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共に祝う日15《最終話》 - 08/22 Tue

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強引で振り回されてばかりだと思ったのに、抱くと宣言していたからそのまま抱かれてしまうのだと思っていたのに、首筋に触れられて少し抱き合ってから増田の細さを確認するかのように少し触れられただけで何もしてこなかった田町

「誕生日まで待つって言ったから何もしない!誕生日っ!心の準備して覚悟しておけ!」

そんな田町の言葉に優しさを感じて増田は小さく微笑んだ

「あー!増田くんが笑ってる!レアだ!レア!!」

大講義室で思い出し笑いをしてしまったことを後悔しながら近付いてきた同じゼミの女性グループに増田は「笑ってた?」ととぼけて見せる

「笑ってたってー!」
「なんかイイことあったのー?」
「いや・・・あぁ・・・あった・・・のかも」
「えー!なになにー?増田ちゃんのイイことってなーにー?!」

女性たちに囲まれている増田を割るように入ってきた田町が牽制するかのように増田の肩に手を回し、後ろの机を乗り越えて増田の隣の席を確保する

「・・・お前、カバンは?」
「んー、昼休み前なのにこの講義延長したりすんだろー?だから場所取りに置いてきた」
「教科書は」
「増田の見る」
「・・・」

小さくため息を吐く増田
でも、相変わらず振り回してくれる田町に悪い気はしないからペンとルーズリーフを田町の目の前に置く

「やっぱり増田くんイイことあったでしょー!また笑ってるもんー」
「・・・そう?」

意識しない内に笑顔になってしまう。田町が隣にいるから。友達じゃなくて恋人として・・・

「あー!!!首のそれっ!!そっか・・・彼女かぁー・・・うっわー!でもイイー!増田くんは目の保養要員ーーーっ!」
「目の保養・・・」
「そー!じゃーまたゼミの時間にねー!」

手を振った女性グループが少し離れた場所に席を取るのを見て小さく首を傾げる増田

「首・・・?」
「んー、なんででしょーか?」

ニコニコと笑う田町に不穏さを感じてハッとして席を立つがすぐに田町の腕に止められる

「もうじき始まるぞ?」
「・・・どこにつけた・・・」
「今まで気付かなかったなら今更鏡見に行っても見えない場所だろー?」
「・・・お前・・・」

首を押さえながら田町に促されて再び席に着く増田
白い肌が恥ずかしさでピンクに染まるのを見て田町は満足そうに机に肘をつきながら微笑む

「増田、モテるからなー・・・悪い虫がつかないように」
「・・・オレは別に・・・浮気とか・・・」
「んー。でも、オレが嫌だ。増田には嫉妬深い恋人がいますよーって皆に知っておいてほしい」

自分勝手。どこにつけられたのかすらわからないキスマークを皆に見られるというだけでどれだけ増田が恥ずかしい思いをするかだなんて関係ない・・・

「あと、オレ、ペアリングとか強要するほうだから」
「っ?!」
「あと、電話もするし、メールもすぐに返事欲しいから」
「うん・・・」
「出掛ける時は誰と遊ぶとか教えてほしいし、勝手に誰かと遊んでたの判ったらケンカになるっての覚えとけよ」

増田は小さく笑って「うん」と頷いた
今までも勝手な田町に振り回されてきた。きっとこれからも振り回されていくのが判るけれど、自分には強引な田町が丁度いいと感じるから

全然違う性格。でも、全く似ていないわけじゃない・・・それは誕生日が同じだから?

いや、きっと誕生日は関係ない。全く違う性格でもどこか考えが似ていたり、好みが似ている。だから惹かれたのだ・・・

きっかけが誕生日だっただけ。これから一緒に祝う誕生日だっただけ

「誕生日が楽しみだな・・・」

そう増田の呟きが田町の耳に入って恥ずかしそうに横を向くと「オレのほうが楽しみにしてるけど」と呟いた






共に祝う日 おしまいおしまい





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共に祝う日14 - 08/21 Mon

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自分は女じゃない。だから、女の子に接するように接してもらわなくても構わない
旅行代金だって、自分の分を払うのは当然だと思うし、増田もそれを望んでいる

「オレは女の子じゃないから」
「んー。知ってる」
「だから、その旅行っつーのも金払うし・・・」
「あー、そういうんじゃない・・・」

じゃあ、どういう意味なのかと考えるが増田には判らなくて首を振った

「オレ、誕生日にちゃんと告白するっつっただろ」
「ん・・・」
「それと同時にお前のコト抱くっつったの覚えてね?」

カッと頬を赤く染める増田
そこまで本気だったのかと田町を見つめる。本気で、男のこの体を抱くというのだろうか。彼女との情事もどうしても乗り越えられなかった。人間の敏感な部分に触れ、他人の体に入り込むのだ。増田には乗り越えられなかった壁なのに、田町はどうしたいのか・・・

「まぁ、あれは勢いだったわけだけど・・・」

あぁ、やっぱり。とホッとした顔を見て田町は増田の鼻を抓む

「お前、勘違いしてっからな・・・」
「え」
「だから・・・オレはさー、増田ちゃんと付き合おうとか抱こうって前向きに考えてたわけ。んで、調べるだろ?ネットを駆使して!そしたら・・・やっぱ・・・お前に負担かかるじゃんか・・・考えたら判る話なんだけど」
「・・・本気・・・なのか?」

信じられない・・・という顔で田町を見つめると田町は笑う

「だって、好きな奴抱きたい人だから。オレ」
「・・・でも」
「あぁ、お前は抱かれてて。オレに」

自分勝手・・・でも、久し振りに振り回される感覚にふわふわとしたいい気分を感じて俯いて頷けばいいのか迷う
ただ黙って頷くことが田町を喜ばせることは判っている。でも、気持ち悪くなったら?彼女の時のように傷つけてしまうんじゃないか・・・

