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つれないキミと売れてる僕12-40 - 10/30 Tue

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「須野ちゃんさー、拗ねてただけだからケンカじゃないって言ってたよ」
「あぁ、そう」

帰りの車の中、いつも以上に静かで窓の外をただ見つめる里見に苦笑する

「光ぃー、残って須野ちゃんともう少し過ごした後に新幹線で帰りたかった?須野ちゃんに一瞬会っただけじゃ余計に恋しくなっちゃったー?」
「ねぇよ・・・あー、でも新幹線で帰りてぇ」

そうボヤきながらも須野のことを考える

誤魔化した。いつもみたいに、他の女性にしてきたのと同じようにキスして須野を蕩けさせてその場をやり過ごす・・・でもきっと須野の中の消化できなかった感情は須野の中に溜まっていくのだ。それは負の感情。須野を蝕む負の感情
それがいつか爆発するのだろうか・・・爆発して、それが自分たちの関係にどう影響するのだろうか

「まぁ・・・さぁ・・・光が須野ちゃんのこと好きなのはオレがよーく知ってるからさぁ?またフォローするよ」
「・・・要らねぇよ」

須野の心に溜まっていく負の感情は葛西が解決できるものではない。里見自身が解消しなくてはならないもの。それは里見にも判っているけれど、どうしたらイイのかはよく判らない

ピリリ・・・ピリリ

「・・・」

須野専用の携帯が鳴って葛西が「別れて即掛かってくるとかラブラブだぁねぇー。須野ちゃんきっと寂しいんだー!」と茶化す

「黙れ。あぁ。なんだ?」
『もしもし?!里見?!』
「ん・・・さっきは」
『あ、うん。さっきはごめんね?!っていうかそこに葛西いるよね?』
「オレじゃなくて葛西に用かよ」
『運転してるよね?!』

確かに運転している。と思いながら溜め息を吐き出し、電話をスピーカーにする

『僕の招待状忘れてるよねぇ?!』
「フハッ!なぁにぃー?須野ちゃん忘れてるってー!」

須野の様子が目に浮かぶようで葛西はハンドルを握りながら吹き出した

『僕の分あるよね?あ、なくてもお金払ったら行ける?招待状なくても行ける?』
「行けるよー」
『そ・・・か・・・別に、タダで行きたいとかじゃないけど・・・そっか』

寂しそうな須野の声に里見も吹き出す

「バカだな」
「うん。ホントバカ」
『なんでそんなこと言うの・・・今に始まったことじゃないけど』

葛西は笑いながら「ないわけないじゃん」と言いながらハンドルを切った

『・・・だから忘れてるよね』
「須野ちゃん、それ、遊びに来てくれるならこっち帰ってくる時じゃん」
『あぁ、うん。絶対行くから!ね?』
「うん、だから光に渡した」
『え?』
「こっち帰ってきたら須野ちゃん光にまず会いにくるでしょ」
『うん・・・うん!』
「だからね、須野ちゃんの分は光に渡せば大丈夫でしょ?」
『うん!僕、光に貰えるんだね?!』

明るい声に戻った須野

「まぁ、オレはお前の頭じゃゴールまで行けるかっつー心配はあるけどな」
『そんな・・・あー、でもそうだ・・・答え教えて?!ね?!』
「カンニングは許しませーん!」
『そんな・・・葛西ぃーーーヒントだけでもー!』

昔から変わらない友人関係。くだらない話でもいつだって楽しくてそれは今もこれからもきっと続く








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つれないキミと売れてる僕12-39 - 10/27 Sat

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須野がドアを開けて外へ出ると人の影があってギョッとした

スモークの貼られた車内で見えなかったとは思うけれど見えてしまってもおかしくないから

「仲直りしたぁ?」

でも、それは葛西でホッと胸を撫で下ろす

須野としてはバレてしまっても問題はない。寧ろ里見のことを皆に公表したって構わない。自ら公表したい程だ。その後、仕事に影響はあるかもしれないけれど須野にとっては些細なこと。でも、里見は違うから。里見は自分と付き合っていることを隠しておきたいはずだから。自分が恋人なのを恥じているはずだから

「ケンカなんてしてないよ?僕がいつも通り勝手に拗ねてただけ」

そっと微笑むと葛西も微笑む

「須野ちゃんのお陰で色々勉強にもなったー!で、俳優さんたちともお話できたしホントなんかありがとー!」
「僕何もしてないけど」
「うん。でもねー、須野ちゃんが須野 寛人でいてくれるだけでもう素晴らしい!みたいな?あ、さっき悠介と話してたけどあの子すっげぇイケメンなのにイイ子だね!」
「うん。流石僕の弟役でしょ?」
「あは!うん。そうだねぇ・・・でも光の弟って言われても違和感ない感じに光っぽさを感じたけど」
「・・・そうかなぁ・・・僕は似てないと思うけど」
「そっか・・・須野ちゃんが言うならそうだね!似てない似てないー!」

須野が頷く。きっと須野にとって里見は唯一無二の存在。似た存在も許さない程の揺るがない気持ちがそこにある・・・

「須野ちゃん・・・まぁ、あんまり我慢すんなよ?撮影もだけど、ほら、あいつ・・・さぁ・・・?やっぱ素直じゃないっつーか・・・」
「大丈夫」
「オレに話したってイイんだ。オレも須野ちゃんの親友でしょ?」
「うん。そうだね。ありがと。ホント遠いのにわざわざありがとね?気をつけて帰るんだよ?」

