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つれないキミと売れてる僕7-16 - 12/31 Thu

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須野が目を覚ますと掛けた覚えのないブランケットが掛けられていて、痛む頭を抑えながら昨晩の里見は夢じゃなかったことを知る

「・・・」

里見をいきなり抱きしめてしまって恐怖を与えなかったか不安になりながらフラフラと立ち上がってマスクをすると里見の部屋を叩く

すぐに開いた扉からいつもの不機嫌そうな顔の里見が見えて須野はすぐに頭を下げる

「あ?」
「ごめんっ」
「なんなんだよ。いきなり」
「えっと・・・ありがとう!ブランケット!」
「あー・・・んー」

謝るのをやめてお礼を言うとひとつ頷いた里見はくしゃくしゃと須野の頭を撫でる

「てめぇはひとりで溜め込みすぎてんだよ」
「・・・僕、恥ずかしいこと言ってた・・・ごめん」
「堂々としてろよ・・・人の噂も75日っつーだろ」
「49日じゃないの?」
「誰が死んだんだよ」

須野は首を傾げながら「誰も死んでないよ?」と呟いて里見に「バーカ」と額を突かれる

「っつかお前まだ熱ぃ!寝ろ!寝てろ!ない頭で難しいことばっかり考えるから熱なんか出んだよ!」
「・・・うん・・・里見は仕事?」
「仕事!」
「・・・そっか」

眉を下げて里見を見つめて微笑む

「っ・・・なんだよ!今日1日甘えさせてやっから明日から絶対邪魔すんなよ?!特別だからな?!」
「え・・・え?里見、いいの?!」

ズカズカと須野の部屋へ入ると須野の手を引いて寝室へと向かう

「里見?」
「寝ろ!」
「・・・甘えさせてくれるって・・・」
「だからっ!!!」

寝室のドアを開けてベッドへ押し倒すとすぐに隣に寝転がる

「・・・ほら」
「っ・・・」

腕を広げた里見の胸に頭をつけるとすぐに撫でてくれる乱暴で優しい手

「里見・・・」
「あ?」
「イヤじゃない?僕とこうしてて怖くない?」

上目遣いで見上げてくる須野の顔を無理やり胸へと戻す

「黙って寝ろ」
「うん・・・」

里見の心音が聞こえる
規則的な鼓動が須野の耳に心地よく響く
里見の香りが須野の鼻腔を刺激する
里見の熱が須野の体温を更に上げていく

「・・・ゴソゴソすんな」
「だって・・・」
「勃起させんなよ?」
「しっ・・・仕方ないからね?!里見がこんなに近くにいてすごい里見の匂いするしっ里見優しいしっ・・・暖かいし」

冗談のつもりだったのに本当だったとは思わなくて里見は笑いを堪える
須野は須野でなにも変わってない。変わらず自分を愛している。そう実感する

「須野ー」
「うん?」
「オレのこと好きっつってみ?」
「・・・好き・・・大好き」
「もっと」
「大好き・・・大好き」

甘えた声が耳に響く
須野を撫でると満足そうな顔で「もっと」と強請る

「今日、僕を甘えさせてくれるんじゃないの?」
「好き好き言わせてやってる」
「・・・そっか・・・大好き。里見が好き」

里見の胸に抱きしめられてそっと唇を胸へとつける

「里見・・・」
「あ?」
「なんか下に着てる?」
「・・・あー・・・あぁー・・・そーいやぁなぁ・・・」

里見は思い出して何をしているのかとため息を吐く

「何?」
「いや・・・まぁ、いいか。引くなよ?」

里見は潔くシャツを脱ぎとるとすぐに現れる白いレース

「・・・な・・・」
「・・・うっわ・・・バカみてぇ・・・クソ」

須野の呆然とした表情に里見はベッドを降りる
バカらしくてこれを渡してきた葛西にまで怒りがこみ上げる

「待って・・・待って待って・・・何でっ・・・」

腕を掴んで立ち去ろうとする里見を止めて、勢い余ってベッドへと押し倒される

「・・・どうしたのこれ・・・なんで・・・なんでこんな・・・」
「離せっ」
「ムリ・・・教えてっ・・・」

顔が赤いのは熱のせいだけじゃないのだと気付く。目に灯る獣の本能
里見は少しだけ顔を背けて

「興奮するか?」

と尋ねてみた






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つれないキミと売れてる僕7-15 - 12/30 Wed

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中津の引き起こした事件によってその場にいた関係者に知られた事実には箝口令が引かれた
それでもどこかよそよそしくなったり、陰で囁かれるような気がして須野も周りと距離を取る日々。知っている人ばかりと顔を合わせるわけでもなかったが、それでも須野の精神は少しずつすり減ってきていた

「寛人、この後の現場、1人で行ってもらうことになるけど」
「あー、うん」
「・・・お前、大丈夫か?なんか顔が赤い」
「あー、熱っぽい・・・でも大丈夫」

山口はひとつ頷いてスケジュールの説明をする
熱っぽいのに加えて睡眠不足なのか眠気が半端ない
山口から受けた説明なんか全然頭に入ってこなくて山口にひとつ頭を叩かれる

「しっかりしろ!須野寛人!ちゃんと今日終われば明日からしばらくは完全オフだろ!」
「・・・ごめん。もう1回説明して」
「おう」

須野は頭を振って山口の説明を受けて撮影現場へと向かった




「ただいま・・・」

真っ暗な部屋に入り、電気をつけるとフラフラとソファへ体を預ける
気合いで乗り切った撮影だったが、気が抜けたのか熱が上がった気さえする

「・・・ジャケット・・・脱がなきゃ」

そうは思うのに体を動かすのが辛くてそのまま目を瞑った




「ん・・・」

ひんやりとした感触が気持ちいい・・・

「気持ちいい」

夢心地でその感触に浸るとまた頬を優しく撫でてくれてその感触が離れるのが寂しくて目を開ける

「里見・・・?」
「おう」
「ごめん。風邪引いたみたいで感染すといけないから・・・」
「・・・ふーん」

すぐに立ち上がった里見を見ているとドアとは逆の方向へ歩いていく

「?」
「ほら、飲め」
「ありがとう」

ペットボトルを渡された須野は少しだけ驚いた顔をして里見を見つめる

「なんだよ」
「夢・・・かなぁ・・・」
「はぁ?」
「里見ぃ・・・僕、ずっと我慢できてたのになぁ・・・10年以上我慢できてたのになぁ」

熱に浮かされたような声で須野は続ける

「里見に触れたくて仕方ない・・・里見が欲しくて仕方ないんだ」
「・・・」
「仕事行きたくないよ・・・もうヤダよ・・・」

珍しい須野の弱音
元々仕事行きたくないと甘えてくることはあったが、それは甘えで本気じゃなかった。でも、今の言葉は明らかに本気
そっと須野の頭を撫でると須野は気持ちよさそうに「やっぱり夢・・・だね。里見叱ってくれない」と呟いて白い手に唇を寄せる

