・・・お前は久々のオフだろ?」
「うん」
「・・・何がしたい?」
「え?!」

まさか里見に聞かれると思わなくて思わず驚きの声が大きくなったがすぐに微笑んで里見の足元に膝をついて抱き締める

「僕は里見といたい」
「・・・いや、だからしたいことねぇの?」
「里見のそばにいて里見の世話できたら幸せだもん」

そんな答えが返ってくるのはどこかで予想していた。須野の独占欲。里見の身の回りのことは誰にもやらせたくない。ホントはホテルの清掃ですら入って欲しくない。洗濯だってクリーニングなんかに出させたくない。里見の香りでさえも部屋に閉じ込めて誰にも触れさせたくない

「どっか行きたいとか・・・」
「あのねー・・・僕、里見を独り占めしたい」
「あ?」
「外出たら里見が他の人に見られちゃう・・・勿体無いでしょう?」
「・・・なんだそれ。見られたくらいじゃ減らねぇし!」
「僕の神経はすり減るよ」

確かに普通よりも多少、いや、かなりモテるのかもしれないが、それでも普通の綺麗な男だというのに須野にとって里見は輝きすぎていてみんなに狙われている気すらして気が気ではない
だけど、本当に閉じ込めておくのは里見のためにもならないことはちゃんと判っているから目を瞑っているだけ

「お前の独占欲ハンパねぇのな」
「うん。ごめんね」
「・・・お前だけ特別に許してやるよ」

里見にそう言われて「特別」という言葉に感動を覚えながら里見をきつくきつく抱き締める
里見の特別になりたかった。ずっとずっとずっと。好きになって欲しくてどんどん叶っていく望みが怖い。これ以上ない程の幸せ。

「・・・どうしよう。里見」
「んー?」
「あと、僕の願い叶ってないの少ししかない」
「は?」
「全部叶ったら僕、どうなるの?」

幸せすぎて怖いとでも言うような須野の頭を撫でる

「全部叶ったら幸せだっつって叫べばいい」
「いや、今もう叫べる」
「うるせぇからここで叫ぶなよ」

叫ぶ代わりに抱きしめている里見にキスをして「好き」と囁いた

須野の最後の願いが叶うのは最期のとき。まだまだ叫ぶには早いということ。でも確実に幸せの空気は2人を包み込んでいる


つれない君と売れてる僕 5幕 おしまいおしまい



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つれないキミと売れてる僕5-14 - 08/30 Sun

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バスルームを出て体を拭くのも全て須野が甲斐甲斐しく世話する
下着を履くのもいつものバスローブを羽織らせるのも

「手、ギプスつけるね?」
「あー・・・邪魔くせえなぁ」
「うん。里見の綺麗な手が隠れちゃうもんね」

優しく里見の手を撫でて隠れてしまうのを惜しむように優しいキスをする
そのまま優しい手で里見の手をギプスで覆うと出ている指先を撫でて添え木をしながら包帯を巻いていく

「里見・・・要くんをここで家政婦に使うのはやめよ?」
「・・・この手で全部家事も食事もしろって?オレの手は器用だけどそれは右手の話だろ。左じゃ全然できねぇよ」
「うん・・・でも、きつい。要くんは里見のこと好きだから心配できつい・・・だから・・・こっち来てくれない?あ、ホテル代とか全部僕出すから!・・・ホテルなら身の回りのことしなくても・・・いいよね?もっと近くにいたい。ずっとそばにいたい」

信じていないわけではない。でも、不安でもやもやして仕方がない。里見はか弱いわけじゃない。しかし、利き腕をケガしている今じゃ心配は倍増する
伊月が里見のファンだということもずっと前から知っていたし、里見の素顔を知ってからは「友達なんだよね?」と何度も聞いて来てうるさかった。里見に惚れたと確信し、絶対会わせたくないと思った。でも・・・出逢ってしまってまた不安

「・・・ネット環境ちゃんとしてるとこで予約も全部やってくれんの?」
「やる!」
「んー・・・」
「いい?里見、そばにいて。ずっとずっとそばにいたい」
「ホテルに缶詰とかやたらとある仕事も片付くかー」
「・・・い、今から探すっ!!!」

そう言って立ち上がった須野の腕を掴んで止める

「おい、まだ満足してねぇぞ?」
「え?」
「あれで終わりのつもりか?」
「や、え?あ、あ・・・いいの?もっと、もっといいの?」
「キスマークは止めろ。わかんだろ?オレ、白いからか知らねぇけどアザになったら全然取れねぇし」

須野は何度か頷くと里見の唇を吸う

「じゃ、じゃああの、朝になったら探して予約します」
「んー」
「里見、あの・・・」
「あぁ?」
「体辛くなんない?」
「中途半端な今が辛ぇな」
「っ・・・」
「元気だなー・・・お前のパンツめちゃくちゃ持ち上がってる」
「も、里見・・・これ以上狂わせないで・・・」