葛西は笑って「当然安全運転です!」と須野に親指を立てて笑った

葛西の前で笑っていたのは俳優 須野 寛人。どんな役にでも化けられると定評のある演技派。葛西の前で葛西の親友、須野を演じただけ

「なんで葛西は里見の特別なの」

そんなこと本人に聞けるわけがない。里見と付き合う前から葛西が羨ましかった。里見の傍に居られる全ての人が羨ましい。中でも葛西は特別。入れない2人の空気。親友という同じ位置にいるはずの自分がいつも取り残されてしまう2人の仲

判っている。ずっと判っていた。それでも耐えられたのに付き合い始めてからは葛西への嫉妬が今まで以上に酷くなっているのを自分でも気付いていた

葛西との仲を疑うなんて気持ち悪い。そう何度も言われて苛つかせて、表面的には信じることにした。でもやっぱり里見にとって特別なのは葛西。これからもずっと?この気持ちを抱えて?親友の前で自分を偽って・・・

須野は溜め息を吐くと見えなくなった葛西の車の向かった方向と逆を向き歩き出す

里見と葛西はいつも同じ方向を向いている・・・自分はこうやって違う方へ歩いて行く・・・それが須野にはとても辛くて寂しく感じるのだ







「須野さん!須野さん!」

興奮気味の斎藤に須野は笑顔で「何どうしたの?」とワクワクを共有するような顔で斎藤の見せる紙を覗き込む

「体験型・・・脱出ゲーム?」
「招待状っすよ!これ!」
「・・・そ、っか・・・?」

いまいち判らなくて戸惑いながら微笑む
招待状ということは招待されたのだろう。だからといって何だろう・・・もしかして自分を誘っているのかと考えた

「須野さんも貰ったんすよね?!一緒に行きましょ!オレ好きなんすよー!こーゆーのー!」
「え?」
「え?!」
「・・・え、だって・・・これ、ShinGo監督と皐月光の・・・今来てたからてっきり須野さんも貰ったと・・・」
「ええ?!待って!ちょっと見せてもらえる?!」

須野が斎藤の持っているチケットとチラシを覗き込むように凝視した後「1人分・・・」と寂しそうに呟く
招待状1枚あればペアで入場できるのかもしれないと期待したのに『おひとり様ご招待』と記載してあるのを見て肩を落とす

「あー・・・っすねぇ」

須野が貰っていないに見せびらかしてしまったことを気まずく感じて斎藤はどうしようか悩む。須野はこの世界でだいぶ先輩だけれど仲良くしてくれて、先輩だとか歳上だとか感じさせない。でも、こんな時、先輩にどう対処したらいいのか判らなくて悩み、この招待状を須野に差し出すべきだと考えを纏めて口を開こうとした瞬間

「もーヤダ!忘れてない?!っていうか確実に葛西忘れてるよね!あ、ごめんね?葛西っていうのはShinGoね?いいよ!一緒に行こう!何としてでも撮影終わらせるかオフ貰って行こう!」

そんな須野の言葉に出しかけた言葉を飲み込んだ

「電話しなきゃ」須野は葛西の携帯に掛けようとして運転中だと思い出し、里見の携帯にかけ直す

「もしもし?!里見?あ、うん。さっきはごめん。っていうか葛西いるよね?!運転してるよね?!僕の招待状忘れてるよねぇ?!」

見せびらかしたことなんて何とも思っていなさそうな須野はいつもと違う様子であぁ、もしかしたらこれが素なのか。と斎藤は俳優、須野 寛人の意外な一面を知って笑った










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つれないキミと売れてる僕12-38 - 10/26 Fri

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コンコン



車内で待ち続けるのも飽きてきた頃、車がノックされて顔を上げた葛西は顔を輝かせて里見の腕を引っ張りながらドアを開く

「どうしたの?旅行じゃなかったの?スタッフさんに言われてびっくりしたよ」
「1泊2日のね!それで寄ったんだー!須野ちゃんに会いたくてー!」

里見は車から降りると不機嫌な顔を隠そうともせず、須野を睨む

いつもなら迷わず自分に話しかけるのに葛西にばかり話しかけるのはまだ拗ねているのかとイラついた。付き合っていない時から須野は自分しか見ていなかったというのに、わざとらしい程里見を見ない須野は須野じゃないようで・・・別に来たいと言っていた葛西だけ来ればよかったのに自分も来たのだ。須野が自分を見ようともしないのは許せない

「あ、差し入れありがとね!皆で頂きます」
「うん!どう撮影ー?」
「順調かなぁ。って僕が思ってるだけだったり・・・」
「おい」
「里見・・・あ・・・っと・・・ごめん。随分車で待たせちゃった・・・よね」

いつまで自分を放っておくつもりなのかと声を荒げると須野が眉を下げて申し訳なさそうに謝る。でも、違う。謝ってほしいわけじゃない・・・いや、謝ってほしかったのだろうか・・・里見は自分の感情すらよく判らない。苛つくのは須野のせい。でも、謝罪が欲しいかと言われたらそうでもない気もする・・・

「・・・オレちょーっと散歩しながら挨拶して来るねー」

不機嫌な里見の可愛い嫉妬姿に葛西は苦笑するとそっとその場から離れていく

「・・・」

黙って車へ戻る里見に戸惑い、俯く須野
苛ついているのは見たら判ること。だからもう、折角顔を見ることができたのに自分が里見に嫌な態度を取ったからもうこれでおしまいなんだと・・・寂しくて抱きつきたくて。でもできなくて