「僕、里見のこと恥ずかしいだなんて思ったことないし、みんなに言いふらしたいくらいなのに・・・コソコソ言われてるの見るとキツいんだよ・・・」

里見の指を口に含んで指の腹を舐める
須野の体温がいつもよりかなり高いことが口内の熱さで判った

「里見・・・僕、里見とずっと一緒にいたい。朝も昼も夜も・・・思い切り抱きしめたい・・・夢ならいいかな・・・抱きしめてもいいかなぁ」

急に抱きしめられた体
須野の熱い体が密着し、里見を恐怖が襲うけれど耳元で何度も何度も名前を呼ばれて須野だと理解できる。須野以外にこんなに必死に抱きしめてくる人間はいない

「里見だ・・・里見・・・好き。大好きだよ。里見」

そのまままた眠りに落ちて力の抜けた腕から体を抜くとそっと須野の額を撫でる

「いっその事海外逃亡しちまおうか・・・オレの叔母さんがいるイギリスとか・・・さ・・・」

その言葉は眠った須野には届かない独り言。でも、傷ついた須野を癒してやりたくて本当に思った言葉







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つれないキミと売れてる僕7-14 - 12/29 Tue

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「なー、お前さー、こー、理性飛ばすくらいの媚薬知らねぇ?」
「・・・は?!いや、今、あんまりにも突然すぎて何が何だかわかんなくなったよ!」

葛西は顔を赤くして目の前の色気溢れる親友を見つめる

「・・・っつかそれ、どういう・・・」
「例えばだ!あの記憶がすり替えられるような激しいのをだな」
「待って!光!待ってぇー!!!!確かにオレ今まで散々光と女の子のそんな話聞いてきたけど須野ちゃんとのは別だからな?想像しまくっちゃって恥ずかしいからな?!」

里見は判らないといった顔をしてそのまま続ける

「あいつにやられたんなら別に許せ・・・ねぇけどぶん殴るだけだと思うしさ」
「だからね、光・・・素直に病院行くってのはナシなのね」
「その選択はねぇ」

ため息を吐いた葛西が頭を何度か掻いて顔を上げる

「でも光も判ってるだろ?須野ちゃんがそんな無理やりにとかさー」
「だーからーこう・・・理性吹っ飛ばすようなヤツ!」
「須野ちゃんにとっての最大の媚薬ってお前だろ?」
「あぁ。知ってる。だけどそれも耐えやがる」

須野が退院してから毎日のように仕掛けるのは里見。須野からがダメならばいっそのこと自分で最後まで・・・と思ったけれど挿入が出来なくて過呼吸になったところを須野に介抱された

「溜まってるわけねー」
「諦めて風俗でも行くかー」
「ちょ!光が!」
「お前も行くー?」
「行く!!!って嬉々として言ってもいいものかー・・・オレ嫁いるのにー」

手を上げて立ち上がった葛西が冷静になってまた座る

「っつかなんでオレが金出して抜いて貰わなくちゃいけねぇの?オレに金出しても触りたいってやついるだろ」
「・・・いや、なんなのその自信」
「はぁ?だってオレ完璧だし」

当然というように言い切る里見にまたため息を吐いた葛西は笑って「そうだね」と同意する

「でも、須野に触られるのもだんだん大丈夫になってきてるんだろ?」
「あー?まぁ、なんかの瞬間にダメんなるけど」
「・・・でも、前より確実に須野に触らせてるだろ」

確かに最初は須野に似た背格好の男性が近付いただけでフラッシュバックを起こした。須野だと理解していてもキスしようとしたら吐き気が襲ってきた。不意に須野に抱きしめられて過呼吸を起こした
でも、今は改善されて一緒のベッドで抱きしめられて寝ることだってできている

「あ!あれあげる!」
「あ?」

葛西がクローゼットをカタカタ探してリボンのかかったままの袋を渡される

「なに?プレゼントか?」
「やー、前に忘年会で当たったジョークグッズ」
「・・・これがなに?」

袋を開けて取り出したひらひらとした布を広げながら久々に手にした気がするそれをただ見て首を傾げる

「それ、メンズ用」
「はぁ?!」
「だからこれ着てー光が須野ちゃんにせまったら須野ちゃんもさすがにこう・・・」
「ふざけんなバーカ」

クシャクシャと丸めて投げつけたそのレースがたくさん使われた女性用に見える揃いの上下下着にガーターベルトまで丁寧につけられたそれは葛西の体にぶつかって床に落ちる

「あいつが好きなのはオレで、そんなのには興味ねぇし。そもそもそんなのつけてその気になられたらオレが凹むっつーの」
「・・・光のならオレは見たいっ!」
「ふざけんなよ?」

下着を広げて葛西は胸に当ててみる

「なにもそそられねぇし!寧ろ萎える!腐る!もげる!」

里見に散々言われてまたたたんで袋へ入れる葛西

「でも、気が向いたら須野ちゃんの前で」
「バカか!バカだな?こんだけ言われてもお前」
「じゃあさー!光はこういうの身につけた美人が長い足で跨ってきたらどう思うのさ!」
「・・・」

里見は少しだけ考えて「確かに」と呟く

「でしょ?!光は美人でしょ?同じだってば!ほら!あげるから!」

葛西に半強制的に押し付けられたそれをとりあえず持って部屋へ戻る
そもそも、今日はこんな話じゃなくて映画の脚本を進めるための打ち合わせがメインだったはずで・・・里見はため息とともに悪態を吐き出すと部屋のドアを閉めた






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つれないキミと売れてる僕7-13 - 12/28 Mon

