FC2ブログ

ビタースウィート1 - 09/30 Fri

trackback (-) | comment (0) | その他SS
大して大きくもないシステム会社を立ち上げて数年・・・事業も運良く軌道に乗り、新入社員も今年は入ることになった春。季節が春から夏へ変わる頃、社長である彼、山本 義成は胸に衝撃を受けて蹲っていた

その衝撃は比喩的な衝撃ではない・・・

実際に衝撃を受けて蹲っていた


「大丈夫っすかー?」
「・・・だ・・・大丈夫じゃない・・・」
「大袈裟っすねぇ。社長」

新入社員の真山 友己がため息を吐きながらしゃがんで山本の腕を支えながら立ち上がる

「・・・っつかー、社長がいきなりオレの後ろにいるのがよくないと思いません?」
「ご・・・ごめんなさい・・・ってなんでボクが謝るの?ねぇ?真山くんっ!」
「ん?だって、ぶつかってきたの社長ですよね?」

面接の時からこの態度・・・それでも入れたら面白いかもしれないと思って内定を出したことを山本は今になって後悔していた
仕事はできる。そして、先輩社員からも可愛がられ、客先へ行かせたら行かせたでやっぱり可愛がられる真山は入社3か月で既に新しい契約もとって来た程・・・

「真山くん・・・まぁ、うん。百歩譲ってぶつかったのはボクだということにする・・・でも、それでも謝るべきだよ。ボクじゃなくて例えば・・・そう。羽鳥さんとかだったらどうするの?」
「羽鳥さんだったら謝ります」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

山本自身もまだ若い30代・・・だが、今どきの若者は・・・とは思わずにはいられない1日だった





「なぁ・・・松島ぁ・・・オレ、どうしてなめられるんだろう」
「何?また真山?」

会社を共に立ち上げたシステム担当の昔からの友人、松島 栄太に酒を飲みながら愚痴るのは近頃の山本の日課。それを笑いながら慰めるのが松島の役目

「真山くんが優秀なのはわかるけどさぁ・・・どんどんオレの立場なくなってきてない?」
「まぁ、お前がいなくちゃうちの会社回らないっつーのはうちのみんなも判ってると思うよ?」
「ホント?オレいないと回らない?」
「おう。回らない回らない」

松島が机に頭をつけている山本の頭をポンポンと叩くと山本はやっと顔を上げてグラスに残ったビールを飲み干した

「よし!明日もまた頑張る!」
「おう。お前の営業力には期待してんぞー」

小さい会社。山本は肩書きは社長ではあったが、1番動き回って、契約を取りに行ったり社員をフォローしたりしているのは社員もよく知っていること





「え・・・誰の?これ?」

翌朝、出社すると机の上にコンビニの袋がドンと置いてあって山本は困惑する。一瞬嫌がらせでゴミを乗せてあるのかと思ったけれど袋の中にはコーヒーとシュークリームが1つ
それが誰のものか判らない

しかし皆、首を傾げたり首を振ったりするだけで誰のものか判らなかった

山本は一つため息を吐いて会議に使っている部屋に置かれた小さな冷蔵庫へシュークリームを片付けに行った



「それ、社長の」
「え?」

冷蔵庫を開けると後ろから声がして、振り返ると真山の姿

「昨日のお詫び?」
「・・・え・・・あ・・・ありがとう」
「だから食って」
「い、今?!」
「社長、またこれから出掛けるんでしょ?だから今、食って。昼まであったらオレ食っちゃうから」

一応彼なりの気遣いだったのか・・・と思って山本は会議室の椅子に座るとコンビニの袋からシュークリームとコーヒーを取り出す

「なんでシュークリーム?」
「あー・・・オレが好きなだけ」
「真山くん意外と甘いもの好きなんだ?」
「あぁ、なんで黙って食えねぇのかなぁ・・・ホントおじさんってヤダ」

おじさんという言葉に凹みながらシュークリームを齧るとバニラエッセンスの香りが鼻に拡がって口の中に甘さが拡がった

「ありがとう・・・ね」
「ん」

山本がシュークリームを齧ったことに満足したようで真山は会議室を出ていった。真山の姿が見えなくなったのを確認した後山本はコーヒーを一気に飲み込んだ

山本は甘いものが苦手なのだった・・・





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more
スポンサーサイト



スターサファイア1-10《最終話》 - 09/29 Thu

trackback (-) | comment (0) | 苺華シリーズ
いつも以上に不機嫌な顔をした星夜が裏庭の花壇の前へやって来ると持っていた新聞を城へ投げつける

「・・・撮られたってこの写真なんだよ・・・」
「あぁ、まさか一面を飾るとはなぁ?」
「おかげで朝からすっげぇ囲まれたし」
「でも、キミはそれを適当にあしらってここへ来たのだろう?」

それはそう。でも、それ以上に気になっていること・・・

「・・・今日で最後にするわ」
「何故?」
「月夜呼べよ。一緒に食ってればいい」

新聞の一面を飾った写真の月夜も城も明らかに幸せそうな恋人同士のようで・・・受け取った贈り物も何もかもが判らない。あんなに感じた愛情も霞んで見えなくなってしまうほど

「ある意味、やらせ記事・・・だな・・・」
「はぁ?」







「ねぇ、城先輩、風紀委員長を突然辞めた理由なんてのは野暮なんでオレは聞かないですけど、皆知りたがってるじゃないですか」
「あぁ、そのようだな・・・私としては別に聞かれたら素直に答えるつもりではあるが・・・」
「それなら話は早いです!」

ニコニコとした月夜がそっと城の耳に唇を寄せる

「待ち合わせの時から何人か写真狙ってますけど、それ、撮られちゃいましょう」
「だが・・・」
「ふふ。オレ、今日は星夜なんで」

耳のピアスを指した月夜が城に少し近付く

「オレ、人気あるし、好かれるけどその分敵も多いでしょう?だからオレじゃなくて星夜に敵意向ける奴もいるんですよ・・・星夜もオレも護身術習ってたし弱くはないけど限界がある。だから誰か星夜を守ってくれる人捜してたところなんですよー」
「・・・守る・・・とは?」
「城先輩の『恋人』なら簡単には手出ししないでしょう?剣道部の鬼神で元風紀委員長・・・守って貰う相手としては完璧です」

