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ビタースウィート31 - 10/31 Mon

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クリスマス当日、恋人がいる者はなんとか早く仕事を切り上げて恋人とのデートを楽しもうと思っているからかどこか皆浮足立った1日・・・

「真山くん真山くん」
「なんですか」

終業時間が過ぎた頃、椅子のまま移動して真山の近くへ来た溝端がパソコンから顔を上げようとしない真山に話し掛ける

「今日、桜山の部屋で飲もうって話になってるんだけどどう?」
「なんでオレが」
「いやぁ、彼女いない独身男ばっかり集まってさぁ、彼女いなくても楽しいぞーっていう」
「さみしっ」
「えー、1人で部屋に居る方が今日はなんか病みそうなんだもん」
「そもそもオレに彼女いないとかなんで決めつけてるんですかね」
「え?!・・・えっ?!」

溝端は2回尋ね直す

「え、だって・・・真山くんって休みの日も仕事しかしてないイメージ」
「・・・」

確かにそれは間違っていない

「だからって予定がない前提で聞くのって失礼だと思いますけど?」
「よ、予定・・・って・・・真山くん友達いるの?」
「何なの?オレには恋人も友達もいないっていう決めつけ」

真山がパソコンから顔を上げるとすぐに目を逸らし俯きながら「ごめん」と呟く溝端
恋人も友達もいない。そう見えているのは正しい評価。実際、恋人は勿論、友達と呼んでいい相手なんていないから・・・でも、今日、声も掛けられないのは寂しいだろうと思われているのは無性に腹立たしい

「今日は・・・」
「真山くんはねー、ボクと約束してるんだよ」

突然、山本の通る声がフロアに響いて話題に参加していなかった社内全員が似たような驚きの声を上げ、帰り支度をしていた者までが真山を見る
松島以外は真山が山本と同居しているだなんて知らないし、クリスマスを一緒に過ごすだなんて理由が思い浮かばないから当然の声

そして誰かが思いついたように「仕事の予定とかそういう」と呟いたのが聞こえると皆が納得し、真山に向けていた視線を興味なさそうに下げたが、山本はそれも否定する

「帰ってチキン食べてケーキ食べる予定だよねぇ」

真山は黙っていろと言うような視線を山本に送るけれど、それをニコニコといつもの笑顔で返されてすぐに視線を逸らす
次の瞬間には山本は真山となぜクリスマスを過ごすのかとそんな質問をする社員に囲まれていて、それをバカみたいに正直に答える山本に苛立ちを感じる真山

「じゃ、じゃあ!じゃあっ!社長も暇ってことですよね?!」
「んー?だから真山くんと」
「いや、真山も一緒だったら社長も一緒に来たらいいですよね!?」
「えー?それ、ボクの財布当てにしてるでしょ?」
「そりゃーもちろんっ!」

山本は苦笑しながら「真山くんとの予定が先だからなぁ」と言うけれど、桜山に圧され、いつの間にか山本の部屋で皆集まることに話が決まっていく

家主の山本が決めたのならば真山は口出す理由もないけれど、苛立ちを感じてしまうのは密かにクリスマスを山本に一緒に過ごそう。そう言われた時からずっと楽しみにしていたから・・・
2人きりで。好きな人と過ごす穏やかなクリスマスをずっとずっと・・・楽しみにしていたから・・・





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ビタースウィート30 - 10/30 Sun

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「クリスマスはどうする?」
「・・・はい?」

年末の忙しさは半端ないものだったけれど、忙しくても山本と暮らし始めてからは2人ともまともに家で寝るようになった。そんなある日、山本は真山にそう尋ねる

「えーっと、真山くん予定ある?って聞きたかった」
「予定も何も仕事でしょう?」
「あー、その夜の話」

クリスマス・・・流石に立花も年末はあちこち飛び回らなくてはいけないらしく、年内は無理だなぁ。と前回散々泣かされた後にそう言われた
だから年内は平和なのだと思うと同時にまた年が明ければ・・・という恐怖が襲ってくる。先日、元木に連れ去られた罰としてヘソのピアスのゲージは上げられてスラックスが擦れる度にまだ違和感と痛みを感じる気がするし、きっと次は乳首もされるのだと思うと逃げたくて仕方ない

「なんですか?チキンでも一緒に食べてケーキ食べて?」
「プレゼントとか開けたりして?」
「そんな金ないですけどね」

真山の言葉に山本が笑う

「交換じゃなくてボクがあげたのを真山くんが開けるんだよ」
「・・・なにそれ」
「だから、真山くん、何か欲しいものない?」

真山は少し考えて「お金」と答えたのを山本は「やっぱりー」とため息を吐くと困った顔で考え始める
何を考える必要があるのか判らない。そもそも、自分は山本になぜクリスマスプレゼントを貰うことになっているのかが判らないから

「少し考える」
「いや、考えるも何も・・・」
「あ、うん。判ってるよ!真山くんの恋人に勘違いとか嫉妬されないものだよね」

恋人・・・

まだ立花が恋人じゃないとは知らない。山本に立花とどういう関係なのかだなんて説明し辛いから・・・実際、どんな関係なのか自分でもよくわかっていないし・・・







山本がウキウキとプレゼントを悩んでいる姿にため息を吐く松島。折角久し振りにいつもより早く帰ることができるというのに何故か山本に無理矢理連れられて深夜までやっている量販店へ来て山本が年甲斐もなくはしゃいでいる姿を見るハメになったのだ。仕事を終えてからのため息がもう20回超えていてもおかしくはない