「努力はするけどー・・・でも、痛いって泣こうが喚こうがオレ、抱くから。決めたから」
「・・・」
「けど、なんつーの・・・それでオレのコト嫌いって言われたら傷つくわけだ。だから・・・サプラーイズッ!って美味いメシ食って、イイホテル泊まって・・・イイ彼氏してたらセックス上手くいかなくても嫌われないんじゃねぇかなって」
「・・・田町・・・」

いつもの田町じゃない・・・と思わず小さく吹き出すと田町のため息が聞こえる

「やっぱり思ってたオレと違うーとかお前も言うー?」
「ん・・・なんか・・・違うかも」
「それ、よく言われるんだよなぁ・・・自分勝手だとか遊んでそうとか遊ばれそうとか・・・で、付き合ったら重いーみたいな・・・増田もこんなのイヤ?」

田町が急に可愛く見えて首を振る
田町に振り回されたい。束縛されたい。すべての感情を暴かれたい

「・・・旅行のお金は出す・・・」
「えー・・・オレ、バイト頑張ってんのにやる気削ぐようなこと言うなよ」
「田町に任せてたら誕生日まで遊ぶ時間もないってことだろ」
「・・・あー?」
「それに田町、とんでもないホテルとか取りそうだし」
「スペシャルプランで考えるけど!」

旅行会社のパンフレットを掴むと田町の胸にそれを押し付ける

「一緒に考えよう。予算内で」
「・・・おう・・・」
「それと・・・」
「まだあんのかよー」
「・・・告白、今・・・欲しい・・・」
「はぁ?だから」
「今・・・言ってほしい」

田町は小さく俯いてため息を吐くとひとつ息を吸う

「言わなくちゃ判んねぇの?さっきヤキモチ妬いてカッコ悪い姿見せたオレが言わないとダメ?お前に秘密でバイト増やして旅行しようとしてんのももうなんでか判ってんだろ」
「・・・誕生日が同じだから興味を持ったんだと思ったよ・・・でも、誕生日が同じでもその後に繋がるかそうじゃないかはまた別の話・・・さっきの子、誕生日同じって聞いて同じなんだ。とは思ったけど、今、顔も思い出せないんだ・・・誕生日が同じだったら趣味は合うのかだとか考え方だとかどうなんだろとか田町のときは思ったのに」
「それって、一目惚れしたって言ってんの?」
「いや、オレ、別に男に興味ないし」
「えー、増田ちゃん、女の子にも興味ないでしょー」

確かに、言われてみればそうだったと思い出して小さく唸ると田町の手を握る

「オレから手を繋ぎたいって思ったこともない」
「・・・」
「だから、キスとかも、なんとなくそういう雰囲気になって使命感で動くばかりだったけど・・・今、田町にキスしたい。キスしてほしい」

増田の望みとあれば・・・とすぐに唇を塞がれて床に押し倒される

「今からお前、オレの彼氏な?」
「・・・うん」
「あー、ムラムラするんですけどー!!!触って欲しいんですけどーーーっ!」
「・・・」

困った顔で田町の顔を見上げる

「その顔、逆効果だからな?」

そう言って増田の首筋に唇を這わせた











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共に祝う日13 - 08/20 Sun

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「オレは・・・」

言わないと後悔する。今、この感情を曝け出さないと後悔する・・・

「好き・・・だと思う」

増田の言葉に張り詰めていた空気を吐き出すように大きなため息を吐く田町

「・・・やばい。超気ぃ抜けた・・・や、違う!『思う』ってなんだよ!言い切れよ!」
「そんなのっ・・・っ・・・田町だって言ってないっ!」
「あー・・・?オレ?言っただろ・・・あん時」
「はぁ?・・・はぁ・・・」

あの時、確か「好きかも」とか言ったのは田町。自分のことは棚に上げて自分にばかり求めてくるのもいつも通り・・・でも、田町に振り回されるのは悪くないと思っている

「・・・田町、最近来なかっただろ・・・」
「んー。バイト増やしてた」
「田町に振り回されないの・・・寂しく感じた」
「・・・うっわ・・・うっわー・・・何だよ・・・それ・・・」

田町が両手で顔を覆うとその手をそっと顔から離す

「・・・え・・・ちょ・・・え?!」

視界を覆っていた手を剥がされると至近距離に見える増田の顔。メガネを外した増田の顔

そして、唇に触れる感覚・・・柔らかい唇を押し付けられて驚き、戸惑った田町も目を閉じて増田の唇を味わう

唇が離れるとまたすぐに触れたくなって小さく息を吸い込んだ後またすぐに唇を合わせる。リップ音が煩い・・・チュッチュッと短い音を立ててお互いの唇を吸い合う。もっと欲しくて・・・もっともっと欲しくて・・・

「ストップっ!待った待ったっ!増田ちゃん待ったっ!!!」

ぎゅっと肩を掴まれて増田は田町を見上げる

「あー、何もー・・・この子・・・志郎ちゃんのシロウくんが期待して反応しちゃうっつーの・・・もー、結構長いコトご無沙汰だったし期待しちゃうっつーの!」
「・・・田町」
「なんだよ・・・こっちは溜まってんの。これは生理現象っ!ムラムラしちゃうから離れて。離れてー」
「誕生日・・・告白してくれる・・・って」
「あー?・・・そだな・・・そんなこと言ったかも」
「今・・・欲しい」
「・・・」

言葉を詰まらせた田町が増田を見ると一生懸命正直な気持ちを打ち明けたのだろうと予測できる程、顔を赤くし、俯いていて少し頭を掻いた後、増田の頬を掴んでキスを落とす
茶化すのは簡単だけれど、元々増田は茶化されるのも好きじゃない様子だった

