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恋して落ちて閉じ込められて8《最終話》 - 03/18 Mon

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「待った・・・って?」
「あーあーもーホントTシャツしわくちゃだしなんか臭いしとりあえずそれ脱いで。ほら、こっち着て!ホントイイ顔が台無しなくらいやつれたしなんだよその無精ひげ!汚い!」

島原が取り出したシャツに視線を移すといつか忘れて行った、いや、もしかしたら洗濯してもらったままになっていた久野のもの

「もう1回言ってくれたらお前の部屋行って今から掃除してやる」
「・・・何を」
「オレの事どう思っててなんでごめんなさいしてんの?」
「お前いないと生きていけない」
「違う!やり直し」

島原の顔に「あ」と理解し「好きだから」と真っ直ぐに答えた。今度は小さくも震えてもいない声で

「ん・・・そ、か・・・そっか・・・うん。好きか・・・うん・・・うん。コピーも無駄にならなくてよかった」

そして久し振りに見る島原の笑顔

「っ・・・ごめんっ・・・ごめん・・・も、合コンとか行かないから!女の子と遊びに行ったりもしないからっ!」
「まぁ、そこは今約束したところで守れないと思うわけだ」
「いや!オレは」

ポンっと肩を叩かれ「お前の部屋、片付けに行く」と言われた久野は島原の後を歩きながら何度も謝った








「クッソ汚かった!どうやったらあんなにゴミ溜められるんだよ!」
「・・・まぁ、それは・・・オレがダメな人間なのは自覚してるから」

島原が来て片付けてくれた部屋は以前のような部屋になって久野はこれが日常だと呼吸が楽になった気がした

「んで、これからの事!」
「あ、はい」

思わず正座した久野に島原は笑う

「合コン行くのダメとかうるさい事言わない。女の子と遊びに行ったりするのもまぁ、構わない」
「え?」
「オレ、心広いわけよ。っつか、まぁ、女の子好きなお前にも目の保養とか?まぁ、なんか癒しみたいなの必要だと思うし。オレには女の何がいいのか理解はできないけど、目の保養とか考えたら少しは判る気もするし」

じゃあ、なんで怒っていたのか・・・なんで別れる事になっていたのか

「オレが怒ってんのはお前、何も言ってくれないし、嘘吐いて合コン行くし」
「・・・合コン行くって言えばよかったのか?」
「いいよ。まぁ、そんな毎週末行く!とかだと流石に嫌だけど。でも、嘘吐いてまで行くのはナシ。マジで疾しいことあんじゃないかって思ってオレがキツイから」

久野は理解できなくて首を傾げ、そしてふと気付き首を振る

「それ!お前もなんかどっか行くっつーことだろ?!中林か!中林だな?!」
「あ?なんで中林が出てくるんだよ」
「だからオレも許すみたいな・・・お前、中林と仲イイし!旅行だって!」
「バーカ。ホントバカ。でも、そんなお前を甘やかしたいオレもバカだけど・・・中林とは友達だろ。お前もオレも。旅行なんて中林と2人で行くかっつーの。大勢の中のひとりならまだしも中林と2人?きっついっつーの」

笑った島原がおいでおいでと手をこまねいて久野は立ち上がると抱き締められる

「オレがお前のことタイプっつったの覚えてねぇの?」
「・・・覚えてるけど」
「オレ、お前といりゃそんだけで目の保養してるし結構癒されてんの。中林とお前全然違うだろ?オレのタイプはお前なんだから中林なんてただの友達でしかない。オレ、誰でもいいわけじゃないって言っただろ」
「・・・うん?」
「だから・・・バカだなぁ。まぁ、オレなしで生きていけなくしたのはオレだけどあのまま立ち直って女の子と付き合ったらそのまま手離してやれたかもしれないのに・・・バカだ・・・バカだなぁ・・・」
「いや、意味判んないし、なんでお前オレのコトバカっつーのに、んな嬉しそうな顔してんだよ」

島原の唇が久野の耳元へ寄せられる

「お前みたいな優良物件逃すわけねぇだろ。バーカ。中林にヤキモチ妬いてるお前可愛すぎだっつーの」

その声は酷く色っぽく、そして久野の心を虜にした











「あー!やっべぇ!もうこんな時間!ってわけでー!オレはお先に失礼ー!」
「えー?もう帰るの?」
「そ!もー帰るの!」

合コンの誘いがあれば相変わらずそれに乗る久野。背も高く顔も悪くなくて明るい久野はその気になればいつだって出会った女の子といい仲になれただろう

「あ、ああ?アイス買ってきてとか・・・ね!今、アイスの新作なんかある?オススメは?!」
「えー?あ、コンビニ限定のやつ!中に生チョコ入ってるやつでー」
「お!それ!いーね!あんがとー!」

