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コイゴコロミズゴコロ2-1 - 08/31 Wed

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付き合って判ったこと

残念な人
純情な人

そして

江口のことが大好きな人



新井とデートの約束をした土曜日、まともな付き合いをしたことがない新井にとっては初めてのまともなデートだと知って但馬なりに考えに考えたデートプラン
新井が好きで自分には全く興味のない恋愛ものの映画の前売り券を用意したり、映画館の近くで軽く食べられる少し洒落たカフェもチェックしたし、買い物のコースだって考えた。けれどそれをまさか前々日にキャンセルされるだなんて思ってみなかったこと・・・

いや、少しは考えた

「土曜日、江口がどうしてもバイト代わってくれって・・・ごめん・・・デートまた今度でもイイかな?」

新井のこの言葉を聞いた時に「やっぱりな」と思う自分もどこかにいたのは事実

新井と付き合い始めて『恋人』にはなったけれど江口の存在にはやっぱり敵わない

でも・・・


なんで?


なんで?


その思いが但馬の心を曇らせる








「たーじまぁぁぁぁぁ!!!」

部活が終わってダウンを泳ぎ終わった但馬がプールキャップを外していると後ろから突然のしかかられて思わずプールに沈む

「あ、悪ぃ。力加減間違えた」
「・・・いえ・・・」

顔の水を手で拭いながら振り返る。今、会いたくない人・・・

「なぁ、お前最近調子よくね?なぁ?よくね?なんかいいことあった?彼女できた?」

彼女じゃないけれど・・・と思いながら「まぁ」と頷くと再びプールに沈められる

「おいー!どこのどいつだよぉ!っていや!お前が調子イイのはうちの部活にとってもいいことだ!絶対嫌われるようなことすんなよ?フラれたらお前調子崩してタイムボロボロになんだろ?」

フラれたら・・・その原因を作りそうなのは今、目の前にいる江口じゃないか・・・と思いながらも先輩には言えなくて苦笑するだけ

「でも、彼女できたら瑞貴邪魔じゃね?」
「・・・え?」
「お前に懐きまくってんもんなぁ・・・瑞貴ー!」
「いや、邪魔じゃない・・・ですけど?」
「おい!お前のそういうところがフラれる要因になんだよ!」

いっそのこと言いたい。江口の言うフラれちゃいけない恋人というのは新井で、邪魔をしているのは江口なのだと・・・でも言えない。他の誰かにバレても江口にだけは秘密にしたいはずだから・・・

「邪魔になりそうならいつでも言えよ?瑞貴ならすぐにオレが連れ出してやっから」

連れ出されたら困る・・・

江口の誘いを新井が断れるわけがないのだから・・・








「・・・って江口さん言ってましたけど?」
「えー・・・うーん・・・困った・・・ねぇ?」

同じ学生マンション。但馬の部屋に入り浸っている新井は今日も但馬の部屋で一緒に食事をして新井としてはこの後の展開も楽しみにしている所・・・
でも、但馬はなんというかやっぱりというか堅いタイプでなかなか手は出してくれないし、誘っても乗ってこない・・・それどころか、実際に触れあったことなんてあの日、初めて但馬に抱かれた時だけで、他は色々理由をつけては拒まれていた

「但馬ぁ・・・しないの?」

食事の後片付けをし始めた但馬の背中にそう尋ねるけれど「しない」と背中が語っていて唇を尖らせながら但馬の背中に抱きつく

「なぁ、但馬ぁ・・・」
「・・・なんで江口さんのことそんな好きなの?」
「え?なんでって?オレが好きなのお前だってー」

但馬は洗いものの手を止めて振り返る
キスを期待してそっと目を閉じた新井の髪に触れる

「江口さんのこと、すぐには忘れられないのも判るけど・・・あんたの好みの問題?」

期待して閉じた目を開けると但馬の真剣な目に思わず目を伏せる
真剣な目は苦手・・・但馬といると、但馬と付き合い始めてからは特に『初めて』のことが多すぎて戸惑うし、対処方法だって判らないから胸が痛む

「じゃあ、怒らないでくれるならオレの昔話するよ?」
「・・・怒られるようなこと・・・なのかよ」

但馬はひとつ深呼吸をすると「聞きたいです」と静かに呟いた
過去はどうだっていい。ただ知りたい。知って、江口よりも自分の存在を大きくする方法を知りたいから・・・








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愛だとか運命だとか11《最終話》 - 08/30 Tue

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ヒトシが部屋を出て行くとそっとカギを締め、自分の首を撫でる。でこぼことした歯形を指先に感じてひとつため息を吐くと部屋に備え付けられた鏡を見る

「・・・」

いつも鏡に映る自分が嫌いだった。αを惹き寄せる為に美しい容貌。けれどそれを歪ませるようにできた眉間の皺・・・Ω性を憎み、αの身勝手さを憎んでこれまで来た。番なんて一生作らない。そう自分に誓いながらもそれに反するような体の反応・・・繁殖適齢期に入ったΩなら仕方ない。そうは判っていても許せない毎日・・・

しかし、ヒトシと番になってしまった今になってみればさっきまでの自分の考えがバカらしく思えてくる。考え方の変化・・・自分をこんなにも中から変えてしまうα・・・

αに捨てられ絶望したカンナも番になった瞬間はこんなにも幸せだったのだろうか・・・そう思うとなんとも言えない気持ち。ヒトシに突然捨てられるかもしれない。その恐怖はまだ拭いきれてはいない。けれど、信じたい。信じてみようと思う・・・

「番・・・だもんな・・・」

そっと鏡に微笑むと鏡の中のムツキも自分に美しい笑顔を見せてくれた






「誰の指示でこんなクソみたいな報告書書いてんだよ。バカ。αは賢い?能力高い?お前どこの学校出てんだ?あ?」

今日も変わらず研究所ではムツキの怒号が飛ぶ。そして辞めていくα達。呆れながらもついて行くΩ達・・・
ムツキがヒトシと番になった。その話はその日のうちに研究所の全員が知ることとなったが、もともとパートナーとして長く付き合っていた2人がやっとか・・・という反応だけ

