透き通るブルー5 - 05/25 Thu
「くっそぉぉぉぉぉぉ!!!!」
壁に手をついた高尾が大きな声を上げて悔しさが皆に広がる
同じ部に最強と呼ばれる男が入ってきて嬉しかったのに戦えば勝ち目なんてない圧倒的力を持った巴に皆、憧れと同時に悔しさがあった
それを打ち崩すような気迫の泳ぎを見せた高尾にもう既に何人かは高尾の魅力に引き込まれていて一緒に悔しい気持ちを胸に広げる
一足先にタッチし、プールから上がる巴も高尾の闘志を、気迫をプール内で感じていた
「山辺」
寒がりな高尾のために自分のタオルを掴んで駆け寄ろうとした山辺が呼ばれて振り返る
同い年だとはとても思えない完成されつつある体からポタポタと流れ落ちる雫
「あいつ、毎日連れてこい」
「え?」
「まだ、上がる。まだ・・・伸びる」
「え、あ・・・」
高尾が巴に認められたのが山辺は自分のことのように嬉しく感じる
ずっと抱いていた憧れは間違いじゃなかったのだ。最強だと言われている巴が認めた高尾に憧れていたのは間違いじゃなかった・・・山辺は高尾になりたい
「高尾、大丈夫?」
「寒い・・・無理・・・無理・・・」
「ほら、オレのだけどジャージも着てっ!早く着替えなって」
「寒い・・・悔しい・・・クソ・・・悔しいっ!!!あいつにっ!巴に・・・負けたっ!!」
プールを上がった高尾はさっきよりもガタガタ震えていて山辺は高尾にグルグルタオルを巻きつけた上からジャージを羽織らせる
「高尾・・・」
「クソ・・・謝りゃイイんすか?バカにしてすいませんでしたって言えばイイんすかねぇ?」
ガチガチ歯を鳴らした高尾の所にやってきた盛谷と野原が手に持ったタオルで山辺と同じように高尾をぐるぐる巻く
「・・・ども」
「勝てなかった・・・悔しい・・・その気持ちがあるなら部活、ちゃんとやってみないか?」
「はい?」
「オレらもお前がここまでやれるとは思わなかった。巴との力の差見せつけてもう2度とここへ足を踏み入れるなと言うつもりだった・・・けど、今の見て、気が変わった!」
「・・・?」
高尾はそのつもりだったのに目の前の2人は真剣な眼差しで高尾を見つめ続けている
「それにお前ホントは一緒にやりたい・・・とどっかで思ってるんじゃないのか?」
「はぁ?ないしっ!」
「じゃあ、部活に強制参加しなくてもいいこの高校でどうして入部届を出していたんだ?」
高尾はひゅっと音を立てて空気を吸い込む
確かに何故入部届を出したのか・・・真面目に泳ぐつもりも大会に出たいという気持ちもなかったはずで・・・なのにどうして・・・
でも、これは高尾にとってカッコ悪いコト。小学生時代、周りよりも秀でて速かったから周りとは別のメニューを組まされて、もっと速くなるようにと皆よりも練習させられた。同じ部活の友達と一緒に帰ることも許されなくて1人プールで泳がされた・・・それが寂しくて嫌で・・・皆と一緒に楽しく練習したいのに1人ぼっち・・・
だから、練習に行かなくなった。練習に行かないのに高尾は速かったから・・・周りよりもずっとずっと速く泳げた。だから、1人ぼっちで辛い練習よりも。皆と一緒に泳げないのならば、練習なんて行かずに皆で遊んで楽しくしている方が幸せだと思ったから
「確かに練習はバカらしいと思うこともあるだろう・・・でも、お前の才能、ここで潰すのももったいない」
「・・・オレは・・・」
部活に参加するようになれば、この1ヶ月のように友達と帰り道遊ぶことはない・・・
「今年からまたこの水泳部は強くなる。その強さの1つにならないか?」
求められている・・・欲しがられている・・・高尾の力をこの部活は求めている。そして、勝てない男、巴がいる限り、特別なメニューを組まされて1人で泳ぐこともないのではないか・・・
「・・・っす・・・」
「だったら早くそれ脱いでプール入れよ」
「あぁ!?や!まだ決めたとは言ってないっていうかやめろっ!寒いっ!」
「オレはお前と一緒にインハイ行く」
「はぁ?」
「決めた」
「決めたってお前っ!何言ってんだよっ!ちょ!やめろっ!やめっ!マジでっ!寒い!!!寒いーーーーっ」
1枚1枚着ていたものを巴に剥がれていった高尾は再びガタガタ大きく震えながら冷たいプールへ飛び込まされた