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「くすぐったい」
「あ、ごめん・・・でも、くすぐったいだけ?」
「気持ち良くはねぇなぁー」

気持ち悪くもないんだと安心してまた耳に唇を落とす

「須野ー・・・当たってる」
「うん。期待してないけどしてるってこういうことだから」
「触るくらいなら触れそうだなぁ・・・」
「いい!それより!指輪っ」

触れようとした里見の手を握って少し離れると前に集めたカタログを引っ張り出してくる

「須野ー」
「うん?」
「とりあえずそれ、どうでもいいから・・・風呂入れて」
「!?・・・え?お風呂?」
「んー・・・」
「あ、今すぐお湯張ってくる」

須野がバスルームに向かい、風呂の準備をする

「須野ー、バブルバスにする」
「え?あ・・・えっと」
「これ」
「あ、うん」

里見に受け取ったバスジェルをバスタブへと垂らすと背中に里見の細い指の感触

「ふっ・・・」
「オレから触るのは結構平気・・・かも」

背中に触れていた指が下へ降りていき、綿パンの縫い目をなぞる

「っ・・・」

背中がぞわぞわと粟立つ感覚
でも、やめて欲しくない。里見にもっと触れてほしい。里見をもっと感じたい

「一緒に入るの狭いけど服脱げよ」

里見にシャツを少し捲られて須野は黙ってシャツを脱ぎ取る

「あー、お前風呂入ったらまずい?」

須野の腹に貼られたガーゼを少し触る
腕のあちこちに残った傷・・・
中津に傷つけられた・・・

「っ・・・」
「里見っ・・・大丈夫?!」

心配した須野を手で制すると里見は再び須野の傷に触れる

「あいつにやられた傷・・・」
「うん・・・あ、お風呂は大丈夫みたい。お腹の傷は酷くないんだよ。ホントに鍛えてた甲斐があったかも・・・多分、ここが一番深い」

腕を触った須野はふわりと笑って里見の頬に触れる

「もうあいつはいないから・・・今ここにいるのは僕だけだから」
「わかってる」
「愛してる」
「知ってる」
「言わせて?もっとたくさん」

里見のシャツのボタンを外すと少しずつ露わになる白い肌

「っ・・・すごい・・・目に毒っ」
「あー?」
「ううん・・・」

シャツから腕を抜くと白い肌に色の薄い小さな乳首がまた扇情的で須野は生唾を飲み込むとそこへむしゃぶりつきたい衝動を抑える

「風呂、入るんだからそれも脱げよ」
「ん・・・里見も」

ベルトを外す音がやたらとバスルームに響いて上手く外れなくてもたついていると里見の手が上から触れて器用にベルトを外していく

「・・・里見、笑わないでよ?」
「あ?」
「僕・・・勃っ・・・」
「んなもん脱がす前から判ってる」
「だからっ・・・笑わないでよ?」

なんども念押ししてパンツから足を抜くと下着を押し上げている姿が現れて恥ずかしくて俯く

「あー、これは完全にお前だよなぁ・・・」
「え」
「比べるわけじゃねぇけどさ・・・これだけは真似しようにも真似できねぇもんなー」

白い指が下着をなぞる

「っあ・・・」
「うん。お前だ」

里見は頷いて下着のゴムを引っ張り、ずらしていく
須野は黙ってその光景を見て生唾を飲み込む

どう考えてもこれは里見の挑発・・・試されているかのような挑発

「さ、里見お風呂、できたからっ」
「んー」

里見は下着を剥ぎ取るとドアを開けて須野の脱いだものと纏めて脱衣所へ投げる

「1人で入るには結構広い風呂だとは思うんだけどなー」
「うん・・・里見も僕も小さいほうじゃないしね」

狭くなったバスタブに向かい合って座ると膝がコツンとぶつかる

「里見・・・後ろから抱っこしたい」
「顔見えねぇのは嫌だ」
「・・・そっか」

須野は微笑んで里見の頬に泡をつける

「可愛い・・・」
「可愛いとか言われても反応に困るっつーの」
「うん・・・でもすごく可愛い」
「てめぇにもこうしてやる!」

泡をすくって須野の顔目がけて吹き付けると泡が顔じゅうについた須野の顔に笑う

「酷いなぁ」
「なぁ、須野」
「うん?」

泡を拭き取りながら須野は微笑む。幸せでただ里見がここにいて笑ってくれるだけで幸せで

「ヤりたい気持ちはあんだよ・・・」
「うん」
「でも・・・」
「うん。僕もいつだって里見が欲しい。だけど待てる。ずっと。ずーっと待てる」

里見から少し近付いた顔が重なって唇にそっと触れる

「っ・・・待っ・・・待てるって言ったけどそれっ、里見が挑発しまくってくるのは別だからね?」
「お湯汚れるから暴発させんなよ?」
「うん・・・」

水音を立てて立ち上がった里見が湯船から上がる
美しい体・・・この体を、心を傷付けた中津が憎い・・・心底憎い






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つれないキミと売れてる僕7-12 - 12/27 Sun

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須野が帰宅したのは本当にその翌々日

「須野!大丈夫だった?!お見舞い行けなくてごめんね?傷はどう?痛む?!」
「・・・大丈夫」

マンションに戻るなりすぐにやってきた葛西の顔がまともに見れなかった
葛西は知っていたのだ。知っていて2人で隠していたのだ

「須野ちゃん?」

違和感を感じた葛西が須野の腕を掴むとすぐに振り払われる

「ごめん・・・隠してたわけじゃなくって」
「いい・・・判ってる」
「ごめん」
「詳しいこと知ってるの?」

ソファに腰を下ろして頭を抱える須野の隣に腰を下ろす

「聞きたい?」
「聞きたい・・・」
「覚悟できてる?」
「できてる」

葛西は頷くとあの日あったこと、見たことが中心にはなったが、正直に全て打ち明けた




「吉田くんも・・・」
「うん。正直、オレじゃ担ぐことできなかったから彼を呼んだ光は流石だと思うよ」
「葛西を呼んだのもね・・・僕、そんなに頼りない・・・のかな・・・」
「違うだろ・・・」