「松島松島ぁー」

呼ばれてハイハイと顔を向けると「うさ耳ー」と言いながらうさぎの耳のカチューシャをしている山本がいてまたため息を吐き出す

「なぁ、何しに来たんだよ」
「真山くんはなんだったら喜ぶかなぁーって」
「はいはい。んで、候補はなに?」
「音楽プレイヤーとかはさー、真山くんすぐに売りそうじゃん?パソコンは前にオレの古いの貸してっていうから新しいの買おうか?って言ったら必要ないって言われたしー洋服も必要ないって前に言われたし」
「・・・お前、あいつをどうしたいんだよ」
「なんだろ・・・あしながおじさん的な?あー!そう!あしながおじさんっ!いいねぇ。夢じゃん。なんかそういうの」

それが夢だなんて随分乙女チックな発想・・・そもそもその結末を知っているのかと山本に問いたくなる

「あ・・・すっげ・・・」
「あー、これこそ昔からの夢じゃね?」
「・・・うん。これにしよう」
「は?」
「これにするわ」

山本は大量のお菓子が詰め込まれた大きな大きなサンタブーツを手にするとニコニコとレジへと向かっていく。真山は確かに年下だけれど、いくらなんでもそれで喜ぶ年じゃない気がしたけれど山本が満足そうにしているから何も言わず山本について店を出た






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ビタースウィート29 - 10/28 Fri

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旅行の部屋割りが真山と溝端が同室だったのに突然真山と山本が同室になったことで山本と同室の予定だった松島が溝端と同じ部屋へなったことを聞いて溝端が取り乱す

「なんで?!なんでですか!?」
「オレに聞くな」
「社長は・・・なんで」
「新入社員ともっと友好を深めてもいいかなぁって思って?」

溝端が唇を噛みながら山本を見つめる。自分が新入社員の時はそんなことしなかったじゃないかとでも言いたいような表情に松島が口を開いた

「憎たらしい上司を上司とも思わないような奴だからなぁ・・・あいつは」
「・・・でも」
「溝端くん、今日お昼一緒に行こうか」
「え?」
「何がいいかなぁ・・・ボクは魚が食べたいなぁ」
「あ、はい・・・」




昼休み、店に入った山本と溝端。溝端は何を言われるのかとビクビクしながら山本が割り箸を割るのを見ていると笑顔の山本に割り箸を渡されてそれを受け取る

「溝端くんともちゃんと話さなくちゃなぁって思ってたんだよね」
「・・・」
「溝端くん、会社辞めたい?」
「え?」

余りにも直球で聞かれて溝端は箸を落とす

「辞めてどうするの?また結局プログラマーとして再就職?」
「・・・」
「じゃあ、うちにいたらいいじゃない?」

辞める・・・気はない。コミュニケーションがうまく取れない溝端がここまで長く勤められたのもきっとここだから。それは判っているけれど、自分を求めてくれるところがあるならばそこへ行きたい。いや、逃げたいような気持ち

「溝端くん、成長したよねぇ・・・すごい成長した。でも、まだ成長できるのにまた溝端くんを知らないところに行ってイチからとか勿体ないし」
「成長・・・」
「三崎に来ないかって言われたんでしょう?まあ、彼女は人を使うの上手いから溝端くんを上手く使うんだと思う。溝端くんも楽しく仕事ができるかも。でも、使われるだけ」

それでも自分を欲しがってくれているのならば・・・と思うこともあって

「今は溝端くんの手に余るかもしれない。でも、もっと溝端くんが頑張れば真山くんやこれから来るかもしれない社員を使う人間になれるよ?」
「使う・・・とかオレは・・・」
「うん。だから、最終的に決めるのは溝端くん」

溝端は俯いて焼き魚定食を見つめる
真山を・・・使う・・・自分がやりたいことを言えばきっと真山は優秀だからそれを作り上げることができるだろう。ならば、今よりももっと高度な・・・

「真山くんは優秀だけどまだ若い。すごく若い」
「・・・」
「だからここまで育ってくれた溝端くんにボクも松島も期待してるよ?そして真山くんも溝端くんと同じように成長してくれるのを望んでる」

溝端はひとつ頷いて食事に手を着ける
最近あまり味も判らなかったけれど久し振りに美味しい食事だと思いながら手を進める

「ここのお魚美味しいよねぇー」
「はい・・・はい・・・」

山本が満足そうに笑う。そう。満足したのだ。きっと溝端はここに留まる決意をしたはずだから。もし、山本の読みが外れて辞めることになったとしたらそれは仕方ない。ここまで気持ちを伝えても伝わらなかったのだから・・・

ただ、辞めて三崎のところへ行くのはだいぶ癪ではあったけれども・・・




「溝端さん、ここ、おかしくないですか?っていうかコメントアウトさせたまま放置って何ですか?どうせだったらその理由も記述しといてくれたらこんな無駄な時間過ごさなくてイイんですけど?」
「あー、仕様書のほうに」
「今更それ見ろって?オレに?」
「・・・うん。オレが真山くんに最初指示してたらよかったってことだよね」