「乗れよ」

そう里見に言われて顔を上げて頷き、葛西の車に乗り込んだ

「・・・」
「・・・」

沈黙が続く。いつもなら煩いくらいの須野が何から話せばいいのか迷った様子で里見の顔色を伺いながら口を結び俯き、顔を上げてはハッとしてまた俯いた

「・・・電話」
「え?」
「掛け直して来ないっつーことはお前、怒ってるか拗ねてんだろ・・・さっきオレがいるの判ってて葛西んとこ行ったのもそういうことか」

里見の言葉に首を振る。けれど、少し考えてコクリとひとつ頷いた

「くだらねぇことでまたお前は悩んで考えてんだろ」
「・・・くだらない?」
「葛西の方が特別だとかあいつの方が好きだとか」
「・・・それもある」
「あいつとはキスだってしたことねぇ。男とはお前だけなの判ってんだろ」
「それは・・・うん。うん・・・」

また何か自分の中で消化して納得しようとしているのが判る。甘い言葉で誤魔化してもそれは愛がないと葛西に言われたことが頭で繰り返される

愛がない?誤魔化すけれど須野に対して愛がない?愛がなければこんなめんどくさい相手とっくに終わりにしていたはず。誤魔化すために愛を囁くのだってそこに愛があるからじゃないのだろうか・・・愛を失いたくないから誤魔化す・・・違うのだろうか

「くだらねぇ」
「くだらなくないっ!」
「あ?」
「っ・・・っ・・・判ってる。里見は僕を愛してくれてる。嬉しい!判ってる。同時に葛西がすっごい大事なのも判ってる!でも・・・でも・・・判ってるんだけど・・・」
「だからそれが」
「くだらなくないのっ!」

声を荒げた須野が首を振りながら「僕にとっては大事なの」と里見の手に触れた

「・・・スモーク貼ってあるからって軽率なことすんじゃねぇよ」
「僕は里見の言うこと聞く。なんでも聞く」
「あ?」
「里見も僕のお願い、聞いてくれてる・・・判ってる。里見は優しくしてくれる・・・僕のコトちゃんと考えてくれてる。だから、だけど・・・僕って何?」
「・・・お前は」
「親友で恋人・・・で合ってるんだよね?」

須野の苦しげな表情に息を飲む

素直になれないから須野を悩ませ、こんな顔をさせてしまう

素直になれないから須野を不安にさせる

親友で恋人・・・そんなの判っているハズなのにどうしていつも不安にさせてしまうのか・・・

「葛西は親友・・・で、僕も親友で・・・恋人だから里見は見せてくれないの?親友なだけだったら見せられるの?僕は・・・どうしよう。ごめん。僕、何言ってるのか判らない」
「・・・須野」

須野が顔を上げると里見の手が握り返してくれるのを感じて視線を手に移す

「お前はオレにどうしてほしいわけ」

体も許し、暴かれ、自分のよく知らない場所まで知っているのにこれ以上どう特別だと言えばいいのか

「里見の裸が見たい」
「・・・っ・・・お前と別れてただの親友に戻ったとしてもお前には今まだ見せたくない・・・そう言ってんだろ」
「わ、わかっ・・・ヤダ!僕そんなつもりでっ」
「てめっ・・・クソっ!判んねーならイイっ!」

里見の精一杯の『素直』だったけれど須野に伝わらなくて里見は手を振り払うと窓の外を見つめる

どうして自分はこうなのか。嘘なら、取り繕うだけならいくらでも言えるのに本音を正直に言えない。カッコ悪くて完璧じゃないから

もう完璧じゃないと思うのに言えない

「別れるの・・・嫌だ」
「言ってねぇだろ」
「言っ・・・た・・・判んないっ!里見は僕のこと愛してくれてると思うけどっ!でも!僕は里見のなんなのか判らない!里見が僕をなんだと思ってるのか判らない!僕は里見だけが特別なのに里見は僕を・・・ごめん。ごめん。なんでもない。だから、こっち見て?」

あぁ、また須野の中で感情を消化させてしまった・・・そう感じながら須野の腕を引くと体勢を崩した須野を押し倒し唇を押し付ける

さっき軽率なことをするなと言ったのに、誤魔化すようなことをするのは愛がないと言われたのに里見にはこうするしかなかった。誤魔化すのは須野が大事だから。失いたくないから・・・

「んっ・・・ぅんっ・・・」

舌で口内を蹂躙し須野の体の力が抜けるのを感じると体を離す

「里見ぃ・・・」

ほら。簡単。こっちの方が向いている。ギスギスした空気もなくなるし何よりも須野が幸せそうに蕩けた顔を里見に見せるから

「これ以上はムリだけどな?」
「ん・・・」
「物足りねぇ?こんなことオレがすんだからお前はオレのどんな存在か判んだろ?」
「・・・うん」
「仕事と終わって部屋、帰ってからな?」

帰ってから・・・その単語に須野は照れたように笑って里見の手を握りながら目を伏せる

「すごい・・・の」
「あ?」
「里見、僕、約束守ってる」
「あー、あぁ。すげぇのな?」
「うん。すげぇの・・・ね」

須野が微笑むと里見の頬に触れて「愛してる」と呟き、里見は「知ってる」と笑った










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つれないキミと売れてる僕12-37 - 10/25 Thu

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葛西が電話を取って須野に里見の傷を見たことを報告してしまったと聞いて電話をかけ直そうか迷って辞めた

わざわざ電話をして誤解を解くのもどこか違う気もしたし、何よりも癪だったから
なんだか負けたような気がするから・・・恋愛には勝ち負けなんて存在しない?里見にとってはいつだって駆け引きのゲームのひとつで勝ち負けが常に存在してきた。だから、謝るのは負けだと今でも謝るのには抵抗がある

そして、掛け直しても来ない須野は怒っているか拗ねているのだと察し、これが里見が電話し、素直に甘い声で理由を話せば機嫌も直るものだとも判っていたけれどそれもできなかった

素直になれない。今まで帝王のように、女王のように振舞ってきた里見は素直だっただろう。自分の思うように、欲望のままに突き進んできた里見。でも須野に対してだけは素直になれない

