FC2ブログ

獣2 - 04/17 Fri

trackback (-) | comment (0) |
あれから10年・・・

佳世子は住み慣れた町を離れて大きな音を立てる鉄工所の前に立っていた

ここに彼が要るから。

彼が。

ココで待つのはもう一週間になる

「またお前か・・・」
「もうじき終わる?」
「終わらない」
「そっか」

佳世子はそう言ってまた手元の携帯電話に目を落とす。
何時間待つ気なのか・・・もう話すことはなにもないというのに

辺りが暗くなった頃、街灯もついて佳世子のいる場所だけ照らされる。それはまるでスポットライトのように・・・

「あー充電切れちゃったー」

予備の電池もなくなったため佳世子は仕方なくポシェットに携帯電話をしまうととっくに業務終了して真っ暗な工場を見つめる

会いたくて。彼に

しかし、彼は会ってくれない。避けるばかり・・

彼はあの川越 斉。刑務を終えて出てきた彼が働くここへ通うのは佳世子の最近の日課になっていた

佳世子は長いため息を吐くと道なりにゆっくりと歩き出す

「この道・・・危ねぇぞ」

不意に後ろから声を掛けられ、心が震える佳世子。
振り返らなくても判る声の主・・・忘れるはずがないこの声。

「やっと話しかけてくれたねっ」
「っつか、オレ、ホントにやってねぇし・・・話せること何もないんだけど」
「うん!判ってる!あたしはそれよりもあんたが好きだから来たの!」

佳世子に突然の告白をされて目を丸くする川越。

あれから10年。すっかり大人になった佳世子もこの間成人式を迎えたし、川越もすっかり大人の男になっていた。
昔と変わらず顔は整っていて、暗い影を灯し、更に美しさが増したような気さえした。

「なんで?」
「男は獣なの。でも、あんたは獣に見えないの」
「はぁ?」
「あたしはずーっと好きだった」

佳世子は二コリと笑うと川越に駆け寄り腕を組む。

「ここも突き止めたし、住むところも知ってるよ」
「ストーカーか・・・お前は」

川越はタバコに火をつけると佳世子と暗い夜道を歩きだした。
真っ暗なその道はまるで2人の歩む道そのもの





関連記事
スポンサーサイト



comment

コメントを送る。

URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する