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青春はプールの中で12-17 - 02/28 Wed

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もともと柿内は本人もはっきりとは気付いていないが愛情に飢えた男だった

家族からの愛が欲しくて頑張っても望んだように貰えないことが判ると次第に尖っていった心。友情も愛情も欲しいなんて望んだところで自分が望むようには手に入らない。ならば最初から望みたくない。そう思って悪くなっていく態度と口調

恋心を抱きそうになると自らそれを破壊した。拒絶が怖くて、仲良くなることさえも怖がり、人を寄せ付けないように

そして高校で出逢った体が小さく大きな男。いつもの態度だったのに受け入れてくれて、好きになんてなるわけがないと思っていた人へいつのまにか恋をしていた。やっぱり拒絶は怖かったけれど初めて止まらない衝動というものを知ってしまった。もっともっと近付きたい・・・そう望み、その通りになった。仲の良い後輩という立場。それ以上を望むのは贅沢だと思いつつも止められなかった想い

初めてまともに恋をした。それまでにふとした瞬間に好きだと感じていた感情なんてまるで偽物に感じる程の恋心

叶うわけがない。そのつもりだったのにそれまでも受け入れられて憧れて柚木のようになりたいと、皆を甘やかし、頼られるような男になりたいと望んだ

人を甘やかし、自分は誰にも甘えない。そんな男を甘やかしたくて甘やかし、愛情を注ぎ、愛情をもらった

嬉しくて幸せな日々

柚木と接し、付き合うと増えていった友人。受け入れてくれる人間がいるという幸せを知った
柚木と出逢ったからこそ出逢い、仲を深めることができた友人たち。柿内を優しく包んでくれ、自分も息子の1人だと言ってくれた柚木の家族。全て、柚木のお陰だと思っている



こんな幸せを与えてもらえたのだから彼の望む幸せのためならば身を引ける。そう思って迎えた終結

残ったのは愛に飢えた男だけ。愛が欲しくて愛をもらった日々を思い出す男だけ

「・・・っ・・・」

包丁を持っていた手を止めて頭を抱える

忘れなきゃいけないのに忘れたいのに頭に浮かぶのは柚木の姿ばかり

柚木の体温、柚木の香り、柚木の感触

鮮明に覚えている。柚木しか知らないから。柚木だけだったから

新しい恋でもしなければダメだ。そう同僚に言われた。忘れられないのはそれだけ真剣だったのだからきっと次の恋だって真剣になれる・・・と

けれど踏み出せる気がしない・・・

そう思うのに人を甘やかし、もっと求められたいという欲求
求められたい。こんな自分でも求めてくれる人がいる。そう思いたくて

そんな中、栗山からの告白は心が動いた。甘やかして欲しい。そう言われて久々に心が動く感覚を感じたのに、こうして思い浮かぶのは柚木のことばかり

比べているわけじゃない。栗山のことも甘やかしたい。それは本当なのに柚木じゃないことに違和感を感じてしまう

「会いてぇ・・・」

恋人としてじゃなくても。友達として、こんな時柚木に会って相談したり、相談されたりしたかった

「柚木さん」

今何をしているのか。どこにいるのか

知りたい。声を聞きたい。話したい。顔を見たい



終わったのに。終わらせたのに






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青春はプールの中で12-16 - 02/27 Tue

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柿内と買い物に出た栗山はどんどんとカートに積み上げられて行く食材を見て目を丸くする

「どーすんの?これ」
「あ?ストック」
「・・・それにしても多くない?っていうか!ずっと思ってたけど柿内くん明らかに作る量も多いよね?!」

柿内は一瞬止まって「あぁ」と頷く。作りすぎてしまう。1人じゃ、いや、栗山がいたってあの量は多すぎる

「癖なんだろうな。もう」
「・・・ぁ」
「量の加減、もう忘れた」

栗山はバツの悪い顔をしながら柿内の後ろを歩く

そうだった。柚木はあの体なのにあり得ない量を食べる人だった・・・そう思い出して柿内の大部分を柚木が占めていることを改めて感じる

そんな柿内に柚木を思い出させてしまったことになんて声を掛けたらいいのか判らなくてよく判りもしない肉を眺めたり手に取って見たりしてみるけれどこんなの自分じゃないと口を開く
もうどの自分を柿内の前での「普通」にしているのか自分でもよく判らなくなってきたけれど今のこれは違う。全然違う!そう心で強く思う

「柿内くん!」
「あ?」
「オレさ、オレ・・・インカレ出場決まったら、なんでも好きなの作ってくれる?」
「・・・あー、あぁ、イイけど」

栗山が好きなものは何なのかも知らない。柚木は試合に勝つ度に「勝った!唐揚げ!!!」と柿内に強請ってきた。蘇る記憶。消せない記憶

「そういえばこないだ肉団子みたいなの袋に入ってるやつくれたじゃん?あれ、どうやって食べりゃよかったの?味イマイチなかった。失敗作くれたわけ?」
「あー・・・お前のところ行ってたか・・・トマトソースはあんのにメインの肉団子が行方不明だったんだよな・・・」
「ちょっと!そういうのやめてよねー!オレなんか損した気分!」
「バカ。ミートボールパスタの予定がただのトマトソースパスタになったオレの方が損してるっつーの」

いつもの調子になってきた。と安心する。柚木を思い出すことを戸惑ってはいけない。柿内の心に柚木がまだいるのは当然だから。踏み抜いて踏み抜いて踏み均して地盤を作らねばならない

