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つれないキミと売れてる僕6 - 03/12 Thu

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
朝起きて挨拶しても返事はなかった・・・
ただ、コーヒーだけは淹れてあって返事のない彼にそっといってきますと呟いて部屋を出る。

ココ最近で一番足が重い・・・
体もだるい
振られたのだと思う・・・
付き合ってすぐに振られるなんてよくあることなのだろうか・・・
ドラマの主人公たちは振られても次の恋に顔をあげているが自分にはとても無理

ピリリリリ・・・

「はい」
『あっれー?幸せ絶好調の須野ちゃんの電話じゃねーの?』
「・・・うん」
『え!!!ちょ・・・待って!待ったーーー!須野、オレ、お前に用があったんだけど・・・っつかどうした?』
「どうもしないよ」
『えぇぇぇぇぇ!!!!須野じゃない!なにそのトーン!』
「・・・用って?」
『あー・・・うーん・・・えーっと・・・あ、明日直接行って話してもいいー?』
「・・・」

直接行く・・・というのは須野のマンションのことだろう。
しかし、彼はどう思うのだろう・・・葛西がいた方が落ち着くだろうか・・・
昔みたいに三人で過ごした方がいいのだろうか・・・

『須野?お前本当に大丈夫か?』
「・・・いいよ。明日・・・僕は遅いかもしれないけれど・・・里見はいるから」
『・・・あぁ・・・じゃあ明日・・・な』
「うん」

声に気力がない・・・
声はどう出すのか思いだせなくなっていた
それでも仕事はやりきらねばならない状態で・・・
自分の気持ちを全て切り換えていつものように作り物の須野 寛人になりきる

自分がどう立ちまわったのかも覚えがない・・・
これが終わったら立っていられるかも判らなかった




「ただいま・・・」

部屋に戻ってもやはり返事はない。ただパソコンのキーボードがカチャカチャと大きな音を立てていた・・・
大きな音を立てているときは少し苛立っている時
なかなか進まない時
別のところに怒りを感じている時

今回のは後者だろう

須野はジャケットを脱いで寝室に入る
ハンガーにジャケットを掛けていると寝室が開けられて突然影に襲われる

「!?」
「オレ、考えたんだけどっ!」
「うん・・・」
「やっぱりセックスがねぇのは付き合いじゃない」
「・・・うん」

須野は「だから無理」という言葉を身構える。
しかし降ってきたのは唇・・・

「!」
「・・・だから・・・」
「うん・・・」
「・・・あーーーー!もー!言えねぇ!バカ!なんでもオレに考えさせて言わせんな!バカっ!!!!!」

バンッ!!!!!


「・・・え・・・」

再び寝室のドアが開けられて乱暴に閉められる。
ひとり取り残された須野は呆然とするだけだった

またキスをされた

もうできないと思っていたキスをした・・・
唇に触れるとまだ濡れた唇が本当にキスをしたという余韻を残していてそれだけで須野は心が満たされる



寝室を出てリビングに戻るとビール片手にパソコンとにらめっこしている里見の姿を確認する
いい加減里見の部屋を作るべきだな・・・と思いながら引っ越ししようか考えているが、まだそれも伝えていないし聞いてもいない

引っ越し・・・しても本当に里見はついてきてくれるのか・・・

それが聞けない理由

「・・・」

須野はテーブルにそっとトマトスライスを並べた皿を置くとまたすぐにその場を去る
里見は置かれたトマトに一瞥すると手を止めて一枚つまんで口に運ぶ・・・

「須野・・・」
「ん?」
「ここ座っていい」
「・・・うん」

彼のテリトリーに入っていいのは須野だけ・・・
須野はそっと里見の隣に座るとまたカタカタ音を立てる彼をそっと横目で見る
まるで学生時代に戻ったようだった。
よくこう並んで里見の隣で台本を読んでいた・・・
それを思い出すと須野は一度立ちあがって台本とビールを片手に再び座る

心地よい時間・・・

まだここにいていいと認められたことが須野にとって一番幸せなこと


翌日の夕方インターホンが鳴る。
里見は嫌な予感がしたが仕方なく出ると・・・

「ひっかりちゅわぁぁぁぁんっ!」

嫌な予感は的中した・・・

「帰れ」
「えー!今日は須野と約束したのー!」
「・・・」
「須野は先に来て里見とメシ食ってろーっていうからー持ってきたのー!今日は中華!」

里見はまた葛西の持った來來の袋につられて解錠ボタンを押す
里見の好みを熟知した葛西と須野の戦略・・・

胃袋を掴め

は今でも有効のようだ



「で、お前は須野になんの用なんだ?」

中華まんを齧りながら里見が葛西に聞くが、葛西は「それは直接須野に言ってから・・・」とはぐらかす。

また嫌な予感がする。
とてつもなく嫌な予感がする・・・

「・・・バカなこと言うんじゃないだろうな」
「えー!オレがバカなこと言うわけないじゃーんっ」
「お前はいつもバカなことしか言わない」
「そーんなことないよぉぉぉー光ったら冷たいんだなぁー」

絶対バカなことを言う。
例えば・・・

例えば・・・


そう・・・

「獣の主役のオファーとかだったら殴る」
「・・・」

葛西は参りました・・・と頭を下げて「すまん」と謝った
謝ることではない。それが葛西の出した答えなのだろう・・・

「一応、オレ反対したんだよ?」
「・・・」
「でもー・・・周りがこれは須野しかいないって・・・」
「・・・」
「オレの中ではこの男は光なんだよなぁ・・・だからちょっと須野ちゃんでは物足りない・・・だから反対したんだけど・・・」

