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愛だとか運命だとか5 - 08/24 Wed

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「ムツキさん」
「あぁ、203号室のカルテ、お前持ってる?」
「はい。ここに。バイタルチェック終わりました。それで、今日被験者zの実験ありますよね」
「・・・あるが?」
「オレにも同行させてください」

ムツキが急に不機嫌な表情になるとツカサを冷たく見下ろす

「なんだと?」
「レア種・・・オレ、前に他の研究所に出向してた時にも見たんで、それを活かせたらと思いまして」
「・・・お前には」
「オレ程安全なΩはいないと思いませんか?どんなαを目の前にしても大丈夫なのはオレだと思いませんか?」

ツカサは口を閉じると黙ってカルテに目を落とす。そしてそのカルテをツカサに差し出す

「αの能力チェック・・・それが進まない。z003のフェロモンを強制的に出させてその能力値を計る・・・抑制剤を入れてない番のいない被験者Ωは用意してあるけれど」
「えぇ。判りました」

何度やっても数値がおかしい。高いα値は出ていたのにフェロモン値が大幅にブレる。それは自分が毎回この実験最中にヒートを起こしてしまうせいかと落胆し悩んでいた

「・・・あと、z003にお前が惑わされるとか考えたことはない。ただ、お前にあいつの酷い言葉を聞かせたくないだけだ」
「ムツキさん、だったらオレにΩの地下棟行かせないでくれればよかったじゃないですかぁ・・・」

研究所内にあるΩ棟と呼ばれる建物の地下には番に捨てられ傷つき、抑えられないヒートを持て余しているものばかり集められた場所がある。そこで世話と検査、メンタルケアを行うのが以前のツカサの仕事だったが、番に捨てられ傷ついたΩたちにとってツカサの存在は妬み、憎しみ、羨む相手にしかならない

「じゃあ、ムツキさん、オレ、白衣着替えてきますね」
「・・・お前は番を得て、親になって一層強くなったよな・・・」
「そうですね・・・オレは番を持って初めて1つの人間になった気がしますから」
「・・・」

それは離れることのない運命の番だと判っているから。捨てられるかもしれない。そう怯える必要がない運命の番・・・皆、恋人と番になると幸せを得る。悩まされていたヒートも番のお陰で抑えられ、心の安定を得る。だが、運命の番でない限りαの一方的な番解除がいつあるのか判らない・・・








「出向先にも複数の番を作っている人、いましたよ」
「あぁ、情報としては判っているけれど」
「Ωの珍しい症例はここが多いとは思いますけど、αの珍しい症例は向こうの方が多かったように思えますね・・・」
「まぁ、ここはΩ性をメインとして研究してるからな」

廊下を2人並んで歩いていくとパタパタと足音が響いてムツキはため息を吐きながら「廊下走るなバカ」と振り返る

「むっちゃんむっちゃーんっ!」
「うるさい」
「ヒトシさんお疲れ様です」
「今からz003でっしょー?オレもオレもー!」

肩に自然に手を回してくるヒトシの手をペチリと叩き落とすとムツキはヒトシの存在なんてないかのようにツカサに淡々と話し始める

「αのどんな症例見てきた?」
「えー・・・オレ、報告書出しましたよ?」
「・・・αだからスルーしてたかもしれないな・・・」
「βをαに見せかける手術を施されている患者も見ました」
「・・・βを?」
「えぇ。能力的にαではないんで番も作れないんですけど、αテストは人工的にフェロモンを出させることでパスできるっていう」

まだ根強く残る差別の中で、就職に有利なのはαだとされている。もちろんβでもΩでも優秀な人間がいることは証明されては来たが、やはり最初から優秀な人間が多いと言うαを求める企業は少なくない

「で、それが患者?」
「フェロモンレイプ・・・ですね」
「あぁ、βじゃΩのヒートに潰されかねないな・・・」
「えぇ。それが何度も続くからその人工フェロモンを削除したいっていうことでしたねぇ・・・オレから言わせれば自業自得だと思いますけど・・・」

ムツキは「その通りだ」と呟きながらツカサの話に耳を傾ける
もしツカサがαで、この報告を聞いていたらこんなにも素直に話を聞けていたのか判らない。それはきっとずっと持ち続けているαへの憧れ、羨望。産まれもったΩよりも優秀でカリスマ性があるというαの能力へのコンプレックス

「ねぇ・・・オレのコトずっと無視するの?ねぇ!2人ともぉぉぉーーーー!」

ヒトシのその叫びは廊下にただただ響いていた





「あー、オレの美人なΩちゃん、今日も美人・・・しかももう1人可愛い系のΩ・・・2人纏めてオレの番にしてやるからほら、近く来いよ。濡らしてんだろ?なぁ。今すぐパンツ脱いでいやらしく光らせてるところ見せろよ」
「フェロモン、入れてくれ」

防護檻へ入れられたΩが入って来るとツカサたちにも判るΩフェロモンの匂い・・・
ガシャンと檻が揺れると瞳を潤ませた檻の中のΩ・・・このΩも特殊な体質で番が作ることのできないΩ・・・何度番の儀式をされても番を作ることができず、ただフェロモンを垂れ流しにする。更に抑制剤のほとんどが効かない為、ここへ収容と言う形で普段は閉じ込められている被験者

「ちょ・・・だいっ・・・α・・・αがいる」
「すっげぇイイね・・・何ココ天国なわけ?」

ニヤニヤしながら檻の中のΩを見下ろすz003。部屋の空気が変わって来たのを感じてツカサはすぐに検査キットを手に取ると隣のムツキにもたれ掛かられるのを感じて顔を上げた

「見る・・・なっ・・・」
「・・・ヒトシさん。フェロモン被害です。ここはオレが対処するのでムツキさんを隔離室へ」

紅潮し、息の上がったムツキを見て静かにそう言うとてきぱきと検査を続けるツカサ

「あれー?なんでお前オレのフェロモンにあてられねぇの?Ωちゃんだろー?Ω機能がまだ未熟なのかなぁ?」
「・・・オレが番持ちとか判らないなんてあなたのα機能も大したことないですね。数値が出るのを待つ必要なんてない・・・」
「あ?」
「この結果さえ出ればα去勢の日程も決められるはずです。もうオレにはこのトリック判りましたから」

笑顔のツカサは檻のΩを退出させることを告げて自分もz003の隣を涼しい顔ですり抜けていく
運命なんかじゃない。ただのトリック・・・そう判るとホッとした顔で・・・ただ、これを早くヒトシとムツキに伝えたくて。ムツキのことを心配しているタイチにも教えたくて・・・






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数年ぶりにまともに泳いだら本気で泳ぎたくなってジム通おうとか考えだした私はどうしたら・・・
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