ビタースウィート58 - 11/30 Wed
車に乗り、揺られていると山本はそっと自分の腹に巻かれたタオルの上から傷を触る。段々と痛みは感じるようになってきたけれど、以前刺された時はもっと痛かったのだから傷は浅いだろうと自己判断を下す
「真山くん・・・泣かないでよ」
「・・・ごめ・・・なさい」
「何が?」
「オレがっ・・・助けてとか・・・」
「ううん。呼んでくれてよかった・・・もし、呼ばれないまま真山くん傷つけられてたらさぁ・・・」
「殺してたから」
山本の声が車内に響く
「さっきだって殺しそうな顔してましたよ?」
「そうー?」
ハルが前の座席からそう言って振り返る
「多分、今回は意識もちゃんとあるし、内臓いってないだろうからちょっと処置したらすぐに帰されるだろうけど、暫く自宅安静ですからねっ!」
「ハルー・・・医者じゃないんだからー」
「安静にしてて・・・」
「真山くんまでー!?」
とても刺された人間を乗せた車だと思えない程和やかな時間が過ぎていくのを不自然に感じながらも山本がこうして話してくれていることに安心するハル・・・自分を助けに来てくれた時は内臓を傷つけられて意識もなくなったから・・・
そんなハルの心中なんて知らない山本は真山を見て髪を掻き上げる
「・・・メガネ、なくなっちゃったね。新しいの作りに行こうね」
「・・・あの人、どうなるんですか・・・っていうか、山本さん、何者なんですか?アザゼルって何?天使?なんなの?!」
「ブハッ!さっきまで泣いてた奴に突っ込まれてるー!!!」
山本が複雑そうな顔をして「うーん」と唸る
「山本さんさー、元々ここら辺仕切ってた人だからねぇー」
「・・・ヤンキーとかそういう」
「ヤンキーwまぁ、そんな感じかなぁー・・・でねー、大抵山本さんがみんなに名前つけてたっ!」
「ま、まぁまぁ!いいじゃんっ!昔のことだよ?ね?」
慌てる山本に笑うハル・・・自分の全然知らない山本がいる。それをハルが知っている・・・そんなことに嫉妬しても仕方ないのは判っているけれど胸の奥がモヤモヤしてしまう
「みんな、ホントイイ子たちなんだよ」
「・・・へぇ」
「今日集まったのはさー、大抵山本さんに助けてもらった恩がある奴ら。行く場所がなかったり人生に絶望してたり・・・山本さんの頼みならいつでもすぐに集まるよ」
「たとえ、それがこの可愛くない子を助けるためだってさ」
ハルの言葉に「コラ」と山本が窘めるが、ハルは唇を尖らせるだけで反省の色はどこにも見えない
「あ、病院着いたよ!」
病院というよりも小さな診療所だと思いながらも真山は降りて山本を支えながら下ろすとハルは既に真っ暗になっている診療所のドアを叩いていた
「なんかオレ、知らないことばかり・・・」
「うん?あぁ・・・でも、これからお互いにもっともっと知りあっていけばいいでしょう?先は長いよ?」
先は長い・・・さっき、もう先はなくなるのかと恐怖した。でも、山本の言葉で安心を得る
これから先も山本はこの優しい笑顔で優しい手で自分を撫でてくれるのだと思うと安心し、少しだけ笑った
「・・・よし。帰ろう。うん。帰ろう!」
「え?」
「今、笑った。可愛かった!ハル!大先生は起こさなくてイイ。明日来る」
「はぁ?!っていうか電気ついたし!今から傷口見てもらうのっ!」
ハルに腕を掴まれて電気の着いた診療所の中へと連れていかれる山本を見ながらいつも大人だと思っていたのに子どものようだと思いながらまた微笑んだ
治療を受けた山本は年老いた医者に何度も怒られ、頭を叩かれ説教をされ、ひと晩入院を強いられしょんぼりとしながら診療所のベッドへ横になる
「オレ、シャツとか取ってこようか」
「・・・明日仕事あるから帰ったらそのまま寝ていいよ。疲れたでしょう?」
確かに、恐怖を感じ、尖った神経を山本が落ち着かせてくれたことで眠気はあったけれど着替えぐらいは持って来られる
「じゃあ、オレが彼送ってって、そのまま着替え持ってこっち戻ってこようか?」
「あぁ、うん。そうして」
「・・・」
自分じゃなくてハルに頼む山本にまた胸がもやもやする・・・
「ほら、なんだっけ?真山?下の名前は?」
「・・・友己」
「んじゃ友己、多分山本さんは友己をひとりで外歩かせるのが怖いから送って行く」
「・・・」
「あ、チュウぐらいはしてく?オレ背中向けてる?」
「あ、うん」
「・・・しないし」
体を起こそうとした山本の体をベッドに押し付けると真山は山本に背中を向ける
「真山くん」
