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つれないキミと売れてる僕12-47 - 12/31 Mon

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「ねぇ、光ぃ?慎吾くんに探されてんじゃんー!なにこれー」
「あ?」

これで何人目の女の部屋だろう。その日その日を過ごせればそれでいい。そう思いながら名前もきっと覚えない女性の部屋を転々とする里見

彼女とは葛西の異業種交流会で知り合ったような気がする。自信のある姿に見覚えがあったから街で会った時に適当に挨拶したけれど名前までははっきりしない。ただ、店の源氏名が載っている名刺は貰ったから彼女のことで分かっているのはその源氏名だけ

「面白いから送ろーっ」
「何してんだよ」

突然写真を撮られたと思ったらくすくすと笑いながら携帯を触る女に里見はイラつきを露わにした

「あぁ、そーいうことかー!光見つけたら入場料割引されるんだぁ」
「はぁ?」
「じゃああたし入場料割引ゲットー!行かないけど」

女に見せられたSNSの画面を見て舌打ちをする

携帯を置いてきたのは葛西のことだから里見の携帯のGPSでも追ってくるんじゃないかという危惧からだったのに置いてきても別の手を使って追ってくるのだと頭を掻いた
どんなことをして逃げたとしても須野と葛西から完全に逃げるのは無理なのだと思う。いつだってそう。探されて救われる・・・でも、今回は救われはしないだろう

「ケンカしたんでしょ」
「誰と」
「慎吾くん」
「してねぇし」
「えー?そう?だって家出グッズじゃん?それー」

里見のカバンを指され、家出じゃない。と首を振る

それにケンカではない。葛西とももちろん、須野ともケンカはしていない

だからこれは家出じゃない。もう部屋に戻るつもりがないときは家出とは言わないハズだから

「違うのー?ケンカしたから顔合わせ辛くなって女のところ転々としてるのかと思ったー」
「ケンカで何でオレが出て行かなきゃなんねぇんだよ」
「んー、なんで?」
「オレが聞いてんだっつーの」
「光って友達少なそうだし」
「ケンカ売ってんのか?」
「あはっ。でも、なんていうかー経験値低いからケンカしたらどうしたらいいのかわからなくてとりあえず逃げて自己完結しちゃえー!みたいな?」

ぐさりと言葉が胸に刺さるようだった

逃げたつもりはなかったけれどこの状況はまさにその通りで口では否定をしたけれど絶対的な愛をくれていた須野からの愛がなくなるのならば本人からそれを聞く前に自分から去る決断をした。聞きたくないから。完璧じゃなくなった自分には用がないだなんて聞きたくないから・・・新しく見つけた完璧を紹介なんて絶対されたくないから・・・それだけ須野を愛しているだなんて里見は気付いていないけれど

今の自分でも受け入れてくれる簡単な方へと逃げているのがこの現状

「まぁ、なんつーか人間、複雑だし!めんどくさくなって逃げるのも判るけどさー。事実上あたしなんて地元から逃げてきたしね」
「自分の話かよ」
「そー!でも光は親友とケンカしたっつーなら戻るべきっしょ。親友なんでしょ?じゃあなんだって許してくれるってー!光も許すべきだってー!っつーか今のままじゃ生活できないじゃん」

確かに不便は多い。自由が欲しければひとりでホテルを取れる。でも落ち着かない日々なのは間違いない

「仕事もあるじゃん?だから戻って慎吾くんと話し合うなりなんなりしたらぁ?部屋出るにしても部屋の整理とか必要っしょ?」
「お前、大して知りもしない男すぐに家に上げる割にまともなこと言うな」
「うっわ!なんかそれ酷いこと言ってない?!」
「バーカ。褒めてんだよ」

馬鹿にされた気がしていたのに里見の見惚れる程の笑顔にまぁいいかと女は笑った









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つれないキミと売れてる僕12-46 - 12/29 Sat

