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青春はプールの中で8-11 - 04/06 Wed

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で
「柿内が好きになった子は幸せ・・・だね・・・」

実家への電車でその言葉を何度も頭で繰り返す
幸せ・・・だとイイ。柚木は幸せだろうか・・・でも人に言われたからといって満足はできない。甘やかしたい。自分をもう離せない存在にしたい。恋人関係に終止符が訪れるとしても、親友でなんでも話せる相手としての終止符は欲しくないから

・・・もちろん恋人関係に終止符が訪れるのも阻止はしたいけれども・・・




「わー!柿内くん久し振りー!」
「ご無沙汰してます」
「元気そうー!中入って!」
「お邪魔します」

柚木の母、祥子に頭を下げると家へと招待される

「あ、流まだ仕事してるけど」
「あぁ、そうですか・・・あの、祥子さん、柚木さんから聞いてますか?オレも」

祥子は優しく笑って首を振る

「丁度今、人員も足りないしバイトは歓迎なんだけど無給は無理ねー」
「いや、これは」
「どうせ柿内くん、自分が稼いだ分も流の留年費用に充ててくれとかなんとかでしょう?それは甘やかしすぎー!それに流が少しバイトしたからって全然足りないし」
「だから、オレも・・・」

柿内の言いたいことが祥子に見透かされていたのには別に驚かない。今までだって祥子に見透かされているのだから・・・
けれど、柚木の役に立てるならば少しでも・・・それに、留年するからと大学を辞めさせられるのでは・・・というのが柿内の心配

「大丈夫!大学はそのまま行かせるから」
「・・・祥子さんには全部お見通し・・・っすね・・・じゃあせめて半分にしてください。んで、その半分で・・・しばらくこちらにお世話になりたいんですけど」
「うん?実家へは?」
「・・・大学進学、両親はイイ顔しなかったので合わせる顔があまりないというか・・・」

祥子は困ったように笑う。自分の家族の話をあまりしたがらない柿内に深くは聞かなかったが、なんとなくの雰囲気で両親との折り合いが悪いことは判っていた

「でも、お姉さん。柿内くんのコト待ってるんじゃないの?」
「あー・・・姉貴には連絡してありますけど・・・別に会いたいわけじゃないと思うし」
「会いたくないわけないじゃない。うちに泊まるのは問題ないんだけど・・・」
「じゃあお願いします・・・顔を出しにくらいは行くんで・・・お願いします」

祥子は優しく微笑みながら頷く。柿内が望むなら受け入れるしかない・・・そう思って








「柿内ー!冬休みか!大丈夫かー?学校はー!留年とかしない?」
「・・・冬休みあけたらすぐテストだから一応教科書とかは持ってきた」
「おー!んじゃちゃんと勉強しろよ?留年なんかしないようにな?」
「それ、流が言うことじゃないでしょう?球でさえもしなかった留年とか・・・1番心配してなかったのに・・・」

遅い夕食を柚木が摂りながら柿内にそう言うと祥子がため息交じりにそう呟く。そう。昔から学力では4人の中で1番優秀で唯一赤点とは無縁だった次男がまさかの留年で驚いていたのだ

「オレの目標は大学じゃないんでそれなりに学校でもちゃんと勉強してる」
「・・・お前の目標ってなんなの?聞いたことなかったけど」
「それは・・・まぁ、まだ秘密っつーか・・・」
「なんだよー!秘密とかナシにするとか言ってただろー?」
「さっさと食えよ。片付けられねぇだろ」

柚木は「ちぇー」と拗ねるが、柿内にとっての目標はまだ秘密にしておきたいこと。柚木に『重い』と思われそうで・・・そして叶うかも判らないことだから・・・柚木が競泳を辞めて水球へ行ったときに調べて考えたこと。それは柚木のこれからの決断によって左右されることでもあるけれど、選択肢として1番高くて確実だと思った方向・・・

「なー、これお前が作ったやつじゃね?」
「よく判ったな・・・」
「そんな気がしたー!何この春巻きー!美味いしー!」
「ねー?舞もすごい喜んでた」
「バイト先で覚えたやつ・・・あんた好きそうだからそれにちょっとアレンジ加えてみた」
「柿内くん今度これレシピ教えてね?」
「あ、はい」

柚木に喜んでもらえれば嬉しい・・・けれどそれを柚木の家族にまで喜んでもらえて気に入って貰えるということはもっと嬉しいことだと知る。これが実家ならば・・・姉以外に喜んでくれる人間がいるのだろうか・・・

「そういえば、流の誕生日はご飯リクエストある?」
「んー、柿内の唐揚げ」
「えー?」
「あ、もし祥子さんがよければ唐揚げ作りますよ」
「噂の柿内くんの唐揚げ・・・ね」

祥子は微笑む。前に秀がタイムに伸び悩んでいたとき、スランプかと思ったが、柿内の家へ誘われた後、何か吹っ切れたようにタイムも戻り、ただ柿内の唐揚げがすごくおいしかったと聞かされていた
その後、秀と球の話を聞いて2人とも柿内の唐揚げを褒めていたからどんなものなのかとずっと気になっていたものだった

「噂・・・って」
「っつかー、こいつの唐揚げマジで美味いよ」
「柿内くん、私も食べてみたいから唐揚げはお願いしていいかしら?その他にも色々必要だろうからそれは私が作ったり買ってきたりするから・・・あと、ここ任せていいかなぁ?私はもう休むから」
「はい。やっておきます」
「んー!っつか足りない!柿内!なんか作って」
「流!」
「あー・・・少し食材借ります・・・イイっすか?」

祥子は困ったように笑って「朝食分ぐらいは残しておいてね」と手を振った

「オレ、飢えてんだもん!柿内のメシに飢えてるー」
「ムネ肉少し借りるか・・・」
「なー、柿内ー・・・」
「あー?」
「明日から朝から夜までずーっと一緒だな」

そう笑った柚木の言葉が恥ずかしくて柿内は俯きながらムネ肉を叩いた








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柚木は家族の前でも柿内に甘える。柚木の家族としてはしっかり者で甘えることがあまりなかった柚木が人に甘えているのが意外で柿内のことすごいとか思ってるに違いない
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