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つれないキミと売れてる僕12-59《最終話》 - 01/30 Wed

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里見がケガをした後、里見の姿を見た山口は里見のオーラの変化にきっと誰よりも早く気付き、須野の仕事を削ろうと仕事を減らす努力に力を注いだ

しかし、なんとかあけたスケジュールを埋めるように事務所が須野の予定を詰めていくのを見て山口は社長に苦言を申し出たのだ

「このままじゃ寛人は潰れます」

けれど事務所は潰れるまでは使うとそう言い放ち、更には方針に逆らうばかりの山口を解雇したのだった

須野は驚き、怒った。里見に関する以外のことで珍しく怒った。そして自分も事務所を退所することを申し出たのだ。山口がいなければ仕事はしない。と・・・でも、そこに絡んでくる契約とか違約金

多額の違約金を払ってでも退所しようとする金の卵を生み続ける須野を離したくない事務所は山口の解雇を取り消そうとしたが事務所をもう信じられないと山口がそれを拒否し、須野の退所も保留になったまま今に至る

とりあえず山口が減らしてくれた最後の仕事はこなすけれど、それ以外のものは決して受けない。それが須野の意思。大抵のことは、言いなりだった須野の初めての事務所への反抗









「須野、お前は無職にならない。オレがそうさせないし、なにより世間がそうさせない」
「・・・でも、僕、今までみたいに仕事で長く家空けてるの怖いし、僕自身やっぱり里見に会えないのキツい・・・」
「おーおー判ってますよぉー」
「それに・・・僕と里見、離れてたらダメなんだ・・・どうしても伝えられな部分があるから」
「まぁ、うん。大船に乗った気分でいろってぇー!葛西くんを舐めちゃダメですっ!・・・そう言ってオレいつも乗り越えてきただろ?たまにはオレに頼ってよ」
「いつも頼ってるじゃん・・・僕無職になるし、違約金払ったらお金なくなりそうだし・・・それも助けてくれる?」
「バーカー!あ!そん時は須野ちゃんも受け取るの拒否したオレが返す予定になってるお金あんじゃんー?それ使えばいーしー!」
「えー?あれは里見にあげたものだから里見のだよぉ・・・」
「あぁ、光がお前に貰ってオレにくれた金な・・・だからオレは須野に返す」
「・・・うん・・・そっか・・・」

微笑んだ須野の頭を撫でる
里見に助けてもらった人生。でも、それは里見だけじゃなくて須野に助けてもらった人生でもあるから。里見と須野がいたから今の自分がいると思っているから

「・・・葛西」
「んー?」
「僕、まだ残ってる仕事あるからそれ行くときね・・・あと少しだとは思うんだけど、その時、里見からできるだけ目を離さないでほしい」
「お?おー!いーよー!べったりくっついてる!」

軽く笑った葛西だったけれど真剣な表情の須野に気付いて笑った口を閉じてまっすぐ須野を見つめ「判った」と頷く

勘のいい葛西。昨晩須野がケガをしていた理由も、里見の様子がここ最近おかしかったこともそこにあるのだと察したから

「・・・里見、飛び降りようとしてた」
「・・・は?!」
「僕は一緒に里見と死ねるならって思った。でも、里見ひとりで逝かせない。そんなことダメ」
「や!待って?待って!」
「・・・だからね、葛西、里見を見張ってて。多分今日は大丈夫。暫く大丈夫かも。仕事モードだったし。なんか、判んないけど里見、思いついたみたい」

突然思いもしなかった言葉に葛西は動揺するけれど落ち着いている須野に溜息を吐き出した

この親友は里見が死ぬことよりも死ぬのならば一緒に。ということで見張っていろと言っている事が判ったから

「須野ー」
「うん?」
「光が死ぬのもなー、もちろんお前が死ぬのもオレは阻止するよ?」
「?」
「例えそれが病魔相手だったとしてもオレがなんとしてでも成敗してやる!」
「何それ」

おかしなことを言っていると笑った須野に「本気だよ」と心で呟いた葛西は笑って親友の頭をぐちゃぐちゃに撫でた

「須野ー」
「うん?」
「じゃあー、阻止できないんならさー!じゃあさー!じゃあさぁー!オレはさー、お前らが死ぬならそれを見届けるー」
「?」
「ほらー、オレお前らのこと世界で1番大事だけどそれ以外にも大事なものあんじゃんー?ユリちゃんとかー?それにお前らのことその後も伝えていかなきゃいけないからオレがお前ら見届ける」

葛西の言葉の意味は判らなかったけれどとりあえず頷く須野

「だーからー」

葛西は判っていない須野のことも判っているという顔で須野の体を抱き寄せる

「オレのいないところで2人で逝くとか禁止ー」
「・・・ふふ。難しい事言ってる」
「難しくないだろー?一緒に飛び降りる前にオレを呼べばいーんだよ」

須野は「あぁ」と頷き笑ったけれど、葛西を呼んだら素直に逝かせてくれるわけがないだなんて思いもしない。須野は里見とどこまでも一緒に着いていくために死をも選ぶ。葛西は里見と須野と共にいるために生を選ぶ

真逆に思えるけれどどちらも愛の形

どちらも里見 光を愛している男の愛のカタチ







つれないキミと売れてる僕12幕
  おしまい おしまい








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つれないキミと売れてる僕12-58 - 01/29 Tue

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葛西は少し緊張しながら里見の部屋を訪れる

里見がこの部屋を出て行くと言ったのは何かの間違いだと信じていたけれどやっぱり怖くて。そして一緒に仕事をするのも最後だと言われたことも忘れられない

「光ぃー!あのさぁー!」
「バカ。貸せよ」
「えー!里見僕にやらせてくれるって言ったじゃん!それに僕作ったことあるんだよ?!」

でも里見の部屋に入って粉まみれの親友2人を見たらそんな不安は吹き飛んだ

「なーに楽しそうなこと2人でやってんのー?!」
「あ、葛西ー!里見が僕にふわふわパンケーキ任せてくれないー」
「ふはっ!パンケーキ!」
「違ぇ!ふわふわのスフレパンケーキだっつーの」

ふわふわでももちもちでもどうだっていい。大の男がパンケーキ作りで粉まみれになっているだなんてやっぱり2人の親友は面白いと頷き、葛西は笑顔で「オレも混ぜてー」と一緒に粉まみれになったのだった







