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青春はプールの中で13-6 - 05/10 Thu

trackback (-) | comment (0) | 青春はプールの中で
柿内の職場での態度は相変わらず『冷たい人』と取られるもので、最初は気を使って新しく入って来た柿内に話しかける人間もいたが、それもだんだんと減っていった

それでよかった。仕事だからそれで充分だと思っていた

「ねぇ」
「・・・」
「確実に聞こえてんじゃんね?無視すんな。柿内」

柿内は手を止めて顔を上げると名前を覚えてもいない相手でめんどくさそうに「何?」と口を開く

「まぁ、イイ。あたしだってあんたと仲良くなりたいとかそういうわけじゃないけど、ワザと孤立しようとしてんの見たら空気悪くなるし実際あんたの周り空気悪いから」
「・・・気にすることないだろ」
「気にするっつーの!ホントに冷たい人間だったらあたしだってめんどくさいことしたくない」

本当に・・・?馴れ合う気がない自分が冷たく取られるのなんて当然のこと

「自分の仕事してりゃいい。それね。イイよ。それでイイ。でも、あんたの場合、気付かれない所で手伝ってんの知ってっから」
「・・・はぁ?」
「あたしの作ってたやつ!」

あぁ、余計なことをした。そう思いながら柿内は「そりゃ悪かった」と呟くと再びパソコンに視線を移したが、ノートパソコンを閉じられて不愉快な顔を露わにしながら再び女性を見上げる

「あたし上津。んで、沙耶の友達」
「・・・」
「だから」
「友達なのは判った。それで?」
「滅多に人褒めない沙耶があんたのことは褒めてたわけ!冷たくて素っ気ないけど実は熱いとかなんとか?んなの嘘だって思ってたけどこないだどーしても動かないっつーので壁にぶち当たって2週間仕事漬けで悩んでたのに何?仮眠室で休んで開いたら見たことない修正されてて動いてんの!妖精さんかなんかいるんかと思った!実際、妖精いるって噂になってるし!でも違った!あんたでしょ」

ため息を吐きながら頭の後ろを掻く
沙耶の友人と同じ職場で働いていた事実にも驚いたが、まさか妖精がいるだとかメルヘンな事態になっていただなんて予想外のこと
あの日、トイレから戻った柿内は「ダメだー!判らん!!!」そう叫んでいたのに足を止めた。それが誰だったかなんて覚えていなかったけれど、覗いてみると何故彼女が悩んでいるのかすぐに気付いて彼女が席を立った後、自然と手が動いてしまっていたのは覚えていた

下手な修正をして余計なことをするつもりなんてどこにもなかったけれどつい体が動いていたのだ

「んでさ、冷蔵庫にあった賞味期限切れだったハズのプリンが賞味期限延びてたり?あとは給湯室のなくなりかけのインスタントコーヒーが増えてたり。誰だよ?!て聞いても誰もやってないっつーし知らないっていうし!妖精だか妖怪だか判んないけどここには何かがいるとかそんな噂になってたの!でも!いるわけないじゃんっ!んで、誰とも関わろうとしてないあんただって行き着いたわけ。理由聞きたいわけじゃないけど、無理して関わらないようにしようって思ってんならやめな。せめて普通にしなよ。あんただってその方が仕事効率上がる」

無理していたわけじゃない
コーヒーだって飲もうとしたら切れそうになっていたから足しただけ。冷蔵庫のプリンだってたまたま栗山の好きだったプリンを買ったら賞味期限切れの同じプリンが冷蔵庫に入っていたから入れ替えただけ

特別誰かのためにしたわけじゃないけれど、柚木のようになりたくて気を遣っていたらそれが習慣になって抜けないだけ

「んで、今からご飯、行くけど行くでしょ?」
「いや・・・」
「あんただって腹減るでしょ?!だから行く」

沙耶の友達。そう言っていたけれどどちらも強引なところはよく似ている。そう思いながら再び首を振る

「はぁ?!」
「・・・腹減ってねぇから」
「なんで!」
「なんでって・・・」
「あたしはお腹空いた!だから行く。付き合え」
「・・・」
「この時間に女1人メシ行かせる気か?あ?」

