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青春はプールの中で3-10 - 09/10 Thu

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で
「1年?」
「・・・え?」

召集場所で軽く体を伸ばしたり腕を回していたら声を掛けられて振り返る

「1500に無理矢理出されちゃった系?出る人少ないもんな。可哀想にー・・・でも決勝残ったってすごいじゃん」
「・・・」

体の大きさから1年に間違われることはよくあることで。柚木はそんなこと気にはしていないが、無理矢理出されちゃったと言われたことにはカチンときていた

「何コース?」
「・・・2コース」
「・・・?・・・あれ?2・・・?」

話し掛けてきた強豪校のジャージを着た彼は首を傾げる
確か、2コースは他の部員がチェックしていた・・・彼の兄・・・

「・・・もしかして3年?」
「3年。柚木 流・・・だけど?別に無理矢理出されたわけじゃないし、インターハイも狙ってる」
「3年?!うっわー!柚木ってあれだろ?!秀の兄だろ?うっわーマジか!全然違ぇしー!秀の兄だから超でかいのかと思ったら小さいー!」

もう聞きなれた。言われ慣れている

秀に身長を抜かれたのは小学生のころだったし、同じ食事をして、同じように生活していたのに全然伸びない身長と増えない体重

柚木という名前を聞きつけ、柚木の周りに人が集まり視線を感じる。柚木の嫌いな空気。不躾にじろじろと見られ、ひそひそと言われる

「でも、1500出てなかっただろ?聞いたことないし」
「・・・公式試合ではな」

去年の市立大会で出たきり。市立大会で感じたあの興奮・・・それを思い出せば今のこの嫌な気持ちなんて吹き飛んでしまう

「公立高校だからって甘くみんなよ・・・オレ、それなりに早いから。1500なら秀にも球にだって勝てる」

そう言った柚木の顔を見て周りが小馬鹿にしたような顔でこそこそと笑う。でも気にしない。今のうちに油断して、覚悟しておけばいいのだ



笛の音

掛け声

応援の声

ピストルの音

全てが柚木の力になって柚木は飛び込み、泳ぐ


「2コース飛ばしすぎじゃない?」
「あの人予選でもあんな感じだった・・・ってあれ、柚木兄だ」
「え?柚木兄って大学生だろ?」
「違う!真ん中!もうひとりいるんだよ。2番目の兄」
「でも小さくない?」
「小さい!」
「っていうか3年って・・・」
「っつか柚木弟もあんな兄じゃそりゃーあんまり言わないよなー」


「うっさいなぁ。柚木先輩の悪口とか言わないで欲しいよね」
「栗山、今はレースに集中してろ」

柿内にも耳に入る声。柚木だってきっと耐えた声。だから柿内も耐える。本当は言いたかった。確かに体は小さいけれど中に秘めるパワーも気持ちも誰にも負けない
弟と比べるのは勝手だが、その弟だって柚木のことが大好きだし、尊敬しているのだと

「・・・すげぇ・・・飛ばしてる・・・」
「栗山、あの人、まだまだ飛ばすからよく見ておけよ」

市立高校大会の時のようにはいかない。みんなやっぱり早くて、トップ集団にくらいついてはいるが、後半、柚木と同様に周りもスピードを上げてくるだろう
ただ柿内は柚木を信じ、レースを見守る。勝って欲しい。柚木の手にインターハイ切符を握らせてほしかった
応援し、気持ちを送るしかできないことが歯痒い。もっと、もっと柚木の力になりたい・・・でも・・・水中ではひとり・・・




「柚木先輩ぃぃぃぃぃ!!!お疲れ様でしたぁぁぁぁぁぁカッコよかったですーーーー」

栗山がレースを終えた柚木を抱きしめる。優しく笑った柚木は栗山の背中を叩くとすぐにその場を離れる
それをそっと距離を保ったまま柿内は追いかけた

どこへ向かっているのかはすぐに判った。またさっきと同じ人気のない会場の隅・・・

「柿内・・・」
「はい」
「泣きたい」
「うん」

振り返りもせず柚木はそう言うと壁に頭を付ける

「くっそ・・・くそ・・・くそぉ・・・」

多分、それが柚木の正直な気持ち。真剣にレースをした。当然、敗北者は出るもので、柚木はそのレースに敗れた者・・・試合は最後、接戦だった。上位5人が標準タイムを切るというハイレベルなレース。柚木は4位に終わった

最後のインターハイ予選・・・

4位・・・

柚木にとっては公式試合での最高順位。だが、そこから先に進めない順位・・・
標準タイムを切っているのに進めない
柿内とはまた違う結果

「切ったのに・・・オレ、標準タイム切ったのに・・・」
「うん」

そっと壁につけた頭を外して自分の胸へと押し付けると顔を伏せたままの柚木の背中をそっと抱きしめた





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召集所で3年なのに1年?と聞かれるのは過去の水尾だっつーのっ!!!!!

今だったら「若く見えてお得ー♪」とかだけれど当時はどーせ・・・どーせチビだぜよ・・・と凹み、訂正するのが恥ずかしかった思い出。どうでもよくてすんません
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