そして周りに手を振って家路に急ぐ久野の背中を見送った女の子の1人が「なーんだつまんないー」と呟くのを見て笑う久野の友人

「あいつ本命いるからオレにしとこーよ」
「なにそれー!本命とかいるなら合コン来んなっつーの」

本人は悪口を言われているのなんて知らない。ただ、理解があってなんでもしてくれる恋人のためにアイスを買って甘えるために部屋へ急ぐのだ

島原がいないと生きていけない。もう地獄だと思った。でも掬い上げられて今がある。島原がいるから楽しく生活できる。息ができる。もうここは地獄じゃない



でも、それはもしかしたら島原と言う名の監獄の中なのかもしれない

久野にとって幸せに満ちた監獄・・・誰にも理解されないとしても、2人の幸せな監獄の中







恋して落ちて閉じ込められて  おしまいおしまい






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恋して落ちて閉じ込められて7 - 03/17 Sun

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「そこで土下座され続けても迷惑なだけだから・・・」

迷惑・・・そう言われて顔を上げると開いたドアにハッとする

「入れてくれるの?」
「お前このまま帰りそうもないし・・・変な噂立てられるのも困る・・・もう遅いかもしれないけど」

島原の部屋に入るときにドキドキなんてしたことなかったけれど、久々の島原の部屋には何故かドキドキした

「あー、暴力とか変なことしたらすぐ警察呼ぶから」
「しない」

暴力をふるうと思われているのも寂しい・・・確かに突然大学で友人に飛びかかって殴りつけたのはついこの間のような気がするけれど島原を殴ろうだなんて殴りたいだなんて思っていない

殴りたいのは自分だけ

「・・・お前いないと生きていけない」

かっこ悪い

かっこ悪いかっこ悪いかっこ悪い

でもなんとか糸一本でも繋がれたら生きていける気がするから。もっと息ができる気がするから

「ごめん。オレが悪かった」
「もう何百回も聞いた気がする」
「ん・・・ごめんなさい」

再び頭を下げると距離をとったままの島原の足が見えてもう隣で笑ってはくれないのだと隣で優しく背中を叩いてはくれないのだと寂しくて心が千切れそうだった

「もう絶対にやり直せないって言うなら・・・これでもダメって言うなら・・・消えろって言って・・・お前からオレに最終宣告して・・・」
「・・・そしたら・・・消えるわけ?」

久野は小さく頷く。もうダメなんだ・・・日常は崩壊した

「消して・・・くれ・・」
「っ!!!警察っ・・・呼ぶっ!」

久野が取り出した果物ナイフを見てそう叫ぶと久野は果物ナイフを床に置く

「本当に消して。オレを。もう無理。生きていけない」
「・・・な・・・はぁ?」
「ぁ・・・でも、オレを殺したらお前が悪者にされるか・・・じゃあ、じゃあ・・・ごめん。ナイフ、怖いよな・・・それ危ないから捨てて下さい。オレはお前を傷つけたいとかじゃないから・・・」
「・・・意味わかんねぇ・・・」

こんなにかっこ悪くてダメな人間、やり直してもらえるはずもない。でも、島原がかっこいいと言ってくれた自分はどう取り戻せばいいのかすら判らない

何も判らない

真っ暗な道をただ歩いているようで、いや、進んでいるのかも立ち止まったまま置いていかれてるのかも判らない

「大体、オレの事便利屋かなんかとしか思ってないだろ。そりゃ便利屋がいなくなったら不便だろうよ」
「そんなっ・・・」
「便利屋とか家政婦とかなら他を当たれよ。オレは違う」
「っ・・・そんなんじゃないっ!」

久野は拳を握りしめて口を開くと震える声で呟く

「好きだから」

多分初めて言った。付き合って1年半、言ったことはなかった言葉。でも心に秘めていた言葉

「・・・オレも好きだよ」
「え?」

島原の言葉が判らなくて、聞き間違いだと思って顔を上げると久野に背を向けて整理されている部屋のカラーボックスからガサガサ何かを取り出した

「はい」
「・・・え?」

判らない。出された紙束が何かも、島原の真意も何も判らない

「簡単な言葉。どんだけ待たせるんだよ!ったく・・・ナイフ出した時はホントにやばいって思ったけどお前がお前で安心した」
「待って・・・え?何?どういうこと?これは?」
「お前が出られなかった授業のノートのコピー。代返も一応ほぼしてあるから。あとはテストで変な点数取らなきゃ単位落とさないだろ」
「な、え?なんで」

島原がため息を吐き出してベッドへ腰を下ろすのを見て「えぇ?」とノートのコピーを握りしめたまま島原を見つめる

「オレにばっか言わせんな・・・オレはずっと待ってやーっと聞けたっつーの。2年くらい待ったっつーの・・・」






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恋して落ちて閉じ込められて6 - 03/16 Sat

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殴った友人とは疎遠になった。ゼミ内でも、いや、大学へ行けば皆腫れ物に触るみたいに接してきたし、居場所なんていよいよ本当にどこにもなかった

あんなに嘘を吐いてでも言い訳してでも行きたかった合コンだって楽しくなかったし、溜まっていく洗濯物も朝起きられなくて捨てられないゴミも不快で部屋にもいたくない。居場所のない大学にも行きたくない