なんとか完成したスフレパンケーキを3人で食べると里見が口を開く

「イベント、あいつのおかげでなんとかなったわけだな」
「え?」
「里見ね、朝早くからパソコンでなんかしてると思ったらコレ、気になって検索してたみたい。それでなんでか脱線してふわふわパンケーキの作り方になったみたいだけど」
「ふわふわスフレパンケーキ」
「こだわるな!光ちゃんスフレにこだわるな?!」

須野が幸せそうな笑顔でトゥルーエンド達成者のみもらえる冊子を自慢げに掲げ、葛西は里見も自分との仕事を気にしてくれていたことに目を細めると口を尖らせる

「オレから光に全部話したかったのにー!」
「期間延長とかあいつのおかげみてぇになってるのが解せない」
「アキラはホントに里見のファンなんだってばー・・・」

里見が検索した結果、出だしは好調とは言えなかったこと、それが里見をライバル視している作家、西野 晶のSNSへの投稿で盛り返したこと、そしてトゥルーエンドになんとか辿り着きたいリピーター達がたくさんいること、期間延長を熱望する声が多く出て期間延長していることを知った

『謎解き自体は稚拙で皐月光もこんなものかと思ったけれど彼が仕掛けた謎はもしかしたらひとつだけなのかもしれない。その謎が解けてこそ彼の作った物語だと納得できるだろう。少なくともボクはそう感じた』

『皐月光を好きだと言いながら、トゥルーエンドに辿り着けず、物語も大したことなかったと言っている人はファンを名乗るのを止めた方がイイだろう。彼を理解し、彼の物語を本当に愛しているのならばそこへたどり着くことは安易ではなくとも難しくもないはずだ』

西野が書いたその投稿。それは里見のファンだという人間達の闘志に火を点け、西野はその後も度々トゥルーエンドに辿り着けないファン達を焚き付ける発言をしたことがここまで来場者数が伸びた要因だろう




「あ、そうだ。僕まだ褒めてもらってないよ?僕すごい?トゥルーエンド到達1人目だよ?!」

そう。それも検索したことで読んだ。そして親友にヒントや答えを貰っていたのではないかと言われているのも知っている

「お前はオレを判ってるだろ」
「え?!もちろん!誰よりも里見を愛してるからね!」
「何?!なんかすっごい仲良し!」
「あ、コーヒー飲む?新しいの淹れるね?」

須野が席を立つと葛西は「オレのはカフェオレにしてー!」とキッチンへ向かった須野へ叫んだ

「・・・光、も、大丈夫っつーことだよな?」
「あいつはオレを愛してる」
「うん・・・知ってる」
「オレはこのキズで信じられなくなった」
「・・・んなのあるわけないじゃん」
「まぁ、このキズでオレがあいつに愛されねぇとかねぇわな・・・でも、まぁ、なんだ・・・」

里見が口籠るのを葛西は首を傾げて里見の顔を覗き込む

「お前にも多少は迷惑かけた」
「!!!」
「多少だ!多少!」
「光がオレにデレたぁぁぁ!!!やっべ!超嬉しい!レア光!」
「うっせぇ!多少っつってんだろ!」
「やっだー!光ちゃんたら照れてるぅー!やだぁー可愛いー」
「僕がいないところであんまり仲良しだと妬くよ?」

新しいコーヒーとカフェオレを持って戻ってきた須野のコーヒーのマグカップを引っ手繰ると里見は仕事するから出て行けと背を向け、葛西は須野から受け取ったカフェオレを持って須野の部屋へ移動した








「・・・須野ちゃん、もー光大丈夫なんだよな?」
「うん・・・でも今回やっぱり僕は里見の傍離れちゃいけないって痛感した」

里見の愛を信じられるようになったから舞台の仕事やロケが多いものも受けられるようになった。でも、やっぱり離れてはいけない。近くで里見を支えないとまたベランダから飛び降りられる羽目になるかもしれない

「で、どーすんの?」

葛西の言葉に須野は黙り込む

「っつかバレるじゃん?すぐだよ?」
「社長にも恩はあるよ?でも、僕はそれ以上に山口さんに恩がある」
「判ってる。そこはオレも動くつもり。でも、光には?」
「・・・言うよ?もちろん。でも、今はまだ早い・・・」

須野は弱々しく葛西に微笑む

「無職の僕、何もない僕でも、里見を支えられるかな」







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つれないキミと売れてる僕12-57 - 01/28 Mon

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「あれ?里見寝ちゃった?シャワー行かないの?明日辛いんじゃない?」

優しく声をかける須野だったけれど反応がない里見の肩の傷にそっと口付けをした

里見の全てが美しい。新しくできたこのキズすら愛おしい

「 ごめんね?里見、里見が何か悩んでたのって僕のせいだよね。里見は本当に優しい」


須野は里見の肩を撫で、自分が放った精で汚れた里見の下肢へ視線を移し少し考えたあと里見の頬にキスをして「ごめんね」と呟きながらまだ柔らかい里見の後孔へと指を這わせ拓かせる

「わぁ・・・」

出てきた白濁の量に驚きながら溢れてくる白濁をタオルで拭う。これが自分の放ったものだと思うと里見を汚したのは自分なのだと罪悪感に襲われる

「里見ー?お腹痛くなるよー?」

このまま抱えてバスルームまで運んだ方がいい気がする。でも里見を起こすのも気がひけた須野は小さく深呼吸をした

「じゃあ里見、寝ててね・・・起きないで。お願い」

里見の体を弄り回していたのもあって再び力を取り戻した自身を充てがうとゆっくりと内部をかき混ぜるようにし、引き抜く

須野がやってみたかったことのひとつ

「っ・・・んぅ・・・気持ちよくなっちゃダメなのにっ・・・里見の中・・・気持ちイっ・・・」
「・・・何してやがる」
「え?あ、起きた?!ええっ!?あのね!あの・・・」
「寝てるオレにしかできねぇことでもすんの?っつかまだ足りてねぇのかよ。マジかよ」
「違っ!だって!だって里見だって書いてたじゃん・・・おかしいな・・・本じゃ起きなかったのに・・・やっぱり違うのかな・・・」
「あ?」
「男性器はどうしてこの形なのかって。他の男の精を掻き出して自分の精で孕ませる為って」
「て・・・めっ・・・なっ・・・何読んでんだよ!」
「え?」
「だっ・・・お前・・・はぁ?」