「っつーかお前が出ればまるーくおさまるっ!」という葛西の頭に空手チョップを落とした。


「・・・川越が須野か・・・うーん・・・」
「どっちかっていうと女の子のほーが須野ちゃんだよなぁ・・・」
「・・・」

葛西をチラリと見ると葛西はいつものように笑ってこちらを見ている。
能天気な顔で能天気なフリをしていつも肝心なところをついてくる・・・

「好き好き言うところとか須野がモデルだろ?」
「・・・」
「で、この美青年がお前・・・やーんっ!やっぱり光は須野のこと大好きなんじゃーんっ!!!!」
「なっ・・・」
「ん?違うの?」
「・・・」

改めて言われると困る。
違うかと聞かれたら違わない
この登場人物は本当に自分と須野がモデル・・・
ひねくれた男はまさに自分
まっすぐ好きだという女は須野・・・


それに恋愛要素が加わっているからといって別に好きかなどは関係ない。

本当に?
本当に
本当に?

判らない


「ね、光、ここのエビシュウマイもおいしくなったんだよ」
「・・・おう」

里見が深く悩んでしまう前に葛西が袋からエビシュウマイを出す
葛西は見た目よりもちゃんと周りを見ている
須野とは違う里見への愛・・・

「オレさー、光は自分で思っているよりも須野のこと好きだって言ったじゃん?」
「あぁ?」
「光の小説全部読んでるからなぁ・・・オレ。昔っから読んでるもん」
「・・・いや、オレの話ん中、お前モデルのやつだっていたぞ?」

身近な人物をモデルにした方が中で勝手に動いてくれるから・・・そう言って里見はエビシュウマイを口に頬張る「お、うまい」そう称賛すると葛西は「だろー!」と喜んだ

「オレモデルにしたやつなんて失恋しまくる男の話だろ?ひっでぇよなぁ・・・恋をして立ちあがってまた恋をして・・・あ、オレだ!まさにオレだ!!!」
「だろ」
「えーでもその話にお前ら登場しねぇじゃん」
「・・・してただろ」
「どこに!あの話は飼い犬と野良猫・・・お前らか・・・」

その話は恋をするたびに飼い犬と庭に遊びに来る野良猫に淡々とその相手のことを話す物語・・・
文句も言わずにただ聞いてくれる犬と猫・・・
彼らは主人公を言葉で励ますわけではないが、主人公は勝手に励まされ立ちあがって玉砕して・・・
それをずっと繰り返す物語・・・

そんな主人公も最後にはハッピーエンドで綴られている


「おかげさまで本当にハッピーエンドを迎えました・・・」
「だろ?オレのおかげ」
「えぇーーー未来見えてたのー?!じゃあ教えろよー!」

頬を膨らませながらビールを煽る葛西に「あれは、お前にも幸せになって欲しいっつー願望」と呟いてハッとする・・・
思わず口が滑った・・・

「光・・・ひっかりちゃーーーーんっ!!!!好きー好き好きー!!」
「やめろ。ビールこぼすって」
「・・・ただい・・・ま・・・」

葛西が里見を抱きしめて頬にキスをしようとしているときにタイミングが悪い家主が帰宅する・・・

「お、おかえりー・・・あー・・・須野ちゃん?」
「うん?」
「ご、誤解すんなよ?」
「いい加減離せ」

里見を抱きしめたまま固まっていることにやっと気付いた葛西は両手を上げて大げさに離れる

「ちょっと上着掛けてくる」
「・・・」

いつものように微笑んで寝室へ向かう須野。いつものようにしているのに何故かとても冷たい・・・
葛西は言いようのない恐怖に襲われる

「・・・光さん、光さん・・・須野さんたらすごーくすごーく怒ってましたよね?」
「あぁ?」
「・・・怖・・・今、怖かった・・・」

半泣きになる葛西の横でタバコを咥えた里見

「あいつはお前に怒ってねぇよ・・・あれは嫉妬に狂う自分が恥ずかしくて怒ってんだけだ」
「・・・」
「何?」
「いや、そんなことまで判るの?」
「あいつの嫉妬は向ける相手間違ってんだよ・・・なぁ?須野・・・そうだろ?」

なかなか寝室から出て来ない須野に声をあげてそう言う
彼のことなら全部知っていた・・・
けれど、彼の方も自分のことをよく判ってくれていることを知る

「・・・」
「そんな嫉妬するくせに、オレに嫌われるから・・・とかセックスは嫌なんだってよ」
「ちょ・・・」
「待て、待て待てー・・・光はそこ、考え改めたんだ?」
「オレ、結構チャレンジャーだろ?」
「えぇ。そこはオレも充分知って・・・って須野は知らないから余計に戸惑うんじゃん!」

また自分の知らない話をしていて須野はその場で困る。
そっと冷蔵庫からビールを出してダイニングテーブルに着く・・・

「またお前は距離をとる・・・」
「え・・・?」
「いいから!」
「・・・」
「オレのこと好きならいつも隣にいていい」

葛西は足蹴にされてころんっとソファから下ろされ、そこに須野を呼ぶ・・・
そんな扱いを受けても葛西は怒ることなく笑いながら「オレに対する扱いひっでぇー」と言う
怒るわけがない
昔から望んだこの二人の甘い時間が見られるのだから儲けものだ


「・・・で、葛西。話せよ」
「ん?」
「だからお前須野に頼みごとあんだろ?」
「あ!」

すっかり今日、訪問した理由を忘れていた葛西だった



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な・・・なんかランキングに驚いた・・・意外と読まれてる!とドキドキドキしてます
ポチとか拍手とか本当にありがとうございます
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