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須野からの電話を受けてすぐに里見の部屋をノックしたが留守で、電話を掛けても出ないのは遊びに行っているのだと思っていた葛西だったけれどそれが間違いだと気付くのはその翌々日だった

朝から何度電話を掛けても出なくて、部屋に行っても留守。しびれを切らした葛西の行動は友人としてはきっと異常なこと

「いやー、光にも須野にも言えないけどオレ持ってるんだよねぇ。じゃじゃーん!合鍵ぃー!」

里見の部屋の鍵を合鍵で開けると「あはーこれって犯罪なんじゃなーい?住居不法侵入?やっばーい!慎吾くん逮捕されるよ?マジでー」と悪いことをしている罪悪感からかやたらとテンション高めに家主のいない部屋へ上がる

「ひーかりちゃーんっ居留守とかだったら慎吾ちゃん悲しー!でもいるなら返事してー!オレ今どーやって入ってきたのか聞いてー」

しかし、リビングに入り、目に入ってきたもので葛西のテンションは急落する

「・・・は?」

机の上に置きっぱなしの携帯が2台。里見がどちらも忘れていくことなんて考えられない仕事でも大事な携帯。連絡するのもこの電話から。ネタや写真、全てが詰まっている大事なもの
脳裏に浮かんだ里見の過去を思い出して慌てて寝室へ飛び込む
里見が過去に自殺未遂を起こしたことは多分葛西の中で一生忘れられない恐怖・・・家族を失った里見が自分も見失ったあの時・・・葛西も彼女以外いないと思った相手を失った事故。でも、その時よりも恐怖を感じたあのとき・・・身の回りのモノ全てを処分して消えようとしていた親友。今のこの状況はあの時と似ているのではないかと背中が寒くなった

「ちょ・・・え・・・」

クローゼットを開くと空きが多くなっているのは明らか

「・・・どこ行った?」

洋服を持って行ったということは命をも消そうというわけじゃないだろうとほっと胸を撫で下ろしたが、では、どこへ行ったのかという疑問が頭を占拠する。取材旅行?いや、それならば携帯を忘れるわけがない。パソコンも仕事机にあった。打ち合わせ?それならこのクローゼットの理由がつけられない。ということは多分仕事で外出はない。じゃあ、友達と旅行?

里見が同性で旅行に行ける相手なんて自分たち以外にいない。少なくとも今までは・・・ならば相手は女性・・・
「・・・まずいだろ。マジで」

里見が何を思っているのか考えているのか判らないけれど須野が連絡取れないと言っていたのは里見が携帯を置いたまま部屋を出て行ったから。そしてそれが判ったからといって須野に報告できるわけないと葛西は暫くスカスカになったクローゼットを呆然と見つめた






「っ・・・よっし!捜索っつーことね!りょーかいりょーかーい!」

里見が出て行った理由もこれからどうしたらいいのか判らなくなって泣きそうになった葛西だったけれど数分後にはワザと明るい声を上げて自分に気合いを入れる

「んーと・・・まずどっからぁー?いやいや、もーあれだよね!あれ!SNSの力!みたいな?」

葛西はざわつく心臓をトントンと叩きながら携帯で文面を作っていく

須野はアカウントも持っていないけれど万が一、須野に見られても里見が行方不明なのがバレないようなものを・・・

「やーっぱりイベントに絡めてー・・・それらしくそれらしくー落ち着けー。落ち着け慎吾ー・・・オレはできるよーできる子できるできるー」

里見の写真を加工し、WANTEDと貼り付け、皐月光を探せ!と指令のような文面を完成させたあと投稿する
これで一見イベント開催の宣伝のように見えるだろう

「光、どこ行ったんだよ・・・」

親友が今までに何度か心を閉ざしたのを知っている。何でもできて何もできない里見。ただ唐突に旅に出るというタイプでもない

大体、仕事が、書くことが大好きな里見がクローゼットの中に空きができるほどの長い旅行で相手がたとえ女性でもパソコンを置いていくわけがない

クローゼットは唐突に思いついた断捨離で、ふらっとすぐ近くのコンビニにでも行っているだけであったらいいと祈る。例えそれがあり得ないと葛西も判っていてもそう祈った








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つれないキミと売れてる僕12-45 - 12/28 Fri