「今度、魚が食べたい」
「お前魚食えるの?」
「何それ!普通に好きだし!」
「お前骨とか取れないタイプかと」
「うわぁ。それなんかバカにしてんの?」

柿内は「そう見えた」と呟きながらも大きめの切り身を手に取り栗山を振り返る

「今日、煮といてやるから帰り寄って持って帰るか?それか食ってく?ついでに今から保存食作るからそれも持って行ってイイ」
「・・・うん」

素直に頷いた栗山に小さく笑う

「素直でよろしい」
「バカにすんな。柿内くんのくせに」











部屋へ戻ると手際良く食材を切り、そのまま保存するものと半調理するもの、調理するものへと分けていく

柚木と暮らしいてた時も柚木が練習へ行っている間で時間があれば同じようにしていたこと。今はその時間がありすぎるのもつい作りすぎてしまう要因なのかもしれない

柚木がもしあの時友人としても居られない。そう言わなければ今、栗山にしてやっていることと同じことをしていただろう。一緒に暮らせなくても食事を作り、温めれば食べられるように保存食を作り・・・考えても無駄なことだと頭を小さく振るとフライパンに入れた煮魚を確認し、火を消す

「・・・」

魚料理はあまり作らなかった。いつだって柚木は肉がいい!そう言ったから。確かに柚木に魚料理は単純にボリュームが足りなかったのだと思う

そしてまた柚木のことを思い出していることに気付いてため息を漏らす

考えても考えても柚木のことが浮かんでしまう。忘れられない人。もう1年経つというのに忘れられない。必死に勉強や仕事に打ち込んでいる時はよかった。勉強も仕事も柚木は関係ない場所だったから。でも、柚木と食べた食事や何気ない生活の全てにまだ柚木が存在している

終わったことなのに。終わってしまったのに

終わらせたくなかった。柚木の幸せのためなら。そう身を引いて今思うのはそんなことばかり。好きな人の幸せを考えて身を引く。これからどう恋をしたらいいのか判らない。もし相手ができてもその相手の幸せが別のところにあると思ったらやっぱり身を引かなければならないのだろう。そう考えたら怖くて踏み出せない。そう感じていた







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青春はプールの中で12-15 - 02/26 Mon

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寝息を立て始めた栗山の頭をそっと撫でる

酔って好きだと言う栗山が可愛く見えたのは本当だったのかも確認したくてわざと酔わせた。途中後悔もしたけれどやっぱり可愛く見えてしまった。甘やかしたい。そう思ってしまった

人に甘えない柚木を甘やかしたい。まるでタイプは逆なのに、あの時と同じ感情を今、栗山に抱いている

これが好きかどうか問われるとそこはやっぱりまだ疑問にはなるけれど確認できた。可愛い。可愛い後輩・・・甘やかしたい。素直じゃない栗山を甘やかしてやりたい

「甘やかしてやるからシラフでも素直になれよ」

柿内の呟きも寝ている栗山の前だから

素直になれないのは自分も同じだと柿内も判っていること





「・・・なんでまたこうなってんの?!」

酒が残っているようなだるく重い体を起こしながら柿内の布団で目を覚ました栗山

「おう」
「・・・オレどんだけ飲んだ?」
「あー?」

柿内は酒瓶を持ち上げて「残りこれだけ」と見せると栗山がため息を吐く

「・・・オレ、また変なこと言った?」
「んー、柿内くんに甘えたーい!だったな」

ひゅっと喉が鳴る
飲み過ぎた後覚えがないのは毎度のこと。でも、友達の前でする失態ではない。柿内の前で・・・というところが1番怖かった

「ば、バッカじゃないの?!本気にしないでよね!オレは柿内くん以外で甘やかしてくれる人たくさんいるんだから!」
「・・・はいはい」

相変わらず可愛くない。でも、本当は甘やかして欲しいのだろう。そう思いながら味噌汁を差し出す

「・・・今何時?」
「7時過ぎ」
「早っ!何時に起きてんの」

もう朝食を作ってある状態にため息を吐く

「去年までの悪影響だな・・・あんま長く寝られねぇ」
「ただ、じじぃなだけじゃない?」

あぁ、可愛くない可愛くない。昨晩の可愛げのかけらさえない・・・
でも不思議と今までのようには腹が立たない。甘やかしたい

「お前、今日暇なのか?」
「えー?暇じゃないしー」
「あぁ、そ」

テーブルに出された味噌汁とご飯を手で遠ざける

「食えよ」
「無理ー」
「味噌汁だけでも飲め。二日酔いなら体楽になる」

再び目の前に差し出された味噌汁を目の前にため息を漏らす

幸せだから。これを普通に感じてしまったらもう戻れないからそれが怖い

「今日、暇だったら何?」

味噌汁を啜りながらそう尋ねると柿内がニヤリと笑う

「車、昨日来た」
「え!」
「まぁ、中古車だけどな。買い物とかやっぱこっち車ねぇと不便なんだよ」

昨日、と言うことはきっと初めて乗せるのが自分ということ

「自慢したいわけ?っていうか自慢できる相手がオレしかいないとか寂しーーーっ!友達いないのぉー?」
「まぁ、自慢っつーわけでもねぇけど買い物付き合えよ」
「・・・昼過ぎから練習行くけどそれまでなら」

