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運命だとか恋だとか6 - 09/30 Wed

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タイチに世話されることがなくなった後、ツカサに再び薬が効くことになる

「なんだったんだろうなー・・・」

いつもの温室でぼーっと花を見つめる

「ねーねぇ!」
「?」
「こないだタイチに抱っこされてた子だよね?」

ツカサがここで他のΩに出会うことは初めてのこと。見目イイ青年にツカサは頷く

「オレ、エイタ!キミは?」
「ツカサ」
「よろしくねー」

初めての友達。βの友人はいたが、Ωは初めてで、急に沸く親近感に嬉しくなって何度も何度も頷いた

「去勢待ち?」
「あー、とりあえず、去勢の研究の手伝い。データ取ってもらってる」
「あ、うんうん。オレも同じー。早くできるとイイよねー。ホント怖いー。オレ何回も襲われたことあってさー、オレ、ヒートの周期がバラバラでさぁ」
「・・・そうなんだ」
「あ、ツカサは定期的に来る人?いいなー。周期分かってたら薬でなんとかなるもんねぇ」

襲われた人がいる・・・Ωの運命。聞いたこともあったし、特別授業でも受けた。でも、実際に聞くのは恐ろしい
ここへ来る前に襲われかけた・・・でも、なんとか逃げ切れたのはきっと発情期に入った直後だったから。まだ体が動いたから・・・もし、あの時体が動かなかったら自分も・・・

「襲われた中にαいなくて助かった・・・助けてくれた救急の人もα去勢してる人で奇跡だったー」
「・・・いるんだ。やっぱ」
「うん?うん。奥さんがβの人とかね。浮気しないようにだとか人命救護するのに命かけてるような人はしてる人いるみたい。まぁ、タイチみたいなのはマレだと思うけどー」

エイタの言葉に首を傾げたのを見てエイタは「秘密だよ?」と口元に人差し指をやると笑いながら口を開く

「運命の番っているじゃん?タイチのはね、ムツキ博士」
「え?」
「でも、ムツキ博士はタイチと番になりたくなくて、でも一緒にいたいからって去勢頼んだの」
「・・・」
「まだ去勢なんて罪人しかされてないときに受けたんだよ・・・すごいよね」

ムツキが運命の番なのだと聞いてツカサは胸に痛みを覚える
ツカサが欲しいと心から思えたタイチは運命なのかと思ったのに。あれはただのヒート現象。目の前のオスが欲しくて仕方がなくなって求めただけ。浅ましい性に恥ずかしくなって俯いた

「うん?ツカサもしかしてタイチに惚れちゃった?!だよねー。あの人たらしやばいよねー」
「・・・」
「オレら強いα求める癖あるけど、タイチはどっこも強くないし普通なのにねー」
「・・・」

みんな求めるのだと少しは安心できたが、でも恥ずかしい。あんなにも求めて求めて狂いそうになって・・・

「運命に出逢ったら衝動的に欲しくなるっていうけどムツキ先生はすごいなー・・・早くΩの去勢成功しないかなぁー」
「衝動的・・・」
「本能的にその人の種を残したいって一心で求めるみたいねー。噂ではヒート終わっても次のヒートで孕みたいって望むらしいけどねー。与太話。与太話ー!」
「・・・うん。だよね」

運命の番は1人しかいない。わかっているのにタイチの子を産みたい・・・モヤモヤとあるこの得体の知れない感情は初めての性行為のせい・・・タイチの運命の番がムツキだと分かったら尚更そう思うしかない



「ヨーイチ元気ー?」
「ヨーイチ・・・って誰だよっ!お前・・・オレ、コウジだし・・・っつか毎回名前間違えんな」
「うん?そーだっけ?いや、それよりー、ツカサちゃん!お前が世話してんだろー?元気ー?」
「・・・柊 ツカサ・・・だよな?ってあいつの名前は覚えてるってどーいうこと?!」

αではあるが、抑制剤が人一倍効いて、フェロモンを感じなくなる体質のコウジはタイチと同じようにこの研究所であちこち移動できる数少ない人間
タイチはひらひら手を振って「まぁまぁー」とコウジをなだめると「で!ツカサちゃんは?」と間を詰める

「元気だよ」
「ヒート治ってる?」
「抑制剤効いてるし、もうそろそろ今回のは終わる頃だろう」
「んー、そーなんだ・・・残念」

あの時のフェロモンを分かち合いたかったタイチはため息を吐くと時計を見る

「時間あるなー・・・ヒート治ってるなら会ってこよーっと」
「・・・お前、そういう所マメだよな」
「うん?うん!じゃーまたなー!ヨージ!」

「だから名前・・・」と言いかけて諦める。毎回間違えられても憎めない相手。αっぽくなくて人懐こくて・・・誰とでも仲良くなろうと、いや、いつの間にか仲良くなってしまう、同僚・・・
そして、タイチが名前をちゃんと覚えている人もいるのか・・・と妙に感心したのだった





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運命だとか恋だとか5 - 09/29 Tue

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そんなわけない

そんなわけない

そんなわけないっ

去勢した。去勢させた。なのに・・・なのに・・・

ドンドンドン

ドアを叩く音が響く。でもそんな音も2人には届かない

「あー、どーしよ。ツカサちゃん。オレねー、早くないんだよー?だけども、出ちゃいそう」
「んっ出してっ・・・たくさんっ」
「っ・・・あー・・・ダメだこれ。治る予感しねぇ」
「んっ・・・もっと」
「ゴム替えないとまずいけど抜きたくないねー。どーしようねぇ」

αの熱を感じる。体の奥深いところで感じる・・・気持ちよくて溶けそうで。もっと欲しくて欲しくて・・・

「っあ・・・?あ、あ?」
「あー、これっ・・・子宮っ?下りてきた・・・ツカサちゃん、やっばいね。これ。すげぇわ」

何度か経験したことのあること。Ωを何人も抱いてきた。でも、こんなのは初めて・・・こんな訳の分からない感情は初めて・・・

「ここにぶちまけたいっ・・・ダメだよねー」
「っあ・・・」
「あー、おかしいなぁ・・・おかしい・・・熱い・・・」

タイチも体の変化を不思議に思いだす。初めて尽くし。こんな初めてのことばかりはなにかおかしい・・・フェロモンにはあてられないはずなのに・・・狂いそうで・・・

タイチの指が無意識にゴムを引っ掻く
爪を立てたら薄いそれはすぐに破けてしまってもうすでに放ったものでぐちゃぐちゃなのに・・・ダメだと思うのに手が止まらない

「・・・ダメだ・・・ツカサっ・・・」

抱きしめるといっそう強くなったフェロモンがタイチを包み込み奥へ奥へと欲をぶつける
Ωがもつ子宮の入り口をつつき、その中にまで入ろうとしている

ダンっ!!!

