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つれないキミと売れてる僕12-13 - 09/30 Sun

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「・・・」
「なんだよ」
「ううん。嬉しくてちょっと・・・なんか固まってた」
「堅くなってんのはお前のシモの話だろ」

里見の手が須野の下肢へ触れて思わず体を引く

「里見、疲れてるしっ!そこは、ほっといて!反応しちゃうけどっ!それは里見が全体的に色っぽいしっ!仕方ないのっ!でもっ!我慢できるの知ってるでしょ?!っていうか僕、里見にキスされたりギュッってされるだけで反応しちゃうの判ってるでしょ?!」
「10代のガキかよ」
「っう・・・里見、ダメなんでしょ?」

縋るような須野の顔に微笑む。愛されている。須野の表情だけでそれが里見を満足させる程愛を物語っている

「メガネ、外してくれるの?!」
「外さねぇよ」
「っ・・・じゃあ」
「おやすみ」

もう1度軽く唇に触れた里見の唇。須野は目を閉じてその余韻に浸る。満足したわけじゃない。もっともっと里見を見つめて抱き締め好きだと言いたい。でも、里見の言うことすべて守りたい。背を向けた里見がメガネを外し、ベッドサイドへと置く。見たい。でも見ない。里見が嫌がるから

「ん」

須野は差し出された里見の手を優しく握ると自然と笑顔になった

言うことを守る。そんな須野を信じてくれているから里見も須野の願いを叶えてくれるのだ

「愛してる」
「ん」
「愛してるっ・・・里見・・・愛してる」

キスの代わりに、抱きしめ返してくれる代わりにギュッと握られる手に須野は微笑んで里見の首筋へ唇を落とす

「おやすみ。僕の愛しい里見」
「ん」

里見は須野の愛の囁きを聞きながら目を瞑る

完璧じゃなくなって不安だった心が満たされながら眠りに落ちていくのを感じていた

先に眠ってしまったらキズを須野に見られるかもしれない。でも、しない。須野は里見の言うことを守ることを知っている

見ていないところでも里見の言いつけはいつだって守る須野を知っている

里見が須野の前で無防備に眠りにつけるのは言葉にはなかなか出して伝えられないけれど里見も須野のことを想っている証




里見の寝息が聞こえ始めると里見を起こさないように里見を後ろからそっと抱きしめる

夢じゃないと、ここにいる里見が現実だと確認したくて

「里見・・・」

長かった。早く会いたかった。もう仕事に戻りたくない。里見に会うためにあと何日で帰れるか携帯のカレンダーと何度もにらめっこした日々。自分をあと何日頑張れば里見に会える。と励ましてきた日々。そして叶った。里見に会えた・・・また仕事に戻れば暫く会えない。苦しい。でも、里見も毎日疲れるまで仕事を頑張っているのだから自分も負けてはいられない

判っている。でも里見とずっと一緒にいたい。里見を24時間見つめていたい

「大好きだよ。大好き。里見、大好き」

首筋にキスをして里見の匂いを自分に擦り付けるように抱きしめる

「ぁ・・・ダメダメ」

繋いでいた手を離されて須野は里見の手を掴もうとするけれど寝返りを打つ気配に慌てて背を向けて目を閉じる

寝返りで須野の方を向いたから不可抗力。そう言い訳はなんだって出来るはずだけれど頑なに約束を守ろうとする須野

でも、須野から背を向けているのはあまりに勿体無くて目を閉じたまま里見と向き合い、里見の頭を胸に押しつけるように抱きしめる

「見てないよ?見てないからね?」

そっと髪にキスをしながら須野も目を閉じる

「愛してる・・・愛してる」






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つれないキミと売れてる僕12-12 - 09/29 Sat

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ハルが里見の部屋から去って行ったのは須野が里見の部屋を訪れてから1時間が経った頃だった

「あー面倒くせぇー」
「お疲れ様」

そういえばずっといたのだと須野の存在を思い出したように顔を上げる
里見の邪魔にならないようにと須野はたまにそこに存在していることを忘れさせる程存在感を消してしまう。決して小さい体じゃないのに隠れているわけでもないのに

「里見」
「あー?」
「里見がケガしたのにすぐに帰れなくてごめんね。痛い?」
「いや。もう痛くない」
「そう・・・」

里見へ寄って床に膝を着く

「ただいま。愛しい人」
「お前・・・恥ずかしいやつだな」
「恥ずかしい?何が?」
「全部」

須野は判らないといった顔で首を小さく傾げるとそっと里見の指にキスをする。まるで王に忠誠を誓う騎士のように、もしくは姫に求愛する王子のように

「・・・会いたかった」
「んー」
「大好き。愛してるよ。光」

里見はくしゃりと須野の髪を撫でるとニヤリと笑みを浮かべる

「甘えた声出しやがって耐えきれねぇのか?待てねぇのか」
「え?」
「お前がオレの名前呼ぶときはヤりてぇときだろ?」
「違っ・・・」

想像の里見よりも意地悪な声。でも、須野が大好きな里見の声、言葉。でも、違う。欲望はさっきバスルームで処理して来た。今日はただ愛しい、愛してる。大好きだと言えればそれで満足。名前で呼んだのだってさっきハルが里見の名前を呼んでいたから。仕事相手なのに何度も里見を名前で呼んだから小さな嫉妬。そして、対抗心

「ほら。キスしてやるからこっち座れ」
「ぁ・・・」

里見からのキスは須野への愛情表現
うっとりとした顔で里見の隣へ座ると里見の美しい顔が近付いてくる
キスしたい。キスして欲しい。早く。早く・・・

カチャ

無機質な音。慣れない里見のメガネが顔に当たった音に驚いて顔を離す

「メガネ・・・外そう?」
「大丈夫だ」
「里見」

里見のガラス越しじゃない瞳が見たいのに。傷も全て見たいのに里見はメガネを外そうとしない

「里見、メガネ」
「うるせぇ!!!!クソっ!萎えた!部屋帰れ」
「ぇ・・・ヤダ。ごめんっ!里見!ごめんなさいっ!」
「触んな!!!」
「里見っ!里見っ!ねぇ!こっち見て!里見っ!」