「まぁまぁむっちゃん、イライラするからイライラ抑えるハーブティーでも飲もうかー?」
「・・・」

そして少しだけ変わったこと
ムツキがヒトシの前だけで少しだけ素直に可愛らしくなること

「むっちゃん、こっちはオレの報告書」

ムツキがヒトシの淹れたお茶を飲みながら報告書に目を通すと「まぁまぁ・・・だな」と呟く

ヒトシも番を持ってからは今までよりも態度も仕事もαらしくなってきたこと・・・

「フフ・・・2人とも少し大人になったように見えます」

ツカサが笑顔でムツキにレジュメを差し出す

「なんだ?」
「z003の疑似フェロモン・・・オレなりに抽出して解析回してたんですけどー・・・これ見たらムツキさんも安心するかなぁって」
「・・・は?」

ムツキは中身に目を通すとそれを投げ捨てる
ツカサは「あーあー」と言いながらそれを拾う。そういえばこの光景はよく見ていたけれど実際に自分の書いたレポートもカルテも捨てられたことがなかったな・・・と思いながら

「何?何が書いてあった?ツカサちゃん、オレにもそれ見せて」
「ダメだ。ツカサ、お前のフェロモン抽出とか未熟なんだよ」
「そうですかぁ?ついでに言うとムツキさんたちが突然行方不明になった後、z003の疑似フェロモン放出器官潰したのもオレですけど?α去勢はカンナ博士にやってもらいましたけどー・・・」
「な・・・」
「あー、学校行き直してムツキさんみたいに博士号取ろうかなぁ・・・タイチさんも応援してくれてるし・・・」

ムツキはダンっ!と机を叩いたが、ツカサが博士号取ることには異論がないことに気付いてそのまま「うーん」と唸る
ぼーっとしていて頼りなく見えていたツカサが優秀なことぐらいムツキも十分知っているし、優秀な研究員が増えるのも嬉しいこと

「んー・・・どれどれ」
「あっ!!!」

ヒトシがツカサの手からレジュメを取るとその内容に目を通して口元を押さえる

「・・・あー・・・むっちゃんむっちゃーん」
「なんだよ」
「これって、オレが運命の番なんじゃね?」
「ないっ!!!大体もし運命だったら最初から抑制剤も感じないハズだろ!バカ」
「でもさぁ、最初からオレのフェロモンに感じてたんでしょー?オレ、通常の3倍の抑制剤いつも飲んでるからフェロモン出てなかったかもだけどー、むっちゃんも普段から規定以上の抑制剤飲んでたけどオレのフェロモン前にしたら感じちゃったんでしょー?ねぇーむっちゃぁーん」

ニヤニヤとするヒトシの手からレジュメの束を奪ってシュレッダーへと投入する
フェロモンはDNAのようにαそれぞれが違うため、特定しようと思えば特定ができる・・・
疑似フェロモンのタイプで1番似たタイプとして名前が挙がったのがヒトシの名前・・・

「まぁ、ヒトシさん、見た目と態度に反してすごいαの能力値ですからねぇ。α能力値だけで言ったら国盗りだってできますよ・・・でも、疑問はですねぇ・・・ヒトシさんのフェロモンどこで手に入れたんでしょう?」
「あー・・・梶野家のαフェロモン自体欲しがる奴多いからなぁ・・・高値で売れるんだよなぁ・・・っていうかさりげなくオレのコトディスったよね?ツカサちゃん」
「お前・・・」
「えー?10年以上前の話なんて時効でしょ?むかーし、確かにオレ、フェロモン献体したわ。金に困って。あれが何になるかだなんて全然判んなかったけどまさか疑似フェロモンとかなぁ?思いつくわけないしー!」
「ヒトシーーーーーーっ!!!!!」

それは仲のいい番がじゃれあっているようにしか見えなくてツカサはただ微笑んだ

「抑制剤、飲みすぎるのもよくない・・・っていうのが今回のムツキさんとヒトシさんで判りましたね。次の論文、オレ、これで行きます」
「いや、ツカサ、待て・・・」
「運命の番について書いた論文、結構イイ評価貰って本にしないか?とかあったじゃないですか?オレ、博士じゃなくてライターになるのもいいかもしれないなぁ・・・」
「いや、ツカサ!おいっ!待て!!!」



相変わらず研究所からは今日もムツキの怒鳴り声が響く

でもきっとそれは幸せの声

怒鳴り声の後には甘く甘くヒトシがムツキを宥めるかのように囁き続けるのだから




愛だとか運命だとか  おしまいおしまい







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愛だとか運命だとか10 - 08/29 Mon

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ムツキの部屋まで走るけれど、いつもよりもその道程が長く感じてもうヒトシも限界が近付いてきた。それは体力的な問題ではなく・・・ムツキの出す濃厚すぎるΩフェロモンのせい・・・抑制剤を乱用しているヒトシもあてられるムツキのフェロモン・・・好きだとか愛しているからとかそんな感情的なものよりも本能的に感じるもの

「ごめ・・・ここ、使う」
「んっ・・・ダメ・・・も、もぉ・・・ダメ。苦しっ・・・熱っ・・・熱ぃー」
「ん・・・すぐ、すぐだから」

鍵のかかる部屋。普段は応急処置を施すための処置室として使っている部屋・・・ムツキの部屋と違って隔離室のような効果はないけれど鍵さえかかれば今はよかった。もう、なんでもいい・・・

「ムツキ・・・ちょっと乱暴になるかもっ」
「んっ・・・早くっ、早くっ」

きっとムツキは今、誰でもイイのだろう。でもそれでも構わない。ムツキが誰でもよくても、ムツキを抱くのは自分だから・・・
限界まで昂ぶった雄をムツキに押し当てると避妊具を着けていないことに気付いて小さく舌打ちする

「あっ・・・はぁ・・・」

躊躇したヒトシと押し当てられた熱をすぐに飲み込みたいムツキ・・・ムツキの手がヒトシの熱を掴むと腰を動かしてその熱の塊を飲み込んでいく

「っ・・・ぅ・・・はっ・・・ダメだって・・・うっわ・・・クッソ・・・気持ちイイ」
「はっ・・・あっ・・・ヒトシ・・・ヒトシっ」
「むっちゃん・・・オレのことちゃんと認識してんだ・・・?っつか・・・ゴムしてな・・・1回抜く・・・ぅ」

首を振ったムツキに肩を掴まれて最奥へと飲み込まれる

「っ・・・むっ・・・ちゃん・・・」
「ひぃぁ・・・イイっ・・・イイっ」

もう準備のできたΩ子宮へとピタリとはまってヒトシは興奮と快感に耐える。子宮から抜けないようにαの瘤が蓋をして動けない。きゅうきゅうとまるで意思があるように締め付けてくる胎内・・・早く精を搾り取ろうとするかのように動いてもないのに中が雄を扱く

