FC2ブログ

つれないキミと売れてる僕5 - 03/11 Wed

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
ずっとぐるぐると「特別」と「大好き」という言葉が頭の中で回っていた。
それは今進めている仕事にも影響を及ぼし、やたらと登場人物に「キミが特別」「キミが大好き」と言わせてしまっていることに気付いて里見は一気にそれを削除した

「ただいまー」
「・・・おう」

この家の主・・・いや、恋人が戻ってきていつも通りジャケットを脱ぐと寝室へ向かう

「・・・」

日常・・・日常・・・しかし、いつものように自分のパソコンを打つ指は進まない
進まない・・・
全然進まない・・・

イラつく里見はタバコに火をつける

「・・・進まない?」
「あぁ?」
「・・・ごめん・・・でも、これ・・・」

須野が指差したのは灰皿に置かれた火のついたタバコ・・・火をつけたのにまた新しいものに火をつけていた

「貰うねー」

須野がすっとその吸いかけのタバコを咥えるとまたどこかへすっといなくなる・・・
邪魔をしないように。
ただそれだけ・・・

「はあ・・・」

須野にも届くようなため息で、思わず振り返った須野においでおいでと手を拱き、座るソファの隣に座れと促す

「?」
「行き詰った」

須野の胸に頭をもたれさせると目を瞑って須野の心音に耳を傾ける。
あぁ・・・人の心音は気持ちがイイ・・・

そう思ってるとそっと頭を撫でる手に目を開ける
それはまるで頭痛を治めるような撫で方・・・

「目・・・疲れたでしょ?」
「・・・」

こんなときも自分を気遣う彼にまた「特別」という言葉が浮かんだ

「大丈夫・・・里見ならすぐ書けるよ」

あぁ、彼はいつだって優しい・・・
この声はずっとそばにあった声・・・
いつだって隣で頷き、自信を持たせてくれた声・・・

「お前・・・なんでオレが好きなの?」
「え?」
「オレがイイ男なのは認めるけどさー・・・それだけ?」
「なんでだったかなぁ・・・最初は見た目に惹かれたよ・・・でも、里見といると幸せな気分になったから・・・かなぁ・・・あと、里見はすごく優しい」
「うーん?」
「でも、好きな理由なんてなんでもいい・・・好きなんだ・・・ただ、好き・・・傍にいたい」

須野は里見の側頭部を優しくマッサージしながらその指と同じように優しい声でそう言う。
・・・この声・・・優しい・・・心地よい声・・・

「須野・・・」
「んー?」

顔を起した里見と須野の影が重なり、キス・・・

里見の舌が唇を割って口内に侵入させようと試みる・・・
最初は固く閉ざされた唇がゆっくりと侵入を許すと舌で口内を犯す
須野にとっては初めての刺激で強すぎる刺激

苦しそうな困った顔の須野に笑って里見は濡れた唇を離した

「・・・」
「これも平気・・・意外となんでも平気・・・」
「僕は平気じゃない・・・」
「気持ち良くなかった?」

そう言いながら「オレ、キス下手じゃねぇはずなんだけどなぁ・・・」と呟く里見にまた経験の差を見せつけられたようで、他の誰かとしていたと感じさせて須野に湧き上がる嫉妬心・・・
過去に嫉妬はしたくない
けれど嫉妬する
女々しい自分がすごくすごく嫌いだった

「須野ー?オレがお前の思う純情だとか純粋だとかとはかけ離れてて「キレイ」じゃなくて幻滅中?」
「そんなわけない・・・でも・・・僕は・・・もっとしたくなって困る・・・」
「いいよ・・・それ正常」
「でも・・・」
「お前からしてもオレは嫌がらねぇよ」
「・・・」

震える手が頬に触れる。
優しく優しく・・・まるで自分が壊れものになったようだ
そしてまた触れるだけのキス・・・

そこから再び里見の舌が須野の唇を舐める。あぁ、処女相手にしているみたいだ・・・と思いながら逃げようとする顔を掴んで離さない・・・
口の中を全て侵されるような動きに感じないように振る舞う彼が可愛く見えてくる・・・

「んっ・・・」

彼の声が耳に届くと里見は興奮する・・・
澄ました表情の須野が乱れている・・・その顔を見て唇を離した

「エッロ・・・お前の顔エロい・・・やっべ・・・オレ勃った」
「・・・」
「何?その物欲しそうな顔は・・・」
「や、なんでも・・・」
「言えよ・・・何がしたい?」
「・・・触りたい・・・」
「セックスは抜きでキスだけとか言ってなかった?」
「っ・・・」

意地の悪い顔で里見が須野を見つめる。
じんじんと腰に疼く熱・・・
今までも耐えた・・・この熱・・・

「挿れんのはナシな?」
「・・・?」

里見がシャツを脱ぐと白い肌が蛍光灯に反射するようでまぶしかった
里見の腕が須野の腕をとると立ち上がり寝室へ引っ張っていく・・・

判らない・・・どうするのか・・・判らなかった・・・

「さ・・・里見?」

そして恐怖・・・
自分が暴走しそうな恐怖・・・

壊したくない
穢したくない
傷つけたくない

そんな恐怖・・・

「須野ー、触りたいんだろ?」
「・・・いいの?」
「いいよ。オレも触るけど」
「やっぱり・・・無理・・・」

里見の手を掴んで立ち止まる・・・
自分が暴走してしまったらそこでこの幸せな時間も終了する
それならばなにもしない方がいい・・・

「あのさ・・・須野、オレの欲求は誰が満たすんだ?」
「・・・」
「お前満たしてくんねぇの?それはセックスになるからダメなのか?オレもそれは我慢するべきっつーこと?」

随分勝手なことを言っているのは里見にも判っていた。
セックスナシで付き合うことを了承したのは自分

男に欲情するなんて里見も予想外で、その欲情がこんなに早く訪れるとも思っていなかった

「里見に嫌われることするのが怖い」
「あー・・・もー・・・萎えた・・・めんどくせぇ」
「・・・」

その場に座り込む里見が自分の手から離れてホッとしたような寂しいような・・・

「断られるとか思ってなかった」
「え?」
「オレ、女の子誘って断られたことねぇもん・・・結構ダメージ」
「違・・・僕、触りたい!」
「あー?」
「・・・でも里見も触るって言う・・・」
「当たり前だろ!なんでオレだけ触らせてオレは触っちゃいけねぇんだよ」
「・・・傷つけるのが怖い」

あまりにも傷つけるとか怖いを繰り返す須野にイラつき胸ぐらを掴んで引き寄せる。怒った顔に須野が少し目を伏せて困った顔をした

「起こってもねぇことでいちいちグジグジすんな!ウジ虫!あー、なんでこいつなんかにときめいたんだオレ。バカみてぇ」
「・・・」
「もう誘わねぇ。こっち来んな。仕事する」
「・・・」

怒らせた
怒らせた
怒らせた
怒らせた

嫌われた・・・もう嫌われた・・・

だから付き合いたくて付き合いたくなかったのに・・・もうパソコンに向かっている里見の背中を目で追う・・・でも彼が振り返ることは決してなかった

本当の自分は勇気のない男
意気地のない男

あの頃から一ミリだって変わってない

変えたくて変わりたくて仕事に打ち込んだけれど上手くなったのは自分の偽り方だけ・・・
別人になりきることだけ・・・



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
関係が煮詰まらないのは仕様です
関連記事
スポンサーサイト



comment

コメントを送る。

URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する