FC2ブログ

ビタースウィート35 - 11/04 Fri

trackback (-) | comment (0) | その他SS
朝からいつも以上に不機嫌そうな顔をした真山が宴会場をそっと抜けて夜風に当たる。肌に刺さるような冷たい空気が宴会場の熱気に当てられた体には気持ちがイイ
連れてきてもらった旅館は小さいけれど本当にイイ所で、自分の体にピアスが開いていなければ温泉へも行ってみたかったと思いながら空を見上げると無数の星が煌めいていた

「真山くん」
「・・・」

振り返らなくても判る声・・・

「真山くん酔ってる?」
「酔うもなにもそんな飲んでないです」
「うん。だよねぇ・・・」
「こんなところ、主役が来てていいんですか?早く戻ったら?」
「ボクが主役じゃないし、みんなボクがいないことにも気づかない程盛り上がってるよ」

真山の隣にそっと腰を下ろすとベンチのあまりの冷たさに飛び上がる

「寒っ!冷たっ!!ダメだよっ!風邪ひく!!!」
「大丈夫でしょ・・・」
「いや、ダメ。行こう!」
「どこに」
「お風呂!」
「いや、だから」

真山の腕を掴むとずんずんと割り当てられた部屋へと歩いていく山本

「あのね、今日、ボクたち以外に泊まり客いないんだって」
「・・・」
「今、宴会中で誰も来ないし、今がチャンスだよ!」
「・・・なにそれ・・・」
「ホントは夜中にでもちょっとだけ貸し切りにできないかなーって相談しに行ったら宴会の時なんかどうかって薦められた」
「・・・社長っ」

部屋へ着いてタオルを用意すると真山の手に乗せる

「イイ温泉だよ?」
「・・・」

入りたい。本当は入りたい・・・温泉なんて久し振りで・・・でも、こんなに幸せなのが怖くて・・・

「入ろうっ!入ろうっ!」
「待った・・・社長もなんで入る用意してんの?!さっき入ったでしょうっ!?」
「ん?温泉だよ?それに外寒かったから!」
「飲んでるでしょ!?」
「いや?真山くんとお風呂行こうって最初から思ってたから最初の乾杯以降飲んでない」

自分と一緒に・・・最初からこのつもりでお酒が好きな山本が乾杯以外飲んでいないだなんて・・・
脱衣所へ来るとするりと浴衣を脱ぐ山本の裸に息を飲む
この体に抱かれたことがある・・・
たった1度。自分を救うために抱いてくれたあの日・・・
もう二度と間近で見ることなんてないだろうと思っていた体・・・

「真山くん?」
「・・・」
「見てたら脱ぎにくい?」
「脱ぎにくい」
「じゃあ、先行って待ってるね?」

さっさと浴場の扉を開けた山本に真山も意を決してシャツを脱ぐと浴場の扉を開いた
メガネを外し、湯けむりでよく見えない大浴場。それでもたった1つの肌色は判りやすい

「まーやまくん」
「なんですか」
「頭洗ってあげようかー」
「要らないです」
「背中流してあげようかー」
「要らないです」

冷たい答えも想定内。でも、少し寂しいのは自覚したから。真山が好きだと自覚したから・・・

シャワーを出して髪を洗う真山の背中を見つめる
白く、細い体。どこにも余分な肉がなくて。いや、余分な肉どころか必要な肉すらない気がする。抱きしめたら骨ばった体。どこから見てもどう欲情するのか判らない体・・・男の体。細くて白い・・・体・・・

「真山くん」

それでも欲しくて欲しくて仕方ない体・・・
自分のモノにしたい。恋人なんて早く別れてしまえばいい。傷ついて捨てられてそこへ付け込む・・・?いや、彼が傷つくのはかわいそうだからできれば真山から相手に別れを告げてほしい。真山を傷つけ苦しませる相手なんて真山から捨ててしまったほうがイイ

「オレ・・・キミが好きだよ」

キュッと蛇口の閉まる音・・・静かに立ち上がった真山がゆっくりと近付くと音を立てて風呂へと入る

「この酔っ払いが」
「え?酔ってないって!」
「うざい・・・」
「うざいって・・・もーう・・・ねぇ、外のお風呂、またすごくいいから行こうよ」
「・・・」

メガネがなくてよかった。湯けむりがあってよかった・・・山本の体が見えにくいから。山本の顔も見えにくいから

「あ、メガネないから不安?ボクの手、掴んでー」
「歩けるしっ!!!」
「えー?でもボク、真山くんの手掴んじゃったからそのまま行こう行こうーっ」

外へと繋がるドアを開けると冷たい空気が肌に刺さる

「寒っ!お風呂お風呂ー」

バシャン。そう音を立てて湯へ浸かる山本。真山もそっと湯に浸かるとジンジンと芯から温まるような感覚が広がっていく

「すごい星ー」
「っすね・・・」
「真山くん、恋人と別れてオレと付き合いなよ」
「・・・まだ言うんですか」
「本気で」

ぼやけてよく見えないけれどまっすぐ自分を見ていることくらいは判る。いつもと同じように優しい目でまっすぐに・・・
そしていつの間にか一人称もプライベートの時の「オレ」に変わっている・・・自分といる時だっていつだってどこかよそよそしかったはずなのに・・・松島と一緒にいるときにしか聞いたことがない一人称を自分に向けて言っているという特別感

「全然自覚なかったけど、気付いたのこないだだけど松島に言ったら今更!って言われた」
「なにそれ・・・何松島部長に言ってんの」
「だって他に誰に言うのさ」
「・・・誰にも言わなくても・・・」
「誰かに聞いてほしいから。気付いちゃって苦しくて・・・誰かに聞いてもらわないとパンクしそうだったから」
「・・・」
「オレと付き合ってよ・・・真山くんの相手、どんな人かも知らないけど、オレの方が真山くんを幸せに・・・笑顔にできるよ?借金だってオレも一緒に返してあげる。だから」

熱い・・・胸が熱い・・・痛い・・・痛い痛い痛い・・・嬉しい。そう全身が言っているのに心が喜んでいるのに・・・どう返していいのか判らない。今すぐにでも頷いて山本に甘えたい。でも、でも・・・





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


にほんブログ村

やっとやっと恋愛が動き始めたっていう・・・もう35話だよ?っていうね!水尾の書く物語の中ではなかなかすぎる長さ!(そしてまだまだ続く)
関連記事
スポンサーサイト



comment

コメントを送る。

URL:
Comment:
Pass:
Secret: 管理者にだけ表示を許可する