「あ、ダメだ・・・達く・・・ごめ・・・むっちゃんっ」

ムツキの最奥へと精を叩きつける。長い射精。その間も瘤が邪魔して動けないのにムツキの体がそれを判っているかのように最後の1滴まで搾り取ろうとしているのが判る

「・・・責任はとるから・・・これでオレの子ども孕んだら養育費でもなんでも出すしっ・・・孕んで・・このまま孕んで」

ヒトシは悲しみとは無縁の涙を浮かべてムツキの頬を撫でるとムツキは静かにひとつ瞬きをした

「・・・むっちゃん・・・むっちゃん・・・薬・・・成功したんだね」
「ん・・・」
「むっちゃんが天才でよかった・・・」

どうせ認可されない。そう言っていたΩが心を許した相手じゃないと番になれない薬・・・ムツキは自分を信じ、もしもの時ようにずっと抑制剤と共に服用してきた。それが、まさかこんな形で成功を知り、身を守るとは思わなかったけれど・・・

「むっちゃん・・・薬・・・効いてるならオレ、ここ噛んでイイ?ここにあいつの歯形ついてるの嫌・・・オレの付けたい。上書きしたい」

ムツキのうなじに残る歯形を撫でて唇を寄せると口を開けて甘噛みする

「ダメだっ!」
「・・・薬、成功したんだったら・・・っていうか、オレ、まだ搾りとられ続けてて興奮やまないから噛む」
「やめっ」
「無理・・・形だけでもしたい。むっちゃん番にしたいっ」
「ヒトシっ・・・待っ・・・あっ・・・は・・・んっ」

噛みつかれた瞬間心臓が握られるような感覚。ただ首を噛まれただけなのに達し、また内部が波打って喜ぶ
番になるなんてどんな感覚か・・・そんなの判らなくたって本能が判る。もう身も心もこの人に捧げよう。体が心がもう囚われているのが判る・・・

「っ・・・?」
「は・・・クソ・・・んっ・・・」

潤んだ瞳・・・ムツキの変化するフェロモン・・・今までのよりももっと成熟したような・・・甘い甘いフェロモン・・・

「・・・え?」
「バカ・・・バカ・・・」
「ちょ・・・え?嘘・・・嘘っ・・・ホント?」

顔を赤くして背けたムツキにヒトシも顔を赤く染める

「・・・ムツキ、絶対オレは幸せにする。他なんて見ない。見る必要がない・・・最初からお前しか見てないんだから。オレの運命はムツキだって信じてる。オレだけ見て。オレが運命の番なんてどうでもよくなるくらいムツキのコト愛するから」

ムツキの指先にキスをして忠誠を誓うように愛を紡ぐとムツキは顔を隠したまま震えながら涙を零す。番なんて要らない。そう思ったのに体も心もこんなにも喜んでいる。Ωとしての悦び・・・全てを1人のαに捧げられることの悦び・・・
そして同時に絶望感。番になったということはいつ起こるかもしれない喪失に怯えなくてはならないのだから・・・

「ムツキ、梶野家はさー、αで有名な家系でしょー?・・・オレのじいちゃん、惚れたΩ落とすのに10年かけて、母さんも6年かけた・・・そしてひいじいちゃんもその前もずっと1人の番と一生寄り添って来てる。αの家系っていうか一途な家系だと思うよ?オレもむっちゃん落とすのに5年・・・あー、やばい!嬉しい。ムツキ!嬉しくないの?ムツキ、オレが好きだったの?ねぇ、むっちゃん」

名前の呼び方統一しろよ・・・そんないつもならできるツッコミすらできない
怖くて。嬉しくて・・・頭の中がいつもの冷静さを取り戻すことができない・・・

「むっちゃん、むっちゃーん・・・あ、出きった・・・かも。抜けそう・・・抜くね?」

熱が抜かれると零れ落ちてくると思った大量に出したはずの精液が漏れてこないことにヒトシは生唾を飲み込む

「・・・すげ・・・番の子種逃がさないように抜くとすぐに閉じるってホント・・・だったんだ。むっちゃん、見て?すげぇの」
「・・・お前、去勢だから・・・」
「え?」

ヒトシが顔色を変えて姿勢を正す
それは過去にタイチにしたように好きになったらα去勢をして他のΩに目が行かないようにするというものかと心臓をドキドキさせながらムツキの言葉を待つ。それでもムツキを番にした今ならもう去勢されても構わない・・・そうも思えた

「裏切ったら去勢」

ちょっきん。と指でハサミをつくるようにして指を動かすとふにゃりと笑顔を作るヒトシ

「一生ムツキだけ見てるよ」
「・・・クソ・・・ホントこんなはずじゃ・・・」
「むっちゃんがオレのコト好きだなんてー・・・」
「自覚はなかったけどな」
「え!!!」
「お前が噛むっつーから嫌な予感したらやっぱり・・・っつー・・・」
「待って・・・むっちゃんオレのコト好きなんだよね?ね?ねぇ?」

周りをキョロキョロとしてスラックスと下着を探すのにどこにもないのに気付いてヒトシの頭を叩く

「オレの洋服がない」
「あ、そっか・・・手術室だ。多分」

ムツキがドアを指差すと急いで洋服を着たヒトシが部屋を出て行く。ムツキの洋服を取りに行くために・・・

「あ、むっちゃん、大丈夫だと思うけどオレが外出たら鍵掛けてね?オレってちゃんと判るまで開けちゃだめだからね?」






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愛だとか運命だとか9 - 08/28 Sun

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「大丈夫。もう不安なんて感じなくてイイから・・・Ω性としては正常だから」
「でもっ・・・でもっ・・・」
「さっき、お利口にオレの体液飲み込めたでしょー?これでしばらくはフェロモンレイプなんてしなくなるから」
「・・・ごめ・・・なさい」

Ω棟での性の提供だってヒトシの仕事のひとつ。たくさんの制限はあるけれどΩとやりたい放題。そんな理由でこの研究所へやって来るαも少なくない。結局、ムツキの課すハードな仕事や言動に辞めていくものは後を絶たないが・・・

