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青春はプールの中で12-46 - 03/31 Sat

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「流ちゃん流ちゃん!流ちゃんがスピーチしてる間に揚げたて唐揚げ出てきたけどこれ!すごく美味しくてあっという間になくなっちゃいそうだったからとっといたよ!」

やっと兄弟妹、そして竹市から解放された柚木が新井の隣へ戻ると皿に乗った唐揚げを見る

「・・・美味そうだな」
「うん!美味しいから!流ちゃん絶対好きだから!」

勧められて仕方なく口へと運ぶと柚木は「美味い」と呟いてまた1つ口へと運ぶ

「やっぱり好きなやつでしょ?」
「・・・これ・・・」
「懐かしい味でしょ。カズくん腕上げたねぇ」

この唐揚げは柿内のレシピ。今までも何度か但馬は柚木のために作ってくれたけれどこれは違う
ハッとして周りを見ると見覚えのある形の肉団子、ひき肉のレタス包み、鶏肉のチーズ挟み焼き

「流ちゃん?」

柚木は大皿に残っている料理を次々と皿へと盛ると口へと運ぶ。全部懐かしい味。但馬が完全に再現している・・・というのを超えている。これは知っている。ずっと恋しかった味

「アハ・・・流ちゃん!すごいー!昔みたい」
「・・・美味い・・・」

ずっと求めていた味。望んで望んで叶わないと諦めていた味

「瑞樹・・・美味い」
「うん!こんなに流ちゃんに気に入ってもらえたらカズくんも喜ぶっ!」

但馬じゃない。もちろん、但馬の父親でもない。柚木には判っていた。これが誰の作った料理か。もう、確信していた








「皆さん、今日はありがとうございました!お気をつけてお帰りください」

最後の挨拶も終わると柚木は「え」と呟いて新井は首を傾げた

「サプライズゲストとかねぇの?」
「え?聞いてないけどそんなの予定してた?確認してこようか?高田さんのプランだからプラン通りだと思うんだけど」
「いや・・・」

それじゃあ、どうして?本当にこれらの料理は但馬が作ったもので・・・?

暫く考えて最後に残っていたひき肉のレタス包みを口へ運ぶと決意したように帰る人に手土産を渡す球のもとへと行く

「流ちゃん?もう帰る?もう少し待っててくれたら」
「結構人帰ったし、今からオレ、この会場の雰囲気ぶち壊すけどいいな?オレが、オレのために、いいな?」
「え?何?!どういうこと?!」

球が柚木の様子に戸惑って目で追うけれど振り返らない柚木

「流ちゃん?」

ひとつ大きく息を吸い込む

「柿内ぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」

キッチンに向かって大きな声で叫んだ柚木にそこにいた皆が「え?!」と慌てた様子で柚木を止める
突然昔の恋人の名前を呼ぶ柚木は幸せな空気にあてられておかしくなったんじゃないかと焦った

「いるんだろ!柿内!出てこい柿内っ!!!」











「お客さんみんな満足そうに飯食ってった!ありがとな」

料理を全て提供し終わって後片付けもあとは皆が掃けてから。というところで早めの打ち上げをこっそり始めた但馬と柿内

「オレもサングリア飲みたかったのにもうなかったー!美味そうだったー!あー!サングリアーーーーっ」
「あー・・・んじゃあ、まだ冷凍フルーツなら残ってるし、ワインもまだあるから」

柿内が立ち上がって冷凍庫から冷凍フルーツを出す

「柿内ぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」

突然ホールから聞こえた懐かしい声。手を止めて但馬を見るとすぐに首を振る但馬

言っていない。柚木にはもちろん、新井にも。高田にだって固く口止めしたから、柿内がここにいるだなんて知るわけがない

「いるんだろ!柿内!出てこい柿内っ!!!」

少し俯いて首を振る

この声。ずっと聞きたかった。名前を呼んでほしかった
そうだ。もう、幻影も喋らなくなってどんな声だったか鮮明に思い出すこともできなくなっていたけれど、この声だ・・・柚木の声はこれだ・・・

「クッソ・・・なんだよそれ・・・やっとオレ、幻もほとんど見なくなったのに、声も聞こえなくなったところだったのに。なんで呼ぶんだよ」

柿内がそう頭を抱えるのを見て但馬はグッと拳を握りしめる

迷っているのが判る。ずっと忘れられなくて会いたかった人と今の恋人への罪悪感。でも、背中を押していいものか判らなくて迷う

「但馬・・・オレ、ダメだ・・・あの人に呼ばれてるって思ったら葉月と会わないって約束したのに・・・そんなんどうでもいいくらいになっちまう」
「柿内・・・行けよ!行け!こんなチャンス最後だぞ?!どうなるにしたってきっともうこんな偶然重ならないっ!会いたいならこれが最後だっ!」

押す。背中を押すしかない。親友が本当に求めているから。柚木を心から求めているのが判ったから

柿内は小さく息を吐き出すとキッチンのドアを開けた








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青春はプールの中で12-45 - 03/30 Fri

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「球兄、たけちゃん、おめでとう!今日って日を僕はずっと待っていました。僕が結婚した時、球兄、泣いてくれたよね。今、僕も泣きそうだよ・・・球兄、あの時、今の僕と同じ複雑な気持ちだったのかな・・・嬉しくて、でも離れていっちゃうのが寂しくて・・・」

秀が読む祝辞に球はハンカチで鼻を抑えた

「球兄っ・・・ホントはずっと傍にいてほしい!遠いところ行かなくてもいいじゃん!でも、でも・・・それは弟のワガママです。球兄にはもう僕らより大事な人がいるもんね。たけちゃんとならどこへ行っても大丈夫!そう信じてる!ずっと前から兄弟の1人みたいに過ごしてきたたけちゃん。これからは球兄のことよろしくね。たけちゃんっ!球兄のことっ!よろしくねっ!」

頭を下げた秀に拍手が送られて秀は球の体に抱きつく

そっくりな弟を抱きしめて背中を撫でると感情が溢れだしてきて秀と同じように強く強く抱きしめる

「ありがと。秀ちゃん、ありがと!秀ちゃんもまこちゃんと仲良くね?赤ちゃん産まれたら、ちゃんと会いに行くし、写真もいっぱい送ってね?!絶対だよっ!」
「ん・・・ん・・・」