狂えばいい。自分しか見えていないのも分かっている。でももっともっと狂えばいい
美貌で人を狂わせられることが里見にとって1番の誇り



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つれないキミと売れてる僕5-13 - 08/29 Sat

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「里・・・見っ!」
「なー、見ろよ。オレ、すげくね?こんなことまでできちまう」
「ふっ・・・キツ・・・動かないで・・・ねっ?」

須野の上に乗ったままの里見がその昂りに上から覆い被さり、そのまま体内へと飲み込んでいく

「なぁ、須野ー」
「んっ・・・うんっ?」
「すっげぇエロい顔してんぞ?お前」
「里見がっ・・・させてるんでしょっ」
「そーオレがさせてるけどな・・・オレもなんでお前なのかなーってな」
「っ・・・?」
「たまんねぇんだよ。お前のその顔見たくてやりたかった」
「っ・・・や、出ちゃうって」

里見の動く腰を手で押さえるが、この状況が須野を追い詰めていく

「須野ーここ風呂場だぜー?」
「っん?」
「出してもすぐ掻き出して次できる」
「っ!・・・なんっで・・・今日はそんなに挑発ばっか・・・」
「・・・わかんねぇの?」

里見は左手で体重を支えると大きくグラインドさせた

「あ、ダメ・・・ダ・・・メっ」
「会いたかったっつってんだよ」
「っ・・・」

掴んだ腰を引き寄せると何度か奥へと突き進む。精を奥へと放つように

「はっ・・・ダメ。のぼせた」
「早ぇよ」
「里見にのぼせた・・・やばい。幸せすぎて夢じゃないの?これ・・・何?会いたかったって・・・あーもーダメ。死ぬなら今がいい」

今がまさに幸せだという須野の顔は悪くないな。と思いながら里見はキスを落とす

「死ぬならオレの手が治ってからにしろ」
「うん。死ねない。里見残して死ねないです」
「オレより長生きする気か?」
「うん。里見の生きてる姿最期まで見てから死ぬの。里見がいなくなったらそこで僕の全ては終わるから」

それは出逢った時からの密かな望み。最期の時まで共に生きたい

「なんだよ。オレが死んだ時にゃきっと小説が記念でドラマ化されたり映画化されっからその主演務めてから死ねよ」
「ヤダよ。っていうか長生きして下さい」
「まぁ、今すぐ死ぬつもりもねぇけど」
「タバコも少し控えない?なんか最近量増えてるよね?ストックがすごい勢いでなくなってくんだけど・・・やめろとまでは言わないけどさぁ・・・僕も人のこと言えないし」
「うっせぇ。っつかお前、自分だけ満足して終わる気かよ。オレ、全然なんだけど」

まだ繋がったままの2人。須野は少しだけ笑うと里見を抱えてそのまま立ち上がる

「なっ!!!」
「今回の役作りでも鍛えてたから結構力あるでしょ?」
「っつか・・・っ・・・これっ・・・怖ぇって」
「あー、手も痛いよね。一回抜くね?」
「っ・・・」

右手が使えないからしっかり掴まれない里見の代わりに壁に押し付けた里見の背中を支えて中から欲望の塊を引き抜く
放った白濁が足を伝ってシャワーの水と共に流れていく

「後ろ、流すね?」
「んっ」

しゃがみこんで、さっきまで自身が入っていたそこへと指を這わすと同時に里見の昂りを口へと収める

「っ・・・あー、やべぇ。これ気持ちいい」
「ん・・・」

須野の濡れて落ちた前髪を上げると見上げてくるふたつの瞳

「飲む?」

ひとつ頷く須野へデコピンを飛ばすと「変態」と言いながらもその表情は悪くないという顔

「お前だけだぞ?オレにこんなことできんの」
「ん」
「お前がいねぇとタバコ増えんだよ」
「・・・?」
「・・・達けそ・・・出していい?」

里見の言葉の意味が分からない。でも、きっと悪い意味じゃない・・・でも今はそんなことどうでもいい。里見の快楽のために口内へと神経を集中させた



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つれないキミと売れてる僕5-12 - 08/28 Fri