肩を落とす須野の頭をコツンと叩く

「光はさー・・・まぁ、相当落ちてる時は別として、お前に弱いところなんて見せたくないんだよ」
「?」
「お前にはかっこいい里見 光でありたいんだろ」

須野は少しだけ笑って「そうなの?」と呟いてまた頭を抱える

「っていうか須野ちゃん!そんなんじゃ光を追い込むよ?」
「・・・うん」
「もっと普通にして!光の性格知ってるでしょ?光が前向こうとしてるのにお前がそんなんじゃダメー!」
「うん」

須野は手を下ろして前を向くとピシャリと両頬を叩く

「里見の部屋行ってくる!」
「うん」

須野は笑ってドアノブに手を掛けた

「里見ー!夕飯どうする?なんか食べたいものある?」
「うっせぇ!入ってくんな!」
「・・・あ、ごめん」

パソコンに向かって喋っていた里見は一瞬須野を見てそう言うとまたパソコンに向かって何か話していて、打ち合わせ中だと気付く
そっとまた部屋を出るとまだいた葛西が驚いた顔で須野を見る

「打ち合わせ中で怒られた」
「・・・今日、打ち合わせあったのか・・・っつか・・・へぇ・・・ふーーーーんっ!」

ニヤニヤと笑う葛西に首を傾げる

「え?判んない?判んないの?須野ちゃんっ」
「何?」
「須野ちゃん今日帰ってくるから打ち合わせで外出るの止めたんでしょー?あれはー!ヤダぁ!愛されてるー」
「そ、そう思う?里見、里見が?」

少しテンションの上がった須野が興奮しながら葛西を見つめる。葛西はニコニコしながら何度も頷く

「里見、僕と別れないでいてくれるってことだよね?きっと」
「・・・え!別れないだろ!」
「うん。僕は別れたくない」
「それでいいよ。もし光が別れるって言ったって本心じゃねぇよ・・・ホント素直じゃないからなぁー光は」

葛西の言葉にまた里見の部屋に行きたくてドアの付近でウロウロする須野に思わず笑う葛西。これでいつもの須野に完全に戻った気がする。あとは2人の問題




「終わった」

葛西も出て行ってすることもなく風呂を洗っているところに里見がやってきて須野は思わず「うわぁ!」と驚きの声を上げる

「何・・・」
「や!あ、えっと・・・お風呂入る?」
「何?期待してんの?」
「え!あ・・・違・・・」

「とんでもない!」と頭をブンブンと振る須野に少し不機嫌になった里見はバスルームを出て行く

「里見?」

慌てて後を追いかけていつものように手を伸ばして直前で止める

「それ、ムカつくからな?」

後ろを向いたままの里見に言われて「え?」と声を漏らす

「お前、判ってて別れねぇっつったんだろ?だったら触ってビクつかれても気にしてんじゃねぇよ」
「あ、うんっ・・・うん」

里見が嫌がることはしたくない・・・そう思うと手を引っ込めてしまう

「期待っ・・・はしてないけど、してる」
「あー?矛盾してんなぁ?」

里見が振り返って笑うのを見て少しホッとした須野は手を伸ばして里見を抱きしめる

少しだけ震えた里見の体を優しく抱きしめて「好きだ」と囁く

「まぁ・・・知ってるけど」
「里見・・・指輪、失くしちゃった」
「あ?」

それはウソ。あの日、中津が里見の指輪をはめているのを見て、すぐに捨てた指輪。奪われてはめられた指輪を取り返したとしてもそれを再び里見の指にはめたくはない

「だから、新しいの作ろう」
「なんでだよ!別に要らねぇだろ。オレも失くしたし」
「そうなの?じゃあ、やっぱり作ろう?ね?里見どんなのがいい?」

里見の香りが須野の鼻をくすぐって首筋に唇を寄せる
またビクリと里見の体が跳ねて「好きだよ」と繰り返す
きっと中津は言わなかった言葉で里見に自分だと判らせたくて好きだと繰り返す

「石田さんの所で世界にひとつだけの作るのもいいよね」
「バーカ。恭子にぼったくられるぞ」
「いいよ・・・里見の指によく似合う物になら僕、お金惜しくない」
「流石売れっ子俳優だなー」

里見の腰に腕を回してどこまで大丈夫なのか緊張しながら耳の後ろに口づけして耳朶を少しだけ噛んだ






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つれないキミと売れてる僕7-11 - 12/26 Sat

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コンコン

病室をノックし、顔を出したのは山口で、里見は山口に頭を下げると眠っている須野を見つめる

「山口さんもその手・・・」
「あぁ、オレ?大したことない」

手に巻かれた包帯を見て頭を下げる

もし、あの時被害届を出していれば起こらなかったかもしれない事件
けれど、里見のプライドがそれをさせなかった。男に犯されただなんて誰にも知られたくなかったこと。もし、中津がそれで捕まって『初めて』じゃなかったことをバラされ、追求されるのもイヤだった

「もうじき目、覚ますと思うから」
「・・・そうですか」

里見は椅子に座るとため息を吐く

「里見くん・・・キミ、もしかして」
「・・・?」
「別れるとか言うなよ?」
「!」

心に決めたことを見透かされて里見は顔を上げる
山口は「ダメ!ダメだよ!」と言いながら頭を何度も振って里見の肩を掴む

「別れるとか言われたら寛人は仕事辞めるとか言い出す!」
「・・・いや、どうですかね」
「頼むからそれはホントに・・・」

里見は何も言わず少しだけ笑う
今までの須野ならきっとそう言うだろう。だけれど、須野に触れられるのがキツくなった今・・・須野は自分から別れを切り出しそうな気もした。だったら、里見から別れてやりたかった。それが里見のプライド。須野に別れを2回目の別れを切り出されるのは里見のプライドが許さない

