FC2ブログ

つれないキミと売れてる僕10-38《最終話》 - 01/31 Tue

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
須野が仕事へ出掛けるのが昼少し前になってから。そう言われて一緒に朝食をゆっくり摂っていた所にインターホンが鳴る

「あれ?山口さん今日は来ないし僕、まだ時間あるんだけどなぁ・・・」

そう言いながら須野が立ち上がってドアを開けるとあまり見たくなかった顔

「あ、待って・・・あの・・・これ・・・」

西野が差し出した袋を受け取ると戸惑った須野の後ろから里見が現れ「おう」と一言西野に掛ける

「里見っ」
「コーヒーくらいならあるけど?」
「・・・いただきます」
「里見っ!」

部屋へ戻っていく里見を追いかけると小さな声で「イイの?」と里見に聞く。里見は鼻で笑って頷くと少し振り返ってすっきりしたような顔の西野を見た

「あんだけ言われてまた来るんだからあいつも考えるとこあったんだろ?んじゃ謝罪ぐらいは受けてやらねぇと・・・お前は一応友達の1人だったんだし?」
「・・・」
「友達・・・なんだろ?」
「・・・うん」

そう。友達。先日、西野が思っていたこと、しようとしていたことを聞いてショックだったけれど、それまでは話をしていて楽しい友人のつもりだった・・・

「寛人くんっ!」

西野に呼ばれて顔を向けるとそこには土下座する西野の姿

「っ・・・ぇ・・・えええ?!」
「ごめん・・・なさい」
「ふぇ・・・ちょ・・・え・・・」
「皐月先生もすいませんでした」
「ほら・・・な?」

須野はどんな反応をしたらいいのかと戸惑いながらしゃがんで西野の肩に触れようかと迷いながら手を上げたり下げたりしている

「なぁ・・・友情、そんな簡単に壊れねぇだろ?」
「・・・うん・・・」
「んで、オレ、やっぱり天才だろ?」
「・・・それ、かなりムカつく」
「あぁ?あいつから本受け取ったんだろ?んで、読んで認めたから頭下げたんじゃねぇのかよ」
「・・・寛人くんに対してだもん・・・」
「あーそーかよ」

里見が笑っているのが須野には理解ができない
里見が笑っているから須野は怒ることができない
里見が・・・

「寛人くん・・・ホントにごめん。ボク、羨ましかったんだ」
「・・・え?」
「ごめんね・・・あと、最近の演技すごく良くなったって聞いたんだ。やっぱりボクが寛人くんの演技の妨げしてたんだね・・・ボクのこと嫌いになった・・・よね・・・でも・・・でも・・・ボク、謝り続けるから・・・また・・・いつか、いつか・・・ボクと遊んでくれる?」
「・・・判らない・・・でも、うん・・・友達だよ・・・友達だからまた、遊ぼう?」

須野が困ったように笑うと同じように西野も笑ってもう1度頭を下げて玄関を出て行った







「あーあーコーヒー無駄になっちまったじゃねぇか・・・」
「・・・里見、なんで笑ってたの?彼のコト許したの?なんで?里見に酷いコト言ったよ?なのに?」

里見が笑いながら煙草に火を点けると天井へ向かって紫煙を吐き出す

「あいつ、あれでもオレのファンの1人だぜ?」
「・・・え?」
「オレ、ファンは大事にするほうだし」
「でもっ・・・」
「オレの書くものが微妙になったっつーのはなー・・・まぁ、他にも言われてたことだし。そんだけオレの本、実は読んでたっつーな・・・オレのことがホントに嫌いならインタビューで矢嶋の話題ふらなせないようにしたのと同じようにオレの話もNGにしてただろ・・・それにあいつのこと聞いてたらオレの悪口言ってた様子どこからも出てこなかったしなぁ・・・」

須野はよく判らない。そんな顔をしながら里見の隣に腰を下ろす

「須野ー」
「・・・うん」
「オレはあいつが謝って、んでお前とまだ友達がイイっつったからそれでいい」
「・・・うん」
「でもオレはあいつがお前を名前で呼ぶ限り嫌い」
「え?!」

須野が里見を見つめて次の言葉を発する直前に携帯のアラームが鳴り響く

「仕事行く時間だぞー」
「や、待って・・・え!今のどういうこと!?」
「別に?あー、オレも仕事だ仕事ー」
「待ってよ!里見ぃー」
「あー、須野、お前帰りにタバコカートンで買って来い。ストック切れた」
「あぁっ!またやっぱり呼び方戻ってるっ!ねぇ!里見!もう僕のコト寛人って呼んでくれないの?!名前呼ばれると僕、すっごい幸せなのにっ!」
「じゃあ、今は幸せじゃねぇのかよ」

幸せじゃないかと問われればそんなの決まっている。幸せ。すごく幸せ。里見がそこにいて名前じゃなくたって須野を呼ぶ。呼んでもらえる幸せ・・・

「幸せっ・・・だけどっ・・・ねぇ!ねぇっ!それとアキラが僕のこと名前で呼ぶのは関係あるの!?ねぇ!里見ったらー!」

里見は鼻で笑うと「バーカ」と言いながら須野の尻を蹴って仕事へと促す
もう無理して須野を名前で呼ぶ必要なんてない。須野が誰かを名前で呼び、名前で呼ばれるからといって里見には何の脅威もないモノなのだから・・・須野と里見の間には確実な愛が育っているのだから




つれないキミと売れてる僕 10幕 おしまいおしまい







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more
スポンサーサイト



つれないキミと売れてる僕10-37 - 01/30 Mon

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
インターホンが鳴る。今日は何日だったのか何曜日だったのかも思い出せない。担当の人と約束があったのかも当然思い出せない・・・ただ、体も起こさず目線だけドアへと向けると再びインターホンの音

出る気力がない。それどころか食事すらいつ最後に何を食べたのかさえ思い出せない・・・

「晶、いるんだろ?」

ドアの向こうから掛けられた声にピクリと反応をする

「・・・晶、開けろよ。コンビニのだけど弁当買ってきたから一緒に食おうよ」

来るわけがない。彼がここへ現れるだなんて・・・幻聴だ。そう思いながら西野は天井を見つめる

ドンドンドンドンっ

ドアが揺れる・・・そしてインターホン・・・幻聴じゃない。この乱暴に叩くドアと子どものようにインターホンを何度も何度も鳴らす人物は自分の周りには1人しかいないから・・・