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2人が出て行くと急に静かになる部屋

「・・・えっと、ただいま・・・ごめん」
「んー」

里見のそばに駆け寄ると困った顔で里見を見上げる
抱きしめたい。キスしたい。でもその前に伊月のことも聞きたい。そして今まで黙っていたことを謝りたい

「何?」
「あの・・・えっと・・・」
「風呂、行くか・・・」
「え?」

スッと横を通り抜けられると須野の腕は行き所を失くして宙を掴む
怒っているのかと床を見つめると後ろから蹴られて踏まれる

「?!」
「風呂行くかって言ったんだけど?」
「え?あ・・・一緒に?!うん!うんっ!」

慌てて振り返って立ち上がると里見の後を追いかける
洋服を脱ぐとギプスも外して床へと落とす。音とともに痛みが走ったが、すぐに須野の手が優しく里見の手を撫でた

「まだ痛い?」
「痛い」
「あとで包帯も新しいの巻くね」
「んー」

スルスルと外される包帯の下に変色した指。その色は里見の背中の色とよく似ている

「里見、会いたかった」
「んー・・・」
「え?あの?里見?」

膝の上に乗ると笑ってキスをする

「葛西に感謝しとけよ?」
「え?」
「オレが仕事終わらなくてお前をさらってこいって言ったらこうなった」
「・・・監督の用事って葛西が作ったのかな」
「そうじゃね?その代償にオレは脚本までやることになったから余計に仕事増やしたんだ・・・オレにも感謝しろ」

里見の体を抱き寄せると鎖骨に口付けする。キスマークをまたつけられるのかと身構えるが、優しいキスは跡など残さないで軽く触れて離され、また位置を変えて落とされた

「里見も会いたかったってこと?」
「んー」
「あー、なんかやばい。幸せすぎて泣く」
「笑え」
「え?」
「なんかお前、最近泣いてばっかでオレが泣かせてるみたい」

須野の鼻を軽く噛むと抱きしめられる

「笑ってるよ」
「伊月見ててお前の笑顔思い出した」
「えー」
「昔はあんな顔してたのに最近全然笑わねぇ・・・オレのせい?」
「え?なにそれ」
「伊月見てると懐かしかった・・・似てないけど似てるよ。お前ら」

里見がそう言いながら微笑むけれど、須野は伊月を見ていたという里見に嫉妬する
誰も見て欲しくない。これは独占欲

「なぁ、昔の方が楽しかったか?」
「楽しかったのは・・・どうかな。そうかも・・・でも、今の方が幸せ」
「・・・そうか。幸せなのか」
「うん。里見に触れられるのがすごい幸せ」

幸せと言ったその笑顔はあの時の笑顔とは違うが、今の須野のきっと1番の笑顔。失くしたものもあるのかもしれない。でも、それでも手に入れたものは他とは比べようもないほど大きな大きな幸せ



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つれないキミと売れてる僕5-11 - 08/27 Thu

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「遅くまで悪かったな」
「いえ、大丈夫です。明日と明後日は来なくていいってことですよね?」
「おう」

今日は仕事があったという伊月に家事はしなくていいとは言ったものの、いつものように家事を静かにこなし、終わったのはいつもよりも大分遅い時間
お金の入った封筒を渡すと頭を下げる

「ホントは要らないんですけどー」
「そしたらオレのこと口説くだろ?お前」
「ええ。口説きます」
「だから金渡す」

伊月はため息を吐くと封筒をポケットにねじ込んだ

「っつかさー、兄ちゃんの恋人寝取ろうとかお前の方が性格悪いんじゃね?」
「皐月先生より?それはないですね」
「おい、言うじゃねぇか・・・」

須野と異母兄弟だとバレてからの伊月は今までよりも伊月らしさを出して里見に接する。そんな伊月の笑顔がまた昔の須野を思い出させて里見は懐かしさを感じながら微笑んだ

「里見ー!ただいま!!!!!・・・な、え?は?!」

突然、部屋に飛び込んできた須野は伊月の姿を見て固まる

「あー、寛人くん・・・おかえり」
「な、なんで?!要くん?!」

帰ってくるのが明日だと思っていたのに、早く帰ってきた須野を見て里見はため息を吐いた

「どういうこと?なんで?」
「あー、まぁ、オレにケガさせたのがお前の弟だったっていう話なんだけどな?」
「・・・ワザとじゃないよね?」
「なっ!寛人くん!それはないよ!大好きな皐月先生にそんなことするわけないでしょ?」
「要くんの場合は分からない!」
「はぁ?!」

深夜に、里見の部屋で兄弟喧嘩が発生し、里見は頭を抱えながら葛西に電話をした



「なーに面白いことになってんの?」

葛西が里見の部屋へ来ると須野が伊月と喧嘩をしていて、里見は離れたソファでそのケンカを見守っていた

「・・・須野ちゃんってケンカできるんだな」
「だろ?オレも初めて見る」
「止めないの?」
「まぁ、そのうちやめるだろ」

葛西も里見の隣に座るとタバコに火を点けて須野と伊月の喧嘩を見つめる。手を出し始めたら止めようと思いながら・・・

「最初から寛人くんが皐月先生が恋人だって言ってくれればこんなことしなかったかもしれないでしょ?」
「言ったとしても要くんは里見の所来てたでしょ!っていうか言ってたら絶対理由つけて僕の所しょっちゅう来てたに決まってる!」
「寛人くんさ、皐月先生が手をケガしてるのにこないだ酷いことしてたじゃん?!皐月先生、外も出られず大変だったよ!シーツ洗うのオレも大変だった!」
「っていうかなんで里見にバラしてるの!僕に兄弟いるとか!」
「オレじゃないっ!皐月先生は知ってたし!」
「はぁ?!僕言ってないのに知ってるわけないっ!」