柿内は「あぁ」と頷く。そう言えばインカレ予選を見に来て欲しいとも言われた

「予選、見に行く約束したのも忘れてんだろ?」
「はぁ?!誰が!」
「お前が見に来てー!って」
「・・・言ってないし!そもそも予選大会だしっ!まぁ、どーしても後輩がすごいーってところ見たいなら来てもイイけど」

素直じゃない。でも、来るなと言わないところは見に来て欲しいと言う意味だろうか

「来て欲しいなら行くけど来て欲しくないならめんどくせぇ」
「・・・だから、見に来たいなら来ていいってば」

あぁ、憎たらしい。でもどうしてか今日の栗山は可愛く感じてしまうのだ









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青春はプールの中で12-14 - 02/25 Sun

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「飲んでる?!ねぇー!飲んでるの?!」

酔った人間を介抱する羽目になるのは毎度のことで毎回だから酒は嫌いだ。と思うのに何故それを忘れてしまったのだろうと酔って加減が判らなくなって力強く何度も背中を叩いてくる栗山にため息を漏らす
以前、元カノと飲み会を抜けてここへやって来たのはもしかしたらめんどくさくて追い出されたのを元カノが介抱しようとしてくれたのにやっぱりめんどくさくなってここへ追いやられたのでは・・・とまで考えてしまう程

可愛げがある栗山が見たかったのにバシバシ叩かれていて可愛げなんてどこにも感じない

「お酒なくなったぁー!ほら!作ってー!」
「もー飲むのやめろ」
「じゃあオレの勝ちねぇー!アハハ!柿内くんお酒弱いんだぁー」

ムッとしながらも「もうそれでいい」と呟く
めんどくさくてこれ以上めんどくさくなるなんて勘弁してほしい。そう思いながら

「ヤダ!飲む!飲む!!!!!お酒っ!持ってこーいっ!」
「近所迷惑になるから声、下げろ」
「持ってこないと叫ぶよ?」
「はぁぁぁぁぁぁぁ」

判りやすい大きなため息を吐くとほぼ酒の入っていない薄い酎ハイを作る

「最後だからな」
「・・・ふ・・・ぇ・・・」
「は?!」

グラスを受け取った栗山が急に目を潤ませて首を振ると涙が溢れる

「ヤダ・・・ヤダァ」
「ヤダってお前」
「最後とかヤダっ!」
「ふざけんな」
「怒った・・・怒ったぁぁぁぁ」

ヤダヤダと繰り返し言いながら柿内に抱きついて首を振る
あぁ、めんどくさいと思いながら退かせようと栗山を押し退ける

「柿内くんともっといたいっ!!!最後とか言わないでっ」

押し退ける手を止める

「毎日来たいけどっ!会いたいけどっ!我慢するからっ!最後にしないで」
「・・・栗山?」
「せめて彼女できるまで・・・ヤダっ!やっぱり彼女作るのヤダっ!!!」
「や、待て。別にここに来るなとか言ってねぇし」
「ホント?最後じゃない?」

潤んだ瞳にいつもの調子と違う事になんだか気恥ずかしくなりながら栗山の髪をくしゃりと撫でながら押し退ける

「今日の酒はそれが最後」
「うん・・・お酒はこれが最後」
「ん」

ぺたりと柿内にくっついたまま舐めるようにグラスの薄い酒を飲む栗山を見ながらやっぱり酒を飲むと急にしおらしくなるのかと栗山を眺める

そして急に見上げて来る栗山

「さっきみたいのして?」
「何?」
「頭撫でて」
「あぁ?やんねぇよ」
「して・・・甘やかしてほしい」
「なっ・・・」

充分甘やかしているじゃないか。という言葉は酔っ払いに通用しないと諦めてくしゃくしゃと髪を撫でてやると嬉しそうに微笑む栗山

「・・・お前・・・さぁ・・・」
「うんー?」
「・・・こないだ好きっつったの覚えてねぇんだろうけど」
「大好きだよー」
「っ・・・」
「柿内くん大好きー」

へへっと笑った栗山がまた見上げて来て眩しいくらいの笑顔に「クソ」と呟くと撫でていた手で乱暴に栗山の髪をくしゃくしゃに乱す

「オレねー、柿内くんに優しくされるの嬉しい」
「・・・オレは」
「うんー。いつも優しいー」

へらりと笑った栗山は柿内の膝に転がる

「判ってるんだー。オレがいつも可愛くないから」
「・・・」
「柿内くんに嫌われるのも判るー」
「オレは」
「じゃあ好き?」

好き・・・?

そう聞かれてもどう答えていいかだなんて判らない

好きか嫌いか。そう考えたら嫌いじゃない。憎めない後輩。可愛げはないけれど懐いてくれている後輩で構ってやりたくなるし甘やかしている自覚もある。でも、好きか・・・

考えている柿内をじっと見つめているふたつの瞳が震え出したのに気付いてハッとした

「ごめんね。判ってる。判ってるよ」
「栗山」
「オレね、好きなの。ごめんね」

何も言えなくなった柿内に栗山は少し考えてから口を開く

「今度のインカレ予選ー」
「んー?もうそんな時期か・・・」
「見に来て欲しい」
「あ?」
「オレの最後のインカレ予選ー。インカレ行くけどもしかしたらさー行けないかもだからー見に来て?」