寂しさは人を殺せるとまで思いながら過ごす日常



「やった!予約取れた!」

夏休み前、期末試験の頃、中林がテンション高く友人らに見せている雑誌を横目で盗み見た







「何?お前そこ行きたいの?こないだもそこ見てたよな」
「んー?あぁ、綺麗だろ?憧れてるだけ」

そう雑誌を見ながら笑った島原にできもしない約束をした

「じゃあ金貯めて行くかー」
「え?」
「ん?来年の夏休み」
「ホント?」
「おう」

島原が「楽しみ」と笑ったのが美しいと思った。ただ、純粋に美しいと思った





島原が行きたがった場所。それは中林の持った雑誌に映っているところ

自分と約束したあの場所へ中林と・・・

もう別れを告げられてだいぶ経つのにまだ吹っ切れていない。日常は戻らないのに変わっていく季節。自分だけが世界に取り残されて進んでいく時間

「・・・だ」

もうダメだと周りも聞こえない声で呟いて久野は日常を取り戻したくて島原の部屋へ向かう

時間が巻き戻ればいいのに。楽しかった、充実した日々のあの頃に

「・・・ホントに学生課報告しにいくけど」
「ごめ・・・なさい」

ただ謝ることしかできない。島原がいないと生きていけない。独りぼっちのこの世界では生きていけない

久野が額を地面につけて再び「ごめんなさい」というのを聞いて流石にギョッとする島原

「や、やめろ」
「お前なしじゃムリ・・・生きていけない」
「な・・・んなこと言ってお前すぐに浮気すんだろ」
「中林と行くんだろ」
「あ?」
「も、ムリ・・・お前が他の男に優しくしたり尽くしたり遊びに行ったり!見てるのキツい」
「関係ないだろ・・・んな・・・引きずってかっこ悪」

また言われた関係ない・・・関係、ない・・・?今もこんなに苦しいのに?関係ない?

苦しくて寂しくて仕方ないのに、日常がどんなだったのか、こんなに苦しいのが日常だったのかも思い出せないのに。前へ踏み出せばいいのに前への踏み出し方も判らない

かっこ悪い・・・判っている。そんなの言われなくても判っている。でもかっこ悪くても今の久野には縋ることしかできない

島原は優しくて、面白くて、、甘やかしてくれて、初めてをたくさん教えてくれて・・・あぁ、こんな苦しみも初めてだったと気付いた。今までみたいに驚きはしないけれど失ってこんなにも苦しいのは初めてのこと









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恋して落ちて閉じ込められて5 - 03/15 Fri

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翌日もそのまた翌日もその翌日もやっぱり起きられなくてボーッと時計を見つめた

慣れなくちゃいけない。この生活に、島原がいない現実に慣れなくちゃいけない。大学で見かける島原はダメージも受けていない様子だったのだから自分も慣れるべきだとは判っている。でも、甘やかされ続けた日常は簡単に慣れてはくれない

授業は学友たちに聞きまくって時間割を作ったし、飲み会も合コンも罪悪感を感じることなく入れられるようになった

でもまだ慣れない
寂しさも埋まらない

コンビニで買う弁当も、翌朝に食べるためのパンも、1人でやる課題も1人で見るテレビも全部全部慣れてくれない

寂しさが襲う。寂しくて気が狂いそうだから詰め込んだバイトのシフトも全部全部久野を余計に苦しめる








「・・・何?それ」
「え?何が?」

友人に聞いた昨晩の飲み会の話。ゼミの飲み会。行っていない。誘われてすらない

「オレ、誘われてねぇけど」
「あ?だって島原来るって言うし気まずいんじゃね?お前別れたっつってたじゃん?それに最近お前やたらとバイトだしさぁ!」
「それでも」

誘われてないのと誘われたけれど行かないのとはだいぶ違う

どちらを誘うか考えた時に島原の方が優先度が高いと言われているようで寂しさが増す
友達まで島原に奪われたようで、ここに自分の居場所なんて島原と別れた自分の居場所なんてどこにもないと言われているようで寂しくて辛い

「ま、なんだ?お前とは別でも飲みすんじゃん?島原って結構レアだしさ!」
「何だよ・・・それ」
「拗ねんなってぇー!あ、来週井川たちと飲みやるけどお前来る?来るよな?バイト空けとけよ?」

日常がこんなに苦しいものだなんて知らなかった。忘れていた。大学に入りたての頃に感じたあのホームシック。寂しくて何もできなくてどうにかなりそうだったあの時と同じ

「あ、中林ー!お前も来る?来週さー飲み会あんだけどー」
「いつ?」
「水曜ー!」
「あ、水曜ダメだー!島原と約束してる」

血が沸騰しそうだった

グラグラ煮え立って何もかも燃やしたくなる。燃やして溶かしてしまいたくなる

「中林、最近島原にべったりだよなぁ?お前の次の彼氏ー?なーんて」

友人の言葉を最後まで聞く前に何もしていない友人の頬を拳で殴っていた。ケンカっ早い方じゃない。寧ろ温厚な平和主義だと思っていた久野の初めてのこと













何度目かの抜き合いの後、口で奉仕してくれる島原の腰が揺れていることに気付いた。多分付き合って半年くらい

「なぁ、腰、揺れてる。オレのしながら感じてんの?それ」

単純な興味だった。でも、島原のバツの悪そうな顔を見てハッとし、嫌がる島原を押さえつけながらデニムと下着を剥ぎ取った

「・・・え?」
「見るなっ!・・・気持ち悪いだろ・・・離せ・・・萎えたなら謝るから。見なかったことにして。忘れろ」
「いや、何?これ」

後孔に付けられたプラグを見てただ、純粋にまた驚かされたと思った

島原と付き合って男同士でそこを使うという知識はついた。でも、島原がそれを望んでいるだなんて知らなかった。タイプだと言われて好きだと言われていたからてっきり自分をそうしたいのだと、それはどうにも踏み込めなくて聞けなくて。聞いたら丸め込まれて自分でも見たこともないそこを曝け出すのだと躊躇していた場所に自らプラグを入れている島原に興奮を覚えた