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葛西にとって忙しさというのは幸せの象徴

人と繋がっていると実感するから。自分は不必要な人間じゃないと実感できるから
小さい頃から生きているだけで迷惑だと、息を吸っているのが不快だと言われていた葛西にとって人に求められ、繋がっている今は幸せでしかない

「あー、やっばい!あっちにも電話しなきゃっ!忘れてたぁ」

イベント開始までもう時間がない。里見との仕事を大成功と言えるものにしたいから葛西は幸せな忙しさに走り回る

ピリリ・・・

「おっとー?催促の電話かなー・・・ん?」

ディスプレイの名前は予想していた相手じゃなかったけれど優先したい人からの電話

忙しくたって優先的に出て相談なら話を聞くべき相手。別に義務なんかじゃないけれど、葛西がそうしたい相手のひとり

「はいはーい!」
『あ、僕、須野。あのね!あの、里見どうしてる?僕、この間里見に嫌な態度取っちゃって里見多分怒ってるんだけど!でね!葛西もなんかしてくれたんだよね?謎解きのあのイベントのプレイベントに僕たち呼ばれて!その前日にクランクアップ予定なんだけど帰れるの!ありがとね!でもね、全然里見と連絡とれなくて。電話出てくれないし、僕ね、僕っ』
「やー、待て待て待て。ちょーっと落ち着こうか!須野ちゃん!オレの頭が処理速度追いつかないー」

一気に爆発したように話した須野の言葉を頭で整理する

『ごめん』
「いや、うん。判ったよ?大丈夫。プレの件はなんかどっちの宣伝にもなるってあちこちで盛り上がって決まったんだけど須野ちゃんにオレから連絡できなくてごめんな?で、光とケンカしたの?ってかこっち帰ってきてた?それならちょっと声掛けてよー!オレだけ仲間はずれ寂しいじゃんかー」
『あー・・・こっちで仕事あったついでに部屋に少し寄っただけで・・・ごめん』
「えー!ウソウソーウソー!冗談ーっ!冗談だってばー」
『・・・僕、ホント欲張りで里見困らせてばっかり・・・どうして僕こんなに独占欲強いんだろ・・・里見、怒ってる?怒ってるよね?』

独占欲・・・執着心は強いと思う。でも、浮気しても自分に足りないものを里見が求めるのなら諦めてしまうような須野に独占欲はあると言えるのか葛西は考えながら「ごめんオレも会ってない」と返した

「それで、それいつ?」
『数日前?ハルくん?が部屋来てた』

ああ、あの日か。とハルから里見の部屋に行くとウキウキした声でそう告げられたのを思い出す
あの時、止めるべきか悩んだ。でも、里見が男と浮気なんてあり得ないと信じてハルにも里見にも何も言わなかった

『里見、すっごい仕事モードで楽しそうな顔しながらハルくんの背中にくっついたリボン引っ張ってた』
「え?!」
『あ、ごめん。知らなかった?ハルくん、背中にリボンついてたんだけど。あれ、痛くないのかなぁ』
「いや、そこじゃなくて」
『?』

里見が楽しそうな顔をしていたと知っているのならばそれを見たと言うのだろうか。それでケンカし、独占欲が強いと須野が悩んでいるのだろうか

「あー、あのな?別に浮気とかじゃなくて」
『知ってるよ?判ってる』
「えーっと、その現場、須野ちゃん見たの?」
『?・・・里見とハルくん?見たよ?』
「それで須野ちゃん浮気って思ってケンカとかそういうんじゃなくて?」
『うん。そう思って逃げたんだ。でもね、里見がね、里見が!僕の部屋まで追いかけてくれてさ、自分から浮気じゃなくて仕事だって。そう言ってくれたんだ。僕、葛西が言うように嫉妬したけど仕事なんだって納得したの。でも、でもさ、なんかどうしてももやもやーってしちゃって僕、里見に嫌な態度取っちゃって、里見傷つけちゃって・・・里見のことすごい大好きなのに僕、酷いこと言った。反省してる』

