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赤い糸25 - 05/31 Tue

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冬休みが終わるとすぐにテストが始まって、それが終われば長い春休み・・・

「れーいちゃんっ!なぁなぁテストの調子どーう?春休み帰省すんのー?」
「聞いてない」
「もー!今年も冷たいなぁー・・・まぁ、そんな怜ちゃんも可愛くて好きだけどさ」
「ほっといてくれ」
「ねぇねぇー、怜ちゃんー」
「・・・本気で言ってる・・・お前が構ってくるとあいつがおかしくなんだよ・・・だから・・・」
「・・・なにそれ」
「だから」

一瞬で俊輔の顔が曇って怜の腕を掴む

「酷いことされる?」
「・・・そうじゃなくて・・・」
「うん・・・そっか・・・うん・・・そうだよね・・・怜ちゃんはあいつが好きなんだから・・・あー、すげぇ悔しい・・・でも、怜ちゃんが幸せなほうがいいや・・・じゃ・・・じゃあさ、もし、もし・・・そりゃもちろん怜が幸せなのが1番だけど、もし、新田と別れることがあったら・・・教えてくれる?」
「・・・」
「オレ、好きになったら結構しつこいよ?怜ちゃんのコトまだまだずっと好きだと思うよ。でも、怜ちゃんが困るからしばらく好きとか言ったりするのもやめるし、必要以上に怜ちゃんに近付くのもやめる。だけど、怜が辛いときとか、誰かに慰めてほしいとき、いつでも言ってきて・・・その時だけ利用するっていうのでもいい」

怜が顔を上げると優しい目の俊輔がいて目を逸らす
いつも新田が同じような目をして自分を見てくるのを知っている・・・愛されていると実感するあの目・・・新田だけだと思ったのに・・・俊輔も同じ目で自分を・・・

「じゃあ、行く・・・かなー」
「・・・」
「んじゃー、次は新学期かなー?またゼミでな?」

ポンポンと頭を叩かれて怜は唇を噛む
苦しかった。俊輔に悪態を吐くたびに、新田に優しく愛を囁かれるたびに、俊輔に話しかけられるたびに、新田にキスされるたびに・・・どんどんどんどん自分を嫌いになっていく
嫌いだと言い続けたかった。でも、その度に心が痛くて、それがまた嫌で嫌で仕方がない・・・
赤い糸は確実に俊輔と自分を結び付けていて、それは切れることもなく変わることはないのに新田とも別れられない・・・そんな自分が嫌い。嫌い嫌い大嫌い




バイトも休みのある日、順平と風花と共に歩いているとあの時の占い師を見つけて足を止める

「怜?」
「・・・」
「おや、あの時のぼうやじゃないか。なんだ。まだ告げてないのかー」

ニヤニヤと笑う占い師がおいでおいでとジェスチャーをして怜は占い師の元へと近付く

「さっさとしないと誰かに奪われてしまうよ?」
「・・・奪われる?あれは糸を切る方法だろ?!」

占い師は笑う。順平と風花は不安げな顔をしたまま怜に近付くと占い師は顔を上げてにっこりと笑った

「随分仲のいいお2人さんだ」
「・・・糸、見えるだろ!」
「あぁ、お友達も知ってるのか・・・じゃあ、問題。この糸、一体この正体はなんだと思う?」
「正体・・・いや!それよりもさっきのどういう意味だよ!」

怜は怒った表情で占い師に詰め寄っていて、それを順平が抑える

「話ってぇのは順序を追って・・・だよ?」
「・・・糸は糸!人はみんなこの糸で繋がってる人がいるんだよ!」
「ふふ。ホントに純粋で可愛い子だ・・・この糸の正体はね、オーラ。運命とかなんとかはロマンチスト達がつけたもんだ」
「・・・そのオーラだとして何が言いたい」

運命の糸だと信じていた怜はロマンチストと言われたようで恥ずかしくて少し悪態をつきながら口を開く

「このオーラはさ、波長が合うものが近くにいると引かれ合う性質があるんだ」
「・・・?」
「可愛いお2人さん、気が合うんだろう?一緒にいて楽しくて苦にならないだろう?」

突然話を振られて顔を見合わせた順平と風花はひとつ頷く

「ただそれだけ。例えば、他の波長が合う人間が近くにいたらそれはまた引かれ合うわけだ」
「・・・違うっ!!!だって!オレは順平と遭難しかけた時こいつから伸びる赤い糸のおかげで助かった!」
「・・・遭難・・・お嬢さん、その時、彼のことを真剣に祈ったかい?」

風花は首を縦に振る。順平にもからかわれていじめられていたけどホントはずっと好きだったから。はぐれたのが順平と怜だと知って真剣に祈った。無事に帰ってこられるようにと

「お兄さん、彼女に会いたい。そう祈ったかい?」
「・・・祈った・・・かもしれない」
「かもってなによ!」
「あん時は別にお前のことなんて」

本当は最後になるなら風花に想いを告げればよかったと後悔した。今までいじめてきたけれど風花の美味しそうに食べる姿だとか、話を聞いてくれることとか。アドバイスが欲しい時は的確なものをくれることだとか・・・だけど認めるのが恥ずかしくて怖くてからかったりいじめたり。それを後悔し、もう1度会って謝って好きだと言いたかった

「強く念じるとそのオーラは引き合う力を強くすることがあるんだ。命の危機に晒されているときとかにねぇ」
「・・・それで?」

いつの間にか話に聞き入っている怜が静かにそう言うと占い師は怜に向き合う

「でも、オーラは心と似てる。だからね、あんたみたいに目が良すぎちゃって見えちゃう子は結構心を閉ざすんだよ」
「・・・」
「どーせ運命じゃない。とかみんなに対して思ってるからオーラが異常に出ないわけ。そんなんじゃ引かれ合う相手も見つからないさ。あんたはせーっかく教えてあげたのにまーだ自分の殻に閉じこもったままだ」
「・・・でも、見えた」

心を閉ざしているというのならば、俊輔に見えた糸はなんなのか・・・
ずっと心をかき乱し続けるあの糸は・・・

「そう。あんたはオーラが一目惚れ起こしてる状態さ」
「一目惚れ?!ない!」
「あぁ。恋してるのはあんたじゃないから。恋愛は心でする?いや、実際は脳さ。けど、オーラ同士が一目惚れして恋したら・・・強いオーラで引かれ合う。まぁ、これは運命とか言っても許せるねぇ。お互いが一目惚れ起こすなんて到底ないことだもの」
「・・・何?」
「あんたが言う、運命の相手?その糸はキラキラ輝いてんじゃなかったかい?」
「・・・そう」

占い師は「ほらね」と笑って怜の鼻を突く

「それは他のオーラと違うもんなのさ」
「・・・でも、だからそれを切りたいって!求めだしたら暴走してなりふり構わずになるっていうから切るように・・・」

そう。それが怖かったから・・・だからこそ切りたかったのに・・・

「あぁ、あんたにいっくら心に正直になりなって言っても無駄っぽかったからねぇ・・・相手を振り向かせる魔法を教えてやっただけさ」

怜は息を飲む。振り向かせる・・・だからあの時俊輔は・・・あの時言わなかったら俊輔は・・・

「言っておくけれど、オーラは勝手に一目惚れ起こしてるわけじゃないよ?あんたと繋がって見えたんならそれはお互いが一目惚れを起こしてる証拠さ。心が好きで好きでたまらない。そんな相手に涙ナシでフラれるなんてことはできないもんなのさ。いっくら涙なんて流さなくたって心のどこかは大洪水。おや・・・あんた、相手に伝えたのかい?なら今幸せになってるんじゃ」
「余計なことしやがって・・・クソ・・・クソばばぁ」
「おやおや・・・」

