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つれないキミと売れてる僕1 - 03/07 Sat

trackback (-) | comment (0) | つれないキミと売れてる僕
実力派若手俳優 須野 寛人はロケ先のホテルで悩んでいた。

学生時代からの親友で片想いの相手 里見 光と連絡がとれなくなったのだ。

すぐに駆けつけたい。しかし、それは叶わない距離・・・
須野はヤキモキしながら残りの日程を乗り切り、終わるとすぐに里見の元へ駆けつける

ピンポーン


里見のマンションのインターホンを何度押しても返事はない。
不在かと思いつつも嫌な予感が須野の中で広がり、貰ってはいたが使ったことのない合鍵でドアを開ける

真っ暗な部屋・・・パソコンだけが彼を照らしていた・・・

「里見!」

あまりにも異様な雰囲気に須野は靴を脱いで駆け寄る・・・元々痩せている彼がもっ と痩せていて、元々小奇麗にしているその顔は不精髭にまみれていた

「里見?」

しかし、彼の反応はない

「里見!どうしたの?」

彼の眼には何も映ってはいなかった。ただ、宙を見つめている・・・そこには自分なんていないように・・・
須野は里見を座らせると部屋の電気をつける。
いつ来ても、忙しくてもきれいなままだった部屋は荒れている・・・そこら中に投げ捨てられたペットボトル・・・スナック菓子の袋・・・そして里見のいつものタバコ・・・

「・・・」

あの時と同じ・・・


里見が壊れたあの時と・・・


このままではいけないとどこかへ電話をかけると、よく知ったこの部屋のクローゼットから旅行用の大きなバッグを出して身の回りの物 を詰めて、貴重品と思われるもの、里見の目の前のパソコンも全て鞄につめる。

その間も里見は宙を見つめているだけ・・・

須野はそんな里見を見ているのが辛くて目を逸らしたい・・・いつも明るく自信にあふれた美しい里見

自分なんかよりよっぽど美しい彼・・・

こんな酷い状態は見ていられない

ピリリリ・・・・


「あ、山口さん。ごめん。面倒かけるけど・・・」
『一人でおろせるか?』
「無理・・・かも」
『じゃあそっち行く』

電話の相手は山口。彼は須野のマネージャー
周りに隠し続けているこの想いを知っている数少ない人間の一人

「里見、オレの家連れていくね・・・明日病院も行こうね・・・」

須野は里見に優 しく話しかけると大きな鞄を肩にかけて里見の腰に手をまわして一緒に立ち上がる・・・



景色が春から夏に変わって暑くなった頃、街には須野の映画のポスターがあちこちに貼られる。


主演 須野 寛人 今秋ロードショー


彼をムリヤリ部屋へ連れてきたのは冬の終わり・・・
春になったら戻るだろう・・・
そう信じていたが、彼はまだ自分から何か話してくれることはない

「ただいま」

須野がマンションに戻ると声はない。
ただ、朝出るときとは座っている場所も変わっているし、電気もつけてくれるようになった
それだけでも大きな成長

「里見、もうじきねー、ドラマ始まるよー」

何も反応はなくて も須野は重い焦がれた彼といることが嬉しくて部屋に戻るといつも話しかける

好きで好きで仕方ない

中学のとき、高校受験のために通った学習塾で出逢った彼

輝いていて乗り気ではなかった学習塾も楽しくなったあの時。志望校を彼と同じものにして大して得意ではなかった勉強を必死にし、なんとか二人とも合格した

そこからは何度も告白をし、何度も想いをぶつけた須野。その度に心が砕け散るような失恋。しかし、それでも相変わらず避けない里見と親友という地位を確立してから13年・・・

長い長い初恋は今でもずっと続いていた


「ドラマねー、里見の好きな小説が原作なんだよー」

里見のすっかり伸びた髪の毛を梳かしながら須野は続ける

「僕 、主演なの。びっくりでしょー?里見を驚かせたくて今まで内緒にしてたけどねー・・・」

里見の身の回りの世話をしているだけで幸せ
触れたくても触れられなかった彼に触れられる時間は須野にとって疲れもストレスも全て飛んでしまう程に幸せな瞬間・・・


「僕は里見の思う秋保になれるかなぁ」
「・・・」

ピクリと彼が反応したことに手を止める

「そう。太陽の沈む影がやるんだよ」
「・・・」

久しぶりに彼が振り返って目が合う

「・・・里見?」
「・・・秋保・・・修司?」

里見が言葉を発した。それが嬉しくて嬉しくて・・・
しかし、ここでこの話を途切れさせたらまた話してくれなくなるかもしれない

「そうだよ。秋保修司だよー」
「 ・・・そうか・・・楽しみだな・・・」

彼に楽しみができた
それは無気力な彼に希望が出たということ・・・

「ねぇ、里見、お腹は?お腹空いてない?」
「・・・空いて・・・る」
「!・・・じゃあ、じゃあ、軽くなんか作るね!」

秋以外の話でも反応することが判った須野はすぐに立ち上がりキッチンへ向かう

「・・・須野・・・」
「うん?」
「桜はどこへいったんだ?」

里見の中ではまだ春で、とっくに終わって緑の木の中で桜をベランダから探していた

「桜は・・・来年また一緒に見よう」
「・・・終わったのか・・・」
「また咲くよ。春が来たら」
「・・・毎年ここで花見してたのにな・・・」

ベランダから遠くを見廻す 里見
その目に映っているのはここから見える景色なのかそれとも過去の想い出なのか・・・



翌日、昨晩のことが夢だったのではないか不安になりながら目を覚ました須野はコーヒーの香りがリビングに漂っているのに気付き息を飲む。

「お、おはよう」
「・・・おう」
「コーヒー・・・僕の分もある?」
「勝手に飲め」

里見のそのぶっきらぼうな言い方・・・須野は懐かしささえも感じてしまう
あぁ、彼はそう。いつだって言葉悪くて乱暴で・・・そしてとても優しい

「・・・ねぇ、里見、なんか必要なものとかある?」
「別に・・・」
「とりあえずマンションはそのままにしてあるけど持ってくるものあれば・・・」
「・・・勿体 ねぇ」
「あ、家賃は僕が振り込んでおいたから・・・」
「・・・必要なもんなんてなにもねぇ」

里見がコーヒー片手にタバコをつけるとふわり、里見のメンソールのタバコの香りがコーヒーに交じって漂ってくる

「・・・葛西がね・・・連絡ほしいって何度も電話してきてたよ」
「・・・あぁ」
「連絡・・・してやってくれる?」
「そのうちまた掛けてくるだろう」

葛西 慎吾 彼もまた親友
同じ高校で過ごし、里見とは大学まで同じだった。忙しくしていた須野よりも里見といた時間が長いかもしれない

「葛西さー・・・今、映画監督やってるんだって」
「あー、昔から撮るの好きだったからな」
「・・・あと・・・出版社の人からも 電話きてたよ?」
「・・・それは・・・電話しとく」

里見は二束のわらじでサラリーマンをしつつ小説家として活動もしていた
あの暗い部屋の中でもパソコンを開いていたのは小説を書くことだけはしていたから・・・

「今日は早いから・・・夕飯一緒に食べられそうだけど・・・何かリクエストある?」
「・・・ない」
「そっか・・・じゃあ、行ってくるけど・・・何か必要なもの思いついたら連絡して?」
「あぁ・・・」

里見と話ができたことがただただ嬉しくて、好きだとまた伝えたかった
好きだ・・・大好きだ・・・

帰ってきたら伝えよう

好きだって

伝えよう




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