動揺した様子の里見に須野は微笑んで里見を抱きしめる

「何?」
「・・・なんで知ってんだよ」
「何がー?」
「あれは」
「あぁ、皐月 光じゃなかったよね」
「・・・クソ。あの担当絶対バレねぇっつったのに」
「あ、やっぱり内緒だったの?」
「うっせぇ!」
「なんで別名で出してたの?」

いたずらがバレた子どものようにバツの悪そうな顔をしながら里見は須野の頭を叩いた

「んなもん・・・いつもの名前じゃ出せねぇ内容だろうが」
「そうかなぁ・・・でも、名前変えてでも書きたかったの?ちょっとエッチだった・・・いや、すごくかも・・・僕、ドキドキしちゃったよ」
「小銭稼ぎになりゃいいと思った」
「え?何か欲しいものあったら僕に言ってよ!なんでも買うよ?」
「違ぇよ!お前に貢がせたいわけじゃない」
「・・・そっか・・・」
「それにどんなんでも書く仕事は天職だと思ってる。好きなことして金稼げるんだから書く他にないだろ」
「うん!判るー!僕里見以外の本読めないから比べられないけど、里見の書く本は僕大好きだよ?」
「くっそ・・・そりゃお前が気付くんだからユリさんなんて当然知ってるに決まってるな・・・」

里見の言葉にキョトンとした顔をした須野はすぐにふふっと笑って里見を抱きしめた

「僕はバカだけど大人だし、鈍感でもないよ?里見の部屋、僕に片付けさせてくれてるの里見でしょ」

里見はぐしゃりと髪を引っ張りながら悪態を吐くと須野の頭を再び叩く

「風呂、用意しろ」
「うん!」

幸せそうに笑った須野に再び里見は悪態を吐いたのだった









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つれないキミと売れてる僕12-56 - 01/12 Sat

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「え・・・」

須野の驚いた顔が里見の頭を冷静にする。でも止まらないよくも知らない男への嫉妬

「お前オレが全てっつっただろ!なのに他のやつ褒めるとかなんなんだよ!オレはお前が自慢できるような趣味もねぇけど」

頭では冷静に昔、浮気する度にこんな風に彼女たちがキャンキャン吠えてめんどくさかったのにその女どもと同じだなんてと自分を軽蔑している。おかしい。狂っている。須野の愛が狂っている?狂っているのは自分なんじゃないかと思う。でも止まらない。止められない・・・この感情がどうしたら止められるのか判らない。醜くて恥ずかしい感情なのに止まらない・・・

「里見」
「お前はっ」
「うん。里見だけ見てる」

でも、そんな里見を全部判っているかのように優しくへにゃりと幸せそうに笑った須野に開いていた口を閉じた

「ねぇ、里見、僕里見以外に反応しないって話はしたよね」
「あ?あぁ」

聞いた。こんな有名で人気のある男が自分でしか反応しない優越感を感じていたから

「それね、ぜーんぶのことに対してっていうのは流石に気持ち悪いかなって言えなかった。だって、里見、引いてたもんね、僕が里見にしか、里見想像してしかできないとか・・・僕にもちょっと里見を愛しすぎてておかしいのかもって自覚あるし」
「・・・全部ってなんだよ」
「僕さ、小さいとき・・・例えば春子さんがケーキ買ってくれたときとかね、昔よくあったんだよね。それでお母さんは美味しいね?寛人って言うから僕はなんかよく分からないけどあぁ、これが美味しいっていうんだって思って笑って美味しいねって言ってたんだ」
「味覚ねぇのか?でも、お前よく旨いから食えとかオレに寄越すだろ」
「うん。味は判る。でも美味しいとか空が綺麗とか風が気持ちいいとかなんか全然分かんなかった。普通に赤とか青い空の色、風が吹いてるってのは理解できるのにね。多分僕普通じゃなかったんだろうなぁ・・・」

そして、回想していた須野の目が里見をまっすぐ捉えると須野はキラキラと目を輝かせる

「でもね、里見に会ったの!産まれて初めて最高にキレイなものに出会ったの!そしたらね、ケーキ食べてもハンバーガー食べても里見と食べたいって思ったら美味しいとかこれは里見の口には合わないかなーって判るようになったんだっ!食べ物食べるとね、あ、これ里見に食べさせたい!って思えるの!」
「・・・何だそれ・・・」
「里見が夕焼けの下を歩いてたらあぁ、夕焼けってキレイって思ったし、全部全部里見が僕に与えてくれたキレイなんだよ?だからね、僕、里見が全てって言うけどそういうことなんだよ?里見がいない世界は僕なにひとつ楽しいことない。美味しいとかもないし星空に感動することだってない。恐怖もないし喜びもない。里見がいるから僕は毎日幸せに生きていられるの」

重い。重すぎる愛・・・でも、須野の言葉はきっと全部事実なのだろう

「悠介くんはね、僕が撮影中に勧めた里見の本読んで会いたいって言うからあの日一緒に行ったんだよ。ホントはね、里見に誰も近づけたくないけどみんなに里見を自慢したい気持ちもあるんだ。僕・・・でね、アロマのこと全然興味なかったけどアロマオイルのマッサージの話聞いたら里見にマッサージしてあげられるかもって興味出て、悠介くんと色々話しできたの!里見は僕に世界を与えるだけじゃなくて世界をすっごく広くしてくれるの」
「須野」
「愛してる。里見・・・大好き・・・里見は僕にとって存在するだけで自慢なんだよ・・・愛してる。愛してるっ・・・里見しかいないの。僕の世界は里見だけなの・・・里見だけでできてるの。愛してるんだ」

里見は急に泣き出しそうな顔になった須野を抱き寄せると背中を撫でて「オレも」と聞こえないほど小さな声で呟いた

聞こえなくたって平気。抱きしめたことで伝わっているから

里見のこの体温が鼓動が言葉よりも須野に伝えてくれているはずだから

「・・・須野」
「うん?」
「オレは・・・短気だけど確かにキレてるけどお前はもう我慢しなくていい」
「我慢?」
「お前がぶつけてくれないとオレはお前みたいに言えないからまたそのうちこうなる」
「・・・それはイヤかも」
「だから」