「オレの、挿れてほしかったの?」
「っ・・・」
「何で付けてんの?」
「もしっ・・・お前が平気そうならっ・・・って・・・思って・・・でもっ」
「オレのためにそれ、付けてきたの?挿れて欲しいって思ってたの?」
「・・・くれるか?ここに、お前の・・・大丈夫そう?」
「言えよ・・・お前言わないとオレは判んないよ。男同士のそういうこと、オレは判んねぇもん」

島原と付き合って半年、島原にとってはずっと我慢していたのかもしれない半年・・・やっと本当に付き合っている実感をしたその日・・・男がそこで感じることを知った








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恋して落ちて閉じ込められて4 - 03/14 Thu

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どうにか謝りたい久野は島原の部屋の前で家主を待ち伏せすることにした
授業の予定は判らなくても島原のバイトの日、大抵の帰宅時間は判るのはなぜなのか久野にも判らない

「アハハっイイよ。じゃあ今度貸すよ」
「マジで?!」
「あぁ」
「・・・っと・・・じゃあまた明日な!」
「ん、じゃあな」

島原が帰ってきたけれどひとりじゃなくてどうしようかと思っていたら久野の姿に気付いた相手が気を利かせて帰ってくれる・・・これも公認の仲だった証拠。もしかしたら島原はまだ周りに別れたと公言していないのかもしれない。そんな希望でそっと微笑むが、島原の冷たい表情で一気にそんな希望は吹き飛んだ

「何?」

久野がいてもその存在なんて気にならないかのようにそう言いながら鍵を開ける島原

「・・・ごめん」
「もうイイ。関係ない」

関係ない・・・その言葉にカチンときて島原の腕を掴み、無理矢理部屋へ上がる
授業の予定も判らないのに島原の予定は把握できている。関係あるから、関係あったからそれは覚えているのに関係があったことすら否定するような島原の態度にキレたのだ

「関係ないってなんだよ!」
「言葉の通り」
「っ・・・中林とデキてんのか?!一緒に帰ってきてっ!あいつのこともタイプなのかよ!」
「・・・関係ないだろ」

大学でも楽しそうだった。今も楽しそうだった・・・自分と別れた翌日に当て付けのようにもう相手を見つけたというのか・・・それとも、自分と同時進行だったのかとも疑ってしまう。合コンへ行ったことを怒って別れを切り出して来たのに、本当は自分よりもイイ相手がいたからなんじゃないかと疑ってしまう

「あいつと穴兄弟とか勘弁してほしいからな!大体っ」
「だから、関係ないだろ。悪いけどオレ、別れてからも友達とか無理だから・・・あんまりしつこいと学生課に相談することになる」

そう部屋から追い出されるとすぐドアを叩こうとしてやめた。ただ、拳を握りしめたまま自分の部屋へと戻る

確かに悪いのは自分。今まで許されていたからといって甘えて過ちを犯し続けた自分が悪い・・・でも、許してほしい。もう一度チャンスが欲しい・・・もう一度だけ許してほしい






「なぁ」
「うん?」

付き合ってから3ヶ月くらい過ぎた時だったと思う。確か、映画か何かを一緒に見ていて、テレビの画面を見ながら適当に返事をした

「・・・お前ってさ・・・」
「んー?」
「・・・溜まったりして・・・ねぇの?」
「・・・何を?」
「何って・・・だから」

何の話かわからなくてちょうどCMに切り替わった時、島原の顔を見てやっと気付いた言葉の真意

「え?!そういう話?!」
「っ・・・」
「何?オレが溜まってたらもしかしてお前抜いてくれたりすんの?」
「だ・・・」
「え?」

冗談のつもりだった。でも島原の顔を見て「あ」と呟くとテレビを消す

「もし、よかったら・・・口で、させてくんね?」
「え?!」
「や!もしよかったら・・・お前が気持ち悪くないなら・・・だけど・・・お前の、したい・・・なって」
「お、お願いします」

なんとも間抜けな解答だったと今でも思う。でも、慣れた手つきでファスナーを下ろす島原に生唾を飲み込んだのを覚えている

薄くて小さいと思っていた口が思ったよりも拡がるのを知った

勝手に低そうだと思っていた島原の体温が高いことも知った

男の口でも、もしかしたら島原のだからかもしれないけれど達することを知った

「気持ちよかったか?」
「気持ちよかった・・・です」
「ん、よかった」
「よかった・・・ってお前は?!」
「え?」

そして、島原のなら他の男のなんて見たくもないし当然触りたくもないけれど触って達かせられることも、島原の感じている顔はいつもよりもさらに色っぽいことも知った

「・・・平気?」
「ん?」
「・・・だってお前」
「いや、付き合ってんじゃん?オレら」

そう言ってキスをした時島原が嬉しそうな顔をしたのを覚えている








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恋して落ちて閉じ込められて3 - 03/13 Wed

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目が覚めて明るい部屋に慌てて携帯を掴んで時間を確認するともう1限目の授業の半ばで久野は溜め息を盛大に吐き出した