甘えたような栗山の声に思わず「いいよ」と答えてしまう。それがいつなのかどこでやるかも聞いていないのに

「優しいね。柿内くん」

無理矢理笑顔を作った栗山は柿内の膝の上でごめんね。と言いながら目を閉じた









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青春はプールの中で12-13 - 02/24 Sat

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柿内はふぅ。とひとつため息をつきながら決心したように酒瓶を料理が並んだ机に置く

ちょくちょくやってくる栗山は今まで通りの栗山で憎たらしくて可愛げがない。でも、忘れられなくて。あの日、酔って好きだと言った栗山が可愛く見えたのが気になって・・・見間違いかもしれない。聞き間違いかもしれない。冗談だったのかもしれない。でも真相が判らないから横暴とも言える手段に行き着く

あの日と同じ状況を作ればいい

ただ、そのまま酒を出すだけでは普段と違って警戒し、飲まないだろう。だから、アクションが必要・・・幸い、栗山の性格は判っている。栗山が飲む様仕向ける言葉も簡単に考えられる

こんなことをしてまであの日と同じ栗山を見たいのは何故なのか柿内にも判らない。でも、確実に愛しさを感じたのははっきり覚えている・・・だから、自分自身のこの感情も確かめたくて知りたくて・・・






「あー!これ美味しいやつー!やったー!オレこれ好きー」

栗山がやってきてテーブルの上の料理に喜びの声を上げる

「んで、これ」

柿内がポンと酒瓶に手を乗せると判りやすく嫌な顔をする栗山

「何なの?飲まないけどー!オレ焼酎とか飲めないしさぁ」
「飲みやすいよう作ってやるよ」
「・・・要らないでーすー!オレご飯食べに来てるだけだし」

ニヤリと笑う柿内

「弱ぇんだ?お子様だもんなぁー・・・こないだも酷い酔い方してたし」

ムッとした栗山が「違うし」と口を尖らせる

「こないだ酔ってるお前見て思い出した。もう酒飲める年齢になったんだってな・・・飲み比べで勝負」
「っ・・・絶対負けないっ!」

ほら、思った通り。勝負を持ちかけたらすぐに乗る単純な栗山。負けず嫌いな性格でよかった。そう思いながら柿内は酒瓶を持ってキッチンへと戻る。栗山が飲みやすいように酎ハイを作るために









「ムカつくなぁ。居酒屋で飲むやつよりも缶のやつよりも美味しいとかなんなのこれ」
「居酒屋でバイトしててからな・・・メシもそこで覚えた」
「あー、じゃあオレもそうしたら覚えたのかー・・・お酒美味しく作れてつまみも美味しいの作れるのポイント高いー失敗したー!バイトでモテスキルアップできたのかぁー」
「どうかな・・・お前居酒屋でもキッチンっつータイプじゃねぇだろ。ホールだ。ホール」
「あぁ、確かにー?オレ、柿内くんと違って顔がいいから接客の方が向いてるよねぇー」

流石に数杯じゃいつも通りなのかと思いながらさっきの言葉にイラッとしてペチリと額を叩く
それならばと少しずつ少しずつ栗山が気付かないように新しく作る度に酒の割合を増やして差し出すのだった

数時間後、飲ませたことを後悔するだなんてこの時の柿内は何も知らない・・・








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青春はプールの中で12-12 - 02/23 Fri

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「絵里ちゃん!」

キャンパス内でそう呼び止められて逃げ出したい気持ちを抑えて振り返る

「ごめんっ!」
「・・・うん」

何が?とは聞かれないことに「やっぱり」と思いながら栗山は困った顔で頭を何度も下げる

「・・・話せる?」
「え?あ・・・うん」

静かな酒井の声に小さく恐怖を感じながら購買で買ったジュースを手にベンチへ腰を下ろした

「・・・栗山くんの好きな人は、柿内さんなの?」
「っ・・・」

深呼吸をひとつした酒井がいきなり核心に迫った質問をして来て息を詰める

否定したい。でも酒井に嘘は吐きたくない・・・もし、これが酒井じゃなかったらいつものように軽い振る舞いで否定できただろう。でも、酒井だから

「・・・うん」
「・・・そう」
「で、でもね!あのね!」
「私のことが可愛いとか好きとかいうのは柿内さんの代わりだったんでしょ?」
「え?」

代わり・・・記憶がないけれどそんなこと思ったことはない。だから必死に否定する

「でも!似てるって言ってたじゃん」
「・・・うん。確かにね、優しいところとかはね・・・似てるかもだなぁー・・・って言っても柿内くんって全然優しくないから絵里ちゃんの方がずっと優しいしっ」
「・・・そう」
「・・・ごめん。イヤだよね。一瞬でも付き合った男が男のこと好きとか・・・みんなに言う?」

酒井がため息を吐く

「それ、私に何の得があるの?」

栗山は確かに。と空を見上げた

「オレねー、多分ゲイ寄りのノーマルなの」
「それ、ゲイ寄りのバイとかそう言わない?」
「ハハ・・・興味はあるけど怖いからー。だからねー、柿内くんだけなんだー」

明るい空が栗山の曇った心も晴らしてくれればいいのに。そう思いながら空を見つめる

「高校の先輩でさ、柚木先輩っていうねー、すごいオレの憧れの先輩と付き合っててー・・・柚木先輩には憧れとして惚れてて、柿内くんは別の意味で好きだった」

空を見つめたままそう話しだした栗山の顔はいつもよりも真剣で真っ直ぐで目が離せなくなる
こんな顔をずっとしていれば軽く見られないのに。と思いながら

「柚木先輩は2つ上でさ、卒業して遠い大学行ったしやっぱり男同士だし別れるのかなーとか思ってたのにさ、全然で。オレは悔しいから余計に柿内くんには素直になれなくて可愛げのない後輩でね、それで、柿内くんも柚木先輩追いかけて向こうの大学行っちゃった。これでオレも吹っ切れると思ったのにねー・・・ダメだったの」