須野が里見を見ると「知ってたけど?」と言う里見。それに驚いて目を丸くする須野

「あ、オレも知ってたよ?」
「なっ・・・」

葛西も手を上げてそう言うと須野は口をパクパクとさせて次の言葉が出てこなかった

「お前の父親なんて昔から予想はしてたさ。なぁ?」
「だよねぇ」
「・・・いや、待って・・・何で?」
「春子の様子から?」
「優子さんのお葬式のあのときとかお店のテレビで高砂が出てくると即消すやつとかねー」
「あぁ、あれ、すっげぇ不自然だよな」

須野の母、優子の親友だった春子と因縁があってもおかしくはない。優子と須野を捨てた男なのだ

「・・・ごめん」
「あー?」
「ずっと2人に隠してた」
「葛西は別としてオレに隠してたのはムカつく」

葛西は笑いながら「オレを仲間外れにすんなってー」と言うが、里見はタバコを灰皿に押し付けると立ち上がる

「オレらがバラすとでも思ったか?」
「そうじゃなくて・・・」
「今は仲良いから?」
「・・・」

須野が下を向く。里見は家族を亡くし、葛西は縁を切ってしまった。なのに自分だけ実は父とも弟とも仲がいいだなんてとても言い出せなくて・・・

「オレらそんな小さい器じゃなくね?」
「お前が良好な家族関係があるっつーのはオレらも嬉しいことだと思うけど」
「・・・だって・・・」
「須野ちゃんは優しいなぁ」

葛西に背中を撫でられて涙が出そうになる。優しさに触れて涙腺が緩んでしまう
幸せすぎて泣きそうで・・・胸が苦しくなってしまう

「寛人くん、あのさ・・・オレ、寛人くんの恋人どんな人だろうって思ってたんだよ」
「・・・すごい素敵な人だったでしょ?」
「性格はよくないと思うけどね」
「里見を悪く言ったらホントに怒るよ」
「うん。でも、寛人くんは想われてる。だから安心した」
「・・・」

想われている。そう聞こえた気がして里見を見る。勝手なことを言われてため息を吐いている里見・・・想われている?想われている・・・

「伊月ー、帰ればー?」
「・・・はい」
「里見の言うことは聞くんだ?」
「寛人くんのヤキモチ妬き屋ー」
「うるさいよ!」

須野に舌を出す伊月の背中を押しながら葛西は笑って一緒に部屋を出て行く。親友でも邪魔できない時間。2人だけの時間のために




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つれないキミと売れてる僕5-10 - 08/26 Wed

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「とりあえず、次、いつオフなんだよ」
『来週、別の撮影で少しそっちに帰れるけど、時間あるかわからない。もしかしたらそのまま向こう帰るのかも・・・』
「それ、オフじゃねぇじゃん」
『・・・うん』

里見と付き合い始めて1年。それまでがむしゃらに里見を求めすぎないように仕事を入れてきた。そしていつの間にか築き上がった今の場所。仕事を抑えようと思っても急に止まれず、仕事がなくなるよりは・・・と我慢している今・・・

「そうか・・・しばらくオフなしか」
『里見、あのっ・・・』
「んー?」
『やっぱり来て・・・欲しい。会いたい。会いたいよ』

普段ワガママも言わない男からのお願い。それは里見の口元を緩ませるお願い。今までならめんどくさかった。会いたいなら来ればいい。なぜ会いたいと言われて自分が足を向けなくてはならないのか・・・わからなかったのに、今はそれが分かる気がした

「仕事終わったら行くかな・・・」
『ムリはしなくていいけどっ・・・会いたい』
「期待しないで待ってろ』
『里見・・・愛してる』

電話を切ると長いため息を天井に向かって吐き出す
仕事がひと段落つくのはもうすぐで・・・須野の撮影場所までどう行くかを考え始めた




「葛西ー、須野をさらって来い」
「は?!」

終わらない原稿にイライラしながら里見は部屋に来ていた葛西にそう言い放つ
終わりが近いと思っていた仕事は修正が大幅に入って締切に追われる。予定外だった。こんなこと里見にとってはあまりないこと