これが本気で人を愛することだとするならば知りたくなかった。いや、知ることができてよかったのだろう

今まで散々書いてきた文章が現実を帯びるはず。人の愛し方じゃなくて須野がどう人を愛するかじゃなく、嘘ばかりだった自分の本当の愛し方が書けるのだから



「もーじき着くよー!あー人の現場って緊張するぅー」
「・・・後ろの積荷は差し入れか」
「そー!ShinGo監督太っ腹ぁ!」

差し入れの量だとか、葛西はこの現場の監督らと知り合いなのかとかはどうでもよかった。ただ、須野と顔を合わせたとき須野はどんな顔をするだろうかということだけ考える

いつものように信じられないという顔をして喜び微笑むのか。それとも須野に見せられないキズのことを引きずって避けられたりするのだろうか





撮影現場の付近で車を止められ、スタッフに説明をするとスタッフはなにか話し合って誰かを呼んで戻ってくる

「こんにちは!陣中見舞いってやつ!」
「ShinGo監督・・・ホントに来たんですね。じゃあこれはありがたく頂きます」
「邪魔しないようにするからちょっと見てってもいいですか?親友の顔も見たいし」
「あぁ、須野くんね。どうかなぁ。ちょっとピリピリしてるんだよね。現場」
「何かありました?」
「自分も了承した1人だけど須野くん、昨日の夜、ドッキリに引っかかってからそのあと様子がおかしいんだ。まぁ、ミスするとかそういうんじゃないんだけど」

葛西は「昨日の夜」という単語に眉を顰めた

それはきっと自分のせい

里見と須野専用の電話に出た自分のせい・・・

顔色を曇らせた葛西の頭を里見が叩く

「お前じゃねぇよ。オレらの問題だ」

里見の言葉に葛西は俯く

親友から恋人になったことで自分だけが置いていかれた気分になるのはこんなとき。里見と須野の問題。確かにその通りなのかもしれないけれど自分だけがシャットアウトされるのは寂しすぎる

「んで?帰るか?オレはどーでもいい」
「えー!せっかく来たし須野ちゃんに会いたいぃぃぃーーー」
「ハハ。じゃあ、少し待っていてもらえる?とりあえず今のシーン終わったら声掛けるよ」
「ありがとうございます」

待っているように言われたから車で静かに待機する里見と葛西

「光は、須野に言うの?」
「あー?」
「須野ちゃんは完璧な光が好きだからとかなんとかー」
「言うわけないだろ」
「じゃあ須野ちゃんはオレと光の仲を疑い続けるし不機嫌なのも治らないんじゃなーい?やっばーい!オレのせいで光と須野ちゃんがケンカして人の撮影に支障をきたしてるぅぅぅーーーー」
「撮影に影響はねぇっつってたろ」

里見は車の天井を見上げながら「それに機嫌は簡単だろ」と呟く

「何が」
「あいつが喜ぶこと囁いてやりゃそれで満足だ」
「光さぁ・・・簡単に言うけどなんかそれ愛がない」
「あー?」
「他の女の子たちにしてきたことと同じこと須野ちゃんにするってことでしょ?でも、光って須野ちゃんには違うじゃん」

色っぽい顔で甘い言葉を囁けば万事解決。それが里見の今までしてきたことだった。簡単。須野にも何度か同じことをしたけれどその度に須野は複雑な顔をしてそのあとすぐにいつもの照れた顔でふにゃりと笑って「大好き」と機嫌も戻ったのだ。今回だって・・・

「根本的なことは解決しないでしょ。誤魔化してるだけで」
「・・・」

須野が今まで複雑な顔をしていたのは一瞬葛藤しているからなのか・・・と里見は溜め息を吐き出した






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つれないキミと売れてる僕12-36 - 10/24 Wed

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「きゃっ!」

撮影の後、今日の撤収作業の時、1人の女優の短い叫び声に振り返る

「見た?」
「何を?」

女優、松永 結奈は震えながら振り返った須野に助けを求めるように手を伸ばした

「大丈夫?」
「み、見てないですかぁ?」
「見てない・・・よ?」
「悠介くんも?!」
「うん?もしかしてあそこにいた子ども?ちょっと松永さんビビりすぎじゃないっすかぁ?」

震えが収まらない様子の松永に傍にあったブランケットを差し出すとアイドルグループの斎藤 悠介に顔を向けて「子ども?」と尋ねる

「さっき、白い服着た男の子がそこ走っててこんな時間にどこの子かなーって。何?松永さんそんなビビってんですか?」
「だっ・・・すぅって消えたんだもん!」
「消えた?」
「え・・・消えた・・・や、いや・・・暗いし疲れてるからそう見えたんじゃないっすかね・・・自分もさっき子ども見たけど消えたとかじゃなかったっすよ」

いつの間にか残っているのは3人になっていて静けさが耳に響く

「え・・・みんな、早くない?なんでいつの間にか誰もいないの?」
「子ども・・・いたら危ないね。どこら辺?探してみよう」
「え!マジで言ってるの?!須野さんすっげ!」
「ヤダよ!私怖い」

須野が首を傾げる。何が怖い?子ども?