柚木兄弟妹の仲の良さは皆が知っていること。だからこそ2人の抱擁は胸が熱くなるものだった

「球兄、舞からもおめでとうって言うね。でも、泣いちゃうから長い言葉はやめた。球ちゃん、たけちゃん!幸せにね!」

次に妹の舞から短い言葉。秀と共に球の体に抱きつくと球はまた何度もありがとうと2人の背中を撫でる

「・・・球、竹市さん、おめでとうございます。そして、お集まり頂いた皆さん、本当にありがとうございます
ご存知の通り、球は柚木家の長兄ですが、本当に手の掛かる兄でした。そして、竹市さんは私の高校の先輩で、やっぱり手の掛かる先輩でした」

会場に笑いが湧き上がる
皆、知った顔ばかりで柚木が次男だけれど1番しっかりしているのは有名なこと

「そんな兄と先輩が縁あって一緒になる。不安だらけ・・・というわけじゃありません。2人とも支え合ってしっかりと生きていく。それができる2人です。頼り頼られ、寄り添いあって生きていく。これが家族として仲良く過ごしていく条件なんじゃないかと私は思います」

柚木は微笑んで球と竹市を見る

「2人が今までしっかり寄り添いながら苦難、困難を乗り越えてきたのを私は見てきました。ケンカをすることもあった。お互い別のところを見ていたこともあった。これからもそう2人で乗り越えられていけると思います。今はまだ2人とも頼りなく見えるかもしれません。でも、そこは私たちが支えます。皆さんも支えてやってください。私の唯一の兄を温かく見守りながら、一緒に支えてやってください。球、竹市さん、本当におめでとう」

拍手が起こり、球が腕を広げる。秀や舞のように当然腕の中へ飛び込んでくれると思ったのに柚木は笑って手を挙げただけで腕の行き場を失くす

「流」
「!・・・もう・・・いい年してハグとかマジで恥ずかしいからやめて。ここ、日本だから」

球からは逃げたものの、立ち上がって追いかけてきた竹市の腕に捕まってギューギューと抱きしめられる柚木

「今までお前には迷惑ばっかだった。でも、これからはなんとか2人で頑張る」
「ホント・・・だよ・・・」
「だから、お前も」
「まぁ、それでもたまには迷惑掛けていいから」
「クッソ!お前素直じゃないなぁ!寂しいんだろ」
「寂しいよ。手の掛かる兄貴2人が海外移住するとかさ。寂しくないわけないじゃん」

竹市は柚木を抱きしめる
『兄貴』柚木にそう言われるとどこか気恥ずかしいけれどそれ以上に嬉しかった。男らしい、そんな言葉が見かけとは違ってよく似合う柚木に認められたようで、幸せな気分になるから

「たけちゃん!ズルいからね?!流ちゃん独り占め禁止ー!!!」
「あー!僕も僕も!流ちゃんとギューってする!!!」
「そんなのもちろん舞もー!!!」
「ちょ!ちょ!!!お前らオレ潰れるから!体格差考えろ!!!」

駆け寄ってきた球たちに強く抱きしめられると何度も苦しいーと周りに助けを求めた柚木だったが、皆助けに入ることはせず、ただ温かい目で見守ったのだった







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青春はプールの中で12-44 - 03/29 Thu

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ホールが騒がしくなってきた頃、柿内は肉団子を温め直し、皿へと盛り、フルーツをデカンタへと入れてそこへワインを注ぐ

「ヤバい!!!お前ヤバいっ!!!」
「あー?」
「なんだっけ!それ!あ!そう!サングリア!」
「おう。サングリア。白ワインのだからサングリア・ブランカ。球さん、喜びそうだろ?」
「うん!っつかオレもテンション上がった!!!」
「はっ・・・ほら、球さんたちのグラス貸せよ。こっちはまた特別に盛り付けてやっから」
「・・・柿内、本当神!お前来てくれてマジで嬉しい」

球と竹市のグラスにキレイに入れたワインにオレンジとミントを飾ると但馬に差し出す

「そろそろ時間だろ?上座に出してこい」
「おう!」

ホールへと入った但馬はすぐに新井の姿を見つけて手を挙げる

「但馬!なんだよそのヒゲっ!!!」
「ね?カズくんヒゲない方が可愛いよね!」

但馬はそんなに似合わないか。と苦笑しながら柿内に盛ってもらったグラスを球と竹市の席へと並べる
いつのまにか花も飾られたそのテーブル。百合の花がこのサングリアと名前までピッタリだと思いながら小さく微笑んだ

「すげ!なにそれ!美味しそう!」
「デカンタで置いとくから柚木さんも後で飲んで」
「あぁ!ありがとな?球たちのために無理聞いてもらって」
「いや、オレも嬉しいよ。それに多分1番喜んでんのオレの両親だから」

但馬の両親の話を聞いた時は驚いたが、すぐに笑って受け入れた。好きな人とずっと一緒にいることが1番幸せなことなのは柚木もよく判っていることだから

「じゃあ、オレ今日、キッチンメインだからあんまりこっちには来られないけど楽しんでって下さい」
「おう!また後でな!」

但馬は柚木にずっと怒っていた。でも、それも時間が解決した。栗山と付き合うようになったと聞かされて、少しずつ柿内の傷が癒えていくにつれて但馬の怒りも落ち着いていった
柚木は但馬がこの喫茶店へ勤めてからは新井と共に何度か遊びに来たし、新井からは柚木の話題がしょっちゅう出る。柚木に彼女ができただとか長続きしないだとか・・・どれも柿内が聞いてきたら言うけれど但馬の口からは話す気がない話題。だから、今の様子も柿内に伝えるつもりはない。聞かれなければ・・・
聞かないということは多分聞けば止まらなくなるから。捨てられない想いが柿内にあるから栗山にも悪いと思っているのだろう

「なんか、カズくんご飯頑張ったんじゃない?これ!」
「おう。褒めてやれよ?」

並んでいく大皿を見ながらキャッキャと新井がテンションを上げていく。恋人が頑張ってくれたことに感謝していた

「流ちゃんもお腹空いてきたでしょー?」
「んー・・・まぁ、それなりに・・・かな」

柚木のあまり上がらないテンションに寂し気に微笑む
相変わらず痩せすぎている親友。人一倍食べても痩せていた彼はあれからあまり食べなくなったのを知っているから。嬉しそうに楽しそうにたくさん食べる柚木が懐かしい。柚木に彼女ができる度に期待した。この彼女なら再び柚木がたくさん食べられる料理を作るのではないかだとか期待し、その度に落胆してきた

彼女じゃなくても、但馬でもいい。柿内のレシピをいろいろ教えてもらっている但馬でも構わない。あの柚木がまた見たい

「それでは皆さん!本日の主役2人の入場です!」

高田がそう声を上げて音楽を流すと入り口のドアから白いスーツできめた2人が照れくさそうな顔で入ってくる

「竹市さん似合うー!」
「あぁ」
「あ!もちろん球さんも似合う!」
「あぁ」

柚木はただ新井の言葉に頷く
白いスーツが眩しい2人。今まで2人が苦難を乗り越えてきたのを見てきた。聞いてきた。そう。知っているからこそ今日という区切りが嬉しくて切なくて

