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つれないキミと売れてる僕9-19 - 06/30 Thu

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「・・・んで、しねぇの?」
「してもいい?」
「・・・そのつもりで準備してきたけど?」

里見がベッドに横になると須野もベッドへ上がって里見にキスをする

「明日は僕の車で行ってもいいの?」
「ん・・・あ、だからあんまり・・・アレはやめろよ?」
「ん・・・でも、里見、アレ1番悦さそうだよ?」
「うっせ!」

須野の足を蹴りながら須野の頭を掴むとくしゃくしゃ撫でる

「里見に触れないのは不安だった・・・でも、だからって僕が里見を好きなのは変わらない」
「知ってる・・・」
「うん・・・里見、僕ね、確かに今まで告白とかされたよ?里見が「1回付き合ってみれば?」とか言うから考えたこともある・・・でも、僕、好きでもない人と付き合うのはやっぱり嫌だったし、里見以外と付き合ってるのを見て里見が僕の気持ちを信じてくれないのも怖かった・・・里見だけ。里見だけなんだ・・・僕が心震えて胸が苦しくなって幸せになれるのは・・・」

須野の真剣でいて情けない顔を撫でる
こんなに皆を虜にしている男がこんなにも必死に情けなく自分を求めてくる・・・それが里見の心を満たしてくれる。今までたくさんいた彼女たちでは満たされなかった心

「里見、すごいキレイ・・・ずっとずーっとキレイ・・・顔も肌も体も全部完璧な里見・・・里見・・・大好き・・・大好き・・・僕、幸せ」

何度も何度も繰り返しながら優しく触れてくる須野の手に身を委ねて里見はそっと目を閉じて須野の愛撫を受け入れた









「えええええー!どこ行くの?!2人ともどこ行くのっ?!」

翌日、旅行鞄を持った2人を見て丁度あった葛西が大きな声を上げる

「温泉」
「ずるーいっ!ずるいずるいずるい!オレ聞いてないっ!」
「なんでいちいちお前に言うんだよっ」
「だってだって・・・オレも温泉行きたいーーーっ!!!」

子どものように地団太を踏んで駄々をこねる葛西を見て須野は困ったように笑う

「里見・・・あの」
「ダメ」
「・・・」
「また次の時なー」
「むー・・・光ちゃん!絶対だよー!?っていうか次オレが予定立てるしーっ!!!」
「お前の奢りなー?」
「えー・・・でも、うん・・・いいよ。あと、あの時のお金やっぱり返された。っていうかー!知ってたぁ?オレ、あのお金じゃー育てられなかったらしいよー?子ども育てるのってお金かかるんだねぇ」

葛西が困ったように笑ったのを見て里見が葛西の頭をくしゃりと撫でる。1人で父親に会いに行った親友に「よく頑張った」と言うつもりでくしゃくしゃと撫でる

「まぁ、そんな気はしてた」
「えー!超大金なのにー!?」
「・・・お前もそれは覚えておけ・・・んじゃあな?」
「うん・・・帰ってきたらまた話聞いてくれる?父さんったらねー、里見の本殆ど持ってたんだよー」

里見は笑って葛西に手を挙げて背を向ける
須野は微笑んで里見の前を立ってエレベーターのボタンを押した

「・・・お前も本当は2人きりがイイくせに」
「え?」

エレベータに乗って2人きりになると里見が小さくそう言ったのを聞いて須野が里見を見る

「あー?なーんで葛西も一緒にどうだみたいな顔してんだよ」
「あ・・・うん・・・でも・・・うん・・・」
「2人きりだと気まずいのか?」
「え!そんなわけっ」

何かを言いかけた瞬間にエレベーターが駐車場へと着いて須野は口を閉ざし先に降りた里見に早足で追いつく

「あ、里見、パソコン持ってなくない?」
「要らねぇし」
「・・・イイの?」
「お前もオフ・・・オレもオフ・・・仕事全くしねぇ日もいいだろ・・・」

そう言いながら車の助手席に乗り込んだ里見に目を細めて笑う

「ニヤニヤしすぎでキモいっつーの」
「うん・・・僕ね、なんか・・・顔戻らない・・・」

仕事に里見を取られない日・・・そう思っただけで須野は嬉しくて笑顔になる。何よりも書くことが好きで、仕事を優先する里見を独占できるのだと思うだけで期待で胸躍るのだ
ナビを設定すると車を走らせ始めた須野は目的地までずっと笑顔のままで里見を呆れさせたが、それもまた須野らしいと里見も笑った





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つれないキミと売れてる僕9-18 - 06/29 Wed

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「っ・・・」

強く手を引かれてベッドへ押し倒された須野はバスローブ姿の里見を見上げてそっと胸元から覗く乳首へと手を伸ばす

「須野ー、オレが欲しかったか?」
「ん・・・いつも欲しい・・・」
「もっと求めろよ」
「でも・・・」
「オレはしたくねぇときちゃんと拒否すんだろ・・・」

上に乗られたまま腰を動かされ、洋服の上からなのにその感覚が快楽へと変わる

「里見・・・待って・・・脱ぐっ」
「小説の中でも昔のオンナたちもオレにどっか行こうだとか旅行行きたいとか言うんだよ・・・小説の中でも仕方ないな・・・って旅行行かせることもある。実際にも何回も言われりゃ行ってた。まぁ、うるさいオンナとは長続きしなかったけど」

その間も里見の動きは止まらなくて須野は手で口元を抑えると快楽をどうしたら紛らわせるのか考えつつ里見の言葉に頷く

「お前はオレに何も言わない」
「っあ・・・だって、里見が行きたい所じゃなかったら」
「それでも付き合ってんだろ。しかも結構経つぞ?」

今まで付き合ったことがない須野には判らない。里見の望みを叶えることだけが幸せで付き合ってもらえこうしていることが贅沢な望みでこれ以上自分の願望を里見に叶えてもらおうだなんて考えられない。もしワガママを言って里見に嫌われたら・・・そんな恐怖しかないのだ

