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つれないキミと売れてる僕7-5 - 12/20 Sun

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「・・・葛西は・・・?」

バスルームから出てきた里見は赤くこすられた肌を晒して吉田の前に姿を現す

「っ!」

いつもの雰囲気と違う里見に焦って吉田はトレーナーを里見の頭から被せた

「・・・何・・・」
「風邪引くからっ」
「葛西は?」
「や、なんかすぐ戻るって・・・あ、水・・・」
「ん」

里見は水を受け取るとそれを飲み干してジャケットから財布と携帯を取り出すとジャケットを吉田に投げる

「捨てといて」
「・・・判った」
「タバコ」

吉田はテーブルを指して里見はテーブルのそばに座ると火をつけようとする

「・・・」

手が震えてライターに火が点かない。見兼ねた吉田が火を差し出すと黙ってタバコに火を点けた

「大丈夫か?」
「大丈夫・・・に見えるか?」
「・・・」

大丈夫じゃないに決まっている。捲り上げた袖から擦りすぎて赤くなった手首を覗かせていて胸が痛くなる
完璧じゃないと里見 光は完成しないからな。そういつも自信満々だった里見がたまに頭を抱えて震えている。その事実が余計に中津への怒りを大きくしていった

「ただいまー。光、病院の手配できたから。あと、洋服持ってきた」
「ん・・・」

吉田の部屋に戻ってきた葛西から洋服を受け取るとその場でトレーナーを脱ぎ捨てる

「光・・・」
「あ?」
「擦りすぎ・・・赤くなってる」
「あー・・・だな」
「だな・・・って・・・」

里見はTシャツを着て「そのうちこれは治る」と呟く
肌に残った傷は大したことがない
下肢の裂傷も蹴られた腹も治る傷・・・でも、触れられた感触が消えない気がして、心を傷つけられたことは消えない気がして仕方がない

「えっと、歩ける?」
「歩ける」
「肩貸そうか?」
「ふざけんな」

冷たい里見の言葉に少しだけ安心するのはいつもの里見だから・・・でも、葛西の不安が消え去ることはない

「あー、吉田くん、行ってくるね?」
「あぁ・・・んじゃ・・・待ってる」

少し体を庇うようにして歩く里見の背中を見送って吉田は一人残された部屋で大きなため息を吐く
まさか自分がこんなことに巻き込まれるだなんて思ってなくて。他に頼れる友人がいないのかと頭を過ぎったが、元々里見は同性から羨まれ、妬まれることが多くて友人なんて大していないことを思い出してまたため息を吐く




「光、とりあえず折れてなかったし、傷もそんなに酷くないみたいで・・・」
「あとは病気の検査待ちかー」
「・・・」
「なぁ、もし、なんかの病気だったらオレはあいつになんて言えばいいわけ?」

里見の言葉に返す言葉が見つからない

「まぁ、今まで散々遊んできたから?オレがなんかの病気持っててもおかしくねぇけどさ・・・」
「でも、光もオレも何度か検査行ったし」
「あー?だな・・・まぁ、もし、病気貰ってたらあれだな。浮気したとでも言えばいいか」

車の窓の外を眺める里見に少しだけ視線を移して「大丈夫」と手を握る。すぐに「うぜぇ!」と振り払われて葛西は微笑む

「なんかー大丈夫だと思うんだもーん」
「・・・そう願ってる」
「再検査とかもあるし、その傷治るまで吉田くんのとこにいてくれる?嫌ならホテル取るよ」
「・・・ホテルはなんか今怖ぇからいいわ」
「うん」

ノリの効いた白いシーツを見たくない
思い出しそうなことすべて排除したい・・・

吉田の部屋に戻るとすぐに「疲れた」と呟いた里見は葛西にパソコンを持ってくるように伝えると布団へ倒れこむとすぐに眠りにつく

「・・・早っ!!!っつか当然のようにベッド寝やがって・・・」
「まぁ、疲れてるだろうし今日は許してやってよ」
「・・・なんか手馴れてるな。あんた」
「んー?あー、うん。光、すごい強く見えるけど弱いから・・・何度か今までも須野とオレで支えてきたけど・・・」
「弱い・・・」

普段、弱いところなんて見せない里見が弱いと言われて首を傾げる

「オレたちさー、家族いないからさー、オレなんかもう須野と光に超救われて家族だと思ってるし」
「・・・」
「ねぇ、吉田くん」
「あ?」
「手の掛かる男だと思うけど、暫くここ、置いてやって。色々済んだら連れて帰るから」
「や、まぁいいけど」

最初からそのつもりだし、この部屋は元々彼女と住んでいた部屋で広さもある

「で、中津ってやつは野放しにすんのか?」
「オレもそんなに甘い人間じゃないからね・・・ただ、自滅するように仕向けるだけ」

そう笑った葛西を恐ろしく思ったけれど、家族と言い切った存在が傷つけられたのだから自分よりもずっと怒りを感じていてもおかしくはない

「あ、これ少ないけど取っといて?」
「はぁ?」

葛西がポケットからお札を数枚取り出して机に置く

「いや、光の洋服だとか持って来たくても掃除やら洗濯やら須野ちゃんが全部やってるからなかなか持ち出せなくてさ!光、もしかしたら部屋から出れないかもしれないし」
「・・・あの時みたいに引きこもりになるとかそういう・・・」
「あ、判らないよ?でも、なんかの瞬間にフラッシュバック来て外出られなくなるかもだから」

吉田は頷くが、そのお札は葛西の手に握らせる

「オレもあいつの友達だから」
「・・・」
「そりゃー!お前らより付き合いは浅いけど・・・あいつ傷つけたこともあるけど・・・でもやっぱり」
「うん。光と付き合えるってのは貴重な存在だよね!で、光のこと本気で好きになってくれる奴はいい奴!ありがとう!でも、なんかの時に使って!急に光がなんかやらかすかもだし」

葛西は手の中のお札を再び机に置くと立ち上がる

「じゃあまた来るねー」
「あぁ、またな」
「おやすみー」

葛西はニコニコ笑って手を振り部屋を出る。部屋のドアが閉まる音が耳に入った瞬間笑顔はなかったかのようになくなり、無表情で足早に車にむかったのだった







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葛西はいつものようににこやかにしていても実はすごくすごく怒り狂ってます
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