「・・・?!・・・ごめ・・・ちょっと他のやつこっち寄越す。オレ、行かなくちゃ・・・」
「?」

ふと感じたフェロモンは目の前のΩからでもこの棟のどのΩのものとも違う。ここから離れた場所から何故判るのか判らないけれど、確実にこれは・・・

立ち上がったヒトシは携帯で指示を出すと走る。ひたすら走る。広い研究所のこの棟とは違う棟・・・胸騒ぎの元が偽物であることを願いながらひたすら走った







「あ・・・ぁ・・・ぁ・・・」

首に噛み痕を残されながら達した自分の体液の上に倒れ込むと朦朧とする意識の中で手を伸ばす。憎い・・・自分のこの体が憎い。ただただ憎い・・・

ビービービービービービー

突然手術室に鳴り響くビープ音。非常を知らせる警報音・・・

「なんだ・・・?」

z003が顔を上げると手術室のドアが開く音がして所員に指示を与えた・・・が、動かない

「何してんだよお前」
「・・・何してんだよ・・・って聞きたいのはオレだ・・・オレのΩに手を出すなぁぁぁぁっ」

突然投げ飛ばされて目を白黒させるz003。ヒトシは倒れ込むムツキの体を起こすとうなじに残る噛み痕に気付く

「・・・」
「ハハハッ・・・オレのΩ?お前のΩ?ねぇよっ!ついさっきその美人さんはオレの番になったからぁー」

ふらりと立ち上がったヒトシがz003の首に手を掛ける

「何した・・・」

その威嚇に怯んでしまうのは本能
強いαを目の前にするとそのαに仕えねば・・・という本能
勝てないαへ忠誠を誓うことで命を助けてもらおうという本能

「ぁ・・・あ・・・」
「オレはお前をα去勢できない・・・けど、今この場でお前を去勢することはできる」
「ひっ・・・」
「その檻に自分から入って鍵掛けろ。お前ら2人でだ!」

ビリビリと体が痺れるような感覚
言うことを聞かなくてはならない・・・そう本能がその命令に従わせる・・・
ヒトシの手に光るメスよりもヒトシ自身がただただ恐ろしい

2人が檻へ自ら足を向け、鍵を掛けるのを見てメスを離すと床へ倒れて震えているムツキにそっと触れる。番になりたくない。その意思を尊重してムツキに番の儀式を行わず、パートナーで満足してきた・・・でも、ムツキに印された番の儀式・・・そっとそこを拭うとビクリとムツキの体が震える

「っ・・・はぁぁ・・・んっ」
「・・・ヒート・・・?なん・・・で?」

首筋に触れただけなのにビクリと体を震わせて瞳を潤ませ見上げてきたムツキの姿を見て信じられないものを見るかのようにヒトシはただムツキを抱き上げて再び走る
番のできたムツキがヒートを起こす。それは番になったz003にだけ・・・けれど、z003はヒトシのαの能力で萎縮し小さくなってフェロモンを出さなくなった・・・じゃあ、このムツキの状態は・・・?

「むっちゃん・・・ムツキ・・・待って・・・オレ、頭ついて行ってないけど・・・ムツキ・・・オレの間違いじゃなかったらオレ、今すぐムツキを楽にしてあげられるからっ」

それはまるで祈り・・・ヒトシの頭に過ったひとつの可能性・・・今はただその可能性に縋るようにムツキを一目のつかない場所へと移動させたかった








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愛だとか運命だとか8 - 08/27 Sat

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z003がムツキの運命とは何も関係ないと判ったものの、ヒトシの心はまだ不安に満ちていた
z003本人が運命じゃなくても疑似フェロモンの主、つまりそのフェロモンの元になった「強いα」がムツキの運命の相手かもしれないという不安

ムツキには運命の番が存在していて、その存在がヒトシの心を不安にする。ムツキがそのフェロモンを解析し、そのフェロモンを持つ人物が特定できたら・・・





「おい、明日、z003のα去勢の施術だが、お前は同席するのか?」
「え?」
「・・・いや、お前z003にずっとついていたから・・・」

z003についていたわけじゃなくてムツキが心配でついていた・・・ということには気付いていないのかと思いながら微笑む
施術・・・となればz003は麻酔も効くのだし、自分にできることはさすがにない・・・

「明日はオレ、Ω棟の不安定な502号室の付き添いあるから時間あればそっち顔出そうかな・・・あの強気なαがα去勢されてどんな顔すんのか気になるし」
「ん・・・」

ムツキが再び端末に目を落として作業を続ける。あぁ、わざわざ確認してくれた。たったそれだけでヒトシは満足。人に興味があまりなさそうなムツキに気に掛けてもらえる存在になれているのだから・・・







翌日、ムツキが白衣に着替えて手術室へと入ると付き添いの所員がまた新しい人間で胸についた名前をチラリと覗く
確か数日前に研究員として入所してきたΩ・・・プライドが高くて使いにくいαよりも優秀なΩのほうがここでは使いやすい。そう思って採用したのを思い出しながら指示を出す

「へへ。美人さーん・・・ついに来ちゃったねぇ?」
「αとしての最期だ・・・次に目が覚めた時にはお前はαとしての能力なんてなくなる。お前が縋ってきた疑似器官も同時に失うんだ」

z003はいつものような下衆な笑顔を顔に貼り付けたままムツキを見つめる
それはαとしての最後の強がり・・・そう思っていた

「・・・?!」
「なぁ、美人さん、オレz003って名前じゃねぇのちゃんと判ってんだろ?ホントはオレの『タイチ』って名前思い出しながら何度も何度も濡れるのを慰めてたんだろ?」

ベッドに拘束されているハズのz003が自分の腕を掴んでいるのにムツキは恐怖する。焦りの表情を浮かべながら顔を上げて所員を見るといつの間にかz003にべったりと寄り添う所員の姿

「ほらー、オレ、番たくさんいるって言ったじゃーん?ここに入り込める頭のいい優秀なΩちゃんも中にはいるわけよぉー」

ムツキは腕を振り払って壁の非常ボタンを押そうともがくがすぐに所員に取り押さえられる

「なぁ、タイチって呼んでみ?」
「お前はっ・・・z003っ!」

z003の名前はかつて恋心を抱いていた親友の名前と同じで・・・そんな名前を呼びたくなんてない
ムツキにとっての『タイチ』という名前はもっと神聖で大事な名前・・・自分をΩとして初めて実感させ、大事に大事にしてきた彼の名前・・・可愛がっている友人の番の名前・・・愛しく大事に思っている子どもの父親の名前・・・

「まぁ、いいけど・・・さぁ、美人さんも本能に任せて気持ちよくなろうか・・・」

一気に広がるαのフェロモン・・・手術前に抑制剤も強いものを点滴で入れていたハズなのにそれすらも偽物だったようでムツキは空いてる手で鼻と口を塞ぐ

「あー、判ってんだろ?あんた頭のいい博士なんだから・・・αの本気のフェロモン、呼吸器塞いだところで防げるわけねぇって」

判ってる
判っているけれどせめてもの抵抗・・・濃厚なフェロモンが自分のΩのフェロモンを誘発してヒートを引き起こさせる。すぐに蕩けた表情になったムツキにz003の手が触れる