「流ちゃん、ハンカチいる?」
「え?」
「感極まって泣いちゃうでしょ?」
「バーカ。それ、瑞樹だろ?」
「あはっ・・・そうかも・・・なんかもうじわじわ涙が出てきた気がする」

柚木は笑って幸せそうな笑顔の2人をただ見つめた








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青春はプールの中で12-43 - 03/28 Wed

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久々に長時間立ったキッチンでの作業は疲れたけれどだからこそ一層温泉の湯が効いた

「やっべぇ。温泉イイな」

栗山も来ればよかったのに。そう思いながらもし栗山がいたら球の結婚パーティの準備なんて手伝えなかっただろうと思い直して一緒じゃなくてよかった。と思う

「あー、葉月?」

けれど、ひとつ電話だけはして報告しなければ。と電話を取る

『はいはいー!どーう?今日は温泉行ってんだよね?あ、但馬さんと一緒ー?』
「いや、明日パーティ入っててオレもその準備手伝ってる」
『なにそれ!休暇中なのに働いてる!!!しかも料理してんでしょ?!柿内くんらしいーーー!』

電話の向こうで笑う栗山に柿内は頷く。疚しいことはない。柚木に会うつもりもないし柚木の姿を盗み見しようとも思ってない。でも、何故か言い出しにくい

「・・・葉月」
『ん?どしたー?』
「・・・球さんと竹市さんなんだ」
『・・・何?』
「明日のパーティ」
『・・・どういうこと?』

栗山の声のトーンが明らかに下がっている。判る。柿内だって予想していた。自分だって予想外のことだった

「もちろん会うつもりはない。でも、但馬を手伝いてぇ」
『ウソ・・・それ、柚木さんのためでしょ!球さんの喜ぶ顔を見た柚木さんが幸せそうに笑うのが見たいんでしょ!!!』
「葉月!違う!会わない!見ないっ!」
『・・・勝手にしなよ・・・オレが何言ったって最初からそのつもりでしょ・・・イイよ!別にっ!オレはっ!オレは』
「葉月・・・オレは」

プツっと電話を切られて頭を抱える
予想してた。栗山がヤキモチを妬く方だというのは充分知っている。特に柚木に対しては対抗心も強いから
それは全部柿内の中の柚木が大きかったから。柿内のせい。柚木の幻影がまだ見えるのも、消せないのも全部柿内のせい







翌朝、柿内は昨日、手伝いを終えてから買ったものを抱えて但馬実家の喫茶店へと向かう

「はよ」
「柿内ー!!!本当に来てくれた!!!」
「まぁ・・・」
「あのな!あのな!昨日、親父ともレシピ見直してこうなった!」
「今更変更とか」

柿内はため息を吐き出すと見せられた料理一覧に「あ」と呟く
見慣れないカタカナばかりの料理から柿内が普段作っている馴染みのある料理ばかりに変わっている

「な?柿内これならお前自由に動けるだろ?」
「お前がオレメインに動けっつってんの判った」
「や!オレもこっちの方が判りやすいし!昨日仕込んだやつそのまま使えるやつで考えた!」
「まぁ、あぁ、んじゃ、始めっか!」

柿内はカーディガンを脱ぐと早速料理に取り掛かった






大抵の料理を作り終えると

「こんにちはー」

ひどく懐かしく感じる声が聞こえてくる

「あ、高田さん!洋服の手配までありがとうございました!今日はよろしくお願いします」
「いやいやー!僕も嬉しいよ。こんな貴重な日を僕たちに任せてくれるだなんて」
「着替える場所とかあります?別にここで着替えてイイならオレらここでパパッとみんな来る前に着替えさせてもらいますけど」
「や!やや!それ僕の目の保養になっちゃうから!!!」

高田がバタバタと顔を隠すと「2階の自宅スペースでー・・・それで、段取りなんだけどー」と球と竹市を外へと連れて行く

「球さんたち、来たみたいだな」
「だな」
「柿内!唐揚げまだ揚げねぇの?」
「まぁ、これ、後から提供でもいいだろ。揚げたてのが美味いし、味浸みこませるのもう少しかけた方がイイ」
「そっか・・・じゃあこっちの肉団子」
「それは冷やして中まで味染みさせてから温め直す」
「・・・お前の恋人羨ましい」
「ああ?!」

普段料理も提供している自分よりもよっぽど手慣れた様子で料理をこなしていく柿内

「あ、このワインどーすんの?デカンタは父さんが用意してたけど」
「あぁ、そろそろフルーツやっつけ始めるか」

柿内が持ってきたワインを見てこれが球の好きなもの?と首を傾げたが、何か計画がありそうな柿内にただ黙って指示に従ってオレンジやグレープフルーツの皮を剥き始めた





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青春はプールの中で12-42 - 03/27 Tue

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「ただいま・・・って誰?!お手伝い?!ヤダ!嬉しいー!カズ人呼んでくれたんだぁー?」

高田が荷物を抱えて戻って来たのを見て柿内は手を拭くと高田の荷物を受け取る

「勝手にお邪魔してます」
「父さん、柿内!」
「え!噂の柿内くん?!初めましてー!僕、高田って言います」
「聞いてます。但馬『父さん』ですよね』
「うん。そう。父さん!カズー!柿内くんってアレでしょ?料理上手の!呼んだの?!確か遠くに住んでたよね?!で、わざわざ?!」
「いや、オレは」
「たまたま来たんだって。幻かと思った」

但馬が笑う。幻・・・望んだときに現れる・・・柿内が幻を見るときは強く強く望んだとき。心の奥底で強く望んだときに。但馬は大変なときに自分を望んでくれたのかと考えると悪い気はしない

「ごめんねぇ?僕が役に立てればよかったんだけどー最悪、冷凍食品並べようって思ってたー!」
「舌肥えてる人たちだからそれは止めようって最初に父さんが言ったんじゃん」
「うん。うんうん・・・でもさぁー!あの時はまさか敏彦がギックリ腰とか思っても見なかったんだもんいい加減歳考えろってことだよねぇ」

柿内は真っ白なテーブルクロスを広げるのを手伝いながら高田と敏彦はずっと一緒に過ごして来たのだと改めて感じる
普通の夫婦のように。いや、普通とは何か、柿内にもよく判らないけれど。柿内だって栗山と普通に付き合っているつもりだし、明日結婚パーティをするという竹市と球だって普通。それが同性だということだけ