須野が小さく頷くと里見の体から顔を上げると息を吸い込んで口を開く

「浮気はイヤ!僕だけのになってて!余所見なんてしないで、僕だけの里見でいて!頑張るから!なんでもするからずっとずっと傍にいて!僕だけの傍にいて!里見が女の人の方がいいの判ってる!でも僕は里見がいい!だから、お願い。どこにも行かないで。女の人とエッチなことしたくなっても我慢・・・して」

だんだんと小さくなっていく声は須野の自信のなさ。里見は須野の額にデコピンを飛ばすと「バカか」と吐き出す。やっぱり下らない事だと思われたと須野が俯くと里見に顎を掴まれる

「背中丸めるな、俯くなっつってんだろ」
「ごめんなさい」
「そういや、お前が好きって主張すんのオレくらいだな」
「うん」

長く一緒にいるのに須野の好きな食べ物も好きな曲も何も知らないのは須野の「好き」が全て里見だから。誰よりも好き、誰も見ないどころか全ての好きを全力で注いでくれる須野が愛しているのは里見だけだという事実に里見の自信はみるみる復活していく

下らない嫉妬だとかそんなのもう関係ない。どうでもよくて里見の中でもう丸めて捨てたもの。少し前に癇癪を起こしたかのようにヤキモチを焼いた自分はもう忘れた

「オレはホントダメになった」
「そんなことないよー」
「お前がいねぇとダメだっつーの」
「・・・っ・・・」

照れ臭くなって須野の頭を叩き背を向けて寝転がった里見を見つめながら須野はポロポロと温かい涙を零しながら里見の背中を抱きしめる

「それならもっともっとダメになって。僕がいないと生きていけないくらいになって」

須野の言葉にもうなっている。と思いながら里見は重い瞼を閉じたのだった

今回、自信を失くし、誰からももう求められないのだと絶望したのは須野がいなかったから。須野が里見の全てを独占したいと望むように里見も須野の全てを独占したいと想っているから









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つれないキミと売れてる僕12-55 - 01/11 Fri

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「僕は女の人みたいに柔らかい体もないし、イイ匂いもしないから里見を気持ちよくだけしたいんだよ・・・なのに僕は僕ばっかり気持ちよくなること考えちゃう・・・里見を気持ちよくしたいのに」

息の上がった声でそう申し訳なさそうに言いながらも動きを止めないのは矛盾しているじゃないか。と思いながらも須野の想いを体中で受け止め続ける里見

口に出せないだけで里見だって須野を大事に想っているし、須野を気持ちよくさせたい。今回、自分の中で須野の存在がどれだけ大きいか身を以て知ったから

須野がいないと、須野の愛がないと自分を保てない

里見の体についたキズは小さなものだったけれどそこからたくさんのことを知った。だからよかった・・・とは言わないけれどこれから世界が広がるような気がした
須野のせいで、須野のおかげで、須野がいるからまだまだこれからも変わっていく里見

「気持ちいい?ね、里見、気持ちいい?」
「っ・・・イイっ・・・からっ・・・早くっ・・・達けっ」
「もっと速くがイイの?ね、もっと?」
「っ・・・違っ」
「違う?ココ?もっと?」
「やっ・・・」

須野を愛している。気持ちいい。でも、それ以上に嬌声を上げるのはプライドがあって恥ずかしい

須野に対していつだって優位にいたい里見は須野から与えられる快楽に屈したくない。特に今日はそんな気分じゃない

「奥?いいの?」
「ダメっ!ダメだっ!」

首を振る里見に唇を寄せると耳元で「欲しそうに拓いてる」と囁く

違う。違う。でも、体が須野の形を覚えている。奥の奥まで暴かれる快感を覚えている

「っ・・・きっつい・・・けどっ・・・ヤバい。すごっ・・・出ちゃう・・・」
「ぅ・・・んっ・・・イイっ!イイからっ!達けっ」

須野を達かせようと快感に震える体で力を振り絞って腰を押し付ける

「あ・・・里見ぃ・・・なんでそんなっ」
「出せっ・・・」
「っん・・・光、光・・・愛してる」

気持ちいいのは好き。でも、自分を見失うくらいの快楽は怖い。特に須野にそうされるのは怖いから、須野の体がぶるりと震え、中に放たれた熱にあぁ、ゴム着けさせ忘れたか。と余裕で考えながら須野を小さく振り返る

「・・・っは?!」
「光、まだだよね?」
「っ!ムリ!ムリムリムリ!やめ!もう終わりっ!」
「勃ってるよ?」
「抜いてお前の口、やらせろよ」
「でも、こっち、まだヒクヒクしてる」
「だっ・・・それはお前が中でまたでかくさせっ・・・っん」
「光も気持ちよくなって」
「イイっ!もうっ、気持ちイイっ!やめっ・・・んあ・・・っ・・・んー」

里見を抱きしめながら里見の内側を擦ると里見が小さく悪態を吐いて体を震わせた

「っん・・・っ・・・達くっ、達ってるっ!」
「うん。中、すっごいね」
「バッ・・・止まれってぇっ・・・」
「光可愛い。綺麗」
「っざっ・・・っんっ・・・あ、やぁっ」

里見の甘い声が須野の耳を、脳をも蕩かしていく。好きで好きで大好きで、愛しくてこのまま全部蕩けて里見の一部になってしまえばいいと体を重ねる度に思う

「光、愛してる。光」
「も、ヤダっ!バカぁっ」
「どうしよう。また達っちゃう」
「やっ!中、も、ムリ!」
「可愛い。光大好き」

里見の頬にキスをすると嫌だと懇願する里見の言うことを聞こうと思うのにまだ里見と繋がっていたくて達したいのを我慢しながら里見の快楽を引き出そうとする

「や・・・須野っヤダっ!頼むからぁ」
「っ?!」
「寛人っ!お願いっ・・・お願いだからっ・・・もっ中・・・やぁ」

体を捩って振り返りながら須野に懇願する里見があまりにも美しくて妖艶で須野は小さく呻き声を上げると里見の中に精を吐き出したのだった










「最悪ー最悪だなーお前ー。オレが頼んだのに暴発とかー」
「ごめん。でもすごかった・・・」

両手で顔を覆ったまま余韻に浸る須野に視線を移し「少女漫画でもいねぇだろ」と言いながら須野の足を蹴った

「里見がお願いしたぁ・・・僕に・・・すごかった・・・」
「おい、てめぇだけ浸ってんじゃねぇぞ?コッチはケツから精液垂れ流しだ。バカ」
「あ、ごめ・・・洗わせて下さい」
「・・・まだ勃起してるとかホント最低だな」
「ごめんなさいーーーだってホントすごかったんだもん!」