パチン、パキン・・・と高い音が響き、松永はその音に耳を塞ぎながらしゃがみ込む

「やだぁ・・・怖いーーー」
「あ!」

斎藤の声に須野が振り返ると白い洋服を着た少年が木の陰からこちらを覗くように笑ってスッと消えた

木の陰に隠れるように消えたのではなく、その場で闇に溶けるように消えた

「ほらぁ!怖い!!!ヤダぁ!!!」
「・・・ヤバい。電話しなきゃ!っていうか追いかけなきゃ!」
「ちょ!え?!誰に!」
「僕の親友!作家!ほら!皐月光!ヤバい!これきっと光のネタになる!」

嬉しそうに携帯を探す須野を慌てて斎藤が止める

「でも、もしあれが幽霊だったら?!」
「?」
「いや、だから・・・幽霊って電気信号と同じだから電話の相手のところ行っちゃうかも」
「え」
「よく言うでしょ?電波に乗って相手のところに・・・って」

よく言うのか・・・自分は知らないけれどもしかしたら自分が知らないだけでそれが常識なのかもと電話をかけるのを迷う
本物なら里見にも見せてあげたい。電波に乗って飛んでいけるなら里見だって見られるはず。でも、もし、あの少年が里見に悪さをしたら・・・?病気にさせたり、怪我をさせたり・・・そう考えて電話を断念する

「写真だけにしようかな」
「強いね?!強いね!須野さん強いっすね!」
「ヤダぁ!帰ろうよぉ」
「えっと・・・じゃあ悠介くん、松永さんについててあげて?僕はさっきの子が本物の子どもだったら保護しなきゃだし、おばけだったら写真撮らなきゃだから行ってくる・・・あ、動画のほうがイイかな・・・」

須野が怖がることもなく携帯で動画を撮りながら進んでいくのを見て斎藤は「すっげ」と呟き、松永は口元に手を当てて体を震わせた





「・・・あれ?あれ?行き止まり・・・っ!超常現象っ?!おばけよりもこれすごい」

少し進んだところ、さっき少年が見えた場所はなぜか壁があってその壁に触れた瞬間その壁が倒れる

「え!」
「ドッキリーーー大成功・・・じゃなーいっ!もっと驚いてよ!ねぇ!何?強過ぎんの?須野くん強すぎなの?」
「・・・え・・・どういうこと?」

須野が戸惑いながら斎藤と松永を見ると松永は肩を震わせながら爆笑しているし、斎藤はなぜか拍手していた

「・・・あ、何、そっか。僕を驚かせようとしてたのか・・・」
「おばけ出てきてどーだった?」
「あー・・・生きてる子なら保護しなきゃって思ったし、おばけなら親友に報告しなきゃって思って」
「須野くん驚かせるにはどーしたらいーの!」

そう仕掛け人の声で隠れていた撮影スタッフが撮影を止めた

「えー。松永さんも悠介くんも仕掛け人ってこと?」
「うん。松永さん途中から笑ってんだもん!ズルい!オレ超必死に頑張ってたのにー!須野さん電話するとか言い出すしさぁ!
「電波の話は嘘?」
「出まかせだよー!もー須野さん強すぎー!」
「・・・なんだ・・・そっか。電話かけても飛んでいけないのか」
「強いっていうか天然」
「あぁ、うん。天然」
「え!僕そんなことないよ?!」

笑いながら部屋に戻ると里見に電話を掛けた。さっき起こった事を残念ながら本物の幽霊は見えなかったけれどドッキリに初めて引っかかったことを話したくて

でも、それは叶わなかった

電話に出たのは葛西。しかも温泉旅行中だと言われた。そして

「・・・葛西はイイんだ」

須野が見ることを許されなかった里見のキズ。葛西はもう既に見ていて取り残された気分だった

「・・・」

葛西も須野も里見とは親友。でも、須野は恋人でもあるはずで。だったら特別で逆に自分しか見られないキズなのではないかとまだ、見せては貰えないけれどそのうち見せるかもしれないと仄めかされ、期待していたのに

「僕・・・って何」

恋人なのに。里見のいうことならなんでも聞けるのに・・・里見に愛されているという自信も今ではあったのに自分は一体なんなのか判らなくなった








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つれないキミと売れてる僕12-35 - 10/23 Tue

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ピリリ・・・ピリリ・・・

里見が風呂へ行ったからすることもなくて布団に寝転がっていると電話の音がして体を起こしたけれど自分の携帯じゃないことに気付いて周りを見渡すと里見の携帯。葛西が教えてもらえない方の携帯
どれだけ聞いても教えてもらえない携帯・・・存在を知って、その理由を聞いたとき、自分も教えてほしいと何度も詰め寄った。里見にも須野にも。でも番号は未だ教えてもらえない・・・それでもイイ。それだけ2人が真剣だから。須野は自分だけが知っている里見の番号に酔いしれ、里見も須野以外に教えない。その事実だけで2人が真剣で上手く行っているという証拠

「須野ちゃんかぁー」

携帯を手に取ると「もしもーし」と出る

『ぁ・・・葛西?』
「うん!ごめんねぇーオレでー」
『いや、そんなこと・・・』
「あんねー、今、光お風呂行ってるから出れないんだー」
『お風呂・・・』

葛西がいるときにお風呂?何故?と言葉には出さないけれど判りやすい嫉妬を丸出しにする須野

「オレ光に無茶振りして仕事持ち込んだじゃんー!そのお疲れ会で光と温泉来てるんだ。須野ちゃんがお仕事なかったら一緒に来たかったんだけどさー。次はまた一緒に来ようねー!」
『温泉・・・温泉・・・そっか』
「光がまだ肩のキズ気にしてるから部屋に温泉ついてるトコ」
『・・・そ・・・か』

嫉妬丸出しの親友に葛西は苦笑しながらいい加減信用して欲しいと思いながら「オレら何もないって」と須野に優しく話す

「っつかさー、光のキズさー、あれ、計算されたみたいにまたすげぇカッコよく見えるとこにあんな!」
『・・・』
「須野ちゃんー?」
『見たの?』
「あ、ごめん。一緒に風呂入ったけど別にオレは光を変な目で見たりしてねぇよ?!」
『・・・ごめん。里見出て来たら電話あったことだけ伝えて。楽しんでね』
「あー・・・うん」