西野は立ち上がるとドアを開ける

「おう・・・久しぶりー」

懐かしく、でも酷く安心するその笑顔・・・

「何の用・・・」
「んー、預かりものしてきたからー!」
「・・・誰から・・・」

ため息を吐きながらも差し出されたコンビニの袋を受け取ると了承もしていないのに勝手に入って来るかつての親友

「メシ食おうー!お前、とんかつ弁当じゃん?オレ、唐揚げ弁当ー!」
「・・・」

袋から弁当とペットボトルのお茶を出す矢嶋を見ながら黙って腰を下ろす

「んでー、オレの唐揚げ1個とお前のとんかつ1個交換だろー」

それはいつも1つだけ頂戴とせがむ矢嶋に出した交換条件・・・だったら1個ずつ交換に決まってんだろ!対価が必要だと常に言っていたことまでちゃんと覚えていてくれているのだ・・・

「あ、これな!遠回りだけど皐月 光からー」
「・・・は?!」
「オレ、最近ShinGo監督と遊ぶ機会ちょいちょいあってさー、皐月 光からお前にってもらって来た」

渡された少し重みのある紙袋を開けると見覚えのある表紙の本にそれを思わず床へ投げつける

床に本が当たると同時に舞う1枚の紙

「・・・」
「あーあー・・・ったく、お前、本は大事にする方だろ?」

舞った紙を拾うと本の上に乗せて渡された西野はその紙に書かれた文字に目を止める

『オレのことどうこう言いたければまずこれ読んでからにしろ』

映画化された小説・・・映画化するための小説・・・映画を見てますますこの程度かと思った・・・だから小説はあえて買わなかったのに・・・

「監督言ってたけどー、どっちも見て本当のお話だっつってたなぁ・・・オレ、皐月 光はなんか小難しいコトばっかりで読めないけどさ」
「・・・」

西野はその本を捲る。紙の匂い、紙の感触・・・そして飛び込んでくる文字。文字文字・・・

「・・・弁当冷めるぞー・・・ってもう聞こえてないかー」

床に座り込んだまま集中し、ページを捲っていく西野を見て笑った矢嶋は目の前の弁当を食べ始めた








「・・・」

顔を上げてパタンと本を閉じると電気がついていることに気付き、窓の外を見るともう薄暗くなっていた

「終わったか?」
「・・・読んだ」
「そっか。じゃ、弁当温めてやるよ」
「・・・光太郎」
「あ?」

レンジの前へ行った矢嶋が振り返ると頭を下げた西野の姿に驚き慌てる

「何?なんだよ」
「ごめん・・・」
「は?ちょ・・・気持ち悪いって!お前が頭下げるとか!明日槍でも降んの?!」
「・・・お前突き放しといて・・・だけど寂しかった。オレはっ・・・寂しかったっ!!」
「・・・ぉう・・・だな」

ふわりと笑った矢嶋は温め終わった弁当を取り出すとポンと西野の頭を撫でて弁当を差し出し「オレも」と笑って西野の隣に腰を下ろす

「オレたち、あの3人みたいな形にはなれなくったって、オレたちはオレたち・・・だろ?オレたちはオレたちで友達なんだしそれは変えられないんだからさ・・・今までみたいに飯食いながらくだらない話したり、熱く将来語ったりさ・・・」
「・・・うん」
「まぁ、なんだ・・・昔からの友達って肩肘張らずに付き合えてオレにはすっげぇ楽なんだわー・・・」
「・・・あーあー・・・なんかすっげぇ今、皐月 光の本、素直にすーって入ってってクッソ。オレももっともっと書いてやるって気分」
「へぇ?よかった?」
「ん・・・ラスト、映画と違ったけど、オレ、映画はえーって感じだったんだ・・・だから今すげぇすっきりした。皐月 光の話はやっぱりそうだよな・・・って」

そう。すっきりした。それが素直な感想
映画を見てもやもやした霧が晴れて里見の話がやっぱり好きだと認めてしまったくらい。それどころか自分がいかに子どものようなワガママを矢嶋にぶつけていたのかだとか、なんて愚かな考えを持っていたのだろう・・・とまで思わされてしまったから

「オレ、今度寛人くんに謝りに行かなきゃなぁ・・・皐月 光に謝るのは癪だから嫌だけど・・・そしたら寛人くんもまた仲良くしてくれるかな・・・」
「え!なにそれ!須野さんとお前友達なの?!マジで?なんか雑誌のインタビュー載ってたけどあれ、マジなの?なんでオレに紹介してくれねぇの?!なぁ!なぁー!」

西野はご飯を口へと運ぶと「お前だってShinGo監督と友達じゃんか」と笑った
久し振りに友人と・・・いや、親友と笑いあうことができた。それがこんなにも楽しく心から笑えるものだっただなんて数時間前までの自分には判らなかったもの。失くし、気付いたこと・・・友情というカタチないモノ・・・人によって違う友情のカタチ






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

つれないキミと売れてる僕10-36 - 01/29 Sun

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
須野の言葉が戻って暫く経ち、須野が過労で撮影が止まっていただなんて多くが忘れた頃にその雑誌が発売され、それを見て雑誌を床へと投げつける1人の男・・・