「ん・・・」
「あ、起きるかな・・・じゃあ、オレ、席外すからまた連絡くれるかな?」
「判りました」

須野が少しだけ眉を顰め、起きそうな気配を感じてすぐに山口が病室を出て行く。扉の閉まる音でゆっくり目を開けた須野はボーッと天井を見てハッとしたように体を起こす

「バーカ。寝てろ」
「っ?!さ、里見?!」
「おう」
「・・・里見・・・里見ぃ・・・」

ゆっくりと伸ばした腕を直前で止めて里見を見上げる

「里見、僕・・・」
「なぁ、須野、聞いたんだろ?」
「っ・・・」

ビクリと須野が動いて目を伏せて布団に涙をこぼす

「お前は悪くねぇけど、多分今までみたいにお前といるの無理だしさ・・・別れ」
「ヤダ」

里見の言葉を遮るように強い口調

「でもお前」
「僕のワガママ・・・けど、ヤダ。イヤだ!」
「・・・お前、もうヤれねぇかもよ?」
「僕、里見と付き合えることになった時なんて言ったか覚えてる?」

里見は黙り込む

「そんなのなくたっていい。里見が近くにいてくれれば」
「・・・バカ!お前はオレにも禁欲しろっていうことだろ?できるか!」
「っ・・・でも・・・イヤだ。別れたくない!他の誰にも里見に触ってほしくないっ!里見だって、僕のこと嫌いで別れるとか言うんじゃないでしょ?僕のこと・・・嫌いになってないでしょ?」

須野が捨てられた子犬のような顔で見上げてきて里見は小さく舌打ちする
そんな顔で見られたら言えない
嘘でも「嫌い」だと言えない

「僕、待てるから・・・何年でも10年でも待てるからっ」
「オレが待てねぇんだよ」
「・・・っイヤだ。イヤだっ」

里見に抱きついて縋りたいのにそれもできなくて須野は布団に潜り込む

「須野」
「絶対イヤだ」
「・・・あの部屋出て行くぞ?」
「?!」
「別れても変わんねぇだろ。恋人らしいことできねぇなら。昔みたいに隣に座ってるのはいいから・・・ただ恋人は解消するだけ」

布団から顔を出した須野がそっと手を伸ばしてそっと里見の手に触れる

「ごめん。僕はイヤだ。お願い・・・お願いっ」
「ワガママだな。お前は」
「うん。耐えられなくなったら浮気してもいい。でも、恋人解消はイヤだ」

恋人らしい触れ合いもなし、そして浮気もしていいだなんて付き合っている意味はあるのかと思ったが、里見は「仕方ねぇな」と須野の願いを受け入れる

「里見・・・ごめんね」
「あ?」
「僕のせいで里見が・・・辛い思いさせた」

里見は「そうだな」と呟いて須野の頭を撫でる
嫌いじゃない。それは事実。須野じゃなかったらこんな関係にならなかったと思うし、世話をさせるのも須野にだけ
昔から特別ではあった存在・・・

「帰るわー」
「あ、うん・・・大丈夫?1人で」
「バーカ。舐めんな。ここまでも1人で来たっつーの」

里見の言葉に頷くとまた手を伸ばす

「里見・・・」
「あ?」
「あいつ殺してやりたかった」
「・・・知ってる」
「殺してやれなくてごめんね」
「オレがそんなこといつ頼んだんだよ」
「・・・里見・・・ごめん・・・ごめんね」

須野の謝罪は必要ない。自分はもちろん、須野も悪くない。悪いのはただ1人・・・中津。彼が捕まった今、責める相手はいない

「じゃああんまり山口さんに迷惑かけんなよ?」
「うん・・・里見・・・」
「あ?」
「ううん。ごめんね」

最後まで罪悪感に満ちた瞳で見つめられていい気分ではない・・・

病室の扉が閉まると須野は膝を抱えて涙を拭う
気付けなかった。今まで触れようとして拒むように起こる体調不良は本当に里見の体調が悪いのだと信じ込んでいて、まさかそんなことが起こっているだなんて思ってもみなかった
でも、考えてみれば何かがおかしくて。自分が触れようとさえしなければいつも通りの里見で。葛西には普通に触れさせるのに自分にだけ怯えたような姿。それでも、美しく、自信のあるいつもの姿で・・・最近あまり外に出ないのも季節のせいだ、仕事が忙しいせいだとしか思ってなくて・・・

「寛人ーなんか要るものある・・・か?」
「・・・ない」
「・・・お前、まさか別れ・・・」
「てないっ!でもっ・・・このままでいいのかも判らない。里見を苦しめるのが僕なら別れてあげる方がいいのかもしれない・・・」

涙の跡が残る須野に山口はただ名前を呼ぶ

「でもっ!イヤなんだ!僕のワガママだけどもう手放すのは無理。もう2度と触れられないとしても・・・」
「寛人・・・あのな」
「山口さん、僕の仕事、ちょっとセーブできる?」
「ダメだ。そもそもお前のスケジュールは1年先までもう埋まってる」
「辞めたい・・・もう疲れたし」
「大体!お前は舞台は長期間家留守にするのがイヤだってやらなくなったし、ただでさえも」

須野が頭を振る

「ヤダ!もうヤダ・・・僕っ・・・里見を失いたくないっ」
「・・・」

須野にとって一番恐ろしいこと・・・里見がいなくなること
生きる意味すらわからなくなってしまう
里見がいなければ、なんのために働いて、なんのために食事を摂って、なんのために呼吸するのか判らない





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つれないキミと売れてる僕7-10 - 12/25 Fri

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須野が仕事へ向かい次の撮影の打ち合わせをしているとニコニコと1人の男が近付いてくる
見覚えがあって須野は一瞬戸惑った後笑って頭を下げるが、手に持った光るものを見て数歩後ろへ下がる

「キミがいるから僕が須野寛人になれないのがわかったんだー」
「え?」
「なんでキミになれないのか判らなくて、身に付けるもの全て同じにしたし、光も抱いたのに須野寛人になれないのは須野寛人は1人でいいからだよね?」
「・・・光・・・をなんだって?」

中津がナイフをチラつかせるのも忘れて須野は詰め寄る

「あぁ、聞いてない?恋人の光はもう僕の恋人なんだよ?ほら、この指輪ももらったし」
「・・・何・・・里見に何したっ!!!里見にっ!里見にっ!!!」

見覚えのある指輪をチラつかせた中津を掴もうとした手にナイフが振り下ろされる
血が吹き出して周りも異常事態を察して警備員を呼びに行く者、警察へ連絡する者、そして

「寛人っ!」
「離して。こいつ、里見になんかした!里見にっ!僕の大切な人にっ!!!」

マネージャーの山口は中津に飛びかかろうとする須野を止める

「邪魔しないで?」
「っ!!!」

山口の手にナイフが触れて血の筋ができる

「中津!答えろ!里見に何した!!!!」
「だぁからぁ・・・抱いた。セックス?暴れるからさぁ、あちこち痛そうだったけど」
「・・・里見を・・・やる・・・殺してやるっ!!!!」
「寛人っ!」