「里見っ、僕、ダメ、汚しちゃうっ」
「今までのオンナたちとはお前、違う存在だって判れよ」
「っ、んっ?」
「こんなに長く続いたの・・・なかなかねぇぞ?」
「ぁ・・・キツい。もー、ムリっ」
「高校ん時初めて言われた時はへー。くらいだったし、そのうち気も変わるって思ってた」
「っ・・・ん、うんっ」

止まらない動きに息が上がる

「それが3年経っても5年経ってもお前は何人に告白されても全部断ってオレに好きだって言った・・・正直お前が怖ぇって思うようになってたよ」
「ぅ・・・ごめ・・・里見、止まってって!」
「でも同時にお前がオレに好きって言わなくなって他のオンナに同じように囁くようになるのも怖くなった」
「え?」
「・・・んで、葛西のことがあってお前だけは裏切らないやつなんだって知った・・・お前がオレに全財産どころか全て投げ出してくれるっつーのが優越感を満たしてくれた」

里見の動きが快楽を与え、里見の言葉が須野の心を快楽を与えてくれる。ジンジンと広がる熱・・・幸せという熱量

「オレにここまで言わせんなよ・・・オレは書けても言葉出すの恥ずかしくて嫌いなの判ってんだろ」
「ぅ・・・ごめ・・・」

両手で顔を塞いだ須野が真っ赤な顔で震えているのを見て理解したのかと息を吐き出す

「里見の服・・・汚したかも」
「はぁ?!」
「僕っ!ムリって言ったのに!!!出ちゃったぁ・・・ごめ・・・」
「いや、オレの話聞いてたか?」
「・・・幸せなんだよ・・・僕、里見といられるだけで・・・なのに里見に触れることができるようになって、こうやって・・・里見にキスされて・・・どんどん欲張りになる僕はこれ以上何も望みたくないんだ」

里見は「はぁ?」と言うと須野の上から降りる

「何言ってんだよ・・・」
「里見に触れてもいい関係になって、里見に触れられない時間が続くと僕は不安になる。里見は僕のこと嫌いになったの?って・・・僕の何がいけなかったの?って・・・会えない日が続くと苦しい。前は舞台の仕事もできたのにもうできない・・・遠方ロケも嫌になってきてる・・・映画も嫌い。仕事で里見の傍を離れるなんて嫌で仕事嫌いになっちゃう・・・僕これしかできないのに・・・」

俯きながら汚した下着を脱ぐと里見の前に跪き里見の膝にキスをする

「里見に好きだって言われた僕はもうどうしたらいいんだろうってなる・・・」

学生時代、里見の話をしている女生徒を見かけたことがあった。里見に好きだと囁かれたらそれが嘘だとしても嬉しくて幸せだと言っていた彼女たちの気持ちがその時は共感できた。でも、今は・・・

「里見、幸せすぎて苦しい・・・里見が好きすぎて苦しい」
「・・・っ・・・オレはどうしたらいいんだよ!」
「僕に愛されて」
「そんなの今だって」
「一生僕に愛されてて」

それは里見に願うことなのか・・・須野が想い続ける想いで自分には関係がないのではないか・・・

「葛西と賭けしてた・・・」
「うん」
「あいつも吉田もオレがお前と寝てるから優しいんだとか勘違いするわけだ・・・」
「そんなわけ」
「ねぇよ!判ってる・・・でも、確かにオレ、お前に優しくできねぇし・・・だからたまには・・・とか思ったオレの気持ちナシにしたいのか?温泉だってお前と行くっつーのを1番に思いついて山口さんにわざわざ連絡したのに?」
「嬉しい」

笑顔で里見を見上げる

「旅行、行こう?・・・でも、僕は里見と一緒にいる限りどこへ行きたいとかないから・・・里見といられるところが僕の行きたいところだから・・・僕は今のままでも十分ワガママで里見を求めているんだよ?」





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つれないキミと売れてる僕9-17 - 06/28 Tue

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里見を待っているとじっとしてられなくて不安で里見のクローゼットを開く
自分が整えたはずのクローゼットの中・・・ほとんど何もない状態にその場に蹲る

こんなに何もないということは長期間家を離れる・・・または出て行く・・・最悪の事態を想像して首を振る
でも里見が昨日から優しかったし、これが最後だからと・・・判ってくれたのに・・・里見は自分がどれだけ里見を愛しているのか理解してくれていたはずなのに・・・

「須野ー?何してんだ?」

顔を上げるとまたいつものように身体もろくに拭いていない里見が出てくる

「ん」

でも、今日は里見がタオルを渡してくれてそれで拭くように促されてまた胸が痛くなる
里見が何を考えているのかわからない。昨晩は気持ちよくしてくれて隣で寝ることを許してくれて、朝は準備できていない自分の準備を手伝ってくれた・・・里見がわからない・・・優しすぎる里見が怖い。幸せすぎてその代償が来るのではないかと怯える

「なー、カバン2つあんだろ」
「・・・多い・・・よね。で、出て行かないよね?それにしては荷物まだ少ないよね?ねぇ!あとで送れとか言わないよね?!」

髪を拭かれながら顔を上げると不安で泣きそうな須野の顔が視界に入って須野の頬をつねる

「・・・痛い」
「バカだよな・・・」
「バカ・・・だから僕のこともう・・・」
「どんだけ信用ねぇんだよ!オレは」

つねった頬を引っ張ると須野が「痛い痛い」と声を上げてタオルを引っ手繰ると振り返った里見が両手で須野の頬を叩く

「里見ぃ・・・」
「お前明日から休みだろ」
「うん・・・?・・・あれ?僕言ったっけ?」
「あれ、1個お前のっ!」
「え?」
「山口さんにお前の予定聞いた。んで、お前、明日から少し休みあるらしいじゃん・・・」
「・・・えっ・・・と?よく分かんない」