「そこまでっ!!!!」
「あっ?あー・・・痛い・・・」

マスターキーを取りに戻り、入ってきたムツキに跳ね飛ばされてそのまま抑制剤を注射される
打たれた腕を抑えながら恨めしそうな顔でムツキを見上げるタイチ。そのままムツキは抑制剤と鎮静剤を混ぜた薬剤をツカサに注射するとタイチの頬を叩いた

「なんのつもりだ?!」
「・・・わかんねぇ」
「お前・・・去勢してあるんだから理性で抑えられるだろ?!フェロモンにあてられて、しかも妊娠させようとするなんてっ!!!」
「・・・それは危なかったー」
「・・・何?」
「や!マジでなんか止まらなくなってさー、危うくゴム破り捨てて中出しするとこだった」
「・・・」

ムツキの顔色がどんどん青褪めていく

「いやー、ツカサちゃんのすげぇフェロモンなんじゃね?掘り出し物!掘り出し物!!!」

いつものタイチの様子に唇を噛み締める

「なー、もしさー、オレが去勢してなくて、お前の発情期にやったらもっと気持ちよかったかなー」
「え?」
「ん?運命の番ってそういうことなんじゃねぇの?」
「・・・嫌だ。お前とやるなんて想像しただけで鳥肌が立つね」
「うっわー!つれないねぇ」

タイチはベッドに倒れたツカサを見つめる
今まで義務的でこんなにも感情的になったセックスなんてしたことがなかった。女でも男でも。業務以外では特別抱きたいと思った人間にも出逢わなかった。付き合うことも運命の番よりも情熱的になれるとも思えずなんとなく付き合って抱き合って別れる。その繰り返し・・・

「明日から彼の世話は別のやつに任せる」
「んー?あー、そーだね。それがいいかも」
「空いた時間に空いた6号のスカウトに行け」
「・・・あー、結局外出許可出したのー?」

帰りたいと言った少女

「いや、切った」

投薬を中止し外へ出したと言うことで・・・それの意味することを考えてタイチは目を伏せて「ひでぇな」と呟いた

ヒートを無理やり抑える抑制剤の新薬。副作用として薬を止めた直後から止まらない発情期がやってくる。薬が切れれば狂ったようにオスを求める。それはまるでジャンキーのように。でも、求めるのは薬ではなく・・・精液

「ツカサちゃんにアレ使うのは止めてあげてよ」
「お前が口出しするな」
「レアだよ?データとろうよ!」
「うるさいっ!」

レアなんかじゃない
レアなんかじゃ・・・

でも、ムツキの真意はタイチに伝わることはない





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運命だとか恋だとか4 - 09/28 Mon

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ツカサが研究所へ運ばれてから数日・・・まだツカサのヒートは治らない
抑制剤は様々なものを試した。しかし、どれも完全には効かなくてだんだんツカサを恐怖だけが支配する

ここにいるのは安全。だけどもう一生外に出られないのじゃないかという恐怖

研究所にある温室へ入ると蒸せ返る程の花の香りがフェロモンを打ち消してくれそうな気がして時間があればそこで本を読む
研究所内は歩き回ることが許されてはいるが、αのいる棟には近付くなと何度も警告されていた
もちろん、ツカサも頼まれても近付かない。と思っていたが、ふとした瞬間にまた薬が切れてしまったときは意思とは逆に種を求めるためだけに足がそこへと向かう

フラフラ
フラフラ

・・・と。獣のように息を荒くして、獣のように涎を垂らして
全身を使って誘惑する香りを出す

「コーラコラーどこ行くのーツカサちゃーん」

そんなときはいつだってどこからか匂いを嗅ぎつけてやってくるタイチの存在がありがたくて疎ましくて・・・

「お願・・・欲しいぃぃっ」
「うん。あのねー、ムツキから次のテストの許可やっと出たからお部屋まで頑張ろう」
「も・・・無理・・・歩けないぃぃ」
「よーし、抱っこしてやる」

肌が触れるだけで声が漏れる。淫液が漏れる
タイチの手は性的な存在じゃないのに。密着して聞こえてくる心音ですら快楽の元になる
抱き上げられてその振動も快楽。触れられた場所全てが性感帯になったような感覚に何もされていないのに下着を汚した

割り当てられた部屋に着くと鍵をかけてベッドへ優しく降ろされる

「あ・・・」

離れてしまった熱を追いかけてツカサはタイチの腕を掴む

「あー、すごいグシャグシャ・・・ツカサちゃん可愛いなぁ」
「っあ」

もう言葉が出てこない。思考回路もショートしてしまったように頭にあるのは早く欲しいの言葉だけ

「ふぁ・・・あっ・・・」
「こんな状態の子あんまり見たことないなぁ」

Ωのヒート状態。今までも介抱したことはあったが、こんなに強く香るΩは初めて。もし、去勢していなかったらどうなっていたのかと考えるとタイチはひとつ身震いをする
今まで考えたことのなかったこと。発情期で妊娠できるΩを目の前に孕ませたいと思ったのは初めてのこと

「あー、まっずいなー。なんだろー。去勢されてんのにツカサちゃんにナマで突っ込んじゃいたい」
「いいっ、ちょ・・・だいっ」

タイチはそっと笑ってツカサが触れたことのない引き出しに手を掛けると所謂、大人のおもちゃと呼ばれるものを手にベッドへ戻る

「な、何?や・・・やぁっ」

ツカサは動き辛い手足をバタつかせて必死に抵抗する。無機質なそれらは欲しくないもの。低いモーター音が耳に入ってきてそれを太ももに当てられると襲ってくる快楽。それでもそんな熱を与えてくれないものは欲しくない・・・泣いて懇願するのに聞き入れてもらえない苦しみ
濡れるはずのない排泄器官でさえも濡れてαの種を待つのに音を上げるそれらは熱も種もないもので・・・