城は「うーん」と唸ると月夜が首を傾げながら城を見つめる

「城先輩は星夜のこと好きなんですよね?じゃあ星夜が危険な目に遭ったらやっぱり守りたいですよね?」
「それは勿論」
「それじゃ、写真撮られちゃいましょう?」





そうして出来上がった写真がまさかこんな取り上げられ方をするなんて思わなかったが、これについて尋ねられても正直に真実を述べるだけ

「なぁ・・・」
「なんだよ」
「嫉妬してくれたように聞こえたのだが」
「はぁ?」

星夜は弁当箱を開けてリクエスト通りのそぼろご飯を食べ始める

「キミのご要望通りの味になっているかな?」
「・・・嫉妬・・・じゃねぇけど、お前、月夜の名前は呼ぶくせにオレの名前は呼ばない」
「それは・・・」
「付き合うのは無理!男だし・・・でも、友達ならイイ」
「!・・・では友達から始めようか」
「友達からってその先なんかねぇよっ!」

城は笑って「その先は私の願望だ」と言うと水筒のお茶を星夜に差し出す
そもそも、今までは友達ですらなかったのかと疑問にはなったが、星夜が自分を友達だと認めてくれたのは心を許し始めた証拠。ゆっくりでもイイ。少しずつ確実に詰めて行けばイイ・・・

「鶏の照り焼きも美味い」
「あぁ、それは自信作だ」
「・・・お前、もう友達だよな?」
「あぁ。星夜がそう言ったから」
「じゃあ、今日、暇なら家来て夕飯作れよ」

少し驚いたけれどすぐに笑って頷く

「月夜が買ってくる飯がさ・・・まぁ、味は悪くねぇよ?苺華の中でも有名店、一流店のばっかり買ってくるから。でもなぁ・・・なんていうか・・・あー、材料費はオレが出すから」
「では、一緒に買い物へ行って、そのまま星夜たちの部屋へ行こう」
「おう。っつか、このお茶どこに売ってんだよ!オレの部屋にも持って来いよ!」
「あぁ。では今度持って行くよ」

こうして始まる「友達関係」周りには恋人だと公言されたも同然で。でも、実際は一方通行の恋愛。それでも確実に大きくなっていく恋の芽は夜空に光る星を目指してどんどんと伸びていく

少しずつ。でも確実に・・・











にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

スターサファイア1-9 - 09/28 Wed

trackback (-) | comment (0) | 苺華シリーズ
「星夜ー!星夜ー!ご飯買ってきたよー」

星夜が目を開けると月夜の姿。時計を見るといつの間にかもう夕方で今日は寝すぎたと思いながら目を擦る

「1日中寝てたの?」
「ん・・・」
「もー・・・」
「メシ・・・中華?」

クンクンと鼻を鳴らした星夜に月夜は頷く

「中華って気分でもなかったけど」
「文句言うなら星夜が買ってきてよね」
「めんどい」

星夜は背伸びすると「楽しかった?」と小さく今日の感想を尋ねる

「うん?うん。一発で星夜じゃないのバレたけどね」
「は?」

月夜の星夜のフリは完璧なハズで・・・久し振りでしくじったのか?それとも、普段自分が呼ばないような名前で呼んだのか?と予想してみる

「オレたち、どこが違うんだろうねぇ・・・」
「あ?」
「一目でバレた」
「・・・ないだろ」

使っている石鹸も全部同じ。違うのは耳の石だけで・・・今日はその石も同じ色

「城先輩曰く、全然違うって」
「・・・何が?お前、喋り方オレの真似してなかったとか・・・」
「いやぁ、オレ的には完璧星夜だったんだけどなぁ・・・」
「じゃあ」

月夜が振り返って星夜の口に月餅を突っ込むと笑顔で「なかなかいないよ?あんな人」と言うと星夜は少し考えて「うーん」と唸る

「ね、星夜、オレたちのこと親でさえも見分けるの難しいっていうのに、見分けられた城先輩ってさぁ、相当星夜に惚れてるってことになんない?」
「・・・だったら何?」

口に入れられた月餅を齧ると月夜に返す

「あれ?これ好きじゃない?」
「好きじゃない」
「・・・城先輩が薦めてくれたんだけどなぁ・・・」

城がこれを薦めたというのには首を傾げる星夜。たくさんの甘味メニューの中から自分の好物を見つけた城が・・・

「美味しいじゃんか!もー・・・城先輩オススメなんだから」
「・・・それ、お前の好みで薦めただけだろ・・・」
「へぇ・・・じゃあ星夜へのお土産って判ってたら城先輩は星夜の好きそうなもの薦めてくれたってことー?」

ニヤニヤしている月夜をペチリと叩くと月夜が別の袋から小さな包みを取り出して星夜に投げる

「何」
「城先輩が星夜に渡せってー」
「・・・」
「やっだー!その大きさのものオレが星夜に渡しちゃってよかったのかなぁー?」

包みを開くと掌に乗る小さな漆塗りの箱
そっとあけると色とりどりの可愛らしい金平糖

「うっわ!何これ!超かわいい!!!」
「・・・」
「ちょーだーいっ」
「・・・」

星夜は無言で蓋を閉めると黙って月夜に背を向ける

「星夜ーぁ!ちょーっとは素直になりなよー?城先輩に連絡してあげるんだよー?」
「お前に関係ないし」

「関係あるよ」と小さく呟いた月夜の言葉は星夜には聞こえなかった
部屋に戻った星夜が金平糖の箱を開くとひとつつまんで口へと放る
甘くて、どこか懐かしいような味。紫色の金平糖を光に透かし、光を閉じ込めるように口へと投げ入れる

プルルとポケットで震えた携帯を取り出すと受け取ったメッセージを表示する

『今日、会えなかったのは残念だった。月夜に預けたものは受け取っただろうか?』

城からのメッセージはいつだって簡潔。それにポチポチと返信する

「バーカ・・・ホント・・・バカだ・・・」

すぐにかかってきた電話を取ると「こんばんは」と聞きなれた声が耳に甘く響く

「なんだよ・・・」
『確かに結婚式の引き出物なんかにも贈られるが、ただ、私は』
「ボンボニエールとか・・・あんた似合わないからな」
『あぁ、だろうな』
「たかが遊びに行くぐらいでなんだよ・・・あれ」

事前に用意してあったのは判っていた。簡単に手に入るものではないのだから

『そうだな・・・別に祝い事・・・というわけでもないが、手土産にイイだろう?』
「・・・怒ってないんだ?」
『今日来なかったことか?怒ることではない・・・というか、最初に断ってくれたらよかった。私が断り辛くさせただろうか?』
「別に・・・ただ・・・」
『あと、聞いただろうか・・・』
「何?」
『私は今、苺華の中でちょっと騒ぎを起こしているだろう?だから、その・・・写真を撮られた』