怜は頭を抱えて順平に抱きかかえられるようにして立ち上がる
好き・・・その感情が怜の頭を支配する。それは全部自分のせい・・・俊輔が突然告白なんてしてきたせいじゃなくて、それを仕掛けるようにした自分のせい・・・新田のことが好きなのに・・・好きなのに・・・

「おばさん・・・怜はすげぇ悩んでんだよ・・・あんたの余計な言葉のせいで・・・」
「・・・へぇ?」

順平は占い師を少し睨んで怜の肩を支えたまま風花と共にその占い師を後にした




「あぁ、心が一目惚れ起こしてるときは心を開いてもたとえ引かれ合っていても自分から出る他のオーラには気付けない・・・言い忘れてたわねぇ・・・」

その占い師の言葉は誰も聞いてはいなかった








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赤い糸24 - 05/30 Mon

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年末、バイトも休みになるのと同時に怜は順平や風花と帰省する。これは毎年のコト。そしてそのまま3人での忘年会

「そういえばさー、オレ、内定出た」
「は?!マジで?!おめでとう!!!」
「怜くんは大学院行くとかだっけー?」
「あー、うん。もう少し残って勉強したい」
「うっわー・・・意外と真面目だよなぁ・・・」

怜は笑いながら酒を傾ける

「彼氏は?」
「新田ー?・・・新田はどうなんだろうなぁ・・・就活してる様子もなかったし、もしかしたら今のバイト先でそのままピアノ弾いて歌って酒作ってんのかもなぁ」

順平と風花は「そっか」と頷くと少しだけ顔を見合わせて「怜」と呼ぶ

「ん?」

顔を上げた怜に2人は少しだけ照れながら

「卒業したら籍入れることになった」

と怜に告げると怜は一瞬驚いた表情をしてすぐに笑顔で2人に祝いの言葉を述べる。それは怜にとっても嬉しいこと。ずっと2人の様子を見守って来た2人がやっとここまで来たのだと思うと嬉しくて嬉しくて・・・同時に赤い糸で結ばれた2人はやっぱり幸せなのかと胸を痛ませる

「なぁ、怜、新田じゃなきゃダメ?」
「え?」
「ほら・・・お前の運命の相手?・・・俊輔だっけ?そいつがいるから男も視野に入れたけど、結局幸せかどうかは怜次第だって判って来たんじゃねぇの?」
「・・・なにそれ・・・」
「えっと、順平くんも別に新田くんを否定してるわけじゃないんだよ?」
「否定・・・してんじゃん・・・やっぱり男同士は気持ち悪い?」
「そうじゃねぇし!」

順平が必死に否定するけれど怜は唇を噛みしめて立ち上がる

「怜?」
「帰る」
「ちょ・・・いや、待てって!」
「オレは・・・自分で決めた」
「なんでそんなにあいつがいいんだよ!」
「あいつはオレのコトすげぇ好きで・・・」
「怜くん・・・は?」

風花の言葉に怜はドアノブに掛けた手を止める

自分・・・は?

好き

好きだ

好きだと思う

好きでありたい

けれど・・・けれど・・・?

「怜くんが新田くんを大好きなら今のままでイイの。私たち、怜くんの友達だもん・・・でも、最近・・・怜くん・・・なんか・・・少し昔に戻ってるって言うか・・・」
「昔・・・に・・・って?」

また順平と風花は顔を見合わせる。前に会った時は幸せそうだった。もともとそう表情豊かではない怜が自分たち以外の人間といるときも表情豊かに笑って、怒って・・・それは2人には嬉しいことだった。怜がイイ方向へ変わっているのが寂しくてやっぱり嬉しくて・・・けれど、今日、怜の表情は以前のように堅いものになっていて・・・

「・・・俊輔に・・・あいつ本気じゃないと思うけど・・・告られて・・・新田が・・・少し不安定っていうか、なんかすげぇ嫉妬深くなって。ホントどうでもいいことで疑うし・・・それはオレのコト好きだからなんだろうって判るんだけど・・・ちょっとキツい」

今回の帰省も最後まで渋っていた。けれど最初から決めていたことで、それは新田にも伝えてあったはずなのに・・・

「オレ、幸せだと思うよ?なんか・・・すげぇ愛されてる感はあるし」
「俊輔に告られた・・・?」
「・・・そうだよ・・・オレ、あいつのことすげぇ好きになってた。でも新田も離せねぇ・・・もうダメ・・・わけわかんねぇ!自分が最低すぎてホント嫌・・・最低だ・・・最低っ・・・」

頭を抱え込んで座り込んだ怜を順平と風花はただ背中を擦り慰めたのだった






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赤い糸23 - 05/29 Sun

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冬休みに入ってバイトへ向かう怜にしつこく確認してくる新田がいた。クリスマスと言えば店の繁忙期で、いつもよりもずっと忙しいから帰りも遅くなると言ったハズなのにバイトを終えた怜が携帯を見ると着信の嵐で携帯を握りしめたまま戸惑う

「お疲れさま。どうしたー?デェト?」
「あ、みのりさん・・・お疲れ様です」
「っていうかー・・・遅くまでお疲れさまね?彼女怒ってたりしない?」

店のパティシエが心配そうに怜の顔を覗きこむ。イケメンパティシエと騒がれる彼の顔が近付くと美しい顔にドキリとして慌てて首を振った

「っていうか・・・もしかして彼氏・・・だったりする?」
「え?」
「えー!大丈夫ー!オレもー・・・今から彼氏とデート!あ、これ秘密ね?」
「や・・・結構みんな勘付いてますけどね?」
「ええええええ!!!!オレ判りやすい!?え!マジでぇ?!」
「・・・まぁ、みのりさん、なんていうか乙女なとこあるし」
「・・・マジ・・・かぁ・・・あ、そう。でー・・・あのねー、さっき表閉めに行ったらね、男の子が店の前にいてさー・・・すいませんー閉店ですーって声掛けたら人待ちだって言われてさぁー」

怜の背中に冷たいものが流れた気がした
着信履歴を見る限り、きっとずっと寒空の下で待っていたに違いなくて・・・

「お・・・お先失礼します!!!」

コートを掴んで慌てて出て行った怜の背中を見ながら「大丈夫かなぁ・・・」と心配そうな声で呟いた





「新田?!」
「あ・・・」

コートのポケットに手を入れた新田が青い顔で店の前にいて、怜は慌てて持っていたマフラーを新田の首に巻く

「大丈夫?!」
「ん・・・や、バイトお疲れ」

いつもの優しい笑顔・・・怒ってもいない新田

「新田、今日バイトの日じゃないの?」
「クリスマスパーティだから歌姫が特別ライブやってんだよ・・・だからオレの出番はない」
「そ・・・っか・・・ごめん。ケーキ屋だとやっぱり忙しくって休みとれなくて・・・」
「うん。だよね・・・」

ポケットに手を入れた新田を見上げると「部屋、来てくれる?」と言われて、怜はひとつ頷いた









「怜、あのさ・・・」
「うん?」
「オレ、さっき怜が店から出てくるまで少し疑ってた」
「はぁ?」

新田に髪の毛を洗われながら怜は顔を少しだけ上げる

「俊輔・・・の・・・パーティ誘われてただろ?」
「パーティ・・・あぁ・・・なんかみんなで騒ぐとか言ってた奴?あれ速攻断ってたのは見てなかったのか?」
「見てた・・・でも・・・」