「クソ・・・クソクソクソクソクソッ!!!」

クシャクシャと髪を掻き回しそのまま髪を引き抜く。ブチブチと髪が抜ける感覚と痛み・・・そして大きな声で叫ぶ

『友情を大事にするイケメン作家、皐月 光の全て』そう書かれたその雑誌に自信満々の里見の写真が載せられた記事
憧れ、目指し、絶望し憎むようになった彼・・・

『今日は友人である俳優の須野 寛人さんと映画監督のShinGo監督についてお話聞けると伺って来たのですけれど、イイのですか?』
『友人というか親友の2人です』
『本当に仲が良いんですね。学生時代からのお付き合いと有名ですが』
『高校1年から・・・もうかなり長くなりますね・・・生きてきた半分あいつらとつるんでるんで』
『皐月先生はその頃から小説を書かれていたとか』
『多分家族の次ぐらいに最初のファンになってくれたのが2人です』
『じゃあ、皐月先生のお話をずっとそばで読んでいたんですねー。羨ましい。この間、映画も公開されましたが、ShinGo監督とはいつ頃から一緒に作りたいと考えていたのでしょう?』
『大学のとき、須野は大学行かなかったけどShinGoとは大学も同じで、映画を撮る研究サークルに半分強制的に入れられていて、脚本書く人間がいないからと書かされ始めたのがきっかけですね・・・小説とは違うけれどいい経験になると思って書きました。まぁ、当時、もうデビューはしていたのであちこちで書いて書いて書きまくってダメだと担当さんからダメ出しされて悔しいから映画でこのネタ使って貰おう・・・とかにもなりましたけど』
『噂によると須野さんとShinGo監督をモデルにした作品も発表されていたとか・・・因みに、どれなんですか?』
『【犬、猫、俺。】は完全にShinGoです』
『そうなんですか?!新しいShinGo監督の一面・・・』
『新しいんですかね・・・オレの中であいつはいつもあんなんなんで・・・須野は頭は悪いけど人を引き込める能力あって、ShinGoは頭もイイから計算しながら人に取り込んでいく能力があって、2人ともタイプは違うけどすごい人間ですよ。オレはなかなか友達を作ることができるタイプじゃないけど、あの2人から影響を受けて、助けられて今ここにいる・・・直接は2人とも調子に乗るから絶対に言わないですけど』

インタビューの内容に新作の内容だとか宣伝だとかがなくてただ須野と葛西との友情記事・・・吐き気がする。吐き気がした・・・友情ごっこ。全くの他人を巻き込んだ友情ごっこに過ぎない・・・でも、それならば無視してしまえばいいのにこんなにもダメージを受ける自分自身がまた許せなくなっていく

読まなければよかった。全てはそうなる。でも、読んでしまった。夢中で。夢中になって全部読み、羨ましいと感じた自分に吐き気を感じる
西野にもいたのだ。大事な友人が・・・一緒に過ごしてきた想い出が・・・楽しく苦しく、それでも笑って分かち合えた友人がいたのに・・・いたのに・・・

「・・・光太郎ー・・・」

ボソリと呟いたその名前は誰にも届くことなくただ西野の耳にジンジンと響いたのだった









「ひっかりーんっ!ひっかりーんっ!ひっかりーんりんりーんっ!!!」
「きもい!うるさい。帰れ」

葛西が雑誌を手にやって来ると里見はうんざりした顔で追い返そうとするが、葛西が目をキラキラさせて里見のインタビューページを開いて見せてくる

「もー!ほんっとほーーーーーんっと・・・ツンデレ?ツンデレーーーー!!!やーんっ!光ちゃん最高ー!オレ、泣いちゃう泣いちゃうー!」
「うるさいっつーの」
「でもでもぉー・・・1人だけご立腹の人がいまーすっ!」

里見は顔を上げる

「ゆりちゃん!!!」
「・・・」
「こーんな長いインタビュー自分がやりたかったのにっ!オレとか須野ちゃんの話は自分の方が絶対に上手く書けたしもっともっとみんなを3人のファンにすることだってできるのにっ!!!・・・って怒ってた」
「・・・いや、それは」
「わぁーかってるってぇー!だからオレもちゃーんとフォローはしといたよぉー?で、エッセイは今度終わりにして、連載小説枠も最終話近くて空きが出るからそこに光入れようーって話にして落ち着いたから」
「・・・は?!」
「うん。だからお話の準備はじめてはじめてー!」
「・・・いや、何の冗談だよ・・・無理だろ。いきなり」
「いやいやぁ、怒ってるゆりちゃんを納得させるにはそれくらいしないとぉー!」
「お前・・・バカ!バカかっ!バーカバーカバーカ」
「えー?ここに『ShinGoは頭が良くて』って書いてあるよぉー?やだなぁ。光、自分で言ったこともう忘れちゃったのー?」

にやにやしながらまた雑誌を見せてくる葛西の頭を掴むと頭をガシガシと揺らした後頭を叩き、笑った








にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

つれないキミと売れてる僕10-35 - 01/28 Sat

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
「・・・寛人・・・?もう大丈夫なのか?ホントに?」
「どうもご迷惑をお掛けしました」
「うっわーーーー!寛人ぉぉぉぉぉぉーーーー!」

山口に抱きしめられると困ったように笑った須野は頭を下げる

「僕、里見がいないとダメなの再確認した」
「・・・いや、んなの判ってんだろ」
「うん。判ってる!」
「スキャンダルになりそうなこと排除したいから本来なら離れるべきなのをお前の場合は里見くんいなかったら役に立たなくなるからそーっと認めて・・・っつか認めざるを得ないんだろーが」
「うんっ。僕ね、里見が好きなんだぁ・・・」

須野を言った通り治した里見は須野にとってやっぱり神のような存在だと思いながら部屋を見回す

「里見くんは?」
「あー・・・あぁ・・・うん。寝てる」
「珍し・・・あぁ・・・そうか」

須野のデレデレした顔を見て察した山口は口を噤むとため息を吐き出す

「里見くん、好きな物なんだったっけ・・・」
「んー、里見はトマト好きだよ。あとビール」
「・・・じゃあ今度何か持って来よう・・・」
「別に要らないっすよ」

声の方へと顔を向けた山口と須野。いつもと同じ完璧な服装で完璧な立ち方、ただ、酷い顔色を隠そうと部屋の中なのに大きめのサングラスをかけての登場。そして須野はきっと脳が反応するよりも早く里見の元へと駆け寄っていく

「大丈夫?どこも痛くない?ごめんね?ごめんね?」
「うっせ。黙れ」

情事の後だと言うことは隠せていなくても里見には強がり隠しておきたいこと

「あー・・・っと、里見くん、ホントキミはすごいね。オレ、絶対無理だろうって思ったけど」
「オレに無理なことはない・・・ってまぁ、オレもホントにこいつが回復するだなんて思ってなかったけど」

里見は少し笑って須野を見る

「それでもすごいよ・・・」
「オレがダメだった時、オレの世話ずっとしてたこいつに比べりゃ・・・」
「・・・」
「あは・・・僕、あの時何も辛くなかったけどねぇ」

デレデレと笑う須野に山口はあの時仕事を慌てて調整しなくちゃいけなかった自分の身になれと言いたかったけれどそれもこの須野と里見の笑顔があるのならイイ。そう思えてしまう