一瞬目を丸くした星夜だったが、別に自分と撮られたワケじゃないと思いホッとした直後に気付く

「・・・月夜はオレのフリして・・・ピアス・・・青」
『そう。月夜も自分が撮られるのはまずいけれどキミだったら問題ないと・・・問題ないのか?』
「・・・まぁ、あんたとオレ、別に何か関係があるのかっつったら別に関係もなにもねぇし、放っておけばいいか」
『キミがそう言うなら私はキミへの想いは事実だし、あえて誤解だと新聞部へ抗議する必要もナイな』

想い・・・そう言われてまた金平糖を光に透かす
青、紺、紫・・・そして白

まるで星空を表現したかのような金平糖。漆塗りも星が描かれている。嫌でも城が自分へ好意を寄せているのが判る贈り物

「・・・なぁ」
『うん?』
「明日の昼飯・・・」
『リクエストか?』
「そぼろご飯」
『・・・もっと難しいリクエストかと思ったが・・・』
「うっせぇし」
『いや。キミからこうやってリクエストされるのは珍しい。ありがとう。では、そろそろ夕飯だな。切るぞ』
「おう」

電話を切ってため息を漏らす
月夜と自分を見分けたのも
手土産だと渡されたものも

全部自分を見てくれている証拠のようで居場所なんてなくてつまらなかったこの生活に初めてできた居場所のようで・・・ジンジン熱い胸を押さえながらまた金平糖を口へと放った







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

スターサファイア1-8 - 09/27 Tue

trackback (-) | comment (0) | 苺華シリーズ
「ね、オレは星夜の真似して行けばいいんだよね?」

待ち合わせ当日、月夜がそう言って星夜の寝ているベッドにそう声を掛ける

「ん・・・」

月夜が星夜の真似をするなんてのは今まで何度も遊びでやってきた。2人の暇つぶし。話し方を気を付けて耳のピアスを変えたらもう2人の区別なんてつく人はいなくて、つまらない日常を新鮮なものに変えるちょっとした遊び

「星夜、服も借りたからね?」
「・・・」

布団から頭を出すと上から下まで自分の洋服を着た月夜の姿。耳には青い石・・・星夜のものとそっくりではあるけれど、今もまだ星夜の耳についている青い石とは別の石。所謂イミテーション

「ふふ。どう?星夜。鏡があるみたい?」
「眠い」
「ちょっとー!ノリ悪いよー!」

自分のフリをする月夜。でもそれはやっぱり月夜で自分じゃない・・・城と遊びに行くのは月夜。星夜の真似をした月夜・・・

「月夜」
「んー?」
「・・・きまずくなるからキスとかすんなよ・・・」
「えー?それってヤキモチー?ねぇ!やっぱり星夜が行くべきなんじゃない?」
「行かねぇし」
「星夜ーイイじゃん。城先輩と遊びに行くの」

行きたいと言ったのは。城が欲しいと言ったのは月夜じゃないかと思いながら寝返りを打つ

「どうせ、同じ顔ならなんだっていいだろ・・・あいつだって」
「えー?」
「だったら行きたいっつった月夜が楽しめばいい」
「・・・城先輩、星夜の顔が好きだって?」

顔・・・外見のことは何か言われたことがあっただろうか。いや、聞かなくたって判ってる。きっとこの容姿と美化委員で・・・

「まぁ、イイや。じゃあ、時間だし行ってくるね?」
「・・・ってら」

部屋を出て行く音がしてクシャリと髪を握ると頭を抱えるようにして目を瞑った







月夜が待ち合わせ場所に到着するともう既に城が来ていて、目立つ姿に注目を浴びていた

「・・・あんた、かなり目立ってんけど・・・」

顔を上げた城が少し驚いた顔をして辺りを見回す。風紀委員長を突然辞めた理由が謎の城から情報を聞きたい人間も多いはずで、城がキョロキョロとするのに気付いて慌てて目を逸らすような人間も少なくなかった

「・・・で、どーすんの?今日」
「あー、すまない。キミは輝の兄のほうだよな・・・?初対面だと思うのだが」
「・・・は?」

見破られるはずがなかった。親でさえも判らないこの遊び・・・時々本当に自分は誰だったか?と錯覚する程なのに・・・

「・・・そうか。輝は来ないのか」

半ば諦めたような表情でそう言った城は寂しそうに笑って席を立つ

「私は彼に強制したわけではなかったが、やっぱり重荷だったんだろうな・・・すまない。キミにも迷惑かけた」
「あー、なんで?」
「うん?」
「なんでオレが星夜じゃないって?」
「・・・そっくりだけど全然違うけどな?」

全然・・・?月夜の中では完璧に星夜を演じていたのに・・・

「まぁ、わざわざ来てもらったのだから、お茶ぐらいはご馳走させてほしいのだが何にしようか」
「アハ・・・噂には聞いてたけどホント紳士ー!では、お言葉に甘えてお茶ご馳走になりますね」





ひとりの部屋でゲームをしていた星夜だが、ゲームにも飽きてきてゲーム機をポイと投げ捨てるとソファに横になって壁にかかった時計を見る
丁度昼過ぎ。月夜は城と共にゆっくり昼食を摂っている頃だろうかと思うと無性に何か食べたくなって冷蔵庫を漁る

「何もねぇ・・・」

そう呟いた星夜だが、外に出て買うのもめんどくさくて携帯を手にすると月夜にメール文書を打ってそのまま送信せずに画面を消した
月夜がもし今楽しんでいたら・・・と思うとそれに水を差すのも気が引ける

「あー、つまんねぇ」

すっかり星夜の口癖になってしまったその言葉を天井に向かって吐き出すとソファに寝転んで目を瞑った




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

スターサファイア1-7 - 09/26 Mon

trackback (-) | comment (0) | 苺華シリーズ
「ダーメ!星夜戻って来るからおーしまいっ」
「なんだよ・・・どうせ星夜だって知ってんだろ?」
「オレが星夜に見られたくないもん」

見られたくない。でも、聞こえている。そう思いながらネクタイを外すとソファへと投げ捨て、靴下も同じように投げ捨てる
城もこんな風に甘えた声を出す自分を求めているのだろうか・・・いや、無理である。そもそも付き合っていないから今まで通りで構わないハズで・・・

「月夜、好きだよ?」
「えー!ホント?どこが?」
「可愛い顔」
「バカ。顔とか最低だー」
「ウソウソ。全部可愛い。爪の先まで可愛いから」

星夜は何気なく自分の爪を見る。月夜と同じ爪。でも爪はどこから見ても爪であって可愛いとは何だろうと首を傾げた

「あっ!星夜っ!帰ってたの?おかえりー!」
「んー」
「ご飯ちょっと待っててね?」
「んー」

月夜の男となんて顔を会わせたくないから振り返ることもしないで携帯を見ながら操作する。風紀風紀とうるさい城が意外にも携帯端末は持っているらしく、アドレスを交換してからは頻繁にではないが、適当にやりとりを繰り返していた。弁当のおかずは何がイイかだとかこれが食べてみたいだとか・・・あとは今度遊びに行くときどんな所へ行きたいだとか・・・