「やめっ・・・ろ」
「おっと・・・結構理性保てるほうなんだ?」
「っ・・・やめろぉっ・・・」
「な、さっさと履いてるもん脱がせちゃって」

z003の言いなりになっている所員がムツキの履いていたスラックスを脱がせると白い肌が露わになる

「ハハ・・・すっげぇ上物。イイ値つくぞ・・・これは」

気持ちが悪い。気持ちが悪い。体が熱くて奥が熱くて・・・求める。求めたくないのにαを・・・目の前にいるαを求めて体が悦びの声を上げる様にΩ特有の体液を零すとz003の欲望の塊がムツキの体を貫く
頭で心で拒否するのに悦ぶ体・・・自分とは異なる熱の塊を強く強く離さないようにと締め上げ搾り取ろうとする体・・・

「嫌・・・嫌だ・・・嫌だぁぁぁっ」

番なんて欲しくない。番なんて・・・そう望んでいたムツキの首筋にz003がキスをし、唾液を零す

「さ、番になるんだ。オレの・・・オレの番になってオレに尽くせよ。美人さん」





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愛だとか運命だとか7 - 08/26 Fri

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「バカ言うな・・・」
「じゃあむっちゃんもバカ言わない」
「・・・」
「っつか、さっきのマジでやばかったー・・・オレ、本気でゴム取って中ぶちまけてやろうとか思ったし」

ヒートが治まった後、ヒートの最中のことなんて1番聞きたくない
自分がどれだけ乱れているのかだなんて・・・どれだけ情けない姿を他人に曝け出しているかだなんて・・・

「むっちゃん・・・オレ、ずっとむっちゃんのこと大好きだった。今も。明日も明後日も大好き」
「・・・何だそれ」

ヒトシがヘヘと笑うと「愛の告白」と言いながら顔を手で覆う
好き。好きだから番になりたい。でも番になりたくないムツキに強要できないからもどかしくて苦しくて・・・せめてこの胸のもやもやを軽くするための告白
ムツキから同じ返事が返ってくるだなんて期待はしない。ただ、ヒトシの自己満足の告白

「・・・それで?」
「ううん。オレがね、好きだってことむっちゃんに聞いてほしかっただけ」
「オレは・・・」
「うん。知ってるよー。むっちゃんはただのヒートを治めるパートナーが必要なだけだよね」

ヒトシの言葉にムツキは黙って「そうだな」と同意するとペットボトルの水を飲む。何か言いかけようとしたことがあったけれどそれと一緒に水を飲み込む。何を言いかけようとしたかだなんて判らない
好き?ヒトシが好きなのだったらあの時と同じようにヒトシをα去勢したいと思うハズ。番なんて作らないで自分のパートナーで一生傍に置きたいと・・・でも、そうは思わないからこれは恋だとか愛だとかそんな感情とは違うもの










「・・・こんな感じでz003はムツキさんの運命の番じゃーありませんっ!」
「・・・こんな感じってお前・・・」

ムツキはツカサから大量のレポートを受け取ってうんざりした表情でツカサを見つめる

「βにαの人工疑似フェロモンを植え付ける違法手術の話したじゃないですか・・・それがz003のトリックですよ。彼はαだけどそこに人工疑似フェロモン器官を取り付けてます。多分ムツキさんが受けているフェロモン被害はz003本人ではなく、疑似フェロモンの方・・・まぁ、たぶん元にした強いαのフェロモンがムツキさんと相性がイイとかそういうことだと思うんですけど・・・」
「・・・z003のα数値は・・・?」
「αとして能力があるのか微妙な程ですね」
「・・・そうか」
「彼が番だと言っているΩたちは多分その疑似フェロモンで番契約だと思い込ませられているだけで実際は番効力はないのと同じだと思います。まぁ、そこらへんは被害Ωを見てみないと判らないんですけどね。とにかく、z003本人にはΩを番として縛り付けるαの力すらありません」

運命・・・そう恐怖したけれど、ツカサの言葉を信じるとただ人工的に作られた安っぽいフェロモンにつられただけ・・・なんて不様なのだろう・・・そう自分を卑下する

「なので、α去勢の日程サクサクっと決めてさっさと送っちゃいましょうよ?あ、去勢と同時に疑似フェロモン器官も潰す手術になりますね」
「・・・だな。もうあいつをここに置いておく理由なんてなくなるな」

ムツキは少しだけ笑って手元の端末で日程を調整し、手術の日程を決めるとツカサの頭を撫でる

「お前にはいつも救われてばかりだ」
「何言ってんですか!オレの方がムツキさんに救われてきましたからね?キョウが産まれる前も産まれてからも・・・そしてきっとこれからも」
「オレは自分の子ども持たないからな・・・キョウを可愛がってる・・・と言ったらお前らに悪いか。自分が持てないものを無責任に可愛がるだけなんて都合いいよな」
「・・・ムツキさんもその優秀な遺伝子残してください」
「はぁ?」
「あー、なんですか?まぁ、あれです。番とか作らなくたってムツキさんならクローンでも試験管ベビーでもなんでも作れそうじゃないですか」
「オレは錬金術師じゃねぇよ。ただの医者だ」

ムツキは笑ってクシャクシャとツカサの頭を撫でた





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愛だとか運命だとか6 - 08/25 Thu

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ムツキをベッドへ下ろすといつものようにまず抑制剤を飲ませる。そして同時に自分の抑制剤も嚥下した
毎日許可されている抑制剤なんて無視して大量に飲み続けている抑制剤・・・抑制剤中毒というものがあるならばきっとそれ・・・

「ダメ・・・欲しい・・・欲しいっ」
「むっちゃん・・・焦りすぎ・・・待って。すぐにあげるから」

下着をはぎ取ったムツキがブンブンと首を振りながら早く早くとヒトシの雄を口へと含む。欲しい。体の奥が求めていた。ただ快楽じゃなくて・・・欲しいのは・・・

「むっちゃ・・・待って!!!」

ヒトシがゴムを手にするともう雄に手を添えて腰を下ろそうとしているムツキの姿。慌ててムツキの体を抱き上げると片手で手を拘束してムツキの唇を奪う

「むっちゃん、今ゴム付けるから」
「早・・・くっ・・・早くっ」
「なんか最近毎回エロくなっていく気がする・・・挿れるよ?」
「早くっ・・・んっ」

欲しかったαの熱・・・でも、ホントに欲しいのはこれじゃない・・・これもだけどこれじゃない
抽送を繰り返しているとムツキの指が繋がっている場所へ伸びてきてヒトシはムツキの指を見つめる