ソファから立ち上がった里見を慌てて追いかけるけれど寝室のドアを強く目の前で閉められて須野はその場に蹲る

「里見、ごめん。ごめん・・・そんなに嫌だったの?ごめん・・・そんなに・・・」

唇を噛む
元カノからもらったメガネをそんなに外したくないのかとは問えなくて。里見が余計に怒るのは判っているから。信じられないのかと怒るのはもう判っているから

信じている。恭子とはそんな関係じゃないのも何もないのも判っている。ただメガネを外したくないのだと判るのにでも、それでも気になって仕方ない。気にしないではいられない

「里見・・・」
「帰れ」
「僕っ・・・」

こっちに居られるのはもうあと1日しかない。その1日だってほとんどが仕事だし、この部屋に居られるのは夜寝るときくらい。明後日の早朝にはもう起たなくてはならないのだから

でも、それは須野の都合。里見の都合ではない

「お願いしますっ!一緒にっ!一緒に居られるだけでいいっ!お願いしますっ!同じ部屋に居られるだけでもイイからっ!静かにするからっ!」

寝室の前で誰も見ていないのに土下座をする。会いたい。好きで好きで堪らない里見の傍にいたい。ただそれだけ。だから傍に居られるのならば恥も何もない

「・・・お願いしますっ・・・お願いっ・・・里見っ・・・里見ぃっ」

カタン・・・

ドアが開く音がして慌てて顔を上げる

「・・・お前一晩そこで土下座してそうだから許してやる」
「っ・・・ありがとう。ごめん。ごめんね?」

謝られる理由なんてホントはどこにもなかった。須野が悪いわけじゃない。自分が見せたくないだけ。完璧ではなくなった里見 光をこの自分を完璧だと称える須野に見せたくないだけ

「里見、着替えたの?」
「寝る」
「あ、うん。そっか。そっ・・・か」
「期待しすぎだろ。最近寝てねぇのにあのバカが無茶な仕事入れてきたから疲れた」
「や!うん!だよね!仕事忙しそうだもんね!期待とかそうじゃなくって・・・一緒に寝ちゃ・・・ダメ?もちろん何もしない!あ、ごめん。ウソ。手とかは繋ぎたい・・・でも、ダメなら・・・僕、一緒にいるだけでも・・・」

隠しているから隠せているからまだ完璧だと思っているのだろうか。いつもと変わらない須野。必死に縋り付いてくる。もう完璧じゃないのに

これがなくなる?須野の興味が他へ移る?考えただけで言いようのない不安が里見にのし掛かる

今まで付き合ってきた女性が他に心移りするのは何度も見てきた。でも何も惜しくなかった。何も感じなかったのに須野に対してのこの感情が判らない。どうして須野が離れていくのがこんなにも怖いのか

「寝るだけだからな」
「うん!」
「お前風呂は?」
「さっきシャワー浴びたけどダメ?」
「シャツ、シワになんぞ」
「脱いでもいい?」
「勝手にしろ。ヤらねぇけど」

須野はベルトを外し、シャツを脱ぐと里見のベッドへ静かに登る

「里見、寝るときも外さないの?」
「今日は外さない」
「・・・危なくない?」
「危ねぇよ」
「じゃあ、じゃあ・・・里見の背中に頭つけるから。見ないから、外して?メガネ、危ないから里見の顔見られないの我慢するから」

悲しそうな顔をする須野に胸が苦しくなる。この苦しみが一体何なのか判らないけれどメガネに手を伸ばし、震える手で外そうとする

須野の望みを叶えてやりたい。でもできない。外せない。見せたくない

「・・・クソ。できねぇ」
「里見」

見られるのが怖い。幻滅されるのが怖い。キズを見せるのが怖い。こんな簡単なこと。そう皆には思われるだろうけれど里見には簡単じゃないことだった

そんな震える里見の手の上からそっと手を重ねると微笑んだ須野がギュッと里見を抱きしめる

「ありがとう。取ろうとしてくれただけで僕嬉しい。僕のこと考えてくれたんだね?ありがとう。だから、我慢して里見の背中見て大人しく寝るよ。里見はいつも早起きだし、僕が寝てる間に起きるでしょ?だから、僕はそのメガネ外した姿、見ないから」

須野の優しさに里見は昂ぶった神経を抑えられる

「里見、愛してる」

須野の言葉に里見は須野の唇にそっとキスを落とした







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つれないキミと売れてる僕12-11 - 09/28 Fri

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時間は沢山あるわけじゃなかった。この部屋に居られる時間を計算すると寝る時間すら勿体無い。里見に何度好きだと言えるのかを考えたら足りない。なのにまだ帰らない里見の部屋の来客

「・・・」

仕事で離れていた時は仕方ないと諦められた。でも今時間がないのに、こんなに近くにいるのに顔も見られない状況に須野は落ち着いていられなくなる

「ダメ。顔見るだけでもしたい。里見をずっと見ていたい。そう。それだけ。それだけだから・・・」

須野は立ち上がるとドアをノックする

「あー?須野かー?」
「うん。さっき帰ってきたから、お土産、買ってきたからそれ、どうかなって」
「んー。入ってもいい」

了承を得た須野は土産を掴むとドアを開く

驚いた顔の派手な少年・・・もしかしたら里見が別名で歌詞を提供しているバンドのメンバーか何かだろうか。見たことはないけれど

「うっわ!本物!!!」
「お前何買ってきたんだ」
「あ、えっと!お酒のつまみになりそうなのとお菓子?あ、お菓子食べますか?お茶淹れますね」
「ちょ!芸能人にお茶淹れてもらうとか光くん何様なの?!」
「オレ」
「フハッ!慎吾くんに聞いてたけどなんなの!その自信ー!あ、オレハル!春野ハル!」