怜はひとつため息を吐くと「バーカ」と吐き出す

「なぁ、オレお前のコト好きなんですけど?」
「嬉しいですけど?」
「信じてくれてもよくね?」
「信じて・・・る・・・でもさぁ・・・怜、運命の赤い糸とか言うし」

そう。運命の赤い糸・・・それは未だに俊輔と繋がっている赤い糸
でも、最近それが何を意味するものなのかよくわからなくなってきていた。元々、赤い糸は切れることがない運命の相手だと思っていた。それが切れると知って・・・そして何故かまたふわりと戻ったりして・・・

切れることがない縁・・・もしそうならば、それは腐れ縁という言葉に片付けられるようになっていくのかもしれない・・・俊輔からメールで「好きだ」と言われてもあまり関係がないと思えたし、やっぱり新田が好きだと思えたから・・・

「これをー・・・こう切ってー・・・ここと結ぶとー・・・ってやっぱり全然無理かー・・・」

怜にだけ見える赤い糸を指をはさみの形にして切って新田の指に結ぶふりをする。そんなことで切れない赤い糸は当然新田の指に結ばれることはない

「それ、見えることにしといてよ」
「んー?」
「どうせオレには見えないから」

新田が優しく笑いながら怜の髪を流す

「オレにも見えなけりゃいいのになぁー」
「見えなかったら・・・俊輔と付き合ってたかもなぁ?」
「んー?」
「見えたからこそあいつを拒否してるんじゃね?」

確かに・・・見えなければ衝動的に惹かれたあの瞬間に恋をしていたのかもしれない

「新田とも付き合ってなかったかもなぁ」
「うわ!なんで!!」
「赤い糸の相手が男なら男と付き合うのもアリかー・・・とか思ったから」

新田は笑って「じゃあ俊輔に感謝か」と呟いて髪を流し終わった怜にキスをする

「どっか閉じ込めておきたい・・・帰省もさせたくない」

新田のその言葉はどこまで本気か判らなくてただ怜に恐怖心を与えていった







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赤い糸22 - 05/28 Sat

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冬休みの前日、怜は1人の女生徒に呼び止められた

「・・・」
「怜ちゃん、ちょっとイイ?」

あぁ、自分の元カレとはいえ、好きだった男が男の自分なんかを好きだなんて言いだしたらやっぱり気分は良くないのかもしれない。そう思いながら俊輔の元カノであるミカの後へと続く

「あぁ、この教室でいいやー。暖かいし」
「・・・」

妊娠している・・・まだお腹は目立ってないけれど、そこに生命があるのだと思うとそれだけで不思議な感じがした。いくら男と寝ても自分には宿すことのない命を抱えているのだと思うとどこか切ない気持ちになる

「あー・・・っと。まずごめんね?」
「え?や・・・オレが謝らなくちゃなんじゃ・・・」
「え?!何を?!・・・あたしは・・・ほら、こないだ、前に、怜ちゃん傷つけちゃったから・・・」

こないだ・・・あぁ、きっと新田にキスしたのを見たと言ったあのことなのだろう・・・

「あのあとさー・・・俊輔にブチ切れられたんだよねぇ・・・もし、2人が付き合っていてあたしのせいで別れることになったら責任とれるのか!?って。で、よく考えたらやっぱりあれは軽率な質問だったかもー・・・って反省してさぁ・・・」
「いや、別に・・・」
「怜ちゃん、ホントは新田と付き合ってんだよね?あれは新田が悪い!超悪いー!だから・・・ってわけでもないんだけど・・・俊輔、バカだし、うざいししつこいけど・・・イイ奴だから」

ミカにそんな応援みたいなことを言われるとは思わなくて怜は目を丸くした

「あいつ、すっごいチャラく見えるでしょー?でも実際重いから!超重いっ!スペシャルだな。あれは!バイト行くって言うとその時間空いてれば何故か送り迎えしてくるし?授業も必ず一緒に受けるし?しかも膝の上座って。とか言うし!そのくせ手はなかなか出さなくて初めてキスしたのだって付き合い始めて3ヶ月後だし!」
「え?」

ふわりとミカが笑う

「あいつ、自信満々じゃん?だけど実際ビビりなんだよね・・・あたし、付き合ってる人がいてさぁ・・・ちょーっとそっけなくてでもたまにすごく優しくて・・・だったんだけど。俊輔が「オレは毎日優しくしてやるからオレにしろ!」って奪ってくれてね・・・でも、あたしが付き合ってる奴いたんだからセックスはすぐには怖いとか言ってさぁ・・・もしかして子どもができたらどっちの子か判らないからとかそういうことかって疑ったらさぁ・・・元カレの形、体が覚えてるのが怖いんだって・・・それ聞いてうっわーって引いたけどさ・・・体が元カレを忘れて自分だけを感じてくれるようにならないと怖くてできないとか言ったあいつがなんか可愛く見えた」
「・・・可愛くはないな」
「えー!俊輔って母性本能くすぐられる感じあるじゃん?」
「いや、そもそも・・・オレ、男だし母性本能が・・・」
「うーん・・・いや、だからとにかくあたしが言いたいのは・・・あたし、冬休み終わったらもう学校来ないからアドバイスもできないし、なかなか会うこともないから言えないけど俊輔と付き合って手を出さないとしてもそれは同性だからだとか怜ちゃんに魅力がないだとかそういうわけじゃないから!ね?安心してあいつにとにかく甘えておけばいいんだよ!勝手にさせとけば無害だから」

甘えて・・・今だって充分新田に甘えている。それに抱かれているけれど男なのだ。甘やかされ続けなくたって大丈夫・・・

「ありがと・・・でも、オレが俊輔と付き合うとかないから・・・」
「・・・新田、そんなにいいかねぇ?」

あまり目立つほうでもないし、あまり人と話さない新田のことを皆きっと知らない。怜だけが知っている・・・優しくて誰よりも自分を愛してくれているのを知っている・・・愛されている。それは怜だけが知っていること

「まぁ、怜ちゃんの問題だからあたしがなんか口出すことじゃないかー」

運命って何なのか・・・判らなくなる。確かに衝動的に俊輔を求める瞬間はある。けれど、よく考えるとやっぱり好きなのは新田だと思う。今まで以上に衝動が襲ってきて俊輔と一緒にいたいと望む日がこれから来ると言うのだろうか・・・判らない。それは怜にとって全く予想できないこと

「んじゃー、怜ちゃん、大学も恋も頑張るんだぞ?」
「うん・・・ミカちゃんも頑張ってね」
「おーうっ!あ、結婚式するときには招待状送っちゃうー!新田もそん時にピアノ演奏してもらおうかなぁー・・・」
「うん・・・あいつのピアノ・・・すごいから」
「・・・そうだね。怜ちゃんが惚れこんでるピアノマンね」

ミカが笑うと怜に手を振って教室を出て行く。結婚式・・・自分には縁がないもの・・・新田とこのままいるとしても、俊輔と付き合うとしても縁がないもの・・・そう考えるとまたモヤモヤと胸が痛んだのだった





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赤い糸21 - 05/27 Fri

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流石陸上部のエースというだけあって、走って行く俊輔に追いつけず息を切らしながら教室へ入ると俊輔が手を叩いて「はいっ!注目ー!」と注目を集めている所だった