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壁に手をついた高尾が大きな声を上げて悔しさが皆に広がる
同じ部に最強と呼ばれる男が入ってきて嬉しかったのに戦えば勝ち目なんてない圧倒的力を持った巴に皆、憧れと同時に悔しさがあった
それを打ち崩すような気迫の泳ぎを見せた高尾にもう既に何人かは高尾の魅力に引き込まれていて一緒に悔しい気持ちを胸に広げる
一足先にタッチし、プールから上がる巴も高尾の闘志を、気迫をプール内で感じていた
「山辺」
寒がりな高尾のために自分のタオルを掴んで駆け寄ろうとした山辺が呼ばれて振り返る
同い年だとはとても思えない完成されつつある体からポタポタと流れ落ちる雫
「あいつ、毎日連れてこい」
「え?」
「まだ、上がる。まだ・・・伸びる」
「え、あ・・・」
高尾が巴に認められたのが山辺は自分のことのように嬉しく感じる
ずっと抱いていた憧れは間違いじゃなかったのだ。最強だと言われている巴が認めた高尾に憧れていたのは間違いじゃなかった・・・山辺は高尾になりたい
「高尾、大丈夫?」
「寒い・・・無理・・・無理・・・」
「ほら、オレのだけどジャージも着てっ!早く着替えなって」
「寒い・・・悔しい・・・クソ・・・悔しいっ!!!あいつにっ!巴に・・・負けたっ!!」
プールを上がった高尾はさっきよりもガタガタ震えていて山辺は高尾にグルグルタオルを巻きつけた上からジャージを羽織らせる
「高尾・・・」
「クソ・・・謝りゃイイんすか?バカにしてすいませんでしたって言えばイイんすかねぇ?」
ガチガチ歯を鳴らした高尾の所にやってきた盛谷と野原が手に持ったタオルで山辺と同じように高尾をぐるぐる巻く
「・・・ども」
「勝てなかった・・・悔しい・・・その気持ちがあるなら部活、ちゃんとやってみないか?」
「はい?」
「オレらもお前がここまでやれるとは思わなかった。巴との力の差見せつけてもう2度とここへ足を踏み入れるなと言うつもりだった・・・けど、今の見て、気が変わった!」
「・・・?」
高尾はそのつもりだったのに目の前の2人は真剣な眼差しで高尾を見つめ続けている
「それにお前ホントは一緒にやりたい・・・とどっかで思ってるんじゃないのか?」
「はぁ?ないしっ!」
「じゃあ、部活に強制参加しなくてもいいこの高校でどうして入部届を出していたんだ?」
高尾はひゅっと音を立てて空気を吸い込む
確かに何故入部届を出したのか・・・真面目に泳ぐつもりも大会に出たいという気持ちもなかったはずで・・・なのにどうして・・・
でも、これは高尾にとってカッコ悪いコト。小学生時代、周りよりも秀でて速かったから周りとは別のメニューを組まされて、もっと速くなるようにと皆よりも練習させられた。同じ部活の友達と一緒に帰ることも許されなくて1人プールで泳がされた・・・それが寂しくて嫌で・・・皆と一緒に楽しく練習したいのに1人ぼっち・・・
だから、練習に行かなくなった。練習に行かないのに高尾は速かったから・・・周りよりもずっとずっと速く泳げた。だから、1人ぼっちで辛い練習よりも。皆と一緒に泳げないのならば、練習なんて行かずに皆で遊んで楽しくしている方が幸せだと思ったから
「確かに練習はバカらしいと思うこともあるだろう・・・でも、お前の才能、ここで潰すのももったいない」
「・・・オレは・・・」
部活に参加するようになれば、この1ヶ月のように友達と帰り道遊ぶことはない・・・
「今年からまたこの水泳部は強くなる。その強さの1つにならないか?」
求められている・・・欲しがられている・・・高尾の力をこの部活は求めている。そして、勝てない男、巴がいる限り、特別なメニューを組まされて1人で泳ぐこともないのではないか・・・
「・・・っす・・・」
「だったら早くそれ脱いでプール入れよ」
「あぁ!?や!まだ決めたとは言ってないっていうかやめろっ!寒いっ!」
「オレはお前と一緒にインハイ行く」
「はぁ?」
「決めた」
「決めたってお前っ!何言ってんだよっ!ちょ!やめろっ!やめっ!マジでっ!寒い!!!寒いーーーーっ」
1枚1枚着ていたものを巴に剥がれていった高尾は再びガタガタ大きく震えながら冷たいプールへ飛び込まされた

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