「寛人、今日から行けるな?」
「うん。迷惑かけたのは判ってるから今まで以上に頑張るよ!僕っ!『僕らしい』がちゃんと判ったし」
「・・・そうか・・・じゃあ、里見くん、こいつ連れてもう出るけど」
「どうぞどうぞ。そのうるさいそいつ早く連れてってください」
「うるさいって酷いよ!あ、ご飯はね、冷蔵庫に入れておいたし、サーバーにはコーヒー淹れてあるし。あとっ」
「いいからっ!早く出ていけっつーの」

里見に尻を蹴られると「ううー」と呻き、何度も何度も振り返りながら部屋を出て行く須野を見送ると里見はズルズルと壁に背中を付けたまましゃがみ込む
本当は立ち上がるのさえ体が軋んでキツイ。でも、こうでもしないとまた1日須野は自分の世話をすると言い張り仕事へ行けないことぐらい判っているから・・・

「ったく・・・世話焼けるっつーの」

サングラスを取ると青い顔を上へ向け大きなため息を天井へ吐き出しながら里見は目を瞑った








現場へ着くと何度も何度もあちこちで頭を下げながら挨拶に回る須野。そして撮影が始まると多くが息を飲む

それはついて行った山口も同じ。休む前よりも格段に良くなった演技・・・須野が見つけた答えはどこにあったのか・・・やはりそれは里見が握っているのだろうと思いながらも須野を見つめる

自信にあふれた須野の演技。迷うことない須野・・・今までと全然役柄が違うだとかそんなこと関係ない。共演者が戸惑う程の須野の引き込まれるような演技・・・飲み込まれていく・・・これが人気俳優、須野 寛人なのだと・・・





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

つれないキミと売れてる僕10-34 - 01/27 Fri

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
何度しても慣れない感覚・・・須野の指で慣らされ、内壁から押し上げられ、引き起こされる快楽

「っ・・・」
「里見、大丈夫?」
「も、イケるだろ・・・挿れろって・・・クソ」
「ん・・・痛かったら言ってよ?」
「痛かったらてめぇの顔蹴って止めるから安心しろ」

須野は少し笑うと切なく震える自身を里見の中へとゆっくり押し込んでいく

「っ・・・ぅ・・・ぁ」
「気持ちイイ・・・里見、僕っ・・・里見っ・・・里見ぃ」
「なんだよ・・・お前、快楽を追求してるあのおもちゃよりもオレの方が名器だとか言いたいのか?あぁ?それともオレはそこも完璧なのか・・・」

須野が微笑んで「うん」と頷いて里見にキスをする

「里見は完璧・・・完璧っ・・・」

挿入すると須野は里見を抱きしめてキスをしながらまた愛を告白する

「愛してる・・・里見だけ愛してる。里見、僕ちゃんと聞こえてたから。里見が好きって言ってくれたの聞こえてたから」

里見の内壁がキュッと締まって須野が小さく呻く

「な・・・はぁ?」
「やっぱり夢じゃなかったんだ・・・」
「夢・・・だろ。夢に決まってんだろそんなの」
「里見の言葉が軽いものだなんて僕思ってないから。里見の言葉ひとつひとつ全部大事な物だって僕判ってるよ・・・里見は言葉を大事にするから・・・言葉が重いものだって判ってるから大事なの知ってるから・・・僕も里見の言葉大事だから」

あの日、眠っている須野に呟いた言葉が聞かれていたことが恥ずかしく感じて須野の頬を抓るけれどただにっこり笑った須野は「大好きだよ」とまた言った

「それにね、僕の夢なら里見は僕に好きだなんて言ってくれないかも・・・」
「あぁ?」
「だって・・・さ・・・そんな僕に都合のいい夢見られるわけないよ」
「・・・夢なんだから自由だろ」
「ううん。夢だから現実を見るのかも・・・僕にとって今が夢のような時だもん。里見が僕の腕の中にいて、里見に触れて良くて、里見に好きだって言えて・・・里見が僕の恋人・・・夢でしょ・・・こんな幸せなの」

あまりにも幸せそうな須野の言葉を否定できなくなる

「お前みたいにしょっちゅう・・・じゃねぇけど・・・言ってんだろ・・・」
「うん。幸せなの。大好きなの・・・愛してるの」
「判ったなら動けよ・・・バカ・・・」

時折ビクビクと動く須野自身を感じる。動かされないことで奥でどんどん馴染んで一体化してしまうような感覚が怖い・・・須野の体の一部が自分の体の一部になってしまうんじゃないかと・・・それこそ須野が望む形じゃないのかとまで思えてしまうのが怖い

「光・・・」
「甘えた声出すなバカ」
「奥、今日なんかすごい柔らかくなってきてる気がするんだけど・・・挿ってイイ?」
「は・・・?や・・・ムリ!それ、やめ」
「でも・・・でも、光の中、すごい・・・誘うようにギュウギュウしてくるよ?」
「く・・・クッソ・・・バカ・・・違・・・ぅ・・・」
「うん。判った・・・しない」

ギュッと抱きしめられると里見は再び悪態を小さく吐きながら「好きにしろ」と呟いた

「・・・んっ・・・蕩けそう・・・僕っ・・・気持ちよくて」
「ふぁ・・・ぁ・・・く・・・ん」

須野の腰がグラインドすると里見の指が須野の肩を強く掴み体を震わせる

「っあ・・・光・・・光っ、愛してるっ大好き大好きっ」
「だぁ・・・めっ・・・それっ・・・も、ぁ・・・くっ」
「っんっ・・・ギューギュー気持ちイイっ・・・光も気持ちイイね?ね?達ってるよね?これっ」
「達ってっ・・・ぁ・・・あーーー」

奥の更に奥を擦り上げると内壁へゴンゴンと須野がぶつかる度に目の前に白い光がチカチカと浮かび、快楽で意識を飛ばしそうな感覚

「ぁ・・・ダメ・・・そんな締め付けっ・・・んっ、んっ」
「はっ・・・ヤぁ・・・ひろっ・・・とっ、も・・・」
「光、好き・・・愛してるよ・・・世界中の誰よりも愛してる。僕、光だけ・・・光だけを愛してる・・・どんな人を見ても心動かないよ。光に出逢うまで知らなかったよ。こんな大好きって気持ち・・・光に出逢うまで知らなかったよ・・・」