「っ!」

声を上げて俊輔を止めたいのに走ってここまで来たから声がなかなかうまく出ない

「オレー!好きな人ができましたぁぁぁ!」
「ちょ!俊輔の久々宣言じゃんっ!」
「おーっと俊輔に惚れられた可哀想な子は誰だぁー?!」

ザワザワと教室がしている中、息を切らして口をパクパクさせている怜に気付いて新田は笑った顔を強張らせる

「可哀想じゃないー!あぁ、戻って来たー!怜ちゃーんっ!大好きー!」
「なっ・・・」
「え?」
「怜ちゃん?」
「ちょ!俊輔!怜ちゃん好きになっちゃったの?!」

言われた・・・とうとう・・・驚きと軽蔑の目で見られるのかと覚悟すると俊輔を囲んでいた生徒から何故か励ましの言葉が掛けられる

「怜ちゃんー!こいつ相当しつこいから気を付けてー!」
「頑張れー!」
「あとー!陰で怜ちゃんの悪口言った奴もオレ、許さないからねー!」
「あー!俊輔の悪口は言っても怜ちゃんの悪口なんて言わない言わないー!」

なんだ・・・これは・・・そう怜は戸惑う。今、俊輔が同性が好きだと宣言した。もっと冷たい目だとかコソコソ言われるのだと思ったのに・・・

怜に向けての痛い視線は1つだけ・・・そう。たった1つだけ・・・

「・・・」

怜は顔を上げて新田を見るが、すぐに目を逸らされて、怜の胸がチクリと痛む。怜はそっと新田の隣の席に着くとまだ整いきってない息のまま「違う」と呟く

「・・・何が?」
「オレ・・・」
「怜ちゃーんっ!こっち来てよー!オレのいいところ見せてあげるー!先週の課題もできてるしー!ねぇねぇ怜ちゃーんっ!」
「うっさい!話し掛けんな」

少し離れた所で手を挙げた俊輔にいつものように悪態を吐くと「俊輔嫌われてんじゃんー!」と笑い声が上がる。でも、そんな楽しそうな雰囲気も怜には関係がない。今、きっと新田は傷ついているから・・・勘違いもしているから・・・







「新田!待てよ!」

授業を終えるとすぐに教室を出て行った新田を追いかける怜

「今日、バイトない日だよな?なぁ!メシ食いに行こうよ!」
「・・・今日は・・・ムリかな・・・」

振り返った新田の表情が何とも言えない切ない表情で怜は困った顔で俯く

「・・・とりあえず弁解したい・・・」
「・・・」

怜の顔を見て新田はひとつため息を吐くと「じゃあ来る?」と言いかけたとき

「怜ちゃん」

そう遮るように呼んだ声の主へと顔を向けた

「新田も聞けよ」
「・・・何?」

俊輔は新田の肩をポンポンと叩く

「怜ちゃんは新田の方が好きっつったけど、オレ、諦めないし」
「・・・」
「っつか、オレの方が多分怜ちゃんのこと楽しませられるよ」
「そんなことないっ!」

新田がひるむと怜の声がそう響く

「でも諦めない」
「・・・」

「オレも」と言いたいのに言えない新田。そもそもなぜ俊輔が知っているのか・・・怜がそれを言ったのか・・・それすらも判らない。新田だけ置いていかれている気がして、怜を見つめる

「新田!帰るぞ」

新田の腕を引っ張って怜が歩き出すと俊輔は微笑んで「怜ちゃん、またね?」と手を振る。胸が痛かった。こんなにも心が動かされることが辛い・・・新田の目の前なのに心が動くのが辛い・・・

「怜・・・手、離して」
「・・・」

少しだけ歩くと怜の手を振り払うようにした新田を見上げる

「・・・新田・・・オレ」
「オレ、もうわけわかんない」
「それはっ・・・オレも・・・どうしてこうなったのか・・・」
「大体っ・・・あいつと・・・」

人が近くを通る度に話を中断させるのは新田が慎重だから。俊輔とは違う。でも、それはもう怜も理解していること・・・

「新田、とにかく部屋、帰ろうか」

新田は頷いて、怜と少し離れて友人の距離でまた歩き出す。この距離がなんとなく寂しいだなんて・・・別に怜だってみんなに言いふらしたいわけじゃない。でも、もう少し近付いてもきっと疑われることもないはずなのに・・・





部屋に入ると新田が甘えたように怜を抱きしめる

「怜、どうなってんの」
「・・・赤い糸の話・・・したろ・・・」
「切るって言ったのに・・・切ってない」
「違う!・・・新田、切りに行った!切るために必要なことしたんだ!でもっ・・・でも・・・切れなくて・・・それどころか・・・あいつはあんなこと言い出して・・・」

新田の手が荷物も下ろしていない怜のシャツの中に入って来る
外気で冷えて冷たい手に思わず小さい叫び声を上げた

「・・・怜はそれでもオレが好きだって?」
「っ・・・好き・・・だよ」
「俊輔が怜のコト好きって言ってるのに?」
「あいつはっ・・・嫌いっ・・・」

冷たい指が怜の腹を撫でて乳首を抓る
ビクリと体が跳ねてお尻を新田に押し付ける形になる

「ねぇ、怜・・・オレがもし今、別れるっつったら怜はすぐ俊輔と付き合うの?」
「な・・・だからっ!オレはっ」
「・・・オレは俊輔みたいにあんな公言できないよ?バイト先みたいに限られた空間では別だけど・・・普段は普通の恋人みたいに接することができない・・・やっぱり怖いから。虐められた記憶がフラッシュバックするから」
「痛っ・・・イイっ・・・別にオレはっ」
「離さない・・・離したくない・・・怜、あいつは・・・いや、怜もだけど、女の子が好きだろう?だから将来子どもが欲しいと望むかもしれない。でも、オレはない・・・オレは一生怜を愛せる・・・」

乳首をまた強く抓られながら耳元で囁かれる言葉。「好きだ」と言われるだけで背中に快感が走る。覚えているから・・・新田の手で、声で与えられる快感をもう怜の体が覚えてしまっているから

「怜・・・愛してる」
「・・・ん・・・」

新田の声は怜を蕩かしていく・・・深く深く蕩かしていく






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赤い糸20 - 05/18 Wed

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冬休み直前のゼミの日、俊輔の彼女が色々な人に囲まれて花束を受け取っているのを見る

「もー、やだなぁ・・・こんなんしなくたってまた会えるじゃーん」
「っていうか休学でもよかったじゃん!大学辞めることないじゃんっ!」

あぁ、辞めるのか・・・そう思いながらも怜はパソコンの画面を見つめる

「でも、実際子ども産んだら復学する余裕なんてないってー!」
「うっわー!なんかあんたが今すごいしっかりして見えた!」
「そーですよ!私は母になるんですものー」

子ども・・・母・・・ぞわりと背中に寒気が走る

「結婚式はー?!」
「とりあえずお金ないしー生まれてから余裕で来たらやるかもー!」
「それ呼んでよー?」

女生徒たちの会話はもう怜には聞こえない。耳鳴りがして・・・俊輔が結婚するのだと判って・・・
ショックを受けていることがまたショックで・・・

「れーいちゃん?」
「っ?!」

振り返るといつものにやけた顔。それは今1番見たくない顔・・・そして・・・決着を早くつけなくてはいけない人

「・・・ちょっと顔貸せ」

怜は席を立つとそのまま教室を出て行く

結婚する・・・なのに俊輔はチャラチャラと別の女の子を隣に座らせて膝の上にまで座らせて笑っていた。彼女はしっかりと母になる準備をしていたのに・・・こんな男・・・要らない。要るわけがない
新田の方が誠実で・・・優しくて・・・自分だけ見ていてくれる・・・だからこそ赤い糸を絶たなければ。今すぐ!今すぐに!!