「さらってきたらあれだ。脚本もやってやる」
「・・・本当にさらってこようかな」
「あー、くそ・・・やっぱ邪魔」

里見がギプスを外し、指の包帯も取るとまだ変色したままの指・・・

「ちょ、光!」
「パソコン打てないとやっぱ速度上がんねぇ」
「・・・須野がいたら速度上がるの?」
「上がんねぇよ。バーカ。でもお前に八つ当たりする時間は短くなんだろーな」

葛西は「だよねー」と言いながらも携帯を取り出すと里見の手を握って動かさないようにまた包帯を巻く

「もしもしー?うん。オレー!ちょっとさーお願いあんだけどー」
「?」

葛西が談笑している相手なんて誰かも分からないが何か交渉しているらしく、最後は「ありがとー!すまんねー!」と言って電話を切った

「はい。須野ちゃんさらってくる交渉成立ー!光っ!脚本もね?」
「・・・は?!」
「ん?今、ちょーっと裏工作?」
「・・・はぁ?!」
「光忙しくなるねぇー。今度本出すのも決まってんでしょー?で、連載に脚本?いやぁ、売れっ子すごいわー」

葛西はニコニコと笑いながらギプスまではめると里見の背中をポンポンと叩いた

「須野、2日だけだけどオフにしたよ」
「・・・」
「オレの交友関係舐めちゃダメだってばー!」
「・・・どうやって・・・」
「それは秘密ー!脚本ね!ね?!」

葛西には軽々しく頼みごとはしてはいけないと思いながら里見は仕事を再開した




「え?・・・明日、明後日撮影休み?なんで?」
「なんかよく分からないが、監督に予定入ったらしい」
「じゃ、じゃあ帰っていい?!山口さんっ!」
「・・・言うと思ってチケット買ってきた」
「さすが!!!あー、どうしよう。電話!!!・・・はしちゃダメだった。メール・・・も邪魔か・・・うわー!言いたいーーー」

マネージャーの山口から言われるとテンションの上がった須野は最近見せなかった笑顔を山口に向ける。普段、冷静そうに見える須野は里見のことになると突然元気になる。それは昔から判っていたことだが、今日はまたそれが特別大きい気がした

「里見くん、ケガ大丈夫なの?」
「痛そう・・・僕が代わりたい」
「ま、酷いケガだったらお前仕事放り出しそうだから痛くても大丈夫ってとこか」
「利き腕だから色々大変そうだよ。仕事にも支障出てるし」

須野はため息を吐きながらも携帯と財布をポケットへとしまう

「・・・いや、待てよ。お前何してんの?明日のチケットだぞ?それ」
「うん。でも頑張れば最終間に合うでしょ?」
「は?!オレの努力は?!」
「ありがとう」
「いや、っつか・・・はぁ?!」
「今日帰れば2日泊まれるから」

須野の気持ちはもう里見のすぐそば。今すぐ帰って抱きしめたい




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つれないキミと売れてる僕5-9 - 08/25 Tue

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伊月が帰るとしばらく携帯で文字を打ち込んだあと、ふと思い出したように電話をする

しかし、鳴るのは電子音だけ。時間が自由になる自分とは違って時間に縛られている須野を思い出す

「・・・電話するなっつったな・・・そういえば」

携帯を机に投げると里見はソファに寝転がって天井を見上げる
右手の簡易ギブスを外すと少し細くなった手を握るが痛みが走ってすぐに右手を抱きしめる

「痛ぇ・・・」

あの日、須野に電話するなと言ってから何日経ったか・・・着信を遡るとほんの数日のこと。でも、毎日何度も電話をしてきた須野からの電話がないだけでずっと長い間声を聞いてもないようで少しだけ苦しい

次はいつ帰ってくるのかも知らない。もっと大怪我でもしたら帰ってくるのだろうか・・・消えかけたキスマークが寂しいだなんて口が裂けても言えないけれど、今なら好きだとちゃんと言ってやってもいい・・・そう思ってもう一度電話を掛けた

電話に出ない須野から折り返しの電話もないまま日付が変わった。掛けるなという言いつけを守っているのだろうが、それならメールでも送ってくればいいのに、それさえもなく、里見はシャワーを浴びて部屋へ戻る

チカチカと点滅する携帯を手に取ると須野からのメール

『仕事、終わった。会いたい。会いに行っていい?』

そんな内容に里見は少しだけ笑って『ダメ』と返信した

『声。聞きたい。限界です』

とすぐに返ってくるメールに少しだけ迷って電話をする

『もしもしっ!』
「・・・早っ」

ワンコールで電話に出た須野に驚きの声を上げると須野は切羽詰まったような声を上げる

『会いたいっ』
「第一声がそれかよ」
『今まで毎日電話して耐えてたのに、里見不足でもう仕事できない』
「んー」
『里見、会いたい。一瞬だけでも帰っていい?車ですぐだから』
「ダメだ」
『無理。会いたい。ちょっとだけ。ちょっとだけ・・・里見、も、ムリ』

