FC2ブログ

赤い糸4 - 04/30 Sat

trackback (-) | comment (0) | その他SS
翌朝、残った酒で気怠さを感じながら体を起こして身支度をすると新田を叩き起こす

「朝飯の時間じゃね?」
「っ・・・お、おう・・・先、行ってて」

壁を向いたままの新田にあぁ、昨日のことを忘れてなくて思い出してどんな顔をしたらいいのか判らないのだろうと思って溜息を吐きながら腰を下ろす

「なー」
「うん?」
「・・・どーすんの?」
「いや、メシ行くよ?」

新田が体の向きを変えて怜を見上げる

「そーじゃなくて」
「・・・?」
「付き合ってんだろ?」
「っ?!」

素面で蒸し返すのか!とまた新田は顔を背けて壁を向く

「っつかさー、何その顔ー・・・寝てねぇのー?すっげぇクマできてんだけど」
「・・・寝れなかった」
「ふーん・・・」
「・・・」

新田は体を起こすと座り直す

「イイ・・・んだよな?」
「・・・んー。昨日も言ったけどな?よろしくー」
「ちょ!軽いな!軽いぞお前!」
「そ?腹減ったからメシ、行こうよ」
「ん、着替える」

のそのそと着替え始めたのをぼーっと見ているとシャツを着た新田が恥ずかしそうに顔を背ける

「見過ぎ・・・」
「あ?」
「や、まぁ、そんな気はないの判ってんだけど・・・」
「あ、そっか・・・悪い」
「謝んな・・・っつか・・・いや、また後で話ししよ。今は朝飯・・・他の奴らに全部食われちまう」

そう言った新田に肩を抱かれて部屋を出る
その左手から延びる赤い糸は相変わらず宙を彷徨っていて、自分から延びる赤い糸は廊下の先へと延びている。この糸を辿っていけば迷わずに俊輔の元へ辿り着けるのだと思うとただ情けなくて仕方ない
相手は男で。彼女がいて・・・

自分はどうせ運命じゃないからと諦めてなぜか友達と付き合うようになったのだから





「あれ?意外とみんな来てない。寝坊?」
「うわー。酒豪2人はさすがだなー。みんな二日酔いでメシなんか食えないってよー」
「え?オレら昨日帰ってからも酒盛りしてたけど?」

新田の言葉に驚きの声を漏らしたのは俊輔も同じ

「怜はそーんな可愛い顔して酒豪とかホント意外だよなー」
「は?」

可愛い顔・・・?

「しかも飲んでる時も淡々と飲むしー!もーちょい変わんねぇのー?なんかあるじゃーん!ちょっと顔が赤くなるとかさぁ」
「・・・酒と水の違いが味以外にあるのかよく判らん」
「怜ちゃんがすごいこと言ってる!!!いやいやー、怜くん、怜くん、キミ、そんな可愛い顔してんだからさぁ、顔赤くして酔ってたらモッテモテだよ?がっつり肉食系のお姉さまがたに食われまくりよ?美味しいポジションよー?」

また可愛い顔・・・と言われた。聞き間違いじゃなかったのだと俊輔を見る。可愛い顔・・・確かに童顔なのは自分でも知っていたが、可愛いだとか今まで言われたことがなかった

「食われまくりが望む人生とも限らんだろ」

そう怜が言い捨てて朝食の席へと着くと「怜ちゃん冷たぁーいっ!」という俊輔のふざけた声が耳に入って怜はため息を吐いた
そんな怜を何も言わずに見つめていたのは恋人になったばかりの新田。怜は否定したけれど、やっぱり俊輔のことを気に入っていて、自分と同じような感情を俊輔に向けているのだと密かに思った









「順平ー・・・彼氏ができた」
「お・・・おお?!」
「じゃ、じゃあ・・・怜くんも幸せ真っ最中?!」

ゼミ旅行から帰宅し、お土産を持って順平たちの家へと訪れた怜はそう告げると喜びの表情を浮かべた2人に囲まれる

「どうだ?やっぱりなんか違うか?安心感とか幸福感とか!」
「・・・っつか運命の奴じゃない」
「「は?!」」

順平と風花の声がハモって聞こえてどこまで仲良しか!と心でツッコミながら笑って2人を見つめる

「なんか・・・告られた」
「男に?」
「そう。男に」
「男好きじゃないとかじゃなかった?」
「好きじゃない」
「「じゃあなんで?!」」
「いや、さっきから仲良すぎだろ!お前ら」

怜は笑って天井を見上げると切なげに笑う

「運命じゃないなら限りなく運命に近い方が幸せかもしれない・・・新たな視野も必要だろ・・・オレには」

そう呟いた怜に2人は何も言えなくなって黙り込むと怜が声を上げて笑った

「なぁ、これでもオレと友達でいてくれる?」
「バカ・・・ずっと友達だろーが・・・バカ!」
「友達だし・・・友達だから怜くんのこと心配してる・・・でもっ!怜くんが幸せで楽しかったらそれで私たちは嬉しいよ?いつか会わせてね?その恋人さんに」

怜はこんな自分にも優しく友達でいてくれる2人に安心して顔を歪めて笑う

「なぁ順平・・・」
「んあ?」
「オレって可愛い?」
「は?!」
「いや、可愛い顔なの?」

順平がまじまじと怜の顔を見つめて首を傾げる。ずっと見慣れた親友の顔に変わりがない。モテるかモテないかで言うと、別に普通。普通の男・・・

「普通・・・?」
「だろ!言うと思ったけど!」
「これ言うとー・・・順平くんが拗ねるけどー・・・怜くんは可愛い顔だよー?」
「え!」
「なんだろ・・・母性本能くすぐられる系の・・・」
「くすぐられてんの?風花くすぐられちゃってんの?オレの親友にくすぐられちゃってんの?!」
「食いつきすぎだろ順平」

風花は頭と両手を振って否定するが、口を尖らせて拗ねた順平を困ったように撫でたりして慰める

「そっか・・・可愛い・・・はじゃあ特別じゃねぇよな」

そう呟いたのは俊輔の顔を思い浮かべながら・・・『可愛い』が特別な言葉だと思って少しだけドキドキしてしまったことを打ち消すような気持でそう呟いた






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more
スポンサーサイト



赤い糸3 - 04/29 Fri

trackback (-) | comment (0) | その他SS
「なー、酒巻ってさー、俊輔のこと好きだったりする?」
「は?!」

そう新田に聞かれたのは夏休みに入って行くことになったゼミ旅行
宴会場で飲みまくったのに大して酔ってもない2人は部屋に戻って缶チューハイで乾杯してからのこと

「や、悪い。違った?」
「違ぇし!何それ」
「いや、ごめんってー!でも酒巻ってゼミの飲み会とかも俊輔が来るときは予定押してても来るし、たまに俊輔のこと何気なく見てる気がしたからお仲間なのかなーって・・・や、違ったならキモいよな!ごめん!!!」

突然の新田のカムアウトに目を丸くし、苦笑しながら首を振る
俊輔を見ていたのはきっとまだ運命が勘違いであって欲しいと小指を確認したくて
飲み会は・・・飲み会は・・・?