昼休みに山本と食事に出かけた溝端が急に先輩らしいことを言いだして真山は少し驚きながらも山本が溝端の抱え込んでいたもやもやを払拭させたのだと察して口元に笑みを浮かべる

「オレに指示とか偉そうなこと言う前にこことここ、基本的に間違ってるの気付いてくださいよね。オレが直したから今はスムーズに動くし、負荷も軽くなって動作も早いけど」
「うん・・・ありがとう。やっぱり真山くんはすごいよね」
「今更?当然のコト言わないでください」

真山はやっぱり真山だと思いながら溝端は笑って真山の肩を叩くとパソコンに目を落とした




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ビタースウィート28 - 10/27 Thu

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1度体を重ねてしまっても相変わらずの関係
ちゃんと話がしたい。そう思っていたけれど、あの時のことを真山が話したくない態度を取ることでやはり、付き合いたい。そう言ったことも関係を持ってしまったこともなかったことにされているのだと察して山本もちゃんと切り出すことができずにいた

「社長、大掃除の後の慰安旅行ってなんすか?」

他の社員が帰った後12月の予定をボードに書き込んでいた山本に真山がそう呟くと山本は手を止めて真山を見て思い出す

「そうだ!真山くんは今年からだから知らないんだね。うちの会社の恒例行事!忘年会兼ねた慰安旅行!温泉だーよー!」
「・・・なにそれ」
「ごめん。真山くん、勝手に行くことにしちゃったけど予定あった?っていうかメールもみんなに送ったけど返事返ってこなかったの真山くんだけだったよ?!」
「予定はないけど行かない」

予定はないけど・・・ということはやっぱりお金かと山本は「大丈夫!」と胸を張る

「この慰安旅行は真山くん一切お金要りません!真山くん以外も要りませーんっ!!!」
「・・・じゃあボーナス増やそうよ」
「だ・・・だよね・・・でも!でもさぁぁぁぁ!あれだよ?ボクのポケットマネーを含めた旅行ってことなんだよっ?」
「社長の財布からボーナス出そうよ」
「真山くん・・・厳しい・・・」
「とにかく行かない」

再びパソコンに目を落とした真山にペンを置くと真山の隣の席へと座る

「予定もなくてお金もかからないのにイヤ?」
「・・・どうせ1人部屋じゃないんすよね?」
「うん?真山くん1人じゃないと寝られないとかだっけ?」

真山はため息を吐くと自分の胸の辺りを指して山本を睨む

「あ・・・うん。そっか・・・」
「温泉なんて入れないし」
「そっかぁ・・・じゃあさ、ボクと同室なら問題ない?」
「は?」

もう既に真山の体についたピアスなんて見たし、それなら全て解決だと山本は笑う

「行かないし」
「行こうよ!ボクは真山くんと一緒に行きたいし」

山本のニコニコした笑顔が嫌い。胸が痛いから・・・外側を傷つけられるよりもずっと苦しい痛み・・・

「真山くん」
「なんですか。仕事の邪魔です」
「ボクのこと待ってくれてる?」

少しだけ幸せそうな顔をした山本を横目でチラリとみると舌打ちをする

「ええええ!今舌打ちした?!」
「うざい」
「・・・ちぇ・・・待ってくれてるならもう帰るし一緒にご飯どこかで食べてから帰ろうって言おうと思ったのに」
「寿司で」
「やっぱり待っててくれた?」
「寿司で」
「はいはい」

山本は真山の背中をポンと叩くとジャケットを取って「寿司、行こう!」と笑った





「じゃあ、真山くんはクリスマスも予定なしー?」
「社長も同じでしょう?」

まぁ、それはそうだけどー・・・と言いながら寿司を口へと運ぶ

「でもさぁ、ボクと違って真山くん恋人・・・一応いるんでしょ?」
「一応・・・って・・・」

一応も何も立花は恋人でもなんでもないけれど、真山は黙って目の前の寿司を見つめた

「真山くん、ハマチおいしいよ!」
「ほっといてください。自分のペースで食べるんで」
「あー、うん」

美味しいものを食べるとき少し嬉しそうな表情に変化すること。甘いものを食べるときは幸せそうな顔で食べること・・・普段あまり変わらない表情の真山の変化は山本にとって楽しいことになっていた

「そんな見られてると食べにくいんですけど」
「あー、ごめんー。真山くん、白身魚が好き?」
「・・・」

言い当てられたことにムッとしながら「別に」と答えるけれど山本がニコニコしながら「美味しい?」と聞いてくるからそれにはひとつ頷く
山本に連れられてくる場所で美味しくないものなんてなかった。そもそも、普段1人で摂ろうとする食事なんてまともじゃなかったけれども

「社長」
「んー、次、社長って呼んでもボク返事しないからねー」
「残念ながら奢ってもらう気で来てるからプライベートでもないです」
「ええー!いつも奢ってるじゃん!」
「まぁ、そうですけど」
「イイよー。どんどん食べて?好きなのぜーんぶ食べて」