須野の声はいつもよりも上ずっていて色気さえ伴っている

「そんな危ないことしたら玄関も繋がってるドアも全部閉めて会わない」
『っ・・・里見はっ・・・会いたくない?僕にっ・・・声も聞きたくない?!なんで電話するなとかっ』

あー、泣かせた・・・そう思いながら里見はため息を吐く。別に声が聞きたくないとか会いたくないとかじゃないのに離れているだけで全然伝わらなくて・・・女性を口説く術はあるのに、こんなとき甘い言葉で相手を安心させる術は里見は持っていない。不器用・・・感情を表に出すことに慣れていない。いや、今まで感情を表に出さなくてはならない場面に出逢ったこともなかったのだ

『そこに誰かいるんじゃないかって・・・ずっと不安でっ・・・電話しちゃいけないのも里見がっ・・・誰かといるからじゃないかって』
「女々しい」
『っ・・・里見、ムリ。帰る。ムリ・・・』
「そんなん言うならオレが行ってやるから・・・お前は帰って来んな」
『・・・え?』
「あ?」
『里見が・・・なんで?来てくれるの?』

この男は本当に自信がない・・・そう思いながら苦手な言葉を紡ぐ

「オレも会いたいからじゃね?」

電話の向こうで息を飲むのが伝わる。きっと涙さえも止まったのだろう。顔を赤くして口元に「信じられない」と手を持っていき震えているのだろう

「パソコン片手じゃ浮かんだのが逃げんだよ。だから携帯で仕事してただけ」
『・・・ごめん・・・なさい』
「おう」
『あ、うん。分かったから来なくても大丈夫』
「おい、会いたいんじゃねぇのか?」
『里見のその言葉聞いたらなんか、それだけで元気出てきた』

須野の嫉妬心なんていつの間にか解けてその代わりに温かい、いや、熱いものが胸に広がる
好きな人に会いたいと言われただけでこんなにも気持ちが昂ぶる。熱くなる・・・会いたい。でも、我慢できる
里見が一生懸命に紡いだ言葉は須野の心にちゃんと届いて温かく溶ける



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つれないキミと売れてる僕5-8 - 08/24 Mon

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伊月は里見の言葉に一瞬固まって、それから下を向いてから笑顔で前を向く

「なんだ・・・気付いてたんですか」
「おう」
「そっか・・・うん。すいません」
「まぁ、なんだ。似てるとは思ったけど当然だわなぁ」
「・・・似てます?あんまり似てないと思うんですけど」

そっくりではない。しかし、それでもふとした瞬間によく似ていて、須野の面影を何度も伊月に重ねていた
特に笑顔は昔の須野を思い出させてくれて須野がこんな風に笑った顔がまた見たくて何度も伊月を笑わせた。それは伊月にももちろん、須野にも秘密ではあるが・・・
昔の須野を元に想像した小説の主人公が伊月と似ているのは当然とも言えて・・・

「知ってたのにオレをここに入れてキスマークだらけの体見せつけてたんですか・・・なんか、想像以上に性格悪くないですか?」
「ふっ・・・性格は悪いって自覚はある」
「・・・寛人くんはこれ、知ってます?」
「いやー?知らねえからこそ嫉妬に狂ってこの状態だろ」

伊月は少し困った顔で里見を見つめる。伊月と須野は異母兄弟。確証は何もなかったが、伊月のことを調べてすぐに父親で俳優の男に辿り着いた。そしてそれは聞き覚えのある、いや、皆が知っている俳優ではあるが、それ以上に聞いた名前

須野の母の葬式で春子が大声で怒鳴りつけ、帰らせた人間。それが大物俳優、高砂 寛・・・あまりにもその場に不釣り合いな人間と春子の取り乱しかたから記憶に残っていた

「伊月ー、心配すんな。なんつーか、アレだ。人それぞれ愛し方っつーのあんだろ?オレのはそりゃー人から褒められるやり方じゃねぇけどそれなりに、オレなりにあいつに惚れてんだぜ?」
「・・・安心しました」
「で?お前は偵察だったのか?ぶつかってケガさせたくらいじゃこんなことしなくね?」

伊月は首を振る
偵察ではない。いや、ある意味、偵察だったのか・・・

「寛人くんが、いつも恋人のことをすごくすごく大切にしている話をしてたんですよ。父もそれを喜んでいるんですが、でも、それが本当にあの、噂通りの皐月先生なのかって・・・」
「あー、お前も聞いてなかったのかー」
「ええ。そして、ここへ来てしばらくお世話させていただいて・・・この間まで疑ってました」
「あいつがここ帰ってきたの知らないだろ?」
「・・・寛人くんの匂いがしました」
「何?匂いって・・・」

