青春はプールの中で11-5 - 01/20 Sat
「な、何弱気になってんだよ!あんたは無理だっつーことだって真正面から立ち向かって行くだろ!」
「無理なもんは無理だ!この足!手っ!いつ動くようになるっていうんだ!オレが長いこと眠ってたっつーことはっ!ただの骨折じゃないだろっ!」
柚木の言葉に口を閉じる柿内。ただの骨折じゃない・・・事故に遭ったあの日、病院まで走ってきたあの日、柚木が手術室から出てくるまで長かった。すごく長かった
「これが治ってすぐに練習戻れんのか?ないだろ」
「っ・・・だからって」
「どうせならなくなっちまえばよかったのに」
「は・・・はぁ?」
「そしたらもっと簡単に諦められたしっ!お前だって一緒に諦めてくれただろ?!」
「何言ってんだよ!バカっ!!!」
つい、柿内が声を荒げたと同時にドアが開いて困った顔で笑いながら秀が入ってくる
「もー、何ケンカしてんのー?廊下まで響いてるよー!ここ病院ー」
「あー、あぁ、悪ぃ・・・でも柚木さんがっ」
「さっきの冗談根に持ってるんだよ。こいつ」
「あ?」
「あーれは流ちゃんが悪いからぁー!絶対に流ちゃんが悪いー!」
さっきまでの柚木とは全く違う様子に呆気にとられる柿内。しかし、秀に向ける笑顔に柿内は小さくため息を吐くと口を開く
「ホントにオレのこと忘れてたら面白かったとか言うあんたが悪い」
「えー!流ちゃん!!!それは最低!」
「・・・忘れてなかったんだからいいだろー?」
さっきケンカのような雰囲気だったのに咄嗟に柚木のことを考えて話を合わせてくれた柿内に胸が痛んだ
いつだって立ててくれる恋人。柿内の前以外では甘えることも弱音を吐くこともなかなかできない柚木のことを判ってくれている人・・・
「先生呼んだしもうじき来るよー!あと、お母さんたちにも連絡したし、ボクはちょっと練習行って来るよ」
「もう来なくていいからな?お前も大事なときなんだしっ!」
「ふふ。流ちゃんのが大事ー!球兄たちも来るって言ってたよ!うるさくなりそうだねー」
「球たちまで呼んだのかよ」
「あんたが事故った日からみんなこっちに来てる」
あの日から柚木の両親も球と竹市も柿内たちの部屋に泊まっていた。普段2人の部屋に4人来てだいぶ窮屈ではあったが、面会時間が終わって帰ってからも賑やかすぎる部屋は不安で押しつぶされそうになることはなくて逆にありがたかった
「あー!流ちゃん!」
「んー?」
「球兄、叱ってね!」
「なんで?なんかやらかしたの?」
「カッキーを殴った!!!」
「・・・はぁ?」
「最初球兄たちボクの部屋に泊まってたけどボク、その後もなんかカッキーを悪く言う球兄が許せなくて追い出しちゃったんだー」
事情が飲み込めない柚木だったが球がブラコンで自分に対して重すぎる愛情を持っているのも充分すぎるほど知っているから理不尽なことで殴られたのだと察しながら「大丈夫だったか?」と柿内を見つめる
「んなの平気だしそれから家にいんだからもう仲直りしたっつーの」
「それじゃ流ちゃん、また明日来るね!」
「だからいいっつーの!」
秀を笑顔で見送り、扉が閉まると急に重くなる空気
「・・・柚木さん、なんか欲しいものとか」
「元気に動く足が欲しい」
「・・・」
「自由に動く手が欲しい」
「柚木さんっ」
「ムリなら放っておいてくれ」
柚木の拒絶に口を閉じると上着を取って「もうじき診察あるんだろうしちょっと出て頭冷やして来るわ。30分くらいしたら戻るから」そう言いながら静かに病室を出て行く柿内
「もう戻ってこなくてもいい」
そう呟くと真っ白な天井を見上げる
同性でも完璧な恋人。1番に自分をわかってくれる恋人。柚木の今のこのぐしゃぐしゃになっている気持ちもきっと判っているからワザと出て行ったのだ。柿内は何も悪くないのに。柿内に悪態ばかりの自分が悪いのに
柿内は自分のどこが好きだったか・・・前向きで真っ直ぐ走り続けていた自分はいない。折れた心でみんなの前でただ強がるだけの自分なんてきっと柿内の好きな自分ではない・・・そう思って唇を噛んだ

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「無理なもんは無理だ!この足!手っ!いつ動くようになるっていうんだ!オレが長いこと眠ってたっつーことはっ!ただの骨折じゃないだろっ!」