これで見返りを求められるのならばもう少し気も楽だったかもしれない・・・
でも、山本は何も真山に求めない。ただ、ひたすら優しさだけ与えてくれる。だから・・・だから・・・せめて仕事で返すだけ。仕事で・・・要求以上の仕事をするだけ













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ビタースウィート27 - 10/26 Wed

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目を覚ますともう明るくて、時計を見るといつも起きる時間と同じことが判る。でも、いつもと違うのは目の前に裸の山本がいて、ここは自分の部屋じゃないこと・・・

「・・・」

ずっと触れてみたかった山本の体・・・

初めて山本と会ったのは会社の面接の時だった。立花から逃げるようにして地元大手企業の内定を蹴ると縁のない土地の小さな会社に応募した。本当にギリギリの就職活動。例えブラック企業でも構わない。お金を稼いで姉に返せればイイ。ただ、望みはそれだけだった

「社長の山本です。よろしく」

望みはそれだけだったのに山本の優しい笑顔を見て、声を聞いて手を伸ばされた時に変わった。一目惚れなんて信じないけれど、きっとそう。一目惚れだった。山本の下で働けるのならば、この人に全部尽くそう。そう願った。山本のために。会社のために・・・全部尽くせる・・・そう思った

姉のことを打ち明け、一緒に住もう。そう言われた時は本当に嬉しくて困って戸惑った。与えられる優しさに甘えたくなるから。一目惚れした相手を知れば知る程溺れる程好きになっていて、優しさに勘違いしそうになるから

立花に見つかった時はこの幸せはやっぱり不幸になるためのものだと思ったけれど、何も言わず迎えに来てくれた山本・・・その次に立花に呼び出されて痛めつけられても以前よりも平気になってしまっていた。痛みを与えられ泣き、喚いて絶望するけれど、真山の帰る部屋には山本がいたから。痛い体も山本がいたから平気。山本のためになら尽くせる・・・






「社長・・・すいませんでした・・・」
「う・・・ん?」

こんな形で夢が叶うなんて思ってなくて。何度も何度もせがんでその度に優しく触れてくる山本にもうどんな態度で接したらいいかわからなくて・・・

「・・・あ、真山くん・・・おはよ」
「・・・」

目を開けた顔は真山を見つけると微笑んでくれて。真山の大好きな優しい顔で笑ってくれて

「っ・・・」
「真山くんー?どうしたー?」

昨晩のことなんてなかったような顔をした山本が苦しくて顔を歪めた真山を心配そうに撫でる

「・・・ごめんねー」
「・・・?」
「いやー、昨晩のコト、後悔してるんだろう?」

後悔・・・後悔は・・・している。山本にあんなことをさせてしまったのだから・・・

「真山くんー・・・付き合ってる人と別れなよ」
「・・・え?」
「それで、ボクと付き合おう」
「・・・っ」

真山は首を振る
勘違い。責任を取って・・・とか山本はきっと考えているから。でも、山本はそんなこと考えなくていいし、こんな・・・

「酷いコトするその恋人の方がイイ?」
「っ・・・オレ・・・痛い方が好きだからっ・・・社長みたいにっ・・・優しいのってちょっと」

山本の優しく撫でる手が止まって「そっか」と呟いた山本に胸が痛む

「体、大丈夫?」
「・・・当たり前でしょう・・・」

あんなに優しく抱かれたのなんて初めてのコト。立花にも他の人にもあんな風に抱かれたことなんてなかったのに・・・知ってしまった。優しい手を。セックスを・・・

「真山くん」
「なんですか」
「ごめんね」
「・・・なんなんですか」
「だって、いくら薬で飛んでたからって好きでもタイプでもないボクとなんて嫌だったでしょう?」
「・・・」

今すぐ好きだと言いたかった。ホントは最初からタイプで一目惚れで・・・好きで好きでたまらない。そう抱きつきたい衝動。でも、できないからただ目を伏せて山本に背を向ける

「あー・・・すっげぇやばい・・・」

真山の出て行った部屋で山本はそう呟いて立てた膝に頭を埋めた









「松島ー・・・」
「んー」

いつものようにいつもと同じ席に座ってビールをグラスに注ぐ松島はいつもよりも真剣な顔をした山本を見て顔を上げる

「オレ、真山くんと寝た」
「・・・」

ビールがコップから溢れて山本が「わわわ!」と慌てて机をおしぼりで拭くと「もー」と言いながら顔を上げる

「・・・あー、ごめん。驚かせたから?」
「いや・・・寝たっつーのは・・・つまり・・・あー・・・」
「あり得ない・・・と思うよな・・・でも、オレも、真山くんもそんな感じになって」
「っか・・・あー・・・待った。ちょっと頭整理する」

頭を抱えた松島を混乱させるつもりなんてなかったけれど、突然こんなことを告白されたら混乱するのは当然だと思いながら「悪い」と呟いた

「付き合ってんの?」
「いや、付き合ってって言ったらフラれた」
「お・・・おう・・・」
「なんていうか・・・どうしたらいいのか判らなくて・・・な」

そんなことを自分に言われてもどうしたらいいのかなんて判らないし、アドバイスなんてできるハズもナイ。でも、確実なのは山本の驚く告白を聞いた今でも山本と友人関係を辞めることはないし、偏見の目で見ることもないこと