「むっちゃん?」
「や・・・欲しい・・・」
「むっちゃんのだよ・・・むっちゃんの」

そしてムツキの指が触れた理由はすぐにヒトシも理解することとなる
カリカリとヒトシに付けられたゴムを破ろうとするかのように爪を立てる

「むっちゃん!」
「もっと・・・奥ぅ・・・」
「・・・欲しいの?オレの精液直接ここ、掛けてほしいの?」

ヒトシがムツキの白い腹を撫でるとガクガクと頷くムツキの頭を撫でてすぐに雄を抜き取る
名残惜しそうにそれを見つめるムツキに微笑んでゴムを外すと「ごめんね?」と謝り、ムツキの口へと強引にねじ込む

「んーっ・・・ふっ・・・ん」
「苦しいねぇ?でも、口も感じるね?」
「んっ・・・んー」

瞬きで返事をするようなムツキにまた微笑む
自分以外のαのフェロモンにここまであてられたことに嫉妬しながら・・・こんなにもαの精を求めるムツキに不安を覚えながら・・・

「むっちゃん、オレ以外にこんな求めちゃダメだよ?」
「んーぁむ」
「出すよ・・・むっちゃん、出すからね?」

ムツキの口内を白く汚すとすぐに口を閉じさせて「飲んで」と命令するとムツキは黙ってそれを嚥下した

「・・・落ち着いた?」
「・・・」
「むっちゃんのヒート・・・来るところまで来ちゃってるね・・・熱治めるだけじゃダメそう・・・αの体液求めてる」
「・・・」
「ねぇ、むっちゃん・・・あいつ、運命だと思ってる?オレ、許さないよ・・・それだけは許せない。もし運命だとしてもダメ。あいつといるの幸せなんかじゃない。むっちゃんはオレが幸せにするから・・・絶対。一生かけて幸せにするから」

ヒトシがそう言い終わる前にムツキがヒトシの胸を突き飛ばしてベッドへと倒す

「むっちゃん?」
「・・・Ω去勢・・・する」
「は・・・?」

まだちゃんとしたΩ去勢の方法はない。フェロモン感知の器官を潰すα去勢とは違ってヒートの時だけ降りてくる子宮を外的手術によって取り出すΩ去勢・・・

「こんな・・・こんな・・・オレじゃない・・・オレは・・・オレはっ」
「むっちゃん・・・ねぇ、むっちゃん、そんなことしたら子どもできないよ?むっちゃん、番要らないって言っても子ども欲しいでしょ?」
「要らないっ!あんなやつが運命なんだったらオレは去勢して」
「ダメっ!」

ムツキの体を抱きしめるとただ懇願するように頼み込む

「・・・お願い・・・お願いだから・・・」

それは一纏の希望・・・番は要らない。そう頑ななムツキが10年後、20年後でも番を作ろう。そう思ってくれるかもしれないという淡い期待・・・それすらも奪われてしまうだなんて・・・だったら今すぐにここで・・・ここで

「そんなこと言わないで・・・今すぐ考え辞めないならオレは今すぐむっちゃん番にする」







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愛だとか運命だとか5 - 08/24 Wed

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「ムツキさん」
「あぁ、203号室のカルテ、お前持ってる?」
「はい。ここに。バイタルチェック終わりました。それで、今日被験者zの実験ありますよね」
「・・・あるが?」
「オレにも同行させてください」

ムツキが急に不機嫌な表情になるとツカサを冷たく見下ろす

「なんだと?」
「レア種・・・オレ、前に他の研究所に出向してた時にも見たんで、それを活かせたらと思いまして」
「・・・お前には」
「オレ程安全なΩはいないと思いませんか?どんなαを目の前にしても大丈夫なのはオレだと思いませんか?」

ツカサは口を閉じると黙ってカルテに目を落とす。そしてそのカルテをツカサに差し出す

「αの能力チェック・・・それが進まない。z003のフェロモンを強制的に出させてその能力値を計る・・・抑制剤を入れてない番のいない被験者Ωは用意してあるけれど」
「えぇ。判りました」

何度やっても数値がおかしい。高いα値は出ていたのにフェロモン値が大幅にブレる。それは自分が毎回この実験最中にヒートを起こしてしまうせいかと落胆し悩んでいた

「・・・あと、z003にお前が惑わされるとか考えたことはない。ただ、お前にあいつの酷い言葉を聞かせたくないだけだ」
「ムツキさん、だったらオレにΩの地下棟行かせないでくれればよかったじゃないですかぁ・・・」

研究所内にあるΩ棟と呼ばれる建物の地下には番に捨てられ傷つき、抑えられないヒートを持て余しているものばかり集められた場所がある。そこで世話と検査、メンタルケアを行うのが以前のツカサの仕事だったが、番に捨てられ傷ついたΩたちにとってツカサの存在は妬み、憎しみ、羨む相手にしかならない

「じゃあ、ムツキさん、オレ、白衣着替えてきますね」
「・・・お前は番を得て、親になって一層強くなったよな・・・」
「そうですね・・・オレは番を持って初めて1つの人間になった気がしますから」
「・・・」

それは離れることのない運命の番だと判っているから。捨てられるかもしれない。そう怯える必要がない運命の番・・・皆、恋人と番になると幸せを得る。悩まされていたヒートも番のお陰で抑えられ、心の安定を得る。だが、運命の番でない限りαの一方的な番解除がいつあるのか判らない・・・








「出向先にも複数の番を作っている人、いましたよ」
「あぁ、情報としては判っているけれど」
「Ωの珍しい症例はここが多いとは思いますけど、αの珍しい症例は向こうの方が多かったように思えますね・・・」
「まぁ、ここはΩ性をメインとして研究してるからな」

廊下を2人並んで歩いていくとパタパタと足音が響いてムツキはため息を吐きながら「廊下走るなバカ」と振り返る

「むっちゃんむっちゃーんっ!」
「うるさい」
「ヒトシさんお疲れ様です」
「今からz003でっしょー?オレもオレもー!」

肩に自然に手を回してくるヒトシの手をペチリと叩き落とすとムツキはヒトシの存在なんてないかのようにツカサに淡々と話し始める

「αのどんな症例見てきた?」
「えー・・・オレ、報告書出しましたよ?」
「・・・αだからスルーしてたかもしれないな・・・」
「βをαに見せかける手術を施されている患者も見ました」
「・・・βを?」
「えぇ。能力的にαではないんで番も作れないんですけど、αテストは人工的にフェロモンを出させることでパスできるっていう」