「あ!ごめーん!仕込み終わってないんだよね?!僕、1人でこっちやるからキッチンお願いー!」
「いや、でも」
「ふふーん!こういうの僕の得意分野だからー!」
「柿内、戻ろ。大丈夫。父さん、好きでやってんだし余計なことして叱られそうだ」
「あぁ」

但馬に促されキッチンへと戻る
明日は球たちの結婚パーティ。当然弟である柚木もここへ来るだろう。会いたい。でも会えない。会ってはいけない・・・でも、球のパーティを成功させたい。但馬を手伝いたい

「どうしたー?ってじゃがいも終わったの?!じゃあ」
「あー、んで、人参は面取りまでとしといた。グラッセにすんだろ?これ」
「お前・・・もーうちの料理人になってー!!!」
「バーカ」

柿内は笑うと冷蔵庫の中身を確認しつつ料理名のメモを見る

「あそこにおいてあるフルーツ何?」
「あー、あれはなんか飾るらしい」
「へぇ・・・あれ、明日少し借りてもいいか?」
「え?」
「まぁ、球さんが好きそうなのは判ってるからオレからの結婚祝い作ろうかなって」
「柿内、明日も本当に」
「キッチンからは出ねぇよ」
「うん!それは父さんとオレで」

会えない。でも何かしたい。柚木のためじゃない。球たちのために

「あー、でもオレお前と飲もうと思ってこの近くの宿取ってんだけど無理だな」
「明日もあるからなー・・・残念だー」
「まぁ、贅沢して2泊取ってるから明日、パーティ終わった後やんね?新井さん来るよな・・・まぁ、3人で飲もうとかは思ってたけど新井さん、あの人と一緒だろうし」
「でも!新井さんはまたすぐにでも会えるけどお前はレアだから!今回はお前優先するっ!」
「ふはっ・・・レアって!でも、まぁ、嬉しい」
「柿内がデレたー!ヤバい超レア!」
「うっせぇ!手ぇ動かせ!オレは合挽肉やっつけはじめっから!!!」

久々に会ったのにそれを感じさせない関係が嬉しい。親友という存在。柚木がいなきゃ、新井がいなきゃ出逢えなかったこの親友。柚木と別れてからもこの関係が続いている幸せ






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青春はプールの中で12-41 - 03/26 Mon

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初めて訪れる土地はナビに従いながらも景色を楽しみながら進む。そして目的地へ到着すると車を停めて店の入り口にかかる『clause』の文字に「マジか」と呟きながらドアを押してみる

「あ、開いた」
「申し訳ありません本日と明日・・・か、柿内ぃ?!」
「ぶはっ!お前っ!何そのヒゲっ!!!超似合わねぇしっ!」
「お前、明日」
「あ?明日?っつか定休日に悪かった。驚かせたくて」

柿内は手土産を渡しながら見慣れないヒゲを生やした但馬に再び笑った

「あー、何も聞かないでとりあえず手伝ってくんね?」
「あ?」

但馬が縋るような顔でキッチンの扉を開くと山のように積まれた食材に言葉を失った

「じゃがいもの皮剥いて」
「いや、なんだよこれ」
「明日、ちょっと・・・パーティやんだけど、親父がギックリ腰やっちゃってオレ1人で料理とか無理!!!ってところに神の助けが来た!みたいな」

柿内は溜め息を吐きながらもし自分が来なかったらどうしてたんだと思いながら羽織っていたカーディガンを脱ぐと手を洗う

「とりあえず皮な?」
「お願い」

包丁を手に取ると皮を剥き始める。この量はバイト時代ぶりだと思いながら

「で?脱サラして喫茶店のマスターはどうだよ」
「・・・会社が倒産した場合も脱サラっつーの?」
「さぁ?」

柿内は笑いながら首を傾げた
会社が倒産したと泣きながら電話がかかって来たのは何年か前。迷って迷って実家を継ぐことに決めた但馬から連絡が来たのは少し前。新井とはまだ続いているけれど遠距離が辛いと何度も愚痴を聞いていた。離れていても親友関係

「お前は?」
「あー?」
「えーっとはーちゃん?」
「あぁ、葉月な。上手くいってる」

但馬はそうかと頷くと確か葉月は名前だった筈だと思い出す。名前で呼んでいるのだ。柿内が。柚木の時は最後まで名前で呼ぶことはなかったのに
それでも幸せそうな親友が嬉しくて目を細めながら玉ねぎを刻む

「父さんの方は親父さんについてるってことか?」
「あー、なんか飾り付け?の借り出しに出掛けてるけどあの人料理ダメっつーかあてになんない」
「へぇ・・・飾り付けとか本格的にパーティすんの?親父さんギックリ腰なのに」

但馬は少し迷って「結婚式なんだ」と呟いた

「何?そんな洒落たこともやってんのか!」
「いや・・・やんない。特別なんだ」
「へぇ」
「・・・やっぱなんか騙してるみたいで嫌だから言う!これ聞いて、柿内が手伝うか出て行くか決めて」

タン。と包丁を置いた但馬に首を傾げながら柿内は手を止めない

「球さん」
「・・・え?」

聞き間違えたか。そう思って思わず手を止める
球。その名前はそうあるものでもないし、柿内が知っている球は1人だけ

柚木の兄、柚木 球だけ

「そう。その球さん!」
「・・・じゃあ・・・」
「っ・・・明日はなんとか!なんとかやるから!球さんたちのせっかくのパーティだからなんとかしたいから!だから、仕込みだけ手伝ってくれないか?こんなこと柿内に頼みたくないけどそりゃ、ムリにとも言えないけどオレ・・・」

柿内はふっと笑うと包丁を持ち直す

「バカ。お前が困ってんだ。助けてやるよ」
「柿内」
「おい!手ぇ止めんな!」
「あ、あぁ」
「そか・・・球さんと竹市さんついにか」
「ん・・・海外移住して、だって・・・だから結婚パーティやりたいけど会場ないかなってあちこち探したみたいだけどイマイチ理想的じゃなかったらしくてさ・・・まぁ、ただでさえ障害多いだろ、男同士だし」
「ん」

柿内は頷く
球と竹市には幸せになってほしい

「それで、瑞樹が父さんに言ったらあの人張り切っちゃってさ・・・デザイナーの友達に白スーツ借りたり、自分たちがしたくてもできなかったこと全部やるんじゃねぇかな。あの人。だからなんつーか、オレらみんなの憧れ?みたいな・・・」
「新井さんもやりたーい!って言うぞ?」