最低だとか最悪だとか言っているけれど自分に尽くしてくれる姿勢の須野に満更でもない様子で須野の頭を叩く

「お前にだけだぞ」
「?」
「イラマもケツも」
「ぁ・・・うん・・・?」

本当に自分のことになるとどうしようもなく鈍感な須野に里見はため息を吐き出したが、須野に対してだけ素直になれない自分とはお似合いなのかもしれないと小さく笑う

「お湯、もう一回張る?」
「いや、シャワーでいい」
「そう?じゃあ出たらベッドでマッサージさせて?」
「今日はもういい」
「あ、違うよ?!普通に!あのね、共演した悠介くんにアロマのマッサージオイル貰ったの、ほら、里見一瞬だけど会ったの覚えてないかなぁ」
「へー」

男に興味はないけれどその名前の男が須野とイベントに来てたのだろうと思うと面白くない

「悠介くんね、アロマオイルが趣味なんだって。顔も可愛いのに趣味も可愛いよね」
「・・・」
「ね、里見」
「オレの前で他のやつ可愛いとか褒めてんじゃねぇよ」









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つれないキミと売れてる僕12-54 - 01/10 Thu

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ガーゼを外し、須野のキズを確認すると大したことはなさそうで再びガーゼを貼り付けると少し寂しそうな顔をしている須野の頭を叩く

「なんだよ」
「里見、今日はもう乗り気じゃない?」
「あ?」
「っ・・・イイよ。里見が乗り気じゃないなら僕ガマンする・・・」

里見は小さく笑うと須野自身にまだつけられたままのゴムを引っ張って外した

「・・・」

やっぱり今日はもうこのまま寝るしかないのだと須野も諦めたとき須野は「ふぇ?!」と間抜けな声を出しながら腰を引いた

「なんで逃げんだよ」
「っ・・・え?えぇ?」
「黙れ。ゴム臭ぇのガマンしてんだ。ヘタでもガマンしろ」
「ふっ・・・だって、あ、ダメダメダメっ!僕っ」
「っせぇ」

里見の口内に包まれた自身を見つめながら須野は口を押さえる

初めてじゃない。でも、乗り気じゃなかったように見えた里見が口で・・・いつも里見にされる時に心臓が止まりそうになる。ビックリしてじゃない。美しく完璧だと思う里見が自分のグロテスクな部分を口に含んでいるのだ。考えただけで心臓が爆発して止まってしまいそうである

必死に耐えようと口を押さえていた手を引かれ、口から外されると押さえたいのに嬌声が漏れる

「っあ・・・ムリ。も、ムリムリっ里見、里見ぃ」
「いーから」

そして里見の頭に手を添えさせられて須野は快楽に耐えながら里見を見つめる。この添えさせられた手が何か判らなくて、撫でて欲しいのかと頭を撫でる

「っんんっ・・・ダメっ!里見」

そして添えさせられた手を強制的に里見の頭に押し付けられて里見の喉奥を突いたことに慌てて須野は手を振り払う

「なんで外すんだよ」
「苦しいからっ!」
「気持ちいいからやってみ?こっちは初めてだぞ?お前、オレが取り替えてやったガーゼワザと汚したら判ってんだろうな?」
「っ・・・」

口を大きく開いて口の奥を指差した里見にぐらりと脳が揺れるほどの快感を感じてしまう
真っ赤な口内・・・それだけで里見の白い肌と対照的なそこに色気で眩暈がするようだった

「オレもお前にやってること。オレにもやってみろよ。お前、口ん中結構感じるんだろ?大丈夫だって。初めて、欲しくねぇ?」

再び口内に収められた雄。そして添えさせられた手。何度も繰り返し挑発してくる里見に須野も限界だった

膨らんだ血管がチリチリと痛みを与えて来て須野は堅く目を閉じると吐き出した息とともに理性の糸が切れた

「っ!!!」
「っん・・・ごめっ、ごめんねっ?気持ちっ・・・あ、っぁ・・・ごめっ・・・ごめんね?」

苦しい。息ができない。吐き気がする。でも、視線を上げれば謝りながらも快楽に飲まれる須野の顔が見える

素直になれない男の精一杯の愛情表現

須野にはこれでしか愛を表せない。こんなことをさせるのは須野だから。少しでもそれが判ればいい。須野が特別なのだと伝わればいい

「なっ・・・これぇっ・・・ダメ、ダメなのにっ・・・止まらなっ・・・ごめっ・・・光っ、ごめんっ」

須野の目に浮かんだ涙は快楽からなのかそれとも里見を苦しくさせているという罪悪感からなのかは里見には判らない。でも、須野の理性を飛ばせる程気持ち良くできているのは判ったからそれだけで十分だった









「げほっ・・・おぇっ」
「っ・・・ごめ・・・ごめんっ!大丈夫?」

白濁に混じって胃の内容物をシーツに吐き出した里見はここまで羽織ってきたバスタオルで汚れた顔を拭う

「お前何食わせた」
「里見が今日はご飯嫌がったから桃のゼリー・・・無理やりじゃないよ?!里見がこれだけは食べたんだよ?!」
「・・・なんかすげえ口ん中最悪だけどメシが出てくるよりはましか」
「・・・僕里見がご飯吐いても舐めて綺麗にしてあげられるよ?」
「スカトロ趣味はねぇよ。変態」
「・・・僕は平気だけど里見が気にするからなぁ・・・里見、ちょっとシーツ剥がすね」