「んで、カムアウトついでに言うとー!酒巻のこと結構タイプだなーとか・・・ぶは!言っちゃったし!!!でもあれだ!別にホモだからって誰彼構わず襲うわけじゃねぇし!いや、確かに好みだけどだからって無理矢理とかないから!同室だからって安心して寝ろよ?」
「・・・オレがいいの?」
「ん・・・なんか、こう・・・あー、くっそ照れるし!飲もう!な!やっべー!オレ酔ってんのかも!超口軽くなってる」

新田が新しい缶を開ける
プシュッという音を聞きながら怜は新田を見つめた

「オレ、女の子としか付き合ったことねぇけど」
「や!もー忘れて!ほら!飲め!な?!」
「・・・だからどうしたらいいのかとか判んねぇ」
「や・・・うん。だから・・・」

新田が気まずそうに困った顔で開けた缶チューハイに視線を落とす
言わなきゃよかった。折角仲良くなったのにこんな気まずい空気を作ってしまうなんて・・・笑い飛ばしてくれたらいいと思っていたのに失敗した・・・と思いながら

「でも、それでもいいなら」
「・・・ん?・・・は?!」
「だから、それでもいいなら付き合っても構わないけど?」
「え!・・・え?」

どうせ誰と付き合っても運命ではないのだから・・・新田の缶チューハイを握る手から見える赤い糸は宙を彷徨っていて自分には当然繋がっていない

「や、でも・・・オレ、男だけど?」
「見たらわかるし」
「・・・マジで言ってんの?っつかあれだな?実は酒巻も酔ってんな?!」

新田の顔が赤く見えたのは酒のせいか・・・それとも・・・

「酔ってねぇけど酔ってたとしても冗談で言っていいことと悪いことの判断くらいはついてる」
「・・・マジ・・・で?や、本気にすんよ?お前のことタイプだっつってんのはホントだし、もしお仲間なら遊んでもらえるかもとか期待してたんだからな?」

多分、一種の自暴自棄。運命じゃないのなら誰とでも一緒。それに、運命の相手が男ならば、同性と付き合ってみたら意外と上手くいったりするのかもしれない・・・そんな願望

「イイよ」

怜の言葉にまた顔を赤くした新田は俯きながら「よろしくお願いします・・・」と呟いた






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村


    ≫ read more

赤い糸2 - 04/28 Thu

trackback (-) | comment (0) | その他SS
「なーになになにー?なんか今日テンション低くね?フラれた?フラれたかー?」

久々に会った親友、順平がテンション高く怜の頭を突く
赤い糸が見えるということを家族以外で唯一知っている友達。そしてその彼女・・・怜は先日、自分にも見えた赤い糸の話をしようか迷って順平とその隣でにこやかに笑う彼女の風花を見つめる

「イイよな・・・お前らは」
「おー?フラれたかー?まぁーた運命を探してやっぱり見つからない系か?ん?んー?」

運命を探して見つからなかった方がよかった・・・順平と風花のように赤い糸で結ばれていて微笑ましいカップルになれないのだから赤い糸なんて見えなかったらよかった

「あれ?図星?」
「違ぇー・・・もっと最悪ー」

机に突っ伏した怜を見て風花が笑いながら「お酒もっと飲もうか」と立ち上がって冷蔵庫へと向かったのを見て怜は大きなため息を吐き出す

「何年目だっけー・・・」
「あー・・・?」
「風花とー・・・」
「付き合ってからは・・・3年?」
「んなもんだっけ・・・」

順平とは小学生からの付き合い。風花とも中学からの付き合い。もっともっと長いように思える2人の関係

「まぁ、お前が赤い糸云々の話しだして、自分の気持ちに向き合うまで結構時間かかったもんなぁ」
「順平くんは私のコト虐めてたもんねぇ?ブー花ブー花ー!って」

缶ビールを持って戻って来た風花がそう笑いながらローテーブルに缶ビールを置いて怜はそれを開ける
出逢ったときから運命で結ばれているのを知っていた。こんな身近に運命で結ばれた人間がいるなんて。と両親以外に初めて見る身近な運命で結ばれた2人に興奮した。どんな恋に落ちるのかとドキドキしていたのに、太っていることで虐められていた風花をみんなと一緒になって虐めだした順平にがっかりしたものだ

「あの時、怜くんが運命の糸の話しなかったらきっかけ生まれなかったのかなぁ・・・それともやっぱり運命の糸で結ばれてるからいつかはこうなったのかなぁ?」

風花の言葉に「どうなんだろうね」と怜は笑って空になった缶をくしゃりと潰すと口を開く

「糸が見えた・・・」

そう呟く。順平も風花も一瞬目を丸くした後、笑顔で喜びとお祝いの言葉を述べる。しかし、怜は首を振る

「笑うなよ?バカにすんなよ?ヒくなよ?っつかオレがヒいてんだけど・・・」
「なんだよ・・・もったいぶんなよ!だいたい認めたくねぇ運命の相手だっていんだろ?オレとこいつだって」
「うん!バカになんてしないって!どんな人?」

身を乗り出している風花にまたため息を吐き出すと新しい缶ビールに手を伸ばす

「同じ大学・・・の・・・チャラ男。彼女持ち」
「・・・」
「・・・男・・・っつった?」
「だぁかぁらぁぁぁぁ!!!ああぁああああ!!!もーーー絶対こういう空気になると思ったんだってば!!!」

怜は缶ビールを一気に煽る。怜の告白にどう反応していいか判らず、目を見合わせた順平と風花は困ったように怜を見つめた

「いや、怜、お前・・・男好きだっけ?」
「好きじゃねぇし!!!っつか知ってんじゃんっ!オレのタイプっ!!!」
「まぁ、知ってるけど・・・でも、運命ってタイプとかの話とはまた別ってのも判ってんだよな?」
「うっせぇよ・・・オレは信じたくねぇし信じられねぇの!」
「・・・あー・・・でも、運命の相手と絶対結ばれなくちゃいけないってわけじゃないよね?あ、違う!怜くんがその人と結ばれたいっていうなら私も全然応援するし、偏見とかもないんだけど・・・」

必死に繕っているのが判って怜はまたため息を吐きながら首を振ると机に突っ伏した

「別にもうこだわってるわけじゃねぇんだ・・・運命じゃなくたって幸せになれるっつって母さんも言ってたし・・・でも、ただ今はショックが大きいだけ・・・」
「怜、オレももしお前がそいつと付き合うことになっても別に今まで通り親友だ・・・ただ、そいつにも彼女がいるし」
「だぁかぁらぁぁぁぁ!別にそいつと付き合いたいわけじゃねぇし!名前も知らねぇしっ!チャラいし!友達にすらなりたくないタイプだと思うしっ!!!」

そう言いながら怜はまた缶ビールを空にした





3年になって信じたくない運命も忘れかけた頃、始まったゼミの新歓コンパで怜は驚いた

まさか彼が同じゼミを取っていただなんて。授業だってあの時が初めて会ったというのに・・・

「うぃーっす!」
「俊輔遅っせぇー!」

賑やかなグループの中にすぐ溶け込んだ彼がシュンスケだという名前なのだと初めて知る

「間に合ってよかったぁー!」

すぐに俊輔に絡みつくようにべったりくっついた女の子。

「おーおー来て早々彼女と見せつけてくるねぇ」
「ラブラブだからしゃーねぇよ」

あぁ、あれが例の彼女かと納得しながらビールのグラスを傾ける。いくらラブラブでもそれは運命じゃないのに・・・と思いながら。彼の小指から延びて自分に結ばれた輝く赤い糸を見つめながら・・・