「怜ちゃん?」

大股で歩き続けてそれを追ってくる俊輔が嫌だった。嫌い。嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い・・・

「ねぇ怜ちゃんー」
「・・・オレ、お前のコトホント嫌い」

人気のない場所へと足を踏み入れると怜は振り返ってそう言う。俊輔は少し驚いた顔をしてすぐにふにゃりと笑顔を作って「いっつもそう言うねぇー。でもわざわざ呼び出してそれー?」と笑う。赤い糸は切れていない・・・

「いっつもチャラチャラチャラチャラ鬱陶しい!彼女以外とイチャイチャしてるのもホントムリ!見るとイライラする!ホントオレにもうこれ以上近付くな!生理的にムリ!話し掛けるな!」

赤い糸がほつれるのが見える

「今までの人生で出会った人間で1番嫌悪感を感じる!ホント大嫌いなんだ!ホントにホントに嫌いなんだ!これ以上、ホントに・・・近付かないでくれ」

プチ・・・ン・・・

赤い糸が切れるのを見て、聞いて・・・怜は押し寄せる感情の波と戦う。涙なんか見せるわけがない・・・そう思っていたのに感情が追いつかない・・・好き・・・多分好きだった。ずっとずっと惹かれていた。でも、彼女がいて。自分にも彼氏ができて・・・結婚するという俊輔とちゃんと切らないといつかもしかしたら俊輔が自分に恋愛感情を抱いてしまうかもしれない・・・その可能性を潰さないと・・・これから彼女と子どもを幸せにしなくてはならないのだから・・・だから今すぐに赤い糸を切らなくてはと思って・・・呼び出して・・・

俊輔が背を向けて歩き出すと怜は両手で口を塞ぐ。溢れだしそうな言葉。待ってと引き止めたくて。気付いてと叫びそうで

「・・・」

振り返るな。振り返って・・・いつものように笑って。笑わないで・・・

そして俊輔が立ち止まって息を飲む。振り返っちゃダメ。そのまま行け・・・そう思うのに俊輔は眉を顰めた顔で振り返っていつもよりも優しく笑うと切れたはずの糸がふわりとまた結びつく

「やっぱりダメだ・・・怜ちゃん、嫌うならそんな泣かないでよ」
「な・・・」

涙は出ていない。泣いていない

「そんな今にも泣きだしそうな顔で嫌いって言われても大好きって言われてるみたい」
「バカ言うなっ!オレはっ!」
「うん・・・怜ちゃんがそうしたいなら・・・って思ったけど、やっぱり無理」

俊輔が少し小走りに怜の元へと来ると背中を叩いてベンチへ座るように促した

「ちょっと話しようかー」
「・・・」
「フラれて傷心中のオレに怜ちゃんまで追い打ち掛けるーって結構傷ついてオレ疲れちゃったー・・・ジュース飲む?」

すぐ近くの自販機に小銭を入れながら俊輔が笑うのを首を振って答える
フラれて・・・という言葉の意味が判らなくて俊輔を見つめた

「結婚・・・すんだよな?」
「えぇ!?結婚?!あー・・・あぁ・・・っていうか・・・怜ちゃん、遅れすぎ・・・」

ジュースの缶を開けながら俊輔は怜の隣にドサリと腰を下ろすと「あいつだろ?ミカ。夏休み中に終わってるっつーの」と笑う

「・・・は!?」
「えー・・・っていうか怜ちゃんぐらいじゃない?別れたの知らないって」
「じゃ・・・え?子どもは?」
「オレの子どもじゃありませーんっ!オレと別れた後の彼氏との子どもでーす!それもオレ、結構ショック受けてたんだよなぁ・・・そりゃあいつ早く子ども作って結婚しよう!とか言ってたけどさぁ・・・学生だっつーの・・・ねぇ?」

俊輔との糸が切れない・・・切れたハズの糸はいつの間にかまたきれいな糸で結ばれていて・・・信じられない。あの時、間違いなく切れたのに。泣かなかったのに・・・涙なんて流さなかったのに・・・

「別れたからっていろんな女の子とイチャイチャしてるお前は気持ち悪い。嫌い」
「えええええええ!!!!色んなって・・・あー、確かに?オレ、彼女ができるまでのスパンは短いよ?でもさぁ・・・言い過ぎじゃないー?」
「・・・彼女?」
「そそー・・・っつーかアレだよ?誰とも時期被せて付き合ったりはしてないよー?オレ、結構一途なんだよー!・・・フラれるけど」

一途・・・信じられない。一途っていうのは新田のような・・・

「怜ちゃんさぁ」
「・・・」
「新田と付き合ってんだよねぇ?」
「え・・・?」

知ってるはずがない・・・知ってるはずが・・・

「あぁ、だよねぇ・・・うーん・・・でも、オレが好き?」
「酷くポジティブなんだな・・・病気だ」
「えええー!なんで否定するの!!!怜ちゃんってオレにだけすっごい冷たいからすごーい嫌いからすごーい好きなんだって思ってたけどさぁ」
「そのすごーい嫌いの方だけど」

赤い糸はさっきみたいにほつれることすらしない・・・どうしたら糸が切れるのか・・・確かに俊輔がすぐに結婚するわけじゃないのだから今すぐ絶たなくてもよくなったのかもしれないけれど、怜には新田がいて・・・

「新田のコトも好きー?」
「・・・」
「無言の肯定ー!」
「・・・」
「うん!怜ちゃんイイ奴っ!これで違うって言うと新田にも悪いと思うんでしょう?大丈夫大丈夫ー!付き合ってるからってバカにしたり茶化したりしないってばー・・・怜ちゃん、最初すっごい感情なさそうだったよねー・・・でも新田と仲良くし始めた辺りから少しずつ変わってってさー・・・すげぇ笑うようになって・・・そんでオレにだけ冷たくて」

口を尖らせた俊輔が一気にジュースを飲み干すと空になった缶をゴミ箱へと投げるとカランと音を立てて空き缶がゴミ箱へと消えて行った

「オレと付き合おう?」
「・・・だから嫌いだってば・・・そもそも新田と付き合ってるってお前判ってんならバカ言うな」
「怜ちゃんー、今、少し嬉しい?」
「嬉しいはずがない」
「新田と戦えばいいー?今、怜ちゃんはオレのコト好きだけど新田と比べるとやっぱり新田なんでしょー?だから怜ちゃんを振り向くように頑張ったらいーい?」

いい・・・いや、良くない・・・そう怜は首を振る

「えー・・・ダメー?とりあえず宣戦布告はしようかなぁ・・・じゃないとフェアじゃない」
「・・・何?」
「うん?新田に」
「な!!!」
「それに新田よりオレの方が怜ちゃんを幸せにできるってー!」
「・・・ない」
「えー!だって新田嘘吐きだもん」

嘘吐き・・・あの時のことかと怜は思い浮かべる

「オレだったら怜ちゃんのせいにしないー!っていうか付き合ったらみんなに公言して怜ちゃんいっつも膝の上に乗せて授業受ける!」
「・・・最悪」
「えー!でも付き合ったら他の誰にも触れさせたくないもんー!」

嫌だ・・・嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ・・・でも、隠さない関係は少しだけ憧れる・・・

「あ!寧ろ他に手を出されないように今から宣言しよう!オレは怜ちゃんが好きー!!!ってみんなに公言してこよーっと」
「な・・・は?!」
「うん!新田にも宣戦布告になるっしょ!よーし!今から戻って教室で宣言してくるー!」

歩き出した俊輔を怜が追う。ここへ来た時とはまるで立場が逆になっていた






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赤い糸19 - 05/15 Sun

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控室のドアが閉まる音がして続いて鍵のかかる音が怜の耳に響く
すぐに新田の腕が怜を抱きしめる

