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つれないキミと売れてる僕12-12 - 09/29 Sat

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
ハルが里見の部屋から去って行ったのは須野が里見の部屋を訪れてから1時間が経った頃だった

「あー面倒くせぇー」
「お疲れ様」

そういえばずっといたのだと須野の存在を思い出したように顔を上げる
里見の邪魔にならないようにと須野はたまにそこに存在していることを忘れさせる程存在感を消してしまう。決して小さい体じゃないのに隠れているわけでもないのに

「里見」
「あー?」
「里見がケガしたのにすぐに帰れなくてごめんね。痛い?」
「いや。もう痛くない」
「そう・・・」

里見へ寄って床に膝を着く

「ただいま。愛しい人」
「お前・・・恥ずかしいやつだな」
「恥ずかしい?何が?」
「全部」

須野は判らないといった顔で首を小さく傾げるとそっと里見の指にキスをする。まるで王に忠誠を誓う騎士のように、もしくは姫に求愛する王子のように

「・・・会いたかった」
「んー」
「大好き。愛してるよ。光」

里見はくしゃりと須野の髪を撫でるとニヤリと笑みを浮かべる

「甘えた声出しやがって耐えきれねぇのか?待てねぇのか」
「え?」
「お前がオレの名前呼ぶときはヤりてぇときだろ?」
「違っ・・・」

想像の里見よりも意地悪な声。でも、須野が大好きな里見の声、言葉。でも、違う。欲望はさっきバスルームで処理して来た。今日はただ愛しい、愛してる。大好きだと言えればそれで満足。名前で呼んだのだってさっきハルが里見の名前を呼んでいたから。仕事相手なのに何度も里見を名前で呼んだから小さな嫉妬。そして、対抗心

「ほら。キスしてやるからこっち座れ」
「ぁ・・・」

里見からのキスは須野への愛情表現
うっとりとした顔で里見の隣へ座ると里見の美しい顔が近付いてくる
キスしたい。キスして欲しい。早く。早く・・・

カチャ

無機質な音。慣れない里見のメガネが顔に当たった音に驚いて顔を離す

「メガネ・・・外そう?」
「大丈夫だ」
「里見」

里見のガラス越しじゃない瞳が見たいのに。傷も全て見たいのに里見はメガネを外そうとしない

「里見、メガネ」
「うるせぇ!!!!クソっ!萎えた!部屋帰れ」
「ぇ・・・ヤダ。ごめんっ!里見!ごめんなさいっ!」
「触んな!!!」
「里見っ!里見っ!ねぇ!こっち見て!里見っ!」

ソファから立ち上がった里見を慌てて追いかけるけれど寝室のドアを強く目の前で閉められて須野はその場に蹲る

「里見、ごめん。ごめん・・・そんなに嫌だったの?ごめん・・・そんなに・・・」

唇を噛む
元カノからもらったメガネをそんなに外したくないのかとは問えなくて。里見が余計に怒るのは判っているから。信じられないのかと怒るのはもう判っているから

信じている。恭子とはそんな関係じゃないのも何もないのも判っている。ただメガネを外したくないのだと判るのにでも、それでも気になって仕方ない。気にしないではいられない

「里見・・・」
「帰れ」
「僕っ・・・」

こっちに居られるのはもうあと1日しかない。その1日だってほとんどが仕事だし、この部屋に居られるのは夜寝るときくらい。明後日の早朝にはもう起たなくてはならないのだから

でも、それは須野の都合。里見の都合ではない

「お願いしますっ!一緒にっ!一緒に居られるだけでいいっ!お願いしますっ!同じ部屋に居られるだけでもイイからっ!静かにするからっ!」

寝室の前で誰も見ていないのに土下座をする。会いたい。好きで好きで堪らない里見の傍にいたい。ただそれだけ。だから傍に居られるのならば恥も何もない

「・・・お願いしますっ・・・お願いっ・・・里見っ・・・里見ぃっ」

カタン・・・

ドアが開く音がして慌てて顔を上げる

「・・・お前一晩そこで土下座してそうだから許してやる」
「っ・・・ありがとう。ごめん。ごめんね?」

謝られる理由なんてホントはどこにもなかった。須野が悪いわけじゃない。自分が見せたくないだけ。完璧ではなくなった里見 光をこの自分を完璧だと称える須野に見せたくないだけ

「里見、着替えたの?」
「寝る」
「あ、うん。そっか。そっ・・・か」
「期待しすぎだろ。最近寝てねぇのにあのバカが無茶な仕事入れてきたから疲れた」
「や!うん!だよね!仕事忙しそうだもんね!期待とかそうじゃなくって・・・一緒に寝ちゃ・・・ダメ?もちろん何もしない!あ、ごめん。ウソ。手とかは繋ぎたい・・・でも、ダメなら・・・僕、一緒にいるだけでも・・・」

隠しているから隠せているからまだ完璧だと思っているのだろうか。いつもと変わらない須野。必死に縋り付いてくる。もう完璧じゃないのに

これがなくなる?須野の興味が他へ移る?考えただけで言いようのない不安が里見にのし掛かる

今まで付き合ってきた女性が他に心移りするのは何度も見てきた。でも何も惜しくなかった。何も感じなかったのに須野に対してのこの感情が判らない。どうして須野が離れていくのがこんなにも怖いのか

「寝るだけだからな」
「うん!」
「お前風呂は?」
「さっきシャワー浴びたけどダメ?」
「シャツ、シワになんぞ」
「脱いでもいい?」
「勝手にしろ。ヤらねぇけど」

須野はベルトを外し、シャツを脱ぐと里見のベッドへ静かに登る

「里見、寝るときも外さないの?」
「今日は外さない」
「・・・危なくない?」
「危ねぇよ」
「じゃあ、じゃあ・・・里見の背中に頭つけるから。見ないから、外して?メガネ、危ないから里見の顔見られないの我慢するから」

悲しそうな顔をする須野に胸が苦しくなる。この苦しみが一体何なのか判らないけれどメガネに手を伸ばし、震える手で外そうとする

須野の望みを叶えてやりたい。でもできない。外せない。見せたくない

「・・・クソ。できねぇ」
「里見」

見られるのが怖い。幻滅されるのが怖い。キズを見せるのが怖い。こんな簡単なこと。そう皆には思われるだろうけれど里見には簡単じゃないことだった

そんな震える里見の手の上からそっと手を重ねると微笑んだ須野がギュッと里見を抱きしめる

「ありがとう。取ろうとしてくれただけで僕嬉しい。僕のこと考えてくれたんだね?ありがとう。だから、我慢して里見の背中見て大人しく寝るよ。里見はいつも早起きだし、僕が寝てる間に起きるでしょ?だから、僕はそのメガネ外した姿、見ないから」

須野の優しさに里見は昂ぶった神経を抑えられる

「里見、愛してる」

須野の言葉に里見は須野の唇にそっとキスを落とした







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遅くなってごめんなさいー!リアルタイム更新でございます・・・うっかり寝落ちして慌てて起きて更新作業w

なんていうかなんていうかー・・・相変わらずの須野がやっと現れましたー!ふひひ。やっぱり須野ってこうじゃないとー・・・

ハルのことを覚えてくださってる方が思ったよりも多くて更にここで再登場していることを喜んでもらえてホント嬉しいです。苦しんだ記憶が強いビタースウィート。でもあの頃からお話の長さが変わってきた気がします・・・
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