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スイーツよりも甘く甘く幸せに1 - 01/31 Sun

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ある街の人気洋菓子店。それが彼、水野 みのりの実家で職場・・・




「いらっしゃいませ」

たまに店内に顔を出して挨拶し、客のスイーツを食べて喜ぶ顔を見る。それがこの店の人気のひとつの理由だということはみのりも自覚していること
先代の時にはなかった繊細さと美しさを兼ね備えたショーケースの中のケーキは作るこの男の美しさによって更に輝きを増し、幸せを呼ぶスイーツとしても有名なこと

そう。みのりは今やっと幸せを掴んでいた・・・




「さすが海外で修行して賞を取っただけあるわねー」

そんな声に笑顔を向けて頭を下げるみのり

でも、修行はしたくてしたわけじゃない

小さいころからケーキ屋の息子。当然自分もケーキを作り、この店を継ぐのだと疑わなかった少年は専門学校へ通い、ケーキを作るための技術を磨いた
父もそんな未来を疑わず、息子を溺愛し、未来に夢を託していた。誤算があったとすれば・・・みのりの恋愛対象がいつだって同性だったこと・・・それを隠していたみのりも専門学校卒業間近で気が緩んだのか自宅での当時の恋人とのキスシーンを父に見られ、激怒され、家を追い出された。当然そこにあるはずだった実家の洋菓子店での就職が目の前からなくなり、それでもその道以外を考えたことのなかったみのりは家を飛び出し、無鉄砲ともいえる武者修行へと旅立ったのだ

それが約15年も昔の話
そしてそこから5年後、姉が結婚し、子供を産んだと聞いて姉の子どもを一目見たいと帰国し、初孫を見て丸くなったと思った父親に言われた言葉・・・

『それで、みのりの『病気』は治ったのか?あんときのあいつはほら、結婚して帰ってきて家継いでんだぞ』

その言葉でみのりはすぐにまた旅立つことになる
認めてほしいわけじゃなかった。けれど、病気だと否定され、自分の居場所はここにはないと痛感し、ただ自分の技術を磨くことだけに精を出した。がむしゃらにがむしゃらに・・・父親を見返したくて。自分の腕が欲しいと言われたくて・・・
父親が『病気』だと言う自分は父親の手の届かないところでこんなにも成功できるんだと証明したくて

そこからさらにその6年後、父が病気で先が長くないと母から連絡を受けてもなかなか帰国できなかったみのり。仕事が順調でなかなか帰れないのもあったが、何よりもみのりの心に突き刺さったまま抜けない父の言葉と冷たい目・・・それが怖くてやっと帰国できたのは父が亡くなる2日前・・・

『ホント頑固だよなぁお前・・・頑固なお前ならあの店潰さずに頑張ってくれるか・・・なぁ、みのり』

そう最後に父の口から聞いて涙した。絶対に潰さない。そう誓ってやっと和解したのにその後すぐに旅立った父・・・
色々と整理して、父の遺した店を改装し、再開した洋菓子店・・・海外で賞を取ったパティシエが小さな実家の洋菓子店を継いだと話題になって雑誌にも取り上げられ、今に至る・・・

客の幸せそうな笑顔を見ることが父の幸せだと。約束だと思うと幸せ・・・そして年上の甘やかしてくれる恋人もいて。たまに来る男性客に目の保養と癒しを得てみのりは毎日笑顔を振りまく








「みのりー!誕生日ケーキの予約入ってるけどそれってこれでいいのー?」
「あぁ、いいよ」

スタッフが数人。そして母と姉で回す小さな洋菓子店は今日も女性たちの甘いため息を誘う

カラン・・・

「いらっしゃいませ」

笑顔で顔を上げると常連のカップル
いつも元気な彼女と物静かな長身な彼氏。もう少し自分が若かったらこの彼を奪ってやりたい・・・と思っていたが、相手はお客。そんな邪な想いは表に出せるはずもない。ただ、たまに見て目の保養をするだけで充分だと思っていた

「ねぇ、しゅうちゃん!これ!これでしょ?」
「・・・」
「えーっと、これとこれとあとこれ!あとー・・・私どうしよう・・・」
「・・・すいません。このチョコのも追加で」
「えー!しゅうちゃん幾つ食べるのっ!」
「・・・」

少しだけ恥ずかしそうにする彼がまた可愛く見えてみのりは「いつもありがとうございます」と微笑んだ



常連のカップルが出て行くとみのりが「はぁーイイ男だよなぁ」と呟いたのをかなえは聞き逃さない

「何?みのりしゅうちゃんみたいなのが好み?」
「馴れ馴れしいなぁ姉貴は」
「えー?あきちゃんとしゅうちゃんでしょ」
「は?」

目を丸くしたみのりはかなえを見つめるがかなえは「あぁ、そうか」と呟いてみのりにニヤニヤと笑いかけた

「今度、駅前の洋食店行ってみなさいよ」
「・・・」

ニヤニヤと笑う姉にみのりはカップルじゃなくて夫婦だったのか・・・と思いながらため息を吐きながらも目の保養をしに自分から足を向けるのも悪くないな・・・と思い始めていた





「どうしたの?今日はなんだか機嫌がすごくよさそう」
「うん?」
「何・・・気になるなぁ」
「うん。今日は少しだけいいことが・・・あったかなぁー」
「なんだ?新しい彼氏でもできたかい?妬けるなぁ・・・」

みのりはグラスを傾けながら微笑む

「オレに彼氏できたら妬いてくれるんだ?」
「そりゃあ妬くよ?」
「オレにもまだそんな価値があるってことですねー・・・嬉しいな。でも、オレの彼氏・・・古井さんだけでもうお腹いっぱいなんですけど?」

みのりは妖艶な笑みを浮かべてバスローブを下ろす
恋だなんてもうめんどくさい。ただ、好みの男を見て目の保養をして少しだけ心を潤したいだけ。体は、体だけなら他で間に合わせられるから。ただ、淡い恋心・・・恋心と呼ぶには若すぎる甘い甘い懐かしくて甘酸っぱい感じ








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はい。単発SSでございますー(なんか久し振りな気がしないでもない)
少しの間お付き合いくださいませ

どうでもいい話ですが・・・


・・・今年の手帳をもう失くした水尾はどうしたらいいですかToT
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