柚木の言葉に口を閉じる柿内。ただの骨折じゃない・・・事故に遭ったあの日、病院まで走ってきたあの日、柚木が手術室から出てくるまで長かった。すごく長かった
「これが治ってすぐに練習戻れんのか?ないだろ」
「っ・・・だからって」
「どうせならなくなっちまえばよかったのに」
「は・・・はぁ?」
「そしたらもっと簡単に諦められたしっ!お前だって一緒に諦めてくれただろ?!」
「何言ってんだよ!バカっ!!!」
つい、柿内が声を荒げたと同時にドアが開いて困った顔で笑いながら秀が入ってくる
「もー、何ケンカしてんのー?廊下まで響いてるよー!ここ病院ー」
「あー、あぁ、悪ぃ・・・でも柚木さんがっ」
「さっきの冗談根に持ってるんだよ。こいつ」
「あ?」
「あーれは流ちゃんが悪いからぁー!絶対に流ちゃんが悪いー!」
さっきまでの柚木とは全く違う様子に呆気にとられる柿内。しかし、秀に向ける笑顔に柿内は小さくため息を吐くと口を開く
「ホントにオレのこと忘れてたら面白かったとか言うあんたが悪い」
「えー!流ちゃん!!!それは最低!」
「・・・忘れてなかったんだからいいだろー?」
さっきケンカのような雰囲気だったのに咄嗟に柚木のことを考えて話を合わせてくれた柿内に胸が痛んだ
いつだって立ててくれる恋人。柿内の前以外では甘えることも弱音を吐くこともなかなかできない柚木のことを判ってくれている人・・・
「先生呼んだしもうじき来るよー!あと、お母さんたちにも連絡したし、ボクはちょっと練習行って来るよ」
「もう来なくていいからな?お前も大事なときなんだしっ!」
「ふふ。流ちゃんのが大事ー!球兄たちも来るって言ってたよ!うるさくなりそうだねー」
「球たちまで呼んだのかよ」
「あんたが事故った日からみんなこっちに来てる」
あの日から柚木の両親も球と竹市も柿内たちの部屋に泊まっていた。普段2人の部屋に4人来てだいぶ窮屈ではあったが、面会時間が終わって帰ってからも賑やかすぎる部屋は不安で押しつぶされそうになることはなくて逆にありがたかった
「あー!流ちゃん!」
「んー?」
「球兄、叱ってね!」
「なんで?なんかやらかしたの?」
「カッキーを殴った!!!」
「・・・はぁ?」
「最初球兄たちボクの部屋に泊まってたけどボク、その後もなんかカッキーを悪く言う球兄が許せなくて追い出しちゃったんだー」
事情が飲み込めない柚木だったが球がブラコンで自分に対して重すぎる愛情を持っているのも充分すぎるほど知っているから理不尽なことで殴られたのだと察しながら「大丈夫だったか?」と柿内を見つめる
「んなの平気だしそれから家にいんだからもう仲直りしたっつーの」
「それじゃ流ちゃん、また明日来るね!」
「だからいいっつーの!」
秀を笑顔で見送り、扉が閉まると急に重くなる空気
「・・・柚木さん、なんか欲しいものとか」
「元気に動く足が欲しい」
「・・・」
「自由に動く手が欲しい」
「柚木さんっ」
「ムリなら放っておいてくれ」
柚木の拒絶に口を閉じると上着を取って「もうじき診察あるんだろうしちょっと出て頭冷やして来るわ。30分くらいしたら戻るから」そう言いながら静かに病室を出て行く柿内
「もう戻ってこなくてもいい」
そう呟くと真っ白な天井を見上げる
同性でも完璧な恋人。1番に自分をわかってくれる恋人。柚木の今のこのぐしゃぐしゃになっている気持ちもきっと判っているからワザと出て行ったのだ。柿内は何も悪くないのに。柿内に悪態ばかりの自分が悪いのに
柿内は自分のどこが好きだったか・・・前向きで真っ直ぐ走り続けていた自分はいない。折れた心でみんなの前でただ強がるだけの自分なんてきっと柿内の好きな自分ではない・・・そう思って唇を噛んだ

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ほーら重いでしょ?重いんだよっ!暗いんだよぉぉToT
こんな柚木書きたくないんだよぉぉぉぉー
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