栗山を見つめていたら急に眉を下げながら微笑む栗山の顔が酒井を見つめる

「この大学、決める前に会いに行ってフラれたんだ。オレ」
「・・・」
「もー、それはもう見事に。だからさ、忘れた!告ってきた子と手当たり次第付き合ってダメになってはまた次と付き合ってーって繰り返してたらさ、絵里ちゃんに逢った。冷たくて優しくて・・・そこかなー。柿内くんと似てたの。惹かれてアタックしてフラれて。でも、柿内くんと似てたからとか思ったことなかった。必死で柿内くんのこと思い出す余裕もなかったし」

軽くて信じられなかった元カレ。この話をされていたら信じられたかもしれないのに。と唇を噛む

「柿内くんへのこの気持ちはねー、ホント最近。柚木先輩と別れててこっちに就職したんだって他の先輩に教えてもらってさー。でも、オレがこっちの大学にいるだなんて柿内くん覚えてもなかった!」
「・・・そう」
「望みなんてどこにもないのに苦しいだけなのに・・・どうしたらいいんだろうね。オレ」
「・・・なよ・・・」
「え?」

聞き取れなくて聞き返すと顔を真っ赤にした酒井の顔

「諦めんな!!!」
「ぅ・・・え?!」

こんな酒井の顔は見たことなくて驚いて思わず変な声を上げる栗山

ホントは諦めなよ。そう言いたかった。でも、言えなくて。栗山の真剣な想いを聞いてしまったから言えなくて・・・

「望みないとか!そんなの気にするタイプじゃないでしょ!栗山葉月っ!」
「・・・でも」
「でもじゃない!結局柿内くんのデートぶち壊したんでしょ?!なのに受け入れられてるんでしょ?!なら望みなくなんかない!」
「なんで知ってんのぉー」
「・・・ユキちゃんたちから聞いた」
「もーーー!ユキちゃんおしゃべり!!!」

朝の授業で絡まれて打ち明けたらそれでもモノにできてないなんてヘタレすぎ!と爆笑されたのを思い出すといつもの明るく軽い笑顔に戻る栗山。これが酒井の知っている栗山。だから、この軽い笑顔の栗山を応援する。よく知っている苦手なタイプの栗山を

「力にはなれないだろうけど応援してあげるから」
「ううん。もーね!絵里ちゃんに聞いてもらっただけですっごい元気ー!オレ超頑張るー!」

偽物の笑顔。可愛くて眩しいけれど偽物の笑顔。嘘くさいと思っていたけれど本当に嘘だったのだと判った。真剣で叶わぬ恋を抱くのを偽の笑顔で上塗りしているのを知っているのは普段仲良しに見える派手なグループの誰でもなくて酒井だけ








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青春はプールの中で12-11 - 02/22 Thu

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バスルームの鏡を見つめて整った顔が映るのにため息を漏らす

自分の顔は可愛いだとかカッコイイだとか整っているだとか言われるのは判っている。でもそれだけ。可愛いという言葉は栗山にとって魔法の様に気持ちを良くしてくれるもの。でも、それだけ・・・

柚木の様に中身があって可愛さを兼ね揃えた人が傍にいなければ今まで通り全力で可愛いをアピールして素直になれたかもしれない。実際、クラスメイトの前では全力で可愛く振る舞えたから。大学という柚木がいない場所でも同じ

でも、柚木を知る人間の前では可愛いだけで中身がない自分がバレるのが怖くて可愛くない。そう言われる様振る舞ってしまう

悔しい。苦しい。柚木はもう柿内の隣を去ったのに柚木の影は今まで通り栗山を素直にさせてはくれない






「悔しい。ピッタリだし」

栗山が口を尖らせながらシャワーから出てくると柿内はふっと口元に笑みを漏らす

「何?」
「それ、オレ丈足りねぇから丁度いいならやるよ?」
「っっっっ!!!ムカつく!!!要らないしっ!!!っていうかこれ!ウエスト大きいから下がってるだけだし!ウエストでオレだって履けば足りないからっ!」
「へぇ?」

ニヤニヤする柿内にやっぱり背も高くて足も長くてスタイルがイイのだと奥歯を噛む
高校時代は冷たくて怖い、言葉遣いが悪くて短気で女の子から敬遠されていたけれど、実際付き合ってみれば優しくて文句は言うけれどなんだかんだ言って手伝ってもくれるし頼りになることは部を引き継いだ時に散々思い知ったこと

「ほら、味噌汁温め直してやったから」
「・・・いただきます」

座って味噌汁を啜るとジワリと味噌の温かさが荒れた胃に落ちていくのが判る

「あー、エリってやつにも謝っておけよ?お前最低だから」
「え?・・・なんで絵里ちゃん知ってるの?」
「お前・・・ホントいい加減にしろよー?元カノだろ?お前自分で言ってたじゃねぇか」

言った・・・のだろうか。記憶にない。そして、謝るの意味が判らない

「エリはこの近くに住んでんのか?」
「ううん。違う」
「はぁ?お前、あの時間に女の子1人で帰したのかよ!最悪。危ねぇだろーが!元カノっつってもお前と飲んでくれる友達なんだろ!大事にしろ」

酒井が・・・ここへ来たというのか?酒井とここへ来て・・・
昨日は想い人の先輩のところへ行けと皆に言われて・・・柿内のところへ?酒井と一緒に?