「さて、問題です」
「・・・?」
「なんのためにバイト増やしてたでしょうかー」
「・・・お金のためだろ。そんなの」
「いやいや、何その当たり前の答え!そのお金はなんで必要になったかって問題だろーよ」
「・・・またパチスロで負けたとか・・・」
「おい・・・待てよ・・・オレら今甘い空気だったよな?そこでなんでそんな現実的・・・いや、オレが最低っぽい空気になっちゃうわけ?」
「あぁ・・・ごめん」

ため息を吐いた田町が「まぁ、それが増田なんだろうけど」と呟くとカバンを掴んで引っ張り、近くへと手繰り寄せ、取り出した旅行のパンフレット

「・・・?旅行行くのか・・・」
「お前となっ!!!」

そんな話聞いてない・・・一緒に旅行をしようだとかしたいだとかそんな話すらしたことがなかったはずだった

「・・・聞いてない」
「ん。言ってない」
「え・・・」

直前で言われたとしてもその時、お金がなかったら行けないのに、どうする気だったのかと言いかけたところで真の意味に気付いて頬を赤く染めた









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共に祝う日12 - 08/19 Sat

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レポートを見せてと言われたのに、どう考えても向かっているのは教室じゃない。それどころか大学を出る勢いに掴まれた腕を振り払う

「何?レポートだろ?オレ、まだこの後授業」
「イイから付き合え」
「・・・え・・・」

さっきまでの軽い口調じゃなくてどこか怖い雰囲気の田町に黙ってついて行く
彼女らの誰かが田町が今、興味のある女の子だったのかと思ってヤキモチなのかと口を閉じる

「・・・腕、痛いから」
「じゃあ黙ってついてこい」

自分は彼女らに何の感情もないのに・・・これから同じゼミという以外で関わることもあり得ないのに・・・

「オレ」
「黙って」

田町に言われて口を閉じて、そのまま大学近くの田町の部屋へ着くまで黙って田町の後ろを歩き続けた









ドサリ・・・部屋に荷物を降ろされてここまで田町がずっと増田の荷物を持って来たことに気付く

「・・・田町・・・?」
「それで・・・あいつに興味持った?」
「・・・え?」
「クッソカッコ悪いーーー!!!あークソーーー!オレカッコ悪いーーー」
「・・・何・・・え?」

急にいつもの田町が頭を抱えて床にしゃがみ込んだのを見て目を丸くする

「ヤキモチだよ!ヤキモチっ!!!」
「あ・・・」

やっぱり彼女らの誰かを狙っていたのだと思って首を振る

「オレは別にどの子も」
「あー?」
「だから安心していい」

少しずれたメガネを押し上げると荷物に手を掛ける

「何が安心?」
「・・・だから」
「もう忘れたわけ?」
「・・・何・・・?」

荷物を持った手を強い力で掴まれる

「それともオレのコトもうどうでもイイ?」
「・・・」

ブワッとあの日の感覚が蘇る・・・あれから田町は今まで通りの友人として振舞っていて、あんな甘い声を出すことも、まるで恋人のように触れてくることもなかったのに今のこの真っ直ぐな目と熱い手はあの日を思い出してしまうもの

「・・・レポートは?」
「誤魔化すな・・・レポートなんてもうとっくに書いてある」
「・・・珍しい・・・」
「増田が書いてないっつったらすぐに見せてやるつもりだった。明日のレポートも先週の課題も全部っ!でも、お前、基本誰にも頼らないから今までチャンスもなかったけど」
「・・・え」

そう言えば、以前はよく課題だとかレポートを見せてほしいと頼まれていたのにずっと聞かれもしなかったのを思い出す

「オレの本気見せてやるって言ったろ・・・忘れた?」

忘れるわけがない・・・でも、田町は忘れていると思った。最近は部屋に来る回数も減ったし、話する機会も減っていたから余計に・・・

「あの子、同じ誕生日っつってたけど?」
「・・・だから?」
「あいつ、増田のコト彼氏にしたいとか思ってんだろ・・・ブランド好きそうだしイケメン連れて歩きたいって思ってる」
「オレは別に」
「嫌だ!」

熱い・・・田町の声が聞こえてくる耳が。掴まれたままの腕が・・・真っすぐな目に見つめられる頬が

「増田があいつに興味持つのも好きになるのも嫌だ。オレのこともう好きじゃねぇの?」

そして好きだという感情が溢れてくる胸が熱い

「約束の日までまだ少しあるけど、フライングかもだけど聞かせろよ・・・オレのことは好き?まだ好き?オレ、ひとりで空回りとかバカみたいだから言えよ」

まだ・・・?

あの日、ただの衝動で、一時的な感情でじゃなくて、この半年、自分と同じように・・・?

漏れる息が熱い・・・じんじんとあの日と同じように下肢が疼く・・・田町に触れたいと思う。田町に触れて欲しいと・・・











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共に祝う日11 - 08/18 Fri

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「そ、そんな・・・バカだろ。信じられるわけない」
「んー、確かにそーだよなぁ。やりたいだけっぽいかー」
「やりっ・・・」

顔を赤くし、困った顔が可愛く見えるのは事実だけれど、これを信じてもらう方法は判らない
同じ誕生日だからと言って気持ちが読めるわけでもなんでもない。ただ同じ日に生まれたというだけなのだから

「じゃあさー・・・なんつーの?次の誕生日にちゃんと告白とかしたら信じる?」
「・・・」

この間来た2人の誕生日。次の誕生日なんてずっと先の話で、こんな気持ちも忘れて消え去るのではないかと思える程遠い
自分の気持ちに気付いてしまった増田にはすごく遠い日