島原に甘えきっていた。付き合ってからずっと甘え続けてきた

目覚ましでも携帯のアラームでもたくさん鳴らしても起きられない。そう嘆くと仕方ないモーニングコールしてやると優しかった島原。昨日までずっと大学のある平日も、バイトがある休日も毎日毎日起こしてくれていた。でも今日はそれがない

「・・・」

ケンカをした翌日でも、いつだって起こしてくれたのに今日は起こしてくれなかったということはやっぱり別れるというのは本気なのだと頭を掻きながら起き上がり冷蔵庫を開けると食べられるものを探す

いつもは島原が前日までに用意してくれたご飯が何か入っているのに何もない冷蔵庫。テーブルの上にも何もない。食べるものすら島原に頼っていて蛇口から出る水を飲むと「コンビニ行こ」と部屋を出た

コンビニのサンドイッチとコーヒーで済ませた朝食。そういえば今日の講義はなんだったかと考えるけれどそれも判らない。とりあえず手ブラでも大学へ行けば友人に聞ける。そう思って大学へ向かう



「おーっす!どしたよー?お前1限サボったべ?」
「あぁ、寝坊した」
「おー?めーずらしー!ケンカかぁ?ケンカかぁ?!」

ニヤニヤ笑いながら突いてくる学友。最初からカミングアウトしていた島原が皆に受け入れられていたのもあり、2人の仲は仲間内では公認の仲であった

「あー、別れた」
「マジ?!さっき島原に会ったけど何も言ってなかったけどそーなの?!」
「・・・じゃあ違ぇかも」

島原から何も言っていないというとこはまだ許してもらえる余地があるのかもと希望を持ってしまう

「なんだよそれぇー!まぁ、ケンカならどーせお前が悪いんだろー?早いところ仲直りしろってー!ゼミの飲み会とか気まずいのマジ勘弁ー」

確かにいつも一緒だった久野たちの大学の友人は大抵共通。気まずくなるのは避けたいこと。ただ、自分が悪いというのが事実でも話も聞かずに自分が悪いから謝れと言われるのはどこか腹が立つし、反発したくなる気持ちが出てくる

「んじゃあまた3限でな!」
「おう」

そう手を振って別れてから気付く。自分の次の授業は一体なんなのかと・・・

仕方なく島原に電話する

『はい』
「あ、あのさ!」
『次の授業、講堂B3で経営学』
「あ、そ・・・あのさ!」

謝ろうと思ったのにすぐ切られた電話に「畜生」と悪態を吐くと、それでも次の授業を教えてもらえたと足取り軽くB3教室へと向かう

「マジで?」
「んー、どー思うー?」
「いや、それオレに聞かれてもなぁ」

そして教室の前で見かける島原の姿。他の友人と仲良さげにツルんでいる姿

「・・・」

自分に気づかないのはわざとなのか友人と会話しているからなのか・・・

島原たちが教室へ入った後、久野も教室へ入ると適当な席へ着くが、さっきまで授業が何かすら覚えていなかったのだから教科書も何もない
島原がいないと授業すらまともに受けることができない・・・

「・・・」

ただ延々と聞く授業は何のタメになるのかも判らない。寂しい。島原がいないと孤独を感じる。島原以外にも友達はいたはずなのにひとり。知った顔を見つけられない

学食へ行ってもひとり。格安大盛りの学食はいつも嬉しくて楽しかったはずなのに味もわからない大量のご飯はただ苦痛でしかないのだと知った


島原がいないと何も楽しくない。謝りたいのに電話をしても肝心なことは何も話させてもくれない

苦しい

辛い

孤独



寂しい・・・








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恋して落ちて閉じ込められて2 - 03/12 Tue

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「そんなに好きだったのかよ」

ヤケ酒と言う割にはヤケにもなっていない気がしたし、何よりも余計に暗くなってきている島原にそう尋ねる
酒の力で愚痴るなり、泣くなり笑うなり何か変わればイイのにただ暗い顔をしている島原を心配してのコト

「・・・どうだろ・・・二股かけられて傷付くくらいには好きだったかもな」
「二股ぁ?!」

それも周りで聞いたことがないこと。島原からは初めての事ばかり聞くからまたなんて返したらいいのかわからない

「あと、酒ってまずい」
「え?!」
「フラれたらヤケ酒ー!って初めて買って飲んだけど美味しくねぇのな・・・お前は普通に飲んでるけどこの不良め・・・」
「ふはっ!不良って!だってオレは・・・あぁ、そーいやオレら未成年だーな」
「あぁ。不良だろう」

いつも大人びて見えていた島原が急に幼く見えてなんだかおかしくなって大きな口を開けて笑い出す久野

「酔っ払ってんのか?」
「いや、お前なんかすっげぇ真面目だよな!洋服にアイロン掛けちゃうし!酒も初めてっつーし!んで、そんなお前、多分そいつのこと大して好きでもなかったように見えるのに付き合ってたから好きに決まってるみたいに暗示かけてんで凹んでるに違いない」
「はぁ?オレは」
「いーや!暗示だって!そいつの好きだったところ挙げてみてー!」

少し考えて小さく唸りながらも口を開いた島原にまた吹き出す久野

「ほら!真面目ー!本気で言おうって考えちゃってるー」
「はぁ?!だってお前が」
「好きってそんな考えなきゃ出てこねぇもんかー?何だって出てくるだろー。顔が好きとか体が好きとか優しいとかさぁ」