どこか気まずさを感じながら電話を切った葛西は「やらかした」と頭を掻いた

酔ってなかったらもう少し冷静に判断できたかもしれないのに須野に対してもっと上手く対処できたはずなのにと自分の軽率さを悔やんだ





「気持ち悪いならトイレ行け」
「光・・・」
「あー?」
「オレ、酔っ払ってる」
「知ってる」
「ごめん。やらかした」
「あ?」

顔を上げず震えながら俯く葛西に何をやらかしたのかと近付くとそこに自分の須野専用の携帯があることに気付き「あぁ」と納得した

「須野から電話きたか」
「・・・オレ、知らなくてっ!光が須野ちゃんにまだ傷跡見せてないとかっ!知らなくて!」
「・・・」
「ごめん!ごめんっ!オレっ!須野を傷つけるつもりなくって!」
「・・・あいつには見せたくねぇんだ」
「え」

泣きそうな葛西の髪をくしゃりと撫でる

親友のことでそんなにビビらなくたってイイ。そういうつもりで撫でる

「完璧なオレを愛してるあいつには怖ぇだけだ」
「っ・・・光!須野はっ!」
「知ってる。あいつはオレがどんなでも愛してる。でも、その保証なんてねぇだろ」
「だっ・・・須野だよ?」
「須野だな」
「光じゃなきゃ勃起すらできない須野だよ?」
「・・・だな」

そう。葛西の言う通り。でも、須野に見せるのは勇気が必要

「こないだ須野ちゃん帰ってきた時もう見せたと思ってたんだ」
「あー、脱がされそうになったから突き飛ばして追い返した」
「うわぁ。須野ちゃん可哀想」
「・・・いつものことだろ」
「まぁ、そうかもだけどー!それでもさぁ」

可哀想なのは判っている。酷いことをしたのも判っている

でも、須野の世界が里見でできているのと同じように今の里見の世界に須野が居なくなることは恐ろしい

「好きなんだね」
「あ?」
「そんだけ光は須野に夢中」
「ふざけんな」
「うん・・・うん」
「何笑ってんだよ気持ち悪い」

里見に頭を叩かれたけれどそれでも嬉しくて。須野を必要としている光が愛しくてただ微笑んだ










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つれないキミと売れてる僕12-34 - 10/22 Mon

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「多分ね、ほとんどの人が自分で光を発することができない惑星みたいに」
「なんだよ。突然授業始めんな」
「アハハ。でも、惑星だって衛星だってイイけどさ・・・光はオレらに光を当ててくれるわけ!で、オレら輝ける!みたいな!」

湯を顔に掛けた葛西は笑って夕焼けを見上げると眩しそうに目を細めた
太陽は眩しい・・・直接見ることができない程に・・・

「太陽の光は太陽が重くて熱いから。オレらを同じように愛してくれるだろ?素っ気ないふりしてすっげぇ重く愛してんの!光はっ!恒星とは違って終わることのない光・・・合ってる?!ねぇ!合ってる?オレ色々忘れてる!やっばいバカになってる!でも別にオレ天体関係の映画監督しない!」
「だからいつまで授業やってんだよ。っつか別にオレはお前のことなんて愛してない。気持ち悪いこと言うな」

「またまたー」と言いながら葛西は構わず話し続ける

「オレは光に会わなかった光ることもできなかった石ころだ。親の敷いたレールの上で考えることもなくただ勉強して、働いてた!オレを変えて今を作ったのはお前だよ。光」

自分が太陽なわけがない。見た目がよくて少し賢かっただけ

誰かを輝かせたことなんてない
そんなの自分の役目じゃない
そんな重大なことしていない

「っていうかさ!光自分の周りやたらと成功者いるの判んない?!光が光らせたんだって!みんな!須野も!・・・あー、光に出会わなかった須野ちゃんって想像できないなー!ねぇ!光!光に出会わなかった須野ちゃんってどんなんだと思う?!」
「・・・さぁな」

須野と出会わない世界。それは里見にも想像できない。出会ってから自分の存在を里見に常にアピールするようにつきまとってきた須野と出会わなかったら・・・

こんな関係にはもちろんならなかっただろうし、葛西ともこんなに落ち着いた関係にはなってなかっただろう

「あー!光も須野ちゃんと出会わなかったなんてあり得ないとか思ってんなぁ?!わー!やらしー!ラブラブぅー」
「お前ホントウザい」
「そーいうこと言わないー!ホントはオレのことも大好きなくせにぃー!」

葛西に思い切り湯を掛けると温泉から上がる里見

「なぁ!光!」
「あ?」
「オレは光が好きな光・・・が光っぽいと思う!それこそが完璧な里見 光だと思うんだー」
「・・・意味わかんねぇ」
「えー!須野ちゃんなら分かち合えると思うのにー!!!」

自分が好きな自分・・・確かにさっきの『湯けむり殺人事件』を書く自分は好きじゃなさそうだと小さく笑ったあと、じゃあ、このキズも含めて自分を好きになれば自分らしくて完璧になるのかと小さく首を振りながらタオルを被った








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つれないキミと売れてる僕12-33 - 10/21 Sun

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目的地に到着した里見と葛西。早速葛西が手早くチェックインも済ませ、部屋へ案内される

「もー!何?めっちゃ不機嫌!」
「ケツ痛ぇ」
「ヤダ!オレ光のお尻に何もしてないのに誤解生むじゃん!」
「こんな長距離移動だとか思ってねぇだろ!」
「それをオレが運転したんじゃん!オレを褒めてよ」