「そんな絵里ちゃんのことがタイプだと思ったなら柿内くんが送って行けばよかったでしょ!」
「・・・お前、ホント何も覚えてねぇんだな・・・お前は1人でインターホン連打して元カノと飲んでて近くまで連れて来てもらったとか言ってただろ」
「みんなと飲んでた!友達の内定祝いで」
「・・・そんで元カノと2人で抜けたのにお前1人でここに来たっつー・・・最低でしかねぇ」

覚えてない。それが怖い。柿内に言ったのもあれが全てなのかもわからない。酒井に何を話したのかも判らない

「・・・」
「あー・・・でも、まぁ、なんだ。記憶飛ぶとかよく聞くし。オレはもっと酷い奴も今まで介抱してきたからオレに対しては許してやっから。あんまり気にすんな」
「・・・別に柿内くんにやらかしたー!とか思ってないから!妙な情けかけるのやめてくれるー?」
「はいはい。飲んだら帰れ帰れ!ホント可愛くねぇー」
「・・・でも、今日、予定キャンセルにしたことは・・・ごめん」

素直な栗山に戸惑う。昨晩のことは本当に覚えていないのか?何度も好きだと言ったのは本気だったのか聞きたいのに覚えていない栗山に問い質す事も出来ない。起きたらいつも通り可愛くない口の聞き方に態度。昨晩の可愛さのかけらさえない栗山・・・どっちが本物の気持ちなのか

「・・・まぁ、それは・・・」
「タイプの子っ!紹介してあげるって!ね?どんな子がイイの?!やっぱ小さくて可愛い感じの子?!」

紹介なんてしたくない。柿内が誰かと付き合うなんてもうキツい。誰のものにもなって欲しくない。自分にだけ優しくしてほしい

「その小さくて可愛い感じってどっから出てきた」
「え・・・?」

急に不機嫌になった柿内に心臓が掴まれる。怖い・・・柿内の目が、怖かった

「・・・あの人のこと言ってるならオレ、別にあの人が可愛いからとか思ったことねぇから」
「・・・じゃあ」
「人間として好きなだけ。どうしようもなく甘やかしたいって思っただけだ」

心臓が痛い・・・


勝てない・・・


なれない・・・


代わりになれない・・・



でも、『可愛いから』は関係ない


現実を突きつけられた様で心が冷える。なのに、この溢れる好きという感情は広がるばかり。見つけた光だけに縋ってしまう心に自分自身呆れてしまう

「もー、じゃあ柿内くんのタイプ考えるの難しいから紹介すんのやだー」

そう精一杯の笑顔で栗山は柿内の胸を殴った







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青春はプールの中で12-10 - 02/21 Wed

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青いふわふわのドレスを着た幼女が走っている

見覚えのある幼女を暫く見つめ「あぁ、自分だ。夢を見ているのか」と栗山はなんとなく思い出しながらそのまま無邪気に走り回る幼女を見つめた

産まれるまでお腹の子が女の子だと信じていた栗山の母は生まれてきたのが男の子だと判って落胆した。彼女の夢は娘に手作りのウェディングドレスを着せることだったから

しかし、産まれて来た息子はとてもとても可愛い容姿で堪らずひっそりと手作りの女の子らしいドレスを着せて楽しんでいた

「葉月は女の子みたいに可愛い」

その母の何気ない言葉は呪いのように栗山に刻まれていく

成長して、だんだんと周りと自分は違うことに気付く頃、母の念願の娘、栗山にとっては妹の誕生
母が栗山に女の子の格好をすることはなくなり、栗山も少年そのものの姿になっていくが、周りの女の子よりも自分の方が可愛い。そう信じ込んでいた栗山はこのなんとも言えない周りとの違和感を感じたままだった

そして視界が変わる。あの日、栗山の意識をはっきりと変えた日の記憶へ

「葉月ー!お前も仲間に入れてやるよ」

そう誘われたのはスイミングスクールの合宿
年上に可愛がってもらえるのが嬉しくて嬉々として付いて行った先で広がるあり得ない状況

「男だけど瑞樹って女みたいな顔だしさー」
「・・・」
「可愛いっつーか、いけんだろ?」

震える足、逃げたかった。怖かった。でも「お前も知ったから共犯」と囁かれ目をそらす事も許されない状況に新井を見て一気に湧き上がるその場にいる男たちとは真逆の感情

『オレも可愛いのになんでこうされてないの?』

母から受け取った言葉はこの時呪いの様に発動する

なんで自分じゃなかったのか
なんで新井を抱く側になっているのか
自分は女の子の様に可愛いのに。新井よりも可愛いのに

可愛い青いドレスの幼女が振り返ってクスクス笑う

「可愛かったのは小さい頃だけ」

ぐらりと世界が崩れる。クスクス笑った幼女が指すのは今の栗山の姿

「男のあんたは価値なんてない」

そんな事ない!そんな事ないっ!!!オレは可愛い!そう叫ぶのに声は出ない。夢だから。これはただの夢だから。判っているのに苦しくて。辛くて必死にもがいて幼女を捕まえる