もう1度両手で叩かれると乾いた音が響いてジンジンと両頬が痛む

「お前とオレが出掛けんの!」
「・・・え?!・・・えぇ?!え、里見!イイの?僕と?旅行?!2人でっ?!」

一気に明るくなった須野の顔を見て小さく口元に笑みを浮かべるが、須野の顔がすぐに曇る

「・・・里見、普段から優しいの知ってるけど・・・僕、怖い」
「あぁ?!」
「どうしたの?里見、ムリしなくてイイんだよ?」
「・・・なんだよムリって・・・オレが行きたいからそうしてんだけだろ」
「里見が・・・?」
「ん」

須野が情けなく笑うとまだ湿気った里見の身体を抱きしめる

「僕、どうにかなっちゃうかも・・・里見といて毎日幸せで・・・里見の望むこと叶えることが幸せで好きすぎておかしくなりそうなのに里見がどんどん優しくなって・・・怖い」
「・・・お前と付き合うっつーのもオレがそうしたいから。自信持てっつってんだろ。まぁ、オレの性格から信じろって言ったってムリかもしれねぇけど・・・好きだっつってんだろ。オレだって」

里見の身体を抱きしめながら何度も頷く。でも、本当に里見の言葉を理解しているのかは判らない

「・・・どこ、行くの?」
「温泉なー・・・まぁ、なんか行けなくなったからどうかって聞かれてな・・・んで、山口さんに聞いたらお前休みとか言うだろ・・・」
「あぁ、里見温泉好きだもんね」
「疲れてんだよ。オレも」
「うん。あ、マッサージする?里見、パソコン作業長いから背中いつもすごい凝ってるもんね」

顔を離した須野の唇に柔らかい里見の唇が押し付けられる

「んっ・・・」

すぐに唇を割って侵入してくる舌が上顎を撫でてびくりと身体を震わせる

「エッロい顔・・・」
「里見ぃ・・・」
「まだマッサージするとか言う?」
「・・・ん、里見が望むなら」

どこまでも自分の欲求よりも里見の望みが優先で里見は口元を緩ませるともう1度唇を吸う

「ヤりたくねぇの?」
「っ・・・イイ・・・の?」
「キスくらいでこんなガッチガチにしといてまだお伺いかよ・・・オレも溜まってんだよ」
「っ・・・あ・・・うんっ・・・うんっ」

須野は立ち上がると里見の空いてる手を取る

「ベッド行こーぜ」
「里見・・・」

恍惚の表情で里見を見つめる須野にまた笑って繋いだ手を引くと寝室のドアを開けた



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つれないキミと売れてる僕9-16 - 06/27 Mon

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里見は今からデートだと上機嫌で帰って行った吉田のいなくなった部屋の惨状にため息を吐く
デートなのにあんなに酔っぱらっていて大丈夫なのか?そんなのはどうだっていい。今はただこの部屋がひどすぎる・・・
散らかった空き缶や空き瓶、汚れた皿に転がったつまみの袋・・・

正直、須野の部屋で葛西と好き勝手やってきたけれどこれを片付けると思っただけでため息が出た

ガチャ

須野はまだ帰宅していないのかとドアを開けるとそこに座った須野を見つけて驚き少しだけ飛び上がった

「な、何してんだ?お前」
「・・・あのね、しようとしてた」
「はぁ?何を?」
「・・・ナニ・・・を」
「・・・はぁ?」

顔を赤くし、股間を隠すようにしながら俯く須野の膝に足を乗せる

「お前、盗み聞きしてたろ」
「・・・聞こえた・・・んだよ」
「あのなぁ・・・あれは」
「や!壊しちゃイヤだ!僕の幻聴だったとかイヤだ・・・僕が里見を1番に好きで里見以外の何も考えてないって判ってくれてるのウソにしたくない」

里見の足に縋り付くように抱きつき、膝にキスをする

「・・・お前がオレのこと好きなのは判ってんだよ・・・その気持ちを全部同じように返せとか思ってないのも知ってんだ・・・」
「うん・・・うん」
「でも、全然返せねぇ訳でもないっつーのをお前も全然理解できないんだよなぁ」
「・・・ぇ?」

須野が顔を上げると今日ずっと見たいと望んでいた里見の笑顔・・・

「ぁ・・・里見・・・里見ぃ・・・」

再びキスを膝に落とすと足を抱えてきつくきつく抱きしめる

「おい、聞いてたか?」
「愛してる・・・世界でただひとり。僕が愛してる人・・・」

里見は何か言いかけて「まぁ、いいか」と小さく漏らしながら須野の頭を撫でる

「なー、部屋すげえ汚くて萎えるんだけど」
「!・・・やるよ!」
「おう・・・」

須野はすっと立ち上がると里見の部屋をすぐに片付け始める
それを横目で見ながら「シャワー行ってくる」と呟いた里見はひとりバスルームへ消えて行った

散らかっていた部屋が綺麗になった所で須野は顔を上げると里見の姿を探す
シャワーへ行くと言った里見はまだ戻ってこなくて耳を澄ませればバスルームから水音が聞こえた

「?」

そして支度した覚えのない里見の旅行カバンを2つも見つけて手に取るとずっしりと重いそのカバンに胸騒ぎを感じてバスルームに早足で向かう

「里見?」
「あー?」
「開けるね」
「は?」

泡だらけの里見に目を細めてドキドキする心臓を抑えながら「あの旅行カバン・・・」と聞くがそれは水音でかき消される

「もー少し我慢できねぇの?」
「ぇ?」
「待ってろっつってんの」
「あ、違・・・違う・・・」
「っつかさー、その服オレのなんだから濡らすなよ・・・」

須野は慌てて足元を見るけれどもう濡れたパンツに「ごめん」と頭を下げた

「まぁ、お前が洗うんだからいっか」
「・・・里見、どっか行っちゃうの?僕に今日特別優しかったのは最後だから?」
「は?」
「カバン・・・取材旅行とか今まで僕に用意させてくれてたよね?だけど・・・だけど」