葛西のあの詳細プリントをちゃんと確認しなかった自分に後悔していた。もっと近場にだって同等の温泉があるだろうと指摘したり、行かない選択だってできたはずだから

「須野ちゃんの車はみたいに高級車で乗り心地がよくなくてごめんなさいねー!」

嫌味っぽく言う葛西にため息を吐く

葛西の車だって安い車じゃないし、ここまでひとりで運転したことに関しては文句を言えない

「帰りは新幹線で帰る」
「いやいや!待ってー!オレ帰りひとりで帰れってー?!ないわー!それはないー!」
「うっせぇ!」
「もー!折角帰りは須野ちゃんのロケ地寄って帰ろうと思ってたのにー」
「・・・あ?」
「さて!問題ー!なーんでここまで出てきたでしょーか?!」

あぁ、ホントにこういうところが嫌だ。と思いながら葛西の頭を叩く

「ね!お風呂!早速お風呂!ほら!そっちのドアから行ける!」
「あぁ」

葛西に促され、里見は部屋についた温泉へ繋がるドアを開き、脱衣所で服を脱ぐ

鏡に映った自分の肩のキズに小さく舌打ちし、それを見ないよう目を背ける

少しは見慣れた傷跡。最初見た時は吐き気がし、トイレへ駆け込んだ。見たくなくて鏡を全て壊したくて、でも確認したくなって鏡に布をかけるだけに留めた。今はもう吐くことはないけれど見たくない醜いものには変わりない

部屋に温泉がついている宿は今までも来たことがあるけれど、この宿も他に劣らぬ程素晴らしい。と口元に笑みを浮かべながら掛け湯をする

「少しぬるいな」

でも、少ししっとり感じる湯はなかなか良さそうな湯だと浸かった
近くに置いてあったパンフレットを手に取ると効能に目を通す

「創傷、切り傷・・・これで選んだのか?」

葛西がこの宿を選んだ理由が里見が負ったキズのためだったのかとひとり納得していると

「そのとーりー!」

と葛西の声が響く

「オレが入ってんのにお前何しに来た」
「え?結構広いし、一緒に入れるじゃん?」
「入ってくんな」
「ヤダなぁ。オレら裸の付き合いずっとしてきたじゃーん!今更今更ぁ」

何を言ったって葛西は聞かない。そう溜め息を吐くと隣に来た葛西がそっと里見のキズに触れる

「触んな!同情すんな!」
「違う。同情じゃない。これがユリちゃんを救ってくれたキズなんだなーって感謝してる」
「・・・」
「そもそも同情なんてする気ない。須野だってオレだってユリちゃんを守ったっていう証なの知ってるもん。そりゃー、自分のキズひとつない肌にキズがついて光は凹んでるかもだけど。オレもそこは申し訳ないって思うけど、でも、ユリちゃんを守ったキズって誇り持ってイイんだ。光は胸はってこのキズ見せびらかしてもイイんだ」

同情はしない?

でも、顔を合わせにくくて自分の元へ恭子を寄越したじゃないか。と思いながら葛西を湯に沈める

「なにすんの!!!死ぬよ?!溺死すんよ?!温泉で溺死っ!なんかサスペンスっぽい」
「湯けむり殺人事件か。書くかー」
「光っぽくないけどだからこそ気になる!!!」

光っぽく・・・自分とはなんだろう。今まではそんなこと考えることなかった。皆の完璧で美しく賢い里見 光であり、皐月 光だと思っていたから。でも、完璧ではなくなった今は自分を考えるようになっていた

「・・・光はね、オレらの光なの。太陽かなぁ。光がいるからオレらその光を受けて光ることができるんだ」

里見の心を読んだかのように葛西はそう口を開いた








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つれないキミと売れてる僕12-32 - 10/19 Fri

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葛西との仕事の役目がひと段落したから新作の構想を練る

書き溜めた中には未発表のものもたくさんあったけれど担当者との打ち合わせの感触では今まで書いたものでは少し違う気がして新しいネタを空で探す

求められているのは皐月 光ならではの狂愛だと言われた。自分の「ならでは」が狂愛だと言われるとそれは癪な気もする

大抵のものが須野をイメージして作り上げてきたものだから

「あいつは書き尽くしただろ」

溜め息を吐きながら書きたい物を自由に書いていた頃は悩むことも考えることも大してなかったのにと頭を掻く。ある程度売れ始め、そして映画化まで葛西の手でされてからは特に「皐月先生ならではの狭愛を!」と言われることが多くなってきていて、今回も例外ではない。里見は仕方なく須野にまつわるエピソードを思い返す

どれも今まで書いたもの程ではなくて書き綴ったものを読み返しながらネタを探した

担当者にいくつかテーマを挙げられたけれどどれもピンと来ない。須野だったらその時どうするか。考えてもそれは狂愛なのかと疑問に思う・・・いや、須野の反応はやっぱり普通ではないのかもしれない。でも、それに慣らされてしまった里見には全く普通のもので、響くものはない

ドンドン

「ひっかりちゃーん!行こー!」
「・・・は?」

玄関を叩く音に顔を上げ、いつものうるさい奴が来た。ととりあえず無視しようかと思ったけれど今、葛西が言った「行こう」とは何のことだ、どこへ行くのかととドアを開ける

「あれ?光何してんの?」
「は?」
「温泉」
「はぁ?!」
「え!行くって約束したじゃん!」
「今日だとか聞いてねぇし!」
「スケジュール渡したよ!」
「はぁ?!」

