FC2ブログ

つれないキミと売れてる僕5-9 - 08/25 Tue

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
伊月が帰るとしばらく携帯で文字を打ち込んだあと、ふと思い出したように電話をする

しかし、鳴るのは電子音だけ。時間が自由になる自分とは違って時間に縛られている須野を思い出す

「・・・電話するなっつったな・・・そういえば」

携帯を机に投げると里見はソファに寝転がって天井を見上げる
右手の簡易ギブスを外すと少し細くなった手を握るが痛みが走ってすぐに右手を抱きしめる

「痛ぇ・・・」

あの日、須野に電話するなと言ってから何日経ったか・・・着信を遡るとほんの数日のこと。でも、毎日何度も電話をしてきた須野からの電話がないだけでずっと長い間声を聞いてもないようで少しだけ苦しい

次はいつ帰ってくるのかも知らない。もっと大怪我でもしたら帰ってくるのだろうか・・・消えかけたキスマークが寂しいだなんて口が裂けても言えないけれど、今なら好きだとちゃんと言ってやってもいい・・・そう思ってもう一度電話を掛けた

電話に出ない須野から折り返しの電話もないまま日付が変わった。掛けるなという言いつけを守っているのだろうが、それならメールでも送ってくればいいのに、それさえもなく、里見はシャワーを浴びて部屋へ戻る

チカチカと点滅する携帯を手に取ると須野からのメール

『仕事、終わった。会いたい。会いに行っていい?』

そんな内容に里見は少しだけ笑って『ダメ』と返信した

『声。聞きたい。限界です』

とすぐに返ってくるメールに少しだけ迷って電話をする

『もしもしっ!』
「・・・早っ」

ワンコールで電話に出た須野に驚きの声を上げると須野は切羽詰まったような声を上げる

『会いたいっ』
「第一声がそれかよ」
『今まで毎日電話して耐えてたのに、里見不足でもう仕事できない』
「んー」
『里見、会いたい。一瞬だけでも帰っていい?車ですぐだから』
「ダメだ」
『無理。会いたい。ちょっとだけ。ちょっとだけ・・・里見、も、ムリ』

須野の声はいつもよりも上ずっていて色気さえ伴っている

「そんな危ないことしたら玄関も繋がってるドアも全部閉めて会わない」
『っ・・・里見はっ・・・会いたくない?僕にっ・・・声も聞きたくない?!なんで電話するなとかっ』

あー、泣かせた・・・そう思いながら里見はため息を吐く。別に声が聞きたくないとか会いたくないとかじゃないのに離れているだけで全然伝わらなくて・・・女性を口説く術はあるのに、こんなとき甘い言葉で相手を安心させる術は里見は持っていない。不器用・・・感情を表に出すことに慣れていない。いや、今まで感情を表に出さなくてはならない場面に出逢ったこともなかったのだ

『そこに誰かいるんじゃないかって・・・ずっと不安でっ・・・電話しちゃいけないのも里見がっ・・・誰かといるからじゃないかって』
「女々しい」
『っ・・・里見、ムリ。帰る。ムリ・・・』
「そんなん言うならオレが行ってやるから・・・お前は帰って来んな」
『・・・え?』
「あ?」
『里見が・・・なんで?来てくれるの?』

この男は本当に自信がない・・・そう思いながら苦手な言葉を紡ぐ

「オレも会いたいからじゃね?」

電話の向こうで息を飲むのが伝わる。きっと涙さえも止まったのだろう。顔を赤くして口元に「信じられない」と手を持っていき震えているのだろう

「パソコン片手じゃ浮かんだのが逃げんだよ。だから携帯で仕事してただけ」
『・・・ごめん・・・なさい』
「おう」
『あ、うん。分かったから来なくても大丈夫』
「おい、会いたいんじゃねぇのか?」
『里見のその言葉聞いたらなんか、それだけで元気出てきた』

須野の嫉妬心なんていつの間にか解けてその代わりに温かい、いや、熱いものが胸に広がる
好きな人に会いたいと言われただけでこんなにも気持ちが昂ぶる。熱くなる・・・会いたい。でも、我慢できる
里見が一生懸命に紡いだ言葉は須野の心にちゃんと届いて温かく溶ける



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

出た!ツンデレ!・・・あれ?合ってる?これ、ツンデレ合ってる?!

今更だけど、曲がり角でぶつかって吹っ飛んで壁に激突して指とか手首とか折るってどんな状態でぶつかったんだろうか・・・自分で書いておいてふと思った
関連記事
スポンサーサイト



comment

コメントを送る。

URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する