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つれないキミと売れてる僕9-6 - 06/17 Fri

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葛西の明るさは相変わらずだったけれど、何も考えていなさそうで実は内側に悩みや葛藤があることが高校からの付き合いの里見は気付いていたが、本人が言い出さないのだから里見もあえて何も言わずにいた

そして、その日、久し振りに仕事がない須野が里見の部屋を訪れていた時のこと

トントン

「・・・んー?今ドア音したかー?」
「彼女来たとか?」
「いやー?っつか今のオンナこの部屋知らねぇし、そもそもインターホン押さね?」

里見はそうボヤきながら玄関を見つめるがまたドアを叩かれて立ち上がり玄関を開けた

「?!葛西っ」
「っ・・・あー・・・ごめ・・・ごめんっ」

そこには涙や鼻水でドロドロになった葛西の姿があった

「・・・里見ー?葛西だった・・・の?」

そして玄関を覗いた須野もボロボロの葛西を見て慌てて駆け寄った

「う・・・うわぁぁぁぁっ!!!!」

須野の顔を見て声をあげて泣き始めた葛西を抱きしめながら部屋へと入れる里見。須野も心配そうな顔で葛西を見つめた

「・・・僕、お茶でも入れようか」
「酒がいい」
「・・・須野、台所の棚の右奥にある酒全部持ってこい。あと冷蔵庫のビールも」

須野は頷いて立ち上がると言われた通りに用意する

「ほら、飲め」
「ん・・・うんっ・・・う・・・光ぃ・・・オレっ、オレぇ」
「いいから、飲め。話せるようになったら話せ」

葛西は頷いてビールを傾けると喉を鳴らして一気に喉奥へと流し込む
1本、2本・・・どんどんと空になっていく缶。その間、須野も里見もただ黙って酒の入ったグラスを傾けた

「・・・オレの全部が壊されたーもーダメ。大事なもの全部なくなっちゃったぁ」
「何?」
「ビデオもーテープもーパソコンもぜーんぶ。ぜーんぶ・・・っ・・・買えばいいよ!新しいの買えばいいんだ!機材は買えばいいっ!バイトして・・・買い直せばいい・・・でもっ・・・今までオレが撮ったデータは・・・学校に置いてあるのはほんの一部だよ・・・バックアップデータも全部やられた・・・」

須野も里見も言葉を失う
葛西が楽しそうに撮っていたのを知っている。いつだって前向きで笑っている葛西が唯一真剣な顔をしながらそれでも楽しそうに撮っていた・・・

「家、出よう。な?」
「・・・連れ戻される」
「ここに暫くいてもいい」
「ムリだよ・・・オレ、やっぱり言われた通り弁護士目指すよ・・・全部なくなったし・・・諦めろってことだよな」
「諦めないでよ!!!!僕、葛西の好きだよ!すごい好きだよっ!!!!」

須野の言葉でまた涙が溢れる
嬉しくて。親友が近くにいてくれて嬉しくて。想ってくれる人がいるのが嬉しくて。全てを失って夢を打ち砕かれてもこの2人がいるかぎり自分はまた歩いていける・・・そう思った

「なぁ、葛西。お前は家、捨てられるか?」
「・・・」
「もー成人してんだぜ?オレら・・・なんとかなるだろ?あの医者のおじさんにも少しは頼めるだろ?」
「でもっ・・・親は親だし・・・おじさんは関係ないし・・・」
「家、出るべきだ。お前は虐待されてんだぞ?」

虐待と聞いて葛西は「違う」と否定する。それは自分では信じたくなかった言葉・・・自分が妾の子だから。育ててもらうためには、居場所を作るには受け入れねばならないことだと自分に言い聞かせ続けていたこと。法律を学んでも自分の「それ」からは目を背け続けていたこと。須野は初めて聞いたコトに驚き、黙り込む

「須野」
「うん?!」
「お前も協力するよな?葛西はお前にも大事だろ?」
「大事だよ!!!」

里見のコトが好きだと打ち明けたあとも変わることのない友情に、関係に感謝していた。里見と仲が良すぎるのは妬けたけれど、里見が大事だというなら須野にとっても大事





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男には嫌われがちな里見だけれど仲良くなった友達は大事にするわけです
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