「星夜ー、今日、オレ勝手にご飯買ってきちゃったけどよかったー?」
「んー・・・」
「怒ってる?」
「怒ってない」
「ホント?」

突然顔を覗きこまれて驚いて顔を上げる

「アハハ。突然だとびっくりするよねー」
「・・・ん・・・月夜・・・」
「うーん?」

DELIで買ってきた総菜を温めている月夜の背中に向かって迷いながら口を開く

「あいつは月夜の好きな奴?」
「え?」

振り返った月夜は驚いた表情で「あぁ、なんでもない」と顔を背ける星夜

「好き・・・かなぁ・・・どうかなぁ・・・」
「・・・判らないのに付き合ってんの?」
「付き合ってないってばー!っていうかどうしたの?星夜がそんなの聞くの珍しい」

確かに。普段、近すぎる存在だからある程度の距離を置いている。それが恋愛の部分だったり、友人の部分だったり。苺華に入る前でも星夜の夜遊びがすぎることには小言を言ってはいたが、それが「誰か」だなんてのはあまり深く聞かなかった

「・・・オレ、今までちゃんと付き合ったことないけど、どこからが『おつきあい』で、どこまでが『おともだち』なんだ?っていうか・・・」
「・・・城先輩?」

微笑んだ月夜に黙り込む星夜

「うっわー。すっごいねぇ。星夜はー・・・難攻不落の城を簡単に堕としちゃったんだぁ・・・」
「んな・・・んじゃねぇけどっ・・・大体、オレはあいつのこと全然好きでもなんともないしっ、ただ、今度遊びに行こうとか言われてるけどそれだって」
「それじゃあ城先輩ちょうだい?」
「え?」

月夜は温め終わった総菜をテーブルに並べると星夜にフォークを渡す

「・・・またパスタとか・・・」
「あー!やっぱり文句言ったぁ!」
「文句じゃねぇよ」
「そう?・・・星夜、それで・・・くれるの?」

月夜の頼み・・・?

頼まれごとは断りにくい。特に月夜相手では・・・

「・・・イイよ」

あげる、あげない。そんなの関係ない。そもそも、付き合っていないし、好きという感情だって城に感じていないから。ただ、居心地はイイ。クラスメイトのようにつまらないわけでもないし、この学園で初めて月夜以外にまともに話せるというだけで・・・

「わー!やったねぇー!オレ、城先輩みたいなタイプとデートとかしてみたかったんだー」

嬉しそうな月夜を見てひとつ頷く。月夜が嬉しそうなら、楽しそうならそれでイイ。きっと城もこんな人当たりのよさそうな月夜のほうが・・・きっと・・・きっと









にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

スターサファイア1-6 - 09/25 Sun

trackback (-) | comment (0) | 苺華シリーズ
城に連れていかれた喫茶室は本当に判りにくい場所にあって、もしまた来ようと思っても来られない気すらした

「春は花見が、秋は紅葉。雪が降れば雪景色・・・だから今は1番空いている時期かもしれないな」
「・・・ふうん」

それでも小さな枯山水があり、雰囲気もイイ。何よりも入った瞬間から香っているお茶の香りが星夜の心を静めてくれる

「そばも美味いけれど、和膳はデザートもつく」
「・・・デザート何?」
「今日はあんみつだそうだ」
「ふーん・・・なぁ、そのデザートメニュー見せて」

城は食事のメニューを閉じると立て掛けてあったデザートのメニューを渡す

「・・・あ・・・あー・・・そうかぁ・・・んー・・・」
「どうした?」
「なんでもない」
「食べたい物、見つかったか?」

別に今更、隠すことでもないけれど嫌いなものを知られるのと同じように好きな物を知られるのは弱みに思えて好物から目を逸らす

「和菓子はなぁ・・・なかなか作ることができない」
「言ってねぇし!」
「あぁ、そうだな。でも、キミが喜ぶ姿が見たい」

ニコニコとする城にデザートメニューを突き返すと食事のメニューを見ながら「天ぷらそば」と言うとメニューを閉じた
城が店員を呼ぶと注文を伝えた後に

「デザートにいもようかんを2つ」

そう言って「っ!!!」と声にならない叫び声を上げる

「うん?あぁ、キミの視線と今まで弁当に入れた好きそうなもので予想してみたが、当たったか」
「・・・クソ・・・」
「なぁ、輝・・・」
「あぁ?」
「・・・今度、一緒に」
「お待たせしましたー。天ぷらそば2つお持ちしました」

城が何か言いかけたときに店員が天ぷらそばを持ってやってきてホッとする星夜
あれはきっとデートの誘い。付き合っていないし、付き合うつもりもないのに誘われて断ればイイに決まっているのに断ることができるのか不安だったから

「いただきます」

手を合わせた星夜に城も同じく手を合わせて「いただきます」そう言った後、そばを啜る音だけが響いていた






食事の後に出てきたデザートに震えながらいもようかんを堪能する星夜

「・・・私のも食べるか?」
「い・・・要らねぇし」
「そうか・・・持ち帰り用のもあるぞ?」
「っ・・・要らない」

城が笑いながら「そうか」と言うと切ったいもようかんを口へ運ぶ

「うん。美味いな・・・」
「・・・笑わないんだな」
「何を?」
「オレ、まぁ、自分で言うのもアレだけど見た目派手じゃん。和って似合わないだろ」
「食の好みは見た目とは関係ないだろう」

確かにそうなのではあるが、自分が食べるよりも城が食べている方が明らかに似合っていて・・・

「というか・・・今、私は笑うとか余裕なんてない」
「ん?」
「喜んでいるキミがあまりにも可愛く見えて心臓が爆発しそうだ」
「・・・バカかよ・・・」
「輝、苺華は遊戯施設も揃っているだろう?だから、今度、今度・・・一緒に遊びに行こう」

言われた・・・やっぱりデートの誘い・・・目を伏せると頭を引っ掻く

「あぁ、身構えなくてイイ。友人同士のそれだ。別に・・・その」
「っ・・・」

友人同士。そう言われてますます断りにくくなる。その前に自分たちは友人だっただろうか?先輩と後輩の間柄でもない。いや、確かに学年は違うけれど委員会は勿論、部活も何も関係がない学校が同じだけの先輩と後輩

「普段休みは何をしているんだ?」
「・・・寝てる」
「ずっと?休み全部?」
「まぁ、パーティーに今でも親から呼び出しかかることあるからそれがあれば帰るけどな」
「・・・そうか・・・」