柿内は時計を見上げるとため息を漏らしながら立ち上がる
確かにこの時間、女性を1人で歩かせるのは柿内としては気分が悪い。知らなかったらそのまま放置していたのに、誘われて断って1人で行かせるのは微妙な時間

「・・・無駄にデカいな」
「無駄とかじゃねぇし」
「ハハ!悪い悪いー!んじゃ!メシ行こ」

強引に連れ出された柿内だったけれど、嫌な気はしなかった。人と関わることが嫌いなわけじゃない

静かに仕事はしたい。仕事に熱中していれば嫌なことを忘れられたから

「あ!そーだ!幸成!立った!」
「あ?」

近くのファミレスで注文をすると思い出したようにそう言った後、携帯で写真を見せてくる

「あぁ、チビか」
「イケメンになるよー!こいつはー」
「梅吉の子どもだぞ?」
「絶対沙耶似!っつかウメの血要らない」
「酷ぇな」

柿内は小さく笑うと驚いたような上津の顔

「あ?」
「いや、ウメが妬いてたのも判るわーってさ」
「何?」
「ウメよりも背は高い。話もウメより合ったんだろーし、悪くない」
「・・・」
「そりゃ妬くわなぁ」
「そんな仲になったことねぇけど」

上津はうんうんと頷きながらフォークで柿内を指す

「そんな仲になってたらあたし聞いてるハズじゃん」
「・・・」
「何?沙耶とは合わなさそうって?」
「いや・・・あいつもちゃんと友達いたんだなって」
「ふはっ!いるわ!あたしがっ!!!」

柿内はそうか。と安堵したように出てきたスープを啜った

環境が変わった。態度も以前とは変えた。でも、変わらず自分の中身を見ようとしてくれる人間は気付く人間はいることを知る

変わっていく。尖っていれば人は自衛しようと近付かない。でも、柚木のおかげで変わってしまった柿内はもう昔のようには棘を出せないのだと知る
無理して人と関わらない。それよりも自分を見てくれる相手だけ厳選していくだけの力はきっとあるはずで・・・まだ信じられる相手ではない。でも、信じたい要素は沢山ある

沙耶の親友だというのもそのひとつ。気に掛けてくれる戦友、親友とも呼べる沙耶の親友なのだ。信じたい。信じられるはず。裏切ることなんてないはず。でも怖い

「悪かったな」
「んー?」
「勝手に直して」
「いやいや!あそこ解決したから先進んでる。まぁ、あたしの思い描いたようには動いてないけど!」
「あ?」
「っつかあんたの直し方強引!もっとさー!もっとないわけぇ?!」
「甘えんな。自分でやれ」

上津は笑って「もちろんそーする」と言いながら沙耶が絶賛していたこの男を少しだけ判った気がしてホッとした







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以前ですね、本業wとしてやっていたことから半年とか離れているわけだけど、そろそろ手が細かい作業したくてうずうずしまくってて、ネイルとか自分用アクセとか作るくらいじゃ物足りなくなってきて遂に水尾はセルフマツエクまでやり始めましたっていうよく判らない報告をここでさせていただきます
っつかねー、柿内ってねー、紳士なのねー。柿内姉に小さいころから鍛えられてたから女性の扱い上手なわけ。んで、もちろん、1人で夜道歩かせるのも柿内的にはNGだけど送り狼には絶対ならないし、話聞いていないようでちゃんと聞いてくれて相槌打ってくれるの。え?もう何この人。完璧なんじゃない?!っていうね
まぁ、送ってくれたりするけどそれは男だからっていう認識で心はなかなか許してくれないんだろうけど、顔は普通なんだけど身長高くて体型もずっとキープしてるしでもうやっぱり完璧なわけよ
恋人になったらなったでスパダリだから送り迎えしてくれるし(もちろんクソめんどくせぇとか悪態はつくんだけど)ご飯作ってくれるし掃除は苦手だけど座るところぐらいは作ってくれるし。んで、他の人になかなか心開かないから恋人にだけ超優しくすんの
・・・以上酔っ払いが柿内のすばらしさをひたすら語ってみました。他にもあるんだけどさーあるんだけどさー!!!止まらなくなるからここらへんで勘弁しておいてやるよ!っていう
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