あぁ、やっぱりバンドか何かやっている人なのだろう。と須野は「須野 寛人です」と頭を下げながらお湯を沸かす

「いや!知ってるしっ!」
「葛西がまた無茶振りしてきた」
「そうなんだ」
「こいつ、葛西が言うには天才プログラマーだとさ」
「事実ですぅー」
「あぁ、そう」

プログラマーという聞き慣れない言葉とバンドメンバーではなかったことに顔を上げてハルの顔を見るけれど派手な容姿でとても普通の会社勤めしているようには見えなかった

「葛西と次何やるの?」
「あー・・・ゲーム」
「ゲーム?!」
「なんかあるだろ。謎解き体験型のやつ」
「あー、うーん?」
「イベント系の」
「うん。なんか判んないけど聞いたことはあるかも」

キッチンへやって来た里見が近い。抱き締めたい。キスしたい。好きだと言いたい

「甘いやつかよ」
「里見は好きじゃないかなぁ?」
「こっちのつまみのが食いたい」
「じゃあ、少しこっちも食べられるよう出すね。里見はまたコーヒー?何杯目?カフェオレにしようか」
「んー」

見慣れないメガネを掛けた里見。あぁ、傷があるからそれを隠すためのメガネなのか。と気付いてメガネなんてない素の里見を見たい。メガネ越しの瞳よりも何もない里見の美しい瞳を見つめたい

「何?」
「ううん。メガネ、見慣れないから」
「あー、恭子がくれた」
「・・・石田さん」
「おー。もー石田じゃねぇけどなー」

元カノからの贈り物だと聞くと嫉妬しなくてもいい。相手は結婚もしていて、幸せなのだ。そう自分に言い聞かせるのに湧き出す嫉妬。人から貰ったものを身につけるのならば全て自分が贈りたい

自分が贈ったもので里見を纏いたい

「よし!じゃあ光くん!こんな感じに最後するのね?」
「違ぇつってんだろ!バカか!バカだな?」
「何で!!!」

里見が口ではバカだと言っているのにそれでも怒った顔じゃないのは楽しい時。相手を認めている時。あの中に入りたい。でも、台本がなければ里見と仕事をすることができない自分を恨んでハルや葛西を羨んだ






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つれないキミと売れてる僕12-10 - 09/27 Thu

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久々に部屋へ帰れる。仕事が休みで帰るわけじゃなくて別の仕事があるから帰るわけだったけれど、それでも部屋に戻れるのは須野にとって幸せなこと

そこに里見がいるから。須野にとってそれが大事。それだけが重要

部屋に入り、荷物を降ろすと土産を持って里見の部屋へ繋がるドアを開けようとする

「だーから違うんだっつーの!」
「えー!なんで?こうしたいんでしょ?」
「いや、さっきの説明聞いてたか?理解できないならそう言えっつーの!バカなんだろ?お前バカだろ」
「何言ってんの?!オレは天才なのっ!」
「はぁ?天才なら理解してオレの望むもの見せろ」
「天才は凡人が理解できないだけですぅー」
「お前ふざけんな」

隣の部屋から聞こえてきたのは里見の声と知らない声。説明だとか理解だとか聞こえるから仕事の打ち合わせかもしれない。打ち合わせと言うより、喧嘩しているようにも聞こえたけれど、とにかく、来客中なのだとドアを開けようとした手を止める

里見に早く会いたい。でも仕事の邪魔はしたくない

打ち合わせで人を呼んだというのならば葛西の人に会いたくなくなって引きこもるだろうという予想は結局外れたじゃないかと少し残念になりながら、須野は土産も降ろすとシャツの匂いを嗅ぐ

「シャワー浴びよう」

里見に会うのに少しでも汗臭かったら抱きしめてもらえないかもしれない。そう須野はいそいそとバスルームへ向かう

里見からの抱擁は愛情表現。好きだという言葉は須野にとっては言わないと爆発しそうなものなのに里見にはなかなか言葉にするのは難しいからと決めた2人の合図。須野が好きだと言って里見が抱きしめ、キスを返してくれる

シャワーを出しながら逸る気持ちを抑える

早く会いたい。好きだと言って抱き締めたい。そして里見の腕が背中に回されるのを感じたい

「っ・・・何考えてんの僕」

須野の気持ちは純粋なもので愛を伝えたいだけなのに里見の腕が回されるのを想像して期待するように少し興奮した下肢に溜め息を漏らす

里見への気持ちは情欲よりも愛情が大きいはずなのに覚えてしまった快楽を、里見に引きずり出された欲を振り払うことができない

「・・・里見、ごめんね?でも、僕里見以外でこんなこと考えたりしないし許して・・・僕が里見以外でこんなになることなんてないんだよ・・・」

最後に里見に触れたのはいつだったか判らない。そういえばあれからずっと仕事で抜くこともなく過ごしていた日々。こんな長い時間離れていたら里見が色気のある声で「エロい声出せ」だとか「エロい動画送ってこい」だとか難しくて恥ずかしいことを普段なら言われていた気がするけれど、里見がケガをしたこともあってか里見から電話で求められることもなかった

今までだったらそう言われないということは他で発散してるからじゃないかだとか自分に飽きたんじゃないかだとか不安になってきたけれど、里見を信じる、里見に愛されていると自分に言い聞かせられるようになったのは須野の成長のおかげ。里見の愛を受けて成長したから

ゆるゆると自身に手を這わすとシャワーの水を受けながら目を閉じて里見を想像する

計算された色気のある指先が意地悪く須野に触れる

耳元で意地悪く囁く「もうこんなにして変態だな」という声
ぞわぞわと快感が背中を這い上がってきて左手を壁について落ちそうな腰を支える

「っ・・・光・・・光ぃ」

頭の中で完璧に再生できる里見の姿。でも、今はこの姿に傷跡が新しくできているのかと気付くと早く里見の全てを見たい。新しい里見で頭の中を更新しなくてはいけない。この里見は今の里見とは違っているのだから

「光、ぁ・・・光・・・キスしたい。好き。愛してるっ」

自身を握りしめると想像の里見が楽しそうに笑って耳に唇を寄せてくる「早ぇんだよ。早漏」

背中を震わせると這い上がってきた欲を握り、抑えようとするけれど耐え切れずに溢れる白濁に溜め息を吐いて残りも吐き出させるよう扱く

「光・・・僕、帰ってきたよ。帰ってきたよ」

早く会いたい。顔を見るだけなら会うだけなら来客中でも構わないかもしれない。ただ、ただいま。と伝えるだけ。でも須野の「会いたい」は里見を抱きしめ、愛してると囁くまでを含んでいるから今すぐ会いたい気持ちを抑えるしかないのだった