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ビタースウィート26 - 10/25 Tue

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山本の手が優しく撫でて熱い場所に触れる
ブルブルと震えて与えられる優しい快楽に溺れていいのかと自身のピアスを引っ張ると痛みで自分を引き戻そうとする

「っ?!」

引っ張っていた胸がピアスごと温かく湿ったものに包まれて見ると山本が自分の胸を食べている姿。こんなことさせられないと頭を引き剥がそうとするのに舌先で赤く勃った乳首を転がされて身を捩ることしかできなくなる

「だ・・・ダメっ・・・ダメっダメダメダメっ」
「引っ張ったら痛いから・・・真山くん、飛んでしまいなさい」

こんな優しく触れられることなんてない・・・もどかしい程優しくてドロドロに溶けてしまいそうな愛撫に髪の毛をクシャリと引っ張ると「ダメ」と何度も繰り返した

「っひ」
「・・・すごい溢れてきた」
「見な・・・っあ・・・ひあ・・・ダメ・・・ヤダっ」

山本は躊躇せず口に含んだそれを舐めながら何故自分がここまでできるのか考える。男だからどこが気持ちイイかだなんて想像つくけれど、どうしてこんなことが・・・?
ただの社員なのに。親友で20年も一緒にいる松島にだってこんなことできないと思うのに・・・

「はっ・・・ダメっ・・・」

ビクビクと跳ねる真山が愛しくて口の中で暴れるようにカウパーをあふれ出させるそれも愛しくて・・・

「出ちゃうっ・・・出るっ」

山本の口内が青臭い匂いでいっぱいになるとそれを空いた手に吐き出す

「はっ・・・あ・・・」
「まだ元気だね」
「あ・・・」

ティッシュで手を拭くとそういえば、さっきまで痒い、熱いと言っていたのが治まっていることに気付く

「どう?少しはマシ?」
「・・・奥・・・熱い・・・」
「もっと奥?」

指を押し込むけれど真山はコクコクと頷いて「もっともっと」と強請るように山本の腕を掴む

「涙出てる・・・痛くないの?」

これは快楽の涙。気持ちよくて生理的に溢れた涙・・・まだ熱さはジンジンとしているし、奥も痺れるような痒みを持っているけれど

「社長・・・」
「うん?」
「ゴム・・・あります?」
「あー・・・うん・・・?」
「・・・これ・・・使っちゃダメ?」

真山の細い指が山本の熱を持った下肢へと伸びてビクリと体を震わせる
真山の痴態を見てすっかり熱を持ったそこは寝間着の前を持ち上げる程に力強く勃ちあがっていて真山の官能的に動く指を感じるとビクリと跳ねた

「んー・・・イイ・・・の?」
「社長・・・が良ければ・・・一緒に溺れてください・・・オレだけじゃ・・・ヤダ」
「・・・」

カタンとベッドの近くの引き出しを開けると山本が取り出したゴムを見てゴクリと生唾を飲み込む音が響く

「・・・今すごい音した・・・」
「欲しい・・・から」
「ハハ・・・そんな期待されても・・・」

それでも。どんなものでも山本なのだから・・・と真山は手を伸ばしてゴムをひったくると山本の寝間着を脱がして口を開ける

「う・・・ぐっ」
「大きい・・・」
「あー、真山くん・・・イイよ?無理しなくて」
「おいしい・・・コレ・・・すごい・・・匂い・・・」

雄臭くてめいっぱい息を吸い込むと音を立ててキスをする。もう社長だとかそんなことどうでもいい。目の前に出された好物よりもご馳走よりも1番のモノ・・・

「はっ・・・あ・・・奥・・・突いて・・・くれますか?」

誘うように自分の指で拡げて中を見せると熱が当てられて押し広げるように中へと入ってくるのを感じる。薬なんかよりも熱くて重量のあるそれは痒みも熱も全部忘れさせてくれるような快感

「は・・・あ・・・あ・・・」
「・・・奥・・・入ってる?」
「っ・・・まだ・・・ある・・・これ、全部っ」

まだ全部埋められていないと中へ挿っていない部分を指で撫でると自分から腰を山本の腰へと押し付ける

「あ・・・大丈夫?壊れちゃう・・・よ?」
「壊れっ・・・な・・・あ・・・ダメなとこっ・・・挿っちゃ・・・あ・・・あ」
「ふっ・・・ごめん。久し振りすぎてヤバいな・・・これ」
「あっあー・・・擦ってっ・・・擦って、そこっ・・・もっと」

真山の薄い尻に肌が触れる度に肉を叩くような音が響く。擦られて快楽に溺れたくないのにもう溺れて息すらまともにできない。初めて与えられる快楽だけのセックス。優しくて気持ちよくて・・・自分が罪人だということすら忘れてしまいそうなくらいのセックス






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ビタースウィート25 - 10/24 Mon

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元木に抱きしめられながら何度も「大丈夫。大丈夫」と頭を撫でられる
時折漏れてしまう声も色を含めたため息も怒られることもなくまた大丈夫だと囁かれ、手を摩られる