そう。だからつまらない。ずっと苺華学園での日々がつまらない。ゲームセンターもあるし、小さいけれど映画館もある。カラオケもあるし食事をする場所だってあちこちにある。でも、面白いものなんて何もなくて、一緒に遊んで楽しい相手も誰もいなくて・・・

「じゃあ、これから楽しいことを一緒に見つけないか?」
「・・・なんだよ楽しいことって」
「例えば・・・苺華は広いだろ?道に迷って迷子になるなんて聞く話だし、ここのように隠れた名店も多い。一緒に美味しいものを食べたり、見たり・・・探そうじゃないか」

確かにここは連れてきてもらわなければ高校3年間知らずに終わっていた場所・・・
楽しそうな提案に思えていつのまにか頷いていた






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

スターサファイア1-5 - 09/24 Sat

trackback (-) | comment (0) | 苺華シリーズ
昼休み、最近ずっと学食でも購買でも見かけなかった星夜の姿を見かけて一緒にいた相手に断りを入れ、星夜の肩を叩く月夜

「どうしたの?めずらしいー」
「・・・まぁ、たまには」
「っていうか今までお昼どうしてたの?っていうか友達と食べないの?」

ここで一緒に食べる友人なんていない。そう答えたら月夜を心配させるのかと思いながら「ひとりになりたい」と呟くとあまり好きではないランチをつつく

「・・・星夜、オレのクロワッサンサンドと交換しようか」
「え?」
「星夜さぁ・・・なーんで今日Cランチにしちゃったのー?Bランチだったら和食だったのにー」

星夜の目の前にあるドリアを自分の元へ引き寄せてその代わりに手に持っていたクロワッサンサンドを星夜の前に置く

「和食は・・・要らない」
「え!どうしたのそれ!体調よくない?」
「・・・オレ、毒されてきた・・・学校辞めたい」
「ええええ?!なにそれなにそれっ!それは許さないけどっ!話なら聞くよ?え!っていうかホント・・・大丈夫?」

きっとこんなに学食を美味しく感じなくなったのも、本当は和食が食べたいのに城の和弁当に毎日慣らされた舌が学食の和定食なんて食べたいと思わせなくなったのも。男に好きだと言われても悪い気しないのも双子の兄に嫉妬してしまうのも全部全部苺華学園にいて毒されて来たから・・・

「星夜、何があった?」
「・・・なんでもない。パン、ありがと」

そう言ってクロワッサンサンドを持ったまま席を立った星夜を追うべきか悩んで今はそっとしておいたほうがイイのだと立ち上がりかけてまた座って途中のランチの続きを楽しむ
星夜に何かあったとしたら最近噂になっている城とのこと・・・でも、難攻不落の城と呼ばれる城と星夜が・・・?そう考えるとあり得ないと首を小さく振った








それから2週間が過ぎた頃、苺華学園全体を騒がせる事態が起こる

「ちょ!ちょちょちょっ!星夜っ!起きてっ!」

その日、月夜にたたき起こされた星夜は寝ぼけたまま月夜の広げた苺華学園内で配られる新聞をぼーっと見つめ大きな見出しと見覚えのある写真に目を覚ます

「・・・」
「聞いてた?」
「・・・関係ないし」

再びベッドへ倒れた星夜を何度も何度も揺するけれどなかなか布団から出てこないから諦めて再び新聞を広げる
一面に載った城の姿
任期満了前に風紀委員長の座を降り、風紀委員を辞任したという前代未聞のできごと

苺華始まって以来の風紀委員長らしい風紀委員長が突然の辞任。それと最近星夜の元気がないのはやはり関係していたのかとコーヒー片手に休日の朝を過ごしながら今日は誰とデートだったかと携帯のスケジュールをチェックして身支度を整える

「星夜ー!休みの日、寝てるのはいいけど寝すぎたら余計体だるくなるからね!じゃあ!夕飯も要らないから適当に食べてっ!」

部屋を出る前に星夜の部屋にそう声を掛けるとカバンを持って部屋を出る

トントン

部屋のドアが叩かれている音が聞こえる。月夜がいる・・・そう思いながらベッドの中で目を瞑ると繰り返されるノック音
そういえば、さっき月夜は出て行ったのかとベッドから体を起こすと下着のままドアを開ける

「・・・」
「・・・はぁ?」
「あー、すまない。起こしたか」

そこにはさっき新聞で見せられた話題の人がいて寝癖でくしゃくしゃの髪を更にクシャクシャと引っ掻く

「なんであんたが・・・」
「今日は部活も騒がしいから来るなと言われてな・・・」
「そりゃー・・・そうだろうな」

だからと言って何の用だと思いながらドアを預けて「入れば」と言うと頭を下げながら玄関で靴を脱ぐ城

「失礼します」
「んー」

広い部屋。起きたばかりの星夜はまだ眠そうにソファへ寝転がる

「何か着たほうがいいんじゃないか?そしてもう昼だ」
「んー」
「・・・寝起きが悪い方なんだな」

そう言って少し苦笑した城は上着を星夜に掛ける

「何・・・」
「まぁ・・・なんだ・・・キミに惚れている男と2人きりなんだ。警戒しろというわけではないが」
「あんたオレに欲情するっつーの?っつかお前も性欲あんの?」
「そっ・・・りゃあ・・・というか、今日はキミにちゃんと伝えられると思ってきた」
「・・・」

城に掛けられたシャツを城に投げつけると自室からシャツを羽織って出てくる

「風紀委員を辞めた今ならキミに告白してもイイだろう?」
「・・・」

やっぱりそれで風紀委員を辞めたのだと思うと唇を噛む
自分が風紀委員の癖にと言ったからどこから見ても城に向いていた城に以上に向いている人間なんていないのではないかと思う風紀委員を辞めた・・・自分が辞めさせた・・・

「オレは辞めろなんて・・・言ってない」
「あぁ、もちろん。でも、私は自分の気持ちに嘘をついて生きていくのは嫌だし、風紀を乱すことになってもキミを求めるこの心を誤魔化せない。辞めると決めたのは私だ。好きだ。好きなんだ」

真っ直ぐな瞳に嘘なんてなさそうな言葉。でもだからこそ苦しくて痛い

「好きで・・・何だよ・・・風紀委員辞めたから告白できるようになって付き合えるって?ねぇよ!大体オレは男と付き合う趣味なんてないしっ」
「あぁ、もちろん判っている」
「じゃあ・・・なんだよ・・・」
「そうだな・・・理解してほしいというわけでもない。受け入れてほしいわけでも・・・いや、受け入れてほしい。欲を言えば。でも強制するわけではないし、ひとりの男がキミを愛しているということを知っていてほしい・・・今はそれだけだ」

愛して・・・?