でも、気付いてしまったこの感情を忘れるのにも長い時間が必要だから

「判った」
「言っておくけど!オレ、こんな時間かけたり手を掛けたりしたことないからなっ!だからっ!次の誕生日っ!その日に増田のこと抱いちゃうからなっ!」
「・・・告白がどうのってさっきと言ってることが」
「だからっ!オレは本物だって思うからっ!今の気持ち、この衝動、次の誕生日でもあるって信じてるから」

真っ直ぐな田町の目をまともに見ることすら叶わない

「増田も覚悟が必要だろうから待つだけ・・・」
「っ・・・オレの気持ちだって変わるかもっ!!!お前だって今のが違うって」
「思わない・・・増田も思わないで」
「勝手・・・だ・・・」

田町が勝手な男だなんて知っている。でも、自分にはないそんなところにも憧れ、惹かれていたのだと今なら判る・・・同じ日に生まれて、星占いも誕生日占いも見る欄は同じはずなのに。誕生日の性格診断だって見るページは同じなのにこんなにも違うだなんて・・・ないモノを埋めるように欲しかった。田町のことが・・・欲しかった

「増田ぁ・・・」

ギュッと抱きしめられる。でも、恐怖はない・・・

「次の誕生日までは今まで通り友達だろ・・・」
「この勃っちゃったのはどうしたらいいー」
「知らないし!っていうかそんなのは次の誕生日が来たって知らないし」
「冷たいなぁ・・・お前ー。こういう時はアレだろ?『じゃあ、ヌきっこする?』とか顔赤くして聞いてくれる場面だろ」
「そんな男、どこにいるんだよ・・・」

顔を見合わせると小さく吹き出す

「あークソーーー!次の誕生日とか言ったオレのバカー!クリスマスとかにしとくべきだったー!!!キスしたい。エッチしたいっ!!!」
「それ、溜まってるだけだろ・・・」
「違ぇしっ!!!」

クリスマス・・・それすらも遠い未来に感じる
こんな感情に気付くまでは日々はなんとなく過ぎていってなんとなく1年が終わっていたのに・・・

胸を苦しくさせる感情は時の感じ方すら変えてしまうのだと思うと小さく口元を緩める

「なんだよ・・・オレ、我慢してんのにその顔煽ってんの?」
「はぁ?」
「美人って近くで見ても美人なんだなぁ・・・」
「オレはっ!!!」
「男でも美人は美人だろ・・・勃起治まらないーーーあー、ヌいてイイ?」
「なっ!!!お前っ!こんなところでボタン外すな!見たくないっ!!!」

声を荒げた増田に笑って頭を撫でると「冗談」と増田から体を離す

「待つって決めたんだから・・・待つ」
「・・・待つ・・・じゃないだろ」
「オレの本気を見せろって?・・・あと300日と少し・・・か。覚悟しとけよ?オレのイイところめいっぱい見せてやっから」












そう言っていたけれど、やっぱり時の流れは人の一時的な感情なんて簡単に忘れさせてしまうものなのだ・・・と増田は授業の空き時間に大学のカフェスペースでレポートを書く
あれから半年と少し。新入生も入って来たし、これからは就職活動のことも考えなくてはいけない

「あー、増田くんだー」
「・・・あぁ」

確か、今年からのゼミで一緒の女の子。増田にはその程度の認識だったけれど向こうには違うようですぐに近くのテーブルに着く女生徒たち

「レポート?」
「そう」
「あ、明日の2限?」
「そう」
「あたし書いたから見せてあげよっか?」
「あー・・・もう終わるから大丈夫」

そっか。と残念そうに呟いたのはきっと増田の容姿に惹かれて接点を持ちたいとどこか下心のようなものを持っているからだろうが、増田は気付かない

「あー、そうだ。増田くんって何座ー?」
「え?」

顔を上げた増田に女生徒の1人がファッション雑誌を持ち上げて「星占いー」と言うからなんとなく質問に答える増田

「あー!私と同じだー!えー誕生日いつなのー?」
「-月」
「何日ー?」
「-日・・・」

聞かれたことに答えるだけ。いつもの増田の反応・・・自分から何かを言うことはなかったけれど、聞いたことは正直に答えるのだ

「えー!ウソ!」
「・・・?」
「同じ!!!」
「まーすだちゃーーーんっ」

驚いた顔を上げて女生徒を見る増田の体に突然重いものがのしかかる

「重・・・」
「あっはー!何何ー?増田と誕生日一緒なのー?んじゃオレも同じだ!」
「えー!田町もぉぉー?!」

背中に掛けられた体重が田町のものだなんて顔を見なくても声を聞かなくても判っていた。自分にこんなスキンシップをしてくる相手は田町ぐらいしかいないから

「あー!増田!お前それ明日のレポート?!見せて見せて!オレやってないから見せて見せてー」

そう言う田町が増田のパソコンを勝手に閉じて荷物を持つと増田を引き摺るように女生徒たちから離れていく

「・・・何アレ・・・」
「超邪魔じゃん。田町の奴」

女生徒たちのブーイングなんて田町にも増田にももう聞こえていなかった














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共に祝う日10 - 08/17 Thu

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自分の中にも感情があると知った。胸の痛みを感じるのも知った。興味があるのは同じ誕生日の田町だけ・・・だからもし、暴かれたらもっともっと夢中になる気がして。自分じゃ乗り越えられないものを田町が乗り越えさせてくれる気がして・・・

「もっと抵抗しねぇの?」
「っ!!!・・・しても・・・無駄だろ・・・力じゃ敵わないんだから」
「んー、確かに?オレ、増田よりも体重あるし、薄っぺらなお前よりも力あるけど、これじゃ同意しているとしか思えねぇよ?」