「酒巻は酒って漢字がついてるだけあって飲めるんだ?」
「あー・・・まぁ?」
「オレ、新田。多分結構授業被ってると思ったけど?」
「知らない・・・悪ぃ」

人の良さそうな笑顔で新田は「気にすんなー!」と空になった怜のグラスにビールを注いだ




それから日々は相変わらず平穏に過ぎていくけれど何故俊輔と運命の糸が繋がっているのか判らない日々
確かに、ゼミが同じで、膨大なゼミの課題についてだとか会ったら進捗具合を聞きあったり、今日の学食が美味しいのに量が少ないだとかそんな話は交わすようになった。でもそれだけ
それ以上の感情が湧き上がるわけでもなく、恋をするときめきは勿論、ドキドキだって何もない

「れーいちゃーん!お前、こないだ山口さんの授業去年通ったっつったよなー?レポートまだあるー?」
「あぁ、データはある」
「見せてーーーー!もー3回はねられてこれ以上どーしたらいいか判んねぇー」
「・・・まぁ、いいけど」

話していくうちに俊輔がやたらと人懐こくて友達が多いということ、陸上部で結構優秀な選手だということ、彼女とは1年の秋から付き合っているということ・・・他にもどうでもいいことばかり情報として知っていく

「ありがとなー!よろしくー!」

あと、やたらとスキンシップが激しいことも

別に触れられたからといってドキドキするわけじゃない。男同士。簡単に特別な感情が湧くわけもない
ただ、自分は運命の相手とすごく幸せになることは不可能なのだと知ってこの余分な能力をただただ呪うだけ








にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村


    ≫ read more

赤い糸1 - 04/27 Wed

trackback (-) | comment (0) | その他SS
オレには糸が見える

人と人を結ぶ
運命を結ぶ赤い糸が




「お母さん、なんで糸が絡まらないの?」

そう酒巻 怜が聞いたのは幼稚園の時。いつも両親の小指を結ぶ赤い糸がなぜ絡まったり切れたりしないのか不思議だった
幼稚園で習ったあやとりの糸はすぐに絡まったり切れたりするのに・・・

「あら、怜はおばあちゃんと同じ力があるのねぇ」

そう言った母はもう亡き祖母の話をしてくれた
怜がいつも見ていたのは運命を結ぶ赤い糸。初めて祖母に父を会わせたときは「よかった。運命の人を見つけたのね」と優しく笑ってくれた怜の知らない祖母の話

「人はね、おばあちゃんによれば運命の人がいるんだって。もちろん、運命の人とじゃなくても幸せになれる。でもその運命の人と一緒になれたらもっともっと幸せになれる。って教えてくれたの。怜は運命の人が現れたらすぐに判るのねー。ロマンティックだわー」

そう頭を撫でてくれたのが嬉しくて怜は運命を待ち続ける
高校の時初めてできた彼女は好きだと思ったのに小指の赤い糸は繋がってなくてやっぱりすぐに別れてしまった。その次にできた彼女も繋がってなくて・・・

気付けば大学2年も終わりに近付いていた。運命だとかほんなロマンティックなこともどうだっていいや。そんな風に思うようになってきていた

「あー、クッソ混んでるし!隣空いてる?」

顔を上げると見知らぬ学生で怜はひとつ頷くと少しずれて席を空ける
普段受ける人数も少ないこの講義だが、テスト前になるとやはり人数も増えて珍しく講堂は生徒で埋まっていた

「・・・」

そんな彼の薬指から伸びる赤い糸が輝いて見えて凝視する
彼の指から延びた赤い糸は自分の左の小指へと繋がっていたから
怜は信じられなくて何度か手を振ってみる。でも当然見えないはずのその糸は外れることも切れることもなく見たくなくて左手を下に降ろす

「なー、この講義あんま出たことないけどテキスト何ー?」

そんなんで講義取っていたのか・・・と思いながら出していたテキストを彼に見せるように立てる

「お、これ部室にあった気がするわー。ありがと!」

彼がどんな顔だとかもちゃんと見る必要はない。彼が何部でも、学部とコースが何かだとか全部どうでもいい。男に興味があるわけでもないし、惚れるわけもないから。これは見間違い。動揺でドキドキする胸を押さえながら自分に言い聞かす。運命だったらもっと一目惚れだとか何かを感じるはずなのだから・・・と

見間違い。そうあってほしい・・・今まで男に興味を持ったことがない怜はそう祈りながらまた彼の指を見つめる。でも、やっぱり赤い糸は輝いていてキラキラしたまま自分の指へと繋がっていた

「あー、これー?カッコいいっしょー?彼女とペアでオーダーしたリングー!超イイっしょー?」
「・・・興味ない」

自分の指を凝視していた怜に気付いて彼がデレデレとにやけた顔で左手の薬指に嵌めたデザインリングを見せびらかしてきて、やっぱり運命なんてクソくらえ。そう怜は心で悪態吐いた






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

その1 見えすぎる男 - 04/22 Fri

trackback (-) | comment (2) | 超能力な奴ら
千歳探偵事務所・・・彼はこの探偵事務所の所長。基本的に浮気調査、迷子になったペットの捜索を主に生業としているが、この事務所に依頼すれば規模の割に優れた調査力としてここらでは少し有名である

この日も彼、千歳 まことはある男から浮気した婚約者の浮気相手を調査してほしいと依頼を受けたため、調査を始めていた。調査対象は叶 優心。千里眼を使えばすぐに優心の様子が確認できる。しかし、千歳は優心と一緒にいる唯に興味が出てしまい、つい人の生活を覗き見するように入りこむ

「かわいいなぁ・・・大学生かー?」

そう独りごとを言いながらドーナツを食べる唯を追う・・・しかし、次の瞬間・・・

「こんにちはー」

という声と同時に能力が跳ね返され、何も見えなくなった

「な・・・?!」

こんなこと初めてだった。能力が弾かれ、その後その部屋を追えない・・・千歳は能力がなくなった?!と思い、別の人物に集中してみるとそちらは簡単に見えてますます意味が判らなくなるのと同時に「何故だ」という興味が湧く。

探偵なんていう仕事をしているからか妙な探究心が芽生えて事務所を出ると彼らのいる場所まで歩き出す

場所はもう判っていた・・・叶能力研究所・・・なんともあやしい名前だとは思ったが、本物の唯を近くで見たいのと、なぜ能力が使えなくなったのかという疑問の前にはそんなことどうだっていい。
気付けばその門を叩いていて、叶博士によって中に案内されたのだった




「・・・つまりー・・・探偵さんは千里眼の持ち主だっていうことなんですかぁ・・・」
「・・・予想はしてたけどあっさり能力認めてくれるのな」
「えぇ、ココ、それを研究している場所なので」

博士はメガネの奥でニコニコとしながら千歳を見つめる

「なんか能力をブロックする力でも出してんのか?科学の力?覗き見されないように?一体どんな研究してんだよ・・・ここは」
「それってー、ムーちゃんが来てからじゃなーい?」
「え?むー?」

唯がコーヒーを千歳に差し出しながらそう聞く。唯からいい匂いがして思わず千歳は唯に見惚れる

「無駄にイケメンムーちゃん♪」
「だからその名前で呼ぶのやめません?」

無駄にイケメンと呼ばれた青年を見て「あ、無駄にイケメン」だと思った千歳の心の声が聞こえて優心は本棚の上で笑う

「彼はアンチサイの持ち主なんです」
「アンチサイ・・・?」
「多分、千歳さんが能力を使っていた範囲に夢くんが入ったんでしょうね・・・彼は超能力を無効にしてしまうんです」
「・・・初めて聞いた」
「珍しいのとなかなか気付かれにくい能力でしょうからねぇ・・・それにしても遠隔の能力に対してもこの能力が発揮されるとは新たな発見だなぁ・・・早速論文に書き足さないと」