「ここー?イイ所住んでるわねぇ」
「ぅあぁ・・・も、歩くの・・・」
「あとすこーしだからっ!」

真山の腰を支えて抱えるようにして歩くと真山は何度も何度も座り込みそうになるのを耐えて元木の腕を掴む

ピンポーン

「はい・・・ええええ?!」

インターホンを押すと驚いた顔で出てくる山本に元木は微笑んで「お届け物でーす」と明るく言う

「え、真山くんどうしたの?」
「ともちゃん、シャワー浴びられる?」

コクコクと頷いた真山を見て山本がバスルームのドアを開ける

「それじゃーあたし、ちゃーんとともちゃん安全地帯に送り届けたし帰るねぇ」
「あ・・・っと、元木さん、何か飲み物でも・・・」
「・・・やっだぁ!ほんっと社長さんって優しくてイイオトコぉー」

驚いた顔をした元木はペチンと山本の胸を叩くと優しく笑う

「ホントは、ココ連れてきていいのか直前まで迷ってたけど・・・」
「えー?」
「・・・社長さん、ともちゃんのこと介抱できる?」
「ハハ・・・ボクの友達もよく酔い潰れてたし、慣れっこですよ」
「そうじゃなくて・・・」

困った顔をした元木に山本は首を傾げるが、カタンとバスルームから音を立てて顔を上げる

「真山くん、大丈夫ー?」
「・・・社長さん、これ、あたしにはできないから・・・」
「え?」

山本がバスルームのドアを開けると床に四つ這いになっている真山の姿

「ふ・・・え?」
「・・・ともちゃん、苦しい?苦しいね?」
「んあ・・・も、やだぁ・・・届かないっ・・・奥っ・・・やぁだっ」
「・・・な・・・真山くん?」

真山の痴態に数歩後退りした山本を元木は掴むと山本の背中を押してバスルームへと入れる

「あたしにもできるけどあたしともちゃん救えないんだもんっ」
「え・・・え?」
「はっ・・・みっ・・・見ないでっ・・・ヤダっ!社長っ・・・ヤダぁ」
「全部飛んじゃえば楽なのに・・・ともちゃん、社長さんに甘えなさい。今日は社長さんに全部任せて」
「ヤダっ・・・あ・・・痒いっ・・・熱いっ」
「ともちゃんっ」

指で押し広げて石鹸で泡立つほど捏ねた場所は熟れた赤を覗かせてヒクヒクと誘うような動きをする
ピアスのついた乳首は赤くて山本は口元を手で抑えると顔を赤くしながら「どうしたらいい・・・」と呟いた

「ともちゃん、薬盛られたの。そいつはあたしの友達が連れて行ってくれたけど、ともちゃんはどうしたらいいのかわからなかったから」
「・・・真山・・・くん・・・ここ、寒いから、石鹸流したら部屋、行こうか」

ブンブンと頭を振る真山の頭を優しく撫でる山本を見て元木は微笑むと「じゃあ、おねがいね?」と呟いて山本の背中に触れると部屋を出て行く
きっと山本なら大丈夫。人に敵意を向けてばかりの真山が唯一心を許した相手。山本だから。それを受け入れる山本ならきっと・・・きっと・・・









石鹸が流れていく。あの液体は吸収されてしまったのか洗っても治まることのない熱と痒み・・・
流れていく泡もまたぞわぞわと痒みを倍増させて真山は乳首のピアスを引っ張る

「真山くん、痛いよ!そんな引っ張っちゃちぎれちゃいそう」
「っ・・・ふっ・・・痒いっ」
「よし、泡、流れた。部屋、温かくするからそれまで布団包まろう」
「や・・・ヤダっ・・・社長っ・・・ヤダ」

ヤダヤダと首を振る真山に笑いながら「今は山本さんでしょう?」と真山の体をバスタオルで包んで抱き上げる

「あー、軽いなぁ・・・やっぱり食べなくちゃ軽すぎるよー」
「ふあ・・・」

肩に担ぐと真山を抱き上げて自分のベッドルームへと向かう。そして真山をベッドに下ろすと布団で包んで真山の胸を優しく撫でる

「・・・これじゃ刺激弱すぎる?」
「んっ・・・はぁ・・・気持ちいい・・・」
「う・・・う・・・後ろ・・・触るよ?」

刺激は弱かったけれど山本が優しく撫でる温かい手は気持ちイイ気がして身を任せると自分よりも太い指がそこに這わされて口から思わず嬌声が漏れて口を押える真山

「どうしたの?口塞いだら苦しいでしょう?」
「ご・・・め・・・なさい」
「真山くん、ボク、男の体はこうやって触ったことないから気持ち悪い時だけ教えて?真山くんが苦しいの、見てられないから」
「っ・・・あっ・・・ふっ・・・イイ・・・でもっ、飛びそう」
「?飛ばしていいよ?」

山本が優しく笑うから・・・触れる手が優しいから胸の奥が気持ち悪くて気持ちよくて訳の分からない無理矢理引き起こされる快楽よりもずっと気持ちよくて目を閉じると溢れた涙が熱くて、そのまま頷いた






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ビタースウィート24 - 10/23 Sun

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あの夜以降、たまに真山が部屋へ戻らなくなって、その翌日は辛そうな表情を浮かべていることが増えたのを山本はずっと気にしていたが、真山に聞くこともできず、チラリと真山の赤くすり切れたような手首を見て唇を噛むだけ