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つれないキミと売れてる僕12-9 - 09/26 Wed

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話を聞いたときにもうこれしかないと興奮して、里見の都合も予定も聞かずに返事したこと

先走りすぎだとか勝手だとかそんなのは後からいくらでも謝って許してもらえる。でも、チャンスはその瞬間しかないから返事した。無謀なのも判っている。でも今の自分には映画を作るよりもすぐに里見とできる仕事が必要だったから

仕事がなきゃ里見に差し入れするのも心苦しい。それこそ、偶然会った里見の元カノに差し入れを持って行ってもらうように頼んでしまう程・・・でも、里見はいつも通りのフリをしてくれるから葛西もいつも通りのフリをする。でも、合わない視線は確実に『いつも通り』じゃないから

「んー体痛いー」
「当たり前だ。床で勝手に寝やがって。涎垂らした床は吹いて除菌しろ」
「んー!おはよー!相変わらず光は早起きー!」
「お前が遅ぇだけだ」

時計を指されて背伸びしたまま「あはは」と笑った葛西はゆっくり立ち上がって堅い床で眠り痛い体を腕や首を回して解そうとする

「で、昨日のことだけど」
「やらねぇ」
「詳細見せろって言ったじゃん!持ってきたじゃん!元あったデータも見たんでしょう?!その後光仕事モードの顔してたじゃん!オレ寝ちゃったけどさー光すぐ寝た?違うでしょー?っていうかやらないじゃないの!もう仕事引き受けちゃったからやるしかないのー!!!」
「面白くなかった」
「それを面白くしよー!って話でしょー?!光ならできるー!光とオレならできるー!超最強タッグー!」

里見は溜め息を吐いてパソコンの前から立ち上がって空になったマグカップにコーヒーを注ぐ

「大体、もう出来上がってるものに後付けでシナリオとか」
「光ならできる・・・って考えてあんじゃん。さーすがー!光さーすがぁぁぁぁー!」

葛西は里見の机を見て落書きのように書き走ったノートを手に取ると断片的なメモを見つめて黙り込む葛西

「おい。勝手に見んな」
「・・・光・・・これ、全部書いて!」
「あ?」
「この設定面白そう。オレ読みたい。そう!オレが読みたい!」
「・・・」
「すっげぇ読みたい!!!

キラキラした葛西の目に期待を感じて求められていることに心が満たされる

仕事、というよりもひとりのファンからのの期待を感じるから

「でも、最後のオレの仕掛けたいもんが元にねぇからボツだ。このネタは最後のがなかったら面白くもなんともねぇ」
「そこはなんとかする!っつかなんとかしてもらうから!今度ちゃんと打ち合わせにそいつ連れてくる!」
「・・・必死だな」
「オレがどれだけ光と仕事するの楽しいか判ってないなーー?ずっと夢だったことが実現できてんだよ?!もちろん、ここに須野ちゃんいたら最高だけど須野ちゃんいなくても、光と映像作るの1番好き!オレが撮りたいってずっと思ってきたんだから!光の小説1番最初に映像化したいって思ったのオレだもん!出逢ってから光の小説読んでからずっとファンだったのは須野ちゃんだけじゃない!オレもなんだよ?!」

照れてしまう程の熱い葛西の言葉に里見は満足そうに頷くと葛西の頭をポンと叩く

皐月 光の需要はこの2人がいるから一生在り続けられる気がする。葛西の存在が里見を輝かせる。須野の存在が里見を前に向かせてくれる

「光」
「あー?」
「成功させるからね!光の作品はね、オレの気持ち高まらせてくれる起爆剤なんだよ。いい作品作るのに負けてられないって思うのと同時に尊敬してるから。いつだって誰よりも光の作品愛してるから」
「バーカ。そりゃ須野と競えよ」
「フハッ!勝てなさそうーでも負けはしないー!オレは負けないー!」

親友がいてくれてよかった。顔だけで性格は最悪。そう皆、元カノたちもかつてのクラスメイトたちも評価するのにこの親友たちだけは違う
顔のことも性格のことも見ていない。自分を見てくれている。里見 光という同い年の男を見てくれている

葛西は自分の作品が起爆剤と言ったけれどそれは里見も同じ。葛西の作るものを見て負けられないと気持ちを高めてくれる相手なのは同じ小説家の誰かじゃなくてこの近くにいる親友だった








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つれないキミと売れてる僕12-8 - 09/25 Tue

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元々心が強い方ではないと自分でも判っていた。虚勢を張り、自分は美しい。皆よりも秀でている容姿だけが里見の誇りで強さだったのにそれを失った今、里見を支えるものが里見の中に何もなかった

恭子に貰ったメガネは里見を完璧に戻してくれているようだったけれど、隠していても自分はそのキズを知っている。見えてしまう。その事実が里見をゆっくり眠らせてくれない
たとえ、キズがあっても自分はそれでも美しい。でも美しけれど完璧ではない・・・キズがあるから。見たくない。キズのある自分の完璧だった美しい顔に傷があるのを見たくない。起きてメガネがない状態でそれが見えてしまうのが恐ろしい。だから眠れない・・・

睡眠不足からの苛立ち。元々そんなに長い睡眠は必要ではなかった。でも、そんな里見でも足りない睡眠時間

深夜、携帯を取り出し、今まで眠れない不安な時のように誰かと連絡を取って美貌を讃えられながら性を満たし、心も満たせれば眠れたのに今は簡単に連絡できることのできる相手なんていないことに気付き再び苛立ち携帯を投げ捨てる

「・・・っ・・・」

須野に連絡しようか悩み、でも須野に弱音を吐くことが同じ男としてプライドが許せなくて、そして、完璧じゃなくなった自分を完璧だと言うわけがないと頭を振る
須野ならばこんな自分に完璧だというかもしれない。でもそれは嘘だから。自分はもう完璧じゃないのに、完璧だと言われたところで信じられるわけがないから