千歳は「ふむ」と夢を見つめる。夢はふと気付いて頭を下げる

「ごめんなさい・・・オレのせいで調査ができなくなったから来たんですよね?」
「あー・・・そうだった・・・優心くん!」
「あ?」
「キミの恋人の1人、さやかさんの婚約者の方から浮気調査を依頼されて来たんだよ」
「・・・ゆーくん・・・またそんなことして!!!!」

叶博士は優心を睨んで本棚を揺らす

「人に迷惑をかけることはやめなさいと何度言ったら!!!!」
「ちげぇよ!向こうからちょっかい掛けてきたんだし!」
「だからってゆーくんなら彼女に恋人がいるかどうかぐらい判るだろー!」

倒れそうになる本棚から慌てて降りると優心は千歳の前に立つ。

「その依頼人にあのビッチはやめといた方がいいって教えてやって。あの女、他にも男いんぞー。あと、あの女の乳は偽乳ー!まぁ、んなこたぁ知ってるとは思うけど」
「・・・あぁ、判った」
「っつか唯のこと美人だ美人だって見つめるのはいいけどよ、それ、能力使って見てたらストーカーとして潰すからな」
「・・・」

唯は「あらー、美人って罪ー」と言いながら微笑むが千歳は笑えない

「優心はサイコメトラー・・・さとりです」
「ってことは全部・・・悪かった」
「まぁ、無駄にでかい乳を見せびらかしてる唯も見てもらいたくて見せびらかしてるから普通に会って見るなら許す」
「ゆーちゃんっ!」

唯はそう怒るがもちろん怒ったふり。優心の言ってることは間違ってないのだから。女の武器は使えるうちに使っておかなくちゃ。というのが唯の考えで、これも調査に必要な能力の一つ。

「千里眼の能力も研究対象にしたいんですが、是非協力して頂けませんか?」
「いや、オレは仕事あるからなぁ・・・まぁ、この眼が必要になったらまた連絡してくれりゃ来るよ。これもなんかの縁だろう」
「じゃあこちらも千歳さんが必要なときは誰か派遣しますよ。美男美女を取りそろえておりますので」

美男美女は関係ない・・・と思ったが、眼福にはなるか・・・と千歳は名刺を博士に差し出して「では」と立ち去って行った。

「おい、ムー」
「だからぁ・・・」
「お前、彼女とかいんの?」
「は?!」

夢は優心からそんな言葉が出るとは思わなくて目を丸くしたが、その場にいた叶博士と唯は顔を見合わせて笑う

「うっせぇ!てめぇらは何も言うな!」
「・・・あぁ、不思議だ。ゆーくん、今ボクの心の声もユイちゃんの心の声も聞こえてるんだよね?」
「あぁ?聞こえてんよ!」
「・・・面白い!ムーくん!キミはすごくすごく面白い存在だっ!千歳さんの能力は能力の範囲内にいるだけで能力をはじいてしまうのにゆーくんは相変わらず心を読める!」
「・・・それ、さっきのおっさんはこの家全体に能力飛ばしてたからはじかれて、オレは個人個人に能力飛ばすことになってっからそうなるんじゃ・・・」

叶博士は興奮したように首を振る

「ゆーくんはいちいちその場にいる人間全員に能力飛ばしているわけじゃないだろう?隠れている人間の声も聞こえるんだよね?」

優心は「あぁ」と納得して頷くと夢を見てため息を吐く。夢がここに来てから胸の辺りがずっとざわついている。初めて会った心が見えない相手・・・いつもすれ違うだけで「イイ男」「あぁいうのと付き合いたい」「あんな風に生まれたかった」そんな声が聞こえるのに夢からは何も聞こえないから・・・不安。優心がいつも強気でいられるのは相手の声が丸聞こえだから・・・自分の評価を聞くことができるから・・・

「あ!オレに彼女がいるかだっけ?今はいなーいっ!こないだフラれたー!」

相手は「女性」か・・・と判ってまた訳の分からない胸のざわつきを感じて天井を見上げながら「あぁ。そ」とそっけなく呟いた。


超能力な奴ら その1 見えすぎる男 おしまいおしまい



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

その0 ようこそ叶研究所へ - 04/21 Thu

trackback (-) | comment (0) | 超能力な奴ら
混雑している大学の学食・・・

そんな混雑している学食で、おろしたてのワンピースを着た女子大生 磐田 唯(いわた ゆい)は怒りに燃えていた。
ふざけていた男子学生にお茶をひっかけられたのだ。

「あ、ごめん」

そんな軽い謝罪では怒りがおさまらない唯。明るめの茶髪の男子学生を睨み、小さく指を動かした。
唯は普通の女子大生とは少し違う。サイコネキシスを操る女子大生。


男子学生は何もないところでフワリと浮いて派手に転ぶ・・・


ハズであった。

「え?」

唯は思わずそう声をあげてしまう。
完璧にコントロールできる力が彼の目の前で消えてしまったのだ。
力を失った???そう思って少し離れた席の椅子を動かそうとする。ちゃんと椅子は動いてその場で大きな音を立てて倒れた。


・・・あの子にだけ効かなかった?????


唯は今までになかった体験をして驚いたまま学校を後にする



***********


ここはとある富豪夫妻が建てた家の地下にある秘密基地


というのは大げさだが、その夫妻の子供がある研究の起点として使っている地下室。
唯は下校後、ここにいた。


「・・・ってことがあったの!」
「へー・・・うーん。それは面白い。能力者である可能性が高いですねぇ」

それを聞いた男はメガネの奥を光らせながらそう答える。

「やっぱりー???でも能力跳ね返すなんてどんな能力なの?!」
「・・・今の時点ではなんとも言えないけど・・・一度見てみたいなぁ・・・ユイちゃん彼をココに連れてこれない?」
「えー!!!でもなぁ・・・博士のお願いだしなぁ」

博士と呼ばれる男は微笑んでお願いします。と頭を下げる。

「・・・おい。むやみにここに新しい奴を呼ぶな」

壁際にある棚の上からの声。この声の主は姿が見えなくても博士も唯も判っている。

「でもねー、ゆーくん、今の話聞く限りイケメンっぽいしーみんなに馴染めるんじゃないかなぁ???」
「能力者にイケメン関係ねぇだろ・・・」
「えー!見た目がいい方がやっぱりいいじゃない???ねぇ?ユイちゃん?」
「もっちろーん!顔良くないとダメー!」

博士と唯が結託したために棚の上の主は小さく舌打ちをして再び黙る。
棚の上の場所は彼の定位置。
彼の名は叶 優心(かのう ゆうしん)博士の弟であり、彼も能力者である。
弟の能力を追求し解明するためにここを研究所にした博士。

「じゃあやっぱり私の色香を使ってー・・・」
「お前に色気なんてねぇだろう」
「うっわーゆーちゃん嫌いー!」
「オレにそんな嘘は通用しないの判ってんだろ?」

優心の能力は悟り。人の考えていることが読める能力である。優心が整った薄い唇の端を上げるのを見て唯は優心に向けて大きく「イー!」と口を開けて歯を見せた





「ねぇ、ちょっとイーイ?」
「ん?」

翌日、唯はお茶をかけてきた青年に声をかける。大学内では美人で有名な唯。それが彼に声掛けたということに周りは驚いた。しかし、その彼もこの大学では結構な有名人・・・整いすぎた顔とそれに見合わない金髪、行動・・・それが彼の有名な理由