須野の言葉を遠くなる意識の中で薄らと聞きながら里見は意識を手放した







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

つれないキミと売れてる僕10-33 - 01/26 Thu

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
須野は里見に言われるがままベッドへ上がり、目の前に置かれた見慣れないおもちゃから目を逸らしながら里見を見る

「プッ・・・すげぇなんだこの図!おかしいだろ」
「・・・里見」
「寛人」

名前を呼ばれて目が合うと蕩けるように里見をうっとり見つめる須野に自然と唇を寄せる
愛しい。その表現が正しいだろう
何故、こんな気持ちになるのか里見でも全く理解はできない。でも、この気持ちは本物

「んっ・・・うんっ・・好き」

里見の舌を感じながらも必死に伝えてくる須野の頬を撫で下ろすと首を掴んで強引に舌を深く押し込む
苦しそうなくぐもった声を上げながら受け入れてくる須野に笑みを浮かべながら上顎を舐める

「ふっ・・・んんー」

須野の下肢に手を伸ばし、下着を下げて熱く滾った雄にローションを垂らしながら扱く

「んんっ・・・んっあっ」

漏れ出す声に構わず器用に口内を舌で犯し、須野の雄を追い詰めていき、ビクビクと跳ねるそこへこの間貰ったおもちゃを下ろす

「?!っ!」
「ほーら装着完了ー!今回は萎えずにいけたー」
「っ・・・里見ぃ・・・ヤダっ・・・これ、ヤダぁ」
「泣き言言うな。気持ち悪くねぇだろ?」
「ヤダ・・・」

首を何度も振る須野の顔を手で止める

「見てろ」

その声で須野は里見を見つめるとローションを垂らした里見の昂りを須野の下肢につけられたものと同じものを挿入していく

「っ・・・あー、これ、意外とすげぇ・・・吸い付いてくんじゃん」
「里見」
「オレと同じ様に動かせよ?」
「里見と同じように?」
「ん、そう・・・これハマりそ・・・」
「里見、スゴい色っぽい」

うっとりと里見を見つめる須野。他の男から好きだとかは勿論、色っぽいだなんて聞いたらきっとゾッとするハズなのに須野のこの自分に夢中なのが判る顔で言われると悪い気がしない

「オレと同じ感覚味わってんだぜ?お前も感じろよ」
「里見とっ・・・同じっ・・・んっ、里見、今、これっ・・・」
「気持ちイイよ。今」
「気持ちイイっ?里見、気持ちイイ・・・好きっ!里見、大好きだよ」

その言葉に答える代わりに唇を付ける

「里見、里見」
「っ・・・ヤベ・・・溜まってたしっ・・・も、達けそ」
「気持ちイイんだね?あ、里見がっ・・・感じてるのっ、綺麗」
「バカ・・・っクソ、保たねぇ・・・」
「里見、綺麗、達って?ねぇ、達って?」

里見は目を瞑り、小さく唸ると体を何度か震わせて無機質なその中へと精を吐き出した

「・・・里見、愛してるよ。キスしたい。こっち向いて?」

少し不機嫌そうな里見の唇にキスをすると今度は頬へとキスをする

「お前よりこんな早いってクソムカつく」
「ごめん。でも、でも・・・気持ちよくないわけじゃないと思うんだけど全然・・・ダメ。里見じゃないと僕っ」
「・・・達けねぇの?」
「ん、無理・・・かも」
「んー」

里見は少し考えて汚して転がっているそれを手に取る

「オレじゃねぇとダメ?」
「ん、でも、別に僕は」
「んじゃ、これは?」

須野につけた筒状のおもちゃを取り、投げ捨てると自分が汚した同じものをつけさせる

「っ?え?」
「オレの精液まみれのこれは?」
「里見っ、のっ」
「あー、一気にエロい顔になった」

須野の顔が快楽に歪むと里見は楽しそうに頬を緩ませる

「すっげぇエロい音立ててんの、お前のにオレの出したのが絡みついて音させてんの」
「音っ、恥ずかしっ」
「あーあー、お前あんまりそんなエロい顔させんなよ・・・すげ、エロい」

寝室に粘着質な水音と須野の声が響く

「好きって言うんだろ?なぁ、寛人ー」
「っきぃ・・・好きぃっ」
「気持ちイイ?」
「里見っ、早いっ!それっ、早いからぁ」
「達けよ。オレとお前の精液混ぜてぐちゃぐちゃにしてやっから」
「っ・・・好きっ、愛してるっ」

里見は須野の胸元を吸うと須野は体を震わせた




「達けたなぁ?」

里見の肩で荒い息を整えていた須野が困った顔をして里見を見上げる

「何だよ」
「僕、僕」
「お前がくっそエロい顔すっからオレ、また勃ったんだけど?」
「っ・・・」

須野の手を自身の再び昂ったそこへと導くと須野を挑発するように顎へ、鼻へとキスをする

「オレに触りたくねぇ?」
「触りたいっ・・・でもっ」
「もう、言えなかった分のお前からの『好き』は受け取った」
「っ・・・光」

須野が赤い顔で、欲情した顔で里見の名前を呼ぶと里見は須野にキスをすると押し倒すようにベッドへと倒れこむ

「いいぜ?お前の規格外のコレ、1回出しときゃ多少はキツくねぇって」
「ぇ?」
「バーカ。お前の凶器だからな?なぁ、判ってんの?」
「でもっ」
「オレにしか使えねぇ凶器。でも、オレにしか役に立たないモンならオレに使えよ。全部受け止めてやれるのオレだけだろ?」

須野は泣き出しそうな顔で里見に抱きつくと何度も頷いて里見の肌を吸う

「光、僕の光っ・・・愛してる。愛してるよ」
「ん」
「僕はっ・・・光の全部愛してる。髪も爪も肌も。光が爪を切る度にそれを僕の一部にしたい。光が髪を切る度にこの綺麗な髪を切った人にハサミに嫉妬する。愛してる」