あぁ、あのカバンのことか。そう思いながらため息を吐くと

「とりあえず洗わせろよ・・・お前は出て待て」
「・・・」

里見の言葉には従わなくては・・・と体に染みついている。里見の望みは全部叶えたい。今ここから出ていくことを望まれているならそれに従うまで・・・





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つれないキミと売れてる僕9-15 - 06/26 Sun

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「・・・寛人、いい加減変態くさいからな?」

仕事が終わってからそう山口に言われて無意識に袖口を鼻へあてていたことに気付いて須野はふへへ。と少し気味の悪い笑いを浮かべる

「お前、付き合ってんだろ?なのにそれってどーなんだよ」
「えー?山口さん恋人のシャツとか匂い嗅がない?そばにあったら常に匂い嗅がない?」
「ない」
「ええ?!僕だけ?・・・まぁ、里見と今みたいになれるまですごい時間かかったから・・・僕ねー、里見の忘れてった制服こっそりぎゅってしたこともあるー」

衣替えの前の暑い日、移動教室で忘れ物を取りに戻った須野は誰もいない教室の里見の席に学ランを目にして衝動的に起こした行動

「お前・・・誰にもばれなくてよかったな?」
「あ、バレたよ?」
「は?!」

山口は過去の出来事でもスキャンダルになりかねないと顔色を変える

「里見に」
「あぁ・・・なんだ」
「でも1番バレちゃダメだよね・・・まぁ、僕が里見のこと好きなのはもう里見も知ってたけど『何やってんだよバーカ』って笑ってくれたんだぁ・・・」
「・・・普通は気持ち悪いっつって避けられそうだけど」

須野は小さく頷きながら笑う

「里見は優しいんだ・・・その頃からずっと優しい・・・」

そう嬉しそうに微笑む須野を横目に「それは優しいじゃなくて残酷なんだろ」と心の中で呟いた
須野の想いを知っていて、まだ答えの出ていない感情を見て見ぬ振りをしながらここまで来たのだ。自分しか見ていない、見るわけがない。そんな自信で武器である魅力を最大限に活かしながら・・・里見の思惑通り、須野は脇目も振らず里見の姿を追い、求め続けた・・・誘惑の多いこの世界に身を置きながら・・・

「里見は完璧で優しくてホントに・・・あー、里見に会いたい」
「お前、数時間前まで一緒にいたんだろ。うざい」
「でも最近ずっと会えてなかったもん!山口さんが仕事詰め込むからー!!!」
「はいはい。帰ったら充電しっかりしてくだせぇ」

「もちろん」とすぐに答えた須野は窓の外を見つめる
仕事が早く終わった。だから今すぐ今すぐ会いたい。愛してると抱きしめたい







「んでさぁー、その合コンの美女といい感じになったわけだよ!オレは!」

突然「有給取ったから」とやって来た吉田の愚痴にうんざりしながらも吉田が箱で持ってきた高級なビールを開ける

「しばらく話してたらその子のカバンから読みかけの本が少し出てるのに気付いてさー、何読んでんの?って聞いてからが地獄だったんだよ!」

酒なんてなんでもいい里見ではあるが、このどこのものかわからないビールは美味しかった

「お前の本だったんだけどさぁー!」
「何が悪いんだ」
「お前の話延々とされて萎えた!あー!イイオンナだったんだけどなぁー!」

吉田がそう言いながらタバコに火をつけながらため息を吐く

「お前のイイオンナはあんまり信用できないけどな」
「あの女優に似てる!ほら!あれ!須野とこないだ共演してたやつ!」
「誰だよ」
「あー・・・さやか!春乃さやか!」

里見は少し考えて「あー」と言いながらつまみを口に運ぶ

「イイよなー!須野は春乃さやかと共演とかぁー!」
「あいつにとっちゃ共演者は共演者だろ・・・」
「うっわー!それ自信満々ー!やっだー!やらしーんだぁ!里見くんたらイケメン俳優もメロメロにしちゃうテク持ってますからねぇ?」

そうニヤニヤ笑った吉田を見て里見は不機嫌そうに口に運んだ箸を置く

「お前らさー・・・なんでそう思うんだ?」
「うんー?」

吉田が何のことかと首を傾げる

「お前も葛西もオレがあいつと付き合ってあいつに快楽与えるから上手くいってるとか?あいつはオレが何もしてやらなくたってそれこそゼックスだってしなくてもオレのこと好きだけど?」

吉田は目を丸くした後吹き出した

「や、えー?そう聞こえたー?」
「聞こえる」
「まぁ、うーん・・・だってまぁ、正直、里見だろー?みたいな。顔はいいけどさぁー」
「性格に難があるのは自分でも判ってんよ」
「だろー?顔っつーなら須野だって鏡見りゃイケメン映るわけじゃんー?んじゃあとはー・・・みたいな?」

タバコを咥えて火を点け、ため息と共に紫煙を吐き出す

「あいつのでかすぎる愛は昔から変わらずオレにだけ注がれてんだよ・・・それを判ってやったっつーのがあいつは嬉しくて満たされることでオレがセックスしてやらなくたってそれは何も変わらない」





須野は帰宅し、里見の部屋をノックしようとした所で部屋から声が聞こえてノックを躊躇った。すぐに吉田が来ていることは判ったが、内容が自分の話でノックをし辛い状況になる
早く里見の顔を見たいのに自分の話をされていて・・・

「・・・ぅ・・・わぁ・・・」

そして里見の言葉

「あいつのでかすぎる愛は昔から変わらずオレにだけ注がれてんだよ・・・それを判ってやったっつーのがあいつは嬉しくて満たされることだ」

判ってくれている・・・判ってもらえている・・・それが嬉しくて須野はその場に膝をつくとドアを抱きしめる
どうすれば自分の気持ちが里見に伝わるか・・・どれだけ大好きか伝えるにはどうしたらいいか・・・そればかりの毎日。伝わらなくてもいい。伝えるだけでもいい・・・そう思ってきたけれど、実際どれだけ伝わっているのかなんて判らなくてもどかしかったのにちゃんと1番知って欲しい人に気持ちが伝わっていたことが嬉しくてたまらない
今までで1番報われた気分になりながら冷たいドアをただ抱きしめた