「えーっと・・・どなたでしょう?」
「っ!!!!!い・・・いいわ。そんなことどうだっていい。でもちょっと一緒に来てもらいたいところがあるの」

彼は唯のことを知らない様子でそれに唯は腹を立てたが、とりあえず研究所に連れていくために微笑んで彼にそう伝える。
彼は少しだけ考えながら「いいよ」と微笑んだ。
彼はとてもきれいな男であった。微笑むとますますイイ。唯は『無駄にイケメンね』と心で思いながら研究所へ足を向ける。

辿り着いたのが豪邸で彼は「え?なにここ?」と戸惑っていたが、唯が当然のようにその門をくぐって行くので彼も恐る恐る唯の後を追った。





「博士ー!連れてきましたーーーーー」
「あ、唯ちゃん。ありがとう」
「・・・ここは?」

博士はメガネを持ち上げて彼を品定めするように見つめる。

「あぁ、失礼。ようこそ。叶能力研究所へ」
「?」
「まだ唯ちゃんから話聞いてないかな?」
「なにも・・・」
「ボクは叶。一応この研究所の所長。博士ってみんな呼んでるよ。ここは超能力を研究してる施設なんだ」

彼は超能力と聞き首を傾げる。そんな能力見たこともないし、なぜ自分がココに連れて来られたのかも全く判らない

「キミの名前、教えてもらえるかな?」
「あ、オレは村瀬 夢(むらせ ゆめ)」
「・・・夢くんだね。よろしく」
「えっと・・・あの・・・超能力?」
「そう」
「なんかのドッキリ的な?」
「・・・そうか・・・気付いてないわけだな。まぁ、気付きにくい能力なのか。まぁ、そりゃそうだ・・・ユイちゃん!ちょっと実演お願い」

唯は手をだるそうに挙げて指を上下に動かすと夢の隣にあった椅子が持ち上がる

「・・・え!?」
「彼女はサイコネキシスの能力を持ってるんだ」
「手品?!いや・・・マジで?・・・え?でもオレなんでここに?」
「うん、キミはおそらく・・・アンチサイ・・・能力を受けてもその能力を無効にしてしまう超能力だね」
「はぁ?!」

夢は全く聞いたことのない言葉を聞いて口を開けたまま驚き、まだなにかのサプライズイベントだと疑っていた。



「ただいまーーーーー」

しかし、夢の隣に突然現れた少年のおかげで超能力を少し信じてしまう。明らかに今、突然少年が何もないところから現れたのだから。

「あ、お客さん?いらっしゃーい」

オレンジ色の髪をした制服を着た少年。

「・・・今・・・いきなり出た・・・」
「彼は燈(あかり)くん。テレポート能力だね。瞬間移動」
「・・・じゃあ本当に・・・」
「ゆーくん!読めないでしょ?」
「・・・あぁ」
「うん。アンチサイだねーきっと」

棚の上から聞こえた声でそちらを見るとぞっとするほどきれいな青年が夢を見ていた。

「・・・読めない・・・って?」
「・・・オレはサイコメトラー・・・考えが読める」
「で、オレはなんで読めないって?」
「・・・アンチサイ」
「うん。能力がどうのって言ってたけどよくわからない」
「夢くんの能力は、能力者から受ける能力を全て無効にするんだ」
「それってなんの役に・・・」
「・・・んーと・・・能力者が攻撃してきても平気・・・とか?」

博士も何の役に立つかと問われると言葉に迷う。
能力者からの盾役と言っても超能力戦争が起こっているわけでもない。

「要するに・・・役立たず?」
「・・・無能」

唯と優心がそう言うと夢はショックを受ける

「あと、無駄にイケメンだねー!何もそこまでイケメンじゃなくてもいいのにさー」

燈がそう言うと唯ががばっと立ち上がる

「燈!あたしもそう思った!!!!!無駄にイケメンだなーって!しかもちょっと残念な似合わないキンパー!」
「だよねー。なんでこんなに整えちゃったかなぁ・・・あ、だから金髪でハズしてる?いやいやいやいや、なんていうかそれダメー!茶髪くらいにしときなよぉー」
「待って・・・酷い・・・っていうか、あんたは年下だよな?明らかに・・・制服着てるし」
「無駄にイケメンのムーちゃん!それでいいじゃん!だってゆーちゃんはゆーちゃんでいるもんね!」
「ムーちゃん!いいねー!」
「・・・無能のムーだな」

研究所には夢の「みんなひどいぃぃぃぃっ」という声が響いた。

「とにかくね。夢くん、ここでは美男美女の能力者を集めてね、タカナシックの悪さを止めたりどうして能力が開花したのかとか調べる研究所なんだ」
「それ何?たかなしっく?」
「うん・・・タカナシック能力者を集めてね、利用するんだ・・・お金だったり犯罪だったり・・・まぁ、彼は彼なりに考えがあるから一概に悪とは言えないんだけれど・・・」
「なにそれすげぇ!なんかドラマだな!テンション上がるー!」
「あとは能力者が起こしてそうな事件を調査したり・・・だな」
「・・・すっげー!」
「まぁ、お前は無能だけどな」
「無能無能って・・・あんた名前は?」
「軽そうな頭の無能に覚えられないと思うからやめとく」
「うっわー!ひっでー!でも、オレ勉強はできるもん!」
「勉強できる無駄にイケメン残念なムー」

優心はふっと口元に笑いを浮かべてはいたが、実は内心焦っていた。
今までは他人の心を読み取り、距離を測りながら接していたのにそれが夢には全く使えない。
それは優心にとって初めての経験だったし、心が読めない焦りも感じていた。心の声が読めない相手とどう接したらいいのか判らない。相手が何を思って、何を感じているのか判らないのは優心にとっては脅威だったのだ。

「ゆーくん・・・やめなさい!彼はボクの弟の優心だ。夢くんと同い年だよ」
「へー。同い年・・・ねぇ」

夢は夢で優心の心の奥まで覗かれそうな瞳から目が離せなかった。
他の人間に対してその瞳は本当に心の奥まで覗けてしまうが、夢に対しては覗けないのではあるが、その外見は人を惹きつけるのに十分なミステリアスな雰囲気を醸し出している。

「じゃ、呼び捨てにしよーっと」
「はぁ?なんでてめぇに呼び捨てなんかにされなくちゃいけないんだよ!おい、ムー!」



「ねぇ、博士ー?なんかゆーちゃん、彼のこと気にいっちゃった?名前一発で覚えてあだ名で呼んじゃうなんてー」
「みたいですねぇ・・・」
「えー!でもさでもさー、ゆーちゃんが女遊びも男遊びもやめたらそれってゆーちゃんじゃなくない?」
「それに『たらし』だからできる仕事もあるのでねぇ・・・」
「でーもー・・・二人がくっついたら・・・」
「面白そうだよね!」
「よねっ!」

唯と燈はそう言って気味の悪い笑顔を作った



超能力な奴ら 0 ようこそ叶研究所へ おしまいおしまい





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

竹市くんと柚木くん8-4 - 04/20 Wed

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で 番外編
竹市の体積を体で感じながら快楽と幸せ、喜びを噛みしめる
好きな人を感じられる幸せ。好きな人の体温を1番深いところで感じられる喜び

「っ・・・」
「大丈夫?」
「んっ・・・痛いんじゃな・・・いっ・・・から」
「・・・?」
「オレ、幸せ・・・たけちゃんがいてすっげぇ幸せっ」

竹市は少しだけ驚いた顔をしてそっと球の頭に手を伸ばして優しく撫でる。そんなの自分だって幸せ。こんなにも愛されて求められる。喜んで笑顔をくれる球が可愛くて愛しくて・・・幸せ