「怜・・・嬉しい」

そう囁かれて新田を突き飛ばす

「・・・?」
「・・・さ・・・」
「さ?」
「さっきのっ・・・」
「え・・・?ヤキモチ?大丈夫。断ったし・・・ただのお客さんだから」

新田が笑ってソファに座りながら怜の手を引き寄せる

「違・・・た・・・タイプだった?」
「うーん・・・怜がいなかったらいただいてたかなぁ・・・あ、でもホントにしてないよ?怜が今日来てなくても何もしてないから!」

怜は首を振る。運命の赤い糸が切れた・・・それはきっと自分のせい・・・今、新田には自分がいるから糸を切る言葉を言わせてしまったから・・・
恋に落ちる前に糸を切らせてしまう・・・その恋が燃え上がれば自分なんて捨てられてしまう・・・どちらも怜には酷い気がして頭が混乱する・・・自分は糸を切りたいと思いつつ切るのが怖くて俊輔をそのままにしているというのに・・・

「怜・・・?」
「やっぱり・・・友達に戻ろ・・・」
「え?!」
「オレ・・・お前の出逢い潰してるっ!」
「いや、そんなの怜がいるから要らないし・・・怜、何?どうしたの?」

あの時のように自分の声で感じてくれて思い出してくれて我慢できなくなったのだと思いたかった。2人きりになってまさか別れ話の続きを言われるとは思わなかった新田は怜の手を強く握る

「笑わない・・・で聞いて・・・今から言うのはバカらしいけどホント・・・」
「うん?」
「・・・オレ、人と人を繋ぐ赤い糸が見える・・・んだ」
「・・・ずいぶんロマンチックだなぁ」

新田は微笑みながら怜をソファに座らせると肩を抱く

「そうじゃない・・・ホントに・・・見えるの・・・」
「うん。そっか・・・それで?」
「・・・さっき・・・の人と・・・繋がってた・・・」
「ええ?!オレと怜が繋がってるんじゃなくて?」

怜は新田を見て信じてはいないな・・・と思いながらも首を振ると新田の手が怜を強く引き寄せた

「まさか、怜は俊輔と赤い糸で結ばれた関係だとか言い出さないよな?」
「・・・」

怜の表情を見て新田は怒ったような顔で怜の唇に無理矢理唇を押し付けた

「新田っ・・・」
「・・・俊輔のコト好きになりたくないとか・・・言ってなかった?」
「なりたくない・・・」
「嫌だ。ダメ!なぁ、糸が見えるとして、さっきの奴との糸が切れたのも見えたとして・・・次に怜とそれが繋がる可能性はないわけ?」
「・・・」

そういえば・・・赤い糸が切れたらその人の運命の人はもういなくなるのか・・・そう疑問に思ったのに新田の指からはまた新しい糸が見えていて少しホッとする。そして同時にまた同じことの繰り返しをするようでまた苦しくなった

「オレとは繋がってない・・・」
「それは俊輔と怜が繋がってるから?」
「・・・」
「怜、それじゃなんで切ってくれないの?怜は見えるし、切ることもできるんだろ?」
「それ・・・は・・・」

あの占い師の言葉を頭の中で思い出す・・・切る条件・・・相手にフラれること。涙を見せないこと・・・簡単。新田は簡単に切って見せた。なのに何故まだ自分は切っていないのか・・・

「怜、オレのコト名前で呼んでみて」
「え?」
「ほら・・・呼んでみて?」
「・・・」

新田の名前・・・誰も呼ばない名前・・・

「呼び慣れてるだろ?判るよな?オレの名前」

怜はひとつ頷くと口を開く・・・

「しゅ・・・俊輔」

新田は少し笑って怜を抱きしめる
ゼミの、いや、大学の人気者と同じ名前・・・地味な自分の名前なんてほとんど誰も知らないし、もし知っていても名前で呼ぶ人間なんていない
たとえ呼ばれたとしてもそれはきっと自分を呼ぶ声じゃないから

「・・・怜から呼ばれてみたかった。オレもあいつみたいに呼ばれてみたかった」
「新田、オレっ・・・」
「たとえその赤い糸で結ばれてなくたってオレは怜のことすごい好きだし、怜の言うオレの赤い糸の相手が現れてもオレは全部跳ねのけるよ?」
「・・・」
「それじゃダメ?」
「・・・赤い糸で結ばれた相手とのほうが幸せになれる・・・んだぞ?」
「だって、オレは目の前の怜といる方が幸せだもん」
「・・・オレがいたらもっと幸せになれるかもしれない相手と出逢っても全部邪魔するんだぞ?」
「いいよ。邪魔して・・・」

新田の優しい目を見て目を逸らす。優しい・・・優しくて飲み込まれそうになる。このまま甘えたくなる

「それに・・・もし、恋に落ちたらオレなんか簡単に捨てちゃうんだ」
「えー!それはないって言いきれるよ」
「・・・まだなってもないくせに・・・言い切るの変だ・・・」
「怜」

顔を上げるとキスが降って来る

「俊輔と切れよ・・・オレを選んでよ・・・こっちの俊輔を選んでよ」
「・・・」
「怜を幸せにする努力するから・・・」
「・・・でも、オレ今日幸せじゃなかった」
「あぁー・・・それはホント悪かったし・・・」

怜はおずおずと新田の首に腕を回す

「怜・・・あんまり時間なくなっちゃった・・・ヌいてあげる」
「や!イイ!大丈夫!!!」
「怜・・・」

耳元で熱っぽく囁かれると一気に思い出して顔を赤くする

「ほら・・・な?あー・・・もーめちゃくちゃ可愛い・・・怜・・・オレの怜」
「っ・・・ぅ・・・」

デニムの上から撫でられてさっきまで鍵盤の上を踊っていた指が怜の体に触れる

「新田ぁ・・・」
「怜、今日はごめん・・・でも、もしまた勘違いされるようなことあったら今度はちゃんと怜を守るから・・・絶対。守るから」

新田に囁かれて擦りあげられるといつもより早く体をぐるぐると回って溜まっていた熱を放出した







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赤い糸18 - 05/14 Sat

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「怜!怜っ!」

教室から逃げ出した怜を人気のない中庭で捕まえるとその腕を振り払われる

「大丈夫・・・か?」
「うるさい」
「・・・オレ、判ってるから」
「何が・・・」
「怜が新田に・・・」

怜は鼻で笑う
何が判っているのか・・・本当は新田は彼氏で、キスされたけれどしてもおかしくない関係で・・・

「お前うざい・・・」
「怜、オレのコト嫌いでもいいけど、オレはお前のコト友達だと思ってるし、もし何か悩みとかあったら」
「ない・・・ないっ!」
「・・・もし、新田のコト好きで本当にキスしてたとしてもオレは別に・・・」
「黙れっ!」

怜はそう短く叫ぶともやもやと混乱した心のままでその場を走り去った






トントン

怜がテレビをぼーっと見つめているとドアから音がして立ち上がる

「はい」
「オレ・・・」

新田の声で怜は拳を握りしめる
この関係が公にできないのも判る。隠したいのも判る・・・でも、自分だけに押し付ける形にしたのは気に入らない

「カバンとか・・・忘れてったから・・・あと、謝りたい」

怜はドアを開けるとカバンを受け取る

「ごめ・・・でも、あの後、誤解解いたから・・・調子に乗ってキスされたとか告白されたとか言ったけど本当は歯が痛いっていう怜の口の中見てたって・・・みんなそれで納得したって言うか」
「なんか・・・一気に冷めた気がする」
「え?」
「友達・・・戻りたい」
「ヤダ!ごめんって!・・・オレ、高校ん時ゲイだってバレたときあって・・・虐められたっつーか・・・ごめん。言い訳!とっさに出てきたのがあんなお前に被せるようなことになって・・・ホント・・・でも、ごめんって」