須野がわからない。いや、この男がよくわからないのは昔から

里見のことになると異常だと思う須野。でも、それも愛なのだと理解し受け入れてきたけれど浮気のようにも見える里見とハルを見て嫉妬し、里見を困らせたと悩むのはやっぱりおかしい気がする
でも、葛西は自分が理解できない愛が存在するのだと自分に言い聞かせ続ける

「光と連絡それから取れないの?あー、んじゃまぁ、ちょっと様子見てくるよー!打ち合わせしたいこともあるし!まぁ、気にすることないってー!あいつもあんな性格だし、素直になれないの知ってるじゃん?あとはなんだかんだ忙しいんだと思うよー」
『里見は優しいよ?少し照れ屋さんなだけ。里見は本当に優しくて誠実なの。みんなそれに気付けないだけで・・・でも、ごめんね?葛西も忙しいのに』
「いやいやぁー!いーのよ?確かにね?光はある意味判りやすいし素直なのかもしれないよねー・・・ってか須野ちゃんもっとオレを頼ってー!」
『うん。ありがとう』

電話を切るとため息を吐き出す

里見も須野も大好きで恩人。だからなんだってできることをしてあげたい。2人が幸せなことが葛西にとって大事なことだから

でもたまにすごくうんざりしてしまう

嫉妬して怒ればいい立場の須野はなんでも許し、逆に里見の機嫌を損ねたと悩み、須野に同情し里見を少しでも悪く言えば須野の機嫌を損ねるし

里見は里見で好きという感情が幼稚で覚えたての感情に戸惑うから気持ちについていけなくて不機嫌になるから

「あーあーもーホーントオレがいなきゃダメなんだからぁ」

そう自分を励まさなければやっていけないことも葛西にだってある







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つれないキミと売れてる僕12-44 - 12/27 Thu

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須野が出て行った部屋。家主がいないこの部屋はこんなにも居心地が悪かっただろうか

今まで勝手に入って勝手に散らかしてきた部屋。この部屋じゃなくても須野の部屋は里見にとって今までどこだって居心地のいい場所だったハズ。須野に愛され、須野は自分のものだという絶対的な関係を信じていたから。でも、今はこんなにも居心地が悪い

「クソ」

里見はタバコの箱を取り出して中が空なのを思い出しぐしゃりと箱を潰してゴミ箱へ投げ捨てる

ゴミ箱の淵に当たって床に落ちたことにも腹が立つ。この腹立たしさが何からくるものか判らない。ただ、須野に拒絶された事実を思い出したくない

この体に魅力がなくなった?完璧じゃないから?反応する癖に完璧じゃない自分には触れたくもない?傷付き、失った完璧はもう戻らない。須野の愛はもう2度と手に入らない

須野がどれだけ里見の完璧を求めてもその欲だけは満たしてやることはできない

「っ・・・」

ずっとそばにあった当然だった愛

失うことのないはずの愛

里見はゴミ箱を蹴り倒すと須野の部屋を後にし、自室へ戻りポケットに財布と携帯を突っ込むと部屋を出た

タバコを買うため?いや、この部屋に居たくないから

もう居られないから









「あの、大丈夫ですか?」
「・・・」

ほら。須野が求める完璧じゃなくても女くらい釣れる。そう里見はコンビニの前で自嘲しながら困った顔で声を掛けてきた女性をしゃがんだまま見上げた

「家、帰れなくて悩んでたところ」
「・・・どうしたんですか?鍵失くしたとか?」

小さく笑って「フラれたのかも」と計算した表情と仕草で女性を釣る
求められたくて。誰かにまだ完璧じゃなくても美しい自分を求めて欲しくて

須野の代わりになり得る愛を欲して

そんなの見つかるわけないのは判っているのに判りたくないから代わりを求める

「なぁ、それ、晩メシ?」

コンビニの袋を指してそう尋ねると頷いた女性の手から袋を奪う

「あ・・・え?」
「奢るからメシ付き合ってよ」
「え」
「まぁ、怪しむなとか警戒すんなとか言えねぇけどコレよりは美味いメシ奢るから・・・それは約束する」
「・・・」
「オレとじゃ不服?」