誰を・・・?

月夜じゃなくて自分を・・・?

「知って・・・オレにどう言えって・・・?」
「何も要らない。あぁ、でも・・・もしキミがイヤじゃなければ以前のように昼食を一緒にどうかな」
「・・・」

昼食・・・星夜の好みのものばかり並ぶあの弁当が忘れられない

「あぁ、その前に今起きた所なら一緒にどこか飯でも行こうか」
「あんたの学生カード・・・限度額幾らだよ」
「うん?」

苺華での決済方法は大体が学生カードで。校外発注のものはクレジットカードや現金対応だが、学園内にあるカフェや食堂、DELIといった場所では基本、学生カード支払いでそれは保護者のところへ請求が行くもの。富裕層にいる生徒の多くは限度額がないもので、物を買うときに値段なんて気にしなくてよく、食べたい物を食べ、欲しいものを幾らでも買える。月夜と星夜も同じく限度額が決められていない無限に使えるカードである

「限度額・・・まぁ、店のものを全部買い占めたりしなければ使える程度だ。中等部との間にある苺華の森の途中に日本庭園を模した喫茶があるのだが、そこはどうだろう?軽食もあるし、少し判りにくいからか混んでない」

城の言葉に「へぇ?」と頷きながら下着の上にデニムを履いた






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

スターサファイア1-4 - 09/23 Fri

trackback (-) | comment (0) | 苺華シリーズ
その日、いつもの風紀委員室ではなく裏庭にある花壇の前で昼食にしようと呼び出された星夜はその通りに昼休み、裏庭の花壇の前に足を向けた

「花の植え替えがこの間あったらしくてな。キミにも見せたかった」
「ふぅん」

花壇の前に広げられたシートに腰を下ろすと弁当を開けて「いただきます」と言って箸を持つ

「私は、ここで初めてキミを見かけたんだ」
「あぁ?あーそう?」

確か突然腕を掴まれたんだったと思い出しながら適当に返事をしながら今日の煮浸しは少し味が薄いのではないかと思いながら咀嚼する

「最初、キミが花壇の花を踏み荒らしているのだと思い、注意をしようとしていたんだ」
「はぁ?んなことしてねぇし」
「あぁ。違った。花を踏まないように気を付けながらゴミを片付けたキミは踏まれた花を労わっていた」
「っ!?」

あの時の記憶が蘇る。確かにゴミが花壇の奥に落ちているのに気付いてそれを片付けようと花壇に足を踏み入れた。そして踏み荒らされた花を見てなんとか直らないかと折れた花の茎を直そうとした・・・その一部始終を見られていただなんて思ってもみなくて恥ずかしくて唇を噛む

「私はそんな優しいキミを知っている。週に2回の美化委員の見回り以外にもゴミを見つけたらそれを近くのゴミ箱へ捨てに行くのも知っている。弁当の米粒ひとつ残らず食べてくれるのも知っている」
「な・・・何が言いたいんだよ!あんた、ストーカーかよ・・・何見てんだよ・・・」

それが今の星夜にできる精一杯の悪態で・・・それでも目を細めて笑った城が正座して頭を下げる

「キミを見ていない輩と一緒にしないでくれ。私は、私はまだまだ知らないことも多いが、キミを知っている。見ている」
「っ?!・・・何してんだよ・・・」
「好きだ・・・これが不自然な形なのは重々承知。だが、先日キミに無礼なことを言った輩と一緒にされてから毎晩苦しくて上手く眠ることもできないんだ」

一緒にしたことでそんなにも悩んでいたなんて・・・そう思ったけれどそれは月夜に会っていないから。月夜を知らないから。いや、それ以前に自分は男と付き合うことなんて考えることだってできない。だが、居心地がよくて学園内のどのDELIよりも自分好みの和食弁当を食べさせてくれるのは城だった

「ば・・・バッカじゃねぇの?オレ、美化委員だしっ、んなゴミぐらいでオレのコト知ってるとか・・・」
「風紀委員でも美化委員でも、誰かが見ていないところではゴミが落ちていても何もしない。でも、キミは優しくてイイ人間だ・・・なによりも」
「黙れっ!」

星夜の言葉に城は口を噤む

「だ・・・大体っ、お前っ・・・風紀を乱す行為だとか風紀風紀言いまくってんのにっ・・・それは!今、言ってるのは・・・風紀を乱す行為にならねぇのかよっ」
「っ?!」

自分を知っている。自分を見ている。そんなの月夜を知らないから。誰にも伝わらないその嫉妬心はそんな言葉になって星夜の口から飛び出した

「すまない・・・黙る・・・から・・・弁当はそのまま食べてくれないだろうか」
「・・・」

箸を置こうとした星夜にそう告げると星夜は黙って弁当を食べ続ける
気まずい空気。城は正座したままだったし、星夜も段々弁当の味が判らなくなる

「・・・明日から弁当要らねぇし・・・」
「あ・・・何か嫌いだったか?」
「煮浸し以外は美味かった!でも・・・あんたも嫌だろ・・・」
「・・・」

空にした弁当を置くとすぐに立ち上がった星夜は足早に裏庭から立ち去って行った
どうせ自分なんて誰にも見られない。惚れた腫れたなんて月夜を知らないから・・・月夜を知ったら・・・

そっくりな双子の兄にこんなにも嫉妬しているのはなぜなのか・・・判らないまま星夜は自分の教室を目指して歩き続けた







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

スターサファイア1-3 - 09/22 Thu

trackback (-) | comment (0) | 苺華シリーズ
難攻不落の城と言われる城に理由も判らず好かれた星夜はどこがクールでとっつきにくいと言われているのか判らない程、城に事あるごとに構われ、誘いを受ける

「・・・で、なんでオレはあんたと一緒にゴミ拾いしてんだよ」
「私も見回り先が同じなだけだ」

週に2回ある美化委員の見回り当番では必ず城が一緒について回る。一緒にいても別に邪魔にはならないし、ゴミを集めるときも手伝ってもらえることの他にめんどくさい輩に話し掛けられないのも星夜にとっては利点だった

「あ、キミたち!ゴミはゴミ箱へ!そしてなんだ?その制服の着方は!」

時には『風紀を乱す者たち』を見かけ、すぐさま説教をし、反省文を提出しろと罰を与えているのを見て本当に皆、反省文を提出しているのかと首を傾げた

「星夜」
「あ?」

城が説教をしている間、近くのゴミを拾い、落書きを見つけたから後でこれは報告が必要なのか・・・と考えている時名前を呼ばれて振り返る

「なぁ、月夜は予定がびっしり埋まってるって噂だからさー、お前でいいやーって」
「はぁ?」
「イイだろ?お前は暇そうじゃん」
「・・・暇そうに見えるか?今すげぇゴミ拾ってる」
「ふはっ!真面目ちゃんでイイ子だなぁ。星夜ぁ」