但馬は笑って「もう言ってる」と言いながら手を見せる

「指輪買わされた」
「あぁ、いいじゃねぇか」
「ん・・・まぁ、うん。江口さんも結婚したし、瑞樹は結婚憧れるんだろうな」
「あぁ、んじゃお前らのパーティんときはオレがメシ作るわ」
「泣く!絶対泣く!」
「あぁ、葉月はメシ作るの相変わらずできねぇけど菓子作りはすげぇからあいつにケーキ焼いてもらおう」
「うわー。ヤバい。柿内!オレ瑞樹と結婚パーティやんのもいいかもとか思えて来た!」
「バーカ。結婚はパーティのためにすんじゃねぇよ」

それもそうだ。と言いながら2人で笑った









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青春はプールの中で12-40 - 03/25 Sun

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柿内は久々に訪れる土地に懐かしさとだいぶ変わった風景に時の流れを感じながら車を停めインターホンを押す

「あー!!!柿内ぃぃぃ!!!久しぶりー!!!」
「おう。元気そうだな・・・っつかお前なんつーか膨らんだな。丸い」
「幸せ太りっつーやつー?」
「柿内ー!久し振りー!」

部屋の奥から顔を出した懐かしい顔に手を上げて手土産を神田に渡す

「あー、結婚式も出られなくて悪かったな」
「そーだよ?折角柿内の席用意したのに」

タオルケットに寝かされた小さな子どもに買ってきたおもちゃを渡す

「柿内からおもちゃ!ぶはっ!なんか似合わねぇ!なにそのおもちゃ!知育玩具っっっ!」
「産院の息子ナメんな。ちゃんと姉貴にも調査済みだ」
「あー、そっか!そうだった」

お茶を淹れてくれた神田に礼を言って沙耶に「いいか?」と尋ねると沙耶は頷き柿内は子どもを抱き上げる

「よぉ。チビ。オレは柿内っつーんだ。見てるから、お前ら先に茶とケーキ食え。なかなかねぇだろ。ゆっくり茶飲むことなんて」
「柿内がすごい出来た親戚のおじさんポジション!!!」
「意外だけど私はそんなに驚かない」
「マジで?!」
「だって、柿内だし」

やっぱり柿内と沙耶には入れない空気があるのを感じながら神田は「そっか」と頷いてケーキにフォークを入れた

「続いてんの?」
「あー?」
「後輩くん?」
「あー・・・続いてる」
「そっか」

それだけで柿内が幸せなのだと察する。口数は少ないけれど、柿内の言葉の雰囲気でそれくらい感じられる仲

「っていうかさ、教授が会えないかって聞いてきた」
「あー?」
「あれ?連絡来てない?あぁ、そうだ。柿内番号変わってるから連絡取れないのか!あの人大学辞めて会社やってんじゃん?いや、研究所?よく判んないけど。で、人員集めしてる。んで、こないだ連絡またきたから今日柿内と会う約束してるって言ったら柿内にも連絡とりたいって言ってた」
「お前教えてねぇだろうな」

柚木と別れ、就職先を見ず知らずの土地へ移したときに変えた携帯。全て新しく始めたくて全て変えたあの時・・・新しい連絡先はごく一部の人間にしか教えなかった。どこからか柚木の話題が聞こえてくるのが耐えられなかったから

「教えてないし!」
「でーもー!ほら、噂をすればー沙耶の携帯鳴ってるーーー」
「げっ!しつこいんだよなぁ・・・あの人」

神田に携帯を手渡されて溜め息を吐きながら電話に出る

「はいー。はいはい。えー?うん。いや、まだ子ども産まれたばっかだしってこないだ・・・え?あー・・・うん。えー・・・」

子どもをあやしながら腕の中の温かい温もりがニコニコと柿内へ向ける笑顔を見つめる
自分は持つことのないこの命。可愛いとは思うけれど責任を持つ自信も勇気もない。そして、このまま栗山といると決めたのだから

「柿内ぃー」
「あ?」
「教授」
「はぁ?なんでいるの言うんだよ!」
「ふぇ?!ふぇぇぇっ」
「あ、クッソ。悪い。お前に言ったんじゃねぇから!」
「アハハ。ほら、こっち、おいでーママのところおいでー」

柿内の大きな声に驚き泣き出した子どもに柿内は仕方なく沙耶に子どもを返すと代わりに電話を受け取った

「はい。あー?あー、お久しぶりっす。あ?いや、んなの・・・はぁ?!はぁ・・・あー・・・明日は無理。はぁ?こっちだって仕事・・・そりゃ興味ねぇわけじゃねぇけど」
「なんか、柿内ちょっと変わった?」
「梅ちゃん程じゃない」
「太ったことは言わないで!!!」
「なんで妊娠中の私より体重増えてんの?あんた」
「そーれはー」

電話の終わった柿内が携帯を返すと溜め息をついて沙耶の腕から子どもを抱き上げ床へ腰を下ろす

「お前の母ちゃん、酷いなー?おかげでオレ明後日教授に会うことになったぞ?そのままゆっくり帰ろうって思ってたのになぁ?」

泣き止んだ子どもは柿内の頬をペチペチご機嫌で叩く

「会うの?」
「仕事内容に魅力はあんだよな」
「でも待遇今のところのほうがいいっしょ?」
「まぁ、イイけど今めんどいことも増えてきたからなー・・・っつーとこ。転職までは考えてなかったけど」
「でも、後輩くんどーすんの?」
「だから話聞くだけ。遠距離なったらあいつ暴れる」

沙耶は「そっか」と頷く。会ったことはないけれど柿内から話は聞いていた。あまりそういうことを話さないけれど可愛くて仕方ないのだろう。ということは沙耶にも伝わっている

「明日は友達のとこだっけ?」
「っつか今から」
「今から?!何?なんで急ぐんだよ!」
「あー?そいつんとこの近くに温泉あっし、宿取ってあるから。日頃の疲れを癒す旅行」
「柿内金持ちー!余裕あんなぁ!!!」
「そっか・・・じゃあまた今度ゆっくりおいで」
「おう。チビ。また来るからな?」

何もわかっていな様子の子どもにペチペチ顔を叩かれながら今度会うときはきっと喋るようになっているのだろうと思いながら柿内は子どもの頭を優しく撫でた






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青春はプールの中で12-39 - 03/24 Sat

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「くっそ!予想はしてたけどその通り過ぎて腹立つわ!」

柿内は実家のキッチンでひたすらフライパンを振る

「や!座って!!!座って!ね?!紀行くんっ!」
「いーのよ!料理は得意な奴がしたらいい」
「そんなー・・・ほら、外食べに行ってもいいじゃん」
「私は家庭料理がいい」
「紀代美ちゃん!!!」

