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つれないキミと売れてる僕10-2 - 12/26 Mon

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ワインが空く頃、葛西は冷蔵庫からビールを取り出してくる

「やーっぱり光と飲むときは1本じゃ足りなかったよなぁー」
「・・・なぁ、お前、西野 晶知ってるか?」
「えー?ええええー?!光ちゃんがまさかの男の作家に興味を示すとは!!!しかも光の好きそうなモノ書いてないよねぇ?!あ、でも須野ちゃんが西野 晶の作品に出るから?」

ビールを受け取ると小さく「違ぇし」と呟いてプルタブを引く

「まず、名前見て晶って書かれてて手に取った本だったな・・・」
「・・・そっかぁ・・・」

葛西はすぐに里見の妹を思い出しながら微笑む。里見が忘れることのない名前・・・そして、それは葛西も同じ・・・秘密の恋人の名前・・・

「そう。晶・・・晶だよ・・・」
「生きてたらー・・・やっぱりOLとかだったかなぁ?それとも学校の先生?それかぁ・・・」
「お前の嫁だったかもだろ・・・」

葛西の表情が固まる
身体の中が凍るように冷たくなっていく感覚・・・いや、でも知るわけがない。知っているわけがないのだ・・・里見が。ずっと隠していた里見が・・・

「あぁ、お前は死ぬまであいつとの約束守っていくつもりなんだな」

約束

そう。約束・・・晶とした約束・・・晶と結婚するときまで里見には関係を内緒にすること・・・

「ぁ・・・ぁ・・・」

里見が立ち上がって1冊の本を持ってくると葛西の目の前に差し出す

「・・・」

震える手でその本を手に取ると「捲れよ」と言う里見にページを捲る

『お兄ちゃんへ』

懐かしい字で書かれたその文字はあの時、貰った手紙の字・・・

『葛西さんを怒らないでください
 嫌いにならないでください
 今まで通り親友でいてください

 私を怒らないでください
 嫌いにならないでください
 今まで通り妹として愛してください

 私がこの世にいなくなるときにこれはお兄ちゃんの手に・・・
 でも、私が葛西 晶になった時にお兄ちゃんの手に渡ればいいと祈ってる』

そう書かれていてあぁ、結婚するまで兄には秘密にしてほしい・・・その理由が頭の中で繋がった

これは晶の兄への手紙・・・長い長い手紙なのだ

「まぁ、途中で終わってるけど、あいつがあのまま生きてたらこれは完結してからオレの手に来たのか・・・」
「・・・あ、あの・・・」
「イイからそのまま捲れよ」

全身が震える気がした・・・親友への隠し事がバレた・・・これ以上にない程感謝している親友への最大の隠し事

『X月XX日  私が葛西さんに告白した日

 最初は葛西さんは私がお兄ちゃんの妹だからって断った
 妹だからってそれが何が関係しているのか判らなかったけれど、そのうち理解したの。
 葛西さんはお兄ちゃんが大好きなのね。私も大好き。だから葛西さんのことももっともっと好きになった。
 お兄ちゃんのことを話して判りあえる関係なんて素敵でしょう?』

葛西は小さく呻き声を上げると本を閉じて頭を抱える
懐かしい想い出・・・葛西にとってきれいすぎる想い出・・・そして、想い出として残すには酷く辛いもの・・・だから心の奥底に仕舞った想い出
美しい姿だけ胸の奥に残して。。。ひとつだって忘れることができなくて。忘れたくなんてないものだったから

「っ・・・ごめ・・・っ・・・」
「責めてねぇよ・・・もう昔の話だ・・・晶ももうこの世にいねぇし」
「違・・・オレっ」
「あぁ、あれだろ?お前、彼女とかいただろーがとか3Pとかやっただろーがとかオレに言われると思ったんだろ」

葛西は冷たい両手を合わせて握り締める・・・そう。晶を、里見を裏切っていたと言われるのが怖くて・・・実際に裏切っていたのだ・・・いくら晶が兄を欺くためには必要だと言ったけれどあの瞬間、葛西は楽しんでいた。美しい恋人がいたのに楽しんでいた・・・

「これ、全部読んで判ったっつーか・・・そりゃ、最初はな、これ見て、お前殴ろうかと思ったけどさ・・・あいつが望んでお前はあいつの望み通り演じてただけだろ」
「っ・・・でも・・・」
「あー、あいつ生きてたらお前弟になったかもしれねぇとか・・・なにそれ。超怖ぇ」

くっくっくっと笑う里見に葛西は震えながらただ謝罪の言葉を呟いて里見はポンッと頭に手を乗せる

「お前が弟になるかもだったって思ったらやっぱさー、あの家から出してやんねぇとって思ったのも事実」
「・・・何・・・?」
「っつか高校生で将来そんな考えるとかバカだとか世間知らずだとかさ・・・でも、真剣だったんだろうなって・・・そしたらやっぱり生きてたら弟になったかもしれねぇだろ?」

葛西は黙って目を伏せる・・・
結婚したかった・・・彼女がもし生きていたら映画監督なんて目指すことなく、弁護士になって、彼女に不自由な暮らしをさせないようにただ頑張っていた。今とは全然違う人生を歩んでいたハズで・・・

「ほら、これ」

里見が本の一番後ろを捲って1枚の写真を見せられて葛西はただ涙が零れるのを止めることができなくなる

晶と一緒に撮った写真・・・若い2人の・・・

「イイ顔してんだよな・・・お前も晶も」
「っ・・・ふっ・・・ぐっ・・・」
「なぁ、葛西」

返事なんてできなくてただ顔を上げて里見を見る

「お前は晶を葛西 晶にするつもりだった?」
「っあ・・・っ・・・そうっ・・・だよぉ・・・晶っ・・・晶がっ・・・晶をっ・・・」




「愛してた・・・愛してたんだっ・・・すごくっ、愛してたっ・・・ごめんっ・・・ごめんっ・・・できなくてっ、ごめんっ」



絞り出すような声でそう答えた葛西の涙が号泣に変わると里見は「まぁ、飲め」そう言ってビールを葛西に押し付けた








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つれキミ売れ僕書き始めてからずっと書きたかった所の1つ。
里見がどこか葛西に優しいというか甘い理由は弟になっていたかもしれない。その里見の想いからなのです

家族を愛していた里見が家族の一員になっていたかもしれない葛西を大事にしているっていう・・・そして妹の晶が小説のように綴っていた葛西との記録・・・最初は須野が託されていたことにしようとかそんな案もあったけれど、里見も受け入れるのに時間がかかるだろうし・・・ってことでずっと知ってたけど知らないふりをしていたというお話になった。っていうずっと書きたかったところの1つだからって長々と説明入れたりして台無しにしている感が私らしいと思います。
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