1回の表4 - 08/13 Thu
安曇の言葉が頭の中で何度も繰り返し響く。聞き間違い。幻聴・・・でも、目の前の安曇の目は真剣でピザを掴む手も止まっていた
「ごめん。言わないように言わないように頑張ってたんだけど・・・」
「・・・無理・・・だ」
「でもっ!」
安曇がテーブルに身を乗り出して泉側へと少し侵入する
これ以上踏み込ませてはいけない
泉は椅子を引いて席を立ち、逃げるようにキッチンへと移動して冷蔵庫からさっき入れた飲み物を手にする
「ずっと、ずっと穂波ちゃんに泉優しかった・・・でも、泉って元々すっげぇ優しいじゃん・・・でも、オレにだけわざと冷たくて・・・でも、今日遊んでオレにも優しくしてくれてっ・・・笑ってくれて・・・楽しいって言ってくれて」
「安曇っ!」
「あいつらだって上手くやってる!友達関係だってそれ以上になっても残るよっ!オレのこと、嫌いじゃないでしょ?オレに好きだって言わせないように泉はずっと冷たくしてたんでしょ?わざとでしょ?」
泉はペットボトルの蓋を締めて安曇を見つめる
怖い。今までこんなに怖いことなんてなかった。居心地のいい場所が壊れる。これを認めてしまったらもう後戻りなんてできない
「泉・・・が・・・どうしても無理っていうなら・・・黙って帰って・・・忘れるし、忘れてイイ・・・」
再び座った安曇の背中が震えているのを見て拳を握りしめる
なぜ・・・どうして
友達じゃいけなかったのか・・・
あの時友達としていることを選んだのは自分だけだったのか
「お前・・・だって」
そうだ。つい、つい一昨日まで安曇は東谷のことが好きだったはずで、自分のことを好きだというのはただ、辛い気持ちを転嫁しているのだろう
「東谷のこと好きだっただろう」
「あぁ・・・それ・・・か・・・」
背中の震えが止まって宙を見る
「だって、泉は穂波ちゃんにマジっぽかったから・・・オレ、辛いじゃん。泉の傍にいるには誰か好きな人作らないと相談って名目もなかなか使えないじゃん・・・」
「そんなの・・・」
「なんで一弥だったと思う?」
なんで・・・そんなの知るわけがない
「一弥って、泉にちょっと似てる」
「似てねぇだろ。全然」
「まぁ、顔とか似てないし、性格も全然違うけどさぁ。身長も体型も同じくらい。一弥に抱きつくと泉に抱きつくのと同じだろうなぁっていっつも勝手に思ってた」
泉はペットボトルを机に置く。トンっと音がしてビクリと安曇の体は震えた
「もし、もし・・・」
「泉、始まってもないうちからもしもの話止めようよ。でも、オレのこと好きだと思う気持ちがやっぱりあるなら始めてみようよ」
こちらを見た安曇の顔はいつもの笑顔じゃなくて胸が痛くなる
美人で強いピッチャー。穂波がピッチャーマウンドに立った時凛々しいと心震えたように、毎回安曇のボールを受けるときに心震えるのは同じ。あまりにも美しくて、自分の手で汚すには高潔すぎて
「泉、オレのこと好きじゃない?」
「・・・」
「オレ、泉のこと好き」
「っ・・・」
「あの時よりすごいこと、もっと先に・・・進みたいのはオレだけ?」
あの時・・・中学2年の時に触れたお互いの体。触れるだけ触れて、無我夢中で扱き合ったあの日。たった1度の行為
それでも、やっぱり鮮明に覚えているし、繰り返し思い出されるあの光景。いや、思い出されるのはあの頃の幼い安曇の姿じゃなくて今の成長し、一層美しくなった安曇の姿
「オレは・・・」
「一弥と穂波ちゃん見ててもすごい仲イイじゃん・・・付き合ってても親友に見えるじゃん」
「・・・同じにはなれない」
「じゃあ、帰って・・・」
安曇が立ち上がって泉のグローブを掴むと顔を伏せたまま泉の胸へそれを押し付ける
泉も同じ気持ちだと思ってた
でも、それは勝手だったのかもしれない。戻りたい。好きだと行ってしまう前に戻りたい。泉も笑って、自分も笑っていたあの時間に
「・・・」
泉の胸に押し付けたグローブごと抱きしめられ、顔を恐る恐る上げる
顔が近い・・・恋い焦がれた精悍な顔がすぐ近くにあった
「・・・またもしもの話するけど、もし、ダメになったら・・・?」
「友情は壊れないっ・・・」
「お前に好きな人ができても?オレに好きな人できても?」
「大丈夫っ・・・だって、穂波ちゃんのこと好きな泉の隣にいたんだよ?オレ」
震える声でそう言うと唇を差し出す
恐る恐るそこへ押し付けられる唇。ずっと欲しかった泉の・・・
「ふっ・・・」
「大丈夫か?」
「も・・・ムリ・・・興奮しすぎて頭くらくらする」
泉は少しだけ笑ってグローブをソファへと投げる
「安曇・・・」
「うん?」
「ホントはずっとキスしてみたかった」
泉の言葉が胸を熱くして心がその熱で溶けてしまうような気がした