紀代美の旦那という人が帰ってきて挨拶も早々に紀代美に料理を命じられた柿内

姉がこういう人間なのはよく知っていたし覚悟はしていたが、実家とはいえもう家を出て何年も経つ。使い勝手の悪いキッチンで料理をするのは難儀なことだった

紀代美の旦那、友久は紀代美の好きそうなイケメンタイプとはやっぱりかけ離れていて、ひょろひょろとしていたし、腰は低くてメガネを掛けていたが人の良さそうな笑顔でどこか安心させられる相手

「あー・・・ごめんね?ボク、料理全然ダメで」
「別に」
「すごいね。料理人みたい!」
「こんなのは慣れ」

フライパンの上を舞う野菜炒めを褒めるとさっと皿に盛り付けてそれを友久が机へ並べる

「あとはスープと米!炊いてあっから」
「ねー、あんたなんですぐ帰るわけ?」
「あー、ついでに寄り道して大学んときの友達とかに会ったりすっから」
「ふーん?いいの?」
「柚木さんじゃねぇし!」

勘繰るような顔に気付いて慌てて否定する

「会えねぇんだ。もう」
「・・・そう」
「紀行くんのいい人の話?」

友久が会話に入って来て少し気まずい顔をする

姉がせっかく結婚できたのに実の弟が男と付き合ってるだなんて知ったらどんな反応をするのか不安で

「ノリの元カレの話ー」
「姉ちゃん!!!」
「ん?」
「紀代美ちゃん。昔の話はいいよ。辛い事乗り越えて今があるんでしょ?ボク達も同じ。紀代美ちゃんだって元カレの話したい?破談になった話とか」
「そりゃ・・・したくないけど」
「ね?紀行くんが今幸せで楽しいならいいじゃない」

元カレという言葉もそのままスルーした友久にただ目を丸くする

「うん?」
「や・・・普通だから」
「え?あぁ、紀行くんのことはね、随分前からもう紀代美ちゃんから聞いてるから」
「何勝手に話してんだよ」
「いいでしょ!別に」

友久が笑いながら「まぁまぁ」と宥めると柿内の肩を叩く

「紀代美ちゃんは紀行くんのこと心配してたんだよ。好きな人を追いかけて大学まで無理してハイレベルな所へ行ったのに別れたのがすごくショックだったんだよね?」
「友久っ!!!」
「ボクの友達に同性カップルいるの病院で有名だったから紀代美ちゃんボクに相談したんだと思う・・・そうでもなかったらボクなんて紀代美ちゃんと話すことすらできなかったよ。うちの病院の高嶺の花だったしね」
「・・・そ、なんだ」
「ハハ。偏見なんてないよ!ただ!セーフティセックス!これは大事!ね?」

柿内は慌てて首を振る

「そんな遊んだりしてねぇ!」
「うんうん。でも、それだけじゃないよー?パートナーが1人でも定期的に検査したり」
「ちょっと!仕事の顔になってっから!ストップ!!!」

紀代美が慌てて止めると友久は「ごめん」と笑って柿内の肩をまた叩いた

「紀代美ちゃんが寂しがるからまた帰って来てよ」
「でも」
「紀行くんの部屋、ずっととっとく。約束」
「いや・・・」
「結婚するときに決めたから。紀行くんの実家はここだから。だからまた帰ってきて」
「大体っ!あんた!あっちの家には居場所ないんだからここ以外に帰る場所ないでしょ!部屋が1個使えないのは勿体無いけど!」
「・・・姉ちゃん・・・ありがと」

帰省なんてするつもりはなかった。居場所なんてないと思っていた。ここも姉夫婦が住むならば自分の居場所はなくなったと思っていたのに自分の帰る場所がある。そんな喜び

「部屋は潰していいから。でも、また帰ってくる」
「ん・・・次はその今カレ葉月連れて来い。イケメン見たい」
「あー・・・考えとく」
「イケメンなの?」
「超イケメン!見る?」
「うん。見せて?」

姉は自分の携帯を操作して栗山の写真を友久に見せる

「待て!お前何で勝手にオレの写真自分の携帯に送ってんだよ!!!」

柿内は慌てて携帯を取り上げようとしたがそれでも楽しかった。仲のいい姉弟とはとても言えないと思っていた。でも、今はいい関係。これも歳をとったからなのかもしれない。歳を重ねていいこともある。たくさん、ある・・・そう柿内は思った






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青春はプールの中で12-38 - 03/23 Fri

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久々に会う約束をしたのは実の姉



「よぉ!よく来た!弟よー!」
「あー、はいはい。なんだよ。急に戻ってこいとか」
「さて、問題です!私のどこかが変わりました!どこでしょうか?!」
「あぁ?!」

どこが変わったか。と言われても久々に会ったから年をとった、等と言ったらその瞬間鉄拳が飛んで来るのは判りきっていること

「・・・」

鉄拳、そう考えて手を見るとハッとした顔で姉の紀代美を見た

「判ったぁ?」
「結婚すんの?!」
「はい!ちょっとハズレー!」
「あ?」
「結婚した!んで、私、柿内じゃなくなった」
「は・・・はぁぁぁ?!」

結婚だなんて大きな出来事を聞いていなかっただなんて信じられなくて柿内はただただ目を丸くした

「あー、まぁ、結構強引に?母さんとかうるさいじゃん?」
「あー・・・あぁ」
「だから旅行っつってそこで挙式して即入籍した」
「うわ・・・マジか」
「母さんの絶叫っぷりおかしかったよ」
「だろうな」

なんだか想像がついて柿内は笑う。そして部屋を見回してそういえば見たことがない家具や物が増えていることに気付く

「うん、ここで暮らしてる」
「あー・・・旦那は?」
「それがさー、今日非番だったのに緊急で呼び出しかかって出てったー!でも夜には帰るよ」
「そうか・・・いい人か?」

姉が2回も破談にしたのは聞いていて、それが全て性格の不一致だとか言っていたが、姉の性格を考えると急な結婚をしてしまった相手合うのか心配になってしまう

「まぁ、今回のはあんたのこと悪く言わないし」
「あ?」
「言わなかったっけ?あんたのこと悪く言ったからやっていけるか!って破談にしたって」
「・・・っつか・・・はぁぁぁ?!」