試しに腕に力を入れてみる。振り払うように押さえ込まれている腕を持ち上げようと・・・でも、余計に力を込められてやっぱり無駄だったと力を入れるのを諦める

「やっぱりオレのコト好きなんだろ?言えよ。オレのコトが好きって」
「お前の思い込み」
「逃げたきゃ自由な足でオレのコト蹴り飛ばせばよくね?」
「・・・」

気付かなかった。足は自由で、この体勢から上手く力が入るかは判らないけれど、急所を狙うこともできたはずで。でも、田町が痛いのは・・・可哀想で

「まず認めろよ」
「何をっ」
「好きって・・・確かにセックスは生々しくて汚くてドロドロだ。でも、ひとつになりたい願望、あんだろ?好きな奴と繋がりたいって願望、お前にもあんだろ?目に見えない心の繋がりだけじゃなくて。体と体をホントに目に見える形で繋げたいって」

じわり・・・下肢に感じる熱・・・繋がりたい・・・彼女に感じなかったこの感覚・・・生々しくて汚くて。苦手だと思っていたのに、夢で田町にされたことは嫌だと思わなかった・・・どこか安心感も感じていて・・・

「手、離せ・・・」
「・・・離してほしい?」
「離して・・・」

震える瞳が今にも泣きだしそうで田町はため息を吐きだすとそっと掴んでいた手を離す。欲しくて白い腕・・・今までの彼女よりも細く、白い腕。骨ばっていてどこにも柔らかさを感じなかったのに、血管の浮いた首だとか、酷く浮き上がった鎖骨が扇情的に見えてしまう

増田の解放された両腕はすぐに増田の顔を覆って体を震わせる増田が泣いているのだと判る

「・・・そんなビビった?」
「・・・」
「ん?なんか言った?」

同じ誕生日の女性が現れたらその女性を好きになる。付き合える・・・そう言われて、自分自身には全く興味を持ってもらえなかったのだと思うとそれが悲しくて、酷く腹が立った・・・増田の長い睫毛だとか、どこか中性的な外見だけじゃなくて、最初からきっと田町も親近感を感じていた。同じ生年月日の相手・・・

「なぁ、増田・・・」
「好き・・・だよ」
「・・・え?」
「お前が言わなかったら気付かないでいられたのにっ・・・こんなに苦しいもんだって知ることもなかったのにっ・・・」

増田の顔が見たくて頭を抱えている両腕を剥がそうとするのにどうにも剥がせなくて床に転がったままの増田を逃げられないように覆いかぶさる

「初恋?」
「・・・判んねぇよっ・・・でもっ・・・でも・・・オレは知らない・・・セックスなんて気持ち悪い・・・でも、でも・・・」
「オレとはしてみたい?」
「嫌だ・・・怖い」
「・・・あー、うん。さっき怖がらせた。悪い・・・顔見せて?」

田町の言葉に腕を緩めると優しく腕を取られてさっきとは違う力で顔の前から腕を退けられる

「じゃあ、まず、増田の判ってることから順番な・・・」
「・・・?」
「キス、したことあるんだろ?」
「あ・・・」

夢で見た優しく微笑む田町・・・実際に見たかったこの顔・・・夢だけじゃなくて、実際に・・・いや、これは夢なのか・・・夢と現実が判らなくなる

「ほら・・・」

唇をつけられる・・・正直、唇という粘膜が合わさるのも好きじゃなった。気持ちイイという感じはどこにもなくて、相手の唾液でヌルヌルする感覚が苦手だった・・・でも、今は違う・・・
柔らかい唇が触れて暫くすると舌で唇を舐められて・・・自分から唇を開いて田町の舌を受け入れる

「何・・・キスでそんな顔になっちゃうんだ?」
「え・・・」
「トロトロになっちゃってんだろ・・・」

自分がどんな顔になっているのか判らなくて酷く恥ずかしい・・・でも、あの日からずっと感じていた胸の痛みはいつの間にかなくなっていて、今、気分は悪くない

「・・・あー、マジでやばいかも・・・増田ならホント男とかそういうのなくイケちゃう・・・」
「っ・・・」
「あぁ・・・違うな・・・」

ニッと笑った田町がそっと増田の頭を撫でる

「オレも増田が好きだってことなんだな。多分」












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共に祝う日9 - 08/16 Wed

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気付いてしまったからといって、日常が大幅に変化するわけでもない。どう顔を合わせたらいいのか判らなかったけれど、いざ学校で顔を合わせたらいつも通りの自分でいられたし、それに対して田町の態度も変わるわけでもなかった

「なーなー!前回オレ休んだけどプリント配られた?今日、なんかプリントの話してて焦ったんだけどー」
「ん・・・」

専攻まで同じで取っている授業も殆ど同じものばかり。前回、田町がこの講義に出ていなかったことくらい気付いてて、余分にプリントを貰っておいたものを差し出す

「うっわー!オレのわざわざ取っといてくれたわけ?優しーっ!やっぱりお前オレのコト大好きだな!」
「・・・」

ただ余分にプリントを取っておいた。確かに頼まれたワケじゃなかったけれど、自然に脳が反応して行動した・・・あの日から、田町が自分のことを好きなんじゃないかと言った日から頻繁に田町の口から出る「オレのコト好きだろ」という言葉・・・ため息を吐くと顔を上げて分厚いメガネの奥から田町を見つめる

「それで、もし、ホントにオレがお前のコト好きだったらどうするわけ?」

単純な疑問。好きかもしれない。あんな夢をもう何度も見た。だから増田の中でももう確定するしかない想い。確定したところで何も変わらないのだから。この胸の痛み以外は変わらないのだから