伊月は笑って「寛人くんのコロン」と言うが、須野がそんなものつけていたかと里見は首をかしげる

「軽くつけてますよ?本当薄く、香る程度ですけど・・・でも、シーツにはすごい匂いついててあー、寛人くんが帰ってきてたんだなーって」
「・・・あのぐっしゃぐしゃのシーツな」
「寛人くんが幸せならそれでいいんですよ。あと、オレが皐月先生のすごいファンで・・・」
「だろーなぁ。伊月ってどっから来たよ?って考えたら皐月の五月じゃねぇの?」
「・・・あぁ、本当に鋭いですよね・・・」
「要は本名?」
「ええ。高井 要です」
「あぁ、高砂も芸名かー」

里見は「ふーん」と興味なさそうに呟くとタバコに手を伸ばす

「寛人くんの恋人じゃなかったら正直狙ってました」
「あー、悪い。オレ男に興味ねぇ」
「・・・寛人くんは?」
「あいつだけ特別」
「・・・なんか分かる気がする。寛人くん、すごく・・・自分の命よりもずっと皐月先生を愛してますよね」
「だな」

須野に愛されている自覚も自信もある。だからこそ、家族がいることを話して欲しかった
隠して欲しくなかった。詮索したいわけじゃない。自分が失ってもういない家族が須野にはあることを知りたかった。話してほしかった。そんなことで傷つくことはないし、寧ろ、須野に家族がいることを喜んだというのに





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つれないキミと売れてる僕5-7 - 08/23 Sun

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携帯で仕事を進めると思ったよりも片手操作が上手くいき、浮かび行く文字を留めておくことができる。打つのに手間取ることはなくなったが、そうなると度々掛かってくる須野からの連絡が邪魔になってくる
今までは集中したいときは携帯を遠くに置いたり電源を切ればよかったのにこれではすぐに作業が中断される

『あ、さ、里見?!なんか最近すごい早く出るね。びっくりしちゃう』
「・・・これからしばらく電話すんな。邪魔だ」
『え?』
「じゃあ切る」
『や、え?!待って!待ってよ!』
「電話したきゃオレが掛けるからお前は掛けんな」
『・・・え、でも里見っ・・・電話なんてしてきてくれたこと全然な・・・』

話の途中で里見は通話終了をタップする。今、集中して書けていたのに文字が、浮かんだ言葉が消えそうで頭をかきむしった
作業効率は多少上がったが、やっぱり利き腕が使えないのは不自由でイライラは募るのだった


「里見・・・電話してくれないじゃん・・・」

須野は愛しい人の声が聞きたかっただけなのにそれさえも拒否されて携帯を握ったままさっきまで声が聞こえて繋がっていたそれを額につける
離れていてもせめて声だけでも聞きたくて・・・少しの休憩があれば皆がいないところで電話を掛けていたのにそれさえも拒否されたら須野の心は壊れそうなほど痛むのだった




「皐月先生ー、今日の夕食はリクエストありますか?」
「ない」
「そうですか。じゃあ食べやすいもので何か作りますね」

伊月は甲斐甲斐しく通ってきて家事をこなす。毎回お金を渡すのは線引きをするため。好意があるとかではなく、ただの家政婦代わりだと理解させるため

「明日は飲み行ってくるから来なくていいや」
「・・・それで行くんですか?!」
「それでってなんだよ」
「や、あの・・・」

伊月が首元を指差しながら目を伏せると里見も「あー」と納得の声を上げた
須野のつけた所有の印はまだ残ったまま。赤ではなく黒くなっていたり黄色っぽくなっていたり・・・一時期よりも汚く見えるその色は里見の白い肌にはかなり目立つ
それでもどうせ一緒に行くのは吉田だったし、いつもの店は半個室で人に見られることもあまりない。移動のときだけストールでも巻けばいいだろうと思ってのことだった

「引きこもり生活もだんだんつまんなくなってきたからなぁ」
「・・・あ、あの!」
「あー?」
「もし、良ければ、オレ、食事支度頑張るのでここで飲んだら・・・」
「ここに呼べってー?っつかこれだんだん消えてきただろ。明日は目立たないんじゃねぇかなっつー」

伊月は顔を赤くしながら頭を振る
消えかけた跡はなぜかより色気を感じて仕方がない。想像力を掻き立てられ、想像し、嫉妬する


「あの・・・後ろはまだ、かなり酷いです。皐月先生、いつも首元露出高い服なので余計・・・なんか目立つ」
「・・・オレの後ろどーなってんだよ・・・怖ぇ!」
「皐月先生の恋人さんは・・・あの、その・・・」
「あー?お前今更何言ってんの?」