「んあ・・・どしよ・・・たけちゃ・・・マット汚しちゃっ・・・」

竹市はジャケットを脱いでその下のシャツを脱いで球の下に敷くと球が首を振りながら拒否する

「たけちゃんのっ・・・汚れちゃうっ」
「ん、まだ着てるし、Tシャツとジャケットありゃ充分・・・っつか動いてイイ?きっつい」
「あ・・・やぁ・・・待ってっ・・・ホント・・・汚すっ」
「イイから・・・汚せっつってんの」
「ふぁ・・・あっ・・・うっ・・・んっ、んっ」

抽送が始まると時折漏れてしまう声に顔を赤くしながら口を押えてジャージの袖を噛む。好き・・・大好き・・・そう叫びたいのを我慢しながら竹市から与えられる快楽だけを追う

「あー、やっばいなぁ・・・球さんのここ吸い付いて来て離してくれない」
「んっ・・・」
「早く、帰って来てよ・・・で、ここじゃできないくらいすごいやつしよ・・・」
「っ・・・んんー」
「あ、感じた?想像した?この奥、ぶち込まれんの想像してんの?オレが届く1番深いトコ欲しい?」

ガクガクと首を縦に振ってから我に返って頭を横に振る
欲しい。もっともっと竹市が欲しい・・・でもここは合宿所で、明日も当然朝からずっと練習で・・・

「早く帰って来いよ・・・終わったらいつもみたいに急いで帰って来て・・・そしたら球さんの望み通り1番奥まで入れてトロットロにして1番奥でオレの精液ぶちまけてやるから。あんたの孕むワケないこの腹ん中ぶちまけまくって孕むくらいにやってやるから」

首まで真っ赤にした球が震えていて竹市はそっと真っ赤な首を撫でる

「すっごい真っ赤だね」
「たけちゃ・・・オレっ」
「ん、もう達こうか・・・オレも達きたい」

そして球も自身の下肢へと手を伸ばすと内壁と共に擦られて小さく身震いをしながら竹市のシャツを汚したのだった







「・・・たけちゃん・・・ごめんね・・・汚して」
「んー、別に」

さっさと身支度する竹市に寂しさを感じながら球は竹市を見上げる

「・・・そんな顔しないでよ・・・帰り辛い」
「帰ってほしくないし」
「いや、それムリだろ・・・」
「うん・・・」

判っている。でも・・・やっぱり離れるときはいつだって寂しい

「あと少し・・・だろ」
「今回ホント酷い・・・こんな時期に合宿被せてこなくたっていいじゃんね・・・しかも長期!ホント酷い!オレも秀ちゃんみたいに今回の辞退すればよかったー」
「・・・あぁ、そうだった」

竹市がジャケットから小箱を取り出して球の大きな手に握らせる

「・・・?」
「今までも指輪はあげたけど・・・さ」
「・・・な・・・何?」
「あー、わーるいなぁ・・・そりゃー、もっとさぁ・・・あるだろうけど・・・刻印見て」

球は小さな指輪を掴んで覗きこむように内側の刻印を見るとY To Kと刻まれていて、同じように内側についた小さな一粒のキラキラ光る石

「・・・たけちゃ・・・ん・・・これ」
「まぁ、なんつーの・・・?オレもとりあえず内定貰えたし・・・球さんも卒業後行く先決まってるし・・・色々将来決まり始めたからだな・・・いや違ぇー!!!」

竹市は天井を見上げてひとつ深呼吸をすると球の目の前にしゃがみ込んでシンプルな指輪を球の手から取って球の目の前に見せる

「卒業しても、少し離れることが多くなっても心だけはオレの傍にずっといて。オレもずっと、心は球と共にある」
「・・・それって・・・それ・・・って」

球の目が揺れる。この指輪の意味を期待して・・・
それに気付いた竹市が笑いながら指輪を球の左薬指へと着けた瞬間に球は顔を赤くしながらただ頷いた

「判った?」
「っ・・・どうしよう・・・たけちゃん・・・オレ・・・も、幸せすぎて・・・苦しいかも」
「帰ったら、これからのことちゃんともっと話し合おう?とりあえず、来年は単位も楽になってるし内定は貰ってるし比較的動けるとは思うけどそれ買ったら結構貯金きつくなったからバイトも入れたいなーってところだし」
「ん・・・うん・・・たけちゃんと話す・・・ゆっくり話す・・・」

竹市は「おう」と頷いて換気のために開けていた窓を閉めると球が甘えた顔で竹市を見つめる

「そんな顔してもダメー!帰るしー」
「うん・・・判ってるんだけど・・・でも・・・プロポーズの後にそんな冷めててイイの?」
「・・・っつか結構オレ、今、恥ずかしいからな?指輪買う時もそんな如何にもなやつでそのサイズだろ・・・かなり恥ずかしかったし、今、ガラにもないこと言ったのも自覚してるし」
「嬉しかったよ!オレ、ホントたけちゃんに恋してよかったって思ってるもん。あの時強引にたけちゃんに迫った過去の自分にグッジョブしたい!オレ!超偉い!ホント・・・たけちゃんに出逢えてよかった・・・」

竹市はただ頷いてそっと球の頭を掴んで胸に引き寄せる

「オレもそう思ってる・・・」

球は新しくてピカピカの指輪を見つめながら竹市の心臓の音を静かに聞きながら何度も何度も頷いた。幸せを噛みしめるように・・・竹市の心臓の音がいつもよりも早いのは幸せの音だと感じながら・・・



竹市くんと柚木くん8 おしまいおしまい






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

竹市くんと柚木くん8-3 - 04/19 Tue

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で 番外編
「ねぇ、たけちゃん・・・さっきホントにかっこよかった・・・嬉しかった!大好きっ!たけちゃんだけっ・・・もー大好きすぎてダメ・・・こっち向いて。折角たけちゃんに会えたのに背中しか見えないのイヤ」

竹市の体の力が抜けて球が竹市を振り向かせると見上げてきたその顔が愛しくてキスをする

「・・・球さん、あいつに流されてたかもしれねぇだろ・・・」
「ないよ・・・」
「ケツ触られて感じてたっ」
「・・・感じてた顔してた?」
「オレから顔なんて見えなかったし」

拗ねているのだと思うとまたそれも可愛くてクスクス笑いながら竹市の頬を両手で掴むとまたキス

「オレねー、初めて。嫌悪感で震えたの」
「・・・」
「そりゃー、オレにも昔はあるし・・・それは変えられないよ?でも、今はたけちゃんだけ。たけちゃんとだけ歩いて行きたい」

竹市の頬に添えられていた手を振り払われて球はショックを受けたが、すぐに逆に顎を掴まれて荒々しいキスをされて蕩けた表情を浮かべる

「その顔・・・マジで誰にも見せんな・・・オレにだけ見せてろ」
「うん・・・うんっ」
「ホントに・・・誰も来ねぇ?」
「たけちゃん鍵掛けたでしょー?」
「いや、まぁ・・・」
「オレ、さっきのたけちゃん見てからもうすごいガッチガチなんだけど」

赤い顔で照れながら笑う球をマットの上に押し倒すと分厚い胸に触れる

「んぁ」
「ホントだね・・・乳首ガッチガチに勃起してる」
「やぁ・・・たけちゃん意地悪っ・・・そっちはちょっと寒いからだしっ!」
「んー?」
「たけちゃんだって・・・当たってるからね?」