ズカズカと部屋へ入ってきた葛西が散らかった資料の中から先日、ハルと打ち合わせをした時に渡した温泉の詳細プリントを見つけ出して里見の前に突きつける

「ほら。ここに書いてあんじゃん!もー須野ちゃんいないと整理できないの?!」
「お前・・・もっと判りやすくしろ!っつか昨日のうちに確認連絡とかお前、いつもならすんだろ?!知らねぇし!準備してねぇっつーの!」
「もー仕方ないなぁ。須野ちゃんいなきゃ旅行の準備もできないのぉ?」
「あいついなくてもできっし」
「言ったな?じゃあさっさと準備するー!んで出発!15分で準備ー!」

「ふざけんな」と悪態を吐きながらもカバンを掴むと必要なものを放り込んで行く

須野がいなくてもひとりで取材旅行だって行くのだ。準備もそう時間がかかるものじゃない。旅行セットはいつだって取り出せる場所にあったし、洋服だって選ぶのを悩むものでもない

「あー!ダメー!パソコンは置いてくー!」
「必要だ」
「仕事休みなさい!」
「構想中のが浮かんだらどーすんだよ」
「携帯あんじゃん」
「ふざけんな」

カバンに入れたパソコンを葛西が出し、再び里見が入れるを何回か繰り返した後、最終的に折れたのは里見だった

「仕事モードにならないくらい光を楽しませてあげるから」
「・・・当たり前だ。パソコン置いて行かせるんだからな」
「ふふ。よーし!じゃあ出発ー!」

里見のカバンを抱えて葛西が部屋を出る。ネタが思いつかない今、頭を空っぽにしてリセットするのもいいかもしれない。好きな温泉に浸かり、求められているものを整理しよう。そう里見は温泉の効果に期待した








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つれないキミと売れてる僕12-31 - 10/18 Thu

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葛西と飲んで帰ったあと、酔った体をベッドに沈め、微睡みの中、電話の音を聞いた

「・・・ん」

眠気もあったし、出なくても良かったけれど電話に出たのはそれが須野しか知らない電話だったから
いや、多分少し前までの里見だったら須野からの電話だと判っていても出なかっただろう。日々、須野への気持ちが大きくなっているのは里見自身も気付かないこと

『あ、ごめん。寝てた?寝てたね?』
「ん・・・」
『ふふ。葛西と飲んでたんでしょ』
「・・・このストーカーめ。盗聴器はどこだ」
『え!!流石にないよ?!したいけど』
「引く」
『だからしないってー』

里見の許可がなければ。尤も、里見が盗聴や盗撮を許すわけないから一生することは叶わないだろうけれど
盗聴や盗撮をしなくたって里見がさっきまで葛西と飲んでいたということは想像できること。仲のいい吉田とだったらきっとまだ飲んでいる時間だろう。そして、電話に出てくれることはなかったはず
早めの解散で、里見が気分良くベッドにいるということは相手が葛西だから

『里見の声が聞きたくて』
「んー」
『愛してるよ』
「あぁ」
『今、僕が近くにいたらキスしてくれた?』
「・・・」

唇を電話に近付け、ワザとらしくリップ音を鳴らす。バカみたいだと笑いがこみ上げてくるけれど須野には効果があるのを知っているから

そして案の定、判りやすく響く須野の生唾を飲み込む音が聞こえて里見は口元を緩ませた

『・・・里見』

顔を見なくても判る。名前を呼ぶ声が艶を帯びて里見に欲情しているのが手に取るように判る

「甘えた声出すな」
『ん・・・ごめ・・・』
「ふっ・・・はは・・・よし。須野。次会ってヤるときまで1人でヌいたりすんな」
『え?』
「焦らして焦らして最高に昂ぶらせて戻ってこい」
『っ・・・里見がそう言うなら』

里見がそれを望むのならと須野は頷き、熱を持ち始めた下肢を見つめた

「小便も我慢した後にすると気持ちいいだろ」
『うん・・・?』
「我慢しまくった後のセックスは?」
『気持ち・・・イイっ!』
「だろ?だから我慢な。できるか?」
『できる・・・我慢する』
「ふっ・・・お前、今からする気だったのに我慢できるんだ?」
『なんっ・・・で!』

里見はゴロリと体を動かすと天井を見て笑う

須野はきっと気付いていない、バレていないと思っているだろうけれど里見は知ってる

いつの間にか下着が新しいものに変えられていて、それは古くなったからじゃなくて須野がファスナー付きのポリ袋に入れて持って行っているから

こんな長期ロケやなかなか時間が合わない時には特に下着の入れ替えが激しいのに須野は里見が気付いていないと思っている
その里見の下着を使い、電話で里見の声を聞き、里見を想いながらコトに及ぼうとしていたのだろう

「オレのボクサー、黒いやつ。あれ結構気に入ってたんだけどなぁ」

須野は目の前にある里見の下着を隠そうと慌てるけれど里見に見えてるわけじゃないことを思い出して頭を抱えながら「ごめんなさい」と呟く

自分の行為は流石に変態染みていると理解はしているけれどどうしても止められない

『・・・里見、あの』
「怒ってねぇよ。呆れてはいるけど。お前が変態なのも判ってるし」
『・・・愛してる・・・僕、里見だけなの』

須野の声に頷くと変わっていく自分が嫌いじゃないことを改めて不思議に思う

最初は嫌だった。誰かに変えられていくという事実が。でも、それさえも須野とこれから生きて行くのだと思うと平気で嫌どころか変わった自分が少し気に入っているのだ

由梨乃を庇ったのもそのひとつ。そのせいで自分が醜くなったけれど由梨乃を庇ったことを後悔はしない

須野の愛は大きい。あまりにも大きくてその愛を受けた里見も周りへ愛を振り撒ける程に

里見はもう1度リップ音を須野に聞かせ

「お前が帰ってきたら最高に気持ちイイセックスしような」

そう挑発するように笑った







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