確かに考えて考えて何を言おうとしていたのかさえも判らない程探した好きなところ

「じゃ!タイプはー?」

手にマイクでも持っているように拳を握って島原に差し出すと島原は「何だっていいだろ」と顔を赤くして俯いた

「うんー?どんなんでもいいーってこーとー?」
「違っ!男相手なら見境ないみたいに言うな!オレだってちゃんと・・・」
「じゃあータイプはー?」

「それは」と口をパクパクさせた島原が持っていた缶酎ハイを一気に煽って久野を見つめる

「ん?」
「お前みたいなっ・・・くっそ!折角お前と仲良くなれて目の保養も出来てたのに言わせんなよ!もーいいよ!自分のことそういう目で見てたって判ったら流石のお前だってもうオレなんかと友達なのもイヤだろ!帰れよ」

またびっくりした。島原に驚かされるのは何度目だろうか・・・男にタイプだと言われるだなんて思ってもみなかったこと

「・・・出ていかねぇの?」
「うーん・・・なんだろ。お前に言われて悪い気はしてない」
「っ・・・ざけんな!そういう思わせぶりなこと言ったりするからノンケは嫌なんだ」
「や、あー・・・なんだ。まぁ、よくわかんないけど、いいよ?みたいな?」
「はぁ?!」
「お付き合い的なのしてみる?」

その時の島原の顔はまさに驚いたって顔で久野は初めて島原を驚かせることができたと嬉しくなった

「んなこと言っていざとなったらムリってなんだろ・・・傷付くんだぞ。それ・・・例え酒の力っていうか勢いだとしても、一瞬でも本気になったらオレは傷付いて引き摺るの判ってない」
「まぁ、これが中林とかだったらあ、ムリってなるんだろうけどお前ならいけそうな気がするっつーか」
「そんな気がする・・・とか・・・揶揄ってんならヤメろ。オレ、今ホント弱ってるし、お前のコトそう言う目で見てたのはホントだし」
「揶揄ってない」

好きかどうかは判らないけれど島原のどこか色気を感じる眼差しだとか、通った鼻筋、薄い唇、決して完璧じゃないしタイプでもないけれどバイト先の女の子たちよりもよっぽど魅力があるように思えてそっと島原の耳に唇を寄せ、囁く

「お付き合い、してみよっか」

そう囁くと耳まで赤く染めた中林の頭は震えながらこてんと前に倒れた






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恋して落ちて閉じ込められて - 03/11 Mon

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何回でも許してもらえると思っていた

ほんの出来心。ほんのちょっとの浮気心

本気で他へ行こうだなんて思っていない。いつだってそこが居場所だって、自分の居場所だって思っていたからそれを消去されるだなんて考えたことすらなかった

「もう無理」
「ぇ・・・えぇ?」
「何回言ったって治んないじゃん。浮気性」
「いや、付き合いだって。ただの合コンだし!その後お持ち帰りとか何もしてないんだよ?」
「まぁ、浮気性は治らない。仕方ないとしても・・・嘘吐いてまで行くのが信じられねぇ」

付き合って1年と半年。久野 良輔はこんなに長く続いたことも、男との付き合いも彼が初めてのこと

「嘘まで吐くってことは機会があればお持ち帰りしたいわけだろ?合コン?そりゃお前女の子が好きだし、巻き込んだのはこっちだし、我慢してきた。でももう無理」
「や、待てよ。ごめんって!悪かった!」
「無理。イイだろ。女の子と遊ぶのも合コン行くのも好きにしろ」

必死に謝っても捕まえてもすり抜けて行く彼の腕

久野の部屋から彼、島原 平良は出て行った







「はぁ・・・はぁぁぁぁ」

大きなため息が久野の部屋に響く

条件の良い恋人だった。基本、うるさいことは言わないし、して欲しいことなんでもしてくれた。家庭料理に飢えてると言えば作ってくれたし、大学のレポートだって手伝ってくれた。バイトがあるからと言えば講義の代返だってしてくれたしノートもコピーさせてくれた

「くっそ・・・何だよ。合コンくらいで男が怒るなよ」

今まで許してくれたのに今回は何で許してもらえないのか考えながらまた落ち着いた頃頭を下げたら何とかなるだろうとまだ楽観的部分も持ったまま久野は不貞寝を決めた





出会ったのは入学してすぐ。初めての独り暮らしは大変なことがたくさんだと知った。洗濯物だってやらなければ溜まるし着る服もなくなる。ご飯も温かいものが何もしないで出て来るわけじゃない。ゴミは決められた曜日に出さないと酷く臭くなるし、久野にとって独り暮らしは自由だと思えたのなんて最初の1週間だけだった

朝起きるのも自分で。というのすらキツいと感じながら毎朝見る同じ学生マンションの同級生はいつもピシッとアイロンまでかけられたような小綺麗な洋服を着ていて、久野は声を掛けた