竹市が意地の悪い笑顔を浮かべて球の耳元に唇を寄せる

「久々にエッチな恋人に会ったんだよ?そりゃぁ溜まってるしこうなるでしょう?」
「っ・・・」

竹市の低い雄丸出しの声を囁かれると腰の辺りがザワザワする。これからされることに期待して熱を帯びた瞳で竹市を見上げると髪を掻き上げられてキスをされる。触れた場所からさっき触られた時に感じた嫌悪感とは全く違う感覚で震える。快感で・・・好きな人に触ってもらえる快感

「ほら、慣らすからオレの顔跨いで」
「っ・・・これ、恥ずかしいっ」
「んー?欲しくないの?」


竹市がデニムのファスナーを下ろすと現れた昂ぶりにゴクリと生唾を飲み込む。欲しい・・・欲しい・・・欲しい・・・そう球は唇を竹市の雄へと寄せると足を引かれて跨がされた

「っ・・・たけちゃんっ!?」
「初めてじゃないじゃん」
「いや、でもっ」
「お風呂まだだって?塩素の匂いしかしないなぁ・・・でも、これが球さんの匂いって感じ」

球は赤くなりながらそれを誤魔化すように必死に昂ぶりを口で扱く。塩素の匂いなんて自分だけじゃない・・・竹市だって部活が終わった後はいつも塩素の匂いなのだから・・・

「あー、球さんっ、あんま激しくされると出る」
「ん、らひて」
「まだ余裕か・・・覚悟しとけよー?」

舌と指が内部へと侵入する。ゴツゴツ長い指が唾液を交えて内部を探るのとぬめぬめとした舌が入口付近を動くのが快感を誘う

「っふ・・・あっ」
「こっちもぬるぬるしてきた」

勃ちあがった球自身の先端から溢れ出る透明な先走りをグリグリと親指で塗り広げられると思わず口を離して悶えてしまう。熱い・・・出している下半身は寒さを感じているハズなのに竹市に触れられた場所が熱くて熱っぽく物欲し気に竹市を振り返る

「まーだ。球さんはこっち」

口元へと雄を押し付けられて自分の唾液で滑って頬まで濡れる。そんなことでさえもいちいち興奮させられてしまう・・・

「あー、欲しいんだー?こっちキュンってした」
「欲しいー・・・たけちゃん・・・欲しいっ」
「でもなぁ・・・まだ指2本分なんだよねぇー」
「入るっ・・・入るからっ!」
「えーどうしようかなぁ・・・」

意地悪な声。いつだって優しくて意地悪な恋人に球は自分の指を後ろへと伸ばして竹市の挿れている横から横入りするように挿入してみせる

「ホントエッチな球さんだ・・・」
「入る・・・ね?入ったっ・・・大丈夫だからぁ」
「自分でイイところ触ってみてよ」
「っ・・・んっ・・・」
「そう・・・そこだよね・・・ほら、トントンって」

指の上から竹市の指で押されると嬌声が漏れ、口を押さえる

「あー、すっげ。何これ。すごい興奮すんね」
「んあ・・・あ・・・これ・・・欲しいぃ」
「ヤバい。これでしばらくオレヌける」
「たけちゃんっ!」
「ん、オレも結構限界キてる」

竹市が体勢を変えたことでホッとする。指を引き抜いたところがスースーとするのに、そこへ何かが垂れる感覚にビクリと振り返ると竹市が中へと唾液を垂らす姿

「っ・・・」
「少し痛いかも・・・?」
「たけちゃんっ・・・エロいっ!!!」
「知らなかった?」
「っ!!!知って・・・たっ!!!」

球が赤い顔を背けてマットに顔を埋めたのを見て竹市はいつものように意地の悪い笑顔を浮かべて球の双丘を押し広げると「オレがエロいの球さんのせいだけどね」と球の背中に囁いた





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

竹市くんと柚木くん8-2 - 04/18 Mon

trackback (-) | comment (2) | 青春はプールの中で 番外編
次の日も練習が終わると槙峰に呼び止められる。周りに人がいるのに「付き合え」と腕を引かれ、球は困った顔で周りに助けを求めるのに仲間は「槙峰コーチと個別ミーティングかー」と勘違いし、誰にも助けを求められないまま人気のない廊下まで腕を引かれていった

「マッサージルーム空いてるなぁ・・・」
「ま・・・槙峰・・・さんっ・・・オレっ」
「なーにー?」
「オレっ・・・」
「そーいえばー・・・球は彼氏ができるとそーやって拒むのに結局オレの手に触れられると感じちゃう子だったよなぁ・・・」

ビクりと体が震える。首元を撫でられ、鎖骨へ降りてくると鎖骨を指でなぞる。声が漏れそうになって思わずその手を振り払うと厳しい目が球を捉えた

「悪い子はなんだったっけ?」
「っ・・・イヤ・・・ですっ!大きい声出しますよっ?!」
「わー・・・イイよ?オレはー・・・クビになるかもだけどー、そしたらオレは色々と売るだろうなぁ・・・昔の写真とかもまだあったはずだし?知名度的にバラされたら困るのはお前なんじゃないのか?」

若かった・・・あの頃は若すぎて無知でバカだった・・・今もさほど変わらないのかもしれない。でも・・・でも・・・

「・・・困らない・・・よ・・・」
「あぁ?」
「もう、オレは困らない・・・引退だってしてもイイんだ・・・普通に好きな人と一緒にいられる生活でイイ・・・から」
「・・・グダグダ言ってんな・・・ほら、何言ったってお前はオレのこの手が好きなんだから」
「っ・・・ゃ・・・やっ!」
「ほら、ケツ揉んだだけでそんな甘い声で誘いやがって。お前は天性の淫乱なんだから」

球は首を振る。違う。違う。竹市じゃない手なんかに感じない。もう竹市にしか



「あーあーあーあーみっともねぇなぁ・・・おっさんの嫉妬っつーのはこんなに見苦しいもんだとはなぁ・・・オレも気を付けよーっと」
「・・・なんだお前」
「な・・・んで?」
「おっさーん、今のさー、オレ偶然カメラ回しててさー、それがなーんでかビデオでー?音声まで取れちゃった!どーしよ。これ持って他のコーチの人にリークしてきたらいーい?」

球の目から涙が零れる。会いたくて、助けてほしかった人が目の前にいる。あの日、弟の流を助けたヒーローが今度は自分を同じように助けようとしてくれている

「っていうかどーしてそんなに自信満々なの?鏡見た?この人、結構面食いなの知ってるー?」
「・・・お前・・・」
「うん?彼氏だけど?」
「ふっ・・・こんな貧相なガキ?」
「・・・たけちゃんっ・・・たけちゃんー」

槙峰が振り返ってもその場にもう球はいなかった。溢れる感情が追いつかなくて竹市に抱きつきながら泣く球を優しく抱きとめる

「なんで来たんだよぉ・・・」
「会いたかった・・・からかなぁ」

球に体重を預けられると重い。それでも今はしっかりと踏ん張って支えた。それが竹市の見栄。経験だとか包容力だとか球の過去を知っていそうだとか・・・勝てないこともたくさんだけれど、球に愛されている。そんな自信が竹市を強くさせる

「なかなかガッツはありそう・・・か」
「この人にはもうオレがいるんで、手とか出さないでいただきたい」
「・・・それは球が」
「あぁ、安心してよ。球はこのオレにメロメロだから」