それに、電話したところですぐに戻って来られるわけでもない。仕事もあるし、距離もある。性を満たし心を満たせる相手が今すぐに欲しい

須野が好きだというそれだけは信じられていたのに里見が完璧でなくなったと感じる今ではそれすらもなくなった。今まで確実なものだったのに、それがなくなるなんて考えたこともなかったのに・・・
人がこんなことで、自分がこんなことで不安で胸が押しつぶされそうになるだなんて考えたこともなかった。考えられるわけがなかった・・・須野に愛されなくなる不安。それだけ須野を愛している自分にも理解できなかった

ピリリ・・・ピリリ・・・

投げ捨てた携帯に視線を動かす。手を伸ばして携帯を掴むと溜め息を吐き出しながら電話に出る

「何」
『ちょ!っ!今っ!そっち行くから!!!聞いて!』
「あ?」
『今っ!外っ!でも!もうじき着くから!!!開けて待ってて!!!』
「はぁ?」

いつもなら事前に連絡なんてすることなく部屋にやってくるのにわざわざ電話をする理由が判らなくて里見はそのうち乱暴に叩かれるだろう玄関の鍵を開け、リビングのソファーへ腰を下ろす

電話をしてきたのなら今、要件を話せばよかったのではないか。そもそも、こんな深夜に電話して部屋に来るというのだ・・・そこまで考えるとイヤな予感がして玄関の鍵を掛けに戻る

「光ーーー!」

一歩間に合わなかったか。と里見は舌打ちをすると迷惑そうな顔をしながら葛西の肩を持ち、入ってきたばかりの葛西を帰らせようとする

「何ー?!ちょっとー!聞いてよ光!!!」
「帰れ」
「ダメー!オレ今超テンション上がってんだから!!!」
「だからだ!うるせぇ」

葛西のこのテンションは里見にとってロクなことがない

無茶苦茶なことを言っていつも里見を困らせる葛西の状態

「とあるアミューズメントパークで大規模体感型謎解きミステリーイベントがあります!」
「・・・」
「あった。と言うべきかー!広告に詳細出す直前に企画してた会社が資金繰りだかなんだか詳細よく分かんないけどなくなって逃亡して白紙に戻ったんだって!でも今更何もなくなりました!ってわけにはいかないからーーーオレの知り合いの会社に・・・あぁ、そこ、ゲームとかイベントとかやったことなかったけど主に関わってたプログラマがいるからってだけでそこに無理矢理依頼通したらしいんだけど当然シナリオ担当とかがいないからーーーーー今から特急でシナリオと監修できる人求めてるらしいの!」
「お前・・・」
「ネームバリューもそれなりにあるオレらこそ適任じゃん!!!特急で書けるのって光じゃん?!んで!オレすぐに光の書いた奴なら監修だってなんだってできるじゃん?!今!それ聞いて受けて速攻こっち来た!」
「は、はぁ?!」
「まぁ、時間ないから深く練ることはできないかもだけど光、ミステリーやりたいって言ってたじゃん?」

確かに言ったけれどそれは本業の小説での話で葛西の持って来る短編ドラマの脚本だとか今回のようなゲームのシナリオじゃない

「やろう!な?!皐月 光のシナリオがオレには必要なの!!!」
「・・・」

自信のあった容姿はもう完璧じゃない。けれど、小説家として、皐月 光として求められるならば自分の中の自信もまた湧いて来るかもしれない

「・・・なんか今の体感型っつーとプログラムで動くゲームみたいなやつだろ。んなの」
「途中までそこに関与してたプログラマーもオレの友達なの!!!だから!色々縛りはあるけどまぁ、ぶっちゃけかなーり縛りあるんだけど!光なら元々のシナリオより面白いのできるっ!オレたちならできるっ!」
「・・・」

このテンションの葛西に何を言ったってやることになるのだ。どうせ裏でも色々もう動いているに違いなくて里見は溜め息を吐き出しながら葛西の頭を軽く叩くと「詳細よこせ」と吐き捨てた








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つれないキミと売れてる僕12-7 - 09/24 Mon

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感心はしたけれど自分がそれでキズを隠すとなるとそれはまた別の問題

キズを隠したって里見の中では完璧じゃない

今までだって美しさを更に輝かせるため、保つために努力はしてきたけれどその努力とはメイクは違うところにあると里見が感じるから

「ホントあんた昔から性格だけはブスなんだよねぇ」
「お前に言われたくねぇよ」
「私は言いますぅー!っていうか私は言っていいし!ケガした私に大丈夫?の一言もなかったあんたを間近で見てるんだから」
「あぁ、大丈夫だったろ」
「いや、私を大丈夫って言うなら今の光だって大丈夫じゃん!」
「オレは・・・オレは完璧に計算されたような美しさを持ってんだぞ?お前のような適当に美人っつーのとはわけが違うんだっつーの」
「うわぁ。知ってたー!昔から知ってたけど相変わらずすぎてー!っつかキズが残ったってあんたの場合それでも綺麗な顔してることには変わりないでしょ」

恭子の顔を見て鼻で笑う

「当たり前だろ」

恭子だって未だに美しい。体だけの関係だとかじゃなく、里見が隣に連れて歩いていても釣り合いが取れていたと思ったから長く続いたのだと思う。それは里見の隣にいても許される美貌。でも、そんな美しい恭子よりも自分の方がキズを負って完璧じゃなくなった今だって自分の方が美しいと思ってしまうから

「失礼!私の顔見て今言ったー!もー!!!ムカつくけどそれをどう訂正させるべきか判らないのがホント腹立つ・・・判ってんだったらいつまでもそんな陰気臭い顔してないでいつもみたいな自信満々の顔でいなさいよ!」
「・・・」

里見は小さく笑って「メシ、食うか」と呟くと恭子に袋を開けて中を出すよう頼む

そしてサングラスをそっと外して恭子に渡されたメガネを掛ける

「・・・くっそイケメン!腹立つわ。私が似合うと思って選んだんだから似合うに決まってるけどなんなの!予想以上に・・・うっわー!うっわぁぁぁー!!認めたくないーーー!」
「当たり前だろ。オレはなんだって似合うんだ」
「うるさい!顔だけの男が言うな!」

里見はふっと鼻で笑うと葛西の買ったというランチに手を伸ばす

「まぁ、お前のことは守らなかったけど人を庇うっつーのはオレの成長だ」
「・・・違うし」
「あ?」
「あんたは優先順位が普通じゃないだけ。多分一緒にいたのが大事な人の大事な葛西の奥さんだから庇った。あんたはね、葛西が悲しむのを本能的に阻止したわけ」

相手が由梨乃だったから・・・自分の成長ではなくて?