こんなことは星夜にとって日常茶飯事。男と付き合っている月夜。その月夜と同じ顔をした自分でイイ。そう言い寄って来るめんどくさい人間は少なくなかったのだ

「なぁ、イイだろ?お前の欲しいもん買ってやってもイイしさぁ」
「オレが欲しいもん買えない貧乏人だと思ってんの?バカじゃね?金に困ってりゃすぐにこのピアス売り払って金にしてんだろーが。っつか邪魔。そこのゴミ拾いたいんだけど」
「酒とかタバコとかオレのルートなら余裕で持って来てやれるって」
「お前ごとゴミ袋に入れたほうがイイな・・・お前もゴミっぽいし」

星夜の言葉にカッとした男が星夜の胸倉を掴んで引き寄せる

「なんだよ」
「可愛い顔してる癖に口が悪すぎる。お前」
「離したまえ」
「あぁ?」
「彼は嫌がっている。離せ。そして、謝れ」

星夜の胸倉を掴んだ腕を掴み、星夜から引き離したのはいつの間にか戻ってきた城。別に自分の身ぐらい自分で守れるのにと城を睨んだが、城は男を睨んだまま視線を離さない

「・・・っち・・・星夜、お前、風紀委員長の雌だったのかよ・・・」
「今の言葉も謝れ」
「いい加減手離せよ!てめぇなんか簡単に寮から追い出すことだってできんだぞ?あ?」
「あぁ、覚えておく。だが、キミの素行を調べればキミの方が学園から出て行かねばならない問題がたくさんありそうだ。生徒会にそう進言してもいいのだが?」
「・・・クソが」

ペッと唾を廊下に吐いた男が城の手を振り払って背を向けて歩いていく

「・・・クソ。仕事増やしやがった。あいつ」
「あぁ、今日は私も手伝えたらと雑巾を持ってきた」
「・・・準備イイな」
「そうだろう?」

そう笑った城が何も言わずに屈んで汚された廊下を拭き取るとすぐに笑顔を星夜に向けて「さぁ行こうか」と言うと星夜は「別に一緒に行きたいわけじゃねぇよ」といつものようにゴミ袋を引きずりながら空いた手をポケットに入れて歩き始めた






「輝、さっきのようなことは以前もあったな」
「あー?あぁ。月夜の代わりにしたいんだろうな。あいつと同じ容姿ならなんでもイイんだろ」
「だが、キミはお兄さんとは違うだろ」

違う・・・?違う。女性相手には優しく笑顔も作れるけれど、他では社交的でもないし、友好的な笑顔なんて全然作れもしない

「あぁいう奴らは月夜と同じ顔と体があればイイんだろ・・・」
「・・・何故?」
「あ?」
「キミのことを知らないで付き合いたい・・・そんなのはキミに対して不誠実すぎるじゃないか」
「ふはっ・・・あんただってオレのコト知らないのに付き合いたいとか言ってんじゃん」
「それは違う」

城の言葉が下校時間で人気のなくなった廊下に響く

「私は・・・あぁ、同じに見えても仕方ないか・・・だが、私はキミが好きなのであってキミのお兄さんやキミの容姿だけが愛しいと思っているわけじゃない。輝 星夜という1人の人間に心奪われてしまったんだ」

城のクサいセリフなんてもう毎日のように聞いていて、飽きてきた。でも、知っている。きっと兄を見たら自分と見分けがつかないに決まっているし、兄と話せば兄のほうに皆、惚れるのだ・・・パーティー会場で男同士で仕事の話題について行けないと思った暇そうにしていた女性たちとは違う。城のように高尚な話題を好む人間なら確実に月夜を好きになる・・・だって、同じ容姿で中身も完璧なのなら自分だって中身も完璧な方を選ぶから







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

スターサファイア1-2 - 09/21 Wed

trackback (-) | comment (0) | 苺華シリーズ
結局校内の隅々まで美化点検をさせられて足が棒になったようだと思いながら星夜が部屋に戻るともう部屋からイイ匂いがして来て夕食を月夜が用意してくれたことに気付く

「おかえりー。美化委員お疲れ様」
「・・・ん」
「ね!今日、星夜の好きそうな和食にしてみたよ?」
「・・・あ、これ」

夕食は簡単なキッチンで作ることもできるけれど寮住まいじゃない生徒の多くは学園内に点々と存在するDELIと呼ばれる店で食事を購入する

「買えたのか」
「まぁ、コネ使ったー!」

笑顔でそう行った月夜がテーブルに並べた豚の角煮と根菜の煮物。そしてほかほかと湯気をあげる白米に味噌汁
DELIとは言ってもよくあるスーパーの総菜とは違う。老舗の日本料亭の料理や三ツ星レストランの料理が並ぶDELI。そして今日の豚の角煮は月夜も星夜も行ったことのある日本料亭のもので人気があってなかなか買えない代物

「ホンット星夜って和食好きだよねぇ?女の子と派手に遊ぶときは散々フレンチとイタリアン荒らしてたくせに」
「うっせぇ・・・」
「ううん。バカにしてないよー?星夜も星夜なりに頑張ってたんだもんねぇ・・・でも、ここは父さんや母さんの目もないんだから肩肘張らずに生活していいんだよ?」

星夜は黙って服を着替えると手を洗って椅子に座る

両親が頭を痛めていた夜遊びだってただ単に遊んでいただけじゃない。ちゃんとコネクションを作って父の仕事につなげるために貢献したつもり。尤も、夜遊びしてくれる相手は父の仕事にとって大きな利益になることはなかった為、堅実にパーティの華になり著名人たちと繋がりを作って行った月夜に敵わなかっただけ

「あ、なぁ。月夜、城って知ってる?」
「うん?城?もしかして難攻不落の城のこと?」
「なんだよ・・・それ」

月夜が言った言葉に思わず吹き出した星夜にお茶を出した月夜が「二つ名だよ」と言いながら微笑む

「長身で美形。剣道部の鬼神。文武両道そして風紀委員長の城 健次郎でしょ?」
「・・・風紀委員長だった」
「すごい頭もいいし普段は優しいし、容姿もイイからモテるんだけど誰にも靡かないんだー・・・あの人。それどころか校内で告白すると「風紀を乱す行為だ」とか言って罰則与えてくるって言うなかなか酷い人」