聞いていない。と言うよりも自分のせいでだなんて、そんなに姉にとって自分は大きな存在だったかと首を傾げる

「医者の家系でみんな医者なのに医者以外になったとかダメな弟だとか?母さんの機嫌とるためか知らないけどさー、ホント下らない。あんたはあんたで頑張ってんの全然理解しようともしないヤツら絶対ムリでしょ。私はあの家継ぐけど母さんみたいにはなりたくないし」
「・・・そ・・・か」
「だからさ、今のは人が良すぎるってくらい人が良いけど。非番でも連絡来たら飛んでっちゃうくらいの人だけど私にはそんくらいの人が合うでしょ」

柿内は頷くと「おめでとう」と小さく呟く。恥ずかしくて照れくさくて

「あんたは?」

姉の言葉に「え?」と顔を上げる

「あんたは、今、幸せ?」

柿内は悩んでひとつ深呼吸する
姉にはまだ言っていなかった。言いたくなかったという方が正しいかもしれない。だから姉はずっと知らないこと

「オレ、柚木さんと別れて・・・さ」
「そんなの知ってる」
「は?」
「大学卒業の年でしょ?」
「あー・・・まぁ・・・っつかなんで」
「あんたが生まれた瞬間から姉ちゃんやってんだよ?判んないわけないでしょ」
「あぁ・・・そ・・・か・・・ってそれで納得できるわけねぇだろ!」
「で!ユズの後!いい人いないわけ?」

少し悩んで「付き合ってる奴がいる」と打ち明けた
姉は柚木のことも知っていた。だから、姉には本当のことを話してもいいと決意する

「あのな、オレ、別にゲイとかじゃねぇけど」
「判ってるわよ」
「今のやつも男っつーか・・・」
「マジかー!!!」

ふはっ!と吹き出した紀代美にホッとする
姉は怒ることもバカにすることもなかった。弟の好きになったという相手を尊重してくれる

「で!イケメン?」
「あー・・・まぁ・・・そうなんだろうな・・・」
「何それ!ちょっとー!写真ないの?!写真ー!」
「あー・・・」

少し迷って携帯を取り出すと写真を探して姉に見せる

「ヤダ!マジイケメン!ズルいでしょ!マジで!紀行なんでイケメンばっか捕まえてるわけ?!分けろ!」
「分けろってお前・・・」
「でもなんか見たことある気がするけど・・・アイドル?モデルか?!読モ的な?!ちょっと!!!」
「あー・・・」

柿内は「オレの部屋は?」と尋ねてそのままだと言われると席を立ち1枚の写真を持って戻る

「・・・こいつ」
「あー・・・って何?!高校ん時の?!ユズと被ってんの?!はぁ?!最低じゃんあんた!」
「いや、被ってねぇし!・・・っつか、たまたま就職先、こいつの大学の近くだった」
「後輩?」
「ん」

紀代美は「へぇ」と言いながら写真を眺める。柿内が変わった頃の写真。皆が敵だとでもいうような顔をしてあちこちに噛みついていたのにどんどん日々が充実して楽しそうに過ごすようになった頃。全て柚木が変えてくれたのだと思っていたが、柿内を変えたのはこの水泳部という組織だったのかもしれないと思い直す

「あんたの青春がぜーんぶここにあんのか」
「うっせぇし!青春とかお前恥ずかしいな」
「あ?事実だろーが!」
「・・・まぁ、確かに楽しかった。こん時」
「今は?」
「・・・こいつな、多分、こいつのお陰で今のオレがある」

栗山の写真を撫でると小さく頷く

柚木と別れて友達関係まで切られて誰も知っている人間がいない土地へ就職を決めた。でも、恋人に、友達に囲まれた生活に慣れ過ぎていて辛かった。それを栗山が救ってくれたのだと今では思える

柚木の幻影も見た。今もたまに笑顔で現れる柚木。でも、以前と違って話しかけてはくれない。記憶が薄れたように柚木の声が聞こえない。それはきっと栗山の存在が大きくなって来たから。寂しさは感じるけれどそれが正しいと思えるようになっていた

「今度連れて来なよ」
「あー・・・あぁ」
「高校同じっつーことは実家こっちでしょ?」
「ん」
「ヤバいー!イケメン充電したいーーー」

あぁ、旦那は結局性格で選んで紀代美好みのイケメンではないのか。と察して苦笑する。柿内だって好きで選んでいるわけじゃない。性格しか見ていないつもり。性別だとか年齢だとかそういうのじゃない。ただ、人間として相手を見て惚れた・・・それがイケメンと言われる分類だっただけ







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夢の続きを見る処3周年記念表彰式 - 03/22 Thu

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「柿内!準備できたか?!」
「準備って・・・何であんたが用意した洋服が洋服でもねぇわけ?」

柿内は慣れ親しんだ1枚の布を指で抓んで眉を顰めて柚木を睨む
それもそのはず。柚木が用意した『一張羅』は水着だったから

「あぁ?だって、お前!お前が投票で1位だぞ?水泳の話だぞ?」
「・・・いや、だからって・・・オレ、もう泳いでもねぇんだけど」
「んー・・・2位があの人だからなぁ・・・」
「・・・あの煌びやかな作家だろ?」
「そう。でも、だからこそお前の1番カッコイイ姿をだな!!!」
「・・・水着が?いや、水着で出てったらオレ、ただのネタ採用だろ」
「お前は水着が1番カッコいいと思うんだけどな・・・」

柚木の顔に舌打ちをすると「くっそ!やってやんよ!」とシャツを脱いだ。自分の体育会系体質を恨みながら・・・







「里見、準備・・・してるの?」
「あー?まぁ、一応・・・行く気はなかったけど、それでも待ってくれてる人はいんだろ」
「行かなくていいし」
「なんだよ・・・お前、こういうの張り切って準備とかしそうなのに」

里見は拗ねたような顔をしている須野の頭をクシャリと撫でると鼻息を荒くした須野に肩を掴まれる

「里見が1位じゃないんだよ!?里見がだよ?!里見が1位じゃないなんてあり得ないじゃんっ!!!」
「・・・まぁ、オレらの話ずっと更新されてねぇし」
「忘れられるはずないっ!!!里見だよ!里見が1位じゃないなんて・・・」
「でも、こうやって考えてみろよ・・・結婚相手として考えたらオレもお前も1位じゃねぇの判んだろ。オレなんか恋人や結婚相手になったらそりゃあ苦労するだろうしオレもオレとは結婚したくねぇ。そりゃオレは完璧だけど結婚相手っつーとな・・・んで、お前も芸能人だから恋人や結婚相手にゃしたくねぇだろ」
「里見っ!!!僕にとって里見は1番結婚したい人だし!!!っていうか里見以外と結婚したくないしっ!恋人も里見以外いやだよ!!!里見が1番っ!里見が1番っ!だって完璧なんだよ?!カッコイイし美人だしっ!頭いいし、足長いしっ!運動だってできるっ!優しいし、あと・・・あと・・・もう、すべてが最高なんだよ?それが里見 光だよ!?」
「・・・まぁ、否定はしねぇ」