止める山口を突き飛ばすと中津に飛びかかってナイフが腕に突き立てられるが、中津の首に手を置いて締め上げる

「傷つけた・・・傷つけたのか・・・」
「傷つけた?それよりも気持ちよすぎて失神しちゃってたよ?ハハハっゲホッ」

須野の手がキツく締め上げる

「里見・・・里見を・・・」
「グェ」
「寛人っ、やめろっ・・・それ以上は死んじゃうからっ!里見くんに会えなくなるのはお前だぞ!」

里見の名前が出ると須野はその手をスルリと外すとナイフの刺さった手を押さえながら山口を見上げた

「っ・・・」
「アハハ!!!じゃあ死ぬのは偽物のお前な?」

そして反対の手に持った小さいナイフが腹に刺さったのを見て周りから更に大きな叫び声が上がった






ピリリリ・・・

里見の携帯が鳴って、ディスプレイを確認すると須野のマネージャーである山口からで里見は手を止めると携帯を耳に当てる

「はい」
『あ、里見くん?あの、キミにこんなこと頼むのもどうかと思うけどうるさい奴がいてさぁ』

それは当然須野のことだろうと思いながら「今度はなんですか?」と溜息を漏らす

『実は・・・大したことはないし、命に別状もないんだけどさ』

命に別状・・・その言葉に胸がざわつく

『ストーカーが入り込んであいつ刺されちゃってー』
「?!」
『あ、ホントに大丈夫!明後日には退院するし!』
「っ・・・」
『でもさー、その・・・あいつキミの所に行かなきゃって興奮しすぎて病院でも手を焼くくらいでねー・・・今は薬で眠らせてるけど・・・目覚ましたらまた暴れるだろうなぁ・・・っていう状況で』

里見は立ち上がると山口に病院を聞く

『あと、スタッフとかにキミ達のことバレたっていうか察したっていうか』
「・・・ストーカーって・・・」
『うん。中津っていう・・・昔のあいつの本出す時に協力してもらった奴で』
「っ!!!」

その名前を聞くと頭に血がのぼる気がした

『・・・知ってるんだよね・・・?』
「・・・そいつ、須野になんか言ってました?」
『・・・あぁ』
「そう・・・ですか」

わざわざサプリメントまで出してもらった意味がどこにもなくなった

『で、来てくれるかな?』
「・・・行きますよ。とりあえず。暴れるの止められるのオレだけなんでしょう・・・?」

里見は電話を切るとゆっくり立ち上がって支度をする
決心を決めて部屋を出ると須野のいる病院へと足を向けた








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クリスマス - 12/24 Thu

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕番外編
12月24日

イルミネーションの下で身を寄せ合って仲良さげに歩いているカップルがたくさん須野の横をすり抜けていく
変装用のメガネとマフラーであまり顔が見えないのかもしれないけれど、カップルはお互いの顔を見つめるのに夢中ですれ違った須野には全く気付かない

「イイなぁ・・・」そう心で呟きながら寒空の下、背中を丸めながら歩く

仕事は日付が変わる前に終わったし、里見と過ごせると思ったら里見からクリスマスパーティに行ってくるとメールが来ていて、里見がいない部屋へ戻るのが少しだけ嫌でのんびり歩いて帰ることにしたのだ

そのパーティには女の子たちはいるのか・・・だとか、そもそもそのパーティは誰とやっているのだとか・・・クリスマスは恋人同士が仲良く過ごす日なんじゃないのかだとか・・・心の中に浮かんでくる言葉を唇を噛んで追い払う

信じている
信じることにした

けれど・・・







「ただいま・・・」

部屋に入って電気を点けようとスイッチを探すと突然パーンという音が響いて急に部屋が明るくなる

「え・・・?え?!」
「遅ぇ!!!」
「メリクリー!!!!」

クラッカーの紙テープをくるくると回収しながら葛西は須野にパーティハットを被せる

「え・・・え?なんで?」

何が起こっているのか判らない須野はただ慌てて2人の顔を交互に見つめる

「だって・・・里見、クリスマスパーティ行ってくるって・・・」
「ここでやってんだろーが」
「・・・ここで・・・」
「サプラーイズっ!ってなったぁ?」

須野が「だって・・・だって」と繰り返していると里見に「うっせぇバカ」と頭を叩かれる
こんなことなら急いで帰ってくればよかった・・・のんびり歩いて待ちゆく人たちを羨みながら帰って来るんじゃなかった

「須野ちゃーんっ、嬉しいことにーーーーこれ企画したの光だからねぇ?」
「え?」
「葛西っ!」

葛西の首を掴んでそのまま口を押えると葛西がモゴモゴしながら須野にニヤニヤした笑顔を飛ばす

「里見が・・・?」
「違ぇよ!オレじゃねぇしっ!だいたいこういうの企画するのいつだって葛西だろーがっ」

どっちが本当なのか判らなくて葛西を見つめるとウィンクされて須野は顔を赤くする

「とにかくっ!葛西っ!お前なんか高い酒持ってきたんだろ」
「あぁ!もームードがないなぁー・・・でも、シャンパン持ってきたから乾杯しよう?」
「うん」

こうやって3人でクリスマスパーティをやるのは確かに今までもあったこと。でも、クリスマス当日は大体里見も葛西も彼女と過ごしていて、須野は母と一緒か仕事かひとりぼっちのクリスマス・・・
須野は嬉しくて胸が熱くて顔を赤くしながらグラスに注がれたシャンパンの泡を見つめる

「かんぱーーーーいっ!メリークリスマーーーーースッ!」
「メリークリスマス」
「はい。乾杯」

3人のグラスがカチンと音を立てて鳴って3人のクリスマスパーティは始まった








日付が変わって暫くすると酔った葛西はテンション高く「んじゃーお邪魔虫退散しまぁぁぁすっ!」と部屋を出て行く
机の上に並んだ空の酒瓶やつまみの残骸を少し片付けて須野は里見の手をそっと握る