イジメ・・・そう聞いて眉を顰めて新田を見上げる。虐められたならば仕方ない・・・そう思ってしまう自分は甘い。判っている・・・でも、風花が虐められていたときの順平だって同じように虐めていたのだし・・・これは赤い糸で結ばれていようがいまいが関係ない話しではないだろうか・・・

「怜・・・」
「・・・どうしてくれんの・・・この冷めた気持ち」
「・・・怜、今からバイトあるんだけど・・・一緒に来る?」
「え?」
「酒!奢る!好きなだけ飲んでていいから!ね?」

新田のバイト先はゲイバーだと聞いていた。けれどそんなところ足を踏み入れたこともなくて・・・

「今日、歌姫いないし・・・お前のために歌うから・・・全部怜に捧げるから」
「それ・・・ずりぃ・・・」
「オレ、もう武器になるならなんだって使うさ・・・な?怜・・・友達に戻るとか言わないで・・・お前いないとホント・・・」

新田の必死な懇願に怜は頷いてしまう
裏切られた気分になったのに・・・全部許して新田を信じたくなってしまう。好きだから・・・愛されていると実感するから

「怜・・・怜っ」
「・・・でも、オレの中で友達に戻る方向だからな・・・」
「また、ゼロから積み上げて行けばいい?怜に好きになってもらえるように努力する・・・」

新田の手が怜の手に重なって優しく包まれる
温かい手・・・新田の指と繋がっていればいいのに・・・だったらきっともっと自分にも自信が持てる。何も恐れなくてイイのに・・・








新田に連れてこられたバーは普通のバーに見えた。カウンター席に座らされるとカウンターの中の長身の美人が「珍しい」と呟いて怜の前に氷の入ったグラスを置く

「噂は聞いてるけど・・・初めまして」
「マスター!手、出しちゃダメですよ!」
「安心しろ。タイプじゃないから」

マスターと呼ばれた男をひとつ牽制すると新田はそっと怜の耳元で「着替えてくる」と囁いてその場を離れる

「お酒、強いんだっけ」
「あー、まぁ・・・弱くはない・・・というか」
「ハハ・・・聞いてる聞いてる。どんだけ飲ませても潰れるどころか酔いすらしないっていうレイくんだろ?あいつがベタ惚れしてる可愛い恋人」

ここでは自分の話をしているのだと思うと少しだけ微笑む。全てに隠したいわけではないのだ・・・学校ではあんなことを言われたけれど、やっぱり愛されている・・・そう実感してしまう
マスターがグラスに琥珀色の飲み物を注ぐと「あいつに全部つけとくから」と言われて怜はグラスに口を付ける

「・・・美味しい」
「そうだろうそうだろう・・・店で1番高いウィスキーだし」
「・・・あいつ・・・払えるのかな・・・」
「しばらくただ働きしたらいいんだ」
「・・・」

怜は笑ってまたグラスに口をつけると着替えた新田がステージの上で礼をするのが見え、その後に拍手が起こってすぐにしっとりとしたピアノの音が店内に響き渡る

「・・・」

学祭で聞いた時と同じように英語の歌詞はまるで判らない・・・でも、甘く囁くような新田の声をビリビリと感じる。たまに顔を上げて怜に送る視線が熱っぽくて怜は俯きながらグラスを握る手を見つめる

「いつもよりも熱入ってんなぁ・・・キミがいるからかな」

マスターが空になったグラスを交換するのを見上げて怜は少しだけ首を振る・・・友達に戻りたい・・・そう言ったのはほんの少し前のコト。もうそんなことどうだっていい。この声を耳元で囁かれながら新田の熱い体に抱かれたい・・・
早く・・・早く・・・帰って2人きりになりたい・・・



演奏が終わると立ち上がった新田にグラスをもった青年が妖艶に振舞う

「・・・ごめんなー・・・これもあいつのお仕事」
「・・・」

グラスの酒を飲みながら青年と笑顔で談笑する新田・・・そしてその指に繋がった糸を見て息を飲む。今、新田と話している青年と赤い糸が交わっている・・・彼が・・・新田の・・・

「毎回いい声で痺れちゃうー・・・ねぇ、今夜こそどう?」
「ありがとう・・・でも、ごめんね?オレ、あそこに可愛い恋人待たせてるんだ」

新田が笑顔でそう答えると振り返った青年と目が合う

「・・・っ?!」

その瞬間新田と繋がっていた赤い糸がプチン・・・と音を立てて切れるのを見る

「・・・ぇ」

赤い糸が切れる瞬間・・・切れた・・・簡単に・・・簡単に・・・運命の赤い糸が・・・

「怜・・・聞いてた?」
「おいおいー・・・お前はお仕事こっちだろう?」
「あー、5分だけ!」
「・・・」
「怜?」
「・・・」

顔を上げようとしない怜の顔を覗きこむ
赤い顔をして俯いた怜の背中をそっと撫でるとビクリと肩が震えて新田は「どうした?」とまた撫でた

「・・・オレ・・・」
「怜、終わるまで待てる?」
「・・・ムリ」

新田は顔を上げるとマスターに3本の指を見せる

「はぁ?」
「お願い!30分っ!控室貸して!マジで!」
「バイト代出さねぇぞ?」
「イイ!後で超働くけど今日は無給でもいいからっ!」
「・・・」

マスターは怜の俯いたままの赤い顔を見てひとつ頷くとカギを新田に投げた

「30分だぞー」
「よし!怜、歩ける?」
「・・・」

新田に手を引かれて歩くと2人はスタッフルームへと消えて行った






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赤い糸17 - 05/13 Fri

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徐々に冬が近付いて来て、気付くと俊輔が彼女ではない女の子を膝に乗せていたりするのを見て小さく舌打ちをする
オレ、彼女一筋だからー。そう言いながらも彼女がいないときにはこんな風に他の子といちゃつくのが信じられなかった。それに比べて新田は学校で自分以外とはほとんど話すこともない・・・

「なぁ、怜、昨日出た課題さー」
「うん」
「オレのシミュレータが出した答えが予測値と全然違ったんだけど怜はどうだった?もう1回シミュレータ回してるけどやっぱり予測値違いそうで設定違うかもっていう状態なんだけど・・・」
「あー、パラメータ触った?」
「触った」
「あれ、触らない方が上手く行った」
「マジ?!」

怜は頷くとパソコンを開いてシミュレータを立ち上げて新田に見せる

「あー!オレの予測値通り・・・怜、あとで設定するの手伝って」
「おう」
「怜ちゃーんっ!オレにも見ーせてーっ」

怜は振り返りもせず「断る」と冷たく言うとすぐにパソコンを閉じて立ち上がる

「ちょ!そこまで嫌い?!マジで?ねぇ、俊ちゃんのどこが嫌いか教えてー!新田と仲良く話してたじゃーんっ!」
「チャラいところが嫌い。気持ち悪い」
「ええええええ!!!チャラいって!!!!」