仕事はちゃんとこなすし、普段はいつも通りの真山だし、たまに、ごくたまに山本に何か言いたそうな表情をするけれどでも何も言ってくれない・・・それでも日々は過ぎていく





「今日はイイことしよう」
「・・・」

立花の『イイこと』が『イイこと』じゃないことぐらい判っているけれど、もう慣れた。大体月に1度。多くても月に2度。短ければ1日。長ければ3日の立花の出張に合わせて求められる体。それは快楽のためじゃなくて痛めつけられ、それによって立花の快楽を引き出すため・・・

立花に腕を引かれて席を立つとトイレへと連れ込まれ、個室へ乱暴に押し込められるとタンクを抱きしめるような形で倒れ込む

「ココで?」
「んーん?」

立花の顔が見えないから必死に振り返ると何やら小さな瓶をちらつかせ、すぐに下肢にひんやりとした感覚

「っ?」
「ここからタクシーで30分かなぁ・・・1滴で即効性あるっていうけど、お前はどれだけ耐えられる?いつもの涼しい顔でどこまで耐えられる?」

ジンジンと中が熱くなってくるのが判る。度数の高いアルコールが注ぎ込まれたような熱さ

「っぅーーーー」
「あー、どうすんの?そんな顔して店出るなんてトイレで何してたのかバレちゃうんじゃなぁい?」
「っ・・・はっ・・・な・・・んですかこれ」
「あ、乳首にも塗ってあげなくちゃね?」

シャツの前を開けられると瓶に残った液体を真山の乳首へ塗りたくる
塗られた場所が熱くて痒くてすぐに手を伸ばして乳首を掻く真山の手をペチリと叩き落とすと「さぁ、行こうか」と真山の背中を押してトイレから出る

歩く度にジンジン熱くて痒くて・・・気が狂いそうな程なのに、ここから自力で歩いて外へ出てタクシーへ乗って・・・30分・・・考えただけで無理だと立花のジャケットを掴む

「オレに恥、かかせないで?」

立花の目が笑っていない笑顔でもし、立花に恥をかかせたら何をされるのか察して口を閉じると爪が掌に食い込むほど強く拳を握って歩いて店を出た




暫く歩いても立花がタクシーを止める気配がなくて立花を呼び止めると「散歩」と言われて絶望する。今すぐ洋服を脱ぎ捨てて熱い場所を掻いてこの熱を治めたいのにそれも許されなくてガクガクと震える足が限界だと真山に訴えるのにそれすらも見ないフリをする立花

「っ・・・立花っ・・・さっ・・・」
「どうした?友己」
「も・・・もぉっ・・・むっ・・・りっ」

今にも泣き崩れそうな真山を見て満足そうに笑うと顔を上げてタクシーを探す

「あっらぁー?ともちゃぁーんっ?」
「っ・・・?」

震える体を腕で抑えながら顔を上げると派手な格好に身を包んだ元木の姿

「ともちゃぁんー、久しぶりねぇ?元気ぃ?」

元木にも迷惑をかけるわけにはいかないと何度か頷くとふわりと抱きしめられる

「あっらぁー!ともちゃんの彼氏イイオトコじゃなぁぁーいっ!」
「ねぇねぇあたしたちと遊びましょぉーうっ」
「はぁ?なんなんだ?お前たちっ・・・おいっ!おい!やめろっ!」

元木の友人たちにベタベタと触られた立花は腕を掴まれて連行されるように連れていかれてどんどんと小さく遠くなっていくのを見て元木の顔を見上げる真山

「社長さんのお家どこかしら?」
「っ・・・ダメ・・・も、無理っ」
「もう少しよ?あの人は大丈夫。あたしのお友達がイイオトコ見て離すわけないからー」
「はっ・・・あ・・・歩けないっ」

元木は真山の体を支えると手を挙げてタクシーを止めた






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ビタースウィート23 - 10/22 Sat

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部屋へ戻った山本と真山。山本は「お風呂入ってきたら?」と言うだけでやっぱり何も聞いてこない

「聞かないんすか」
「ん?」
「・・・突然、こんな夜中に呼び出されて、聞かないんですか?」
「・・・聞いて欲しい?」

ふわりと笑った山本にムッとしながらも首を振る
聞いて欲しいわけじゃない。でも、何か言って欲しかった。文句でも説教でも・・・責めて欲しかった
こんな時間にちゃんとした住所も判らない場所に迎えに来いと呼び出されたのだ。少しくらい文句を言われてもおかしくないし、聞かれないのは不自然な気すらする

「じゃあボクも聞く必要ないよ。真山くんも大人だし」
「・・・」

所詮は恋人でも友人でもないただの他人。上司と部下で雇い主と社員・・・

「じゃあボク寝るねー。おやすみ」

手を振って寝室へ向かう山本の背中を引き止めたくてでも出来なくて。ただ悔しい気分でバスルームへと足を向けた






「・・・ってことがあったんだけどオレはその相手に文句言いたいんだけどどうしたらその人見つけられると思う?」
「・・・」

昼休み、珍しく社内にいた山本は松島を誘って出かけたうどん屋でそう力説する
松島はうんざりした表情でうどんをすするとため息を吐いた

「聞いてんの?ってかお前最近ホント付き合い悪いー。夜だって速攻帰っちゃうし」
「彼女がいるときのお前もこんなもんだったぞ」
「いいや!オレは彼女がいてもお前と週の半分は飲んでた!」