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つれないキミと売れてる僕9-14 - 06/25 Sat

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葛西はひとり緊張しながらスーツ姿でとあるビルを見上げていた
葛西の父の弁護士事務所の入っているビル・・・そして意を決してそこへ足を踏み入れた



「あぁ、来たか」

久々に会う父は老けたように見えた。普段からあまり家におらずこうして話すこともほとんどなかった父・・・だからだろうか、葛西は必要以上に緊張する

「・・・今更何の用ですかね?」

昔から変わらない父の鋭い瞳から逃げるように本棚を見ると見慣れた背表紙が並んでいるのに気付いて「あ」と声を上げた

「用件は送ったろう?」
「光のファンだったんだ・・・」

父は少し笑って「あぁ、ファンというわけじゃないけどな」と言うとその本をひとつ手に取った

「息子を魅了し、あいつから引き離してくれた彼はどんなものを書くのかと・・・」
「・・・引き離して・・・って」
「あいつを止められなくてすまなかった。あいつも逝ってしまったし、そろそろお前は知るべきだろうと思ったんだ」

葛西は首を傾げながら促されるままに革張りのソファーに腰を掛ける

「お前の母さん・・・真由美は・・・オレが心から愛した女で元々オレと結婚していた女だ」
「え?」
「でも、体が弱いのもあって子どもは望めない・・・と。そこでまず揉めたわけだ。お前の爺さんや婆さんたちとな・・・結局、オレは外で子どもを成して真由美とは離婚になった。真由美もオレの子を望んだから」

葛西の祖父母とはほとんど会わせてもらった記憶がない。祖父母の元へ行くという日は大抵留守番だったし、それに疑問は抱かなかった。自分は妾の子だと言われていたから・・・

「ここからはオレの身勝手な話だ。子どもを作ったのだから後は自由にやる。そう宣言した通り、オレは真由美を内縁の妻にしてほとんど家には帰らず真由美と過ごした。そのうち医者に奇跡と言われたお前ができて・・・これで真由美とまた再婚できるとオレは浮かれたよ。でも・・・」

父が頭を抱え、葛西は察する

叔父から聞いたのは母は体が弱かったこと。出産できるような体じゃなかったこと・・・そして自分を産んですぐに亡くなったこと

「オレはお前を引き取ってあいつに育てさせた。でもな・・・お前、ホント真由美にそっくりで・・・オレはお前をまともに見られなかった」
「・・・ホントに好きだったんだ・・・」
「あいつに子どもを産ませたことも後悔した。お前が生まれたことも後悔した。お前さえ生まれてこなければ真由美は今でもオレの傍に・・・そうずっと思いながら仕事をしまくった・・・そして、真由美が必死に命を懸けて産んだ子なんだとやっと思えるようになった頃にはもう遅かったんだ。家庭を顧みなかったオレはもうあいつに何も言えるわけなかった。できるのは生活費を十分に与えることだけ」

頭を抱えたまま顔を上げない父に戸惑いながら肩に手を乗せる

「慎吾、あいつがお前に書いた手紙がある・・・あいつはお前のことを憎んでいたけれど、金は手をつけなかったそうだ・・・」
「え?」
「・・・あいつのこともオレのことも許せとは言わない。オレはお前を守れなかったし、会わせる顔がないのは今も同じだ」
「・・・オレね、結婚したんだ」

父は顔を上げて「あぁ」と頷く
インターネット上で知った自分の息子の朗報。便利な時代で調べればどんな人と結婚したかまで大体判ってしまう

「もーね、これ以上ないくらい可愛くて頭良くて優しくてオレのこと愛してくれる奥さん!子どもはちょっとムリかもだけど・・・それとね!ちょっと捻くれてるけどオレのこと見てくれて構ってくれる親友とね、心配性ですっごい優しい親友がね、オレのそばにいてくれるから今、すっごい幸せなんだ」

葛西の偽りのない笑顔に目を細める

「真由美・・・にホント良く似てる・・・小切手切るな」
「うん・・・」

父が机に向かったのを見てまた本棚に目を向ける

「・・・獣・・・はないんだ」

里見原作で自分が映像化した物がないと気付いて思わず口に出る

「あぁ、それは・・・こっちだ」

父が机の引き出しを開けると里見の本と共にブルーレイを取り出す

「・・・観たのかー」
「当たり前だろ?息子の作品だ・・・」
「・・・そ・・・か」

どこか恥ずかしくて葛西は本棚を見つめたまま頭を掻く

「・・・お前はどっちみち弁護士なんて向いてなかったさ」
「え?」
「争いごとが嫌いなのは母さんに似たんだろうな・・・」
「まぁ、オレ、ホントの母さん知らないけど」
「これ以上ない程のイイ女だ。このオレが一生かけてもイイと惚れた女がイイ女じゃないはずがないだろ」

葛西は小さく吹き出すが同時に最期までこの人の愛を勝ち取れなかった義理の母を想う
父を愛し、子どもを産み、自分とは血の繋がりのない自分まで育てた・・・反発し、手を挙げられ、終いには親友たちにお金を払わせて絶縁した・・・成功した姿で挨拶もせず・・・そして結局あの日が最後になった

「それ、DVDは家にもあるぞ」
「?」
「あいつがな・・・病床でも見てた・・・泣きながら・・・この俳優にもキツく言った。そう言いながらな・・・特典映像でお前たちが相変わらず仲イイ姿を見てまた泣いて・・・後悔してたんだろうな。1つだけ・・・この金、子どもを育てるのにはこんなもんじゃないぞ?これはあいつのプライドを傷つけた金を要求されただけだ・・・」
「ぁ・・・」