にほんブログ村

「ごめん。言わないように言わないように頑張ってたんだけど・・・」
「・・・無理・・・だ」
「でもっ!」
安曇がテーブルに身を乗り出して泉側へと少し侵入する
これ以上踏み込ませてはいけない
泉は椅子を引いて席を立ち、逃げるようにキッチンへと移動して冷蔵庫からさっき入れた飲み物を手にする
「ずっと、ずっと穂波ちゃんに泉優しかった・・・でも、泉って元々すっげぇ優しいじゃん・・・でも、オレにだけわざと冷たくて・・・でも、今日遊んでオレにも優しくしてくれてっ・・・笑ってくれて・・・楽しいって言ってくれて」
「安曇っ!」
「あいつらだって上手くやってる!友達関係だってそれ以上になっても残るよっ!オレのこと、嫌いじゃないでしょ?オレに好きだって言わせないように泉はずっと冷たくしてたんでしょ?わざとでしょ?」
泉はペットボトルの蓋を締めて安曇を見つめる
怖い。今までこんなに怖いことなんてなかった。居心地のいい場所が壊れる。これを認めてしまったらもう後戻りなんてできない
「泉・・・が・・・どうしても無理っていうなら・・・黙って帰って・・・忘れるし、忘れてイイ・・・」
再び座った安曇の背中が震えているのを見て拳を握りしめる
なぜ・・・どうして
友達じゃいけなかったのか・・・
あの時友達としていることを選んだのは自分だけだったのか
「お前・・・だって」
そうだ。つい、つい一昨日まで安曇は東谷のことが好きだったはずで、自分のことを好きだというのはただ、辛い気持ちを転嫁しているのだろう
「東谷のこと好きだっただろう」
「あぁ・・・それ・・・か・・・」
背中の震えが止まって宙を見る
「だって、泉は穂波ちゃんにマジっぽかったから・・・オレ、辛いじゃん。泉の傍にいるには誰か好きな人作らないと相談って名目もなかなか使えないじゃん・・・」
「そんなの・・・」
「なんで一弥だったと思う?」
なんで・・・そんなの知るわけがない
「一弥って、泉にちょっと似てる」
「似てねぇだろ。全然」
「まぁ、顔とか似てないし、性格も全然違うけどさぁ。身長も体型も同じくらい。一弥に抱きつくと泉に抱きつくのと同じだろうなぁっていっつも勝手に思ってた」
泉はペットボトルを机に置く。トンっと音がしてビクリと安曇の体は震えた
「もし、もし・・・」
「泉、始まってもないうちからもしもの話止めようよ。でも、オレのこと好きだと思う気持ちがやっぱりあるなら始めてみようよ」
こちらを見た安曇の顔はいつもの笑顔じゃなくて胸が痛くなる
美人で強いピッチャー。穂波がピッチャーマウンドに立った時凛々しいと心震えたように、毎回安曇のボールを受けるときに心震えるのは同じ。あまりにも美しくて、自分の手で汚すには高潔すぎて
「泉、オレのこと好きじゃない?」
「・・・」
「オレ、泉のこと好き」
「っ・・・」
「あの時よりすごいこと、もっと先に・・・進みたいのはオレだけ?」
あの時・・・中学2年の時に触れたお互いの体。触れるだけ触れて、無我夢中で扱き合ったあの日。たった1度の行為
それでも、やっぱり鮮明に覚えているし、繰り返し思い出されるあの光景。いや、思い出されるのはあの頃の幼い安曇の姿じゃなくて今の成長し、一層美しくなった安曇の姿
「オレは・・・」
「一弥と穂波ちゃん見ててもすごい仲イイじゃん・・・付き合ってても親友に見えるじゃん」
「・・・同じにはなれない」
「じゃあ、帰って・・・」
安曇が立ち上がって泉のグローブを掴むと顔を伏せたまま泉の胸へそれを押し付ける
泉も同じ気持ちだと思ってた
でも、それは勝手だったのかもしれない。戻りたい。好きだと行ってしまう前に戻りたい。泉も笑って、自分も笑っていたあの時間に
「・・・」
泉の胸に押し付けたグローブごと抱きしめられ、顔を恐る恐る上げる
顔が近い・・・恋い焦がれた精悍な顔がすぐ近くにあった
「・・・またもしもの話するけど、もし、ダメになったら・・・?」
「友情は壊れないっ・・・」
「お前に好きな人ができても?オレに好きな人できても?」
「大丈夫っ・・・だって、穂波ちゃんのこと好きな泉の隣にいたんだよ?オレ」
震える声でそう言うと唇を差し出す
恐る恐るそこへ押し付けられる唇。ずっと欲しかった泉の・・・
「ふっ・・・」
「大丈夫か?」
「も・・・ムリ・・・興奮しすぎて頭くらくらする」
泉は少しだけ笑ってグローブをソファへと投げる
「安曇・・・」
「うん?」
「ホントはずっとキスしてみたかった」
泉の言葉が胸を熱くして心がその熱で溶けてしまうような気がした

にほんブログ村

comment
コメントを送る。