「やぁぁっっっっ・・・」
「すごい濡れてるけど狭い・・・ツカサちゃん・・・初めて?」
「ないっ・・・そんなのっ!やだぁぁ」
「そっか・・・ここまで無傷のΩ・・・ちょっと待ってね」

モーター音が停止する。その代わりにベッドに設置されたボタンでマイクを入れるタイチ

「ムツキー、ムツキー」
『何?』
「ツカサちゃんなんだけど、オレの挿れちゃってもいいー?」
『はぁ?!』
「やー、ヒート全然治らないし、初めてでおもちゃも挿いってくれないし、可哀想じゃんー?」

可哀想・・・

また違和感

今までもあったはずのΩのヒート対策・・・治らなくてどうしようもない時だけ・・・初めてだとかそんなのも関係なくやってきた行為を自分から・・・

『待て!タイチっ!!!』
「んー、ムリー」
『何がっ!!!!』
「オレ、なんかわかんないけど勃起治んないから」
『は?!・・・はぁ?!』

そう叫んでムツキは研究室を飛び出した。去勢されたαがフェロモンにあてられないαが・・・



「ツカサちゃーん、慣らしてからねー。きっとすぐにムツキ来ちゃうから時間なくて優しくは出来ないけどいいー?」
「んーっ!んんー」

「いい?」と聞かれた時にはもう指を挿れられていて、拒否という選択はどこにもない
しかし、それよりもやっと欲しいαの熱が体内へとやってきて、それだけで震えた

「あー、すっげ・・・蕩ける・・・ツカサちゃん、これ、欲しい?」

目の前に差し出されたタイチの昂り。他人のこんなところに口付けなんてしたことなんてなかったのに今はただ愛おしくて欲しくて唇を寄せて舌を出して這わせる

「あー、そうだよね。ツカサちゃん、これ早く欲しいね。痛いの我慢してね」

何度も何度も頷く。ただ本能で。本能のままに・・・






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運命だとか恋だとか3 - 09/27 Sun

trackback (-) | comment (2) | その他SS
「じゃあ、変わりなしでいいね?」
「はい。あ、しばらく家に戻りたいんですけど・・・」
「うん。判った。ムツキに伝えておくね」

被験者である女性性のΩと話をしてカルテに書き込むと廊下に出ると白衣を纏ったムツキとすれ違う

「・・・お!丁度良かった。ここの子がしばらく家に帰りたいらしいー」
「何?!今投薬テスト中だからしばらく出られないって最初に言ったのにっ!!!もーーー!あ、さっきの子、目、覚めたけど医務室で休ませてる」
「はーい。んじゃー挨拶してこようーっと」

ムツキは眼鏡の奥で怖い顔をしながらタイチの出てきた扉へ入っていった


トントントン

「はい」
「お邪魔しまーすっ」
「・・・?」
「あー、薬効いたみたいねー!ごめんなー。自転車で車ぶつかったの覚えてるー?」

ヘラヘラと笑うタイチの言葉にツカサは気を失う前のことを思い出して慌てて頭を下げる

「ごめんなさいっ!!!!オレっ!逃げてて急いでて!!!」
「あー、いいのいいのー。どっこも痛くないー?」
「はいっ」
「あ、でもココ、キズ出来てる」

目の横に出来たキズに触れるとツカサは「ひぃあっ」と妙な声を上げてすぐ口を塞ぐ

「・・・痛かった?ごめーん」
「や、違・・・」
「・・・?」

治ったはずの熱が体から生み出されていく。じわじわじわじわ

「な・・・んでっ・・・」
「あれ?ヒート?!薬入れて治ったよね?!合わなかったかなー・・・すぐ薬変えてもらおう」
「っ・・・ふっ・・・」
「あー、辛そう・・・」

触れてもないのに下着に染みができる感覚・・・薬を飲めば大丈夫だったはずの体がおかしくなる

「や、助け・・・熱っ・・・こんな・・・オレじゃないっ」

タイチのシャツにしがみつくツカサを見て頭を撫でるとベッドの横に取り付けられているボタンを押す

すぐに「どうしました?」と返答があって、話せる状態じゃないツカサに代わってタイチが状況を説明する
「すぐに薬持っていきます」と言われた後、優しく抱きしめる

「すぐ楽になるからなー・・・えっと・・・誰くん?」
「つ・・・ツカサっ・・・っ・・・やだっ・・・ヤダヤダヤダっ・・・汚しちゃ・・・」
「大丈夫ー。治ったらすぐ着替えようなー」

白衣を着た医師が来るまでの時間は短かったはずなのに永遠の責め苦に感じられて、もうダメだと思う度にタイチの大きな手がツカサの背中を優しく撫でる。安心・・・でもそれすらも快楽に変換されて今すぐに欲しくなる
望んでもないはずなのに欲しくて欲しくて苦しくて・・・

何度も何度も懇願してしまう

「助けてっ・・・熱い・・・苦しいっ」

その度に「頑張ろうなー」と言われて涙目で見上げてタイチの笑顔に騙され頷くしかなかった



「効かない?なんで?」
「わかりません」
「判らないってどういうこと?!」

ツカサに抑制剤が効かないと報告を受けたムツキは「役立たず!」とカルテを投げつける
タイチは遠くから「まぁまぁー」となだめるが、ムツキの怒りは治らない

「じゃあさー、ムツキー、オレ、説得するから新しい被験者になってもらうってのはどーう??」
「・・・」
「普通の抑制剤効かない若いΩ、珍しいだろ?被験者として欲しいよな?」
「・・・欲しい・・・けど・・・」
「よーし!じゃあツカサちゃん説得してやるってー!」

名前をちゃんと覚えないタイチがツカサの名前を間違えずに言ったことに目を見開く
何事にも興味がないタイチが覚えている・・・なにかを暗示するかのようで妙な胸騒ぎがする

「ムツキー?」
「や、うん。説得・・・頼む」
「よーし!んじゃー早速レッツゴー!」

軽快なステップで部屋を出て行くタイチの背中を見送る
運命の番。番に成り得なかった偽りの運命



「ツカサちゃーんっ!どーう?抑制剤少しは効いたー?」

医務室へ入るとツカサはひとつ頷いて「治ってはないですが」と付け足す

「そっか。あのさー、ツカサちゃんって今まで抑制剤効いてた?」
「はい・・・こんな酷いのはなかった」
「・・・え、オレの車にぶつかった拍子になんか体質が変わった・・・とかじゃないよね。怖い」
「ええ!そんなことあるんですか?!」
「いや、知らないけど」