須野に褒められるのは慣れているから照れることもない。そして、それを全て事実だと思いつつ、1つだけ訂正しようと須野の唇に指をつける

「でも、優しいのはお前にだけかもな?」
「っ?!」
「特別」
「っっっぅ!!!里見ぃぃぃぃ!!!愛してるぅぅぅぅぅ!!!結婚して!!!」

里見はふっと笑うとジャケットをふわりと纏った








《夢の続きを見る処 3周年記念イベントアンケート表彰式》


『皆様ー!アンケートへのご参加ありがとうございましたっ!そして、この夢の続きを見る処へ訪れてくださる皆様、本当に本当にありがとうございます。感謝の気持ちでいっぱいです。
えー、今回、司会を務めさせて頂くのは、私、映画監督をしておりますShinGoこと葛西 慎吾でございます。同情票でもかまわなーいっ!オレが好きだって投票してくれた人サンキューーーーーッ!!!愛してるーーー!大好きーーーーっ!!!!!』


葛西のマイクの声が会場に響くと温かい拍手が会場を埋め尽くす

『それではーーーー!!!3位ーーーー!!!柚木 流っっっ!!!4人兄弟の次男っ!優秀な兄弟妹を持ちながらも前向きで明るいキャラクターの彼が3位ーーーっ!!!今章では全然出番がないのに3位という成績は彼が本当に愛されている証拠ーーーーっ!はいっ!登場お願いしますっ!!!』

葛西の合図で会場に登場した柚木が頭を下げて少し照れた笑顔で手を振りながら登場すると会場が拍手で湧き上がる

「えー・・・感謝・・・としか言いようがないなぁ・・・オレ、最低なことしてから出番ないのに3位?なんていうか・・・甘すぎる結果じゃないのかな・・・本当にオレ、貰っていいのかな・・・3位なんて」
『おーっと流石3位の柚木 流っ!優しさに溢れるコメントー!!!作者がずっと出番がない柚木の性格を忘れたかぁぁぁぁ?!』
「オレのコメント云々よりも、投票してくださった皆さんの温かいコメントがなんていうかすっげぇ嬉しかった!きっと、また戻って来るから・・・待っててくれると嬉しいです」

再び頭を下げるとスポットライトが消えて再び葛西の声が会場に響く

『そーしてぇぇぇ!!!2位はーーーっ!!!オレの大親友ーーー!!!!自分勝手だけどそれが周りに全部許される男ー!そんなのはこの男しかいなーいっ!須野に愛されまくってる男ー!作家!皐月 光ことーーーー里見 光ーーーー!!!!』

スポットライトが舞台を照らし、モニターに里見の姿が映し出されるとそれだけで会場が沸きあがった

「オレに投票したの、正解。オレ、看板だからね?でも、ちょっと努力が足りなかっただろ。お前ら・・・まぁ、最初の頃、オレに対して辛口コメント多かったの考えたらすげぇだろ・・・正直、須野の方が票入ると思ってたくらいだっつーの」
『おっとぉ?里見さんが意外と謙虚なコメントをしているのはさっきの柚木 流への対抗心かぁぁ?!』
「んなわけねぇだろ。アホ」
『あ、普段の光だった・・・ごっめーんっ!オレもついついお前に対しては熱が入っちゃーう!オレもお前に投票しちゃうー!』
「あ?お前の場合、自分で投票した票が残ってるだけだろ」
『ちっがーうっ!違うよ!違うっ!そりゃーね!このオレも驚いたっ!オレに票が入っちゃう!みたいなの驚いたっ!でもさーでもでもー!入ってんだもんっ!入れてくれた人がいるんだもんっ!!!』
「はいはい・・・じゃあ、次、つれキミ売れ僕がやるときはまたオレに惚れてくれていいから。愛してくれていいから。いつでも。オレが愛に応えるか?それはまた別の問題だろ?」
『あーんっ!光っ!もう抱いてっ!オレを抱いてくれていいよ!・・・あれ?もういないし・・・ちぇ』

スポットライトはとっくに消えていて、袖に捌けた里見に口を尖らせた葛西だったが、すぐに気を取り直して大きく息を吸う

『さぁ!皆さんお待ちかねっ!!!今回!初めてのキャラクター投票にて見事1位を飾った男の登場だーーーーっ!!!!顔は平凡!口は悪いっ!でも本当は優しさに溢れた男っ!!!!それがこの柿内 紀行ぃぃぃぃぃっ!!!!』
「・・・オレの紹介完全に悪口だろ・・・」

水着1枚で肉体美を露わにした柿内が登場すると今までで1番会場が盛り上がる

「っつか、柚木さん・・・あんた、自分も出るなら水泳部らしくあんたこそ水着で出るべきだっただろ・・・完全に出オチだし・・・」
『えー、喜びのコメントお願いします』
「あー・・・誰が入れたの?オレに」
『んー・・・無記名だし?』
「何してんの・・・オレに入れて・・・もっと入れてもイイ奴いただろ」
『え・・・超失礼じゃない?』
「・・・オレだぞ?言っちゃ悪いけど、イイところねぇだろーが!見る目ねぇ奴らばっかだな」
『待ってー!待ってぇぇぇぇっ!みんな紀行がイイって票入れてくれたんじゃんっ!』

柿内はため息を吐くと髪を掻き上げながら頭をガリガリと掻く

「まぁ、正直、ビビったけど驚いたけど・・・そりゃ・・・嬉しいっつか・・・あー!クソ!すっげぇ嬉しいよ!!!普通のオレが貰っていいのかよ・・・」
『あぁ、素直じゃない紀行らしいコメントでしたね。ふひっ』
「うっせぇ!ニヤニヤすんなっ!司会っ!!!」
『はいっ!こちら優勝のトロフィーになりまーす』
「・・・あぁ・・・どうも」
『なんか水着でトロフィー持ってるとミスコンみたいな?あ!王冠必要じゃんっ!ねー!誰かー!美術さーんっ!王冠あるー?あとマントー!!!完璧じゃんっ!ぶふっ・・・ミスコン完璧』
「クッソ!優勝が出オチってホント意味判んねぇ!!!!!!!!!」
『うん?仕方ないよ。夢の続きを見る処だよ?ここ!』

柿内は再び悪態を吐くと差し出された王冠をヤケクソで被り、トロフィーを掲げた





夢の続きを見る処 3周年記念 アンケート結果特別SS  おしまいおしまい







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