頬に熱いものを感じ、それが涙だと判るまで時間がかかる。この涙の意味も判らない。同情なのか悲しみなのか・・・それとも・・・







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つれないキミと売れてる僕9-13 - 06/24 Fri

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須野が目を覚ますと隣にまだ里見の姿

「・・・」

カーテンの向こうは少し明るい気がするけれど、里見が起きていない時間なのだから熟睡できずに目が覚めたのかと思いながら枕元の時計を見て慌てて須野は体を起こす

「ええっ?!」
「・・・んー・・・起きたか」
「ご、ごめっ!!起こしちゃった?!でもっ!時間っ!遅刻っ!」
「あ?・・・お前、今日も仕事だっけ?疲れてそーだからオレも2度寝したー」
「打ち合わせと雑誌のインタビュー!あれ?携帯ない!あれ?!え?!」
「落ち着け・・・お前は何も持ってなかったし、ここはオレの部屋だ」

慌てて立ち上がった須野にため息を吐きながら里見は寝過ぎてだるい身体を伸ばすとシャツを須野に投げる

「え?!」
「着れば?」
「え!でも・・・」
「いいから顔洗って寝癖直してこいよ。準備してやるから」
「あ、はい」

バタバタと寝室を出て行った須野に里見は自分の服を出すと須野に「出したから着ろ」と声を掛けてから須野の部屋に向かう

須野の部屋に入ると鳴っている携帯を手にしてマネージャーの山口からだと確認すると電話に出る

「おはようございます」
『あ、あれ?里見くん?!』
「もう下ですかー?」
『え!そう・・・だけど寛人は?え!まさか逃亡?!』
「や、寝坊して今準備させてんで」
『あ、うん。お願いします』
「あ、あと山口さんに聞きたいことあって・・・」
『うん?』

少し里見と話した後電話を切ると山口は少しだけ固まって「えええー?!」と車で叫び声を上げた
里見が出たことは初めてじゃないけれど里見が須野の世話をしているように思えて、それは山口にとっても信じられないこと



「い、行ってきます」
「んー」

里見の部屋から里見の洋服を着て出て行くのは須野は新鮮で嬉しくて顔を赤くしたまま里見に手を振る。仕事なんて休んで里見といたい。でも、送り出してくれたのだから一生懸命仕事をしないと。とエレベーターの中で軽く両頬を叩くと身を引き締めたのだった

「おはようございます。遅くなった。ごめんー」
「あ、あぁ・・・っつか・・・里見くんどうかしたの?」
「・・・?」
「いや、電話に里見くん出た・・・けど」

須野は小さく驚きの声を上げた後ふふふと笑い出す

「どうしよう。僕、今日1日にやけちゃってるかも」
「それは困るからな?っつかその服も里見くんのか!」
「うん。判る?」
「・・・明らかにお前の服じゃないな・・・と」

いつも着ている洋服よりも体のラインがはっきり出るカットソーにジャケット。逆に少しだけゆったりとしたカーゴパンツ

「っていうか里見くんホントスタイルいいな・・・お前も相当と思ってたけど・・・足お前よりも長ぇんじゃないの?それ!」
「足長いよねぇ・・・僕の方がすこーしだけ背高いんだけどなぁ・・・ホント里見は完璧だよー!もーねぇ、完璧なの!服からすごいいい匂いする・・・あー、里見の匂い・・・どうしよう!山口さん!ヤバいー!超いい匂い!」
「頼むからそれオレ以外の前でやるなよ?」

須野はジャケットの袖を何度も何度も吸い込むと恍惚の表情で山口を呆れさせたのだった





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つれないキミと売れてる僕9-12 - 06/23 Thu

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須野は疲れた体を引きずって部屋に戻るとジャケットを脱ぎ捨てて壁に手をつける
眠かった。徹夜。そして途中、機材トラブルだとかがあって長引き、ハードだった今日の仕事。そして付き合いで連れて行かれたお酒の場を思い出しながらシャワーへと向かう

「・・・」

熱いシャワーに打たれながらさっき見た時計を思い出す。里見が寝ている時間か・・・と悩みながらも約束を取り付けたのだと自分に言い聞かせると立ち上がって新しい下着をつけると里見の部屋をノックする

「・・・」

返事がない里見の部屋へ繋がるドアに手を掛けるとカギのかかっていないドアが開いてすぐに里見の香りが鼻をくすぐる
ふらふらとその香りに導かれるように寝室のドアを開けると一層濃くなった里見の香りに須野はジンジンと熱を持った体で静かにベッドへ上がり眠る里見の頬をそっと撫でる

「ん・・・」

軽く身動ぎした里見に手を引っ込め、里見の寝顔を見ながら微笑むと「愛してる」と呟く

「うん?・・・須野・・・?」
「!」

目を開けた里見に慌てて「ごめん」と言うと里見は体を起こす

「んー・・・今何時?」
「あ、寝てて!まだ起きる時間じゃない」
「ん・・・そ?」
「起こしてごめんね?」
「・・・ひっでぇ顔・・・疲れてんな・・・」
「・・・疲れてたけど今、幸せ」

里見に会えたから。こうして触れられたから

「まぁ、今日はお前も寝たほうがいい」
「うん?」
「セックスしに来たんだろ?」
「や・・・そういうわけじゃ・・・」
「部屋のほうがよく眠れるんじゃねぇの?オレ朝早ぇし」
「ここがいい・・・いい?ここで里見に触れながら寝たい」
「ん・・・んじゃ早く寝ろ」