須野が手早くシーツを剥いでクローゼットから出してきた真新しいタオルケットを敷く

「やる気満々か?」
「ダメ?里見気持ち良くできてないから」
「お前もまだ満足してねぇよな?」

熱を放ったばかりなのにもう芯を持ちつつある雄に触れて妖艶な笑みを浮かべる里見に須野は「もぉー」と言いながら里見を抱き締めた











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つれないキミと売れてる僕12-53 - 01/09 Wed

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「里見は完璧だよ?ホント、もう、僕の全て」
「・・・オレは」
「・・・キズ、見たけど里見はやっぱり完璧だった・・・ホントだよ?僕、里見に嘘吐かないよ?世界で1番キレイで完璧な里見に僕嘘吐かない」

誰に言われても信じられなかった言葉。自分自身が完璧じゃないと思っていたのに、須野に言われるとそうなんじゃないかと思えてくる不思議

「里見、あの・・・あのさ」
「あ?」
「約束、覚えてる?」
「何の」
「あのっ・・・えっと」

須野が少し耳を赤くしながら里見の耳に唇を寄せる

「僕、我慢ずっとしてたよ?」
「・・・は?」
「すっごいの・・・してくれるんじゃ・・・ないの?」
「っ・・・」

須野の色気にぞわりと背中が粟立つ

男の声なのに今まで抱いてきた相手よりも体が情欲に支配されそうになる

ここまで須野の色気を育てたのは里見。色気を持たなかった須野が雄としての色気を持つようになったのは里見のせい
あぁ、このまま飲まれてしまおうか・・・と里見は須野に顔を寄せた

「須野・・・」
「光ぃー!意識戻ったの嬉しいけど何ー?!その喜びよりも・・・ってえええええーーー!待って!何それ!ちょ!ええ?!」

その雰囲気をぶち破るように入って来たのは葛西で里見は自分で呼びつけたのも忘れて舌打ちをする

「うるせぇ。病院連れて行け」
「里見、僕っ」
「戻ってきたら」
「え?」
「すげぇの・・・だろ?」
「っ!!!葛西、ごめん。おじさんのところ大丈夫かなぁ?ほら、僕、この状態で病院行くと騒ぎになっちゃうかもだし、そしたら僕怒られる」
「待って。訳わかんないけどとりあえず病院ね?うん。うん・・・」

葛西は目を瞑ってうーんうーんと唸りながらもこの状況を理解しようと必死に頷いた

あの日、調子が悪いと言った里見が突然倒れた。そして、心を閉ざしてしまった。スプーンを持って行けば口を開き、支えながら歩いたりはするけれど里見の意思はどこにもなくなっていた。須野が全部里見の世話をするとあまりにも強く断言したから葛西は何も口出ししないと決め、また長くかかるのかと思ったのに思ったよりも早く意識を取り戻した里見から突然連絡が来たことを喜ぶより前に告げられたのが車を出せということだけ。心配していたのだからもっと他にあってもいいと思ったけれど須野の部屋を訪れてみたら血塗れだし、里見はいつも通りに戻っているし、頭が追いつかない。でも、倒れる前の里見でもなくなったように見えてどこか安心した

「里見」
「あ?」
「一緒に来て?」
「何で」
「心配だから」
「何言って・・・あー・・・クソ。判った」

須野の心配がキズを治療するものへではなく、里見をひとりにすることだと気付いて里見は立ち上がる

さっきベランダから飛び降りようとしていた人間をひとりにするのは確かに心配になるだろう

「・・・わっかんないけどとりあえずラブラブ?」
「っせぇ!」

それでも否定はされなかったことに葛西は喜び、笑顔で車の鍵を指でグルグル回しながら須野の部屋を出た











葛西の叔父に手当てしてもらい、勿論自分は外科でも精神科医でもないと散々文句を言われ、自分で体に傷つけたことに説教はされたけれどそれでも何事もなかったかのように部屋に戻って来た3人

「縫わないキズでよかったねぇ」
「・・・里見と一緒じゃない」
「須野ちゃん光と傷口まで一緒がいいってどんだけ変態なの!」
「ふふ。僕そんなに変かなぁ」

笑う須野にあぁ、そうだ。と里見は「狂愛」を見つけて小さく笑うこれがきっと求められている狂愛に違いない。自分に自信がなくなって見失っていたけれど須野からの愛はいつだって狂って見える程の大きなもの

「え、里見仕事モード?あ、えっと、えーっと・・・だよね。じゃあ、僕、待ってる。ここで待ってる」
「あ?」
「待てるよ?待つよ!だから、だから、あのね、あの・・・ね」
「判ったっつーの!お前は口閉じてろ。葛西、ほら!帰れ」
「何で!!!もーちょっとさぁぁぁ!ほら!オレらのイベントの盛況具合とかさぁ!気にならない?気になるでしょ?!」
「須野が物欲しそうな顔でオレのこと見てんの判んねぇのか?」
「え?!あ!あーっと・・・じゃあーお邪魔しましたぁ?っつか須野ちゃん!判るけどね?そりゃあ男の子だもん!久々にちゃんと会った恋人前にしたらって判るけど傷口開くよーなことしちゃダメだかんね?」
「・・・うん」
「いや、判ってねぇな。光、お前は判ってるよな?」
「うっせぇよ」

葛西が部屋を出て行くと2人きりで、須野は仕事モードの顔をしていた里見を見つめる

「里見、仕事・・・仕事が終わったらさっ」
「だから黙ってろ」

唇を塞ぐと須野に抱き寄せられてソファーへ押し倒される

「おい、まだ何の準備もしてねぇって」
「っ・・・でも、里見・・・違うの?」
「仕事終わるまで待てるんだったらシャワーくらい待てるだろ」

里見の言葉に小さく何度か頷いた須野は名残惜しそうに里見の体を離した

「それとも、お前がオレの体洗うか?今までもやってたんだろ?」
「!!!うんっ!うんっ!」
「あぁ、でも、傷口濡らしたらマズイか」
「大丈夫っ!」

必死な須野の頭を撫でる

もう疑わない。疑いようがない。須野のこの目は自分を求める恋する瞳










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つれないキミと売れてる僕12-52 - 01/08 Tue

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「里見がいなくなったら僕は何もないから。何も感じられなくなっちゃうから・・・でも、僕の全部里見のものだから勝手に死ねないでしょ?でもさ、里見が飛び降りるならその後すぐ僕は同じところから飛び降りられる。僕の夢が最後まで叶っちゃう。里見と最期まで一緒だなんて」
「・・・言ってろ」
「ねぇ、それ貸して?」