「・・・今日はありがとうございました」
「うん」
「おやすみなさい」

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「・・・ごめ・・・なさい」
「何が?」
「オレがっ・・・助けてとか・・・」
「ううん。呼んでくれてよかった・・・もし、呼ばれないまま真山くん傷つけられてたらさぁ・・・」
「殺してたから」
山本の声が車内に響く
「さっきだって殺しそうな顔してましたよ?」
「そうー?」
ハルが前の座席からそう言って振り返る
「多分、今回は意識もちゃんとあるし、内臓いってないだろうからちょっと処置したらすぐに帰されるだろうけど、暫く自宅安静ですからねっ!」
「ハルー・・・医者じゃないんだからー」
「安静にしてて・・・」
「真山くんまでー!?」
とても刺された人間を乗せた車だと思えない程和やかな時間が過ぎていくのを不自然に感じながらも山本がこうして話してくれていることに安心するハル・・・自分を助けに来てくれた時は内臓を傷つけられて意識もなくなったから・・・
そんなハルの心中なんて知らない山本は真山を見て髪を掻き上げる
「・・・メガネ、なくなっちゃったね。新しいの作りに行こうね」
「・・・あの人、どうなるんですか・・・っていうか、山本さん、何者なんですか?アザゼルって何?天使?なんなの?!」
「ブハッ!さっきまで泣いてた奴に突っ込まれてるー!!!」
山本が複雑そうな顔をして「うーん」と唸る
「山本さんさー、元々ここら辺仕切ってた人だからねぇー」
「・・・ヤンキーとかそういう」
「ヤンキーwまぁ、そんな感じかなぁー・・・でねー、大抵山本さんがみんなに名前つけてたっ!」
「ま、まぁまぁ!いいじゃんっ!昔のことだよ?ね?」
慌てる山本に笑うハル・・・自分の全然知らない山本がいる。それをハルが知っている・・・そんなことに嫉妬しても仕方ないのは判っているけれど胸の奥がモヤモヤしてしまう
「みんな、ホントイイ子たちなんだよ」
「・・・へぇ」
「今日集まったのはさー、大抵山本さんに助けてもらった恩がある奴ら。行く場所がなかったり人生に絶望してたり・・・山本さんの頼みならいつでもすぐに集まるよ」
「たとえ、それがこの可愛くない子を助けるためだってさ」
ハルの言葉に「コラ」と山本が窘めるが、ハルは唇を尖らせるだけで反省の色はどこにも見えない
「あ、病院着いたよ!」
病院というよりも小さな診療所だと思いながらも真山は降りて山本を支えながら下ろすとハルは既に真っ暗になっている診療所のドアを叩いていた
「なんかオレ、知らないことばかり・・・」
「うん?あぁ・・・でも、これからお互いにもっともっと知りあっていけばいいでしょう?先は長いよ?」
先は長い・・・さっき、もう先はなくなるのかと恐怖した。でも、山本の言葉で安心を得る
これから先も山本はこの優しい笑顔で優しい手で自分を撫でてくれるのだと思うと安心し、少しだけ笑った
「・・・よし。帰ろう。うん。帰ろう!」
「え?」
「今、笑った。可愛かった!ハル!大先生は起こさなくてイイ。明日来る」
「はぁ?!っていうか電気ついたし!今から傷口見てもらうのっ!」
ハルに腕を掴まれて電気の着いた診療所の中へと連れていかれる山本を見ながらいつも大人だと思っていたのに子どものようだと思いながらまた微笑んだ
治療を受けた山本は年老いた医者に何度も怒られ、頭を叩かれ説教をされ、ひと晩入院を強いられしょんぼりとしながら診療所のベッドへ横になる
「オレ、シャツとか取ってこようか」
「・・・明日仕事あるから帰ったらそのまま寝ていいよ。疲れたでしょう?」
確かに、恐怖を感じ、尖った神経を山本が落ち着かせてくれたことで眠気はあったけれど着替えぐらいは持って来られる
「じゃあ、オレが彼送ってって、そのまま着替え持ってこっち戻ってこようか?」
「あぁ、うん。そうして」
「・・・」
自分じゃなくてハルに頼む山本にまた胸がもやもやする・・・
「ほら、なんだっけ?真山?下の名前は?」
「・・・友己」
「んじゃ友己、多分山本さんは友己をひとりで外歩かせるのが怖いから送って行く」
「・・・」
「あ、チュウぐらいはしてく?オレ背中向けてる?」
「あ、うん」
「・・・しないし」
体を起こそうとした山本の体をベッドに押し付けると真山は山本に背中を向ける
「真山くん」
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