なにかのきっかけで今まで効いていた抑制剤が効かなくなる。それは聞いたこともあったが、事故で、衝撃で・・・などは知らない話

「・・・どうしよう」
「うーん。まだフェロモンも完全に消えてないしねぇ」
「・・・判るんですか?」
「あぁ、うん。オレ、一応αだから」
「え!」

αと聞いた瞬間に身構えるツカサに両手をヒラヒラ上げて「大丈夫ー!」と言うタイチにαの抑制剤を使っているのか・・・と少し胸を撫で下ろす

「オレ、去勢済みだからー」
「えええ!!!・・・あ、そ、それは・・・」

急にいたそうな顔をして股間に手をやるツカサに頭をブンブン振るタイチ

「いや!チョッキンされてないから!ちゃんとあるから!!排泄も性行為もちゃんと自分の使ってできるからぁ!!!」
「・・・え?」

カンナ博士のα去勢は一般的ではなく、ツカサが知らなくてもおかしくない話

「α性を殺してるだけだから・・・だからオレ、そこらのβよりもよっぽど安全な存在だーよ!フェロモンは感じるけどそれを性と繋げる器官切ってあるからー」
「・・・そんなことできるんですか」
「うん。そう。この研究所はねー、αとΩを研究してるからー」
「・・・じゃあ」
「うん。まだ成功もしてないし、方法すら見つけてないけどΩの去勢も研究してるよ」

タイチの唯一人より優れているところ・・・それはきっとこの人たらしの性・・・βの頃から人に好かれることだけは長けていた。それがαになってからより強く・・・
ツカサもタイチの笑顔に全てを信じて頷く

「オレの去勢もしてくれますか?!」

タイチは「まだ研究中だよー」と微笑みながら「でも、手伝ってくれる?」と尋ねる

「なんでもしますっ!しますっ!!!!」

ツカサが叫ぶようにそう言うとタイチは「よかったー」とツカサの手を握る

「っ、あ・・・ダメ・・・またっ」
「ありゃ、触れると発動しちゃうのかー。じゃあ触らないようにだね!

すぐに離されたタイチの熱。手の先から伝わる熱が手から逃げていく
もっともっと・・・もっと・・・

でもそれ以上、タイチが触れることはなかった




「・・・αが触れると薬が効かなくなる・・・ってことか?」
「うーん?判んないー。オレ、専門的なことぜーんぜん判んないしー」
「・・・データが欲しい」
「うん?」
「抑制剤飲ませて時間をおいてαに触れて発動するか脳波調べたい」
「うっわー。それ、結構酷いよねぇ?」

Ωのヒート状態は苦しそうでどうにかしてあげたくなる。そんなとき、フェロモンに左右されないタイチの仕事がやってくる。ヒートを抑える手伝い・・・
男性器を模ったもので慰める・・・そんなのはヒート状態でαを求めるΩには意味のないものであることが多くて、タイチが体を張ってヒートを治めることも少なくはない
Ωが望むαの体だとしても、毎回辛そうで、タイチはその度に心苦しくなるのだ。どう考えても快楽に流されているだけで感情はそこにないから。目の前で乱れるΩの姿は情欲的で、掻き立てられるものはあるものの、愛のない行為で治めるのはどこか違う気がして・・・

「お前の仕事だろ」
「うーん?」
「束の間の夢でも見させてやるのがお前の役目だ」

ムツキに冷たく言われて「はーい」と返事をしたタイチはいつものようにポケットに手を入れて廊下の窓から外を見る

自由に、薬もなしでヒートがやってくる恐怖もなくΩも外に出られればいい。そういつも月に願う






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運命だとか恋だとか2 - 09/26 Sat

trackback (-) | comment (0) | その他SS
慌てて車から降りてぶつかってきた自転車を確認する
倒れている青年は顔を赤く、息も荒くしたまま潤んだ瞳でタイチを見上げる。「Ωだねー?・・・っつか大丈夫?」と聞くが、彼は頭を横に振りただ一言

「助け・・・て」

そう呟いて意識を手放した



助けてと言われればぶつかった責任もあって救急車を呼ぼうか考えたが、もし、救急隊員がこのフェロモンにあてられたら大惨事になる・・・そう思いタイチは車に優しく彼を乗せると、研究所へ戻れば薬もあるしと仕事場へと車を走らせたのだった



「おか・・・えり」
「医務室空いてるー?」
「・・・何拾ってきてんの?それ、Ωだよな?」
「ん?みたいねー。自転車でぶつかってきた」
「はぁぁぁ?!お前!ひき逃げか?!おい!タイチっ!!!!」

医務室へと向かうタイチの後ろから大股でついてくるのが親友、ムツキ。ここはムツキの父が開設したΩとαの研究を行っている機関

「っつかねー、ぶつかってきたの。マジで。オレの愛車の方が重症かもなぁ・・・あと、連れてきたから逃げてないよー?救急車呼ぶよりこっちのほうが人間的に安全じゃね?」

ブレーキをかけた車は止まったが、スピードのついた自転車は止まり切れずタイチの車へと突っ込み、車のボディに負けて彼が倒れたのだが、それでも立派な事故である

「・・・そーいうことなら・・・タイチ、退け。一応医者だ。診る」
「おー!さーすがぁー。あと、ヒート抑制剤打ってやってー」
「判ってる」

後のことはプロに任せようとタイチは医務室を出る
一般的に優秀でカリスマ性のあるのがαと言われているが、それはタイチには結びつかないイメージ。彼は珍しい後天性のαだった。βとβにβとして育てられ、教育されてきたのに高校入学するための健康診断で発覚したαへの転換。両親も慌てたが、1番驚き慌てたのはタイチ本人である
αの要素なんてまるでない自分がαに転換し、Ω性に惑わされるなんてと嘆く日々・・・