「んー?何も変わらないな」
「・・・なんだよそれ」
「オレはアレだ。増田ならイケるなーとは思うけど、増田ってセックス嫌いとか言うだろ?だったらどうにもなんないじゃん」
「・・・心の繋がり的な」
「プフッ!!!」
「なんだよっ!」

田町に吹き出されてカッと頬が熱くなる
確かに、恥ずかしいことを言った気はするけれど、吹き出されるようなものだったかと考えると、増田の中では普通のことで自分の考えをバカにされた気すらする

「まぁ、来年も一緒に誕生日会しようなぁー?」
「なんだよ・・・自分でモテないの判ってるって話か」
「バァカ!オレはその気になりゃ彼女の1人や2人できるっつーの!けど来年もお前と一緒にお祝いしようっつって予約してんだよ」
「オレは彼女と過ごすかも」
「無理だろー・・・基本、増田ちゃんは人に興味持てねぇの判っちゃったしぃー!」

人に興味持てない・・・判っている。判っているからこそ言われるのは腹が立つ・・・いや、この腹が立つということも基本的に人に対して思わないこと。田町に言われるから感じる感情・・・悔しくて仕方ない

「っ・・・同じ誕生日の女の子が現れるかも」
「・・・なにそれ・・・」
「オレはっ・・・確かにお前に妙な親近感抱いてるっ!それは同じ誕生日だからっ!だから・・・同じように同じ誕生日の女の子がいたら・・・その方が普通だろ」

同じ誕生日の人間が目の前にいたのは偶然。これからもそんな偶然がないとも言い切れない

「・・・すげぇムカつく」
「勝手にムカついてろよ」

妙にスッキリした部屋は漫画の数も減ってしまったし、することがなくてただ顔を伏せる

ドンッ

肩を押されると突然のことでそのまま床に転がる

「・・・え」

怒りに満ちた顔の田町にのしかかられていて湧き上がって来る恐怖。非力な自分じゃ敵わない相手・・・床に押さえつけられた肩だとか、腕が酷く痛んで顔を歪める

「思いついた」
「・・・痛い・・・田町、ふざけんのもいい加減に」
「セックスするのはイヤでも、されんのは大丈夫かもだろ」
「・・・何言って・・・」
「挿れんの怖くて苦手だって思ったって挿れられるのはどうだよ」
「・・・落ち着け・・・落ち着け・・・ムリ・・・ムリだって・・・第一、オレ、男だしっ!」
「ん・・・男だな」
「挿れるもなにも・・・そんなところ」

組み敷いていると長い睫毛が恐怖で震えているのが見える。恐怖で震えているのにどこか期待したように上気している頬の色に興奮さえ覚える

「穴、あんじゃん」
「・・・それ・・・え・・・ヤダ・・・ムリ!ムリムリムリ」
「オレのコト好きだろ・・・認めろよ。怖がらずに。オレの全部求めたらオレもお前にやれる」

怖がらず・・・こわがるな・・・夢の通りの言葉。でも、夢の中の田町はもっと優しく微笑んでいて、こんな狂暴さはどこにも感じられなかったのに・・・怖い。怖い・・・でも、でも・・・




暴いてほしい






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共に祝う日8 - 08/15 Tue

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「あ、図星?」
「・・・気持ち悪いこと言ってんなよ・・・」
「いやー、だってさ・・・なぁ?友香ちゃんあんなにイイ子なのに友香ちゃんよりもオレに気を利かせるっていうさー・・・しかも無意識だし?」
「それは」
「あ、それにあれだ!同じ誕生日だから」

同じ誕生日。出逢った時から知っていた。でも、だからどうだというのだ

「あのマンガ好きなんじゃん?主人公とその幼馴染が同じ誕生日だから!2人に親近感を覚えてんだろ?」
「・・・」

それはその通り・・・それと田町のことが好きだということは繋がらない

「だから同じ誕生日のオレにも親近感覚えてオレのコト好きとかそういうやつなんじゃねぇの?」
「や・・・お前、男だし・・・」
「そう。そう!!!でも、オレ、お前ならイケっかもーみたいな」
「はぁ?気持ち悪いコト言ってんなよ・・・出て行けよ。もう、意味判んねぇ・・・気持ち悪い」
「や、待てってー!じゃあナシ!な?!ナシにしよ!んで、とりあえずこの話忘れてメシ行こう」

勝手に話を振って勝手に忘れろ・・・勝手だとは思ったけれど、これもいつものことだから増田は黙って落としたカバンを持ち上げて肩に掛けると髪をくしゃくしゃと掻き回した






意識をするというのは単純なもので、さっきまで何とも思っていなかったことがふとしたきっかけで気になって仕方なくなることがある
それが見たものなのか、匂いなのかそれとも誰かの発言なのか・・・

「・・・好き・・・」

友人に好きなのではないかと問われ、すぐに気持ちが悪いと否定したけれど、考えれば考える程ぐるぐると頭の中を回るその言葉

めんどうなのに誰かのために何かをしたいと勝手に体が動くことが好きという感情ならば田町に言われた通り、自分は田町のことが好きなのか・・・

「ない・・・」

ひとりベッドで天井を見上げて自分の浮き上がった感情を否定する
確かに楽しい。自分と全然違う性格。なのにどこか気が合う・・・楽しい・・・

「楽しい・・・?」

友香と付き合っていた3年間、デートして、遊んで楽しいと感じたことはあっただろうか。何かをしてやりたいと思ったことがあっただろうか

「ウソだ・・・違うっ!」

浮かんできた感情に強く否定の言葉を吐いて布団を頭からかぶると無理矢理目を瞑った







荒い吐息が耳に響く・・・
肌の色。腕・・・胸・・・固く逞しそうな胸・・・固い胸?!

