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青春はプールの中で12-62 - 04/29 Sun

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で
早朝、布団から揺り起こされて柿内は目を開ける

酷い夢を見た気がした。最低なことをしているのに優しい柚木の手が背中を撫でてくれた気がして

「葉月、戻ったのか?」
「・・・おはよ」
「?!」

ここにいるはずがない人物に目を擦る

「な、んで・・・?」
「バーカ。電話してきたろ。待ってろっつったのにお前部屋の鍵も掛けずに寝てんだもん」

夢・・・?あれは、夢だったのか?いや、夢だった。あんなに酷いことをしたのなら柚木がここにいるはずがない。でも・・・

「・・・柚木さん、オレ、昨日」
「熟睡してたから起こすの悪ぃと思ってさー、っつかなんだったんだよ!昨日めちゃくちゃ弱った声で電話してきといてさ!もー自殺でもすんじゃねぇかってくらいの声だったからビビって瑞樹に車まで借りたのにさー!あー!久々に長時間運転したから体痛ぇしー!もー!ホント心配して損した」

柚木は体を伸ばしながら笑う
夢なんかじゃない。現実にあったこと。でも、夢にしておきたかった。柿内が気に病まないように夢にしておきたかった
痛みで思うように体が動かないし、寝不足で頭痛もするけれど笑顔で柿内の顔を覗く

「・・・悪い・・・会社辞めて、別れて、結構参ってた」
「でも寝たらスッキリしたって?うわー!ホント迷惑ー」
「悪い・・・」
「おう!で、時間大丈夫か?会社辞めたっつーけどもう行かなくてもいいのか?」

会社には辞表は出したけれどまだ引き継ぎやらなんやらで行かなければならない。柿内は時計を見て頷くと同時に今日が平日だということに柚木を見る

「あんた、今日」
「オレー?まぁ、今から帰ったって仕事遅刻で済まねえから病欠ー!有給余ってるし大丈夫大丈夫ー」
「・・・悪い」
「ふはっ!お前まじで弱ってんのな!お前起きてから何回謝ってんだよ!ないわー!お前がこんな謝るとかレアだわぁー」

いつもの調子の柚木に小さく笑うと柿内は布団から出る
昨日の夜、世界が崩れて終わったと思った。でも、朝は相変わらずやってきたし、柿内には電話で心配して駆けつけてくれる人がいた。新しい1日の始まり

「・・・柚木さん、今日帰んの?」
「あー・・・明日まで有給使えば土日あるしのんびり帰れるからなーって迷うところだなー」
「じゃあ、夕飯」
「おう!決まり!明日もオレ病気!」
「・・・柚木さん、オレホントに昨日」
「電話してきたの覚えてないわけ?」
「じゃなくて・・・いや、なんでもない」

やっぱり夢だったのかと少し安心するとシャツに腕を通す

「柿内のスーツ姿もレアー!」
「・・・まぁ、冷蔵庫の中適当に食べて飲んでゆっくりしてけよ。あ、出掛けるなら鍵・・・」

自分の鍵を渡そうとして机の上に置いてあるスペアキーに気付いて言葉を飲み込む

栗山に渡していた鍵。本当に別れたのだ。もう戻ってこないのだ

「柿内ー?」
「あぁ、これ、葉月置いてったからあんたこれ使って」
「・・・大丈夫か?」
「バカ。振られただけだ」

柚木は鍵を受け取ると小さく頷く

柿内の恋愛は外見だとか性格だとかそんな単純なものじゃない。ひとりの人間を尊敬し、大事に思うところから始まるのを理解している。性欲よりも大事にし、甘やかし、自分のものにしたい、慈しみたい。その気持ちから付き合い、愛するのだ。そんな大事なものを失って振られただけ。だなんて片付けられるわけがない

「あ、朝メシは?!」
「食欲ねぇ。あー、あんたは冷蔵庫漁って」
「・・・柿内」
「あー?」
「話、したけりゃ聞くから」
「・・・おう」
「じゃあ、いってらっしゃい」

ふわりと重い体が軽くなる気がした

ずっとあの時のように柚木に見送られたかった。想い出の中のことがまた現実になった

「・・・いってきます」

照れ臭かったけれどそう言うと、別れたばかりで苦しいのに自分はやっぱり最低だと玄関のドアを開けてそう思った








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柚木はね、相変わらず優しいけれど、きっと引け目を感じてるままなんだ
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