だから初めての発情期を迎えたムツキに「運命の番」だと言われていまいちピンと来なかったものの、「去勢」という新しい方法を告げられた時には嬉しかった

「タイチ!」
「あー・・・えっとー・・・ケータ!」
「惜しい!エイタ!」
「おっと間違えたぁ!でも惜しかったよね?惜しかった!実に惜しかったぁ!」

廊下で話しかけてきたのはΩのエイタ。この研究所の被験者として数ヶ月前からここにいる

「さっき、男の子抱えてなかったー?」
「うん。拾ったんだ」
「偶然にー?」
「そう。偶然にー!」

エイタはタイチを上から下までじろじろと見ると意味深に首を傾げる

「なーんかタイチってパッとしない去勢αの癖にやたらとΩ惹き寄せるよねー」
「うーん?Ωってホント少ないのー?って思うよなー」
「いや、少ないから。マジで!」
「そうか・・・その貴重なエータくんはなんでΩ去勢したいの?」
「当たり前でしょ?抑制剤、効くけどヒートが突然始まった時にもし切れたら襲われるんだよ?」

実際、エイタはその経験者で、Ω性を持って産まれた人間はそんな経験があるものが多い

「大体さー、運命の番とか出逢わないから!襲われた時に変なおっさんの番にされたらとかマジで怖いしー。番になったら逆らえないんだぜー?んで、歳とっていきなり番解除とか一方的にされたらそっからまたボロボロになる・・・嫌だろ」

タイチは「うーん」と頷く。そんなに運命の相手と出逢わないものなのかも知らない。タイチの運命の番はすごく傍にいて、番になりたくないと拒否され去勢した程だ

「まぁ、タイチには難しいかー!」
「おう!オレがαとして機能してた時期なんてホント短いしな!」
「でも潔いいよねー!カンナ博士の研究で去勢できるとはいえαが簡単に去勢とかー!」

αの去勢、Ωのフェロモンを感じ取る器官を機能しないようにすることで、Ωのフェロモンを感じなくするα殺し・・・ムツキの父、カンナが発見した治療法ではあるが、何らかの罰として行われることはあっても、プライドの高いαがこの処置を自ら行うことはまずない

「でもオレ、ずっとβだと思ってたしなー」
「だからこそαになったらよーし!やったるぜー!ってならない?」
「・・・オレはオレだった」
「ブッ!!!タイチらしいーーー!!!早くΩ去勢もできるようにならないかなぁー。ムツキ博士に頑張ってって言っといてよー」
「おー。言っておく!言っておくよー」

手を振るエイタに手を振り返してからポケットに手を入れて仕事に戻る
タイチの役割はここでの雑用に近い。何人もいる被験者であるΩの世話とΩ去勢をしたい人間のスカウト・・・







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運命だとか恋だとか1 - 09/25 Fri

trackback (-) | comment (2) | その他SS
※オメガバース設定のお話になりまするよー
作中で詳しく説明できてない不親切設定です・・・ごめんなさい


人類の性が男と女という種別のみでなく、Ω、α、βに分かれる世の中。昔は人間なのに発情期を持つといつΩが動物的だとかで虐げられていたが、抑制剤の発達でその差別はなくなりつつある現在・・・

しかし、その抑制剤の発達で運命の番(つがい)に出逢うことは稀となってきていた
運命の相手を探すためのフェロモンを抑制するために運命に出逢えない・・・運命を捻じ曲げている事実は皆、都合のいいように見ないふりをしている

「バカ!バカか!バカバカバカ!!!!」

ツカサは自転車を走らせる
病院へ急ぐために

「母さんのバァァァカァァァァ!!!!」

そう叫んでいるのには理由がある
それは朝のこと・・・


「・・・母さん、オレの抑制剤知らない?あと2日分あったはず・・・」
「あー!そう!あのねー、母さん、貰いに行くの忘れてて飲んじゃった。テヘッ」
「テヘッじゃねぇよぉぉぉぉぉ!!!なにやってんだよぉぉぉ!!!!!」

Ωとβの間に21年前に生を受けた彼、柊 ツカサはそう叫んだが、ニコニコと笑ったまま「いつもみたいに自転車でピューっといってらっしゃい」と言われ先程のバカ発言に至る

元々フワフワと天然染みたところのある母のこんな行動は初めてではないが、今回はさすがのツカサも焦って自転車を漕ぐ足を早めていた

Ω特有の発情期・・・予兆を感じていたのだ

どんどんと熱くなる体。自分のものじゃないかのような感覚
いつもの病院が遠く感じる・・・

そんなツカサの体からはΩの発情期特有の甘い香りが流れ出していて信号待ちに路地へと連れ込まれ、目の色が変わった男と対峙することになる

「・・・お、オレ急いでっから!」
「Ω・・・か・・・オレもそーんな気はないんだけど抑制剤も飲んでねぇっつーことはそーいうことなんだろ?なぁ」

首筋を撫でられてぞわぞわと肌がざわめき立つ
Ωのフェロモンはαを無意識に性的に引き寄せてしまう・・・そのフェロモンが強くなればβでさえもフェロモンに惑わされ、発情期で全身が敏感になるΩには逆らうことさえ困難・・・
まだ出始めのフェロモンを感じ取ったということはきっとαなのだろう。だからこそ恐ろしくてツカサはサラリーマン風の男を突き飛ばすと倒れた自転車を起こして必死に漕ぐ

もし、性交中に首筋に噛みつかれてしまったらそれは番として成立してしまうから・・・見ず知らずの人間と番になんてなりたくない

怖い

怖い

怖かった

いかに自分が危険な存在かを再確認する。自分が怖い。人を無意識に惹き寄せるΩのフェロモンが怖い

体が熱くて本能的にオスを求め始めるのがわかる。でも、ツカサは望んでない。父と母のように・・・普通の家庭が持ちたい

燃え上がるような運命の恋愛なんて望んでない
抑制剤で押さえつけてほのぼのとした家庭が・・・



ガッシャーーーン





その日、上司で親友のムツキから言われた機械を運び終わった松永 タイチはご機嫌で車を走らせていた
親友と一言で片付けてしまうのは忍びない。運命を打ち消した番・・・

Ωでいち早くαのタイチを運命だと気付いたムツキに「去勢」を頼まれてその通りにした相手。別に運命の恋愛なんて憧れもなにもない。ただ、身近にいた相手から運命だけど友達でいたい。そう言われて拒否はできなかった・・・
タイチもムツキとは親友のままでいたかったから。発情期に訳も分からずフェロモンにあてられて親友の垣根を飛び越えるなんてタイチの頭にはなかったし、Ωのフェロモンに惑わされるαでいることも怖かったから