「おかしいのはさ、多分須野っちだったら庇ったりしないのにさー、状況によっては葛西だったら庇ったり助けたりするっていうねー、あんた親友で付き合ってんの須野っちだよね?!って疑っちゃう」
「・・・オレは」

恭子の言葉を否定できない

須野なら、庇うどころか盾にする。きっと須野もそれを望むから

今までの彼女も庇わない。でも葛西は確かに状況によっては庇うかもしれない

里見が愛したたった1人の妹、晶の唯一愛した男だったからかもしれない。いや、それを知らなかった晶が生きていた時も葛西のことは庇ったかもしれないことに里見は疑問を感じる

「ま、私の場合は私に興味ないからただの彼女だったから助けるとか庇うとか光の頭に少しもなかったってだけだろうけど」
「オレみたいな完璧・・・だったこの美しさに傷なんかつけていいわけないだろ」
「・・・完璧じゃなくなったんだ」
「美しい美術品にキズがついたらそれだけで値打ち下がるっつーの」
「それでも美しいものは美しい。そう光ならいうと思ってた」
「・・・」

里見は立ち上がると何日かぶりに鏡の布を下ろす

見慣れない黒縁メガネの自分。でも、メガネのお陰で傷は鏡に映らない美しい自分

「・・・まぁ、美しいな。オレは」
「フハッ!単純か!!!」

リビングから聞こえてきた恭子のツッコミに「バーカ」と呟くと微笑んだ自分の顔にホッとし、またじっと見つめる

大丈夫。美術品もキズが見えなくなればまた完璧だと自分に言い聞かせて。例えキズがついていても自分は皆より美しい・・・これがあれば普段は洋服で見えない肩のキズも全て隠せて完璧な自分に見える

「光ぃ!このトマトサンド食べてもいいのー?」
「それはオレのだ」
「えー!食べちゃったしー!」
「お前ふざけんなよ」

里見は洗面所を後にする

この恭子にもらったメガネを掛けていればまた普段の日常でいられる。自分は美しく完璧だと自信を持って立っていられる。外に出られる。里見 光はやっぱり美しく完璧なのだと自分を誤魔化すことだってできるかもしれない









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つれないキミと売れてる僕12-6 - 09/23 Sun

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インターホンが鳴ったけれどこんな姿誰にも見せられないと出るのを止める

窓はカーテンを閉め切って、鏡はもちろん、反射して自分の姿を映すようなものは全て布で覆った。テレビも使っていないパソコンのモニターも。全てに布を被せて自分の姿が映らないようにした。サングラスも外せない

しつこく鳴るインターホン。そもそも、葛西ならばドアを叩いて来るはずで、エントランスのインターホンなんて鳴らす必要はどこにもない。葛西でもないしつこい相手は一体誰だと苛立ちながらインターホンに出る

「はい・・・はぁ?」
『やほー!っつかやっぱいるじゃん!開けて』
「・・・オレお前に部屋教えてねぇよな・・・?」
『葛西から!さっきばったり会ってさーっていいから開けてよ!葛西に持たされた物重いんだってば!』

里見は溜め息を吐きながらエントランスの解錠ボタンを押す

別に彼女を部屋に入れるのは問題ない。彼女はここを言い触らすような人間でもないし、葛西もそう思ったから彼女に荷物を託したのだろうから

そして部屋のドアを開けると入ってきた美しい女性

「なんだよ・・・恭子」

それは里見の高校時代の彼女。里見にしては長く付き合った女性のひとり

「なんだじゃないっつーの!ほら!これ!昼ご飯らしいよ?私の分も葛西が一緒に買ってくれた」
「あー・・・あいつは?」
「なんか仕事とかなんとか?んで、こっちは服!」
「はあ?」
「っつか、私、その店で葛西に会ったわけよ。旦那のシャツ見てたらさー、葛西がすっごい真剣な顔で洋服見てて私に気付いて開口第一声が『どっちが光好きそう?!』だとかホント相変わらず葛西にも愛されてんだね。光」
「はぁ・・・」

里見は渡された紙袋を受け取ると溜め息を吐きながらソファーへと紙袋を投げる

「っつかあんたなんで部屋の中でサングラスしてんの?」

見たくないから。自分の完璧じゃなくなった顔を何かの拍子に見てしまうのが怖いから
そんな弱い自分は誰にも見せたくない。感じさせたくないからいつも通りの口調でやり過ごすのがベスト

「あー・・・別に」
「ほら。こっちは私から!」
「あ?」
「まぁ、葛西に事故のこと聞いてさー?災難だったなーとかこんなことだろーとは思ったよ」
「ってなんでお前、寛ぎモード入ってんだよ。葛西からの頼まれごと終わったなら帰れ」
「はぁ?私、折角のオフを葛西の光への貢物の買い物に付き合わされておつかいまで頼まれてやって?気を遣ってあんたへの土産まで持って来たって言うのにお茶のひとつも出さずに帰れ?っつかさっきの昼ご飯葛西が私の分も入れたって言ったよね?」

里見は何度目かわからない溜め息を吐きながらキッチンへ向かうと少し前に入れたコーヒーをカップに注いでローテーブルへ置いた

「オレはまだ腹減ってねぇけどお前は食うか?」
「家主が食べないのに私だけ食べるの微妙なのさすがのあんただって判るでしょ!っていうか!ほら。それ開けて」

恭子に促されて小さな紙袋を開けると細長い箱が入っていて箱も開ける
現れたのはメガネケースでそれも開くと黒い縁の趣味のイイメガネが入っていた

「・・・」
「度は入ってない。でも傷くらい隠れるでしょ?私が選んだんだから間違いなくあんたに似合う!更にブルーライトカットだから仕事に丁度いいでしょ?」
「・・・ったく・・・」
「・・・そんなに気になるなら私の使ってる傷もキレイに隠せる化粧品勧めてあげる」
「あぁ?!」
「はぁ?ホント光って私に興味なかったよね・・・」
「何のことだよ」
「付き合ってた時、私庇ってもらえなかったのになぁ」
「はぁ?」