再びベッドへ横になった里見を抱きしめる

「キス・・・したい」
「あー?いちいち聞くな」

笑った里見に唇を寄せると段々と濃くなっていく口付け
広いとは言えないベッドで須野の下肢の熱が里見の太ももに触れる

「すっげぇ・・・お前バッキバキ」
「うん・・・」
「ヌいてやろーか?」
「や!いい!!!里見も寝よう?」
「・・・須野ー・・・」

閉じた目を少し開けると里見の顔が見えてそれだけで微笑む

「バーカ」
「え?」
「オレもお前に触りてぇって思わね?」
「え、で、でもっ!」
「っつかよくこれで寝れるな?普通こんな状態じゃ寝れねぇだろ」
「っあ・・・な・・・触っちゃ」

里見の指が下着の上から熱に触れる

「寝てていいから」
「え?っふ・・・・」

下着をずらされてすぐにひんやりとした里見の手に包まれると自身がびくりと跳ねるのが判る

「お前のエロい顔見るの好きなんだって」
「っ・・・里見っ、イイの?手、汚れちゃうよ?」
「口汚れるほうがいいか?」
「っっっ!!!」

ぶんぶんと首を振る須野に唇を落とす

「まぁ、イイからさっさと達って寝ちまえよ」
「・・・里見ぃ・・・好きっ・・・大好きっ!」

息の荒くなっていく須野を見ながら里見の手が器用に須野を追い詰める

「あ、ぁ・・・出るっ出ちゃう」
「早ぇって・・・なぁ・・・可愛いぞ?お前は」
「っう・・・あっ・・・」

里見の手を汚した熱をそっとティッシュで拭うとすぐに眠りに落ちた須野の髪を掻き上げる

「・・・いつの間にお前がこんなに可愛いんだろうな・・・」

優しい里見の手はしばらく須野の髪を撫で続けていた







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つれないキミと売れてる僕9-11 - 06/22 Wed

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散々泣いてスッキリした顔をした葛西が顔を上げるといつもの笑顔を2人に見せる

「あー!もーいい大人が泣きまくっちゃった!あー!須野ちゃんごめーん!シャツ涙染みできちゃったー!」
「あとでクリーニング請求するから気にするなー」
「そこでなんで光が!!!!」

いつものやりとりに目を細める須野
羨ましくも感じる2人の関係。恋人にはなれたけれど里見と自分よりずっと距離が近い葛西が羨ましい

「オレ、父さんに会ってくる。んでー、なんだ今更このヤロー!って言ってくる」
「・・・1人で平気か?」

タバコに火をつけた里見が葛西にそう尋ねると力なく笑った葛西は「うーん」と首をかしげる

「不安だけど、もうオレ大人だし」
「っつかおっさん」
「おっさん言うな!お前らも同い年だからな?ねぇ!須野ちゃんも笑わないー!」
「さっき泣いてる葛西は子どもみたいだったよ。可愛かった」
「なっ!!!す、須野ちゃんならオレのお尻捧げてもいいかもしれない」
「や!それは要らないよ!!!」
「待って!須野ちゃん!冗談をマジにとらないで!!!なんか恥ずかしくなるからっ!!!!」

葛西の調子に里見は静かに笑う。あの時何もできなかった葛西はもういない。きっと元凶はあの母親で、あの人に支配されていたのだとそう思う

「財産がどーのってなんだろー・・・どー考えてもオレの取り分なんてないよなぁ?あの人しっかり遺言書書いてたと思うし」
「・・・」
「なーんかね、正式文書できたんだよー。べっつにー?オレ、生活に不自由しない程度は頑張って稼いでるしー!そもそもオレが稼げなかった時もユリちゃんの稼ぎでやっていけたしー!」
「それ、ヒモっつーんだぞ」
「へへー!だからね、ユリちゃんを幸せにしなきゃぁー」

里見の頭によぎるのはあの時叩きつけたお金のこと
いや、彼女の性格でそれに手をつけなかったとも考えられない。と思い直す

「あー!あの時のお金返してくれるっつーなら2人にまるっとお返しするからね?!」
「んー?あー、返す気ならお前が稼いだ金で返してくれてもいいぞ?」
「・・・バンバン仕事したいと思います」
「僕のは要らないよ?僕のは全部里見にあげたものだし」

葛西は少し驚いた顔をしたあとすぐに笑う
あの時のお金はそんな簡単に「あげた」と言える額じゃなかった気がする。それが例え今、売れっ子の須野だとしても

「オレじゃなくて光にね!」
「あんときこいつにさー、カネ幾らなら出せるか聞いたらオレのためなら全財産っつった」
「うっわー!愛だねー!その時は光全然付き合ってくれそうもない感じだったのにー!っていうか1番最悪に女関係だらしない頃じゃん?!」
「付き合うとか別にいいからね・・・僕、お金より里見が大事なだけで・・・今だって里見がいるっていうなら僕の全財産すぐに渡すよ」
「・・・光ちゃん、賭けは負けました。惨敗です。あー!もーーーー!勝負にならなぁぁぁぁぁいっ!!!」

里見はタバコの火を消しながら「当たり前だ」と微笑むと須野は会話が見えなくて首を傾げる

「んじゃー早朝にお邪魔しましたーん!」

葛西が笑顔で部屋を出て行くと須野は少し笑って「嵐が去ったみたい」と呟くと里見もそれに同意する

「あ、賭けって?」
「んー?まぁ、お前がオレをどんだけ好きかっつーやつかな」
「・・・何それ。僕は里見が1番って葛西も知ってるでしょ?」
「知ってるな・・・」

里見が笑って須野の頭を軽く叩くと机へと戻る

「お前、仕事だろ?」
「あ、うん」
「んー・・・いってらー」
「!・・・あ、あ・・・里見っ!」

顔を上げた里見が情欲に塗れた須野の表情を見てため息と同時に笑う

「なーんだよ?」
「っ・・・き、今日、えっと!違う・・・あの・・・」
「はっきり言えよ」
「僕、里見にもっと触りたい」

吹き出した里見に目を丸くする。笑われると思わなくて

「なぁ、お前がヤりたいじゃねぇの?」
「あ・・・違っ・・・違わないけど違う!僕、里見に触ってるだけで気持ちいいしっ!すごい幸せだし」
「全然寝てねぇんじゃねぇの?」
「あー、うん・・・里見が疲れてそうなら隣で寝るだけでもいいんだけど・・・あ!それくらい今、里見との時間が欲しいっ!一緒にいられるだけでいいっ!」