それを聞いてふふっと笑い出す星夜。あまりにも今日一緒に見回りをした城の言いそうなことだと思ってのコト

「えー・・・っていうか珍しいね?星夜がそんなこと聞いてくるの!何?惚れたとか?」
「お前と一緒にするな」
「あ、オレ興味ないない!確かに見た目イイけどあの人寮住まいだしプラスになることないもん」
「・・・そういう意味で言ったんじゃねぇし」

見た目だけならタイプなのか・・・?と思いながら舌の上で蕩ける角煮を楽しむ

「ねーねぇ、星夜ぁ」
「なんだよ」
「オレ、頑張ってお前の好きな角煮買ってきたじゃん?」
「コネ使ったっつったよな・・・」
「それでも頑張ったことには変わりないじゃーんっ!だからぁ・・・今日別の部屋にお泊りしてきてもイイよなぁ?」

月夜が手を合わせて擦り寄って来るから自分の好物が並んでいたのはこのお願いのためか・・・そう思いながらため息を吐く
寮でも行われる点呼は学生マンションでも同じ。セキュリティ対策で夜間は特別な申請がなければ全ての部屋がロックされるのは勿論、各フロア、マンション全てがロックされる苺華学園のシステム
その点呼を抜け、別の部屋へと行けるのは双子で顔も声もそっくりな双子だからこそできること・・・

「なぁーなぁー・・・今、すげぇの落としたところなんだってばぁ」
「・・・っつか今日、校舎裏で見た。っとにやめろよ。城、誤魔化すのに大変だったんだぞ」
「え!風紀委員長に見つかってたの?」
「そう!たまたまオレがそこにいたからお前助かったのっ!だから大人しく」
「でっきなーいっ!もう約束しちゃったもーんっ」
「・・・クソ。バカ」
「あー、ほらほらっ!デザートも用意してあるからっ!」

目の前に出てきた有名店の芋ようかんを見てまた口を閉じる

「大好きだったよね?この芋ようかん!」
「・・・」
「よろしくね?」
「・・・」
「大好きー!星夜ー!」

月夜に抱きしめながら芋ようかんで許してしまう自分を心の中で罵った








「輝 星夜くんはいらっしゃいますか!?」

昼休み、突然現れた風紀委員長にクラスがざわめく。きっと星夜が何かやらかして呼び出されているのだと

「・・・何?」
「ご同行いただけますか?」
「どこへ!」
「では失礼しました」

星夜の腕を掴むとクラスへ頭を下げた城に連れ去られていくのを見ながら星夜のいなくなった教室では飲酒か喫煙だろうと普段の生活態度から予想され、噂されているだなんて星夜は考えもしなかった

「・・・で、何?」
「昼ご飯はもう召し上がったかな?」
「まぁ、購買でパン買った」
「パン!・・・そうか・・・実は弁当を用意してきたのだが、先に言えばよかったな・・・」
「はぁ?弁当?」

城は頷き、風紀委員会のドアを開く

「・・・何?風紀委員長の特権っつーわけ?」
「あー、いや、風紀委員ならばここで昼食を摂ることはよくあるのだが・・・」
「オレ、風紀委員じゃねぇし誰もいねぇけど?」

城は頷いて少しだけ笑う。自分がここで昼食を摂るようになってからは他の風紀委員がここへはやってこなくなった気がするから。きっとあまりにもうるさく言う自分に嫌気がさしたのだろうと思いながら

「それでー?弁当ってどこの?」
「どこの・・・とは?」
「あんたの寮の食堂かなんかの?」
「いや、私が作ったのだが・・・」

星夜は吹き出すとケラケラと笑い出す

「あんたが?!マジで?!エプロンして?」
「・・・そうだが?」
「ぶはっ・・・すっげぇ!似合わねぇしっ!っつか食えんの?!それっ!」

城は目を伏せて弁当箱を開くと色とりどりの中身に星夜はゴクリと生唾を飲み込む
それは和を基調にした弁当・・・

「口に合うかは判らないが・・・」
「・・・メシに罪はないな・・・」

あとは味。いくら見た目が良くても・・・とまず炊き込みご飯を口にすると口に広がる香りのイイ貝柱の香りに感動し、煮しめや焼き魚を次々に口へと運んでいく

「・・・どうだろうか」
「美味い・・・」
「よかった。寮住まいでは好きな物ばかり食べがちになるからな。体を壊すといけない」
「・・・どこで・・・作ったんだよ」
「食堂の調理室をお借りした」
「ふーん・・・」
「キミは言葉はあまり感心できないが、やはりイイ育ちなのだな」
「はぁ?」
「食べ方もキレイだ」

真っ直ぐ見つめられて「うっせぇ」と悪態を吐くと弁当をきれいに食べる

「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」

笑顔で空にした弁当を再び包むとカバンへしまった城と膨れた腹を撫でる星夜

「また、作って来てもいいだろうか?」
「あー?要らねぇし」

そんなことをしてもらう義理はないし、借りを作るマネはしたくない

「・・・口に合わなかっただろうか」
「なんで・・・んなことしてくんの?別に弁当作って来いとか言ってないだろ」
「そうだな・・・私がしたくてしたことだ」
「オレ、あんたとは昨日初対面だし、友達でもなんでもねぇだろ」

そう。たった数時間。校内を見回りし、ゴミを片付けただけ。ただそれだけ

「私はキミに一目惚れしたようだ。そう昨日言ったのを覚えているだろうか」
「あー?何の冗談」
「冗談ではない。本当に・・・キミの美しい心に心を打たれたのだ」
「ふざけんなよ。オレは男に興味ねぇから」

双子の兄、月夜が男と付き合うのは有名。だから弟の星夜も大丈夫なハズ・・・そう思われ、告白をされたこともあったけれどそれは大きな間違い。双子で何もかもがそっくりだけれど性格も性癖も違う。双子だけれど同じではない

「あぁ、すまない。不快だったな・・・だが、私は簡単に諦めるな。そう両親から育てられている。簡単には諦められはしない。まずは友人からでもいいのだ」
「まずはってなんだよ!まずはって!」
「友人になり、そこからまた友情、愛情を育んで」
「ねぇよっ!」

城がふふっと笑って「冗談だ」と言うと立ち上がりドアを開ける

「キミと一緒にいると今まで感じたことがないような心の歓びを感じてしまうからどうしてもキミとの時間が欲しいんだ。さぁ、間も無く予鈴が鳴る。教室へ戻ろう」

どこから見ても堅く、『難攻の城』と呼ばれるのも納得がいく風紀委員長が冗談でこんなことを言って、しているとも思えなくてただモヤモヤとしながら星夜は教室へ戻って行った








にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more