危険な相手だと思う
須野じゃなかったらただの変人だと思って距離を置くだろう。須野だから少しは驚いても受け入れる
恋人だから?いや、須野の一途な愛が里見を変えてきたから。里見も須野へ愛を感じるようになったから








にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

つれないキミと売れてる僕10-32 - 01/25 Wed

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
「山口さんに連絡しろ」
「・・・明日。朝1番にするから・・・今日はもう誰にも邪魔されたくない。里見にずっと言えてなかった分、言いたい。足りない。全然時間が足りない・・・」

須野の荒くなった呼吸が須野の指先から伝わる熱が求められていることを理解するのに十分すぎる材料になる

「おい、待て・・・待てって」
「足りない・・・愛してる。里見が大好き・・・大好き」

毎日でも里見にそう言わなければ、伝えなければ溢れてしまう。それは須野にとって冗談でもなんでもない

「バカ・・・てめぇ・・・盛るなっっつーの」
「違う・・・違う。愛してるの。大好きなの」
「判ったっ・・・判ったからっ」

抱き締められ首筋にキスをされて甘い声で囁かれて

「里見、ホント・・・ホント・・・愛してる」
「っ・・・寛人っ!」
「里見に名前で呼ばれるだけでここがね、痛い。苦しい・・・愛してるって全身で伝えたくて言いたくて張り裂けそうなの」

須野が胸を押さえながら潤んだ瞳で里見を見つめる

「お前っ・・・押し付けんなっつーの。判ったからっ・・・判ったからっ!」
「無視して・・・無視していいから」
「はぁ?」
「里見、里見っ・・・」

里見が須野の体を押し退けながら「待て」と言う。捨てられた犬のような顔をして今すぐにでも里見に触れたいのを我慢している須野に背を向ける

「シャワー浴びるっつーの」

ふわりと一瞬体が浮く感覚・・・後ろから抱きしめられてキスをされる。待てができないのかと文句を言おうと振り返ると首筋に顔を埋めた須野が「一緒に行っていい?」と甘えた声で言うのを小さく舌打ちして須野の頭を叩く

「それ、今日は断らせるつもりねぇだろ。お前」








お互いに服を脱ぎ捨てているのだから先程よりも明らかになった須野の昂ぶり
欲しくて欲しくてたまらない癖に無視していいという須野がやっぱり里見には理解できない

ずっと抱きしめられていて体を洗うことすらまともにできないと思っていると須野が里見の全身を洗い上げ、また抱き締め、愛を耳元で囁いてくる

「須野、のぼせる」

抱きしめられお湯につかるとまた続く耳元での須野の愛の囁き。単調だけれども感情が軽くなったとは感じられない必死な想いが伝わって来るその愛の言葉。決して狭くないはずのバスタブだが、大の男2人がくっつきあって入るには狭すぎるし身動き取れない上に耳元でずっと甘い声で囁かれ続けていては色々な意味でのぼせそうだから

「上がろうか」

風呂から上がると全身を拭かれ、髪を乾かされる
甘えているわけじゃない。須野がしたいことをさせているだけ

「里見、いい匂い」
「お前も同じ匂いだっつーの」

同じ風呂に同じボディソープ。同じ匂いにしか感じないのに須野は里見の首を軽く吸い上げると匂いに酔いしれる

「ベッド!」
「もう寝る?里見、眠い?」
「・・・したくねぇの?オレ、かなり溜まってんだけど」

須野は「したくないわけじゃないけど」と言うけれど須野の下肢は洋服の上からでも判りやすいほど反応している

「お前のそういうところわけわかんねぇ」

里見は呆れるように吐き出すと須野にまた抱きしめられた

「里見を気持ちよくさせたい・・・それに、僕、毎回必死になりすぎて里見に好きって言えなくなる」
「もう充分すぎるほど聞いたっつーの」
「僕、この髪だから僕じゃないみたいなんでしょ?里見をただ気持ちよくさせる方がいい。口でするのもいいけど口塞いだら好きって言えない」

里見はため息を吐きながら須野のまだ少し濡れた髪を撫でる
髪の色を変えたからか前とは違う手触り。最初は見慣れなくて笑ったけれど今こうして里見の前で情けない顔で愛を囁く須野は間違うことのない須野

「オレも気持ちよくて更にオレがお前のエロい顔見れることするか」
「だから」
「その代わりオレに触らなくていい」
「え?」
「こないだダメだったおもちゃ。2つあんだけど?」
「っ・・・里見は、それ、したいの?里見も、するの?」

里見は「おう」と笑うと須野の額を指でつつく

「オレも初体験ー!」

そう言うと須野の腕を掴み立ち上がった




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

つれないキミと売れてる僕10-31 - 01/24 Tue

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
西野が去って2人きりになると須野は里見の腕を掴む

「なんだよ」
『ごめん』
「あぁ?」
『里見にいつも迷惑かけてる』
「かけてねぇし!っつか判っただろ?!お前がオレの所来なかったのはあいつがお前を来させねぇように仕組んでたっつても過言じゃねぇよ」

首を横に振る須野にまだ西野を信じ庇うのかと須野の胸倉を掴む

「てめぇはオレだけなんだったらオレだけを信じてろっつってんだよ」

須野は頷く
それは判っている。里見だけを信じている・・・里見だけを・・・

「はぁ・・・疲れた。もーいいわ。めんどい。お前喋れなくてもオレには関係ねぇな・・・お前もある程度貯金あんだろ?療養するにしてもそれ切り崩して行きゃいい」

須野のあの行動は西野のせいだと判れば須野のストレスが軽減されるのではないかと思っていたのは甘い考えだったのだと里見は諦めた表情でソファに体を委ねる

「オレは仕事できたし、お前はお前でゆっくりすりゃいいだろ」

里見の元に腰を下ろして指先にキスを落として『好きだよ』そう口を動かす

「聞こえねー」

そう言われて再び口を動かす

「オレに伝えたいことあんならちゃんと伝えて来いっ!」

須野は携帯を掴むとすぐに文字を打ち込もうとするのにその手を叩かれる

「簡単に言葉を文字にすんじゃねぇよっ!軽い!」

そう言われて口をはっきり判るように里見に向けて動かす

「聞こえねぇっ!判んねぇ!」

聞こえないなんて当然なのに・・・声が出ないのだから。出したくても伝えたくても出ないのだから聞こえなくても当然なのに・・・だけどどうにか判ってもらいたくて。伝えたくて