「ホントに可愛いと思ってるの?」

「だって、可愛い人ってこういう感じ」

「あんたとは全然違う」

目の前に柚木の姿が現れる

大きさも細さも顔も栗山が望むまま。それなのに柚木は皆に可愛がられるだけではなく憧れ頼られ信頼されていて・・・栗山が欲しいもの全てを持っていた

「ホントに葉月は可愛いの?」




「栗山っ!」
「っ・・・」

ひゅっと喉が音を鳴らして呼吸する。柿内が心配そうに見つめているのが判って頭を抑えながら起き上がると額に汗を浮かべている事に気付く

「気分、まだ悪いか?」
「ごめ・・・寝てた」
「あぁ・・・いいから、ほら、水飲め。んで、味噌汁、作ったから。二日酔いには味噌汁だ」

優しくしないで。叫びたかった。柿内の予定を突然潰しにやってきて眠った柿内の隣でまた眠って、更に夢でうなされていたのを起こされるだなんて迷惑な後輩でしかない

「っ・・・」
「悪夢でも見たかー?」
「・・・ん・・・違うよ。可愛い女の子出てきたし」
「はいはい。っつかお前酒臭ぇし寝汗酷ぇからシャワー浴びて来い」
「えー・・・替えの服ないしー。柿内くんのだと裾足りないかもだしー」

栗山の精一杯の悪態。頭が痛いのはまだ残っている酒のせいか、それとも今見た夢のせいか

「バカ言え。裾余らすのはてめぇだっつーの」
「いやいやぁー、背は負けてるけど足の長さはオレの方が上でしょー」

柿内は呆れた顔をしながらも栗山に適当な洋服を投げつけると「風呂、行け」と言う
仕方ない。という素振りで洋服を持ってバスルームへ向かうと脱衣所で柿内の洋服を抱き締める

「優しくすんな」

そう呟きながらももっともっと優しくして欲しいと心で願った








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青春はプールの中で12-9 - 02/20 Tue

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「気持ち悪い・・・?・・・え!はぁぁぁぁ?!」

吐き気と頭痛で目を覚ました栗山が体を起こすと今置かれている状況を把握した後大きな声を上げた

見覚えのある部屋。飲んでいた部屋ではないのは確実で、どうしてここにいるのか全くわからなくて慌てて自分の姿を確認する

昨日と同じ洋服・・・とりあえず、洋服を着ていることに安堵し、それで安心するのは早いと首を振った
何をしたのか、何を言ったのか全く記憶から抜けている・・・

「起きたか」
「っ!!!な、なんでいるのさ!今日は女の子たちと楽しむんじゃなかったの?!」
「はぁ?」

散々泣いて好きだから行くなと言ったくせにと思いながら慌てる栗山を見つめる

「い、今から?だ、ダメだよ!もっと身だしなみには気を遣って!なんなの!そのだっさいシャツ!寝間着なの?!」
「断った」
「え・・・」

まさか



まさか



まさか



酔っ払う前、友人に唆されていたのは覚えている。でも、まさか・・・自分が行かないでと泣きついたというのか

「お前が言ったんだろ」
「え・・・オレ、オレがっ・・・何?」

柿内は暫く顔を青くしている栗山を見つめた後、酔うと記憶が飛ぶタイプかと察して鼻で笑う

本気にした自分がバカだったのか?いや、それでも本当に普段言うように自分のことが嫌いだけど可哀想だから来てあげている。というのならば昨晩のことはなかっただろう

「泣いてオレに明日行かないでーって・・・な」
「っっっ!!!オレ・・・が?!」

顔を青くした栗山にため息を漏らす

「ほ、他にもなんか・・・言ってた?」
「あー、言った。言った言った」

痛む頭と胃がぎゅっと締め付けられて今すぐ逃げ出したくなる
隠して蓋をして完璧・・・?自分の完璧とは何かと問いたくなる

「柿内くんに彼女できたらご飯食べられなくなっちゃうからヤダぁー!って」
「・・・え?」
「で、勝手にオレの布団で寝るわ涎垂らすわイビキに寝言酷くて寝れなかったっつーの!だから起きたなら退け。寝る!」
「・・・ご、ごめ・・・」

肝心なことは言わなかったことに安心して布団に寝転んだ柿内を見つめる

「オレが・・・行かないでとか言ったのは、もちろん冗談って言うか」
「うっせぇ!オレは寝る!」
「・・・うん」

言い訳をしようとしたけれど遮られて口籠る

上手い言い訳なんて思いつかなかったから助かったと思いながら・・・



栗山の心が判らない柿内。昨晩のが本心なのか判らない。本心なら本気で向き合ってやるべきだと思った。あの時、柚木が自分にしてくれたように栗山にもなんらかの答えを改めて出すべきだと

昨晩、何を言ったのか本当のところが判らなくて怖い。柿内の様子だと好きだとか隠していたい感情は話していないようだったけれど、それが真実かは判らない。柿内が優しさで「なかったこと」にしてくれるのは以前にもあったことだから