須野が穏やかな声で里見の手を指してそう言った

「・・・」
「ここから飛び降りるならそれは必要ないでしょ?だから貸して?」

尖ったガラスを見てから自分の足元を見る

確かにここはマンションの最上階。ガラスで切るよりもここから飛び降りれば確実だろう。そう思って手からガラスを離す

「ありがとう」

落ちたガラスを拾った須野が迷うことなく自分の肩に突き刺し引くと真っ赤な液体がシャツを滲ませる

「お前っ!何っ!」
「里見とお揃いにしてるの」
「なっ・・・」
「アハハ。里見と一緒。死ぬなら仕事も関係なくなるからやっと一緒の出来た。ごめんね?里見のことお風呂入れたりするとき見ちゃったの。最初見ないようにしようと思ってたけど、里見のこと全部綺麗に丁寧に洗わないとって思って見ちゃったの」
「な・・・だっ・・・オレはっ」

須野の言葉は自分を止めようとしているのだと思った。でも、里見が飛び降りたら飛び降りるのだと須野は本気で言っているのだと気付く

違う。須野と心中するつもりなんてない。完璧じゃなくなった里見を愛せなくなったはずの須野を解放してやるつもりだった。須野がこれから完璧だと思う誰かを愛すのを見たくなくて、自分以外を想うところを見ていたくなくて、いなくなってしまいたかったのに須野は今までと同じ目で自分を見ていることに気付く

そして須野の血に染まった手が目の横に当てられるのを見て里見はベランダの手すりから降りて須野の手を掴んだ

「里見?」
「・・・っ・・・オレをっ・・・」
「うん?」
「お前はっ」
「うん」
「ぁ・・・てんのか?」
「・・・」
「お前はっ!まだっ・・・こんな、オレを」
「愛してるよ」

須野が当然と言う顔で里見の頬を撫でる

「飛び降りるのやめたの?」
「っ・・・てる・・・」
「うん?」
「愛してるっ」
「え・・・ぁ・・・え?!」
「オレはっ!お前をっ・・・オレもっ・・・オレは、これからもお前に迷惑かけまくっていいんだな?お前は、こんなオレをこれからも」
「里見ぃ・・・どうしたの?」

へにゃりと蕩けそうな笑顔を里見に向けた須野を里見は抱きしめる

「完璧じゃねぇよ」
「うん?」
「お前は完璧なオレを愛してんだろ」
「うん。完璧だよ?」
「・・・」
「中、入ろっか」

須野に促されて部屋の中に入ると須野の肩から滲む血にハッと気付いて慌てて傷口を押さえる

「あ、ごめん。汚れちゃうね?洗ってくる」
「違ぇ!・・・待ってろ!座れ」
「あ、うん」

里見は傍にあった須野の携帯を掴むと葛西の番号を出して葛西を呼び出し、須野の隣に腰を下ろす

「・・・里見、あのね」
「まずは病院だ」
「・・・なんで飛び降りようとしたの?」
「・・・」
「あのね、僕バカだから、間違ってるかもだけど・・・里見、僕が里見のこと嫌いになったと思ったの?」

思った。完璧じゃないから、完璧じゃなくなったから須野の愛を失ったと。そして、もう2度と手に入らないのだと

忘れたかった。須野の愛を。でも、誰を抱いても忘れられなくて女々しい自分も嫌いで惨めで

優しい須野は自分がいる限り今まで通り情で付き合ってしまうのが苦しくて。愛が失いまま情けで付き合われることは許せなくて・・・

でも、もう判る。須野の愛は変わってないことが。里見が飛び降りるなら自分もと言い、里見と同じ場所に傷まで作ろうとした須野の愛は変わってない。里見が認めなかっただけだと判る。完璧じゃなくなった自分は須野に愛されないと思っていたのは、思い込んでいたのは里見だけ
自信がなくなっていた里見に自信を与えて、里見は須野の目の奥にある真実を真っ直ぐみることができるようになった。愛されていると実感できた。今までもこれからも愛されるのだと安心した









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つれないキミと売れてる僕12-51 - 01/07 Mon

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里見が視界に映るものを理解したのは見慣れた部屋のテーブル。その上に置かれた薄い冊子と聞き慣れた優しい声

「それでねー、僕は迷って結局選べなくって、そしたら新しい選択肢出てきたの。あぁ、もうこれだって!これしかないって!僕やっと納得できて選んだらその後感動しちゃった!一緒に行った人たちだーれも貰ってないんだよ?だから僕の宝物なの。里見、今度これにサインしてね?」

この冊子は体験型謎解きゲームのトゥルーエンド報酬だと葛西が見せてくれたもの。関係者にも配らないと葛西が決めたもの。製作者の里見も貰えなかったものなのにどうしてあるのかと思いながら手を伸ばした

「え、あ!里見?!アハッ!里見!里見ぃー」

抱きしめられて頭を擦り寄せられてそれから逃れるように身を捩る

「何か食べる?食べたいものある?飲みたいものは?!」

窓を見る。季節が変わってないかの確認。またあの時と同じように須野に世話をされていたことに怒りに似た感情が湧き上がる

この部屋を出ようと思っていたのに

弱い自分は世界を閉ざして須野に世話をさせた。須野の愛した完璧を失ったのにまた・・・

そして、手に取ったこの冊子は須野が手に入れたのだと気付く。完璧じゃない自分をもう愛すことはないのに誰よりも判ってくれる存在

「里見?」

悔しくて惨めでテーブルの上に腕を下ろすとガシャンと音を立てたグラス

そして割れたグラスの破片が散らばった

「あっ!里見!危ないから触らないで!すぐ片付けるから!」

割れたグラスは尖ったガラスという凶器になった

それをそっと掴むと「里見危ないから!」という須野にそれを向ける

「里見?」
「・・・か・・・くな」
「え?」
「オレに近付くな」
「え、え?里見?」

完璧でもない。惨めな自分。誰が生きることを許したとしても自分が存在する事を許せない

立ち上がると須野に尖ったガラスを向けたまま歩き始めた里見。それを不安そうな顔で追いかける須野

何が起こっているのか全く判らない。急に体調を崩して倒れた里見は何事にも無気力になって何も言わない美しい人形のようになった。誰にも触られたくなくて邪魔されたくなくて須野は仕事の多くをキャンセルし、里見の傍にいた。須野にとってそれは幸せの時間