「彼女いんの?イイ彼女だなぁ・・・」

そう話かけたのが彼、島原だった

「え?」

突然話しかけられて驚いた顔の島原に「あ、ごめん」と呟きながら洋服がいつもピシッとしているから。と言いなおす久野

「あぁ、アイロン掛けてる。シワとか気になるだろ」
「・・・彼女が掛けてくれるとかじゃなくて自分でやんの?」

苦笑した島原が口にした言葉は久野にとって衝撃的なもの

「オレ、ゲイだから彼氏はいたって彼女はいないよ」

初めてだった。今まで周りにいたことなんてなかったから。なんて返事をしたらいいのか迷ってるとまた苦笑した島原が口を開く

「オレ、結構それで有名なのかと思ってた」
「えぇ?」
「自信過剰だったな・・・皆知ってると思ってた」

島原は後々バレて気まずくなるよりは最初にカミングアウトしてしまおうと大学へ入って最初のオリエンテーションの自己紹介で話をしたこと、学部も学科も同じこと。故郷のこと、今は恋人がいないこと。そのほかにもたくさんたくさん話をして久野は大学へ入って初めて楽しい時間を過ごせたのだった

きっと兄弟も多かった久野は初めてのひとり暮らしでホームシックにかかっていて、それを島原が紛らわせてくれた

仲が良くなるまでに時間なんて必要なかった。学部も学科も同じ。受けている講義もほぼ同じ、帰り道も同じ。一緒にいる時間は長くて、話の引き出しが豊富にある島原と一緒にいるのは飽きることがなかったのだ





「うぃーっす!島原ー!おっつー!」

島原のおかげで大学生活も慣れてきてバイトも始めた頃、バイトを終えて帰宅すると俯いて歩く島原を見かけていつものように声を掛けた

「あぁ、バイトだったか。お疲れ」

お疲れ。と言った島原の方が疲れた顔をしていて何かあったのかと聞かずにはいられなくなった

「・・・まぁ、なんだ。フラれた」

そう笑った島原にそうかと背中を叩きながら、そういえば島原の相手は男だった。とぼんやり思い出す

「大学入ってカムアウトしたら誰かもしかしたらーとか淡い期待すぎた」
「ん?」
「昔からオレ出会い系で運なさすぎんだよなー・・・ってことでヤケ酒付き合ってくんね?つまみなんか出してやるから」

傷心中の友人の辛い顔に久野は笑って「呑んで忘れちまおうー!」と明るく言ったが、島原の表情はちっとも明るくならなかった








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ふたりのバレンタイン9《最終話》 - 03/08 Fri

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「あー、マジでなんかすごい久々にやった!って感じな」

バスルームから出て柿内の部屋で何度したのか判らない。体を拭く時間さえも惜しくて求めあい、ぶつかり合い、何度も達した。優しく抱き締めてくる柿内の腕を撫でると顔を上げる

「柿内?」
「こっち向くな」
「なんだよ」
「このままで・・・」
「なんだよ。オレの顔見たくないとか賢者タイムすぎんだろ」

さっきまでの甘さはどこへ行ったのかと冷たい柿内に唇を尖らせて判りやすく拗ねた柚木に違ぇと柿内の低い声が頭の上で響く。知っている。優しくて愛しい恋人。冷たいだなんて思っていない

「ユズ」
「んー?」
「・・・てる・・・ぁ・・・愛してる」

照れ屋の恋人。悪態を吐いて喧嘩をしながらふざけ合っている方が気が楽で2人には向いているし、お互いにそれが自然だと思っているからたまにこうして伝えられる言葉が酷く恥ずかしい

だからいつもだったらすぐに茶化しにかかる柚木だけれど今日は違う。なんせバレンタインだ。自分も気持ちを伝えるべきだと柿内の背中を強く抱き寄せた

「オレも愛してるよ」
「っ・・・クッソこっち見んな」
「照れてるお前もすげぇ愛しい。可愛くて誰にも渡したくない。誰にも渡さない」
「っ・・・もう、そ、いうの・・・イイから」

恥ずかしくて離れようとした柿内を引き寄せる

「お前に酷いことしたオレだけど、あん時ホントどん底だった。でも、今、またお前とこうしていられるオレは幸せ者だ」
「・・・オレは・・・なぁ、今、あんた幸せ・・・なのか?」

自信なさそうに言う柿内の頭をぐしゃぐしゃかき回す

「幸せ!お前も幸せだろ?」
「そりゃ、オレは・・・な。でも、ほら、あんたを泳ぐの誘った癖に仕事ばっかで一緒にまともに泳ぎに行くこともできねぇし、ロクに顔も合わせられねぇし、なんつーか、ほら、どこにも連れてってやれてねぇっつーか」

柚木は柿内に愛されている実感がある。その愛されている事実こそ幸せを感じられるもの。柿内にもそれを味わって欲しい
柿内に自信がないのは昔からだけれど、大人になった今もまだ自信がないのは自分のせいもあるんじゃないかと思う。自分勝手に柿内から離れたから・・・だからゆっくりでもいい。愛されている事実を理解してけばいい。これから時間をかけてゆっくりゆっくり理解し、柚木が今感じている幸せを実感できればいい

「柿内、お前ユズって呼んだり名前で呼んだり安定しないなぁ」
「それはあんたもだろ!っつかなんだよ。オレは・・・話またすり替えやがって」
「おう。でもオレらの中でこれが自然なんだって思ったらこういう所までなんかすごい幸せに思えてさ。すげぇ小さいことも幸せって思えるのはお前と離れてた時間があったからかも。当然だと思ってたことがなくなってお前がここにいてこうしていられることが幸せ。確かにもっとお前といたいなって思う時はあるけどオレら子どもでもないしそもそもオレは男だ。仕事大事なのも楽しいのも判るから。大丈夫。お前の愛情、オレ、誰よりも判ってる。伝わってる」