目の前をしっかりと見上げると見慣れた友人の顔が紅潮し、いつもよりも優しく微笑んで名前を呼びながら髪に触れようとする

口を開いて何かを言っているのに聞こえない・・・聞こえない。何を言っているのか判らない・・・

視線を下げれば自分も洋服を着ていなくて・・・生々しくて嫌いだというセックスをしているかのような夢・・・そう。これは夢。現実ではないことぐらい判るけれどどうしてこんな夢を見ているのかと必死に目を覚まそうとするのに優しく微笑んで何かを喋っている田町の言葉が気になって気になって目を覚ますことができない

「何・・・何?田町・・・」

口の動きを必死に追う・・・

自分の夢の中なのに、必死に。友人の口の動きを必死に追う

「・・・?」
『み』『ろ』
「・・・見ろ?何・・・?」
『こ』『わ』『が』『る』『な』
「・・・何を?何を怖がるんだよ!田町っ!田町」

田町が微笑んでクシャリと頭を撫でる感覚が生々しくて現実の世界で目を覚ます

暗い天井が見えて肌色が見えなくなった世界・・・自分も田町も裸で息を上げていた・・・

「なんていう夢だよ・・・クソ」

全部全部田町のせい。訳の分からないことを言いだした田町のせい・・・

いや、訳の分からないことじゃない。自分自身が気付いていなかった感情を暴かれたせい・・・

「クソ・・・クソ・・・」

気付きたくなかった。これはホント。気付かないまま過ごさせてくれたらよかったのに・・・好きになれないだろう彼女が隣にいて、田町とは友人としてずっとこの関係が続けばそれでよかった・・・

「痛ぇ・・・クソ・・・」

気付きたくなかった。この感情がこんなにも苦しくて最初から絶望しか感じないだなんて知りたくなかった・・・胸が痛くて苦しくて胸を押さえながら蹲る
明日からどんな顔で田町と会えばいいのか判らない。感情を表さない、んじゃない・・・今まで、こんなに強く何かを感じたことがなかっただけ。でも、自分にもあると知ってしまったから。田町といると今までも薄ら感じていた感情が、強い感情があると知ってしまったから・・・









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共に祝う日7 - 08/14 Mon

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大きな袋をいくつも抱えて部屋を出て行った友香を見送る
この部屋は元カノの荷物、元カノとの想い出の品で溢れていたのかと思う程ほとんど何もなくなった部屋・・・小さなテレビに繋いであったゲーム機。その脇にあったゲームソフト。DVDもごっそりなくなったし、たくさん並んでいたマンガもいつも増田が読んでいるもの以外全部なくなった・・・

「・・・」

増田が読んでいた本は田町も好きで実家に全巻揃っているから読んだことがある。誕生日が同じだと親近感が沸くと言っていたけれど、このマンガに同じ誕生日の登場人物がいただろうかと手に取ってペラペラと捲る

暫く捲って懐かしくなって1巻からページを捲っていく。昔は流し読みばかりだったけれど一語一句しっかりと読んでいく・・・徐々に物語に、キャラクターにハマっていって時間も忘れて読み耽る






カタンと玄関から音がして「・・・え」と小さな驚きの声が聞こえて本を閉じる

「おかえりー!おつかれー!」
「・・・え・・・何してんの」
「マンガ読んでた」
「あー・・・あぁ・・・」

田町が小さく上に上げた本を見てひとつ頷くと妙にスッキリした部屋の真ん中にカバンを置いた
色々と物がなくなった部屋に驚きもせず、いつも通り普通の増田

「メシはー?」
「あー・・・コンビニで買ってきた」
「えー!オレも腹減ったー!」
「・・・」

じゃあ帰ればと言いかけてため息を吐く。今、バイト帰りにコンビニで買ってきたものでは流石に2人分はなくて、冷蔵庫を覗くけれどやっぱり何もなくて・・・

「今のってー、冷蔵庫見てなんかあったら作ってくれてたってこと?」
「え?」

何かたかる気で腹減ったと言ったんじゃないのかと田町を見ると近付いて来るのに気付き、その迫力に圧され後退りする

「友香ちゃん!今日会って、聞いたらお前全然気が利かないっつってた!言うこと全部聞いてくれるけど気が利かないって!」
「・・・そ・・・っか」

気が利かない・・・そう言われても思いつかなかったのだから仕方ない。それを気が利かないというならば仕方ないと・・・

「でもさ!でもっ!増田ってすごい気が利くじゃん!こないだだってメシ作ってくれてたし、シャンパンも酎ハイまで用意してくれてた」
「あぁ・・・誕生日会だっつってたし」
「気ぃ、利くよなぁ・・・って。友香ちゃん気が利かないっつってたけど今も材料さえあればオレのためにメシ作ってくれたんじゃねぇのかなぁって」

田町に言われて初めて気付く

確かに、自分の分の食事を作るのもめんどくさいのに田町との誕生日会だから料理した。友香の誕生日、ここへ来た友香には何をしたか・・・ご飯を食べたいと言われたから食事に連れて行った。特別なシャンパンを用意することも、プレゼントを一緒に買いに行ったことはあったけれど、友香のために最初から準備したこともなかった

「オレが特別っつーこと?」
「は?」

特別・・・友達。同じ誕生日の友達なんて初めてだったし、特別かと言われれば特別な気もする

「んー・・・上手く言えねぇなぁ・・・」
「それで、メシ、どうすんの・・・」
「食いに行こう!」
「ん・・・」

コンビニで買ってきた弁当はきっと明日でも大丈夫だろう。と冷蔵庫にしまった増田はため息を吐きながらカバンを持ち上げる

「あー、うん。だから!オレのコト好きなんだろ!」
「・・・は?」

好き・・・その言葉に驚いて持ち上げたカバンをドスンと床に落とした










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共に祝う日6 - 08/13 Sun

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誕生日を一緒に祝ってから少し増田との距離がまた近付いた気がして、お互いに彼女がいないこともあって増田の部屋への行き来が増えていた