「あ?」
「・・・いい?」
「あー・・・んー・・・まぁ、クリスマスだし?」

里見の返事で須野はすぐに握った手に唇を寄せる

「嬉しいの・・・すごい嬉しいの」
「あぁ。よかったな」
「うん・・・里見と過ごせるのも・・・パーティしてくれたのも」
「そうか」

須野の唇が里見の肌に触れては軽いチュッという音を立てる

「お前さー・・・明日も仕事で早いんじゃねぇの?」
「うん・・・朝から撮影あるけど・・・今日、ちょっともう止まらない・・・かも」
「あぁ?」

里見が須野を見つめると熱に浮かされたような須野の目が里見を動けなくする

「今日ね、帰り道、恋人同士が仲良さげに歩いてるのたくさんみて帰って来たの」
「クリスマスカップル程あてにならねぇもんねぇぞ・・・どうせホワイトデーまでに別れるんだ」
「里見は・・・もうっ!外の寒さなんて気にならない程密着してね・・・僕とすれ違っても肩が触れちゃっても気にされない程だったんだ・・・」
「ふーん・・・お前の知名度もまだまだっつーことじゃねぇの?」
「だから!・・・とにかく・・・里見と過ごせないと思ったから僕、周りが羨ましくて・・・ホントに羨ましかった」

須野の手が里見のシャツの裾から侵入して肌触りのイイ背中を撫でる

「でも・・・僕、すごい幸せ者だった」
「・・・おう」
「里見がいて・・・葛西がいて・・・ホント僕幸せ者だった。人を羨むことなんてなかった」

里見の唇にキスをすると里見の手も須野の腰に回されて尻を撫でられる

「シャワー行って、ベッド行こうぜ」
「ん・・・」

離れたくなくてキスをしながら抱きしめながら少しずつバスルームへ移動し、そのままシャワーを浴びて濡れた体をちゃんと乾かすこともなくベッドへと潜り込んだ






「うん・・・」

里見が目を覚まして目をこすり、手を延ばすとコツンと手に何かぶつかる

「・・・?」

目の前に置かれたクリスマスカラーの包装紙

「・・・」

体を起こして須野を見るとまだ眠っていて、少しだけ微笑むとその包装紙を静かに剥がす

「・・・」

包装紙を解かれたその中身は里見が毎年使っているシステム手帳

「来年のまだ買ってなかったみたいだから・・・」
「あぁ」
「おはよ」

目を開けた須野が優しく微笑んで里見を見つめる

「ありがと」
「使ってくれる?」
「ん」

須野は「よかった」と笑って里見を抱きしめる

「お前は出掛けるまでもう少し寝てろ」
「里見が一緒にベッドいてくれるならもう少し寝る」
「・・・甘えん坊か」
「うん」

里見は笑いながらため息を吐くと「んじゃクリスマスプレゼントの代わりな」と須野の隣に横たわる

「温かいー」
「おう」

幸せそうに微笑んで目を閉じた須野の頭をそっと撫でて、本当はもう来年の手帳も注文していたことは秘密にしておこうと思いながら里見も目を瞑った





メリークリスマス♪







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つれないキミと売れてる僕7-9 - 12/24 Thu

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「さぁ!光行くよー!」
「あ?どこにだよ」

突然やってきた葛西に里見は心底嫌そうな顔をしたが、葛西はおかまいなしに里見の財布と携帯、鍵を手にとって机に向かっていた里見を立ち上がらせる

「うん?病院でしょ」
「はぁ?!」
「え?だって主治医の所に行かなきゃ!」
「いや、それはお前・・・」

あの場を納めるための言い訳で本当に病院へ行きたいわけじゃなかったし、どこか悪いとも思ってない

「光も須野ちゃんも苦しそうだからなんとかしなきゃいけないよね」

それは判っている。でも・・・

「光も別れたくないって思ってるし」
「なんでオレが」
「ここに戻ってきたでしょ?」
「それはっ・・・この部屋は気に入ってるし」

葛西は「それは嬉しい」と笑うと繋いだ手を引っ張って外へ出る

「だから葛西っ!」
「・・・あ、出掛けるの?」
「須野ちゃんおかえりー!仕事終わったのー?」
「あ、うん。事務所行ってただけ・・・」

須野の目が葛西の繋いでいる里見の手に集中する
最近の里見は手に触れるだけで体を強張らせるのに葛西には普通に繋がせているように見えて苦しくなるのに仕事で作るように笑顔を見せる

「どこ行くの?」
「病院ー!主治医ん所ー!」
「行きたくないっ!」
「葛西・・・は、知ってるんだ」
「え?」
「里見の・・・病状?とか原因・・・とかかかってる病院とか」

葛西は少しだけ困った顔をして須野の肩を叩く

「光に紹介した病院、オレの知り合いっつーか・・・叔父さんのとこっつーか」
「あ・・・」

須野はすぐに「そっか」と納得して里見の手を握る。ビクリと跳ねるその手が切なくて里見を切ない顔で見つめて何か言いたそうな顔で口を結ぶ

「なんだよ」
「・・・や、ううん。病院ちゃんと行ってきて」
「・・・クソ。2人でオレを責めやがって」

里見は諦めたように葛西の手を思い切り振り払うと悪態をつきながらエレベーターへと向かった

「須野ちゃんにあとでちゃーんとフォローしないとなぁ」
「あ?」
「ううん。こっちの話ー」

エレベーターを降りる時葛西はそう言って首を振ると車のドアを開けて里見に「どうぞ」と笑顔でそう言った




「慎吾、何度も言うけどな?オレの専門は内科であって外科はもちろん心療内科なんてやってねぇんだよ!」
「可愛い甥っ子の頼みだよ?ねぇねぇ!」
「バカヤロー。厄介ごとしか持ちこまねぇお前のどこが可愛い甥っ子だ!家も勝手に出て何年も音信不通だったじゃねぇか!」

里見は「ほらな」という顔で椅子に座って葛西とその叔父の喧嘩を見つめる

「まぁ、事情は判るけどよぉ・・・光、お前ホントに治したいならちゃんとした病院行かなきゃいけねぇっつーことくらい判るよな?」
「判るし、行かねぇっつってんだけどさー、こいつも須野もうっせぇわけよ」
「・・・あー、もーっ!!!紹介してやるからそっち行けよ!」
「行かないから紹介とかいい」
「あぁ?!」