柿内はそっと柚木の体に顔を埋めると熱い頬を擦りよせた

「なぁ、もうずっと前だけどさ、バレンタインだったよな」
「・・・」
「雨の中走ってオレの家来てさ、柿内がオレにちゃんと告ってくれたの」
「っ・・・忘れろよ」
「バーカ。忘れるわけない。あの日があったから今幸せなんだって、あの日告ってくれなかったらオレは本当に分かり合える相手なんて見つけられずに適当に生きているに違いないんだ」

熱い頬が余計に熱い。柿内にとっても忘れられない日。あの日からずっと夢が続いているんじゃないかと疑った日々。そして失って幻だったのだと自分に言い聞かせ諦めた日々。思い出せば出すほど胸が苦しくて今の幸せを改めてありがたく思う

「だから、愛してる。紀行」
「流っ・・・ありがと・・・無理させてごめん」

心配しすぎだし、そもそも誘ったのは自分だと笑った柚木はポンと柿内の頭を叩く

「な、ホワイトデーは3倍返しだよな?」
「あ?」
「ま、クッキーとチョコプリンは交換ってことにしてもだ!今の甘い時間は?オレからのバレンタインプレゼントだろ?」
「は・・・はぁ?!」
「ホワイトデー!3倍返しっ!頑張れっ!柿内っ!」
「いや、ちょ、そういう意味で言ってんなら無理だぞ?なぁ!ユズ!なぁって!」

あぁ、これは本気だろう。ホワイトデーは何をどう求められるのかと思うとやっぱり永遠に勝てないと思う。でも、永遠に勝てなくていい。ずっと追いかければいいから。追いかける背中が目の前にある。それだけで幸せだから







青春はプールの中で 番外編
ふたりのバレンタイン おしまいおしまい










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ふたりのバレンタイン8 - 03/07 Thu

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甘い香りがバスルームに充満していて響く水音

いつもよりも口数がお互いに少ないのはこの状況を壊さないように

お互いの雄を擦り合わせて潤滑油で滑りやすくなった肌をぬるぬると合わせる。ここに言葉なんて要らない

今日は要らない

「ノリ、そこっ、もっと強く」
「ん・・・」

快感に身を委ねていれば自宅のバスルームだとか茶化すこともない無言ばかりで苦しいこの空間もどうでもよくなる

「ん・・・ぁ?」

柿内の指が後ろへと滑っていくのに肝心の内部へは触れられないことに顔を上げると怪しげな光に照らされた柿内。雄の顔をした柿内の姿

「中、イイか?無理しないから。明日に響かねぇようにすっから」
「・・・」

誘ったのは柚木。柿内もその気で柚木の誘った真意なんて理解していると思ったのに、いい大人なんだし恋人なんだからそこまで許可を取る必要なんてないはずなのにと柚木はそっと両腕を上げると柿内の身体にしがみつく。愛しい男。誰にも渡したくない男

「そのつもりでもう準備してあるから。このまま突っ込め」
「っ・・・流、キツかったら言え」
「ん」

平気。キツくても痛くても柿内だから平気。そんな言葉は女々しくて一生言える気はしないけれど言わなくてもいつか理解してくれることを願う

いつだって男らしくありたい。そう願う柚木がこんなことを許すのは柿内にだけ。それを柿内も判っているはず

「クッソ。準備ってあんたこれどんだけ・・・ぁー・・・クソ。 もー・・・クッソ柔らけぇ・・・」
「ふはっ!いーよ。好きにしろよ」
「ふっ・・・すげっ・・・気持ちイイ」

この顔を独り占めしたい・・・恋人に戻ったのに離れていた時間が長かったから数ヶ月経った今でもこの瞬間心が震える。何故あの時手放せたのか、手放してしまったのかと後悔しかない

「バ・・・やめろよ・・・あんたにまた無理させちまう」
「何?」
「奥、ワザと開こうとしてんだろ・・・ぁ、マジやめて。っ・・・流っ・・・煽んなっ」

柚木は微笑みながら柿内の腰へ足を絡ませる

「欲しいって体がお前求めてんの判んねぇ?」
「っ・・・クッソ。知らねぇ!もっ、オレも無理」

最奥の奥。体の内側から全て暴かれる感覚。自分の内臓が熱い塊を包み込もうとしている
人の体温で火傷するだなんてあり得ないハズなのに腹の内側が焼ける様に熱くて苦しいのに悦くなっていく自分が恐ろしく感じる

「っ・・・ふっ・・・ぅ・・・ゆっくりっだっ!苦しっ」
「っ、悪ぃ・・・も、ムリ」
「ぇ・・・あ・・・ノリ・・・ノリぃ・・・熱いぃー」
「煽ったのはあんただっ・・・気持ちよすぎてっ・・・も、達きそ・・・止められねっ・・・」
「っ・・・んんっ・・・イイ・・・イイっ!」

今、柿内を感じさせているのは他の誰でもない自分なのだと実感できる瞬間、この男が自分のものだと改めて実感できる時間。甘い匂いも音が響くバスルームもいつもと違う照明もお互いの甘い吐息も全部昂りに導いていくものだった










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