里見の笑顔が美しくてそれが自分に向けられているだなんて恥ずかしくてそして優越感を感じる

「ご飯・・・だけ?」
「そのあとはオレが決めることじゃない」
「・・・じゃあ・・・ご飯だけ・・・なら」
「ん。決まり」

里見は自然に女性の背中に手を回す

忘れたい。彼女が自分を見る目は美しいものを直視できない様子なのが里見を高揚させる。やっぱり美しい。完璧じゃなくても美しい・・・須野の求める完璧はなくても自分は人に愛される存在だと。美しいのだと振舞いは完璧なのだと信じたかった

誰かに愛されていないと、常に大きな愛を受けていないと自分が保てない気がする

里見の浮気性はそこから。愛が足りない。いつだって愛に飢えていた。須野の愛は大きくて浮気しなくたって里見は満たされた。でも、今は愛が枯渇したように飢えている

そう。飢えているのだ







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つれないキミと売れてる僕12-43 - 12/26 Wed

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普段だったら里見が何をしているのか、来客中か、それとも仕事中かドアの向こうで聞き耳を立て、確認しながらドアをノックしてから入って来ると言うのにそれも出来ないくらい早く会いたかったのだろう

「須野ー?」

静かな部屋に首を傾げながら須野を探す

そして、寝室のドアを開くとクローゼットから荷物を出している須野の姿

「須野ー」
「あ、ごめん。すぐ出るから!僕、荷物取りに来る時間だけ許されててっ・・・ごめ・・・ごめんなさい」
「あー?」
「じゃ・・・邪魔してごめんなさい」

あぁ、やっぱり勘違いさせた。そう思いながら須野の背中に触れるとビクリと背中を震わせる須野

「こっち向け」
「・・・」
「須野」

ゆっくり顔を向けた須野はやっぱり泣いていてそっと須野を抱きしめる

愛しいだなんて感情が情欲以外でも自分にあるだなんて考えもしなかった。それだけこの男を愛している

須野の愛は大きい。でも、里見だって充分それに応えるだけの愛を持っているのに相変わらず須野はそれに気付いていない。いや、気付けない。あまりにも里見という存在が大きすぎて信じてもこんなにも愛してもらえるだなんて思ってもいない
里見も自分が須野に対してだけは本気の言葉はカッコ悪くて言えないのが須野の自信のなさの原因のひとつだと判ってはいるけれども

「小説のネタ探しててなー」
「・・・うん・・・うん」
「あいつ、なんつーかネタになりそうなもん抱えてたから話聞いてた」
「っ・・・里見っ、僕、僕ね・・・ヤキモチ妬いたっ・・・僕、僕・・・」
「何もねぇよ。泣くな」