葛西の叔父、後藤医院の院長が里見を睨む
葛西の母方の叔父・・・それが後藤だった

「医者に守秘義務あんの知ってるけどさ、どこで漏れるかわかんねぇし?」
「・・・」

里見の気にするのはそこ
有名人となった須野と里見の関係。それがいつどこで外に漏れるか判らない。だったら信用できる身内だけにとどめておきたい秘密の関係

「だけど、オレじゃ全く畑違いなわけだ」
「判ってる。だから別に頼むわけじゃない」
「光!でもいいわけ?それでいいわけ?!」
「あの事故ん時も病院行ってねぇし、あん時も別に・・・」

葛西は少しだけ考えて「そうだね」と呟く。いつだって須野がそばにいて献身的に里見を世話し、治して立ち直らせてきた。けれど、今回はその須野がそばにいることで悪化するような気もしないでもない

「叔父さん、光になんか薬・・・サプリメントでいい。須野に治療してるってのが判るのがいい」
「あぁ、それお願いする」

後藤は溜息を吐いて何かカルテに書き込むともう一度里見を正面から見つめる

「気が向いたら紹介状はいつでも書いてやるから」
「ん・・・」
「あと、お前ちゃんと食えよ?白い体しやがって」
「それは昔から」
「いいか?タバコと酒ばかりじゃホントにダメだぞ」
「それはそっくりおじさんにお返しするよ」

後藤は「生意気」と里見の頭を叩いた後しっしっと診察室を追い払う

「あ、慎吾!」
「うん?」
「今度お前のDVD持ってこい」
「え?」
「映画は観に行ったけどな。寄越せ」
「うん」

葛西は笑顔で頷いて病院を後にした





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つれないキミと売れてる僕7-8 - 12/23 Wed

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里見が部屋に戻ってきてから何度も何度も繰り返される吐き気
心配する須野に大丈夫だと言い張っていた里見だったが、須野に引き摺られて病院へと向かわされた

「だからなんともねぇからっ!」
「ダメ!こんなに体調不良続いてるんだから絶対どっか悪い!!!いい加減病院嫌い治してよっ!」

大の大人が引き摺られて受付で駄々をこねる姿は目立つ
ただでさえも目立つ2人が更に注目を浴び、それに気付いて里見は小さく悪態をつきながら問診票に目を通す
そして覗いてくる須野を見て「個人情報」と呟くと須野は「でも」と里見を見つめ返す

「逃げねぇ・・・し・・・」
「・・・うん。じゃあ喫茶店にいるね?終わったら連絡して」
「おう」

須野の背中を見送ると溜息を吐きながら立ち上がって携帯が使える場所まで移動し、葛西の番号を出す

『もっしもーし?光ちゃんどしたー?あ、まさかまたどっかで動けないとか?!』
「須野に病院連れてこられた」
『えええ?!なんで?どっか悪い?』

須野のことだからもう話して相談していると思ったけれど何も言ってなかったのかと判って仕方なく病院へ来た理由を話す

『・・・まぁ、病院連れて行かれるよねー。そりゃぁ』
「どうにかしろよ」
『須野ちゃんはー?』
「喫茶店行った」

葛西は「そっか」と言いながら少し考えて

『主治医!』
「あ?」
『主治医いるって言ってみてよ!実はそっちに掛かってるから心配ならついてこいって言ってさぁ』
「・・・あー・・・主治医・・・かぁ」
『うん?だって主治医になってるのは事実じゃない?』

里見は小さく唸ると他にいい手が思いつかず、あの病院なら須野に聞かれたくない、知られたくない事も隠し通せる気がして了承すると電話を切ってすぐ須野のいる喫茶店へと向かった




「あれ?里見、早くない?どうしたの?」
「・・・あのな・・・」
「うん?」

須野が伊達メガネの向こうから心配そうな瞳で見つめてくるのが心苦しい
体調不良は精神的なもので、それが須野によく似せた人物からの暴力でだなんて知られたくない

「・・・実は、お前が心配して鬱陶しいから黙ってたけど病院はかかってる」
「ええ?!」
「だから・・・わざわざここで・・・その・・・」
「うん、じゃあ、判ってるの?体調不良の原因判ってるんだね?治療もしてるんだよね?」

それには黙り込む
治療はしていない。確かに病院は行ったし、検査も受けた。でもこの心の治療なんて・・・

「してる」
「うん。そっか・・・うん・・・うん」

須野が納得してくれようとしているのが判る。納得しようとしてそれが須野の中で難しい事も
この体調不良の原因、病名、そしてそれを黙っていた事・・・全て納得しようとして何度も何度も頷いては里見を見つめる

「だから須野・・・」
「うん。判った。帰ろうか」

伝票を掴んで立ち上がった須野と共に病院の喫茶店を出ると無言のまま帰宅する

「里見」

部屋に入った瞬間、口を開いた須野が振り返って里見を見る

「な、治る病気なんだよね?!」
「は?」
「なんかっ・・・言えないくらい酷い病気とかじゃないよね?入院とか手術とか必要?!ねぇ!」

堰を切ったように須野が不安をぶつけてくる
里見は少しだけ笑って須野の頭を叩く

「大した事ねぇし、入院も手術も必要ねぇよ・・・勝手に人を病気にすんな」

須野は何度も「ホント?」と繰り返して里見の手を握るとビクッと里見の体が強張る
違う。中津はこんな風に泣かない・・・自分に言い聞かせながら須野に握られた手を見つめる

「僕が心配すると思ったから黙ってたって・・・僕のこと考えてくれたってことだよね」

嬉しそうな顔をした須野が里見を見つめる
須野のため・・・それよりも里見は自分のために隠したいこと

「てめぇのためなんかじゃねぇし」
「里見ってホント優しい」

ふわりと笑った須野に胸が痛い
今までもっと余裕で須野を見つめ、須野を煽ってきた。でも、それがなかなかできなくてどうしようもなくて手を振り払うと須野の手が追いかけてくる

「優しいとかウザい!触んな」
「里見ー」
「仕事すっから出て行け」
「ん・・・夕飯何がいい?」
「あー・・・なんでもいい」
「うん。じゃあなんか作っておくね」

笑顔で須野が部屋を出て行くと里見は書斎机に座って溜息を吐く
怖くないはずの須野に触れられると体が強張る
須野が怖いわけじゃないのは判っているのに・・・中津にされたことなんて全て忘れ捨てたつもりなのに







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