まだ根強く残る差別の中で、就職に有利なのはαだとされている。もちろんβでもΩでも優秀な人間がいることは証明されては来たが、やはり最初から優秀な人間が多いと言うαを求める企業は少なくない

「で、それが患者?」
「フェロモンレイプ・・・ですね」
「あぁ、βじゃΩのヒートに潰されかねないな・・・」
「えぇ。それが何度も続くからその人工フェロモンを削除したいっていうことでしたねぇ・・・オレから言わせれば自業自得だと思いますけど・・・」

ムツキは「その通りだ」と呟きながらツカサの話に耳を傾ける
もしツカサがαで、この報告を聞いていたらこんなにも素直に話を聞けていたのか判らない。それはきっとずっと持ち続けているαへの憧れ、羨望。産まれもったΩよりも優秀でカリスマ性があるというαの能力へのコンプレックス

「ねぇ・・・オレのコトずっと無視するの?ねぇ!2人ともぉぉぉーーーー!」

ヒトシのその叫びは廊下にただただ響いていた





「あー、オレの美人なΩちゃん、今日も美人・・・しかももう1人可愛い系のΩ・・・2人纏めてオレの番にしてやるからほら、近く来いよ。濡らしてんだろ?なぁ。今すぐパンツ脱いでいやらしく光らせてるところ見せろよ」
「フェロモン、入れてくれ」

防護檻へ入れられたΩが入って来るとツカサたちにも判るΩフェロモンの匂い・・・
ガシャンと檻が揺れると瞳を潤ませた檻の中のΩ・・・このΩも特殊な体質で番が作ることのできないΩ・・・何度番の儀式をされても番を作ることができず、ただフェロモンを垂れ流しにする。更に抑制剤のほとんどが効かない為、ここへ収容と言う形で普段は閉じ込められている被験者

「ちょ・・・だいっ・・・α・・・αがいる」
「すっげぇイイね・・・何ココ天国なわけ?」

ニヤニヤしながら檻の中のΩを見下ろすz003。部屋の空気が変わって来たのを感じてツカサはすぐに検査キットを手に取ると隣のムツキにもたれ掛かられるのを感じて顔を上げた

「見る・・・なっ・・・」
「・・・ヒトシさん。フェロモン被害です。ここはオレが対処するのでムツキさんを隔離室へ」

紅潮し、息の上がったムツキを見て静かにそう言うとてきぱきと検査を続けるツカサ

「あれー?なんでお前オレのフェロモンにあてられねぇの?Ωちゃんだろー?Ω機能がまだ未熟なのかなぁ?」
「・・・オレが番持ちとか判らないなんてあなたのα機能も大したことないですね。数値が出るのを待つ必要なんてない・・・」
「あ?」
「この結果さえ出ればα去勢の日程も決められるはずです。もうオレにはこのトリック判りましたから」

笑顔のツカサは檻のΩを退出させることを告げて自分もz003の隣を涼しい顔ですり抜けていく
運命なんかじゃない。ただのトリック・・・そう判るとホッとした顔で・・・ただ、これを早くヒトシとムツキに伝えたくて。ムツキのことを心配しているタイチにも教えたくて・・・






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愛だとか運命だとか4 - 08/23 Tue

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その日、ヒトシが手土産を持ってタイチとツカサの部屋を訪れると久々の友人にタイチは笑って出迎え、そして頬にペチンと平手打ちをする

「痛ーーーーいっ!!!」
「ツカサにベタベタベタベタお前のクサい匂いつけやがって」
「イイじゃんっ!オレによろめいたりすることなんて絶対ナイ番だろー?」
「オレが不快!」
「イイじゃんっ!オレとお前の仲じゃんっ!」

ツカサはそれを見ながら笑ってお茶を出す

「あれ?キョウちゃんは?」
「ムツキさんの所です。予防接種もあるし、ってなんか連れ去って行きました」
「えーーーーええええええーーーーっ!むっちゃんホントキョウのこと大好きだなぁー」

ツカサは微笑みながら頷く
初めての妊娠と周りに男性体での出産経験がある人間がいなかったから不安で押しつぶされそうになっていたのにムツキが全てそれを取り払うかのように世話をし、診察し、安心させてくれた
産まれてくる前から息子のキョウはムツキに愛されている

「タイチは仕事順調ー?」
「おう!ノルマさえクリアできりゃ退社時間が早くても誰も文句言わないのなー」
「・・・お前のαの能力は全部人たらしだな・・・きっと」
「営業向きっつってんだよな?なぁ?なぁ?」

ヒトシが持ってきたお菓子を皿へ移して出したツカサの腰を掴むと自分の膝の上に下ろさせる

「キョウいないんだし、少しゆっくり座って?ほら、お菓子食べて。お茶飲んで」
「タイチさん・・・ヒトシさんいるのにこの位置おかしい」
「あーあーあーあーあーあーーーーっ!独り身のオレには目に毒ですーーーーっ」

両手で目を塞いだヒトシに「ムツキは?」とタイチが呟いた

「・・・うん・・・」

判っていた。久し振りに訪れたのは何か話したいことがあるから・・・ヒトシとムツキの関係を知っていて、相談に乗ってくれそうな相手を探してここへ来たことは最初から察していた・・・

「運命って・・・抑制剤・・・効かないんだよな?」
「・・・」
「運命目の前にしたらヒート起こるんだよな?相手が欲しくて、お互いに求め合う・・・んだよな?」

タイチとツカサは顔を見合わせて困った表情を浮かべた。それは友人を心配して・・・

「お前、運命に出逢ったのか・・・?」
「え?あ・・・オレじゃない・・・」
「は・・・?え・・・?!」

運命の番がそれまでに恋し、愛した相手ではないことだって当然ある

「ムツキ・・・に運命が現れた・・・っつーことか?」
「いや!違う!運命の相手なんかじゃない・・・ってオレも信じたい・・・でも・・・でも・・・むっちゃん・・・毎回そいつに逢うとヒート起こして・・・抑制剤も飲んでるし・・・」
「今、新しく来たαって・・・いましたっけ?」

ツカサが記憶を辿る。働く部署が違うとしても噂が自分の耳に入っていてもおかしくはない・・・

「被験者・・・z003」

タイチは無言でため息を小さく吐くと俯きヒトシの背中を撫でる
zがつく被験者は何らかの性犯罪にてα去勢を行うために来る者。その中でも被験者としてということは研究材料になり得るレア種・・・

「むっちゃんが・・・あんなやつの番になるだなんて・・・それなら苦しむって判っててもむっちゃんをムリヤリオレの番に・・・でも、そしたらもうオレと普通に話してくれなくなるだろうし、笑うことだってないんだろうな・・・って思うとさ・・・」
「・・・ないと思います」