何度か里見の胸の中で頷く須野の顔を上げさせると唇を落とす

舌を堅く閉じている唇を割って捻じ込ませようとするとドンっと胸を押される感覚に驚きながら尻餅をついた

「・・・」
「っ!!!ごめ!ごめん!痛かった?!」
「・・・は?」
「ごめんね?」

拒まれたことに驚きながら須野を見つめるが須野は慌てて荷物をカバンに詰める

「須野!」
「・・・僕もう行かなきゃ」
「須野っ!」
「っ・・・」

須野の腕を掴む。何故拒んだのか。理由も話して、須野もきっとそれは納得したはず。だから須野も「ヤキモチ妬いた」と正直に言ったのではないのか

いつも時間がなくても自分と離れるのを惜しんで行かなきゃだなんて言わないのに。里見にキスをされたら行きたくないーと駄々をこねるハズなのに

「なんでこっち見ねぇんだよ」
「・・・見えてる」
「あ?」
「キズ、見えてるから」
「・・・」

掴んでいた手の力が抜ける

さっきハルに見せていたキズ・・・そのままだったシャツ。見えた。見られた。須野に・・・でも、これを自分の武器に変えればそう、ハルはそう言っていた

「オレの体見たくねぇの?」
「っ・・・でもっ!行かなきゃ!」
「オレの言葉だけでお前もう半勃ちだろ。お前拒んだキスでか?でも、どっちにしたってそれ。禁欲が効いてんじゃねぇの?それにしてもちょろすぎだろ」
「やめてっ!」

須野の下肢へ伸ばした手を振り払われて不機嫌そうに須野を睨む

何故拒むのか判らない。仕事が大事?自分よりも?今までそんなことなかったのにまさか、キズのせいで?やっぱり完璧な自分じゃないのを目の当たりにして拒むのかと手を引く
冷えていく。腹の底から冷えていく感覚・・・

「そりゃっ!僕っ!里見のこと大好きだからキスされただけで下半身に血が行っちゃうの!里見が色っぽい声出すだけでもう頭そっち行っちゃうの!でも!もう誤魔化されるの嫌なの!僕はっ・・・僕は・・・ごめんね?里見。愛してる。でも、僕が・・・僕ね・・・欲張りだから」
「あ?」

好き?欲張り?だったら求めればいい。いつもみたいに。里見が鬱陶しいと思う程に

「・・・僕は特別になりたい」
「特別じゃねぇっていうのか」
「だから!欲張りなの!!!僕はっ!・・・えっと・・・ごめん」

須野の言葉に溜め息を吐く。その里見の溜め息にビクリと須野は背中を震わせ、ビビらせている自分にまた腹が立った

怖がらせたいわけじゃない。言いたいことを我慢させたいわけじゃない

「・・・行けよ」
「・・・里見」
「行けっ!」

キズは武器にできる。完璧な色気ある場所だから武器になる

ハルの言葉を鵜呑みにした自分にも嫌気がさす。須野は完璧な芸術品のような里見 光を愛していた。完璧な里見からの愛を求めていた。もう完璧な里見 光はいないからその愛を求めても、欲張って求めてももう手に入らない・・・そう里見は拳を握りしめた
できるだけ里見だって須野の願いを叶えてやりたい。喜ばせたい。これは愛があるから。けれど、失った完璧だけはもう二度と須野に与えてやれない・・・須野が1番望むものを与えてやれない・・・

弱くなったのは須野のせい。強くなったけれどその分弱くなった。愛なんて知らなきゃよかった。楽に自分の思うままワガママに生きていけばよかった








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●●しないと出られない部屋 - 12/25 Tue

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で 番外編
「さて。オレはこの状況全く飲み込めていません」
「安心しろ。オレもだ」
「いや、それであーよかった!ってならねぇよ!」

ベッドが置かれた無機質な部屋で正座したまま柿内を見つめる但馬は壁に貼られた紙を見て震えながらそう打ち明けた

『セックスするまで出られない部屋』

何度見てもそう書いてある。現実にあるわけがない。でも間違いなくたったひとつの出入り口には鍵が掛かっているし夢でも見ているのかと頬を抓った

「・・・お前ここに来る前何してた」
「え?あ、えーっと瑞樹とコーヒー飲んでた」
「オレもあの人といた」
「あー、で?」
「バカ。判るだろ!あの人と新井さんの悪戯だろ!ユズ!そこにいんだろ。開けろ!っつかあんたオレのコト殴っただろ!腹痛ぇんだけど!」
「えー・・・まぁでもそう考えるのが間違い無いかぁ」