里見は満足そうに笑うと葛西が負けたと言った賭けを思い出しながら「ほらな」と心の中で呟いた








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つれないキミと売れてる僕9-10 - 06/21 Tue

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「里見はそれで機嫌悪いんだね?」
「あー?」

須野が困った顔をしているのを見て首を傾げる

「あ、違う!なんでもないっ!!!里見はまだ仕事あるの?」
「いやー?」
「あー、そう・・・えっと・・・」

あぁ、これは須野からの一生懸命なお誘いだと気付くが、葛西との賭けがあったと思い出す
里見には最初から結果なんて判り切った賭け・・・でも、遊び事だとしてもいくらくだらないことだとしても負けたくない里見

「んじゃスッキリしたからとりあえず寝るわ」
「え!あ、うん」

体の関係なんてなくたって須野はずっとこうして全て捧げる。判っている・・・それが須野の愛だなんてずっと前から知っている

「おやすみ」
「んー」






「ねぇ、光ちゃんやり過ぎじゃないー?これー」
「あー?」
「いや、ってか何作ってんの?」
「ロールケーキ」
「え!まさかのロールケーキ!!!!」

失敗作やら洗い物がうんざりするほど山積みになったキッチンで里見は自分も粉だらけになりながら葛西と相変わらず空き缶をドミノのように並べていく

「このなー?ドミノの最終地点がロールケーキタワーなわけ」
「なんでロールケーキタワー!!!っていうかお菓子作ったこともない人間にロールケーキとかもー無謀すぎて爆笑ー!」

ケラケラと笑う葛西につられて里見も笑う



里見の苦労の甲斐あって、なんとか完成した空き缶のドミノと不恰好なロールケーキタワー。須野は帰宅してそれを見て少しだけ笑ってキッチンの惨状にため息を吐いた

そして空き缶を足で倒して倒れていく空き缶。そしてロールケーキタワーに当たった缶はロールケーキを倒すことなく転がった

「・・・これ、手作りってことかぁ・・・」

それがなんだか嬉しくなって須野はふわりと笑って空き缶をゴミ袋へと片付け、キッチンも綺麗に片付けていく

「里見が作ったのかなぁ・・・いやー、まさかねぇ、でもなー・・・キッチンすごかったしなぁ・・・」

里見の手料理なんて数えるほどしか食べたことがない。なのに、今目の前に多分里見が作ったロールケーキがある・・・須野はそっと写真を撮るとロールケーキをかじる
固くて美味しいとは言えないロールケーキ。でも、それは幸せの味がした





「おはよう。里見」

里見が朝起きると既にコーヒーの香りがして、リビングには須野の姿

「おう」
「ね、ロールケーキ、美味しかった」
「嘘つけ」

里見は須野の差し出したコーヒーの入ったマグカップを受け取りながら須野の胸を殴る

「あ、ホントに里見が作ったやつ?」
「あー?」
「や、なんか葛西なのかどうなのかって・・・でも、なんかあれは里見な気がして聞いてみた」
「んー・・・怒んねぇの?」
「え?」
「部屋、めちゃくちゃにしたろ?」

須野は優しく微笑んで首を振る。朝早く目をさます里見。今ここに須野がいるのだからきっと昨日は寝ていないのだろう。それでも怒ることなく優しく笑っている

「里見・・・もうじき忙しいのも終わるんだ・・・」
「あー?」
「そしたらまた3人で飲もうね」

里見は適当に頷くと「あー・・・くそ」と呟き、須野はビクリと体を震わせた
何か里見の気に障ることでもしたのかという不安で振り返る

「須野ー・・・お前、オレの事」

トントン

里見が何か言いかけた時、部屋の戸が叩かれ、こんな早朝に?と2人は顔を見合わせ、玄関へと向かう

「あ、おはよー。やっぱり起きてたよねー」
「・・・な・・・何だ?なにかあったか?」

こんな朝早く、撮影でもない限り起きているはずがない葛西の姿を見て里見はいつもの冷静さを失うように声を上げる

「・・・知ってたなぁ?こいつー」

葛西が笑って里見の胸に拳を当てる
そしてすぐに里見は葛西が知ったのだと理解した

「お邪魔しまーすっ。あ、須野ちゃんまでー!おはー!!!なんだよなんだよー!2人仲良しだなぁ・・・」
「・・・おはよ」

葛西のことは里見から聞いたし、葛西が今こんな朝早くから仕事がないことも知っている
だからここへこんな早朝に来る理由なんて・・・

「財産分与がどーのって家捨てたオレにどーして関係してると思うー?っつかー・・・突然そんな文書来たって困るよねぇー」

我が物顔で里見の部屋へ入り、ソファに座る葛西からは酒の匂いがして須野は淹れたコーヒーを葛西にも手渡す

「・・・光、またオレを守ってくれようとしたの?」

顔を上げた葛西の顔は今にも泣き出しそうな顔で里見は葛西の頭をふわりと撫でる

「違ぇよ・・・オレがあいつのこと嫌いだから」
「・・・こないだ父さんに会いたいか?とか聞いたのこれだったんだね・・・またオレ・・・光に迷惑・・・光、ごめ・・・オレ全然恩返しもできてないのにっ・・・」

泣き出した葛西にどうしたらいいかわからず須野は葛西の隣に座ると背中を撫でる

「須野ちゃんにも・・・オレ全然・・・返すって言ったお金もまだ返せてないしっ」
「僕は葛西にずっと感謝してるよ。里見とこうやって暮らせるのは葛西のおかげ。きっと里見と付き合えたのも葛西のおかげ」

優しく微笑んだ須野を見て須野の胸に葛西は抱きついて涙を流して謝り続けた




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