あれから数年・・・去勢のおかげで他のΩのフェロモンにもよろめくことなく平和に仕事ができているのがタイチには幸せだと思っていた
もし、去勢されてなかったら人口数の少ないと言われるΩともやたらと会う機会の多いこの仕事なんてしていられなかっただろうと思うとそれは尚更・・・

「はぁ?!」

突然、猛スピードで飛び出してきた自転車にブレーキを踏むが、大きな音を立てて自転車はタイチの車にぶつかって停車した





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つれないキミと売れてる僕番外 アニバーサリー - 09/24 Thu

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須野は携帯のカレンダーを見て「あ!!!」と小さく叫び声を上げて周りの人の注目を浴びていた

「あ、なんでもないです」
「なになにー?なんか予定忘れてた?」
「や・・・あーそうなんですよ。でも、今日じゃないので大丈夫です。危うく忘れるところだったっていう話です」

須野はいつもの爽やかな微笑みで周りを安心させると心の中で「忘れちゃいけない日を忘れるところだった」と呟いた




「里見ー、明日の予定は?」
「あー?明日ぁ?」

里見は本から顔を上げて宙を睨むと「あぁ」と言って須野を見つめる

「夜、吉田と飲み行く」
「あー、そっか・・・そうなんだ」
「お前も仕事だろ?」
「うん・・・そうなんだけど・・・ね」

里見はまた本に目を落とすとペラペラと紙をめくる音が響く

『そりゃそうだ。覚えているわけがないよね』

須野は少しだけ寂しそうに微笑むと「おやすみ」と里見の頬にキスをしてドアを開ける

「・・・」

ドアの閉まる音で里見は顔を上げて首を傾げる
また隠し事・・・隠しているというより、言いたいことを我慢している態度。言えばいいのに相変わらず言えない須野にひとつため息を吐くと本を閉じて腰を上げた

「須野ー・・・風呂か」

須野の部屋に移動するとシャワーの音が聞こえて里見は肩をほぐしながら須野を待つ間ビールでも・・・と冷蔵庫を開ける

「・・・」

普段そこにないものを見てため息を吐きながらビールを取り出すとポケットの携帯を取り出す

「あー、吉田ー?明日キャンセルー・・・あー?次んときなー!んー・・・そんだけ」

すぐに明日の夜のキャンセルを電話するとバスルームへと向かいいつも通り、ノックもしないで開け放つ

「うわぁぁっ!!!!」
「明日、キャンセルしたから」
「え?ええ?」
「バーカ」

バスルームからすぐ出て行った里見を見て須野は固まったまま「えぇ?」と小さく呟いた



須野が髪を乾かしながら部屋に戻るとソファでビールを飲みながら寛ぐ里見の姿。手にしたビールを見て把握する

「えっと・・・あのね」
「んなもんてめぇしか覚えてねぇんだからあんなん買う前に言え」
「あっ・・・いや、里見、そういうの好きじゃないの知ってるし・・・もし予定あればひとりで・・・その」

近くに来た須野の足を軽く蹴る

「言いたいことあれば言え」
「・・・」
「早く!ノロマ!」
「っ・・・明日っ!付き合ってもらって1年なのでっ!僕と過ごしてください」

里見は長い足を組み直して「仕事あんだろ」と須野を見上げる

「夕方上がり・・・」
「・・・朝は?」
「昼から仕事」
「・・・分かった」

里見は立ち上がると空になったビールの缶を須野に押し付ける

「今から風呂入ってくる。で、お前のベッド行って、明日の朝、冷蔵庫のあれ食って夜は春子んとこでも行くぞ」
「っ?!ほ、ホント?!いいの?!」

急に明るくなった須野の表情を見て須野のお尻に蹴りを入れると「バカ」と呟いて去っていく


里見が風呂へと行っている間に冷蔵庫を開けて仕事帰りに買ってきたケーキを見つめて微笑む

小さめのホールケーキ。1という数字のロウソクを添えてあるイチゴののったケーキ

幸せの時間がもう1年過ぎたのだと思うとそれだけで嬉しくて。時間が合えば一緒に祝いたい。くだらないと言われるのを予想していたのに意外な反応と答えで須野は顔を赤くする


「ニヤニヤ気持ち悪ぃな・・・お前」
「っ!や、これは!」
「まぁ、いい・・・ほら、ベッド行くんだろ」
「う・・・うんっ」

まだ濡れた髪から水滴が落ちる里見にタオルを手にすると髪を拭きながらベッドへと向かう
来年も10年後もこうして里見といられるようにそっと願いながら・・・


つれない君と売れてる僕 番外 アニバーサリー おしまいおしまい





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柚木くんと竹市くん3-3 - 09/23 Wed

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「たけちゃ・・・まだ怒ってるのっ?」
「なんで?」
「も、ちょうだいって・・・」

なかなか欲しいものが貰えなくて球が竹市の手首を掴む

「指じゃ達けない?」
「ム・・・リ・・・達きたいっ、早くっ挿れっ」
「ウソ。さっき乳首だけで達けたからここでも達けるでしょ。もー、トロトロだ?球さん、指だけで感じる可愛いとこ見せて?」
「っ・・・意地悪っ!たけちゃんの意地悪ー!」

頭を何度か振ると体内へ埋められている指の動きに集中する。いい所ばかり何度も突かれて、それなのに達きそうになる度にズラされ焦らされる

「頭おかしくなっちゃ・・・」
「いいよ」
「ヤダぁー・・・たけちゃんっ、たけちゃんっ!!」
「すげぇ可愛い」
「っ・・・」

可愛いだなんて普通じゃあり得ない。190近い大男。そんな球に可愛いだなんて言うのは竹市くらい
でも、それが嬉しくて・・・そう言って欲しくて恥ずかしい姿を見て欲しいと思ってしまう
もっともっと可愛いと思って欲しい。可愛いと言われたい
それが球の望み

「出ちゃ・・・イイ?たけちゃん、出ちゃうっ」
「いいよ」
「っ・・・あ、あぁ・・・あ?っあ!なっ・・・」

精を吐き出して力の抜けた球の中に竹市は欲望を押し込む

「っあ、ぅ」
「うっわ・・・すげ・・・まだ達ってる?中、すごい」
「たけちゃ・・・っあ・・・やぁ」
「イイの間違いだよね?」
「んっ、違っ」
「中達きずっとしてるでしょ・・・あー、ヤバ・・・もたないわ」