怜の言葉に周りの笑い声が教室に響く

「確かにチャラいー!」
「俊輔チャラいー!」
「怜ちゃんにフラれる俊輔ウケるしー!」
「えー!泣くよ?オレ泣くよ?オレ一途なのに!!!泣くよ?」

彼女以外の女の子を膝に乗せて笑っていたのに何が一途だ・・・そう心の中で悪態を吐きながら荷物を抱えて教室を出た









「やっほー!ひっさしぶりー!」
「ヤダ!来たんだ?!久し振りじゃんー!」

クリスマスも近くなった頃、久々に俊輔の彼女がゼミに顔を出したのを教室の隅でなんとなく眺めていたとき、新田が教室へ入ってきて手を振ろうとするとすぐに俊輔の彼女が新田に近付いてツンツンと胸を突く

「新田ぁー・・・あたしー、しばらく学校来てなかったけどーずーっと聞きたかったんだよねぇー」
「え?」
「学祭のあとー・・・あんた怜ちゃんにチューしてたでしょうー?」
「えええー!なにそれー!怜ちゃんとそういう関係だったの!?えー!!!」

怜がいるのに気付いていないのかと教室の前のほうで盛り上がる皆に恐怖を感じながら体を小さくしてカーテンに身を隠すようにする

「あぁ、見たんだ?あれは違うって」
「えー!ばっちり見たってぇー!」
「あれは怜がしてきたやつだし」
「えええー!怜ちゃんがー?!」

違う・・・違う・・・あの時、自分からしたキスじゃない・・・

「そうそう。怜、どうもそっちなのかなぁ・・・まぁ、怜なら許すよね?」

なんだ・・・それは・・・

「怜ちゃん可愛いからってぇー?!えー!でも男同士ー!キケーンッ!」
「可愛いけど・・・キモくね?」
「やだー!厳しいー!」
「一瞬触れただけだったし、あんまりイジメんなよ?」
「えー・・・なんか意外だったしー・・・がっかりー」

それは怜にとって裏切りのような言葉・・・全て押し付けられた・・・あの時されたキスを全て・・・全て・・・

「なぁ、新田、あんまり嘘吐くなよ?怜がその後泣きながら教室出てきたの見た」
「・・・あれは」

教室へ入って来た俊輔が怒った顔をしながら新田の胸倉を掴んでいるのを見て怜は息を飲む
茶化していただけの空気が一気に険悪なものへと変わったのに気付いて耐えられなくなった怜はカーテンから出て教室の後ろのドアから逃げ出した

「え!怜ちゃんもしかしてずっといた?!」
「・・・」

新田はしまったという表情をして呆然とする中、その後を俊輔が走って追いかけていた





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赤い糸16 - 05/12 Thu

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怜は体を起こして首を振る

「・・・じゃあなんで急に」
「お前の歌声でっ」
「あの時・・・俊輔と話してて聞いてなかったでしょう?」
「聞いてたっ!だからだからっ・・・オレ、酷い顔してたんだろ?お前の歌声でヤりたくなったからだってば!」

新田は首を振る
信じてもらえない・・・でも、新田の言っていることは全く外れているわけではない・・・俊輔を忘れるため。俊輔に心奪われた自分を忘れるため・・・

「そ・・・んなこと言って、オレといまいち・・・だったとかそういうコト・・・遠回しに言ってんの?」
「そりゃだって怜は初めてだったし」
「っ・・・比べてんなよ!オレはお前しか知らない!別のやつと比べんな!」
「今、比べろみたいなコト言ったの怜なんじゃないの?」

なんでケンカになっているのか・・・何が・・・何がいけないのか・・・
ケンカなんてしたくない。したくないのに・・・

「オレはっ・・・お前に・・・」
「何?初めてくれたから特別だって言いたい?あぁ、嬉しかった!嬉しかった!こんな形じゃなかったら嬉しかった!!!」
「っ・・・」

俊輔の身代わりにされたような気がしてそれが新田の心を傷つけていた。怜もそんなのは判っていて、どうしようもなくて傷つけたくないのに傷つけている事実が苦しくて・・・唇を噛んだ怜を見て新田は怜に触れる

「怜・・・オレ・・・ごめん・・・ごめん」
「なっ!!!なんで新田が謝るんだよ!」
「オレが好きだから。オレが好きならイイと思ってたのに・・・怜、体まで許してくれたのに・・・欲張りだ・・・オレ、欲張りなんだ」
「オレだって」
「うん。判ってる・・・でも、それがオレの好きとは違う好きってのも判ってる・・・」

怜は口を閉ざして新田を見つめて背中に手を回す。優しい・・・好きだと思う・・・でも、心が情熱的に揺さぶられることはない。安心感。新田に与えられる優しさは怜にとって必要な物なのは確か

「・・・新田、好きになりたい。もっともっと好きになりたい」
「うん」
「オレをメロメロにして」
「すっごい殺し文句・・・」

新田がくすりと笑いながら怜の額にキスをして抱き締める

「じゃあ、毎晩のように耳元で歌聞かせたらいい?」
「それ、眠れなくなんじゃん」
「眠らせない・・・メロメロにするまで」

2人は額を合わせて笑うと「ごめん」と謝りあう。こうやって仲直りしていけばいい・・・運命の相手だとしてもきっとケンカをしてこうやって仲直りをしていく。同じ・・・全部同じ・・・ひとつひとつ積み重ねて楽しい毎日が過ごせたらいい・・・そう思っていた







「なー、怜はさー、その新田ってやつとそのー・・・」
「なんだよ。風花がいないとお前全然話せないんだな」
「違ぇよ!」

風花に用事があってバイトもなくヒマだと言う順平に誘われて家で缶酎ハイを開ける

「歯切れ悪いなー」
「だから・・・男と女みたいな・・・」
「あー、あぁ、そういうこと・・・やったよ?・・・ヒいた?」
「っ!!!酷いことはされてないか?嫌なこととか」

身を乗り出して聞いてくる順平の頭を押さえて元の位置に座らせると怜はため息を吐き出す

「なんか順平、新田の悪いところばっかり探してない?」
「そんなこと・・・」
「あるだろ・・・何?新田が気に食わないのかオレが男と付き合ってんのやっぱり気持ち悪いとか?」

順平は首を振る。怜が気持ち悪いだなんて思ったことがない。同性が好きだという全てが大丈夫・・・というわけではないけれど怜に関しては特別

「じゃあさー・・・何?」
「まだ信用できない・・・っていうかぁ・・・上手く言えないけど」
「・・・信用できないのはオレの方だ・・・裏切ってんのはあいつじゃなくてオレ」
「え?」

怜は空になった缶をゴミ箱へ捨てると買ってきたパックに入った梅酒をグラスに注ぐ

「お前、聞いた?俊輔のライブ」
「あ、聞いてない」
「・・・そ・・・か」
「新田のライブよりもすごかったのか?」

怜は少し笑って「どうだろ」と続ける。新田の演奏も歌も上手かった。それとはまた全然違う。衝動が違う。新田の声で性感を刺激され、俊輔の声で心を刺激された

「早く断ち切ればいい・・・って思うよ・・・オレだって・・・そしたら新田をちゃんと好きになれるって・・・でも、いざそうなったら・・・やっぱり怖い・・・なんでかな・・・なんでだろ」
「怜」
「今のままでもオレたちが求め合うことはないんだから・・・いいじゃないか・・・って・・・あいつは彼女と幸せそうだし、今じゃなくたって・・・イイ・・・だろって・・・でも、この衝動が本物になったら・・・急に本物になったらって思うと怖いから断ち切らなくちゃ・・・ってのも思う」

あの占い師に言われた言葉が怜を悩ませる
赤い糸で結ばれた2人は心を認め合った瞬間から全てを捨てても求め合うもの・・・そう聞いてからは怖くて怖くて・・・

早く断ち切らなくては・・・と思うのに正式にフラれるのも怖い・・・






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