確かに学生時代から関係を疑われる程つるんでいた。それがもう20年近くもなればいい加減、変わってきてもイイもの。特にそろそろ結婚を考えてもおかしくない年齢だから

「オレらもそれだけオトナになったっつーことだ」
「・・・大人ねぇ・・・」

山本は少し口を尖らせながらかつ丼を頬張る
三崎と別れてから付き合った女性たちと長続きしなかった理由がすぐわかる。変わってないのだ。山本は。学生のころから全然変わっていない

「で?」
「うん?」
「お前はなんで真山の相手に文句言いたいの?」
「そりゃ、うちの社員をあんなボロボロにしてさぁ・・・」
「でもそれ、プレイの一種かもだろ?」

山本は「うーん」と言いながら真山が乳首にピアスをしているという話を思い出してそれもあり得る。そう頷くがすぐに首を振る

「いや、でもさ、あれがもし、そういうものだったとしてもあんな時間に1人で外出すことないでしょう?送って行くかタクシー用意するのが礼儀だろ」
「あいつだぞ?『そんなの要らないから』とか言いそうじゃん」
「言うかなぁ・・・確かに言いそうだけど」

いつもの態度から想像する。ツンツンした真山が送って行くと優しく言った相手に素直に従うとも思えない
そこで自分を呼び出したのは真山に友達がいないから・・・それも判る。頼れる相手はいない。頼るなんて自分の弱みを見せることはしない彼だからこそきっと自分だったのだろうと思った

「そんなに気になるならちゃんとあいつと話せばいいだろーが」
「だ・・・だって!!!あれでしょう?上司が恋人のコト聞いたりするのってそれもセクハラなんだろ?」
「じゃあ上司としてじゃなく聞けよ」

山本は松島の言葉の意味が判らずただ「うん?」と首を傾げながらかつ丼を平らげた






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ビタースウィート22 - 10/21 Fri

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電車が動いていない時間・・・タクシーに乗るにもお金がないからと歩いて家を目指す。距離的には歩けない距離じゃないハズなのに歩く度に体が重くて痛くてその場に座り込んだ

「っ・・・クソ・・・」

こんな体の痛みなんて少し前まで日常茶飯事のことで徹夜と同じで平気だったのに・・・
このままじゃ明日の仕事も行けないと思うと怖くてただ震える。連絡をしようにも携帯もなくて・・・皆が携帯を持つ時代だから公衆電話なんて過去の産物になりつつあるから簡単には見当たらな・・・

「あった・・・」

通りの向こうに光を発している電話ボックスを見てよろよろと立ち上がると電話に向かって歩き出す。痛いけれど動けないわけじゃないから・・・辛いけれど歩けるから
そして財布から小銭を出し、番号を押す直前でとまる

「・・・」

誰に電話を掛けようとしているのかと・・・頭に思い浮かべている番号の主に掛けてどうしてもらおうというのだろうと自分に問いかける

「っ・・・」

それでも・・・それでもどうしようもなくて震える指先で番号を押す
耳元で電子音が響く・・・電話に出てほしくて出てほしくなくて・・・

出たら・・・何と言えばいいのかと・・・

『もしもし?』
「っ・・・」

声を聞いた瞬間、真山の胸が締め付けられてそれが涙腺と直結したかのように溢れだす涙・・・

「っ・・・ふっ・・・」
『・・・真山くん?』
「っ・・・」

受話器を握ったまま頷くが、当然そんなの電話の向こうに見えるわけがない

『今どこ?』
「っ・・・電話ボックス」
『うん。そうだね。公衆電話だね・・・どこの?』

最初からそう聞いているのは判っていたけれど、こんな時でもふざけた答えが口から滑る。素直になれないから・・・山本だけには素直になれないから

「・・・聞いて・・・どうするんですか」
『迎えに行くよ?』

それが当然かのような言葉にまた胸が締め付けられて涙が零れる

「××ホテルの近くの電話ボックス・・・」
『判った・・・そこ、動かないで?』

ホテルの名前と電話ボックスというヒントしかないのにここが判るわけがないのに・・・でも、電話を切って少し臭う電話ボックスを出るとその場に座り込む
山本はたったそれだけのヒントでも来そうな気がして・・・すぐに来てくれる気がして・・・

どんなに難しそうな顧客でもなぜか仕事を簡単にとってくる山本はなんでもできるヒーローな気がして・・・







頭に触れる優しい手に顔を上げると心配そうな顔で真山の顔を覗く山本の姿
自分がいつの間にか寝てしまっていたのに気付く

「帰ろうか」
「・・・よく・・・判りました・・・ね」
「うん。タクシーの運転手さんのお陰かなぁー」

山本が指差したタクシーの運転手が不審な目を真山に向ける

「運転手さん、ありがとう。また家戻りたいですー」
「・・・そちらさん大丈夫かね?」
「ええ。彼、今どき珍しく携帯持っていないから助かりましたよー」
「へぇ。そりゃ珍しいねぇ」

山本と運転手が世間話をするのをなんとなくぼんやり聞きながら、きっとこのまま部屋に戻っても山本は何も聞かないのだろうと確信していた









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