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赤い糸18 - 05/14 Sat

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「怜!怜っ!」

教室から逃げ出した怜を人気のない中庭で捕まえるとその腕を振り払われる

「大丈夫・・・か?」
「うるさい」
「・・・オレ、判ってるから」
「何が・・・」
「怜が新田に・・・」

怜は鼻で笑う
何が判っているのか・・・本当は新田は彼氏で、キスされたけれどしてもおかしくない関係で・・・

「お前うざい・・・」
「怜、オレのコト嫌いでもいいけど、オレはお前のコト友達だと思ってるし、もし何か悩みとかあったら」
「ない・・・ないっ!」
「・・・もし、新田のコト好きで本当にキスしてたとしてもオレは別に・・・」
「黙れっ!」

怜はそう短く叫ぶともやもやと混乱した心のままでその場を走り去った






トントン

怜がテレビをぼーっと見つめているとドアから音がして立ち上がる

「はい」
「オレ・・・」

新田の声で怜は拳を握りしめる
この関係が公にできないのも判る。隠したいのも判る・・・でも、自分だけに押し付ける形にしたのは気に入らない

「カバンとか・・・忘れてったから・・・あと、謝りたい」

怜はドアを開けるとカバンを受け取る

「ごめ・・・でも、あの後、誤解解いたから・・・調子に乗ってキスされたとか告白されたとか言ったけど本当は歯が痛いっていう怜の口の中見てたって・・・みんなそれで納得したって言うか」
「なんか・・・一気に冷めた気がする」
「え?」
「友達・・・戻りたい」
「ヤダ!ごめんって!・・・オレ、高校ん時ゲイだってバレたときあって・・・虐められたっつーか・・・ごめん。言い訳!とっさに出てきたのがあんなお前に被せるようなことになって・・・ホント・・・でも、ごめんって」

イジメ・・・そう聞いて眉を顰めて新田を見上げる。虐められたならば仕方ない・・・そう思ってしまう自分は甘い。判っている・・・でも、風花が虐められていたときの順平だって同じように虐めていたのだし・・・これは赤い糸で結ばれていようがいまいが関係ない話しではないだろうか・・・

「怜・・・」
「・・・どうしてくれんの・・・この冷めた気持ち」
「・・・怜、今からバイトあるんだけど・・・一緒に来る?」
「え?」
「酒!奢る!好きなだけ飲んでていいから!ね?」

新田のバイト先はゲイバーだと聞いていた。けれどそんなところ足を踏み入れたこともなくて・・・

「今日、歌姫いないし・・・お前のために歌うから・・・全部怜に捧げるから」
「それ・・・ずりぃ・・・」
「オレ、もう武器になるならなんだって使うさ・・・な?怜・・・友達に戻るとか言わないで・・・お前いないとホント・・・」

新田の必死な懇願に怜は頷いてしまう
裏切られた気分になったのに・・・全部許して新田を信じたくなってしまう。好きだから・・・愛されていると実感するから

「怜・・・怜っ」
「・・・でも、オレの中で友達に戻る方向だからな・・・」
「また、ゼロから積み上げて行けばいい?怜に好きになってもらえるように努力する・・・」

新田の手が怜の手に重なって優しく包まれる
温かい手・・・新田の指と繋がっていればいいのに・・・だったらきっともっと自分にも自信が持てる。何も恐れなくてイイのに・・・








新田に連れてこられたバーは普通のバーに見えた。カウンター席に座らされるとカウンターの中の長身の美人が「珍しい」と呟いて怜の前に氷の入ったグラスを置く

「噂は聞いてるけど・・・初めまして」
「マスター!手、出しちゃダメですよ!」
「安心しろ。タイプじゃないから」

マスターと呼ばれた男をひとつ牽制すると新田はそっと怜の耳元で「着替えてくる」と囁いてその場を離れる

「お酒、強いんだっけ」
「あー、まぁ・・・弱くはない・・・というか」
「ハハ・・・聞いてる聞いてる。どんだけ飲ませても潰れるどころか酔いすらしないっていうレイくんだろ?あいつがベタ惚れしてる可愛い恋人」

ここでは自分の話をしているのだと思うと少しだけ微笑む。全てに隠したいわけではないのだ・・・学校ではあんなことを言われたけれど、やっぱり愛されている・・・そう実感してしまう
マスターがグラスに琥珀色の飲み物を注ぐと「あいつに全部つけとくから」と言われて怜はグラスに口を付ける

「・・・美味しい」
「そうだろうそうだろう・・・店で1番高いウィスキーだし」
「・・・あいつ・・・払えるのかな・・・」
「しばらくただ働きしたらいいんだ」
「・・・」

怜は笑ってまたグラスに口をつけると着替えた新田がステージの上で礼をするのが見え、その後に拍手が起こってすぐにしっとりとしたピアノの音が店内に響き渡る

「・・・」

学祭で聞いた時と同じように英語の歌詞はまるで判らない・・・でも、甘く囁くような新田の声をビリビリと感じる。たまに顔を上げて怜に送る視線が熱っぽくて怜は俯きながらグラスを握る手を見つめる

「いつもよりも熱入ってんなぁ・・・キミがいるからかな」

マスターが空になったグラスを交換するのを見上げて怜は少しだけ首を振る・・・友達に戻りたい・・・そう言ったのはほんの少し前のコト。もうそんなことどうだっていい。この声を耳元で囁かれながら新田の熱い体に抱かれたい・・・
早く・・・早く・・・帰って2人きりになりたい・・・



演奏が終わると立ち上がった新田にグラスをもった青年が妖艶に振舞う

「・・・ごめんなー・・・これもあいつのお仕事」
「・・・」

グラスの酒を飲みながら青年と笑顔で談笑する新田・・・そしてその指に繋がった糸を見て息を飲む。今、新田と話している青年と赤い糸が交わっている・・・彼が・・・新田の・・・

「毎回いい声で痺れちゃうー・・・ねぇ、今夜こそどう?」
「ありがとう・・・でも、ごめんね?オレ、あそこに可愛い恋人待たせてるんだ」

新田が笑顔でそう答えると振り返った青年と目が合う

「・・・っ?!」

その瞬間新田と繋がっていた赤い糸がプチン・・・と音を立てて切れるのを見る

「・・・ぇ」

赤い糸が切れる瞬間・・・切れた・・・簡単に・・・簡単に・・・運命の赤い糸が・・・

「怜・・・聞いてた?」
「おいおいー・・・お前はお仕事こっちだろう?」
「あー、5分だけ!」
「・・・」
「怜?」
「・・・」

顔を上げようとしない怜の顔を覗きこむ
赤い顔をして俯いた怜の背中をそっと撫でるとビクリと肩が震えて新田は「どうした?」とまた撫でた

「・・・オレ・・・」
「怜、終わるまで待てる?」
「・・・ムリ」

新田は顔を上げるとマスターに3本の指を見せる

「はぁ?」
「お願い!30分っ!控室貸して!マジで!」
「バイト代出さねぇぞ?」
「イイ!後で超働くけど今日は無給でもいいからっ!」
「・・・」

マスターは怜の俯いたままの赤い顔を見てひとつ頷くとカギを新田に投げた

「30分だぞー」
「よし!怜、歩ける?」
「・・・」

新田に手を引かれて歩くと2人はスタッフルームへと消えて行った






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