壁を殴りドアを蹴り始めた柿内を冷静に見つめているとふと気付いて柿内の体を掴んで止める

「柿内!待った!2人の悪戯だったらこの部屋借り物じゃん!壊したら困る」
「あー、あぁ、そうか・・・まぁ、そうだな・・・壊したら2人から請求来そうだ」
「瑞樹ー!こないだ欲しがってた新しい指輪買ってあげるから開けて」
「お前そーいうところがつけこまれんだよ」
「っ・・・はっ・・・ん」
「・・・え?」
「あ?」

艶っぽい甘い声が聞こえた気がして柿内と但馬は顔を見合わせた

「・・・今の・・・瑞樹?」

そして開かないドアに耳をつける

「流っちゃっ・・・そこっ気持ちいっ」
「デロデロ。お前感じすぎだろ」
「だってっ」
「浮気だぞ?んな気持ちよくなってたら言い訳できねぇなぁ?いいのか?但馬じゃないのにオレで感じちゃって」
「意地悪っ!やだぁ」

聞こえてきた声に固まり、そして我に返りドアを叩く

「瑞樹!悪戯だよな?それとも瑞樹もセックスしないと出られないって書いてあったの?!なぁ!瑞樹」

但馬の真剣な顔に柿内は部屋の真ん中に腰を下ろした

見渡すと何も無い部屋。でも電源は来ている。だとかそんなことを冷静に部屋の分析をしていた

「ダメだ。開かない。柿内、オレもお前とヤる!んでドア開ける」
「あ?」
「瑞樹、仕方なくてやったっつっても罪悪感で凹むだろ?だからオレも同じだって言いたい」
「・・・」
「お前が嫌だっつってもオレはヤんからな!悪いけど!お前のコト大事な親友だと思ってるけどオレ!瑞貴のコト大事なわけ。お前も判るだろ?な?」

柿内のシャツを引っ張るとその手を叩き落とす柿内
ケンカは苦手。でも柚木と付き合ううちに防御はうまくできるようになってきた

「断る」
「柿内っ!お前だってっ!なぁ!柚木さんが瑞樹とヤってんの許すのか?!イイのかよ!このまま2人だけがヤってて気まずくなってイイわけ?!」

柿内は顔を上げて真っ直ぐ但馬を見つめながらシャツのボタンを外していく

「え・・・柿内?」
「ヤんならオレが上だ」
「え?・・・いやいやいやいやムリ」
「オレの初めては全部あの人に捧げるって約束だからお前にも許すわけにはいかねぇ。悪ぃけどな、それだけは譲れねぇんだ。諦めろ」
「・・・待って。オレ、今すげぇキュンってした。やばい何これ。柿内抱いて!って思ったわ。悔しい」

柿内は「バカか」と呟きながら但馬のTシャツを剥ぐ
現役を引退して随分経つのに趣味の範囲で泳いでいるからか相変わらずの体型に溜息を漏らす

「ん?」
「勃たねぇ」
「は?」
「男の体に勃たねぇっつーの」
「いや、だってお前付き合ってきたの男だけだろ・・・柚木さんに葉月?男イけんじゃん」
「それとこれとは違ぇ!」
「あ、じゃあ勃たせるか?ローションあるし」
「っざけんな」

肝心なことに但馬も気付いて柿内のデニムのファスナーを下ろそうとしたけれどそれをまた叩かれ落とされる

「お前正気か?」
「まぁ、正直嫌だけど勃たなきゃできないだろ」
「はぁ?!っざけんな!お前に扱かれたら余計萎える」
「口使えとか言ってんのか?お前贅沢すぎだろそれ!」
「違ぇよ!っざけんなっ!っつか判ってんのか?!てめぇのケツに挿れるとかそういう話だぞ?!」
「それは仕方ないし、まぁ、柿内だし」
「おい!正気に戻れ!バカ!」