「聞こえないから届いてねぇんだよっ!オレにはそれは伝わらねぇんだよっ!」

里見が怒鳴るようにそう言って立ち上がり、部屋へ戻ろうとドアへと向かっていく

「んじゃ、仕事してくる」
「・・・っ・・・きっ!」
「あ?」

里見が振り返る
須野も驚いた顔で喉に触れてもう1度里見に向かって口を開く

「だ・・・ぃ・・・すきっ」

須野の何日かぶりの声・・・里見は笑って須野に手を差し出し近付いてきた須野の首を掴むとくしゃくしゃと空いた手で頭を撫でる

「出んじゃねぇか・・・クソ。バカ!」
「うん・・・うんっ」
「ちゃんとお前の声、オレに伝わってんよ!クソっ、心配させやがって」
「ごめ・・・ごめんね?」
「バーカバーカバーカ」

クシャクシャと撫でられるのが嬉しくて里見が笑っているのが嬉しくて須野も涙を浮かべながら笑った

「里見・・・里見、里見里見里見っ」
「なんだよ」
「大好き・・・好き。大好きっ」

今まで言えなかった分を取り戻すかのように何度も何度も里見を呼び、好きだと言う

「あぁ、そうだな」
「僕、里見が大好き・・・里見だけなの。ホントに・・・ホントに。里見だけ」
「知ってる」
「里見・・・里見ごめんね。里見」

須野の髪をくしゃくしゃにしていた手を止めるとすぐに真剣で潤んだ瞳が里見を見上げ、抱きしめられる
須野の匂い。須野の吐息。須野の甘い声

「愛してる」

自分が書く言葉や自分が口にする言葉とは全然違う。何度も何度も繰り返し里見に対して囁いてきた愛の言葉なのに重みが自分のモノとは全く違う気がしてその言葉が耳に、心に響く

「愛してるんだ」

だからこそ恥ずかしくて照れくさくて・・・
自分は愛される存在。そう思っているけれど今まで誰から言われた言葉よりも重い言葉・・・

「里見、愛してる」

須野の指で打ち込まれたものよりもずっと判る。里見に伝わって来る・・・須野からの愛を・・・









にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

つれないキミと売れてる僕10-30 - 01/23 Mon

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
「っ・・・なんだよっ・・・何も判らないっ!」
「判んねぇよ・・・お前には・・・」

西野は須野を叩いた手が熱くて痛くて逃げるように須野の部屋を出て行く
羨ましかった。里見の本を読んでドキドキした。自分と年齢の変わらない人がこれを書いたのだと思って小説家になろうとした。憧れだった
そして、須野がインタビューの度に里見の話をし、周りに里見の話をすると聞いて矢嶋に会う度に須野と里見の関係を熱く語り、自分が作家デビューできたら須野と里見を超える2人なろう。そう笑いあったのだ
そして、実際にデビューし、矢嶋もドラマの話が舞い込んだ時、約束した通りになると思った。全て順調に進むと思っていた・・・でも・・・

矢嶋のインタビューで西野の話が出ることはなく、番宣のためのバラエティ番組に登場してもやはり西野の話はなくて・・・憎かった。注目されないことが悔しくて、それとは反比例してテレビに出演し笑い順調な矢嶋が憎いと思うようになっていく・・・

「クッソ・・・クソォ」

それから必死で書いて書いて自分の書きたい物を書くのやめて薦められるままに書き綴った。そしてヒットしたのが今回須野の配役で映画化したこのシリーズ。正直、面白みもどこにあるのか判らない。自分を見失いながらのものなのに世間の評価はどんどん上がってまさか自分がイケメン作家とか注目を浴びるだなんて思ってなかったのにそんな方向からも見られるようになって本が売れ、雑誌が売れていく・・・

「お前すげぇじゃんっ!オレのは全部カットされたけど、ここでお前がオレらのこと言ったらオレらもお前の理想の須野 寛人と皐月 光になれるんじゃね?楽しみだな?!お前の小説映画化されたらオレが出るの!よくね?なぁ!晶」

そう軽く言って来た矢嶋にそれじゃただオレを利用しているだけじゃないかと笑った
あの時の矢嶋の顔は驚いていた。過去に自分たちもそうなろう。そう言って自分に友人のことを話せと言ってきたのは西野の方だったのに・・・

「お前はその程度なんだよ。だからオレはお前の話をこれからもしないし、お前もオレの話するな。なかったことにしよう。学生時代友人だったなんてだから?って話だろ」
「いや、晶?」
「もうこれで会うのもやめよ。友達だなんて白ける」
「はぁ?」
「じゃあ、さよなら」

勝手?ワガママ?どうしてそう言われなくてはならないのか・・・自分が頼んだことをやってくれなかったのに同じことをやれと言う方がワガママだと思った

「なんだよっ・・・判んねぇよっ・・・クソっ・・・友情なんてクソくらえ」

西野の言葉は闇に飲まれていく・・・須野を最初に紹介された時に腹が立った。優しい笑顔で本当に楽しそうに里見の話をする須野が・・・憧れていた2人が憎くなっていたから。そして楽しそうに里見の話をして本当に里見の書く話が昔から大好きなのだという須野が差し出してくる本が自分のモノになればイイ・・・そう思うようになっていた

ここから須野との関係を構築し、何年かしたら自分の本を出して友達が書いているんだ。と言ってほしい。薦めてほしい・・・でも、そうなると里見の存在が邪魔になる。須野が里見に陶酔していることぐらい須野の様子から判っていたから。だから引き離して、忘れさせて空いた穴を埋めるように自分が入り込もう・・・そう思ってからは少しずつ少しずつ須野の心から気付かれないように里見の存在を砂の山を削るようにゆっくりそっと削って来た
直接里見を悪く言うと須野の機嫌が悪くなるから判らないように。そして、里見にとってよくないというように・・・

なのに・・・須野から里見が消えることはなかった

里見を消そうとしたら須野が壊れることになった

壊した・・・

大損害・・・

自分が・・・

自分が・・・壊した・・・

「ああああああああああああああああああああああああああ」

西野は真っ暗な部屋で叫ぶと頭を抱えながら床に突っ伏した





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

    ≫ read more

つれないキミと売れてる僕10-29 - 01/22 Sun

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
「撮影も遅れ始めてるし、このまま行くと寛人の状態を公表しないといけない」