恭子と付き合っていた時、由梨乃と同じような事故があったか思い出そうとしたけれど事故なんて遭わなかった気がして首を傾げる

「教室から出たら野球部のボールが飛んできてガラス割れたの覚えてない?」

里見は少し考えて「あぁ」と思い出したように呟いた

高校の時、誰もいなくなった教室で当時付き合っていた恭子にキスを強請られ少しいちゃついた後、恭子と共に教室を出たあの日、窓にボールが近付いて来たのを見てすぐに避けた。すぐ隣の恭子を庇うわけでもなく、自分の身を守るために声も上げずに本能で避けた

ガラスの割れる音。そして悲鳴。それから見た赤い鮮血

「痛いーーーっ!酷いーーーっ」

そう顔を覆いながら泣く恭子を見下ろしてただ自分じゃなくてよかったと胸を撫で下ろしたあの日

「・・・思い出したかこの見た目だけの里見 光め」
「あぁ」

顔を覆った手から零れ落ちた血。確かに顔にケガを負ったと思うけれど、今の恭子を見てもどこにもケガの面影すらない。これがメイクの力か・・・と思うと確かにメイクの力というのはすごいな。と感心した








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つれないキミと売れてる僕12-5 - 09/22 Sat

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電話を切った後深く深呼吸する。里見が事故に遭った葛西の前で大きく動揺はしなかったと自分では思う。でも、やっぱり心配で仕方ないのだ。動けることも聞いた。命に関わるようなケガじゃないことも、もう部屋に戻っていることも聞いた。でも、今自分が里見の傍にいないことがもどかしい

「ふぅ・・・」

里見の肌に、里見の美しい自慢の肌に傷ができた。それも残る傷。里見もショックを受けているだろう。それは須野にも判ること。しかし、不謹慎ながら彼の自慢が少し薄れたとしたら須野には嬉しいことだった
里見 光は美しい。それは自他ともに認める紛れもない真実だから・・・だからもし、傷ができて里見の美しさが少しでも薄れるのならば自分だけの里見にできるような気がしたから。寧ろ、そうなればいい・・・そんなこと誰にも言えないけれど

「出てくれるかなぁー」

そう呟くと愛しい人へ電話を掛ける。誰も知らない。須野しか知らない番号へ・・・





部屋へ戻ると怖くて鏡が見られなかった。目の上に貼られた小さなテープ。たったそれだけで自分の魅力がなくなったような気がして誰もいない部屋でそれを隠すようにサングラスを掛け、ソファーへと深く腰を掛け頭を抱える

由梨乃を守ったことは自分でも驚いた。でも、もしもこのガラスを受けたのが由梨乃だったらと思うと自分でよかったのだと何度も自分に言い聞かせる。親友の妻を守れたのだから。体も小さく、少女のような由梨乃だったらこんなキズじゃ済まなかったかもしれない。自分本位で生きてきたのに変わった。弱い女性を守れた・・・でも、残ったキズが里見には苦しいものだった。あの瞬間はこんな思いをするだなんて考えなかった。咄嗟に由梨乃を守るために体が動いたのだ

完璧な自分にいつだって酔っていたのに完璧にキズがついてしまった・・・消えないキズが・・・

「っ・・・」

由梨乃を助けられたことは里見自身も誇らしく感じているのにどうしようもなく苦しい。この感情をどこにぶつけたらイイのかも判らない

ピリリ・・・

須野専用の携帯が鳴る。あぁ、葛西だ。きっと葛西がまたお節介にも須野に連絡してまたうるさく帰るだのと騒ぐのだろうと思いながら電話を取る

「なんだ」
『あ、里見?!聞いたよ』
「あぁ、大丈夫だ」
『うん・・・あのね!あの・・・あ、僕!来週ね!2日くらい帰れそうなの!そっちで仕事なんだけど、ゆっくりはしてられないかもだけど帰れるの!』
「・・・あぁ」

思っていた反応と違うことに騒ぐと思っていたのは自分の思い上がりだったのかと小さく舌打ちをする

動けないケガじゃなければ須野は気にしないのだろう。男のかすり傷。事故とはいえすぐに家へ帰れる軽傷なのだから

『食べたいものとか考えておいてね?!』
「あ?」
『食べたいものあれば作るし買ってくるよ!』
「・・・あぁ」

部屋から出なくていい。そう言われているようで目をきつく閉じる。醜いからだ。自分は人前に出ちゃいけない。そんなこと一言だって言われていないけれど、須野はそんなこと思ってもないだろうけれどそう感じるのは自分についたキズのせい
見た目には判らない心のキズのせい

『里見』
「ん」
『愛してる』
「・・・ん」
『完璧な里見。僕の里見・・・愛してる』

返事ができなかった。息ができなくなった

完璧な里見

自分は完璧じゃない。須野が愛しているのは、愛していたのは完璧な自分。須野に愛されるのに慣れすぎた今、完璧じゃなくなって愛されなくなったらどんな反応をすればいいのかわからない

須野が自分を好きなのは当然のことでその愛情がなくなることは考えたこともないこと。歳を重ねても完璧でいればいい。完璧なのが里見 光だからと思っていたけれど里見にとって完璧ではなくなった自分の姿。体型も維持している。肌も手入れを怠らない。美しさだって若い頃と遜色ない。それは須野のためじゃなかったけれど、そんな自分を愛していた須野・・・けれど、失ってしまった。里見にとっての完璧を

『里見?』
「あー?」
『里見に会えるの楽しみにしてる』
「・・・あぁそうか」

どうしたらいいのか判らない。愛されるのが当然だった。美しいから、完璧だから皆が自分を愛するのだと信じてきたのに完璧じゃなくなった今、愛されなくなるのだろう。それが酷く里見には恐ろしいこと