但馬がファスナーを下げようとし、柿内がそれを妨害する。そんなやりとりがしばらく続いた後カタンと音が響いた

「はーい。あーあー流ちゃん1万円ー」
「おう!毎度ありー」

開かないドアから現れたのは言わずとも柚木と新井で但馬はすぐに立ち上がって新井を抱きしめた

「瑞樹、オレ、大丈夫だから。な?仕方なく柚木さんと寝たって気にしないから」
「え?あ?・・・え?」
「瑞樹・・・愛してるから」

優しく新井を抱き寄せてからきつく抱きしめる但馬を呆れ顔で見ていた柿内は柚木に掌を差し出す

「うん?」
「オレへの分け前はねぇの?」
「ふはっ!これで飯食いに行こう!お前の好きなの言って」
「ん」
「オレは信じてたからなぁー。お前がカッコイイのオレが1番知ってる!」
「うっせぇ」

照れたように柿内が俯くと柚木は背伸びして柿内の頭をくしゃくしゃと撫でる

「但馬、お前が幼稚ないたずら信じすぎてっから新井さん言い出せねぇって顔してんぞ。気付け。アホか」
「は?」
「あー、あのね、カズくん・・・」
「え、いや、だって」
「っつかお前も見てただろ。この人が、新井さんから賭け金巻き上げてたの」
「・・・柚木さん?」

きょとんとした顔の但馬に柚木も吹き出すと「悪い!」と手を上げて頭を下げる

「や、え?待って?何?は?」
「普通に考えてねぇだろ。っつか新井さんとこの人がヤってる感じなの聞かせてきた時点で判ったっつーの」
「はぁ?!待って!だって柿内何も言ってなかったし!」
「まぁ、あの時点でバラしててもこの人のことだから開けてもらえねぇだろーと思ったし」
「なんだよそれ!」
「っつかそれよりここどこだよ。とりあえず電気系統来てるくせにコンセント見当たらねぇし家じゃねぇよな」

柿内の冷静な分析に柚木は満足そうに笑って「ほらな?」とでも言うように新井の肩を掴む

「何も無い空間にいると狂うとかなんとかあんだろ?その実験用施設。まぁ、もう使わないからって借りられたんだけど」
「怖ぇな・・・実験かよ」
「だよなー」
「いや、待って。柿内冷静すぎるよな?さっきオレら一歩間違ったらヤってたんだぞ?」
「ねぇよ」

柿内のきっぱりとした言葉に少し怯んだ但馬だったけれど新井の喘ぎ声が偽物だと気付いたならその時に教えてくれればよかったのにと根に持っている様子でそのまま柿内に食ってかかっていく

「オレがお前襲ってたかもしれないんだぞ?」
「オレとお前は友達。それ以外のなんでもねぇ!お前が襲ってきたとしてもお前はなんつーか防げそう。伊達にこの人に鍛えられてねぇっつーか・・・それにお前だってオレとホントにできるわけねぇっつーの大体もし、ホントに閉じ込められててもこの人、新井さんにあんなこと言うわけねぇし」
「何?」
「・・・だからっ!・・・」

本人の目の前で言うのが恥ずかしくて頭を掻く柿内

「っつかどんな賭けだったんだよ。ヤるかヤらねぇかか?悪趣味すぎんだろ」
「いや?どっちが男役やるか?」
「だってだってカッキーってなんかエロいじゃん?カッキーのお尻とか超いい感じじゃん?!だからさー、だからーオレはカズくんが男役だって思ってたわけ!今までだってカッキーお尻狙われてたじゃん?!」
「くっだらねぇーーー!!!」
「おい、話逸らしただろ!」

柿内は但馬を無視するように新井の頬を抓ると但馬はその手を掴んで止めさせる

「ま、アレだろ。柿内はこのオレが抱かれるって決心したくらいの男だぞ?イイ男に決まってる。んで、これからもどんどんかっこよくなっていくよな?!」
「・・・っーーーー」
「ふはっ!なんだよ!柿内すげえ顔してる!照れてる!ウケる!」
「レアだねー!写真撮ろ」
「うっせぇ!帰るっ!」

3人に笑われて背中を向けた柿内の顔は耳まで赤かった










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