里見はタバコを手にすると少しだけ笑って伊月を見つめる

「お前の兄ちゃんが恋人だけど?」





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つれないキミと売れてる僕5-6 - 08/22 Sat

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「・・・何そのキスマーク・・・」
「あー?あー・・・」

葛西が映画のキャスト決定の報告に来て里見の首筋を見て冷たい目で里見を見つめる。須野が一瞬帰ってきただなんて葛西は知らないこと。だからその相手がまさか伊月なのではないかと怒りにも似た心配をする

「なんで伊月くんなの?!」
「はぁ?」
「須野を傷つけるため?!」
「いや、待て・・・っつか・・・これ、あいつだぞ?」
「・・・須野ちゃん帰ってきたの?」
「・・・最終で帰ってきて朝すぐ帰ってった」

それを聞いて葛西は脱力する

「なんだ・・・須野ちゃんなのか・・・いや、まぁ、うん、なんだ・・・須野ちゃんの独占欲の強さを表してるっていうか・・・」
「・・・ひでぇだろ?・・・あー、しばらく外出たくねぇ!!!!」
「あー、そうか。髪の毛とか洗うのオレやろうかー?」
「・・・まぁ、お前ならいいか・・・っつか、あれだぞ?脱いだらまた引くぞ?これ」
「監禁されなかっただけよかったと思うけど?」

葛西の言葉に里見は少しだけ笑う。監禁されかけた・・・でもきっと須野は里見をそんな風に縛ることができない
里見の全てを愛しすぎていて。自分が苦しんでも里見を自由にしておきたい
でも実際は里見は気付いていない。須野は少しずつ里見の心を繋いで見えない監禁をしている
指輪だとかキスマークだとか。ある意味の監禁・・・実際に監禁できない須野からの見えない監禁。それは束縛ともいうのだろう。普段だったら全て受け付けなかったその束縛を甘んじて受けている里見の変化・・・それは里見自身もあまり気付いていない変化




バスルームでシャワーがタイルを叩く

「ホント笑えるくらい酷いね・・・」
「後ろ見えねぇけど酷いんだろうな」
「・・・うん。痣だね。これは浮気なんて出来ませんっていうね・・・須野の愛の大きさ?」

葛西が里見の背中を洗いながら苦笑する
白い肌が赤黒く変色した背中。胸の周りも酷く赤くなっていてその印は付いていない場所のほうが少ない程・・・葛西に見せられない内腿にもたくさんの赤い印はつけられていた


「光、須野のキスマークは許したんだ?愛だなー。愛っ!お前キスマークとか嫌いじゃん?束縛される気がするとか言ってさぁ・・・でも、浮気できねぇのが嫌なだけだった酷い男ー!あーホント酷い男ー!」
「もう今は酷くねぇよっ!落ち着いてんだろーがっ!それに・・・イヤだとは言った」
「でも受け入れてんじゃん」
「・・・あいつ自信なさすぎじゃね?」
「光の態度に問題があるでしょ」

風呂上がり、葛西は里見の髪を乾かす。須野の代わりに・・・須野だけに許された特権。それを葛西にも特別許す

「それよりもアレだ。仕事が遅れてピンチだ」
「・・・光、携帯は打ってね?」
「あー?まぁ、そりゃ携帯はな」
「じゃあ原稿とりあえず携帯で書くっつーのはどうなの?」
「・・・なんかすごい衝撃受けた。お前からそんなアイディアもらうとは・・・」
「え!今、軽くオレのことバカにした?!」

里見は鼻で笑ってタバコを取ると火をつけて左手に携帯を持った

「あー、この方がイライラはしねぇかもな」
「オレも光の役に立つっしょ?」
「もっと役に立て」
「まだ求めんのかよー」
「オレの役に立てることが嬉しいくせに」
「まぁ、嬉しいよ?須野程じゃないけど喜ぶからね。オレも」

葛西はそういうと背中を叩いて「おしまい」と言って立ち上がる

「じゃあ脚本に戻りまっすー!」
「お前、脚本やんの?」
「光やる気ある?」
「ねぇよ!っつか脚本家いねぇの?」
「うーん・・・光の話は誰にも渡したくないっていうねー」
「・・・お前の独占欲もよっぽどだ」

そう。須野の独占欲も葛西の独占欲も激しい。須野も葛西も求めて、求めて、与えてくる。そして、里見から貰ったものは離したくない。葛西の指にはまった銀色は自分で須野と里見のペアリングと同じものを購入したもの。仲間はずれがイヤでイヤで一緒がいい。同じものを持っていたいという子どものような独占欲
昔から知っている。葛西だけが仲間に入れないことを。2人の間に入れない空間があることを・・・だからその空間に、2人の間じゃなくてもその空間に少しスペースを開けてほしくて必死になっている




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