そう山口に聞いたのは須野の声が出なくなって、西野の行動の意味が予測できてから少ししてからのこと
須野はただの過労として周りのスタッフには伝えてあって、声が出ないということは伏せられているという状態が続いていた

「あと何日待てる?」
「もーホントギリギリ。毎回みんながお見舞いに行きたいってのを止めるのに必死よ?オレ」
「・・・ですか」
「そりゃ、もちろん、それで寛人のストレスが余計に掛かるってのも判るけど」
「・・・明後日くらいまで山口さんなんとか止めとける?」
「明後日?!そんな・・・できるの?!」
「・・・まぁ、やるだけはやるって感じで。それでダメならやっぱり公表もやむを得ない・・・のかもしれないです」

里見は山口にそう告げると須野にひとつ提案をした

『どういうこと?なんでアキラ呼ぶの?』
「必要だから」

里見が何を考えているのか判らないけれど里見が必要だと言うならと須野は西野に連絡し、西野が須野の部屋へやってくる

「寛人くん大丈夫?!」

須野は少し困った顔で頷き首を振る

「そっか。大丈夫なわけないよねー」
「よぉ」
「あぁ、皐月先生、こんにちは」

須野の部屋に来た西野に一応挨拶した里見に笑顔を浮かべて対応する西野

「聞きましたよ?ボクの記事書いた記者さんにわざわざ連絡してボクのこと探ってたって」
「あぁ、お前は謎だからな」
「ヤダなぁーそんな謎が多いのは皐月先生だってだし、聞かれたらボクなんでも答えるのに」
「友情ってそんな簡単に壊れねぇんだって知らねぇの?」

里見の挑発的な言葉をかわすように西野は笑いながら「なんのことでしょう?」と答える

「白々しい」
「ボクは壊そうだとか壊れるだなんて思ってないですもん。ただ、中身もない小説を評価されすぎてる気がしてただけです」

里見の怒りよりも早く判りやすい須野の表情の変化
声が出ていたらきっと西野の言葉を遮っていたはずで・・・

「・・・なんていうか、皐月先生は見た目いいフレンチなんですよ。1度話の種に行ってみよう。買ってみよう。みたいな。味なんてどうだっていい。行ったら1度読んだらおしまい。話題になるのだって寛人くんだとかShinGo監督がいるからでしょー?そして嫌でも目立つその容姿。寛人くんが陶酔しすぎてるから他にも目を向けた方がいいなーって。寛人くんのためだなーって」
「こいつの為?」
「そうですよー!だって、もったいない!寛人くんってすごい俳優です!ホントすごい!なのに皐月先生のワガママに振り回されて大きな仕事がくるかもしれないチャンスも壊してる!それって寛人くんだけじゃなくて寛人くんの演技楽しみにしてるみんなにとっての損害です」
「へぇ・・・?」

里見を卑下しているというのに里見自身は余裕の表情でそれを聞き流す
実際、慣れているのだ。ひとつひとつの勝手な評価にいちいち怒っていたらキリがないから。実際、自分が須野や葛西のお陰で名前が売れていて本も売れていると言われているのも知っている
でも、それは所詮他人の評価。自分がそうではないと思い、信じ、そして純粋に自分の小説が好きでいてくれるという人間のがいる限り続けていい。そう思っていたから

「寛人くんも判ったでしょう?この人ワガママ言って、寛人くんの優しさに甘えているだけだって・・・実際に寛人くんが呼び出されて戻らなくても平気だったでしょう?」

確かに須野がいなくても里見はなんでもできる。でも、里見がワガママなのではない。小さいワガママでも言ってほしい、それを叶えたいという須野の気持ちで里見はできることも須野に言ってくれていた・・・でも、離れている間に里見がケガをしたから

「作家なんて中身読んでもらって評価されてからの話だろ・・・でも、読んでもらうための話題性っつーのは確かに大事。んなこと判ってんだよ。オレだって。だけどオレはこの顔出したのこの数年のところ・・・その前についてたファンはなんだ?こいつか?違うな・・・地道な努力だ。オレが見た目だけのフレンチ?ふざけんな。仕込みに時間かけて仕上げられた完璧なフレンチだっつーの。顔出しするまでは働きながら命削って書いてたっつーの」
「・・・」
「オレと違ってハート強いこいつがお前の変な勘違いで嫌がらせしたせいでこんなんなってんだぞ?お前が1番損害出してる加害者だっつーの」

西野が須野を見つめ、須野が唇を噛んで指を動かす

『アキラは何がしたかったの?』
「ボクは・・・」
『僕らしく演じろって言ったでしょう?僕は、カッコいいだとか頭良さそうだとか優しいところ・・・全部里見の真似してたんだ。明るくて人気者のフリをしたいときは葛西の真似。僕なんてどこにもないよ。僕は里見に出逢った時から里見になりたくて里見を演じているから。僕自身なんてどこからも求められたことがない。みんな里見を求めてるの。僕は僕だけどみんなが求めているのは僕じゃない。だから僕から里見を奪わないで。里見と葛西を僕の中から奪わないで。里見がいないから里見が足りないから僕らしい演技ができてなかったんだ』

里見の名前はいつも『皐月』だとか『光』で表現していたのにそれを隠すことも忘れた文章を西野は全部を読んで鼻で笑うとその携帯を叩き落とす

「そういうの、依存っていうんだからね!やっぱり寛人くんのためにならないじゃん」
「だから?」
「何?」
「依存してなんで悪いんだよ。誰にでも何らかのよりどころが必要だろ。それが家族だったり恋人だったり友達だったり。で、なんでお前にそれ奪う権利あんの?」

里見の言葉に「バッカみたい」と言って西野が立ち上がる

「お前に須野の気持ちの一部でも判ってりゃ矢嶋との関係も変わってたんだろうよ」

その言葉でカッとなった西野の手が振りかぶられて里見の頬を襲う
でも、その手は里見ではなくてそれに反応した須野の頬を打ち、乾いた音が室内に響いた








にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村






    ≫ read more