「・・・」
「・・・」

2人ともどことなく何も言い出せずに柿内は目を瞑り眠ったフリをし、栗山も頭が痛くて眠ったフリをした








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青春はプールの中で12-8 - 02/19 Mon

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インターホンの音が聞こえた気がしてシャワーを止める柿内。鳴ると思っていなかったし気のせいかと思ったけれど立て続けに鳴り響く音にイタズラにしてはタチが悪いと舌打ちをしタオルを取ると下着を急いで履いてドアを開ける

「・・・はぁ?」

そこにいたのは赤い顔で目をとろんとさせ明らかに酔っている栗山

「柿内くん・・・だぁー」
「ちょ!はぁぁぁ?!」

直ぐに中へ入って来た栗山にドスッと押し倒されて抱きしめられる

「この酔っ払い!ふざけんな!風呂入ってたっつーの!」
「うん。いい匂いー」
「っつかお前も濡れてるからな?文句絶対言うなよ?!自業自得だぞ?」

まともに拭くこともしていなかった柿内の体は濡れていて抱きしめて来た栗山の洋服も当然濡れる

「っつかお前何しに来たんだよ。よくそんな酔っ払ってて来れたな」
「うん。絵里ちゃんにささえてもらったぁ」
「誰だよ!エリちゃん!!!」
「元カノぉー」
「っざけんな!」

元カノと気分良く飲んで来た帰りかと舌打ちをする

「っつか、言ったろ。オレ明日予定あんだっつーの」
「ヤダ」
「てめぇ・・・」
「ヤダっ!」

強く言った栗山の腕がきつく柿内を抱きしめ、痛いと文句を漏らしながら栗山を見ると涙目で見つめられて小さくギョッとする

「・・・何?」
「行かないでっ!」
「行くなって・・・はぁぁ?!」

意味が判らなくて力強く栗山を退けるとポロポロと溢れ出した栗山の涙に再びギョッとする

「彼女、作るのヤダぁ」
「・・・このオレに簡単にできるわけねぇっつってんだろ」
「できるよっ!柿内くんっ!ムカつくけどスタイルいいしっ!大手企業勤めてるしっ!カッコイイんだもんーーー」

子どものようにわんわん泣きだした栗山にあぁ、泣上戸なのか。と思いつついつもと真逆のことを言われて背筋が痒くなる気がした

「はいはい。もう、帰って寝ろ。明日今言ったこと思い出してお前最悪な気分になんぞ」
「ホントのことだもん!ヤダ!彼女作らないでっ!行かないでっ!!!」
「駄々っ子か!うっせぇ!オレは風呂入り直して寝る!」
「ヤダ!ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!」

立ち上がった柿内の足に抱きつく栗山の頭に拳を落とす

「好きなのっ!」
「・・・」
「大好きなのっ!」
「・・・おい」
「あの人にはなれないけど!あの人みたいになれないけどっ!柿内くんにとってのあの人以上になりたいっ!」
「・・・っ・・・」

酔っ払い。でも、真っ直ぐな栗山の目に心が揺れる

あり得ない。そもそも男なんて興味がない。柚木のことは男だとかそんなのを越えて好きだっただけで基本的には興味がないし、大学の時、襲われた時は吐き気がした。でも、今、目の前の栗山には嫌悪感はない

以前、栗山から言われた時も嫌悪感なんて湧かなかった。そして、今も

「お願い。オレにチャンスちょうだい」
「・・・あー、クソ」

嫌悪感どころか縋り付くようにして好きだと言う栗山が可愛く見えてしまう

きっと心のどこかで寂しさを感じていたから。誰かに愛される幸せを求めていたから。暫くは友達には恵まれているのだし友達からの愛があればいい。そう思っていた。でも本当は愛されたい。そう望んでいた

「柿内くん、好きだから。お願い。行かないで」

あぁ、これはもしかしたらあの時の柚木もこんな気持ちだったのかもしれない。可愛げはないけれど可愛がっている後輩から真っ直ぐ愛をぶつけられて絆されそうになる

「・・・行かないで」

整った栗山の顔が涙でくしゃくしゃになっているのも、真っ直ぐな瞳もじわじわと柿内の心に訴えかけてくる

「お願い」
「お前、もう寝ろ。判ったから、寝ろ」

ため息をついた柿内が栗山の腕を足から離すとすぐに足に纏わりついてくる栗山の腕

「おい!オレは風呂入り直す!」
「ヤダ」
「このっ・・・」
「寂しいっ!」
「・・・あーホントお前っ・・・」

いつも可愛げがないどころか憎たらしいくらいなのに今日のこの酔っ払った栗山は酷く可愛く見えて愛しささえ湧いて来て頭を抑えながら栗山の脇に腕を差し入れるとそのまま引き上げる

「え、え?」

そして栗山を布団へ放り投げるとそのまま栗山の隣に横たわりポンポンと栗山の背中を子どもをあやすように叩く

「風邪引いたらお前のせいな?」
「好きだよ。大好き」
「・・・お前、明日確実に後悔するからなー」
「しないもん。いつも言いたかったけど言えなかったんだもん」
「・・・」

暫くトントンと叩き、撫でてやると寝息を立て始めた栗山の髪に触れる

栗山との関係を壊したくなくてまともに相手にしてこなかった。柚木と暮らすあの部屋へやって来て好きだと言われた時も、先日、柚木の代わりに抱いてもいい。そう言った時も。でも、自分がはっきりしないから余計苦しめて来たのかもしれないと思うと「ごめんな」と小さく呟いた








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