うわ言のように「イヤだ」「ダメ」と繰り返す球の汗ばんだ額に張り付いた髪を剥がすとキスを落とす
もし、本当にイヤだったら引き剥がすのは簡単なのだと思う
けれど、そうしないのはイヤじゃないから

「たけちゃ・・・好きっ・・・大好きっ!」
「うん?」
「ごめ・・・ねっ」
「うん」

もう怒ってない。とっくに許している・・・そもそも、竹市にとって本当に許せないことがあるのか分からない
なんでもすぐに許したくなるし、謝ってくる球を愛しく思えるから





虐めすぎたのかシャワーを浴びた後すぐに微睡んでいる恋人の傍にペットボトルを置くと腰を下ろす

「たけちゃんー?」
「うん?」
「もう怒ってない?」
「怒ってない」
「オレのこと好きー?」

竹市は球の顔を見ると見上げてくる目が不安を抱えているのがすぐに判る

「・・・この指にしてるやつなに?」
「たけちゃんがくれたやつ」
「好きじゃない人にこんなの渡す?」
「・・・でもー」

顔を赤くする球を可愛いと思った。愛しいと思った

「好きじゃない人を追いかけて大学くると思う?」
「・・・嬉しいー」

いつものように笑って竹市の腰に腕を回した球の手を撫でると「遠征の間、寂しいくらいには可愛いあんたが好きだよ」と言葉にすると耳まで赤くなった球が何度も頷いて竹市の体に顔を埋めた

「たけちゃん、おかしいよね・・・」
「あー?」
「こんなオレに可愛いとか言うし」
「可愛いでしょ」
「流ちゃんじゃないんだよ。オレ・・・デカイし・・・流ちゃんみたいじゃないもん」

球が柚木を大好きなのは弟だから。そして、羨ましいから

初恋から同性が好きだった球にとってどんどん大きくなる体が怖かった。男らしくなっていく体や顔が怖くて。成長するのに可愛いままの弟が羨ましくて流になりたくて・・・それなのに憧れた可愛いという言葉を竹市に言われる度、恥ずかしくてくすぐったくて心地よくなってしまう

「いいんだよ・・・あんた、オレの前だけで可愛かったらそれでいい」
「・・・おかしいよ・・・」
「オレに好きだって言われて耳まで赤くしてるとことか可愛いだろ・・・あと、泣いて強請るとことかたまんないよね」
「っ!泣いてない!」
「いつも泣いてますー」
「泣いてないってば!」

少し怒って顔を上げた球の頬を抓ると「そうやってムキになるところも可愛い」と言ってキスをした

「だから、もー、ホントユズから卒業しろよ」
「ぅ・・・」
「ユズに嫉妬するってどんな状況だよ」
「でも」
「でもじゃない!あんたは「わかりました。たけちゃんが1番です」って言えばいいの!」
「・・・たけちゃんが1番好き!」

球にそう言われると「よくできました」とキスをした
きっとこれからも何度もケンカするだろう。でも、その度にこうやって仲直りの甘い時間を過ごせればいい




竹市くんと柚木くん3 おしまいおしまい



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柚木くんと竹市くん3-2 - 09/22 Tue

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トントントン・・・

竹市はドアを叩く音で目を開けていつの間にか寝ていたのだと気付く。体を起こすと時計を確認した

「・・・」

時間を見ると日付が変わったところで、こんな時間に扉を叩く人間なんて1人しかいないと思いながらもう一度ベッドへ倒れる

トントントン・・・

何度も何度も叩かれるドア。強くはない。単調なリズムと単調な強さでずっと叩かれて、こんな夜中にドアをノックされ続けるのは近所迷惑だと立ち上がってドアを開ける

「・・・帰って」
「っ・・・」

月明かりが目を赤くさせて酷い顔をしている球を映し出す

「・・・」

震える手が竹市の手を掴んで懇願するように膝をつく

「ごめ・・・なさい」

ぽろぽろと流れ落ちた涙が玄関に滴を落として小さな水たまりを作っていく・・・





また球の泣き落としに負けた・・・と竹市は部屋の真ん中で正座して下を向く球に心の中でぼやいていた
ケンカなんてしょっちゅうで、毎回、毎回同じことの繰り返し・・・

「ごめん・・・ね?」

電気を点けた部屋で球の顔を改めてみると目は腫れてたし真っ赤だし・・・どれだけ泣いたのかと手を伸ばしそうになるのを耐える
触れたらもう最後・・・いつものようになし崩しにエッチして、この怒りは伝わらないのだと判っているから

「たけちゃん」
「帰りなよ」
「・・・」

また体を震わせて下を向いて黙り込む球を置いて竹市はバスルームへと向かう。シャワーを浴びながらもうここでヌいてから戻ろう・・・一度冷静になってしまおうと自身に手を伸ばす

頭に浮かぶのは球の姿でケンカしているのに怒っているのに思い浮かべてしまう自分にイラつきながら扱く

「っ・・・クソ」

怒っていてももうやめたいと思ってもやっぱり好きで好きで好きで・・・

吐き出された白濁が流れていくのを見ながらもう一度小さく「クソ」と悪態をついて部屋に戻る
シャワーへ向かう前と同じ体勢でいる球を見て胸が痛い。こんな弱い球を見たいわけじゃない。笑顔が見たい。バカで甘えてくる球を見ていたい・・・でも、笑顔にできないのは自分のせいで・・・

「・・・たけちゃん・・・わ、別れたくないです」
「え?」

突然飛び出した球の言葉に心臓が冷たくなる
確かに、さっき、もうこんな苦しい想いはやめたいと思った。でも球にまで、本当に別れまで意識させてしまったのかと慌てて傍へ座ると広い背中にそっと触れる

震えているのは泣いているから・・・

別れるのが嫌で泣いているのか・・・別れると思わせたことの罪悪感・・・いつだってそう。球に泣かれて結局罪悪感でいっぱいになって

「球さん」
「っ・・・」
「こっち向いて」
「・・・」

大きな体を小さくしたまま顔を上げる
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってるのに愛しいと思ってしまうこの不思議な感覚

