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青春はプールの中で11-4 - 01/19 Fri

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で
目を開ける

見慣れた天井じゃなくてもう1度目を閉じて目を閉じる前を思い出す

強い光が見えて急に叩きつけられるような衝撃と体に走る激痛、周りの叫び声。いつものように自分の部屋で眠りについて起きたわけじゃないと判って目を開き、固定され、細いチューブに繋がれた腕に視線を移し、動かない体に小さく「チクショウ」と悪態を吐くと聞き慣れた声が耳に入ってきた

「流、ちゃん?」

体は自分よりもずっと大きいけれど柚木にとっては大事な可愛い弟がすぐ目に入って来て

「よぉ」

と微笑む

「流ちゃんっっっ!!!」
「ぁ、目、覚めたんだ」

そして秀に続いて柿内が柚木の手にそっと触れながら目を細める

「・・・」
「心配したよー!流ちゃんなんでか意識戻らないままだったんだもんっ!流ちゃんーーー」
「・・・お前誰?」
「「え」」

思わずハモった2人の声。柚木の視線は一点を見つめていて、それが柿内のことだとすぐに理解し、青褪める

外傷は体ばかりでヘルメットのおかげで綺麗だった頭部。しかし、無事済んだ手術後、麻酔が切れれば目を覚ますと思われていた柚木が眠りから覚めない数日、皆不安になりながらも交代で病室で願っていた日々。だから、目を覚まし、発した柚木の言葉にすぐに大丈夫だと言われていた頭部へのダメージで記憶障害が起きているのでは・・・と秀も柿内も考えた

「流、ちゃん・・・冗談、だよね?ね?だって、だって、カッキーだよ?ねぇ、流ちゃん!カッキーだよ!」
「・・・」
「あー、とりあえずオレ、先生呼んでくる」
「ふ・・・ハハっ!アハハッ」

突然笑い出した柚木に記憶障害の次は一体何事なのかと不安になり2人は顔を見合わせた

「すっげぇ顔してた!やべっ!撮っときたかった」
「流ちゃん?」
「おはよ。柿内」
「っ・・・クッソ・・・あんたって人は」
「ちょ!笑えない!笑えないよ流ちゃん!!!最低っ!」
「悪ぃ。2人ともなんかマジな顔しすぎてたから」

記憶障害でもなんでもなく、単に柚木の悪ふざけ。そう判った柿内は困ったように笑うと人差し指で作った小さなげんこつを柚木の額にコツンと当てた

「おはよ」
「ん」

その様子はいつものように穏やかで質の悪い柚木の悪ふざけに怒っていた秀も目を細めると「先生、ゆっくり呼んでくるね」と病室を出て行く

「・・・柿内」
「んー?」
「起こしてくれ」
「え・・・いや、んな急に」
「いいからっ!」

柚木の強い口調に柿内は小さく溜め息を吐くとベッドのリモコンを操作して柚木の体を少し起こす
柚木が質の悪い冗談を言ったのも、急に柿内との間に甘い空気を出したのも秀を追い出すためだと判ったから。秀を怒らせ、甘い空気を出せば気を遣う秀は部屋を出て行くから・・・

「・・・っ・・・」

どうして体が動かないのか。それを目で見て確認した柚木は声にならない声を出して震えながら拳を握り締める

「柚木さん・・・」
「ど・・・なってんだよ・・・これ」
「っ・・・あんたは・・・」
「動くのかよ・・・これ・・・」
「柚木さんっ!オレがっ!オレが支えるからっ!あんたはまた立ち上がって泳」
「泳げる・・・?いや、もう無理だろ・・・コレ」

自嘲するような声で柚木は頭を枕に預ける

「柚木さんっ!」
「・・・終わりか・・・でも、まぁ、オレの全力は出してきたし・・・」
「っ!!!違うっ!」
「なぁ、柿内ー」
「?」

気の抜けたような柚木の声に顔を上げる

「お前、知ってんだろー?」
「・・・何?」
「オレ、今までさ、人には言わなかったけどすげぇ頑張ってきたの」

知っている。誰よりも判っているつもりだった。柚木の言いたいことも全部判ってしまう。でも・・・信じたい。柚木の力を信じたかった

「『動く体』でめちゃくちゃ頑張って、留学もしたし、インカレも出たし、レギュラーも取った・・・でも『動く体』があったから」
「それはっ」
「オレ、これからはまず動く体にするためにこれ、めちゃくちゃ頑張らなきゃなんだろ・・・んで、そっからどんだけ頑張ったら今までになんだよ」
「・・・柚木さんっ」
「だから、終わり。終わりだ・・・もう・・・終わり」
「んなことっ」
「終わりだっ!!!」

柚木の言葉に柿内は口を閉じる
今は何を言っても無駄だろう。目を覚ましたら柚木の強みだった足は動かず、ギプスで、金属で固定されているのだから・・・突然羽を捥がれた鳥だって戸惑うに決まっている。飛べるわけがないと思ってしまうかもしれない










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ちょっと記憶喪失ネタも夢だったのだけれど、記憶喪失にしたところでうちの攻が甲斐甲斐しいのはどれで書いても変わらないだろうなぁ・・・という結論ですw
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