ツカサの凛とした声にタイチとヒトシは顔を上げると真っ直ぐヒトシを見つめて微笑む聖母のようなツカサの姿・・・研究所で傷ついたΩたちの女神だとか癒しだとかそんな噂はこれなのか・・・そうヒトシが思いながら首を振る

「慰めは要らない」
「いいえ!だって、ムツキさんですよ?もし、運命ならもっと噂になってオレの耳に入って来てもイイと思います」
「・・・ツカサちゃん」
「オレの所にはね、すごいあちこちから噂話だとかやってくるんですよ。特に運命関連の噂は・・・ね?」

運命の番を持ったΩ・・・運命に出逢うとどうなるのか、恋人がいても好きじゃなくても惹かれるのか・・・皆、興味津々にツカサの元を訪れる

「オレ、次、その被験者z003の実験同行します」
「え・・・でも」
「オレは運命の番を持つΩですからねぇ・・・どんなαが来ても動じないし、ときめくことすらありません。ましてフェロモンがタイチさんの前以外で出ることなんてありませんから」
「あー、オレの番ホント男前だよな・・・可愛いし。あー、ヒトシ、お前も早く番見つけろよー」
「だぁかぁらぁーーーーっ!!!その番にしたいのはむっちゃん1人なんだってばー!!!」

番になることをずっと否定するムツキ・・・番になることはムツキの心を傷つける気がする。望みは薄い・・・でも、それでも番はムツキがイイとそう望む・・・






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愛だとか運命だとか3 - 08/22 Mon

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2人が満足して果てる頃には抑制剤も効いて来て落ち着いたムツキはすぐにベッドから降りて脱ぎ捨てられた洋服を集めながらそれを身に着けていく

「ねぇ・・・むっちゃん・・・薬・・・今日の分も飲んでた?」
「・・・」

薬瓶を傾けながらそう独り言のようにそう呟かれてムツキは聞こえないふりをする
そう。今日、ヒートが突然起こるだなんて予想外のコト。朝ちゃんと抑制剤を飲んでいたし、定期的なヒートはもう少し先のハズ・・・

「むっちゃんも適齢期だもんねぇー・・・突発的なヒートも起こるよねぇー」

そう。適齢期・・・子を成すために本能がヒートを頻発させる・・・

「オレも適齢期ー・・・すごいよねぇ。子孫を残すために本能がヒート起こしたりこんな瘤作ったり」

ヒトシが自身を撫で下ろすようにするのを横目で追う。Ωが適齢期になるとヒートを頻発させるのに対し、αは放った精を外へ出さないよう蓋をするかのように瘤が出てくる。全てのΩに適齢期の頻発ヒートがあることに対し、αの瘤は全てにできるわけではないけれど、ムツキの研究では優秀で子孫を残すべきαにそれは強く出る傾向にあると判っていた

だから、ヒトシもこの世が求める優秀なα・・・こんな自分のパートナーのままでイイわけがない

「1人ぐらいイイΩもいたんだろ・・・」
「んー?むっちゃんよりもイイΩー?そんなのいるわけないよねぇ・・・むっちゃんより優秀なΩって存在するの?」
「それはいないかもな」

ムツキは静かにそう言うとメガネをキョロキョロを探す

「はい。メガネ」
「ん・・・」
「むっちゃん、こないだ言ってた薬はどーなったー?」
「あぁ、あれか・・・できた。でも認可はされないだろうな」

ヒトシは体を起こして「なんでー!」と頬を膨らませる

抑制剤の発達でΩが性犯罪に巻き込まれることは多少減ったが、それでも後を絶たないΩの被害・・・
突然外でヒートに襲われ抑制剤が間に合わずその場に居合わせたαにレイプされ、番契約を無理矢理結ばれる・・・それを少しでも減らしたいムツキはΩが望まない番契約を結ばせない薬を開発した
Ωが心を許していない、好きでもないαに噛みつかれ、番契約を結ばれてもそれを無効にする効力をもつ薬

「まだまだ腐ってるからな・・・上層部が」
「・・・」
「お前も判るだろ・・・お偉いさんが若いΩが欲しいと思ったらそれ、モノにしたいに決まってる」
「・・・オレはしないよ」
「αの抑制剤すら飲まない奴らだぞ?番作って勝手に契約切って新しい番作る奴らだぞ?」
「っ・・・でもっ・・・あれが完成したら・・・泣かなくて済む人がいっぱいいる」

ムツキは黙って頷く
ここの研究所へやって来るΩの多くが性被害に遭ったΩ・・・被害に遭ったから傷つき、怯え、Ω去勢を望んでここへやって来る

「・・・臨床実験も難しい」
「そりゃ・・・でもっ、でも抑制剤みたいに普及したらっ」
「抑制剤も今みたいに安価で配給できるようになるまでかなりの年月がかかった・・・やっぱりお偉いさんが抑制剤なんて普及させたらΩ狩りできなくなるとか思ったからだろ・・・実験体になりたいっつーやつもいるだろう・・・でも、もし全員に効くもんじゃなかったらこれは謝罪じゃ済まねぇ」

つまり、好きでもないαに番を結ばれ、本当に番の効力がそこに起きないかを見るということ・・・もし、失敗したら好きでもないαに心を拘束され、それは一生逃れることができない・・・死がふたりを分かつまで

「むっちゃんの薬が失敗なんてするわけない・・・むっちゃんは天才だもん」
「知ってる」

ムツキが涼しい顔をして部屋を出て行くとヒトシはベッドへ倒れて天井を見ながら色々なことを考える。適齢期のコト。番を作れとうるさい実家のコト。新薬のコト。ムツキのコト・・・
このまま番を一生作れなくても構わない。ムツキといられるなら。パートナーとしてずっと過ごせるならば・・・でも、もし・・・もし・・・ムツキを他の誰かに奪われたら・・・そう思うと今すぐに自分の番にしてしまいたい








被験者z003の研究は窓越しで行われることも多かったが、ムツキが直接データを取るためにz003の傍に行かなければならないことも少なくはなかった
その度に繰り返しぶつけられる卑猥な言葉。そして起こるヒート・・・ムツキはあるひとつの可能性を思いついて恐怖に震える

この現象は知っている・・・


目の前で見たことがある・・・


タイチとツカサの運命の番に出逢った時の反応・・・どんなに強い抑制剤を投薬しても効かない運命の繋がり・・・

でも、彼は犯罪者で・・・憎むべき犯罪者・・・








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