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つれないキミと売れてる僕12-4 - 09/21 Fri

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由梨乃も馴染みのある中華料理店の前へやってくると葛西は車を停めて「好きなのテイクアウトして来てくれる?」と財布を渡す

「慎吾くんは?一緒に行かないの?何が食べたい?」
「オレはちょっと電話するところあるからユリちゃん好きなの選んで買ってきてー?あ!肉まんあったら欲しいなぁ。できるだけ早く終わらせて行くからね?」
「ぁ、うん。判った。慎吾くんの好きそうなの選んでおくね」
「さーすがユリちゃーん!優しいーっ!」

電話の相手くらい判る。相手の動揺が判っているからそれを由梨乃に聞かせたくないのも判るから由梨乃は黙って車を降りた

言わなくてはならない相手。本当なら自分が里見の次に謝らなければならない相手

葛西の親友

そして里見の親友・・・恋人の須野 寛人に


何度か電子音が響いてまだ仕事中かと電話を切ろうか迷った頃、電子音が止まり、聞きなれた声が聞こえてきた

「あ、もしもし?今大丈夫だった?」
『うん。こっち大雨で撮影止まっちゃったし。みんな飲みに行っちゃったんだけど、僕は里見に電話しようかなー仕事中かなーって考えながら台本見直してた所だったんだー。っていうか、どうしたの?珍しいね』

あぁ、遠方で仕事をしている須野に知らせたくない。動揺させたくない

でも言わなければならない。気が重い。でも、里見は無事だから口を開く

「あのさー・・・今、ひとり?」
『ん?うん。誰もいないけど?みんな飲み行っちゃったし。何ー?何か話辛いことなの?』
「今日さ、ユリちゃんがお茶してたら車突っ込んできてね」
『え!ユリさん大丈夫?!まさか何かあって?!僕、都合つけて帰るから!!!大丈夫?葛西、大丈夫?!
ひとり?!里見は?里見についててもらったら?!連絡し辛いなら僕からも里見に言うよ?』

須野という男も酷く優しい。里見への優しさ程ではないけれど自分にもこんなに優しく声を掛けてくれる。高校の時からずっと里見と友達になった瞬間から自分にも優しくしてくれる

「うん。ユリちゃんは無傷!驚くほど無傷!」
『なんだーよかったー・・・もう。驚かせないでよー』
「なんで無傷かっていうとさ・・・」
『うん?』
「・・・光が庇ってくれた」
『え?』

一気に須野のトーンが低くなる

「あ!もう部屋にいるんだ。ケガは大ケガじゃない」
『・・・どこを・・・ケガしたの?!里見はっ!里見は大丈夫なの?!』
「入院もない。骨も折れてない」
『じゃあ!僕っ!僕!今から帰る!』
「須野っ!!!落ち着いて・・・頼むから。落ち着いて」
『落ち着いていられるわけないでしょ?!何?!里見が庇ってケガ?!どういうこと!』

こうなることは予想していた。だから由梨乃の傍で電話なんてできなかった

「肩を数針縫った」
『肩・・・動けるの?利き腕?里見は不自由してない?!』
「動ける。利き腕だけど神経とかそういうところじゃない。痛みもそんなにないみたい。痛み止めが効いてるのかもしれないけど、痛むようなら痛み止め飲ませるし・・・平気」
『・・・よかった・・・よかった』

さっきの由梨乃が無事だと知った時の「よかった」とは全然違うトーンの須野。本当に安堵しているのだ。でも、折角安堵させたけれど本題に入らなければならない

「須野」
『うん』
「光は目の上ガラスで切って縫わなかったけど傷残ると思う」
『目・・・?目?!目は無事なの?!』
「あぁ、ほんの少しずれてたら危なかったらしいけど眼球は無事だ。でも、光の顔に傷が残る」
『・・・そ・・・か・・・傷・・・』

あぁ、須野は里見を愛しすぎているから気付かないのだろう。少し傷が残っても、いや、大きな傷が顔にもし残ったとしても須野の愛は変わらないから。それでも美しいと里見を愛し続けるから

「多分、暫くはあいつ引きこもる」
『・・・うん』
「それで」
『うん。でも、里見無事なんだよね。目が見えないとか仕事できないとかご飯食べられないとかじゃないんだよね?動けるんだもんね?』
「え・・・?」
『来週2日くらい帰れそうなんだ。そっちで仕事あるから。それもあって里見に連絡しようかなって思ってた所だったし、久々に里見独占できちゃうねー。引きこもりの里見、久々だなぁ』

思っていた反応と違って戸惑う葛西

変わったのだ。ほんの少しのことで動揺し、里見の傍から離れない!そう言っていたのに付き合い、変わったのは里見だけじゃないのだ。須野も里見の愛を感じ、強くなった。離れていても大丈夫だと、地方ロケが長い仕事も、地方公演のある舞台も受けられるようになったくらいに・・・もっとも、須野のスケジュールが詰まりすぎていて舞台の仕事を入れる余裕はないらしいけれど

『葛西、ありがとね?』
「え?」
『僕がね、あちこちで仕事できるようになったの、葛西が里見の近くにいるのが大きいんだ。何かあったらすぐ連絡くれるし。そりゃ里見と一緒にいるの妬けるけど、僕、葛西のことは信じてるから』

じわり・・・胸が熱い。チリチリ灼けるようで目頭まで熱くなる

「須野・・・」
『里見は引きこもって凹んでるかもだから暫くご飯、気をつけてくれる?』
「あぁ、それはもちろん任せて。追い出されてもしつこく行くから」
『里見は完璧だよ。でも完璧すぎるからねー、少し傷ができた方が僕安心するって言ったら里見きっと怒るだろうなぁ』
「バーカ。当たり前だ」
『ふふ。でも完璧なんだもん!葛西も知ってるでしょ?』

知っている。彫刻のように計算された美しさを持って生まれ、磨き続けてきたあの男の美しさは近くにいる葛西もよく知っている

そして、実はガラスのように繊細な彼の心も知っている








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