反応のない里見に寂しさを感じたけれど食事を少しずつ食べさせ、風呂に入れ、そして一緒のベッドで眠る。何よりも幸せな時間

「里見、どこ行くの?里見」

玄関ではない方向。里見が後ろ向きに向かっているのはベランダのある窓で須野は不安で旨がいっぱいだった

怖い。里見がわからない。何がいけなかったのかと考えるのに理由がわからない

いや、もしかしたらあの時里見を困らせ、傷付けたのかもしれない。里見は怒っているのか。でも、尖ったガラスを突きつけられらる程?今までも困らせたり怒らせてきたけれどこんなことは初めて

「里見・・・どこ行くの」

里見が窓の鍵を後ろ手で開けたのを見て震える声でそう尋ねる。怖い。里見が何をしようとしているのかいよいよ想像できてしまって

「里見、やめて。謝るから!僕のことそれで刺してもいいから!やめてっ!」
「黙れ。来るな」

里見の言うことは聞きたい。でもこれは聞けない

「里見っ!」

ベランダの手すりにふわりと登った里見を見て須野の足が震える。そして須野はひとつ深呼吸すると微笑んだ

決まっていたから。望んでいたから

「オレが消えるの安心するだろ。これでもう迷惑かけねぇよ」
「安心?」
「ホッとした顔してる。ここにいたら名前に傷つくぞ。消えろ。それから飛び降りてやるから」





「なんで?僕と死んでくれるんでしょ?」





須野の決意したような声が静かな夜の空に響いた








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つれないキミと売れてる僕12-50 - 01/06 Sun

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シャツを着てジャケットを羽織る。鏡に映る姿は完璧な自分だと思えた。でも、見えていないだけ。キズのある肌は完璧じゃない

メガネと洋服に隠された完璧じゃない部分。里見にとって隠すという行為が完璧じゃないとやっぱり感じてしまう。いくら女たちに綺麗だと言われても見つめられても完璧かそうじゃないかは自分が1番よく知っているから

1人で何でもできる。須野がいなくても平気

部屋を出て葛西と共に仕事をする。大勢の前での挨拶、営業用の作られた笑顔

以前、葛西に引っ張り出されて大勢の前で挨拶をしたときはもっと輝けていた気がする。何かが足りない。楽しくもない。そう、楽しくない

何が楽しくない?何で楽しくない?


それはきっと客の反応


「皐月光の小説のファンなんです」
「世界観が大好きです」
「主人公にいつも同調しちゃうっていうかー」

そう言っていた女性のグループも誰1人トゥルーエンドに辿り着いていなかった

それどころか、このプレイベントでトゥルーエンドに辿り着いた者は皆無だった

体験型の謎解きゲーム。謎解きがメインであってストーリーは重視されていないのかもしれない。じゃあ、自分は?何のために物語を考えた?

乗り気ではなかったけれどそれでも考えたストーリー。組み立てたストーリーの謎。辿りつけるのはきっと皐月光のファンだけ。そう葛西は言っていたけれどファンだと言う人間だって辿り着かなかったトゥルーエンド

それでも満足そうな顔をして帰る客を見てあぁ、自分のストーリーはどうだってよくて名前だけなのだと気付く

皐月光とShinGoがタッグを組んだ体験型アトラクション。その名前の話題性だけ必要だったのだ

「光?」

葛西の声に顔を上げる

「やっぱプレイベントには謎解き本命の人が多いみたいねぇ。ま、中にはトゥルーエンド辿り着けなかったの悔しくてリピーターになる人いるだろうし出だしはいい感じかな?」

葛西の言葉が慰めに聞こえる。同情なんてどうでもいい。今すぐにトゥルーエンドの報酬を全て焼き捨てたい衝動に駆られる

「この後2部は関係者とかマスコミも増えるから、もう少し付き合ってね」

アンチの存在は平気。嫌いでも読んで酷評をしてくる人は寧ろ大事にしたい存在。でも、今目の前にいるのは皐月光の名前にしか興味のない者たち。自分の書く物語に興味すらない者たち・・・

見た目が完璧だという華やかさのある作家。もう完璧じゃないのを知った時、自分の名前にすら価値がなくなるという恐怖に吐き気を覚えた

「帰りてぇ」
「え?・・・光?顔色悪い」
「帰りたい」
「待って!もうすぐ次始まっちゃう!ちょっと裏で休もう?ね?なんか欲しい物ある?!」

何も要らない。欲しいものなんて買えるものは何もない。自信がない。自信が欲しい。確実な自分はここに必要だという自信が

控え室として与えられた小さなスタッフルームで冷たい飲み物と温かい飲み物、どちらも目の前に置かれる

「調子悪かった?ごめん。気付かなかった」

調子?悪くない。ただ、帰りたい。ここから消えたい。求められていない気がするから

「なぁ、光?」
「・・・オレは」

必要か?と言おうと口を開いたとき、スタッフルールの扉が開く

「里見!大丈夫?!」

現れた人物に舌打ちをし、同時に須野の隣の男に目を奪われた

誰かは知らない。でも、輝いて見えるのは自分が彼よりも劣った存在だと自分が認めてしまったせい。今までだったらきっと認めなかった存在。美しく輝く人間
彼のような人間が須野を愛したら?もう愛していたら?須野も彼を愛していたら?自分以外を自分の目の前で愛すのを見るのか?須野の前から姿を消して須野が誰かに愛されるのを望んだはずなのに許せない。自分以外の完璧に愛される須野を見たくない。自分以外の完璧を愛する須野なんて見たくない

「里見?」
「光っ!」

その後のことは里見には判らない。多分里見の中で限界だった。自慢だった完璧が自分の中で崩れ、絶対に自分を愛してくれる存在の須野という支えを失った。客たちは自分を見もしないで名前だけ崇拝している。里見 光なんて必要ないかのように華やかな皐月 光の名前だけが必要・・・そして、今まで感じなかった美しさでの敗北を感じたのがきっと里見の脆い心を閉ざす決定打になった










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