そして、増田の部屋に忘れ物をしたと大学で気付き、連絡をするとよく判らないメールの返事が来て首を傾げる田町

『バイトでいないけど、部屋に多分人がいるから勝手に入って』

増田がバイトだということは判る。でも、多分部屋に人がいるというのはどういう状況なのかと・・・そもそも増田の留守中にいる人間?そんなに仲がイイ人間が自分以外にいただろうか・・・そう思いながらも増田の部屋をノックする

もし、増田の家族だったら・・・いや、緊張する程でもない。余所行きの笑顔で昨日来た時に忘れ物をしたと言って忘れ物を取ってすぐに帰ればいいのだ

「はぁい?」

家族・・・と思ったら部屋から出てきたのは同じくらいの年の女性で妹?姉?とドキドキしながら名前を名乗る

「・・・あ・・・あー!タロちゃん?!」
「・・・え?」

タロ・・・田町の名前はタロでも太郎でもない。でも、『タロちゃん』と呼んでいた人間がすぐに頭に浮かんで目の前の女性が誰かすぐに思い出す

「あぁ・・・増田の彼女・・・あれ?」
「そーそー!友香!あ!聞いてる?元になったのー!でもどしたの?レン、今バイトでいないよ?」
「・・・あ、聞いてる・・・っていうか・・・忘れ物したっつったら部屋誰かいるって言ってたけど・・・まさか彼女だとは・・・」
「だからー!元だってばー!元ー!!!」

口を大きく開けて笑う友香は「どうぞどうぞ」とドアを開けるとあちこちにある大きな袋を見て「引っ越し?」と呟いた

「え?あ!違う違うー!あたしの物?とか一緒に買って置いてったもの片付けてんの」
「・・・あー・・・あぁ・・・」

宅配便で送らなかったのか・・・と思っていると察した元カノが笑う

「荷物送ればいいでしょー?あたしがひとつ送ってほしいものあってさー、送ってって言ったらレンったらひとつひとつ確認するように全部写真撮ってこれはどうする?って聞いて来てめんどくさいから引き取りに行くー!って。そしたら指定されたのが顔合わせるのも嫌だろうからってバイトのこの時間指定されてさー・・・もー、ホントあたしが悪い人間だったらどうするのねー?金品全部奪っていっちゃうってーの」

部屋に並んでいたものがほとんど大きな袋かゴミ袋に入れられているからか部屋から色々なものがなくなっている・・・

「タロちゃんはレンと仲イイのー?」
「え・・・あー・・・大学同じで専攻まで一緒」
「えー!そーなの!?レンってば何も言わないから全然知らなかったー!」

田町もまさか彼女、いや、元カノが来ているだなんて言わないから全然知らなかったし、こんなに仲が良かっただなんて全然聞いてなかった

「仲良くしてやってねー?レンってホント何も言わないっていうか何にも興味ないから仲良くしてくれる人貴重だと思うー」
「・・・なんで別れたの?」
「え?」
「や・・・だって・・・なんか、あいつ振られたっつってたけど・・・なんか・・・うん・・・まだ好きなんじゃないのかな・・・って」

友香が驚いた顔をした後少し笑って自分の頬を抓る

「ダメだー!そんなバレバレってダメじゃんねぇ」
「あ・・・ごめん・・・」
「ううん!好きだよー。好き。でも、レンはあたしじゃ・・・っていうか、うーん。多分疲れちゃったんだよねぇ・・・あ、あれだよ?レンはすっごいイイ彼氏だったと思うよー!デートしたいって言えば連れてってくれるし、買い物したいって言えば付き合ってくれるし?会いたいって言えば遠距離になってからでも時間作って来てくれた。でも、それ全部あたしからなんだよね・・・なんだろ。ひとりで恋愛してる?みたいな・・・?超カッコイイし、言うこと全部叶えてくれるけど、ふと気付くわけ。レンってあたしといて楽しい?何かして欲しいことは?って・・・それに言えば何でもやってくれるけど気が利かないっていうか、言ったことしかやってくれない?みたいな・・・まぁ、これはあたしのわがままだろうけど」

言ったことしかやってくれない・・・?

気が利かない・・・?

「あ、ごめーん!タロちゃん忘れ物見つかった?」
「あぁ、あった・・・あーっと・・・あ、増田の飯食ったことある?すっげぇ美味いの!あれ逃すのもヤだったろ」
「えー?タロちゃんレンのご飯食べたの?!」

誕生日に作ってくれた豪華なディナー。2人で食べて笑って飲んでふわふわしたあの日・・・

「いいなぁー!ずるいなー!!レンのお母さんってさー!料理研究家?ってやつでさー、結構有名じゃん?だからレンもご飯作れるのかなぁーって期待してたけど作ってもらったことなかったぁー!」

料理研究家・・・だからあの料理か・・・と思ったのと、そんなの初めて聞いたこと。そして、やっぱり気が利かないと言った友香の言葉が頭を回る・・・

あの日、お互いに誕生日だったあの日。今聞いた友香の言葉とは全く違う増田の姿だった。確かに誕生日会を一緒にやろうと誘ったのは田町。でも、料理を作ってくれだとか、お酒を用意しておいてくれだなんて何も言わなかった。ただ、ホールのケーキを買って行くから一緒にろうそくを消そう。そう誘っただけだったのに・・・


用意されていた豪華な食事

用意されていた祝いのシャンパン

用意されていた飲み足りなかった時のための冷蔵庫の酎ハイ



全部全部気が利いた準備だった・・・








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