球が赤くなった顔を上げて竹市を見つめると視線に気付いた竹市がニヤリと意地の悪い、球の大好きな顔を見せて何度も何度も頷く

「そーかよ・・・あーあー・・・つまんねぇ男になっちまったかぁー・・・」

球のお尻を触って去って行こうとする槙峰の腕を掴む

「それもやめろ・・・」
「ガキの必死な恋愛・・・精々今のうちに楽しんでおけよ」

竹市のすごみも肩透かしを食らって歯を食いしばりながら球の腰に腕を回す

「球さん」
「・・・かっこよかった・・・」
「んー・・・でも、とりあえず・・・起きて・・・重い」
「うっわー!ぶち壊しーーーーっ!」

球が竹市から離れると赤くなった目を擦りながら竹市を見る。本物・・・本物・・・そっと手を伸ばして軽く抱きしめると竹市の耳元で甘えた声を出す

「そこの部屋、無人らしいよ・・・鍵もかかるし」
「・・・」
「ねぇ、たけちゃん・・・」

竹市は無言で部屋を開けると電気を点けて内側から鍵を掛けた

「たけちゃんー」
「オレ、怒ってるんだけど」
「え!!!」
「電話であんたなんて言った?」
「・・・」
「なんでもないのか?あれが?」
「あー・・・でも・・・オレ」
「自分でなんとかできるって?できてなかったじゃん」

壁に追い込まれて責められると球は唇を噛んでただ首を振る。竹市に心配かけたくなかった。過去の自分が恥ずかしくて言いたくなかった。言えなかった。そしてあの時はなんとかなると信じていた・・・

「オレが来なかったらどうしてた?」
「・・・ごめんなさい・・・でもっ!でもっ!!!オレの方がいざとなったら力もあるっ!だからっ!」
「へぇ?あいつに触られて火が付いた体治めてほしくてここに連れ込んだんじゃなくて?」

球はハッとした顔をした後、竹市を必死に睨みつける

「何・・・その顔」
「それ、信用してないってことだよな?」
「・・・だって、そうだろ・・・」
「たけちゃんがかっこよくて・・・オレが求めてたヒーローみたいで・・・だからっ!」
「じゃあさっきちょーっと撫でられて感じてたあんたは何?」

胸倉を掴まれて、下ろさせようと手首を掴むとその手が震えていることに気付く

「・・・たけちゃん・・・?」
「怖ぇんだよっ!離れることが多いのはオレも納得してるし理解してる!応援してるっ!今回は場所も遠くなかったしすぐ来られるところだったし、知ってる奴もいたから入れたけど!それって運が良かっただけだろ・・・遠いところへの遠征なんて少なくないし、来られてもこうやって中入れてもらえることもない」
「たけちゃん・・・」
「あんたがオレの前にも何人か相手いたのも知ってるし、それはもうイイ・・・別に知りたくもないし。でも、今は過去じゃない。だから嫌だ。絶対に!絶対に嫌だっ!」
「っ・・・手、離して・・・」

竹市は手を離して球に背を向けるとすぐに後ろから抱きしめられる

「たけちゃん・・・ありがとう。嬉しい・・・すごく嬉しかった・・・たけちゃんが・・・たけちゃんが来てくれたの。オレを守ってくれたの・・・たけちゃんは流ちゃんのヒーローでオレのヒーロー・・・」







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

竹市くんと柚木くん8-1 - 04/17 Sun

trackback (-) | comment (2) | 青春はプールの中で 番外編
強化合宿・・・そこで球は意外、そして懐かしい・・・けれど会いたくなかった人と再会する

「球、久し振り」

そう言って練習後に改めて背中を撫でられて複雑な顔をしながら頭を下げる
ここでのコーチ・・・あの時、それまで所属していたチームを離れてもう2度と会うことはない・・・そう思っていたのに・・・

「すっかり大人のイイ男になっちまって・・・オレの知ってる球じゃないんだなぁ」
「・・・いつ、ここへ?」
「んー?去年・・・な。流石に勤務地はお前の所とは違ったけど。お前のことは遠くから見てたよ。手塩にかけた教え子だからな」

確かに・・・この男、槙峰 卓司からはたくさん学んだ。きつい練習、イイ記録を出せたら褒められること、そして男同士で快楽を得る方法・・・

「ジュニアコーチばかりかと・・・」
「あぁ、そうだな・・・でも、ほら、あいついるじゃん。高井。あれがジュニア時代からずっとオレが育ててそれが評価されたっつーか・・・」
「・・・へぇ・・・」

怖い・・・感謝はしている。でも・・・危険な匂いのするこの男と一緒にいるのは怖い・・・

「なぁ、マッサージ要らね?」
「要らない・・・です」
「なんだ・・・お前大好きだったのに大人になってやっぱり変わったのかぁ?昔の可愛い可愛い球はいなくなっちゃったんだなぁ・・・」

背中に触れる手が普通に触れる手じゃないことは判る。でも、この手をどう振り払ったらいいのか・・・いや、判るのに体が動かなかった。昔とは違って大きく見えた槙峰よりも大きくなったはずなのに心の支配はまだ解けていないようで体を捩ることくらいしかできないでいた

「それとも・・・彼氏に操立てでもしてんのか?」
「・・・」
「あぁ、図星ー・・・女じゃねぇよなぁ?こーんなイケメンで体のでっかーい男らしい柚木 球は実は男の下で喘ぐのが似合うっていうなぁ・・・」
「や・・・めてください」
「なーに?オレが怖いんだ?なーんでだよ」

怖い・・・?怖い・・・怖い・・・

自分には竹市がいる・・・竹市が・・・なのに・・・惑わされる。それが怖い・・・

「オレ、ちょっとコーチに呼ばれてるんで・・・」

頭を下げてその場を立ち去り、角を曲がったところで走る。心臓が痛い。痛い。痛い・・・今すぐ竹市に会いたかった。そして抱きしめて愛していると囁かれたかった








「・・・ん・・・?」

球からの着信で目を覚ました竹市は眠い目を擦りながら通話ボタンをタップする

「球さんー?どうしたー?」
『たけちゃんっ・・・たけちゃんっ・・・たけちゃんっ』
「・・・どうしたの?」

優しい竹市の声。きっと眠っていたのだと思うのにすぐに優しくそう聞いてくれる竹市が愛しくて球は震える手で携帯を掴みながら『会いたい』と一言漏らす
その声が、いつもの会いたいとは違う気がして竹市は電気を点けてパーカーを羽織った

「なんか・・・あった?」
『っ・・・ご・・・ごめんっ!なんでもないよぉー!目、覚めちゃってさぁ、ほら、夜中ってなんか寂しくなっちゃうよねー』
「球さん、何があったの?」
『だから・・・』
「うん。球さんが寂しがり屋なのは知ってる。夜中に目、覚めて電話して会いたいって言うのも判るよ・・・でも、今日は違うだろ?」

いつもだったらもっともっと甘える声で会いたい・・・と言う球。でも今日は震えるような声だった・・・そのくらいの変化はもう竹市にだって判る

『うん・・・でも、たけちゃんの優しい声聞いたらオレ、頑張れる気がしてきた』
「・・・そう?」
『うん!じゃあ、またね!起こしてごめんねー』
「・・・おやすみ・・・球さん」
『おやすみ!たけちゃんっ』

そして球は切れた電話を握りしめながら部屋へ戻って布団へと戻る。すっかり冷えた布団ではすぐには眠れなさそうだ・・・と思いながら竹市を思い浮かべて。竹市のことだけを考えながら・・・








にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more