「酷い顔・・・」
「ぅ・・・」
「オレ、別れようって顔してる?」
「・・・判んない」
「球さん、オレ、球さんだけなんだけど・・・?」
「・・・?」

まだ判らない恋人の頭を撫でる
自分でも調子がいいと思う。でも、別れるだなんて実際聞いてみたらやっぱり怖くて。彼の手を離すなんて嫌で仕方がない

「なんでも全部やってやる気でいるのに球さんの心はオレのだけにならないの?」
「・・・たけちゃんのだよ・・・」
「ユズだけは抱けるんでしょ?オレのことは抱けないけど」
「・・・たけちゃん・・・オレにして欲しい?」
「いや、して欲しいっていうわけじゃないけど。球さんがしたいなら・・・とは思ってる」
「っ・・・オレ、バカなこと言った・・・ごめんなさい。もうあんなこと言わない。流ちゃんのコト好きじゃなくなるのは弟だからムリだし、あれは冗談だったんだけどもう絶対言わないっ!冗談でも言わないっ!!!」

竹市はそっと球の頭を撫でると「じゃあ仲直りのキスして」と囁く

すぐに球の唇が竹市の頬に触れ、唇に触れ、鎖骨に触れる

「待った!やらない」
「え・・・」
「いや・・・さっき・・・ヌいてきた。さっきまでするつもりなかったから」
「えっ!!!で、でも・・・1回だよね?ねぇ・・・」
「そうだけど・・・球さん始めたら止まんねぇし!体力差っ!体力差っ!!!」
「っ・・・拷問だ・・・たけちゃんはまだ怒っててオレに拷問を課すんだ・・・」

うるうるとまた涙が零れそうな目を見ると竹市は判りやすくため息を吐いて球を抱き寄せる

「そんな顔反則だっつーの」
「たけちゃん、大好き」
「ユズよりも?」

少しだけ意地悪な顔をした竹市の頬を軽くつまむと「流ちゃんよりもっ!」と少しだけふくれた顔でそう投げ捨てるように吐き出す
竹市は笑って「よくできました」と頭を撫でると球のシャツに手を入れる
鍛えられた胸筋を押し上げると首筋に噛みつくようにキスをする

なんでこんなにも愛しいのか・・・
球以外の男にこんな感情はわかないし、球以外ならやっぱり女の子がイイとも思う。球だけ・・・こんなにも情欲をわかせてくれるのは球だけ



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柚木くんと竹市くん3-1 - 09/21 Mon

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その日、柚木と電話を終えた球がいつも以上に鬱陶しいと竹市は思っていた

「だからね、たけちゃん、オレ、もうホント・・・あぁぁぁ!!!!カッキーめぇぇぇぇぇぇぇっ!!!なんで流ちゃんは流ちゃんはぁぁぁぁ!」
「・・・それ、もう何回目?」

繰り返される柿内への恨み節と弟への愛の言葉。いい加減にイライラしてきた竹市は机に肩肘をついてため息を吐いた

「あぁ、帰った時に流ちゃんが可愛く「お兄ちゃん・・・判んない教えて」とか言ってきたらどうしたらいい?!きっとオレ!オレ!!!流ちゃんになら勃つ!っつーかバリネコのオレだけど流ちゃん相手ならタチできるよ!あー、どうしたらいい!?今すぐ実家帰って実践付きで・・・」

そこまで一気に言い切って球はやっと気付く・・・

恋人の怒りに

「あ、たけちゃん、違う・・・違う!えっと別に・・・」
「何が?」

顔に張り付いたような笑顔が余計に怖い・・・球は竹市のご機嫌を取るように手に触れるが、その手を振り払われる

「たけちゃん・・・」
「オレはできた彼氏ですからね?弟にヤキモチなんて妬かないんだよ?」
「・・・えっと・・・ホント?」

竹市に再び伸ばした手をペチンと叩かれる

「んなわけないでしょっ!」
「たけちゃんっ!!!たけちゃん!ちょ・・・どこ行くの?!」
「帰る」
「帰るって・・・え!でもっ今日は泊まるんだよね?ねぇ!」
「ムカつきすぎてやる気もなくなったから帰る」
「ヤダっ!ヤダヤダヤダぁ!!!」

Tシャツの裾を引っ張られたが、竹市はそれを振り払うと部屋を出て行く。球が柚木のことを可愛がっているのは高校の時から知っている。元々、球と付き合うきっかけになったのも、球の目の前で柚木を庇って助けたからだったし、付き合い始めてからもやたらと柚木の話ばかりだった・・・
でも、それでも耐えられた。付き合い始めは共通の話題なんて水泳と柚木しかなかったし、それでも楽しく過ごせていたから。でも、今は同じ大学の同じ部活・・・共通の話題も増えたはずなのにやっぱり変わらないまま柚木の話・・・

弟に嫉妬するなんて馬鹿げている。何度も竹市は思ってはいたが、今日のは許せない。柚木を抱けると言った・・・弟が性的対象になると言った・・・

「クソ・・・」

本当なら、来週から海外遠征に行く球のところでゆっくりするはずで・・・こんなはずじゃなくて・・・

部屋の電気もつけずにベッドへ直行するとすぐベッドに倒れる

バイトだって球の都合に合わせて調整しているし、球が会いたいと言ってきたら遅くても球のもとへと走って行く。どんなに疲れていても求められたら求められたままするし、なんでも球の願いを叶える神のように・・・

だけれど、都合のイイ恋人になっているようでイラつく。たけちゃんと呼ぶ声ですらもイラついてしまう

ピリリリ・・・

携帯がポケットの中で震えるが、無視する。きっと半泣きの球が甘えた声で「ごめんなさい」と謝ってくる電話だから・・・今回はその言葉でその声で許せる気がしない・・・

来週からしばらく会えないから甘やかしたい・・・そう思っていた数時間前の自分が懐かしく感じてしまう
優しくして蕩けさせて・・・

ピリリリ・・・

何度もかかってきては切れる電話・・・竹市はポケットの中に手を入れて携帯の電源を落とす
ツラい・・・ツラいけれど別れたいかと聞かれれば別れたくはない。好きだから。本気で好きだから・・・でも、たまについ思ってしまう

こんなツラい恋なんてやめてしまいたい






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